説明

粒子光学装置を用いて再構成された画像の決定方法

【課題】低照射量で取得される画像の品質改善。
【解決手段】当該粒子光学装置は、粒子源101、結像される対象物111を設ける対象物面、対象物面を照射する収束系104、対象物を透過する粒子を結像させ、対象物面の画像を生成する投影系106、及び画像を検出する検出器150を有する。検出器は、画素のアレイを有する半導体センサを有する。画素のアレイは、検出器に入射する粒子に応答して、アレイの各対応する画素から複数の画素信号を供する。当該方法は、複数の画素信号を受信する手順、複数の画素信号のビタビ検出(ViterbiDetection)を用いて再構成された画像を決定する手順を有する。ビタビ検出は、検出器に入射する複数の粒子の分布に対応する複数の異なる状態、及び、少なくとも2つの状態であって、複数の画素信号の単一の画素に入射する粒子のゼロではない同一の多重度に対応する状態を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子光学装置を用いて再構成された画像を決定する方法に関する。当該粒子光学装置は、粒子ビームを生成する粒子源、結像される対象物を設けることができる対象物面、前記粒子ビームによって前記対象物面を照射する収束系、画像面上の前記対象物を透過する粒子を結像させることによって、前記対象物面の画像を生成する投影系、及び前記画像を検出する検出器を有する。前記検出器は、画素のアレイを有する半導体センサを有する。前記画素のアレイは、前記検出器に入射する粒子に応答して、前記アレイの各対応する画素から複数の画素信号を供する。
【0002】
本発明はさらに、当該方法を実行するように構成された粒子光学装置に関する。
【0003】
本発明はさらに、プロセッサシステムに当該方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0004】
TEMでは、対象物−試料とも呼ばれる−に、たとえば50keV〜400keVのエネルギーを有する電子ビームが照射される。電子の一部は試料を透過し、これらの電子は、画像面に集束されることで、前記試料の拡大像を生成する。画像面上での試料の結像は、投影系によって実現される。前記試料の結像は、たとえば103〜106倍の設定変更可能な倍率に設定可能である。一般的には、検出器−たとえばCCDカメラ又はCMOSカメラ−は、画像面内に設けられる。それにより前記画像は検出される。そのような検出器はたとえば、2次元アレイを構成するように配置された4000×4000画素を有する半導体センサを有して良い。前記検出器により、電子がCCD又はCMOSセンサの半導体チップへ入射して、電子正孔対が生成されることによって、CCD又はCMOSチップにより検出される電荷が生成される。
【0005】
一部の用途については、非常に低い電子照射量が求められる。たとえば生体材料は、8〜10秒の期間中に0.1nm×0.1nm当たり10〜30個の電子照射量で既に劣化していると考えられる。この結果、画素当たりの平均照射量は0.001〜0.1個の電子となる、検出器ではさらに低くなると考えられる。CCD及びCMOSカメラは絶えず改良されているが、信号対雑音比(SNR)及び変調伝達関数(MTF)は依然として、検出器の性能を制限するものと考えられる。TEM内の典型的な直接電子検出CMOSカメラについては、一の入射電子ビームが数千の電子正孔対を生成することができる。数千の電子正孔対は、たとえば5×5画素の面積にわたって拡散して、最終的には、5×5画素内において合計約240カウントの出力信号を生成する。その結果、点拡がり関数(PSF)は、空間サンプリング寸法(一画素)よりもはるかに大きくなりうる。以降では、PSFの長さを参照するのに、画素数で表されたPSFの幅を用いることにする。電子正孔対が5×5画素の面積にわたって拡散するとき、長さは5である。センサのナイキスト周波数の半分では、0.5未満のMTFが実現される。ナイキスト周波数でのMTFはゼロに接近する。この結果、MTFひいては解像度が失われる。第2に、中央の画素でのピークカウントは大雑把に見積もって30カウントである一方で、半導体センサの暗電流ノイズは典型的には0〜30カウントまで変化しうる。これらの低照射量である結果、SNRはおよそ1となる。これらの低照射量では、SNRとMTFの両方が画質を決定する。ノイズのレベルが比較的高いため、たとえば画像のデコンボリューションのような既知の画像改良手法は、このノイズ及び点拡がり関数から画像を巧く回復させられない。暗電流ノイズに加えて、単一の入射電子について、半導体センサ内で生成される電子正孔対の数、ひいては電子1個あたりの蓄積されるエネルギーは、広範に変化して、SNRに影響を及ぼす恐れがある。たとえば300keVの電子1個が入射する結果、電子正孔対の数は0〜80000となり、検出される電荷もそれに伴って広がる恐れがある。以降では、半導体チップの画素が検出する電荷は、対応する画素信号によって表される。このとき、その信号強度は、ある数の信号カウントを表すものとする。
【0006】
電子が画素上に存在するか否かを、その画素信号と、所謂閾値検出における所定の参照レベルとを比較することによって決定することは既知である。しかしそのような閾値検出は、照射量が低くて、かつSNRが1のときには、誤検出を生じさせてしまう恐れがある。
【0007】
点拡がり関数の効果を克服するため、点拡がり関数に似た部分応答関数を用いた部分応答(PR)検出の利用が提案されてきた。二値画像については、部分応答最尤(PRML)検出及びビタビ検出が提案されて成功してきた。しかし本願発明者は、TEMで得られた画像に適用されるとき−特にSNRが1周辺でないとき−かつ/あるいは単一入射電子の信号カウントの広がりが大きいときには、そのような既知の方法は、満足行く結果を与えないことを発見した。
【0008】
上述の方法の欠点は、到達可能な解像度について妥協する恐れがあることである。特に照射量が低いときには、各画素での入射電子の数を十分な信頼性を以て決定することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特に低照射量で、かつ、たとえば半導体センサ内での拡散によって単一の入射粒子−たとえば電子−の信号が複数の画素にわたって広がる場合でも、粒子光学装置−たとえばTEM−内の検出器によって取得される画像の品質を改善する方法を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明による方法は、複数の画素信号を受信する手順、前記複数の画素信号のビタビ検出(Viterbi Detection)を用いて再構成された画像を決定する手順を有する。前記ビタビ検出は、前記検出器に入射する複数の粒子の分布に対応する複数の異なる状態、及び、前記複数の異なる状態のうちの少なくとも2つの状態であって、前記複数の画素信号のうち単一の画素に入射する粒子の信号のゼロではない同一の多重度に対応する状態を用いる。
【0011】
前記単一の画素に入射する粒子のゼロではない多重度とは具体的には、前記複数の異なる状態のうちの少なくとも2つの状態が、前記単一の画素に入射する単一の電子に対応することである。この実施例では、ビタビ検出は、前記複数の異なる状態の第1状態及び前記複数の異なる状態の第2状態を利用して良い。前記第1状態では、単一の電子が、単一の画素に入射して、第1画素信号−つまり第1数の画素カウント−を生成する。前記第2状態では、再度単一の電子が前記単一の画素に入射するが、前記第1画素信号とは異なる第2画素信号−つまり前記第1数の画素カウントとは異なる第2数の画素カウント−を生成する。よって前記第1状態と第2状態のいずれも、単一の電子が前記単一の画素に入射する分布に関する。しかしそれぞれの信号カウントは異なる。よって当該ビタビ検出は、前記第1状態と第2状態が用いられない既知のビタビ検出とは対照的に、単一の入射電子から生成される電子正孔対の数の大きな広がり、及び、対応する検出される電荷の広がりを明らかにすることができる。
【0012】
この実施例では、「粒子」という語は、光子を含まず、ゼロではないエネルギーを有する粒子を指称する。「粒子」という語は具体的には電子に関する。当該粒子光学装置はたとえば、TEMを有して良い。
【0013】
本発明による方法の実施例では、前記異なる状態は、粒子の異なる多重度を用いてモデル化される。
【0014】
この実施例では、前記状態はたとえば、あたかも全ての電子が、実質的に同一数の電子正孔対を生成し、そのため実質的に同一の画素信号−つまり所定の信号カウント−を生成するようにモデル化されて良い。前記第1状態は、対応する所定の画素カウントを有する一の電子としてモデル化される一方で、前記第2状態は、各々が対応する所定の画素カウントを生成する2つの電子−つまり単一の電子の画素カウントの2倍のカウントが生成される−としてモデル化されて良い。前記ビタビ検出が、前記第2状態が最尤状態であると決定したとき、しかし前記ビタビ検出は、単一の電子が存在したと出力する。特に照射量が相対的に低く、かつ前記所定の信号カウントが適切に選ばれているとき、これは、再構成された画像を改善することができる。その理由は、単一の画素上に2つの電子を有する可能性は、単一の電子が、より大きな信号カウントを生成する可能性よりも顕著に小さいと考えられるからである。
【0015】
本発明による方法の実施例では、前記異なる状態は、(複数の)粒子の異なる蓄積エネルギーを用いてモデル化される。
【0016】
この実施例では、前記ビタビ検出の状態は、単一の電子が様々な画素カウントを生じさせ得ることを明らかにする。前記第1状態はたとえば、第1所定の信号カウントを有する単一の電子に関して良い。前記第2状態はたとえば、前記第1所定の信号カウントとは異なる第2所定の信号カウントを有する単一の電子に関して良い。前記第2所定の信号カウントたとえば、前記第1所定の信号カウントの2倍である。よって前記ビタビ検出は、電子が画素上に存在するか否かを決定するだけではなく、電子が存在したときに、その電子の尤もな信号カウントをも与える。
【0017】
本発明による方法の実施例では、前記異なる状態は、前記(複数の)粒子の蓄積エネルギーをモデル化する際に様々な点拡がり関数を用いることによってモデル化される。
【0018】
この実施例では、前記第1状態はたとえば、第1点拡がり関数による複数の隣接画素内で画素カウントを生成する単一の電子に関し、かつ、前記第2状態はたとえば、前記第1点拡がり関数とは異なる第2点拡がり関数による複数の隣接画素内で画素カウントを生成する単一の電子に関して良い。よって前記ビタビ検出は、単一の画素に入射する単一の電子に応答して、とり得る様々な信号カウント分布を考慮することができる。異なる点拡がり関数はたとえば、異なる相対振幅及び/又は異なる形状及び/又は異なる長さに対応して良い。
【0019】
本発明による方法の実施例では、前記異なる状態は、前記ビタビ検出の様々な反復において用いられる。
【0020】
この実施例では、前記ビタビ検出はたとえば、第1反復において、第1の大きな画素カウントとなる入射電子に対応する第1状態と、第2反復において、第2の小さな画素カウントとなる入射電子に対応する第2状態を用いる。第1反復後、全ての検出された電子からの寄与は、画素信号からモデル化され、かつ除去することができる。ここで、第1反復は高画素カウントの電子を検出し、第2反復は低画素カウントの電子を検出する。
【0021】
連続する反復で用いられる状態は、単一電子の信号レベルの減少に対応することが好ましい。
【0022】
本発明による方法の実施例では、画素のアレイは1次元アレイである。
【0023】
よって前記半導体センサは直線センサを構成する。前記直線センサはたとえば、前記画像面に沿って走査されて良い。前記直線センサを用いることは有利となりうる。ビタビ検出は、1次元における隣接画素からの寄与のみを収容すればよいので、計算の複雑さ及びメモリ要件が軽減されるからである。よって、2次元アレイが用いられ、かつ電子が2次元画素の環境に入射する状態が考慮されなければならない状況と比較して、ビタビ検出は少ない状態数を利用すれば良い。
【0024】
本発明による方法の実施例では、画素のアレイは2次元アレイで、かつ、ビタビ検出は、前記2次元アレイの画素列あたりの一連の画素信号に適用される。
【0025】
この実施例では、ビタビ検出は実質的に列ごとに動作する。ここで、ビタビ検出において考慮される状態数−つまりは計算の複雑さ及びメモリ要件−は、完全2次元ビタビ検出よりも減少する一方で、ビタビ検出を利用する利点はほとんどそのまま残る。画素信号を最適にモデル化するため、好適には、ビタビ検出は、2次元PSFを利用し、かつ、各状態について列上の画素の周辺の2次元領域内の画素の寄与を考慮する。
【0026】
本発明による方法の実施例では、画素のアレイは2次元アレイで、かつ、ビタビ検出は、前記2次元アレイの画素行あたりの一連の画素信号に適用される
この実施例では、ビタビ検出は実質的に行ごとに動作する。前記動作は、列ごとの動作と同様の利点及び効果を有する。
【0027】
他の実施例では、ビタビ検出は、列ごとに動作する第1反復、及び、行ごとに動作する第2反復を利用する。その後、前記第1反復及び第2反復の結果は、ビタビ検出の出力が得られるように結合される。前記結合はたとえば、前記第1反復及び第2反復から決定された経路長に基づく平均化又は選択を有する。
【0028】
他の実施例では、ビタビ検出の状態は、前記検出器に入射する粒子の所定の2次元分布に対応する。
【0029】
よってビタビ検出は、列又は行の各画素に入射する粒子からの寄与だけではなく、隣接する列又は行の画素に入射する粒子からの寄与−これも画素信号に寄与しうる−も決定することができる。この実施例は、ストリップ状(strip-wise)ビタビ検出と呼ばれる。
【0030】
本発明による方法の実施例では、当該方法は、1つ以上の画素への入射粒子が検出された後に、前記複数の画素信号から、前記の検出された入射粒子からの寄与を除去する工程をさらに有する。
【0031】
この実施例では、考慮されている複数の画素信号は、実質的には既に検出された電子からの寄与の影響を受けない。よって計算の複雑さ及び/又は耐久性を改善することができる。
【0032】
本発明による方法の実施例では、ビタビ検出は、PR(13531)又はPR(13531)2応答を用いる。
【0033】
前記PR応答は、計算の複雑さやメモリ要件と、ビタビ検出の性能との間で良好なバランスをとることが分かった。前記複数の半導体センサの画素の寸法及び配置は、拡散パターンが、前記PR応答に対応する点拡がり関数に実質的に対応するようになされて良い。
【0034】
代替PR応答が、用いられ、かつ前記半導体センサに入射する粒子のエネルギー堆積パターンに従って選ばれて良い。
【0035】
本発明による方法の実施例では、ビタビ検出は、ビタビ検出において用いられるPR応答に対応する点拡がり関数の長さの2〜5倍−好適には2〜4倍で、より好適には3〜4倍−の範囲の経路メモリ長を利用する。
【0036】
本願発明者らは、上述の範囲内で選ばれた経路メモリ長によって、計算の複雑さやメモリ要件と、ビタビ検出の性能との間での良好なバランスが得られることを発見した。
【0037】
本発明による方法の実施例では、前記検出器によって検出される画像は、画素当たり0.0001〜0.5−好適には0.001〜0.3で、より好適には0.01〜0.1−の範囲の粒子の照射量を有する。
【0038】
本願発明者らは、前記照射量が上述の範囲内であるときが本発明によるビタビ検出であることを発見した。これらの範囲は、良好な性能を維持しながら、十分に低い状態数、つまりは十分に低い計算の複雑さを可能にするのに適している。
【0039】
本発明による方法の実施例では、当該方法は:
− 前記対象物の第1画像を検出する際に前記検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの第1複数の画素信号を受信する工程;
− 前記第1複数の画素信号にビタビ検出を使用することから第1の再構成された画像を決定する工程;
− 前記対象物の第2画像を検出する際に前記検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの第2複数の画素信号を受信する工程;
− 前記第2複数の画素信号にビタビ検出を使用することから第2の再構成された画像を決定する工程;及び
− 前記第1の再構成された画像と第2の再構成された画像とを結合して、再構成された画像を生成する工程;
を有する。
【0040】
当該方法は:
− 前記対象物の少なくとも1つの他の画像を検出する際に前記検出に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素から他の複数の画素信号を受信する工程;
− 前記他の複数の画素信号の各々にビタビ検出を用いることから、少なくとも1つの他の再構成された画像を決定する工程;及び、
− 前記第1の再構成された画像と、前記第2の再構成された画像と、前記他の再構成された画像を結合して、再構成された画像を生成する工程;
さらに有する。よって当該方法は、前記対象物と同一の対象物の2つ以上の再構成された画像を取得及び処理し、対応する再構成された画像を結合して、再構成された画像を生成する。前記2つ以上の再構成された画像はたとえば、たとえば前記対象物への損傷を防止するように選ばれた低照射量で取得されて良い。その一方で、前記2つ以上の再構成された画像から得られた再構成された画像は、高照射量に実効的に対応することができる。これにより前記の再構成された画像の品質を改善することができる。前記第1の再構成された画像と第2の再構成された画像(と可能な場合には前記他の再構成された画像)とを結合する工程は、前記第1の再構成された画像と第2の再構成された画像(と可能な場合には前記他の再構成された画像)を追加又は平均化する工程を有して良いが、前記第1の再構成された画像と第2の再構成された画像(と可能な場合には前記他の再構成された画像)との間でのシフト及び/又は歪みを補正する工程を有しても良い。前記シフト及び/又は歪みはたとえば、結合される前記第1の再構成された画像と第2の再構成された画像(と可能な場合には前記他の再構成された画像)から決定されて良い。あるいはその代わりに前記シフト及び/又は歪みは、粒子光学装置の他の部品−たとえば投影系−により予め決定されるか、供されても良い。
【0041】
本発明による方法の実施例では、当該方法は:
− 粒子ビームを生成する工程;
− 対象物面上に結像される対象物を設ける工程;
− 前記粒子ビームによって前記対象物面を照射する工程;
− 画像面上の前記対象物を透過する粒子を結像することによって前記対象物面の画像を生成する工程;及び、
− 前記半導体センサを有する前記検出器によって前記画像を検出して、前記検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの複数の画素信号を供する工程;
を有する。
【0042】
本発明の他の態様は粒子光学装置を供する。当該粒子光学装置は:
− 粒子ビームを生成する粒子源;
− 結像される対象物を設けることのできる対象物面;
− 前記粒子ビームによって前記対象物面を照射する収束系;
− 画像面上の前記対象物を透過する粒子を結像することによって前記対象物の画像を生成する投影系;
− 前記画像を検出する検出器;及び
− 信号処理装置;
を有する。
【0043】
前記検出器は画素のアレイを有する半導体センサを有し、前記画素のアレイを有する半導体センサは、前記検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの複数の画素信号を供する。
【0044】
前記信号処理装置は、前記複数の画素信号を受信し、かつ、前記複数の画素信号にビタビ検出を用いることから再構成された画像を決定する。
【0045】
前記ビタビ検出は、前記検出器に入射する粒子の複数の分布に対応する複数の異なる状態を用いる。
【0046】
前記複数の異なる状態のうちの少なくとも2つの状態は、前記複数の画素信号のうちの単一画素へ入射する粒子の同一であってゼロではない多重度に対応する。
【0047】
前記信号処理装置は、前記検出器の一部であって良いし、又は、前記検出器とやり取りする別個のユニットとして構成されても良い。
【0048】
本発明の他の態様では、処理システムに上記方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラム製品が供される。
【0049】
本発明の上述の実施例及び/又は態様のうちの2つ以上は、有用と認められる任意の方法で組み合わせることができることは、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による装置を概略的に図示している。
【図2】典型的なビタビ検出器の状態と遷移の例を表している。
【図3】ビタビ検出器の動作を表している。
【図4】ビタビ検出器の動作を表している。
【図5】ビタビ検出器の動作を表している。
【図6】本発明の実施例においてビタビ検出器を使用した際の状態と遷移の例を表している。
【図7】図6のビタビ検出器の動作を表している。
【図8】他の実施例でビタビ検出器を使用した際の状態の例を表している。
【図9】他の実施例でビタビ検出器を使用した際の状態の例を表している。
【図10】2次元半導体センサを概略的に図示している。
【図11】本発明の実施例による2次元の動作を概略的に図示している。
【図12】本発明の実施例による2次元の動作を概略的に図示している。
【図13】他の実施例を概略的に図示している。
【図14】他の実施例でビタビ検出器を使用した際の状態の例を表している。
【図15】他の実施例でビタビ検出器を使用した際の状態の例を表している。
【図16】他の実施例を概略的に図示している。
【図17】他の実施例を概略的に図示している。
【図18】AとBは、画素信号の信号レベルを概略的に図示している。
【図19】本発明による方法のシミュレーション結果を表している。
【図20】本発明の実施例による方法の概略を表している。
【図21】他の実施例を概略的に表している。
【図22】コンピュータプログラム製品を有するコンピュータにより読み取り可能な媒体を表している。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、本発明による装置を概略的に図示している。図1は、管121を介して真空ポンプ122によって排気される真空筐体120を有するTEMを表している。電子源101の形態をとる粒子源は、粒子光学軸100に沿った電子ビームを生成する。粒子源は、たとえば電界エミッタ銃、ショットキーエミッタ、又は熱電エミッタのような任意の種類の電子源であって良い。電子源はたとえば、電界エミッタ銃、ショットキーエミッタ、又は熱電エミッタであって良い。続いて電子は、典型的には80〜300keVの調節可能なエネルギーにまで加速される。ただしたとえば50〜500keVの調節可能なエネルギーの電子を用いるTEMも知られている。偏向器102が、粒子ビームを、ビーム制限アパーチャ103上の中心に位置づける。ビームは続いて、2つのレンズ104を有する収束系を通過する。
【0052】
試料111はマニピュレータ112によって保持される。それにより対物レンズ105の対象物面内に試料111が設けられる。試料111は、レンズ106を有する投影系によって、蛍光スクリーン107上に結像され、かつ、窓108を介して観察することができる。蛍光スクリーン107は、ヒンジ109と接続し、かつ収縮/折り畳むことができる。それにより投影系により生成された画像は、検出器150上で結像される。投影系は、蛍光スクリーン上ではなく、検出器150上に画像を生成するように再集束される必要があることも考えられることに留意して欲しい。蛍光スクリーン上又は検出器上に生成された画像は一般的には、103〜106倍の倍率を有し、0.1nm以下の詳細を表すことができる。投影系は中間画像を生成しても良いことにさらに留意して欲しい。
【0053】
検出器150は、衝突する電子を検出する半導体センサ151−たとえば電荷結合素子(CCD)又はCMOS素子−を有する。半導体センサ151は、2次元アレイをなすように配置された複数の画素(図1には図示されていない)を有する。一の入射電子は、たとえば5×5画素のアレイの領域にわたって拡散する数千の電子正孔対を生成することができる。ここで電荷は、画素信号を生成するように収集される。画素信号は、「生の画素データ」又は「データサンプル」と呼ぶことができる。複数の画素信号は「生の画像」と呼ぶことができる。検出器150はさらに、画素信号を処理して、改善された画像を決定し、検出器150に入射する電子の分布の再構成を表す信号処理装置を有する。改善された画像はさらに、「出力画像」と呼ぶことができる。
【0054】
代替実施例では、複数の画素は、他の配置−たとえば直線センサを構成する1次元アレイ−をなすように配置されても良いことに留意して欲しい。直線センサは、1つの2次元画像を構成する一連の1次元画像を得るように、投影画像に対して可動であって良い。
【0055】
図1は、典型的なTEMのみを概略的に表しており、かつ、実際には、TEMは、多くの偏向器やアパーチャ等を有していることに留意して欲しい。対物レンズ105の収差を補正する補正器を備えるTEMも知られている。前記補正器は、多重極の環状レンズを用いる。また他の検出器−たとえば2次電子検出器やX線検出器等−が用いられても良い。これらの検出器は、前記電界エミッタ銃に対向する試料の面に設けられて良いし、又は検出器150に対向する試料の面に設けられても良い。
【0056】
図1はさらに、入力手段170−たとえばキーボードやマウス−、及び、視覚化手段175−たとえばディスプレイスクリーン−を有するユーザーインターフェースシステム−ここではコンピュータとして表されている−とTEMを接続するインターフェースデバイス160をさらに図示している。ユーザーインターフェースシステムはまた、取り外し可能な固体ストレージ−たとえばUSBスティック−との接続及び/又はネットワーク−たとえばインターネット又はローカルネットワーク−との接続を行うインターフェースデバイスのみならず、記憶デバイス−たとえばハードディスクドライブや光学ディスクドライブ−をも有して良い。さらにインターフェースデバイス160が信号処理装置と接続することで、ユーザーは、前記信号処理装置の設定を適合させることが可能となる。さらにインターフェースデバイス160は、ユーザーインターフェースデバイスからTEMを操作する−たとえばユーザーが、TEMの部品−たとえば真空ポンプ122、電子源101、マニピュレータ112、及びヒンジで接続されたスクリーン107−を動作させる入力手段を用いたコマンドの入力を可能にする−ため、TEMと接続する。
【0057】
信号処理装置は、生の画像を処理し、検出器150に入射する電子の分布の再構成を表す出力画像を決定する。閾値検出器を用いて生の画素信号を処理することは既知である。前記閾値検出器は、各生の画素信号と所定の閾値とを比較し、前記生の画素信号が前記所定の閾値よりも大きいときには、入射電子が存在したと判断する。他方、前記生の画素信号が前記所定の閾値よりも小さいときには、入射電子は存在しなかった判断される。しかしそのような閾値検出は、信号対雑音比が、雑音(前記所定の閾値未満の生の画素信号)と電子の存在(前記所定の閾値よりも大きい生の画素信号)とを識別するのに十分な程度に大きいときにしか、十分な性能を示さない。しかし照射量が低いとき、そのような閾値検出は満足な性能を示さない。しかも一の入射電子は、半導体センサ内の複数の隣接する画素内で信号を発生させる。これらの信号は、点拡がり関数によって特徴付けられ、かつ、符号間干渉(ISI)と呼ばれる。そのようなISIを調節するデコンボリューション法を用いることが知られている。しかし既知のデコンボリューション法は、信号対雑音比が不十分なときには満足な性能を示さない。
【0058】
2値データに対応する1次元信号についてのみならず、2値データに対応する2次元信号についても、ビタビ検出として知られた信号処理法を用いることが知られている。ビタビ検出器は、動的計画法として知られている方法を用いることによって、効率的に最尤検出を実行する。ここでビタビ検出器は、データサンプル列上で動作する。データ記憶においては、このデータサンプル列は、時間領域におけるデータサンプル列に対応するが、画像再構成の他の実施例では、データサンプル列は隣接画素列に対応する。状態の概念はビタビ検出の中核である。状態とは、元のデータの取り得る分布に相当する。例については後述する。次のデータサンプル列を考慮するとき、現在のデータサンプルの取り得る(複数の)状態と次のデータサンプルの取り得る(複数の)状態との間での遷移が考慮される。係る遷移の尤度を表すため、各遷移に重みが与えられて良い。その重みは、実際の画素の状態と該画素の状態のモデルとの間の差異の評価から決定することができる。前記画素の状態のモデルはたとえば、前記画素信号の計算によって表されて良い。前記状態についての画素信号の計算は、雑音を無視して前記状態に対応する元のデータの分布の寄与をモデル化するモデルを用いることによって行われる。これにより、モデル化された画素信号が得られる。よって前記重みは、実際の画素信号とモデル化された画素信号との間の差の絶対値として決定することができる。各状態についての前記重みは、実際の画素信号と複数のモデル化された画素信号の1つの信号との差として計算することができる。実際の分布を表す状態については、重みは実質的に単なる雑音に過ぎない。他の状態については、その値は大きく異なってくる。性能を改善させるため、ビタビ検出器は、単一の画素とすべての取り得る状態との比較に基づいて決定せずに、代わりに状態の列を用いる。連続する状態列の数は、経路メモリ長と呼ばれる。経路メモリ長は、PSFの長さの2〜5倍であることが好ましく、3〜4倍であることがより好ましい。状態列は、各々が各対応する重みを有する連続する状態間の遷移を含む。係る列では、(一のデータサンプルから次のデータサンプルへの)一の遷移に係る重みは、「分岐距離(branch metric)」と呼ばれる。状態列の全ての重みの総和は「経路距離(path metric)」と呼ばれる。状態列と連続する状態間の遷移は、トレリス図と呼ばれる。ビタビ検出は、トレリス図による最短経路距離を有する経路の発見に関する。完全最尤検出器は、トレリス図によって全ての取り得る経路を評価し、追跡する。ビタビ検出器の複雑さは、最低距離を有する経路となるそれらの経路を追跡することによってのみ減少する。ビタビ検出器は、各状態について、トレリスに従って、どの経路がその状態への最小の経路距離を有するのかを判断し、それらを「生存者経路」として維持する。その一方で、他の経路はさらなる利用から除外される。
【0059】
ビタビ検出は、データ記憶及び移動体通信向けに発展してきた。このため、系の特性がモデル化できる場合には、ビタビ検出は、符号間干渉を調節することができる。ここで既知の種類のビタビ検出について説明する。例は、2値入力信号を有する典型的な系に関する。点拡がり関数PSF=(121)は、各データ値が’1’である結果、隣接データサンプルにおける相対的な信号寄与が1:2:1になるものと定義される。他方データ値が’0’であれば信号の寄与はない。その系は白色雑音を有する。さらにその系は、少なくとも2つの’0’と2つの’1’が存在しなければならないというランレングスの制約により特徴付けられる。
【0060】
図2は、そのような典型的なビタビ検出器の状態と遷移の例を表している。
【0061】
図2に図示されているように、ビタビ検出器は複数の状態200を有する。複数の状態200は、s0で表される1つの状態、及び、s1、s2、s3で表される3つの状態で構成される。状態s0は3つの連続する’0’のデータ値を有する。状態s1、s2、s3は、1つの’1’のデータ値及び2つの’0’のデータ値を有する。状態s0、s1、s2、s3はまた、’000’、’001’、’010’、及び’100’と表されても良い。図2は、ランレングス制約が、複数の状態200から次の複数の状態202への複数の遷移204を定義することを示している。状態s0は、遷移t00とt01によって表されているように、s0又はs1にのみ続くことができる。状態s1は、遷移t12によって表されているように、s2にのみ続くことができる。状態s2は、遷移t23によって表されているように、s3にのみ続くことができる。状態s3は、遷移t30とt31によって表されているように、s0及びs1にのみ続くことができる。
【0062】
図3及び図4は、ビタビ検出器の動作を表している。
【0063】
図3は、四角で表された、’0’又は’1’の値を有するk=0,…,9の複数の連続する入力データ値222を表している。k<0では、すべての入力データ値は0とする。図3はまた、対応するデータサンプルrk224をも表している。破線の四角230は、ビタビ検出器の第1検出についての経路メモリ長Lにわたって考慮されるデータサンプルの範囲を表している。モデル化された雑音のない検出器の値xiは、PSF=(121)を入力データ値で畳み込みを行うことによって得ることができる。よって各状態の中心画素では、状態s0、s1、s2、及びs3は、モデル化された雑音のない検出器の値である、x0=0、x1=1、x2=2、x3=1に対応する。
【0064】
図3はまたトレリス210をも表す。トレリス210は、連続する状態間のすべてのとりうる遷移を表す。トレリス210はまた、生存者経路216をも表す。生存者経路216とはつまり、トレリス210に沿った、次に向かうべき状態までの分岐長さの合計が最小となる経路を有する。分岐長さBMとして、モデル化された雑音のない検出器の値xiとデータサンプルrkとの間の差の絶対値が用いられる。つまり、
BM=|xi-rk|
である。
【0065】
当業者は、別な分岐長さBM’を用いることができることを理解する。たとえば、
BM’=(xi-rk)2
である。
【0066】
一例として、k=0では、入力データ値はa0=1で、雑音のない検出器の値は、x0=0、x1=1、x2=2、x3=1で、r0=2である。よって分岐長さBM=|xi-rk|は、BM(s0)=2、BM(s1)=1、BM(s2)=0、BM(s3)=1である。よって次の状態であるs0へ向かう生存者経路は、対応する分岐長さが2と1である遷移t00とt30からの最小値として選ばれる。k=1でs0に到達するため、s3からの遷移t30からなる経路のみが、候補の経路として残る一方で、s0からの経路は棄却される。k=1でs1、s2、及びd3へ至る他の生存者経路はそれぞれ、t31(t21とt31の遷移の最低BM)、t12(s2への唯一可能な遷移)、及びt23(s3への唯一可能な遷移)である。同様に、k=2,…,9での状態への生存者経路は、実線の矢印216で表され、すべての棄却される経路は、破線矢印214で表される。
【0067】
ビタビ検出器は、経路メモリ長さに沿ったすべての生存者経路のうちどの経路が最低経路長を有するのかを判断する。図示された例では、k=8での経路長はそれぞれ、s0まで3で、s1まで3で、s2まで2で、s3まで0である。よってs3へ至る経路は、実際の状態の列を表す最大尤度を有する経路として選ばれる。ビタビ検出器は、k=0での本来の状態へ戻るこの経路を追跡して、k=0での状態s2−つまり’010’−を発見する。この状態の最も左側の値−つまり’0’−は、先の位置での出力の値として出力される。よってk=-1での再構成された出力値は’0’に等しい。
【0068】
続いてビタビ検出器は、図4に図示された状況を得るため、次のデータサンプルへ移動する。破線の四角231は、ビタビ検出の第2検出と考えられるデータサンプルの範囲を表す。
【0069】
図4のトレリス211はトレリス210に対応する。k=0からk=1への遷移は棄却され、k=8からk=9への新たな分岐長さが計算され、トレリス211は対応する生存者経路を有するように拡張する。s0とs1のいずれも、k=9で0の経路長を有するのを観察することができる。いずれもk=1でs3を起源とする。よってビタビ検出器は、k=1での状態s3−つまり’100’−を発見し、k=0での再構成された出力値を’1’として出力する。
【0070】
ビタビ検出器は、すべての出力値が決定されるまで続けられて良い。考慮されているデータサンプルの範囲のうちの最も右側の値が、列の最後の値であるとき、ビタビ検出器は、最後の9の状態についての出力として完全な経路を出力して良い。あるいはその代わりに、ビタビ検出器は、後続のデータサンプルについてak=0を用いて良い。
【0071】
ある系のモデルが、入力データ値akのとり得る分布の各々についての雑音のない検出器の値xiを十分正確にモデル化する一方で、真の入力信号と雑音とを十分に識別することが可能なものである場合、上述のビタビ検出器は、その系にとって非常に有効となりうる。係るビタビ検出器及び同様のビタビ検出器は、多量のISI−つまり複数のデータサンプルの点拡がり関数−を有する1次元2値データについてのISIから回復させるのに首尾良く用いることができる。また係るビタビ検出器及び同様のビタビ検出器は、2次元2値データ−たとえば識別に用いられるスマートコード−の再構成を行うのに首尾良く用いることができる。2次元データについては、ビタビ検出器はたとえば細片状で用いられて良い。つまりビタビ検出器が列に沿って用いられ、かつ、確実な判断が列ごと又は細片毎に行われて良い。しかし上述のビタビ検出器は、TEM画像には十分機能しない。
【0072】
図5は、典型的な1次元TEM画像に対しての上述のビタビ検出器の性能を表している。当該ビタビ検出器は、図3及び図4で説明したビタビ検出器と同一の状態及び同一の遷移を用いる。これらの状態及びそれらの分岐長さにおいて、モデル化された信号レベルは、単一の入射電子から発生した信号レベルの分布のピーク信号レベルEpeakとして定義される。ここでモデルは、300keVの電子が入射する結果、0〜80000の任意の数の電子正孔対と、対応する検出された電荷分布が生じる。その分布はランダウ関数に似て、信号レベルEpeakで強いピークを示す。値が’0’又は’1’であるk=0,…,9の連続する入力データ値ak222は、四角で表され、対応する画素の電子の存在又は不存在を示す。図5はまた、図3から得られた値と等しい対応するデータサンプルrk224aをも表している(ただしk=0及びk=1の位置に関するr0及びr1は等しくない)。本願発明者は、r0及びr1での値が異なっているのは、センサ内での電荷量を、Epeakに対応する電荷量よりもはるかに大きくする電子が起源になっていると考えている。この典型的な状況について、トレリス及び最小経路長を有する経路が図5に表されている。同一の最小経路長を有する2つの経路が得られたことが分かる。前記2つの経路のうちの一はs2を起源とし、前記2つの経路のうちの他はs3を起源とする。ビタビ検出器にとっては、いずれの経路も同一の尤度を有する。よってビタビ検出器は、状態s2に従って’0’を出力しても良いし、又は、状態s3に従って’1’を出力しても良い。しかしk=0では単一の電子が存在するので、正しい出力は’1’である。よってビタビ検出器は、誤って’0’を出力する恐れがある。
【0073】
図6に図示されているように、ビタビ検出器は複数の状態300を有する。複数の状態300は、s0で表される1つの状態、s1、s2、s3で表される3つの異なる状態、及びs4、s5、s6で表される3つの異なる状態で構成される。状態s0は3つの連続する’0’のデータ値を有する。状態s1、s2、s3は、1つの’1’のデータ値及び2つの’0’のデータ値を有する。状態s4、s5、s6は、1つの’2’のデータ値及び2つの’0’のデータ値を有する。図6はまた、すべてのとり得る遷移304をも表す。それにより、トレリス図を完全に定義することが可能となる。
【0074】
第1実施例では、図6の四角内に表示された数値は、単一の画素に入射する電子の数を表している。よって図2と比較すると、図6の状態は、2つ以上の電子が同一画素に入射する状態−つまり状態s4、s5、s6−に拡張されていることが分かる。この実施例によると、新たなトレリスが構築され、かつ、対応するビタビ検出器は、最小経路長になるものとしてk=1での状態s6=’200’を得る。トレリスは図7に図示されている。よってビタビ検出器は対応する画素に2つの電子が存在することを示す出力’2’を結果として得る。ビタビ検出器から出力が得られた後、第1実施例による方法は、ビタビ検出器からの出力を解析し、ゼロではない出力の値のすべてを’1’に修正する。これにより単一画素に2つの電子が同時に入射する率が低いと仮定すると、画素あたりの電子の最尤多重度−2ではなくただの1−が、当該方法の出力として用いられて良い。よってこの第1実施例では、ビタビ検出器の複数の異なる状態は、当該方法の出力としての入射電子の同一多重度(この場合では1)に関する。前記異なる状態は、異なる多重度の電子を用いてモデル化される。低照射量−たとえば画素あたり0.01電子−で、かつ、適切に選択された参照レベルでは、単一画素に2つの電子が入射する頻度は、2倍に蓄積されたエネルギーを有する1つの電子が入射する頻度よりも顕著に−たとえば数桁−低いと考えられる。
【0075】
第2実施例では、図6の四角に表示された数値は、単一画素に入射した単一の電子に与えられるエネルギーの箱(energy bin)の数を表す。よって図2と比較して、状態は、単一の電子が同一の画素に入射するが、典型的なエネルギーがそれぞれ異なる状態−つまり状態s4、s5、s6−に拡張されるのが分かる。この実施例によると、新たなトレリスが構築され、かつ、対応するビタビ検出器は、最小経路長になるものとしてk=1での状態s6=’200’を得る。トレリスは図7に図示されている。よってビタビ検出器は対応する画素に2つの電子が存在することを示す出力’2’を結果として得る。よってこの第2実施例では、ビタビ検出器の複数の異なる状態は、当該方法の出力としての入射電子の同一多重度(この場合では1)に関する。前記異なる状態は、異なる蓄積エネルギーの(複数の)電子を用いてモデル化される。
【0076】
他の実施例では、前記異なる状態は、(複数の)粒子の蓄積されたエネルギーをモデル化する際に異なる点拡がり関数を用いてモデル化される。前記異なる点拡がり関数はたとえば、異なる振幅を有して良い。それにより異なる蓄積エネルギーを有する(複数の)電子がモデル化される。
【0077】
図8は、図6に図示された状態と同一の状態を用いる第3実施例を表している。第3実施例では、ビタビ復号器が複数の反復において動作する。各反復では、状態s0は複数の異なる状態と共に用いられる。前記複数の異なる状態のうちの各々は、1つの特定のデータ値(3つの状態すべてについて同一の値)及び2つのデータ値’0’を有する。前記異なる状態の各々についての前記特定のデータ値は、各異なる位置に存在する。第3実施例は、図3に図示された例を用いて表される。その例は、列350内の蓄積されたエネルギーの箱’0’、’1’又は’2’と、対応するデータサンプル352でラベル付けされた電子の分布を表す。図示された例では、ビタビ復号器は、第1反復において、第1複数360の状態s0、s4、s5、及びs6で動作する。状態s4、s5、及びs6は、第1実施例における状態と同様に定義されて良いし、あるいは第1実施例における状態と同様に定義されても良い。よって第1反復においては、ビタビ復号器は、状態s4、s5、及びs6に対応するエネルギーを有する電子のみ有効に再構成し、状態s4、s5、及びs6に対応するエネルギーを有する電子を再構成しない。よって状態数は4に減少し、遷移数は6に減少する。それによりトレリスは、第1及び第2の実施例に係るトレリスと比較して顕著に単純化される。ビタビ復号器は、前記第1反復から、たとえば図示されているように370でE2によって表される2つの電子を出力する。これは、372に図示されたデータ値に対応する。その後検出された電子に対応するデータ値372は、対応する元のデータ値352から差し引かれ、その結果残りのデータ値376となる。続いて残りのデータ値376は、第2複数380の状態s0、s1、s2、及びs3を有するビタビ復号器の第2反復への入力として用いられる。ビタビ復号器は、前記第2反復から、たとえば図示されているように390でE1によって表される2つの電子を出力する。その後前記第1反復及び第2反復の出力が加えられることで、390で示された完全な出力となる。4つの電子全て−2つの電子の蓄積されたエネルギーはE2付近で、1つの電子の蓄積されたエネルギーはE1付近である−が再構成された。よって前記第3実施例では、ビタビ復号器の複数の異なる状態は、当該方法の出力としての入射電子の同一多重度(この場合では1)に関する。各異なる状態は、ビタビ復号器の各異なる反復において用いられる。
【0078】
図9は、第4実施例の状態を表している。第4実施例は、第1実施例と同一の状態のみならず、さらに異なる状態s7、s8、及びs9をも有する。状態s7、s8、及びs9の各々は、2つのデータ値’2’と1つのデータ値’0’を有する。よって状態s0-s9は、0〜2個の電子を有する10の異なる状態を定義する。第1実施例のように、ビタビ検出器からの出力を得た後、第4実施例による方法は、ビタビ検出器からの出力を解析し、すべてのゼロではない値を’1’に調節する。これにより、単一の画素に2つの電子が同時に入射する確率は低いと仮定すると、画素あたりの最尤多重度−つまり2ではなく1−が、当該方法の出力として用いられて良い。よって第4実施例では、ビタビ復号器の複数の異なる状態は、当該方法の出力と同一の入射電子の多重度(この場合では1)に関する。前記異なる状態は、単一の画素に入射する異なる多重度の電子を用いてモデル化される。第4実施例の利点は、メモリ要件の増大と計算負荷の増大を引き起こす状態数の増加という犠牲を払って、照射量を大きくするように調節できることである。
【0079】
本発明は、上述の典型的な実施例に限定されず、たとえば他のPSF及び3以上の電子の多重度又は3以上のエネルギーの箱をも含む。
【0080】
上述の実施例は、1次元データ列を用いた。上述の実施例は、たとえば以降で説明するような画素の2次元アレイから得られる2次元データ列に拡張されて良い。
【0081】
図10は、複数の行と複数の列で構成されたマトリックス500内に配列された複数の画素の2次元半導体センサを概略的に図示している。ここで各列には、R0-R12の記号が付されている(15の行が表されているが、番号は付されていない)。4つの電子がセンサに入射し、その結果、501、502、503、及び504で表される3×3の画素で構成される4つの領域が現れる。各電子により生成される電子正孔対は、2次元点拡がり関数PSF2=(121)2に従った分布を有する電荷を生成するように拡散する。よって領域501-504内の1,2の数字は、全ての周囲の画素に対する、各領域の中心画素に入射する電子の相対的な寄与を表している。
【0082】
図10-図12は、本発明の他の実施例によるビタビ検出を用いた2次元方法の動作を概略的に表している。
【0083】
列に沿って、ビタビ検出器は、上述した1次元データサンプル列での動作と同様の動作を行う。上述した1次元データサンプル列での動作では、順次処理される1次元データサンプル列については、列上の隣接する画素は、矢印520で示された方向に処理される。図11及び図12の影付け領域510は、検出が完了した領域を表す。3×3領域501に対応する第1電子511、3×3領域502に対応する第2電子512、及び3×3領域503に対応する第3電子513が検出された。好適には、対応する3×3領域内での画素信号への(モデル化された)寄与は、その3×3領域内のデータサンプルから差し引かれる。これによりさらに他の検出に用いられるデータサンプルへの寄与は除去される。さらなる電子は領域510の残りの部分では検出されない。ここでビタビ検出器は、トレリス、そのトレリスの分岐長さ、及び、530-0で表された画素から530-8で表された画素までの経路メモリ長にわたって延びる領域530での画素列の状態を解析する。本発明の実施例では、ビタビ検出器は、画素530-0〜530-8の各画素の周囲の所定の領域を用いることによって、状態の分岐長さを計算する。前記所定の領域のサイズは、実質的にPSFに対応することが好ましい。これにより、各画素に対する所定の領域内の位置での電子の全寄与は、合計され、かつ、その画素の状態に従って合計画素信号をモデル化する。ビタビ検出器はたとえば、図14又は図15に図示された複数の状態を用いて良い。
【0084】
図12を参照しながら説明した実施例では、ビタビ検出器は列状に動作する。つまりビタビ検出は、2次元アレイの画素列あたりの画素信号列に適用される。他の実施例では、ビタビ検出器は行状に動作する。つまりビタビ検出は、2次元アレイの画素行あたりの画素信号列に適用される。
【0085】
図14は、PSF=(121)2を用いた第1の別な実施例において用いられる複数の状態560を概略的に表している。複数の状態560は、センサの3×3領域上に入射する電子の分布を表す。図15は、第2の別な実施例において用いられる別な複数の状態580を概略的に表している。ビタビ検出器がすでに判断した画素に対応する影付け領域が、電子を有することも考えられる。しかしその電子の寄与は、影付け領域のみならず非影付け領域においても差し引かれているので、その存在は、一般性を失うことなく無視することができるということに留意して欲しい。そのような寄与が差し引かれない一方で、電子が検出されるときには、その状態の中心画素への寄与も考慮しなければならない。しかしその存在についての判断が既に行われたので、状態の定義における変数として影付け領域を考慮する必要はない。
【0086】
図14は、PSFが3×3領域で用いられる第1の他の実施例に関する。PSFは、参照番号569と共に影付けされて表されている。図14の複数の状態560は、電子の存在しない1つの状態561、異なる6の位置の各々に1つの電子を有する6の異なる状態562、1つの状態内で単一の位置(ただし状態間では異なっている)に2つの電子(又は2倍のエネルギーを有する1つの電子)を有する6の状態563、及び、任意で各異なる位置で2つの電子を有する15の異なる状態564、を有する。
【0087】
図15は、同一のPSF=(121)2が用いられるが、状態は1+3+1画素の十字形状の領域に基づいて定められる第2の別な実施例に関する。PSFは、参照番号579と共に破線で表されている。図15の複数の状態580は、電子の存在しない1つの状態571、異なる4の位置の各々に1つの電子を有する4の異なる状態572、1つの状態内で単一の位置(ただし状態間では異なっている)に2つの電子(又は2倍のエネルギーを有する1つの電子)を有する4の状態573、及び、任意で各異なる位置で2つの電子を有する6の異なる状態574、を有する。
【0088】
照射量、許容される又は必要とされる計算上の複雑さやメモリ要件等に依存して、ビタビ検出器は、図14の状態又は図15の状態のいずれかを用いて良い。
【0089】
図9を参照しながら説明した第3実施例と同様に、2次元PSFについても、ビタビ復号器は、反復毎に、異なる多重度の電子又は異なるエネルギーの箱を用いることによって、複数の反復を行って良い。
【0090】
図16及び図17は、図10乃至図15の実施例と同様な(ただし点拡がり関数は図10乃至図15の実施例のよりも広がっている)本発明の別な実施例によるビタビ検出を用いた2次元方法の動作を概略的に表している。
【0091】
図16は、複数の行と複数の列で構成されたマトリックス600内に配列された複数の画素の2次元半導体センサを概略的に図示している。ここで各列には、R0-R12の記号が付されている(15の行が表されているが、番号は付されていない)。4つの電子がセンサに入射し、その結果、601、602、603、及び604で表される5×5の画素で構成される4つの領域が現れる。各電子により生成される電子正孔対は、2次元点拡がり関数PSF3=(13531)2に従った分布を有する電荷を生成するように拡散する。このPSFは、約15μm×15μmサイズの4k×4kの画素と、厚さが15μmの活性層を有する典型的なCMOSセンサ内での実際の拡散に非常に似ている。よって領域501-504内の1,2の数字は、全ての周囲の画素に対する、各領域の中心画素に入射する電子の相対的な寄与を表している。影付け領域610は、検出が完了した領域を表す。3つの電子611、612、613が既に検出されている。
【0092】
当該方法は、画素631の値を判断する段階に進む。ここでビタビ検出器は、トレリス、そのトレリスの分岐長さ、及び、630-0で表された画素から630-8で表された画素までの経路メモリ長にわたって延びる領域630での画素列の状態を解析する。本発明の実施例では、ビタビ検出器は、画素630-0〜630-8の各画素の周囲の所定の領域を用いることによって、状態の分岐長さを計算する。前記所定の領域のサイズは、実質的にPSFに対応することが好ましい。これにより、各画素に対する所定の領域内の位置での電子の全寄与は、合計され、かつ、その画素の状態に従って合計画素信号をモデル化する。ビタビ検出器はたとえば、図17に図示された複数の状態の実施例のうちの1つを用いて良い。領域604内の数字1,3,5は、すべての周囲の画素に対する領域604の中心画素に入射する電子の相対的な寄与を表す。
【0093】
図17は、ビタビ検出器の状態を定義する3つの異なる実施例を概略的に表している。図中の?マークは、電子が入射した可能性のある分岐長さを決定するのに用いられる画素列のうちの1つの画素周辺の範囲内に属する位置を表す。図14のように、影付け領域は、ビタビ検出器が既に、(以前の列又は同一の列上の前の画素を走査したときに)判断した画素に対応する。状態数は、許容される電子の合計数及び1つの電子について許容される位置の数と共に増加する。しかし、多数の許容される電子及び/又は多数の許容される位置は、照射量が増大する際には好ましいと考えられる。
【0094】
実施例661は、0〜複数の電子を有しうる15の異なる位置のうちの1つ以上を有する状態を概略的に表している。実施例662は、0〜複数の電子を有しうる13の異なる位置のうちの1つ以上を有する状態を概略的に表している。実施例663は、0〜複数の電子を有しうる9の異なる位置のうちの1つ以上を有する状態を概略的に表している。
【0095】
図18A及び図18Bは、1つの電子が典型的な半導体センサの画素に入射したときの画素からの信号レベルの発生頻度を概略的に表している。信号レベルは、横軸に沿って増大する。相対発生頻度は縦軸に沿って増大する。曲線702は、信号レベルの発生頻度を表す。曲線702は略ランダウ分布である。曲線702は、Epeakで表された信号レベルで明確なピークを示している。矢印704は、半導体センサの暗電流雑音を表している。
【0096】
図18A及び図18Bはまた、エネルギーの箱を定義するのに用いられる参照レベルの例又は内部状態において用いられる電子の多重度の例をも表している。以降、本願明細書においては、ある状態における単一画素上の「電子の個数」を定める参照レベルが参照される(第1実施例を参照のこと)。しかし当業者は、これが、ある状態における電子の「エネルギーの箱」と解されて良いと理解するだろう(第1実施例を参照のこと)。
【0097】
図18Aでは、ある状態の単一画素内の電子数が1である参照レベルE1は、曲線702のピークEpeakに対応するように選ばれる。しかし、雑音レベルは、ピーク値の半分を十分に超えて広がっているのも観測される。よって参照レベルについてそのような選択を用いることは、実際には電子はその検出器に入射していないのに電子が検出されてしまう「偽陽性」の危険性が比較的高くなる恐れがある。しかし利点として、そのような選択では、電子が存在するにもかかわらずその電子が検出されない「偽陰性」のおそれは相対的に非常に低い。従って高い画素信号を有する−つまりエネルギーの蓄積が大きい−電子をも十分な信頼性を以て検出するため、1つの画素に2〜5の電子が存在する参照レベルE2、E3、E4、及びE5は、状態を定めるように選択及び使用される。よって図18Aの実施例では、
En=n*Epeak、n=1,…,N
となる。Nは4以上であることが好ましい。
【0098】
図18Bでは、ある状態の単一画素内の電子数が1である参照レベルE1は、曲線702のピークEpeakの値の2倍に対応するように選ばれる。他の参照レベルはE1の整数倍として選ばれる。すなわち、
En=n*Epeak、n=1,…,N
となる。Nは2又は3であることが好ましい。参照レベルをそのように選ぶことで、状態数は顕著に減少するが、蓄積エネルギーの低い複数の電子が電子として検出されず、雑音として無視される危険性もある。
【0099】
他の参照レベルの選択が用いられても良いことに留意して欲しい。参照レベル及びその数の選択はたとえば、ビタビ検出の利用可能な資源−たとえば計算能力、利用可能なメモリサイズ、及び画像あたりの利用可能な計算時間−又は再構成された画像の必要な画像品質に基づいて選ばれて良い。
【0100】
図19は、本発明による方法のシミュレーション結果を表している。シミュレーションに用いられる方法では、0.01の照射量−つまり100画素あたりの平均電子数が1−、状態あたり15の位置(図17の661を参照のこと)、状態あたり最大2つの電子が用いられる。単一電子の参照レベルは、曲線701のピーク値の2倍として選ばれる。シミュレーションは、TEMで用いられるCMOS半導体センサと、そのような低照射量で生体試料を解析するときの典型的エネルギーの電子を利用する。図19は、得られた分解能の指標である変調伝達関数を表している。横軸は、繰り返しパターンの頻度に対応し、かつゼロからナイキスト周波数まで延びる。縦軸は、繰り返しパターンからの相対出力レベルである。検出器自体−つまり生データ信号−のMTF900は、ナイキスト周波数の1/2よりも既に小さい。しかしビタビ検出器の出力902は、ナイキスト周波数までは、0.8よりも大きいままである。よってビタビ検出器は、線904で示されたセンサの画素の分解能を完全に回復することを可能にする。
【0101】
図20は、本発明の実施例による方法の概略を表している。
【0102】
図20に図示された方法1は:
− 粒子ビームを生成する手順10;
− 対象物面上に結像される対象物111を設ける手順20;
− 前記粒子ビームによって前記対象物面を照射する手順30;
− 画像面上の前記対象物を透過する粒子を結像させることによって前記対象物面の画像を生成する手順40;
− 前記半導体センサを有する検出器によって前記画像を検出して、前記検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの複数の画素信号を供する手順50;
− ビタビ検出器によって前記複数の画素信号を受信する手順60;及び
− 前記ビタビ検出器による前記複数の画素信号のビタビ検出を行うことで、再構成された画像を決定する手順70;
を有し、
前記ビタビ検出は、前記検出器に入射する複数の粒子の分布に対応する複数の異なる状態、及び、前記複数の画素信号のうち同一のゼロではない複数の入射粒子が単一の画素に入射する際の多重度に対応する、前記複数の異なる状態のうちの少なくとも2つの状態を用いる。
【0103】
前記決定する手順70は、上述の実施例のうちのいずれか1つ、上述の実施例のうちの2つ以上の有用な組み合わせ、若しくは、上述の実施例のうちの任意の1つの修正型、又は、これらの組み合わせに従って実行されて良い。図21は、他の実施例を概略的に表している。図21の実施例では、当該方法は、対象物1の第1画像を検出する際に検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの第1複数の画素信号を受信する手順61、及び、前記第1複数の画素信号のビタビ検出を用いて第1の再構成された画像を決定する手順71を有する。前記ビタビ検出は、上述の実施例に従って実行されて良い。当該方法はさらに、前記対象物の第2画像を検出する際に検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの第2複数の画素信号を受信する手順61、及び、前記第2複数の画素信号のビタビ検出を用いて第2の再構成された画像を決定する手順72を有する。破線で表されているように、当該方法はさらに、前記対象物の少なくとも1つの別な画像を検出する際に検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの少なくとも1つの別な画素信号を受信する手順63、及び、前記少なくとも1つの別な画素信号のビタビ検出を用いて少なくとも1つの別な再構成された画像を決定する手順73を有する。続いて当該方法は、80において、前記第1の再構成された画像と、前記第2の再構成された画像とを結合し、適切な場合には、前記少なくとも1つの別な再構成された画像をさらに結合することで、再構成された画像を生成する。
【0104】
図22は、コンピュータプログラム1020を有するコンピュータにより読み取り可能な媒体500を図示している。コンピュータプログラム1020は、プロセッサシステムに本発明の実施例による方法を実行させる命令を有する。コンピュータプログラム1020は、物理的な印としてコンピュータにより読み取り可能な媒体1000上で実施されて良いし、又は、コンピュータにより読み取り可能な媒体1000の磁化によって実施されても良い。しかし他の適切な実施例も利用可能である。さらにコンピュータにより読み取り可能な媒体1000が図22において光ディスクとして図示されているが、コンピュータにより読み取り可能な媒体1000は、任意の適切なコンピュータにより読み取り可能な媒体−たとえばハードディスク、固体メモリ、フラッシュメモリ等−であって良く、記録可能であっても良いし、記録不可能であっても良い。
【符号の説明】
【0105】
100 光軸
101 電子源
102 偏向器
103 アパーチャ
104 レンズ
105 対物レンズ
106 レンズ
107 蛍光スクリーン
108 窓
109 ヒンジ
111 試料
112 マニピュレータ
120 筐体
121 管
122 真空ポンプ
150 検出器
151 半導体センサ
160 インターフェース装置
170 入力手段
175 可視化手段
200 複数の状態
202 複数の状態
204 遷移
210 トレリス
222 入力データ値
224 データサンプル
1000 コンピュータにより読み取り可能な媒体
1020 コンピュータプログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子光学装置を用いて再構成された画像を決定する方法であって、
当該粒子光学装置は:
粒子ビームを生成する粒子源;
結像される対象物が設けられる対象物面;
前記粒子ビームによって前記対象物面を照射する収束系;
画像面上の前記対象物を透過する粒子を結像させることによって、前記対象物面の画像を生成する投影系;及び
前記画像を検出する検出器;
を有し、
前記検出器は、画素のアレイを有する半導体センサを有し、
前記画素のアレイは、前記検出器に入射する粒子に応答して、前記アレイの各対応する画素から複数の画素信号を供し、
当該方法は:
前記複数の画素信号を受信する手順;
前記複数の画素信号のビタビ検出(Viterbi Detection)を用いて再構成された画像を決定する手順;
を有し、
前記ビタビ検出は、前記検出器に入射する複数の粒子の分布に対応する複数の異なる状態、及び、前記複数の異なる状態のうちの少なくとも2つの状態であって、前記複数の画素信号のうちの単一の画素に入射する粒子のゼロではない同一の多重度に対応する状態、を用いる、
方法。
【請求項2】
前記異なる状態は、異なる多重度の粒子を用いることによってモデル化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異なる状態は、異なる蓄積エネルギーの前記粒子を用いることによってモデル化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記異なる状態は、前記粒子の蓄積エネルギーをモデル化する際に異なる点拡がり関数を用いることによってモデル化される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記異なる状態は、前記ビタビ検出の異なる反復において用いられる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記画素のアレイが1次元アレイである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記画素のアレイが2次元アレイで、かつ、
前記ビタビ検出が、前記2次元アレイの列あたりの画素信号列に適用される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記画素のアレイが2次元アレイで、かつ、
前記ビタビ検出が、前記2次元アレイの行あたりの画素信号列に適用される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ビタビ検出の状態が、前記検出器に入射する粒子の所定の2次元分布に対応する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
画素への1つ以上の入射粒子を検出した後に、前記複数の画素信号から前記の検出された1つ以上の入射粒子からの寄与を除去する手順をさらに有する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記検出器により検出される画像が、画素あたり0.0001乃至0.5個の粒子の照射量を有する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象物の第1画像を検出する際に検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの第1複数の画素信号を受信する手順、
前記第1複数の画素信号のビタビ検出を用いて第1の再構成された画像を決定する手順、
前記対象物の第2画像を検出する際に検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの第2複数の画素信号を受信する手順、
前記第2複数の画素信号のビタビ検出を用いて第2の再構成された画像を決定する手順、
前記第1の再構成された画像と、前記第2の再構成された画像とを結合することで、再構成された画像を生成する手順、
をさらに有する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
粒子ビームを生成する手順、
対象物面上に結像される対象物を設ける手順、
前記粒子ビームによって前記対象物面を照射する手順、
画像面上の前記対象物を透過する粒子を結像させることによって前記対象物面の画像を生成する手順、及び、
前記半導体センサを有する検出器によって前記画像を検出して、前記検出器に入射する粒子に応じて、前記アレイの各画素からの複数の画素信号を供する手順、
をさらに有する、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
粒子ビームを生成する粒子源、
結像される対象物を設けることのできる対象物面、
前記粒子ビームによって前記対象物面を照射する収束系、
画像面上の前記対象物を透過する粒子を結像することによって前記対象物の画像を生成する投影系、
前記画像を検出する検出器、及び、
信号処理装置、
を有する粒子光学装置。
【請求項15】
プロセッサシステムに請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−230903(P2012−230903A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100261(P2012−100261)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】