説明

粒子ブラスト装置

【課題】噴射ノズルと対象物の距離を一定に保つことで、効率的に対象物の損傷や処理ムラを防ぐことのできる粒子ブラスト装置を提供する。
【解決手段】粒子と加圧粒体の混合流体を噴射する粒子ブラスト装置1の噴射ノズル21に、ガイドバー30を設置することで、噴射ノズル21と対象物16との適正距離の維持を容易にし、低コストで効率よく対象物の加工をおこなうことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子と加圧流体の混合流体を噴射し、対象物に衝突させて加工をおこなうブラスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子ブラスト装置は、砂・金属・樹脂・ドライアイス等の粒子と加圧流体との混合流体を対象物に衝突させ、対象物の表面加工や洗浄、塗装の剥離、成型加工品のバリ取りなどのような不要部分の取り除く加工等をおこなう装置として知られている。
【0003】
例えば、特表2008−185959号には、粒子と加圧流体の混合について粒子ブラスト装置の技術が開示されている。また、特開2009−280412号には、液化炭酸ガスからドライアイス粒子を製造して噴射する粒子ブラスト装置が開示されている。
【0004】
しかし前記の装置では、粒子と加圧流体の混合流体の噴射範囲や衝突強度が、噴射ノズルから対象物までの距離により大きく変化する。そのため、適正距離より近くなると、衝突強度が強すぎて対象物を損傷する虞や噴射範囲が狭くなり処理時間が長くなる等の不具合があり、逆に遠くなると、衝突強度が弱くなり加工性能にムラが出る虞がある。しかし、混合流体の噴射の反動や噴射ノズルの重量により前記距離を一定に保ち難いという問題があった。とくにフリーハンドでの前記距離の正確な維持は困難であった。
【0005】
また、ロボットアームや三軸移動装置等により噴射ノズル位置を制御することも可能であるが、高コストとなることや、巨大な対象物には対応が難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−185959号公報
【特許文献2】特開2009−280412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような従来の欠点に鑑み、噴射ノズルと対象物との距離の保持が容易な粒子ブラスト装置を安価に提供することを目的としている。
【0008】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、粒子と加圧流体との混合流体を製造する混合流体製造装置と、混合流体を噴射する噴射ノズル、噴射ノズルと対象物との適正距離に保持するガイドバーあるいは回転部とで粒子ブラスト装置を構成している。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、噴射ノズルにガイドバーを備えることにより、低コストで噴射ノズルと対象物との適正距離を保つことができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、ガイドバーの先端に曲部を備えることにより、ガイドバーと対象物との接触による対象物の損傷を防止することができる。また、曲部の形状により、噴射ノズルと対象物のとの角度によってその距離を調節することができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、ガイドバーの先端に円柱状または円盤状の回転部を備えることにより、ガイドバーと対象物との接触による対象物の損傷を防止することができる。また、噴射ノズルを対象物上で移動させる際に、回転部を利用してスムーズに移動させることができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、ガイドバーに替えて円柱状または円盤状の回転部を備えることにより、ガイドバーと対象物との接触による対象物の損傷を防止することができる。また、噴射ノズルを対象物上で移動させる際に、回転部を利用してスムーズに移動させることができる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、噴射ノズル先端と、ガイドバー又は回転部の先端との距離を調節できる距離調節機構を備えることで、対象物の変更等により適正距離が変更となった場合にも対応できることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を実施するための第1の形態の概略説明図。
【図2】本発明を実施するための第1の形態の噴射ノズル部分の正面図と側面図。
【図3】本発明を実施するための第2の形態の概略説明図。
【図4】本発明を実施するための第2の形態の噴射ノズル部分を拡大した正面図と側面図。
【図5】本発明を実施するための第2の形態の噴射ノズルと対象物の角度を変えた場合の説明図。
【図6】本発明を実施するための第3の形態の噴射ノズル部分を拡大した正面図と側面図。
【図7】本発明を実施するための第4の形態の噴射ノズル部分を拡大した正面図と側面図。
【図8】本発明を実施するための第5の形態の噴射ノズル部分を拡大した概略説明図。
【図9】ガイドバーの応用についての噴射ノズル部分を拡大した概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1に示す本発明を実施するための第1の形態において、粒子ブラスト装置は、ポンプやエアーコンプレッサー等の加圧流体製造装置10により製造された加圧流体を加圧流体流路11を通じて混合流体製造装置に供給し、混合流体製造装置12において前記加圧流体と粒子15と混合して混合流体を製造し、前記混合流体は混合流体流路13を通じて噴射ノズル21へ供給され、噴射ノズル21から噴射された前記混合流体と対象物16との衝突により対象物16の表面加工や洗浄、塗装の剥離、成型加工品のバリ取りなどのような不要部分の取り除く加工等をおこなう。
【0018】
このような装置では、噴射の反動や噴射ノズルの重量により噴射ノズル21と対象物16との適正距離の維持が難しいが、図2に示すガイドバー30を備えることにより前記適正距離の維持が容易となっている。
【0019】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図3から図9に示す本発明を実施するための異なる形態について説明する。なお、この本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0020】
図3に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、混合流体の製造にドライアイス粒子混合流体製造装置22を用いた点と、曲部を備えたガイドバーを用いた点で、液化炭酸ガス容器12から液化炭酸ガス流路11を通して供給される液化炭酸ガスよりドライアイス粒子混合流体製造装置22にて混合流体を製造し、図4に示す曲部31を備えたガイドバー30で噴射ノズル21と対象物16の距離を維持しながら前記混合流体を噴射している。このようなガイドバーを用いた粒子ブラスト装置は、液化炭酸ガスによる粒子ブラスト装置でも同様の効果を得ることができ、曲部31を備えたガイドバー30を用いることにより対象物表面の損傷を防止できる。また、曲部の形状により、図5の噴射距離A51と噴射距離B52に示すように、噴射ノズル21と対象物16の距離の角度によって噴射距離を調整することができる。
【0021】
本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1から第2の形態と主に異なる点は、図6に示すようにガイドバー30の先端に円柱状又は円盤状の回転部32を備えた点で、ガイドバー30と対象物との接触による対象物の損傷を防止することができる。また、噴射ノズルを対象物上で移動させる際に、回転部32を利用して、スムーズに移動させることができる。
【0022】
本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第1から第3の形態と主に異なる点は、図7に示すようにガイドバー30に替えて円柱状又は円盤状の回転部33を備えた点で、ガイドバーと対象物との接触による対象物の損傷を防止することができる。また、噴射ノズルを対象物上で移動させる際に、回転部33を利用して、スムーズに移動させることができる。
【0023】
本発明を実施するための第5の形態において、前記本発明を実施するための第1から第4の形態と主に異なる点は、図8に示すように、噴射ノズル21の先端と、ガイドバー30又は回転部33の先端との距離を調節できる距離調節機構を備えることで、対象物の変更等により適正距離が変更となった場合にも対応することができる。図8では噴射ノズル21にネジ穴を複数設けて、ガイドバー30や回転部33の固定位置を変更できるようにする方法を示しているが、長孔を用いる方法やレールを設ける方法等によっても固定位置を変更することができる。
【0024】
応用例として、図9に示すように、ガイドバー30や回転部33の先端を噴射ノズル21から外側方向に離れる構造にすることにより、噴射された混合流体19が放射状に広がる場合でも、ガイドバー30や回転部33の干渉を防止することができる。
【産業上の利用の可能性】
【0025】
本発明は粒子ブラスト装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0026】
1 粒子ブラスト装置
2 液化炭酸ガスによる粒子ブラスト装置
10 加圧流体製造装置
11 加圧流体流路
12 混合流体製造装置
13 混合流体流路
14 作業者
15 粒子
16 対象物
17 液化炭酸ガス容器
18 液化炭酸ガス流路
19 混合流体
21 噴射ノズル
22 ドライアイス粒子混合流体製造装置
30 ガイドバー
31 曲部
32 回転部
33 回転部
40 距離調節機構
41 ネジ穴
51 噴射距離A
52 噴射距離B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子と加圧流体の混合流体を噴射するブラスト装置において、噴射ノズルにガイドバーを備えることを特徴とする粒子ブラスト装置。
【請求項2】
ガイドバーの先端に曲部を備えることを特徴とする、請求項1の粒子ブラスト装置。
【請求項3】
ガイドバーの先端に、円柱状又は円盤状の回転部を備えることを特徴とする、請求項1から2の粒子ブラスト装置。
【請求項4】
ガイドバーに替えて、円柱状又は円盤状の回転部を備えることを特徴とする、請求項1の粒子ブラスト装置。
【請求項5】
噴射ノズル先端と、ガイドバー又は回転部の先端との距離について、調節できる機構を備えることを特徴とする、請求項1から4の粒子ブラスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−27969(P2013−27969A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177271(P2011−177271)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000187149)昭和電工ガスプロダクツ株式会社 (60)