説明

粒子の固着方法及び粒子固着体の製造方法

【課題】電極上へより容易に且つより強固に粒子を固着することができる。
【解決手段】本発明は、基体12上に形成された第1電極14上に粒子32を固着させる固着方法であり、第1電極14上に対向電極39を対向させた状態で熱可塑性電着材42を含む溶液に基体12を浸漬し、第1電極14と対向電極39との間に電位差を設けて電着材層45を第1電極14に形成する電着材層形成工程と、少なくとも第1電極14の電着材層45上に粒子層30を形成する粒子層形成工程と、粒子層30が形成された電着材層45を加熱しこの加熱された電着材層45により粒子層30を固着する固着工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の固着方法及び粒子固着体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラングミューア−ブロージェット法(LB法)により基板に固着しやすい化学基を有する膜をこの基板上に形成し、この基板に形成された膜に、更に異種物質による膜を複数積層させることにより基板と剥離しにくい積層膜を作製する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、重合性モノマーと磁性体微粒子とを分散させた溶液中に電極を入れ、このモノマーを電解重合することによりポリマー中に磁性体微粒子が分散した状態で電極上にポリマーを形成する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。この方法では、密度が小さく柔軟性に富む薄膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−150661号公報
【特許文献2】特開平6−338432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、基板上に形成された電極上のみに粒子層を形成し、その後の工程などで取り扱うことがあり、この電極上へ粒子を強固に固着させたいということがある。このような場合、特許文献1の方法では、電極以外の基板上にも膜状の粒子層が形成されてしまい、基板上に粒子層が形成されない他の方法、例えばマスクによるパターニングやレジスト形成によるパターニングなどを行う必要があった。また、基板や膜に形成させる化学基など選択の幅が狭かった。なお、LB膜での固着は、基本的には分子間力による結合であり、その結合力が弱く、特に粒子径がサブミクロン以上の場合、十分に強固に粒子を電極上へ固着できなかった。また、特許文献2の方法では、電極上にはポリマー層が形成されるが、柔軟性に富むポリマー層を電極上へ形成するものであり、電極上へ粒子を強固に固着するものではなかった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、電極上へより容易に且つより強固に粒子を固着することができる粒子の固着方法及び粒子固着体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した主目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、電極が形成された基板を熱可塑性電着材を含む溶液に浸漬させ、この電極を利用して電圧を印加しこの電極上へ熱可塑性電着材を形成し、更にその上に粒子の層を形成して加熱して熱可塑性電着材を溶かして粒子を固定させると、電極上へより容易に且つより強固に粒子を固着することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の粒子の固着方法は、
基体上に形成された第1電極上に粒子を固着させる固着方法であって、
前記第1電極上に対向電極を対向させた状態で熱可塑性電着物質を含む溶液に前記基体を浸漬し、前記第1電極と前記対向電極との間に電位差を設けて前記熱可塑性電着物質の層である電着材層を前記第1電極に形成する電着材層形成工程と、
少なくとも前記第1電極の電着材層上に粒子層を形成する粒子層形成工程と、
前記粒子層が形成された電着材層を加熱し該加熱された前記電着材層により前記粒子層を固着する固着工程と、を含むものである。
【0008】
また、本発明の粒子固着体の製造方法は、
基体上に形成された第1電極上に粒子が固着した粒子固着体の製造方法であって、
前記第1電極上に対向電極を対向させた状態で熱可塑性電着物質を含む溶液に前記基体を浸漬し、前記第1電極と前記対向電極との間に電位差を設けて前記熱可塑性電着物質の層である電着材層を前記第1電極に形成する電着材層形成工程と、
少なくとも前記第1電極の電着材層上に粒子層を形成する粒子層形成工程と、
前記粒子層が形成された電着材層を加熱し該加熱された前記電着材層により前記粒子層を固着する固着工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粒子の固着方法及び粒子固着体の製造方法では、第1電極上で加熱された熱可塑性電着物質により粒子が機械的に固着するため、より強固に粒子を固着可能である。また、第1電極以外の基体上に粒子層が形成されたとしても、第1電極において熱可塑性電着物質が粒子を固着するため、第1電極以外の部分では粒子が強固に固着することがなく、従来におけるマスクによるパターニングやレジスト形成によるパターニングなどを行わなくても、第1電極以外の表面に形成された粒子層を簡単に除去することができる。したがって、電極上へより容易に且つより強固に粒子を固着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の粒子固着体10の製造方法の一例を表す説明図。
【図2】本実施形態の粒子固着体10の製造方法の別の一例を表す説明図。
【図3】積層体50を製造する工程の説明図。
【図4】粒子固着体10の別例の説明図であり、図4(a)が立方体粒子の複層パターニング例、図4(b)が立方体粒子の単層パターニング例、図4(c)がセラミックス粒子を焼成により一体化した例、図4(d)が電極パターンにより固着層34をパターニングした例。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施する形態を図面を用いて説明する。図1及び図2は、本実施形態の粒子固着体10の製造方法の一例を表す説明図である。粒子固着体10は、図1の下段に示すように、基体12と、基体12上に形成された第1電極14と、第1電極14上に形成され粒子32を熱可塑性電着材42で固着した固着層34とを備えている。この粒子固着体10は、例えば、基体上に電極を形成した素子への中間体(部品)として作製されるものとしてもよい。粒子固着体10は、圧電特性、強誘電特性、磁気特性、熱電特性、イオン伝導性、光学特性などの特徴を有する粒子を電極上に固着させたものとしてもよい。即ち、素子としては、圧電/電歪素子、強誘電体素子、磁気素子、熱電変換素子、イオン伝導素子、光学素子などが挙げられる。また、この粒子固着体10は、そのまま用いることもできるが、例えば、固着層34上に更に電極を形成した素子の中間体として作製されるものとしてもよい。即ち、粒子からなる層を電極で挟み込んだ構造の素子としてもよく、例えば、圧電/電歪素子、強誘電体素子、熱電変換素子、イオン伝導素子などが挙げられる。この場合、基体12上に形成された第1電極14をそのまま素子に利用することができる。
【0012】
基体12は、その表面上へ導電性の電極を形成可能であり、その表面に絶縁性を有し、後述する熱処理工程での耐熱性を有していれば特に限定されず、例えば、ガラスや単結晶、セラミックス、樹脂、予め絶縁コートされた金属などのうち1以上が挙げられる。ガラス基体としては、例えば、石英、無アルカリガラスなどが挙げられる。単結晶基体としては、例えば、シリコン、ガリウムヒ素、炭化珪素、アルミナなどが挙げられる。セラミックス基体としては、例えば、安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライト、窒化アルミニウム及び窒化珪素などが挙げられる。樹脂基体としては、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。絶縁コートされた金属の基体としては、ステンレスやアルミニウムなどの金属上に絶縁性樹脂を塗布したものなどが挙げられる。
【0013】
第1電極14は、導電性の材料で形成されている。この第1電極14の材質としては、白金、パラジウム、ルテニウム、金、銀及びこれらの合金、導電性高分子からなる群より選択される少なくとも1種以上を挙げることができる。この第1電極14は、粒子固着体10をその後焼成する場合には、焼成に際しての耐熱性が高い点で、白金、又は白金を主成分とする合金が好ましい。また、第1電極14のパターニングの方法は、蒸着、スパッタリング、スクリーン印刷、無電解めっき、モノマーの界面重合などいずれでもよい。
【0014】
粒子32は、ガラス、セラミックス、樹脂、金属、金属酸化物などとすることができる。この粒子32は、例えば、第1電極14上で整列・配向することにより特性が向上するものであることがより好ましい。こうすれば、本発明の粒子の固着方法により、固着層34での特性をより向上させることができる。粒子32としては、例えば、圧電特性を有するもの、強誘電特性を有するもの、磁気特性を有するもの、熱電特性を有するもの、イオン伝導性を有するもの、光学特性を有するもの、これらのうち1以上を用いたものなどが挙げられる。これらの特性を有する粒子では、得られる粒子固着体10や素子などにおいても同様の特性を有するものとすることができる。圧電特性を有する粒子としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、リチウムテトラボレート(Li247)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、窒化アルミニウム(AlN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの粒子が挙げられる。強誘電特性を有する粒子としては、例えば、BaTiO3や、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、SrBi2Ta29(SBT)、(Bi,La)4Ti312(BLT)、BaBi4Ti414などの粒子が挙げられる。磁気特性を有する粒子としては、例えば、フェライト(FeO・Fe23、MnO・Fe23、、NiO・Fe23、CoO・Fe23などの粒子が挙げられる。熱電特性を有する粒子としては、例えば、ビスマス・テルル化合物、鉛・テルル合金、シリコン・ゲルマニウム合金、コバルト・アンチモン化合物、亜鉛・アンチモン化合物などの粒子が挙げられる。イオン伝導性を有する粒子としては、例えば、安定化ジルコニア、βアルミナ、パーフルオロスルホン酸系ポリマーなどの粒子が挙げられる。光学特性を有する粒子としては、例えば、Zn−In−Sn−O系材料、Zn−In−O系材料、In−Sn−O系材料、Zn−In−Sn−O系材料などの酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズのいずれかを含む粒子などが挙げられる。この粒子32の形態は、球状、立方体、正四面体、正八面体、棒状、板状など種々の形態とすることができる。なかでも、球状、立方体、正四面体、正八面体は粒子の充填率が上げることが可能であるので、緻密体を形成するのに好適である。
【0015】
熱可塑性電着材42は、熱可塑性を有すると共に、この熱可塑性電着材42を溶媒中に分散させ導電性を有する被塗物を浸して通電させることによって被塗物の表面に被膜として形成されるものである。熱可塑性電着材42は、被膜材料成分を溶媒に溶解させた溶液及び被膜材料成分を分散媒に分散させた分散液のいずれから形成されたものとしてもよい。また、熱可塑性電着材42は、被膜材料成分が正に帯電しているカチオン型及び被膜材料成分が負に帯電しているアニオン型のいずれであってもよい。熱可塑性電着材42としては、例えば、エポキシ樹脂・ポリイミド樹脂・ポリアミドイミド樹脂・アクリル樹脂等の炭素系高分子化合物、シリコーン樹脂等のケイ素系高分子化合物、表面に分散剤を吸着させ帯電させたアルミナ等の酸化物のナノ粒子等を挙げることができる。
【0016】
次に、粒子固着体10の製造方法について説明する。粒子固着体10の製造方法は、例えば図1に示すように、(1)基体12上へ第1電極14を形成する第1電極形成工程と、(2)基体12を熱可塑性電着材液41へ浸漬して第1電極14に通電して第1電極14上に熱可塑性電着材42からなる電着材層45を形成する電着材層形成工程と、(3)電着材層45を形成した基体12を洗浄・乾燥する洗浄乾燥工程と、(4)第1電極14上に粒子層30を形成する粒子層形成工程と、(5)熱処理により粒子層30を第1電極14上へ固着する固着工程と、(6)第1電極14以外の基体12上に付着した粒子32を洗浄する洗浄工程と、を含むものとすることができる。あるいは、図2に示すように、(1)電極形成工程と、(2)電着材層形成工程と、(3)洗浄乾燥工程と、(4)粒子32を含むスラリー溶液43へ基体12を浸漬し粒子層30を形成する粒子層形成工程と、(5)固着工程と、(6)洗浄工程と、を含むものとしてもよいし、(7)粒子層形成工程の前に電着材層45を親水化処理する親水化工程、を含むものとすることができる。なお、粒子層形成工程は、粒子32を含む溶液に基体12を浸漬して行ってもよいし、溶液に浸漬せずに行ってもよい。
【0017】
(1)第1電極形成工程
まず、基体12上に第1電極14を形成する処理を行う(図1の1段目参照)。第1電極14を配設する基体12としては、上述したガラスや単結晶、セラミックス、樹脂、予め絶縁コートされた金属などのうちいずれかを適宜用いることができる。第1電極14としては、上述した導電性を有する金属、酸化物などの無機化合物、高分子のいずれか1以上を用いることができる。第1電極14の形成方法としては、例えば、上記電極材料の蒸着やスパッタリング、モノマーの重合反応などにより形成することができる。また、第1電極14は、上記電極材料のペーストを調製し、このペーストを基体12上へドクターブレード法やスクリーン印刷法などにより塗布したり、無電解めっきを行うことなどにより基体12上へ所望のパターンで形成することができる。第1電極14の形状や厚さは適宜選択することができる。
【0018】
(2)電着材層形成工程
次に、第1電極14上に対向電極39を対向させた状態で熱可塑性電着材を含む熱可塑性電着材液41に基体12を浸漬し、第1電極14と対向電極39との間に電位差を設けて熱可塑性電着材の層である電着材層45を第1電極14上のみに形成する処理を行う(図1の2段目参照)。熱可塑性電着材液41に含まれる熱可塑性電着材としては、上述のように、例えば、エポキシ樹脂・ポリイミド樹脂・ポリアミドイミド樹脂・アクリル樹脂等の炭素系高分子化合物、シリコーン樹脂等のケイ素系高分子化合物、表面に分散剤を吸着させ帯電させたアルミナ等の酸化物のナノ粒子等を用いることができる。熱可塑性電着材液41には、熱可塑性電着材を溶媒に溶解させた溶液及び熱可塑性電着材を分散媒に分散させた分散液のいずれも使用することができる。熱可塑性電着材液41は、熱可塑性電着材が正に帯電しているカチオン型及び熱可塑性電着材が負に帯電しているアニオン型のいずれであってもよい。この熱可塑性電着材がカチオン型かアニオン型かにより、第1電極14の電位を定めるものとする。溶媒又は分散媒の例としては、水等の無機溶媒、アルコール等の有機溶媒を挙げることができる。このうち、水系電着塗料は取り扱いが簡便であるため好適に用いられる。なお、熱可塑性電着材液41がブロック化イソシアネート等の硬化剤やスズ化合物等の触媒を含んでいてもよい。熱可塑性電着材液41に基体12を浸漬させて、第1電極14へ電流を流すと、第1電極14の表面に電着材層45が形成される。
【0019】
(3)洗浄乾燥工程
第1電極14上へ電着材層45を形成したあと、基体12を洗浄・乾燥する(図1の3段目参照)。第1電極14上に塗膜のように電着材層45が形成されており、洗浄によっても電着材層45は剥がれにくい。この乾燥では、電着材層45の材質にあわせた温度で行うのが好ましい。基体12の乾燥は、例えば、ヒーター38上で行うものとしてもよいし(図1の3段目)、乾燥機中で行ってもよい。
【0020】
(4)粒子層形成工程
次に、第1電極14を形成した基体12上の少なくとも第1電極14上(電着材層45上)へ粒子32の層である粒子層30を形成する(図1の4段目参照)。用いる粒子32は、上述したガラス、セラミックス、樹脂、金属、金属酸化物などのうちいずれかを用いることができる。また、圧電/電歪特性を有する粒子、強誘電特性を有する粒子、磁気特性を有する粒子、熱電特性を有する粒子、イオン伝導性を有する粒子、光学特性を有する粒子などのうちいずれかを用いることができる。粒子層30の形成方法は、その後の固着工程に供せられる方法であれば特に限定されず、図1の4段目に示すように、基体12を溶液へ浸漬させずに直接粒子層30を形成するものとしてもよいし、図2の4段目に示すように、粒子32を含む溶液(スラリー)に基体12を浸漬させて第1電極上に粒子層30を形成するものとしてもよい。前者の方法としては、例えば、スプレーにより塗布する方法、スピンコート法、ドクターブレイド法などのうち1以上の方法が挙げられる。後者の方法としては、例えば、粒子32が分散したスラリーに基体12を浸漬・静置して粒子32を沈降させる方法や、粒子32を液相界面に整列させ浸漬させた基体12を引き上げるLB法、電気泳動法、ディップ法などのうち1以上の方法が挙げられる。こうすれば、比較的容易に第1電極14上へ粒子層30を形成することができる。この粒子層30の形成の際に、機械振動、音波、熱、光、磁場などを付加することで、より緻密に充填させることもできる。
【0021】
(5)固着工程
次に、粒子層30が形成された電着材層45を加熱しこの加熱された電着材層45により粒子層30を固着させた固着層34を形成する処理を行う(図1の5段目参照)。この固着工程の熱処理は、電着材層45が溶ける又は溶ける前の温度で行うことが好ましい。加熱の方法は、ヒーター38で基体12側から加熱するものとしてもよいし、基体12をオーブンなどに入れて加熱するものとしてもよいし、電着材層45へ電磁波を照射するものとしてもよい。熱可塑性電着材42を加熱することにより、熱可塑性電着材42が粒子32の間に入り込んだ状態になる。このように、この固着層34は、粒子32の間に熱可塑性電着材42が入り込んだ状態で粒子32を機械的に固着するため、より強固に第1電極14上に形成される。
【0022】
(6)洗浄工程
次に、固着層34が形成された基体12の第1電極14以外の表面に形成された粒子層30を除去する処理を行う。熱可塑性電着材42により固着されていない粒子は、流水洗浄や超音波洗浄で容易に除去することができる。こうして、熱可塑性電着材42により第1電極14上で粒子32が固着した粒子固着体10を、より容易な処理で得ることができる。
【0023】
(7)親水化工程
ここで、電着塗料被膜の表面性状によってスラリー溶液43が撥水される場合は、電着材層45の表面を親水化させてもよい。例えば、粒子層形成工程で水溶液のスラリー溶液43を用いて粒子層30の形成を行う場合に、図2の3段目に示すように、粒子層形成工程の前に、形成された電着材層45を親水化処理するものとしてもよい。こうすれば、電着材層45の表面に粒子32がより付着しやすくなる。親水化処理としては、表面をプラズマ処理するものとしてもよいし、界面活性剤を用いるものとしてもよい。なお、この親水化工程は、洗浄・乾燥工程のあと親水化工程を行うものとしてもよい。
【0024】
以上詳述した本実施形態の粒子固着体10の製造方法では、第1電極14上に形成された熱可塑性電着材42により機械的に粒子32を固着させるため、固着層34がより強固であるし、基体12、第1電極14及び粒子32の種類の選択の幅を極めて広くすることができる。また、熱可塑性電着材の電着を用いることにより、例えば従来のようなマスクによるパターニングやレジスト形成によるパターニングなどを行うことなく、より容易な処理で第1電極14上のみへ固着層34を形成することができる。更に、粒子層30を第1電極14上に形成したのちに熱処理で固着層34を形成させるため、より密度の高い固着層34を作製することができる。更にまた、第1電極14を電着材層45の形成に利用すると共に、その後、例えば複数の電極で固着層34を挟み込むような素子とした際にも第1電極14を利用することができる。なお、本実施形態では、粒子固着体10の製造方法を説明することにより本発明の粒子の固着方法の一例も明らかにしている。
【0025】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0026】
例えば、上述した実施形態では、第1電極14上に固着層34を形成した粒子固着体10の製造方法としたが、図3に示すように、(8)粒子固着体10の固着層34上へ第2電極16を形成する第2電極形成工程と、(9)第2電極16を形成した粒子固着体10を焼成する焼成工程と、を含むものとしてもよい。即ち、焼成により形成した形成層36を第1電極14及び第2電極16で挟み込んだ積層体50(素子)の製造方法としてもよい。図3は、積層体50を製造する工程の説明図である。この第2電極形成工程では、上述した第1電極形成工程と同様の処理を用いることができる。また、この焼成工程では、基体12、第1電極14、粒子32、熱可塑性電着材42などの特性に合わせた条件で焼成処理を行うものとする。例えば、この焼成工程では、粒子32が焼結する温度や熱可塑性電着材42が焼成により消失する温度で焼成し、これに合わせて基体12や第1電極14の材質を耐熱性を考慮して選択しておくものとすればよい。また、焼成工程は、第1電極14の形成後に行ってもよいし、固着層34の形成後に行ってもよいし、第2電極16の形成後に行ってもよいし、これらの1以上の工程のあとに適宜焼成工程を行ってもよい。なお、上記第1電極形成工程で、焼成可能な基体12上へ導電性高分子の第1電極14を形成し、焼成可能な固着層34を設けたものをその後焼成することにより、第1電極14が焼成により消失し、基体12上へ直接形成層36を形成した、第1電極14のない積層体を得ることができる。
【0027】
上述した実施形態では、電極形成工程と、粒子層形成工程と、固着工程と、洗浄工程と、再重合工程と、を含むものとしてもよいとしたが、粒子固着体10の製造方法としては、電着材層形成工程と、粒子層形成工程と、固着工程と、を含むものとすればよい。
【0028】
上述した実施形態では、図1,2において、粒子固着体10の説明を行ったが、図4に示すような種々の形態としてもよい。図4は、粒子固着体10の別例の説明図であり、図4(a)が立方体粒子の複層パターニング例、図4(b)が立方体粒子の単層パターニング例、図4(c)がセラミックス粒子を焼成により一体化した例、図4(d)が電極パターンにより固着層34をパターニングした例である。これらのように、粒子32が矩形で構成されていてもよいし、単層で構成されていても複層で構成されていてもよいし、焼成してセラミックス層としてもよいし、例えば櫛歯状などパターニングしてもよい。
【実施例】
【0029】
以下には、本発明の粒子固着体10を具体的に作製した例を説明する。
【0030】
[実施例1]
サイズ30mm×30mm、厚さ150μmのジルコニア基板上に幅1mm、長さ40mm、厚さ10μmの白金成形体をスクリーン印刷により形成し、電気炉を用い1350℃で焼付けることにより基板上に白金電極(第1電極)を形成した。次に、水性のアニオン型で、被覆材料としてポリイミド樹脂となる熱可塑性電着材液を準備し、ビーカーの底に前述のジルコニア基板を置き、基板に対して平行になるようにSUS製の対向電極を電極間隔1mmで設置し、基板上の白金電極をプラス極、対向電極をマイナス極となるように電源に接続して、ピーク電圧5Vで2Hzの三角波を30回印加して熱可塑性電着材被膜(電着材層)を白金電極上に形成し、100℃に熱したホットプレート上で乾燥した。さらにPZT懸濁液(スラリー)に基板を浸漬し、PZT粒子が沈降堆積するまで10分間静置した。粒子が堆積した状態のまま基板を引き上げて、300℃のホットプレート上で5分間加熱処理した後、純水中で超音波洗浄して、電極以外に付着したPZT粒子を除去することにより、電極上のみにPZT粒子が固着した粒子固着体が得られた。これを実施例1とした。なお、PZT粒子の粒径は、スペクトリス社製動的散乱式粒度分布測定装置ゼータサイザーナノnano−ZSを用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)である。また、PZT粒子の除去時の超音波洗浄は、超音波洗浄機(シャープ製UT−106)を用い、40kHz、1分間の条件で行った。
【0031】
[実施例2]
実施例1と同様に電着材層を白金電極上に形成し、100℃で乾燥した後、180℃のオーブンで30分間硬化処理を行った。さらに、Arガス雰囲気下でプラズマ処理し、熱可塑性電着材の表面を親水化処理した。このプラズマ処理では、プラズマドライクリーナー(サムコインターナショナル研究所製PX−1000)を用いて1kWで3分間の処理を行った。親水化処理のあと、実施例1と同様の工程を経てPZT粒子を電着材層上へ堆積させ、熱処理を行いこれを固着させた。得られた粒子固着体を実施例2とした。
【0032】
[実施例3]
実施例1と同様にジルコニア基板上に白金電極を形成した。次に、水性のカチオン型で、熱可塑性電着材としてエポキシ樹脂となる熱可塑性電着材液を準備し、ビーカーの底に前述のジルコニア基板を置き、基板に対して平行になるようにSUS製の対向電極を電極間隔1mmで設置し、基板上の白金電極をマイナス極、対向電極をプラス極となるように電源に接続して、ピーク電圧5Vで2Hzの三角波を30回印加して熱可塑性電着材被膜(電着材層)を白金電極上に形成し、100℃に熱したホットプレート上で乾燥した。さらにPZT懸濁液に基板を浸漬し、PZT粒子が沈降堆積するまで10分間静置した。粒子が堆積した状態のまま基板を引き上げて、300℃のホットプレート上で5分間加熱処理した後、純水中で超音波洗浄して、電極以外に付着したPZT粒子を除去することにより、電極上のみにPZT粒子が固着した粒子固着体が得られた。これを実施例3とした。
【0033】
[比較例1]
サイズ30mm×30mm、厚さ2mmのガラス基板上へ櫛歯状に厚さ150nmの金電極(第1電極)をDCスパッタリングにより形成した。次に、水熱合成法で作製した粒径3μmの立方体形状のPZT粒子の表面にラテックスコーティングを行い、このコーティングしたPZT粒子をイソプロピルアルコールに懸濁したあと、純水に滴下してこのPZT粒子を水面に浮かせた。次に、前述の金電極を形成したガラス基板を、水面にPZT粒子が浮かぶ溶液から引き上げ(LB法)、PZT粒子を堆積した基板を得た。得られた基板を比較例1とした。
【0034】
(剥離試験)
実施例1〜3及び比較例1について、付着力を評価する試験を行った。試験は剥離率を評価するものであり、剥離処理を行う前の第1電極上の粒子の被覆率に対して、剥離処理後の被覆率がどのように変化するかを求めた。剥離処理として、上記超音波洗浄機を用い、水中で40kHz、1分間の処理を行った。また、被覆率(電極の単位面積あたりに被覆している粒子の割合)は、固着層を形成した第1電極の表面を走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−7000F)で観察し、画像解析により電極面積あたりの粒子の被覆面積を数値化して求めた。また、剥離率は、剥離処理前の第1電極上の粒子の被覆率をA、剥離処理後の被覆率をBとすると、(A−B)/A×100(%)という式を用いて求めた。
【0035】
(実験結果)
実施例1〜3及び比較例1の剥離処理前の第1電極上の粒子の被覆率(%)、剥離処理後の被覆率(%)及び剥離率(%)を表1に示す。表1より明らかであるが、比較例1の剥離が激しく、固着できていないのに対して、実施例ではどのサンプルでも高い被覆率を示すと共に、極めて剥離しにくいことがわかった。また、親水化処理を行った実施例2では、より高い被覆率が得られた。第1電極上への粒子の形成は、電極上へ粒子を沈降させてもよいし、LB法を用いてもよいし、どのような方法を用いてもよいものと推察された。また、実施例1〜4の熱可塑性電着材により粒子を電極上へ固着する方法では、粒子、基板及び電極の材質を選ばずに強固に固着することができることが明らかとなった。
【0036】
【表1】

【符号の説明】
【0037】
10 粒子固着体、12 基体、14 第1電極、16 第2電極、30 粒子層、32 粒子、34 固着層、36 形成層、38 ヒーター、39 対向電極、41 熱可塑性電着材液、42 熱可塑性電着材、43 スラリー溶液、45 電着材層、50 積層体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に形成された第1電極上に粒子を固着させる固着方法であって、
前記第1電極上に対向電極を対向させた状態で熱可塑性電着物質を含む溶液に前記基体を浸漬し、前記第1電極と前記対向電極との間に電位差を設けて前記熱可塑性電着物質の層である電着材層を前記第1電極に形成する電着材層形成工程と、
少なくとも前記第1電極の電着材層上に粒子層を形成する粒子層形成工程と、
前記粒子層が形成された電着材層を加熱し該加熱された前記電着材層により前記粒子層を固着する固着工程と、
を含む粒子の固着方法。
【請求項2】
前記粒子層形成工程では、前記粒子を含む溶液に前記基体を浸漬させて前記第1電極上に粒子層を形成する、請求項1に記載の粒子の固着方法。
【請求項3】
請求項2に記載の粒子の固着方法であって、
前記粒子形成工程のまえに、前記形成された電着材層を親水化処理する親水化工程、を含み、
前記粒子形成工程では、前記粒子を含む水溶液に前記基体を浸漬させて前記粒子層を形成する、粒子の固着方法。
【請求項4】
基体上に形成された第1電極上に粒子が固着した粒子固着体の製造方法であって、
前記第1電極上に対向電極を対向させた状態で熱可塑性電着物質を含む溶液に前記基体を浸漬し、前記第1電極と前記対向電極との間に電位差を設けて前記熱可塑性電着物質の層である電着材層を前記第1電極に形成する電着材層形成工程と、
少なくとも前記第1電極の電着材層上に粒子層を形成する粒子層形成工程と、
前記粒子層が形成された電着材層を加熱し該加熱された前記電着材層により前記粒子層を固着する固着工程と、
を含む粒子固着体の製造方法。
【請求項5】
前記粒子層形成工程では、前記粒子を含む溶液に前記基体を浸漬させて前記第1電極上に粒子層を形成する、請求項4に記載の粒子固着体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の粒子固着体の製造方法であって、
前記粒子形成工程のまえに、前記形成された電着材層を親水化処理する親水化工程、を含み、
前記粒子形成工程では、前記粒子を含む水溶液に前記基体を浸漬させて前記粒子層を形成する、粒子固着体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−172886(P2010−172886A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21940(P2009−21940)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】