粒子状物質検出センサ素子及び粒子状物質検出センサ
【課題】被測定ガスに含まれる導電性微粒子の個数を検出できる粒子状物質検出センサ素子を提供する。
【解決手段】粒子状物質検出センサ素子1は、絶縁基板2と、該絶縁基板2の表面に形成された複数の検出部3とを備える。個々の検出部3は、所定の間隔をおいて相対向する一対の電極4,5からなり、被測定ガスに含まれる導電性微粒子6を一対の電極4,5の間に捕集する。検出部3は、一対の電極4,5間の電気抵抗を測定することにより、一対の電極4,5間に捕集した導電性微粒子6の量を検出できるよう構成されている。複数の検出部3は、捕集する導電性微粒子6の最大粒径が、個々の検出部3ごとに異なる。
【解決手段】粒子状物質検出センサ素子1は、絶縁基板2と、該絶縁基板2の表面に形成された複数の検出部3とを備える。個々の検出部3は、所定の間隔をおいて相対向する一対の電極4,5からなり、被測定ガスに含まれる導電性微粒子6を一対の電極4,5の間に捕集する。検出部3は、一対の電極4,5間の電気抵抗を測定することにより、一対の電極4,5間に捕集した導電性微粒子6の量を検出できるよう構成されている。複数の検出部3は、捕集する導電性微粒子6の最大粒径が、個々の検出部3ごとに異なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガスに含まれる導電性微粒子を検出するための粒子状物質検出センサ素子及び粒子状物質検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス等に含まれる煤等の導電性微粒子を検出するための粒子状物質検出センサ素子として、図16に示すごとく、絶縁基板92と、該絶縁基板92の表面に所定間隔をおいて対向配置した一対の櫛歯状電極94,95とを有するものが知られている(下記特許文献1、2参照)。粒子状物質検出センサ素子91は、櫛歯状電極94,95によって、導電性微粒子96の検出部93を構成している。
【0003】
導電性微粒子96は帯電しているので、櫛歯状電極94,95の間に電圧を加えることにより、静電気力によって、導電性微粒子96を捕集することができる。検出部93に導電性微粒子96が集まると、櫛歯状電極94,95間の電気抵抗が低下する。この電気抵抗を測定することにより、検出部93が捕集した導電性微粒子96の量を検出することができる。
【0004】
粒子状物質検出センサ素子91は、ディーゼル車等の車両に搭載される。ディーゼル車は、排ガスに多くの導電性微粒子96が含まれるため、この導電性微粒子96をDPF(diesel particulate filter)を使って除去した後、排ガスを排出している。DPFを通過した後の排ガスに含まれる導電性微粒子96の量を、粒子状物質検出センサ素子を使って検出することにより、DPFが故障しているか否かを確認することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2005/124326号公報
【特許文献2】US 6949874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、ディーゼル機関やガソリンリーンバーン機関等の燃焼排気中に含まれる窒素酸化物NOxや粒子状物質に対する規制が年々厳しくなっている。特に粒子状物質は、微小粒子ほど人体の呼吸器奥深くまで進入しやすく、細胞の奥まで入り込み健康を害するため、量だけでなく数の規制を設ける動きがある。そのため、粒子状物質の数を検出できるセンサを搭載し、当該数を確認できる車両が望まれている。
【0007】
しかしながら、従来の粒子状物質検出センサは、排ガスに含まれる導電性微粒子の全体の質量等は検出できるが、個数を検出することはできなかった。そのため、導電性微粒子の個数を検出できる粒子状物質検出センサが求められている。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、被測定ガスに含まれる導電性微粒子の個数を検出できる粒子状物質検出センサ素子と、このセンサ素子を備えた粒子状物質検出センサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、絶縁基板と、
該絶縁基板の表面に形成された複数の検出部とを備え、
個々の上記検出部は、所定の間隔をおいて相対向する一対の電極からなり、被測定ガスに含まれる導電性微粒子を上記一対の電極の間に捕集すると共に、該一対の電極間の電気抵抗を測定することにより、上記一対の電極間に捕集した上記導電性微粒子の量を検出できるよう構成されており、
上記複数の検出部は、捕集する上記導電性微粒子の最大粒径が、個々の上記検出部ごとに異なるよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子にある(請求項1)。
【0010】
また、第2の発明は、上記粒子状物質検出センサ素子を有する粒子状物質検出センサにある(請求項6)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の作用効果について説明する。第1の発明では、複数個の検出部を備えており、捕集する導電性微粒子の最大粒径が、個々の検出部ごとに異なるよう構成されている。
このようにすると、検出部ごとに、粒径の範囲が異なる導電性微粒子を捕集し、その範囲ごとに質量を検出することができる。これにより、導電性微粒子の粒度分布を求めることが可能になる。
【0012】
粒径がある程度揃った所定範囲内にある導電性微粒子は、1個あたりの質量が略一定の値として予め算出できる。そのため、粒径がある程度揃った所定範囲に含まれる導電性微粒子の全質量を検出して、その検出値を1個当たりの導電性微粒子の質量で割れば、当該範囲に含まれる導電性微粒子の個数を求めることができる。導電性微粒子の質量を、粒径が異なる複数の範囲に分けて検出し、各範囲ごとに個数を算出して足せば、導電性微粒子の全体の個数を求めることが可能になる。
【0013】
また、第2の発明に係る粒子状物質検出センサは、上記粒子状物質検出センサ素子を備えている。そのため、例えば車両等の排ガスに含まれる導電性微粒子の数を検出できる粒子状物質検出センサを提供できる。
【0014】
以上のごとく、本発明によれば、被測定ガスに含まれる導電性微粒子の個数を検出できる粒子状物質検出センサ素子及び粒子状物質センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、粒子状物質検出センサ素子の分解斜視図。
【図2】実施例1における、検出部の電気回路図。
【図3】実施例1における、電極間の拡大断面図を導電性微粒子と共に描いたもの。
【図4】実施例1における、図3よりも多くの導電性微粒子が堆積した状態での、電極間の拡大断面図。
【図5】実施例1における、図4よりも多くの導電性微粒子が堆積した状態での、電極間の拡大断面図。
【図6】図5に続く図であって、ヒータを加熱して導電性微粒子を燃焼させた状態での拡大断面図。
【図7】実施例1における、粒子状物質検出センサ素子の検出電圧と時間との関係を表したグラフ。
【図8】実施例1における、導電性微粒子の粒度分布を表したグラフ。
【図9】実施例1における、粒子状物質検出センサの配置箇所を説明するための概念図。
【図10】実施例1における、粒子状物質センサの半断面図。
【図11】実施例2における、粒子状物質検出センサ素子の平面図。
【図12】実施例3における、粒子状物質検出センサ素子の分解斜視図。
【図13】実施例3における、粒子状物質検出センサ素子の平面図。
【図14】実施例4における、粒子状物質検出センサ素子の分解斜視図。
【図15】実施例4における、粒子状物質検出センサ素子の平面図。
【図16】従来例における、粒子状物質検出センサ素子の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記一対の電極間に印加する電圧は上記検出部ごとに異なることが好ましい(請求項2)。
このようにすると、検出部ごとに、捕集する導電性微粒子の最大粒径を簡単に変えることができる。すなわち、導電性微粒子は帯電しているため、電極間に電圧を印加すると、導電性微粒子は静電気力によって検出部に引き寄せられる。粒径の大きな導電性微粒子は質量が大きいため、電界強度が大きくないと引き寄せられない。それに対し、粒径の小さな導電性粒子は質量が小さいため、電界強度が小さくても引き寄せられる。そのため、電極間に印加する電圧を検出部ごとに変えることにより、それぞれの検出部で捕集できる導電性微粒子の最大粒径を変えることができる。
【0017】
また、上記一対の電極の間隔は上記検出部ごとに異なるよう構成されていることが好ましい(請求項3)。
このようにすると、全ての検出部において、電極間に印加する電圧を一定にした場合でも、各々の検出部の電極間に生じる電界強度を変えることができる。電極間に印加する電圧を検出部ごとに変える場合は、電気回路が比較的複雑になりやすいが、全ての検出部において電圧が一定であれば、電気回路を簡単な構成にすることができる。そのため、上記構成にすることにより、検出部に接続する電気回路を簡単な構成にしつつ、各検出部で捕集する導電性微粒子の最大粒径を変えることができる。
【0018】
また、ヒータが上記絶縁基板に設けられており、上記検出部の中心から上記ヒータの中心までの距離は上記検出部ごとに異なり、上記導電性微粒子を捕集する際に上記ヒータを出力することにより、上記複数個の検出部を、上記検出部ごとに異なる温度に加熱するよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
このようにすると、ヒータを使って、検出部ごとに温度を変えることができる。加熱した検出部の周囲では、空気の対流が生じる。温度が高い検出部では対流は大きく、温度が低い検出部では対流は小さい。粒径が大きな導電性微粒子は質量が大きいため、大きな対流が生じている検出部でも捕集される。これに対し、粒径が小さな導電性微粒子は質量が小さいため、対流が小さい検出部でないと捕集されない。
このように、検出部ごとに温度を変えることにより、捕集される導電性微粒子の最大粒径を変えることが可能になる。
【0019】
また、それぞれ発熱量が異なる複数のヒータが上記絶縁基板に設けられており、上記導電性微粒子を捕集する際に上記ヒータを出力することにより、上記複数個の検出部を、該検出部ごとに異なる温度に加熱するよう構成されていることが好ましい(請求項5)。
このようにすると、発熱量が異なる複数のヒータを用いるため、それぞれの検出部の温度を確実に変えることができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる粒子状物質検出センサ素子につき、図1〜図9を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例の粒子状物質検出センサ素子1は、絶縁基板2と、該絶縁基板2の表面に形成された複数の検出部3とを備える。
個々の検出部3は、所定の間隔をおいて相対向する一対の電極4,5からなり、被測定ガスに含まれる導電性微粒子6を一対の電極4,5の間に捕集する。検出部3は、一対の電極4,5間の電気抵抗を測定することにより、一対の電極4,5間に捕集した導電性微粒子6の量を検出できるよう構成されている。
複数の検出部3は、捕集する導電性微粒子6の最大粒径が、個々の検出部3ごとに異なるよう構成されている。
以下、詳説する。
本例では、絶縁基板2の表面に電極4a〜4e,5a〜5eを形成した。これらの電極4a〜4e,5a〜5eによって、5個の検出部3a〜3eを形成した。そして、電極5の電圧を0Vにし、電極4a,4b,4c,4d,4eをそれぞれ50V,40V,30V,20V,10Vに印加した。
【0021】
本例では、検出部3a〜3eによって、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる導電性微粒子6(煤)を捕集する。排ガスには、様々な大きさの導電性微粒子6が含まれている。導電性微粒子6は帯電しているため、電極4,5間に電圧を加えることにより、導電性微粒子6を静電気力で捕集することができる。粒径が大きい導電性微粒子6は質量が大きいため、電位差の大きい検出部3aでないと捕集できない。これに対して、粒径が小さい導電性微粒子6は質量が小さいため、全ての検出部3a〜3eで捕集できる。
【0022】
図2に示すごとく、個々の検出部3には、シャント抵抗Rsが直列接続されている。そして、検出部3とシャント抵抗Rsの間に直流電圧Vdを印加している。また、シャント抵抗Rsの両端には、電圧計16が接続されている。本例では、シャント抵抗Rsの両端の電圧を測定することにより、検出部3の電気抵抗を間接的に測定している。導電性微粒子6が電極4,5間に捕集されると、電極4,5間の電気抵抗が小さくなり、電流が流れる。そのため、シャント抵抗Rsの両端の電位差が大きくなる。
【0023】
粒子状物質検出センサ素子1を使用すると、図3〜図5に示すごとく、電極4,5間に導電性微粒子6が捕集され、徐々に堆積していく。図3に示すごとく、捕集された導電性微粒子6の量が少ない場合は、電極4,5間の電気抵抗は大きいが、図4、図5に示すごとく、導電電性微粒子6の堆積量の増加に伴って、電極4,5間の電気抵抗は次第に小さくなる。
【0024】
図5に示すごとく、多くの導電性微粒子6を捕集すると、電気抵抗があまり変化しなくなる。そのため、絶縁基板2に設けたヒータ7(図1参照)を加熱して、導電性微粒子6を燃焼させる。これにより、図6に示すごとく、電極4,5間に捕集した全ての導電性微粒子6が消滅する。
【0025】
図7は、シャント抵抗Rsの両端の電圧Vsの経時変化を表したグラフである。同図の曲線100が、Vsの経時変化を示す。図7の(1)の時間帯における検出部3の状態が図3であり、図7の(2)の時間帯における検出部3の状態が図4である。また、図7の(3)の時間帯における検出部3の状態が図5であり、図7の(4)の時間帯における検出部3の状態が図6である。
図7の(1)に示すごとく、検出部3が捕集した導電性微粒子6の量が少ない場合は、Vsは低い。そのため、導電性微粒子6の量を検出できない。
図7の(2)〜(3)に示すごとく、捕集された導電性微粒子6の量が増えると、Vsが上昇する。この区間は、捕集した導電性微粒子6の量を検出できる範囲である。
捕集した導電性微粒子6の量が増えすぎると、Vsが飽和してくる。そのため、ヒータ7を加熱して導電性微粒子6を燃焼させる。これにより、図7の(4)に示すごとく、Vsが初期状態に戻る。
【0026】
上述したように、本例では、5個の検出部3a,3b,3c,3d,3eの印加電圧を、それぞれ50V,40V,30V,20V,10Vにしてある。印加電圧が小さい第5検出部3eは、粒径の小さな導電性微粒子6しか捕集することができない。例えば、図8に示すごとく、第5検出部3eは粒径φが0〜0.1μmの導電性微粒子6しか捕集できない。これに対して、印加電圧が20Vである第4検出部3dは、より大きな導電性微粒子6を捕集することができる。すなわち、第4検出部3dは、粒径φが0〜0.2μmの導電性微粒子6を捕集できる。同様に、第3検出部3cは、粒径φが0〜0.3μmの導電性微粒子6を捕集でき、第2検出部3bは、粒径φが0〜0.4μmの導電性微粒子を捕集できる。そして、第1検出部3aは、粒径φが0〜0.5μmの導電性微粒子を捕集できる。
【0027】
第4検出部3dが捕集した導電性微粒子6(粒径φ0〜0.2μm)の質量から、粒径φが0〜0.1μmの範囲内の導電性微粒子6の質量を減算することにより、粒径φが0.1〜0.2μmの範囲内の導電性微粒子6の質量を求めることができる。
同様に、第3検出部3cが捕集した導電性微粒子6(粒径φ0〜0.3μm)の質量から、粒径φが0〜0.2μmの範囲内の導電性微粒子6の質量を減算することにより、粒径φが0.2〜0.3μmの範囲内の導電性微粒子6の質量を求めることができる。
同様の計算を行って、粒径φが0.3〜0.4μmの範囲内の導電性微粒子6の質量と、粒径φが0.4〜0.5μmの範囲内の導電性微粒子6の質量を求める。これにより、図8に示すごとく、導電性微粒子6の粒度分布を算出することができる。
【0028】
次に、本例にかかる粒子状物質検出センサ10の説明をする。図10に示すごとく、粒子状物質検出センサ10は、上述した粒子状物質検出センサ素子1と、ハウジング81と、カバー82と、一対の信号線83,84と、ケーシング85を有する。
【0029】
粒子状物質センサ素子1は、略筒状のインシュレータ80内に挿入固定されている。ハウジング81は、後述する排気管15に固定されており、インシュレータ80を保持している。また、ハウジング81は、粒子状物質検出センサ素子1の検出部3を被測定ガス(排気ガスg)中に保持している。カバー82は、ハウジング81の先端側に設けられ、粒子状物質センサ素子1の検出部3を保護している。
信号線83,84は、ハウジング81の基端側に設けられている。信号線83,84は、接続金具86を介して粒子状物質センサ素子1の端子部87に接続されている。信号線83,84は外部機器に接続されている。この信号線83,84を介して、検出部3の電気抵抗を検出するようになっている。
また、ケーシング85は略筒状に構成されており、ハウジング81に嵌合している。ケーシング85は、封止部材88を介して信号線83,84を固定している。
【0030】
図9に示すごとく、粒子状物質センサ10は、ディーゼルエンジン11の排気ガスgを排出するための排気管15に取り付けられる。排気ガスgは、ディーゼルエンジン11から出た後、酸化触媒12及びDPF13を通り、排出される。酸化触媒12では、排気ガスgに含まれるNOxやCO等を酸化する。また、DPF13では、導電性微粒子6を除去する。
【0031】
DPF13が正常に機能している場合は、DPF13を通過する導電性微粒子6の量は少ない。しかしながら、DPF13が故障すると、DPF13を通過する導電性微粒子6の量が多くなる。そのため、粒子状物質検出センサ10が検出した導電性微粒子6の量によって、DPF13が故障しているか否かを判断することができる。
【0032】
本例の作用効果について説明する。本例の粒子状物質検出センサ素子1は、図1に示すごとく、複数個の検出部3を備えている。そして、捕集する導電性微粒子6の最大粒径が、個々の検出部3ごとに異なるよう構成されている。
このようにすると、検出部3ごとに、粒径の範囲が異なる導電性微粒子6を捕集し、その範囲ごとに質量を検出することができる。これにより、図8に示すごとく、導電性微粒子6の粒度分布を求めることが可能になる。
【0033】
粒径がある程度揃った所定範囲内にある導電性微粒子6は、1個あたりの質量が略一定の値として予め算出できる。そのため、粒径がある程度揃った所定範囲に含まれる導電性微粒子6の全質量を検出して、その検出値を1個当たりの導電性微粒子6の質量で割れば、当該範囲に含まれる導電性微粒子6の個数を求めることができる。
【0034】
例えば、図8に示すごとく、粒径φが0〜0.1μmの範囲内である導電性微粒子6は、1個あたりの質量が予め算出できる。そのため、粒径φが0〜0.1μmの範囲内である導電性微粒子6の質量m1を、1個当たりの導電性微粒子6の質量で割れば、粒径φが0〜0.1μmの範囲に含まれる導電性微粒子6の個数を求めることができる。
この計算を、粒径φが0.1〜0.2μm、0.2〜0.3μm、0.3〜0.4μm、0.4〜0.5μmの範囲についても行い、足すことにより、粒径φが0〜0.5μmに含まれる導電性微粒子6の個数を求めることが可能になる。
【0035】
また、本例では、一対の電極4,5間に印加する電圧は検出部3ごとに異なる。
このようにすると、検出部3ごとに、捕集する導電性微粒子6の最大粒径を簡単に変えることができる。すなわち、導電性微粒子6は帯電しているため、電極4,5間に電圧を印加すると、導電性微粒子6は静電気力によって検出部3に引き寄せられる。粒径の大きな導電性微粒子6は質量が大きいため、電界強度が大きくないと引き寄せられない。それに対し、粒径の小さな導電性粒子は質量が小さいため、電界強度が小さくても引き寄せられる。そのため、電極4,5間に印加する電圧を検出部3ごとに変えることにより、それぞれの検出部3で捕集できる導電性微粒子6の最大粒径を変えることができる。
【0036】
以上のごとく、本例によれば、被測定ガスに含まれる導電性微粒子の個数を検出できる粒子状物質検出センサ素子及び粒子状物質センサを提供することができる。
【0037】
(実施例2)
本例は、図11に示すごとく、一対の電極4,5の間隔dを検出部3ごとに変えた例である。同図に示すごとく、本例の粒子状物質検出センサ素子1は3個の検出部3a〜3cを備える。第1検出部3aは電極4a,5aからなる。また、第2検出部3bは電極4b,5bからなる。第3検出部3cは電極4c,5cからなる。第1検出部3aにおける、電極4a,5aの間隔はd1であり、第2検出部3bにおける、電極4b,5bの間隔はd2である。そして、第3検出部3cにおける、電極4c,5cの間隔はd3である。本例では、d1<d2<d3となっている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0038】
本例の作用効果を説明する。上記構成にすると、全ての検出部3a〜3cにおいて、電極4,5間に印加する電圧を一定にした場合でも、各々の検出部3a〜3cの電極4,5間に生じる電界強度を変えることができる。電極4,5間に印加する電圧を検出部3a〜3cごとに変える場合は、電気回路が比較的複雑になりやすいが、全ての検出部3a〜3cにおいて電圧が一定であれば、電気回路を簡単な構成にすることができる。そのため、上記構成にすることにより、検出部3に接続する電気回路を簡単な構成にしつつ、各検出部3で捕集する導電性微粒子6の最大粒径を変えることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0039】
(実施例3)
本例は、複数の検出部に温度勾配をつけた例である。図12、図13に示すごとく、本例では、検出部3の中心からヒータ7の中心までの距離は検出部3ごとに異なる。そして、導電性微粒子6を捕集する際にヒータ7を出力することにより、複数個の検出部3a〜3cを、検出部3a〜3cごとに異なる温度に加熱するよう構成されている。
本例では、各検出部3a,3b,3cは、印加電圧が全て一定である。また、検出部3a〜3cは、電極4,5間の間隔dが全て一定である。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0040】
本例の作用効果について説明する。本例では、ヒータ7を使って、検出部3ごとに温度を変えることができる。加熱した検出部3の周囲では、空気の対流が生じる。温度が高い検出部3aでは対流は大きく、温度が低い検出部3cでは対流は小さい。粒径が大きな導電性微粒子6は質量が大きいため、大きな対流が生じている検出部3aでも捕集される。これに対し、粒径が小さな導電性微粒子6は質量が小さいため、対流が小さい検出部3cでないと捕集されない。
このように、検出部3ごとに温度を変えることにより、捕集される導電性微粒子6の最大粒径を変えることが可能になる。また、本例では、各検出部3a〜3cの印加電圧を一定にできるので、検出部3a〜3cに接続する電気回路を簡単な構成にすることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0041】
(実施例4)
本例は、検出部に温度勾配をつける方法を変更した例である。図14、図15に示すごとく、本例では、それぞれ発熱量が異なる複数のヒータ7a〜7cが絶縁基板2に設けられている。第1ヒータ7aは第1検出部3aの近傍に配置され、第2ヒータ7bは第2検出部3bの近傍に配置されている。また、第3ヒータ7cは第3検出部3cの近傍に配置されている。そして、導電性微粒子6を捕集する際にヒータ7a〜7cを出力することにより、複数個の検出部3a〜3cを、検出部3a〜3cごとに異なる温度に加熱するよう構成されている。
このようにすると、発熱量が異なる複数のヒータ7a〜7cを用いるため、それぞれの検出部3の温度を確実に変えることができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【符号の説明】
【0042】
1 粒子状物質検出センサ素子
10 粒子状物質検出センサ
2 絶縁基板
3 検出部
4 電極
5 電極
6 導電性微粒子
7 ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガスに含まれる導電性微粒子を検出するための粒子状物質検出センサ素子及び粒子状物質検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス等に含まれる煤等の導電性微粒子を検出するための粒子状物質検出センサ素子として、図16に示すごとく、絶縁基板92と、該絶縁基板92の表面に所定間隔をおいて対向配置した一対の櫛歯状電極94,95とを有するものが知られている(下記特許文献1、2参照)。粒子状物質検出センサ素子91は、櫛歯状電極94,95によって、導電性微粒子96の検出部93を構成している。
【0003】
導電性微粒子96は帯電しているので、櫛歯状電極94,95の間に電圧を加えることにより、静電気力によって、導電性微粒子96を捕集することができる。検出部93に導電性微粒子96が集まると、櫛歯状電極94,95間の電気抵抗が低下する。この電気抵抗を測定することにより、検出部93が捕集した導電性微粒子96の量を検出することができる。
【0004】
粒子状物質検出センサ素子91は、ディーゼル車等の車両に搭載される。ディーゼル車は、排ガスに多くの導電性微粒子96が含まれるため、この導電性微粒子96をDPF(diesel particulate filter)を使って除去した後、排ガスを排出している。DPFを通過した後の排ガスに含まれる導電性微粒子96の量を、粒子状物質検出センサ素子を使って検出することにより、DPFが故障しているか否かを確認することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2005/124326号公報
【特許文献2】US 6949874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、ディーゼル機関やガソリンリーンバーン機関等の燃焼排気中に含まれる窒素酸化物NOxや粒子状物質に対する規制が年々厳しくなっている。特に粒子状物質は、微小粒子ほど人体の呼吸器奥深くまで進入しやすく、細胞の奥まで入り込み健康を害するため、量だけでなく数の規制を設ける動きがある。そのため、粒子状物質の数を検出できるセンサを搭載し、当該数を確認できる車両が望まれている。
【0007】
しかしながら、従来の粒子状物質検出センサは、排ガスに含まれる導電性微粒子の全体の質量等は検出できるが、個数を検出することはできなかった。そのため、導電性微粒子の個数を検出できる粒子状物質検出センサが求められている。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、被測定ガスに含まれる導電性微粒子の個数を検出できる粒子状物質検出センサ素子と、このセンサ素子を備えた粒子状物質検出センサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、絶縁基板と、
該絶縁基板の表面に形成された複数の検出部とを備え、
個々の上記検出部は、所定の間隔をおいて相対向する一対の電極からなり、被測定ガスに含まれる導電性微粒子を上記一対の電極の間に捕集すると共に、該一対の電極間の電気抵抗を測定することにより、上記一対の電極間に捕集した上記導電性微粒子の量を検出できるよう構成されており、
上記複数の検出部は、捕集する上記導電性微粒子の最大粒径が、個々の上記検出部ごとに異なるよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子にある(請求項1)。
【0010】
また、第2の発明は、上記粒子状物質検出センサ素子を有する粒子状物質検出センサにある(請求項6)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の作用効果について説明する。第1の発明では、複数個の検出部を備えており、捕集する導電性微粒子の最大粒径が、個々の検出部ごとに異なるよう構成されている。
このようにすると、検出部ごとに、粒径の範囲が異なる導電性微粒子を捕集し、その範囲ごとに質量を検出することができる。これにより、導電性微粒子の粒度分布を求めることが可能になる。
【0012】
粒径がある程度揃った所定範囲内にある導電性微粒子は、1個あたりの質量が略一定の値として予め算出できる。そのため、粒径がある程度揃った所定範囲に含まれる導電性微粒子の全質量を検出して、その検出値を1個当たりの導電性微粒子の質量で割れば、当該範囲に含まれる導電性微粒子の個数を求めることができる。導電性微粒子の質量を、粒径が異なる複数の範囲に分けて検出し、各範囲ごとに個数を算出して足せば、導電性微粒子の全体の個数を求めることが可能になる。
【0013】
また、第2の発明に係る粒子状物質検出センサは、上記粒子状物質検出センサ素子を備えている。そのため、例えば車両等の排ガスに含まれる導電性微粒子の数を検出できる粒子状物質検出センサを提供できる。
【0014】
以上のごとく、本発明によれば、被測定ガスに含まれる導電性微粒子の個数を検出できる粒子状物質検出センサ素子及び粒子状物質センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、粒子状物質検出センサ素子の分解斜視図。
【図2】実施例1における、検出部の電気回路図。
【図3】実施例1における、電極間の拡大断面図を導電性微粒子と共に描いたもの。
【図4】実施例1における、図3よりも多くの導電性微粒子が堆積した状態での、電極間の拡大断面図。
【図5】実施例1における、図4よりも多くの導電性微粒子が堆積した状態での、電極間の拡大断面図。
【図6】図5に続く図であって、ヒータを加熱して導電性微粒子を燃焼させた状態での拡大断面図。
【図7】実施例1における、粒子状物質検出センサ素子の検出電圧と時間との関係を表したグラフ。
【図8】実施例1における、導電性微粒子の粒度分布を表したグラフ。
【図9】実施例1における、粒子状物質検出センサの配置箇所を説明するための概念図。
【図10】実施例1における、粒子状物質センサの半断面図。
【図11】実施例2における、粒子状物質検出センサ素子の平面図。
【図12】実施例3における、粒子状物質検出センサ素子の分解斜視図。
【図13】実施例3における、粒子状物質検出センサ素子の平面図。
【図14】実施例4における、粒子状物質検出センサ素子の分解斜視図。
【図15】実施例4における、粒子状物質検出センサ素子の平面図。
【図16】従来例における、粒子状物質検出センサ素子の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記一対の電極間に印加する電圧は上記検出部ごとに異なることが好ましい(請求項2)。
このようにすると、検出部ごとに、捕集する導電性微粒子の最大粒径を簡単に変えることができる。すなわち、導電性微粒子は帯電しているため、電極間に電圧を印加すると、導電性微粒子は静電気力によって検出部に引き寄せられる。粒径の大きな導電性微粒子は質量が大きいため、電界強度が大きくないと引き寄せられない。それに対し、粒径の小さな導電性粒子は質量が小さいため、電界強度が小さくても引き寄せられる。そのため、電極間に印加する電圧を検出部ごとに変えることにより、それぞれの検出部で捕集できる導電性微粒子の最大粒径を変えることができる。
【0017】
また、上記一対の電極の間隔は上記検出部ごとに異なるよう構成されていることが好ましい(請求項3)。
このようにすると、全ての検出部において、電極間に印加する電圧を一定にした場合でも、各々の検出部の電極間に生じる電界強度を変えることができる。電極間に印加する電圧を検出部ごとに変える場合は、電気回路が比較的複雑になりやすいが、全ての検出部において電圧が一定であれば、電気回路を簡単な構成にすることができる。そのため、上記構成にすることにより、検出部に接続する電気回路を簡単な構成にしつつ、各検出部で捕集する導電性微粒子の最大粒径を変えることができる。
【0018】
また、ヒータが上記絶縁基板に設けられており、上記検出部の中心から上記ヒータの中心までの距離は上記検出部ごとに異なり、上記導電性微粒子を捕集する際に上記ヒータを出力することにより、上記複数個の検出部を、上記検出部ごとに異なる温度に加熱するよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
このようにすると、ヒータを使って、検出部ごとに温度を変えることができる。加熱した検出部の周囲では、空気の対流が生じる。温度が高い検出部では対流は大きく、温度が低い検出部では対流は小さい。粒径が大きな導電性微粒子は質量が大きいため、大きな対流が生じている検出部でも捕集される。これに対し、粒径が小さな導電性微粒子は質量が小さいため、対流が小さい検出部でないと捕集されない。
このように、検出部ごとに温度を変えることにより、捕集される導電性微粒子の最大粒径を変えることが可能になる。
【0019】
また、それぞれ発熱量が異なる複数のヒータが上記絶縁基板に設けられており、上記導電性微粒子を捕集する際に上記ヒータを出力することにより、上記複数個の検出部を、該検出部ごとに異なる温度に加熱するよう構成されていることが好ましい(請求項5)。
このようにすると、発熱量が異なる複数のヒータを用いるため、それぞれの検出部の温度を確実に変えることができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる粒子状物質検出センサ素子につき、図1〜図9を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例の粒子状物質検出センサ素子1は、絶縁基板2と、該絶縁基板2の表面に形成された複数の検出部3とを備える。
個々の検出部3は、所定の間隔をおいて相対向する一対の電極4,5からなり、被測定ガスに含まれる導電性微粒子6を一対の電極4,5の間に捕集する。検出部3は、一対の電極4,5間の電気抵抗を測定することにより、一対の電極4,5間に捕集した導電性微粒子6の量を検出できるよう構成されている。
複数の検出部3は、捕集する導電性微粒子6の最大粒径が、個々の検出部3ごとに異なるよう構成されている。
以下、詳説する。
本例では、絶縁基板2の表面に電極4a〜4e,5a〜5eを形成した。これらの電極4a〜4e,5a〜5eによって、5個の検出部3a〜3eを形成した。そして、電極5の電圧を0Vにし、電極4a,4b,4c,4d,4eをそれぞれ50V,40V,30V,20V,10Vに印加した。
【0021】
本例では、検出部3a〜3eによって、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる導電性微粒子6(煤)を捕集する。排ガスには、様々な大きさの導電性微粒子6が含まれている。導電性微粒子6は帯電しているため、電極4,5間に電圧を加えることにより、導電性微粒子6を静電気力で捕集することができる。粒径が大きい導電性微粒子6は質量が大きいため、電位差の大きい検出部3aでないと捕集できない。これに対して、粒径が小さい導電性微粒子6は質量が小さいため、全ての検出部3a〜3eで捕集できる。
【0022】
図2に示すごとく、個々の検出部3には、シャント抵抗Rsが直列接続されている。そして、検出部3とシャント抵抗Rsの間に直流電圧Vdを印加している。また、シャント抵抗Rsの両端には、電圧計16が接続されている。本例では、シャント抵抗Rsの両端の電圧を測定することにより、検出部3の電気抵抗を間接的に測定している。導電性微粒子6が電極4,5間に捕集されると、電極4,5間の電気抵抗が小さくなり、電流が流れる。そのため、シャント抵抗Rsの両端の電位差が大きくなる。
【0023】
粒子状物質検出センサ素子1を使用すると、図3〜図5に示すごとく、電極4,5間に導電性微粒子6が捕集され、徐々に堆積していく。図3に示すごとく、捕集された導電性微粒子6の量が少ない場合は、電極4,5間の電気抵抗は大きいが、図4、図5に示すごとく、導電電性微粒子6の堆積量の増加に伴って、電極4,5間の電気抵抗は次第に小さくなる。
【0024】
図5に示すごとく、多くの導電性微粒子6を捕集すると、電気抵抗があまり変化しなくなる。そのため、絶縁基板2に設けたヒータ7(図1参照)を加熱して、導電性微粒子6を燃焼させる。これにより、図6に示すごとく、電極4,5間に捕集した全ての導電性微粒子6が消滅する。
【0025】
図7は、シャント抵抗Rsの両端の電圧Vsの経時変化を表したグラフである。同図の曲線100が、Vsの経時変化を示す。図7の(1)の時間帯における検出部3の状態が図3であり、図7の(2)の時間帯における検出部3の状態が図4である。また、図7の(3)の時間帯における検出部3の状態が図5であり、図7の(4)の時間帯における検出部3の状態が図6である。
図7の(1)に示すごとく、検出部3が捕集した導電性微粒子6の量が少ない場合は、Vsは低い。そのため、導電性微粒子6の量を検出できない。
図7の(2)〜(3)に示すごとく、捕集された導電性微粒子6の量が増えると、Vsが上昇する。この区間は、捕集した導電性微粒子6の量を検出できる範囲である。
捕集した導電性微粒子6の量が増えすぎると、Vsが飽和してくる。そのため、ヒータ7を加熱して導電性微粒子6を燃焼させる。これにより、図7の(4)に示すごとく、Vsが初期状態に戻る。
【0026】
上述したように、本例では、5個の検出部3a,3b,3c,3d,3eの印加電圧を、それぞれ50V,40V,30V,20V,10Vにしてある。印加電圧が小さい第5検出部3eは、粒径の小さな導電性微粒子6しか捕集することができない。例えば、図8に示すごとく、第5検出部3eは粒径φが0〜0.1μmの導電性微粒子6しか捕集できない。これに対して、印加電圧が20Vである第4検出部3dは、より大きな導電性微粒子6を捕集することができる。すなわち、第4検出部3dは、粒径φが0〜0.2μmの導電性微粒子6を捕集できる。同様に、第3検出部3cは、粒径φが0〜0.3μmの導電性微粒子6を捕集でき、第2検出部3bは、粒径φが0〜0.4μmの導電性微粒子を捕集できる。そして、第1検出部3aは、粒径φが0〜0.5μmの導電性微粒子を捕集できる。
【0027】
第4検出部3dが捕集した導電性微粒子6(粒径φ0〜0.2μm)の質量から、粒径φが0〜0.1μmの範囲内の導電性微粒子6の質量を減算することにより、粒径φが0.1〜0.2μmの範囲内の導電性微粒子6の質量を求めることができる。
同様に、第3検出部3cが捕集した導電性微粒子6(粒径φ0〜0.3μm)の質量から、粒径φが0〜0.2μmの範囲内の導電性微粒子6の質量を減算することにより、粒径φが0.2〜0.3μmの範囲内の導電性微粒子6の質量を求めることができる。
同様の計算を行って、粒径φが0.3〜0.4μmの範囲内の導電性微粒子6の質量と、粒径φが0.4〜0.5μmの範囲内の導電性微粒子6の質量を求める。これにより、図8に示すごとく、導電性微粒子6の粒度分布を算出することができる。
【0028】
次に、本例にかかる粒子状物質検出センサ10の説明をする。図10に示すごとく、粒子状物質検出センサ10は、上述した粒子状物質検出センサ素子1と、ハウジング81と、カバー82と、一対の信号線83,84と、ケーシング85を有する。
【0029】
粒子状物質センサ素子1は、略筒状のインシュレータ80内に挿入固定されている。ハウジング81は、後述する排気管15に固定されており、インシュレータ80を保持している。また、ハウジング81は、粒子状物質検出センサ素子1の検出部3を被測定ガス(排気ガスg)中に保持している。カバー82は、ハウジング81の先端側に設けられ、粒子状物質センサ素子1の検出部3を保護している。
信号線83,84は、ハウジング81の基端側に設けられている。信号線83,84は、接続金具86を介して粒子状物質センサ素子1の端子部87に接続されている。信号線83,84は外部機器に接続されている。この信号線83,84を介して、検出部3の電気抵抗を検出するようになっている。
また、ケーシング85は略筒状に構成されており、ハウジング81に嵌合している。ケーシング85は、封止部材88を介して信号線83,84を固定している。
【0030】
図9に示すごとく、粒子状物質センサ10は、ディーゼルエンジン11の排気ガスgを排出するための排気管15に取り付けられる。排気ガスgは、ディーゼルエンジン11から出た後、酸化触媒12及びDPF13を通り、排出される。酸化触媒12では、排気ガスgに含まれるNOxやCO等を酸化する。また、DPF13では、導電性微粒子6を除去する。
【0031】
DPF13が正常に機能している場合は、DPF13を通過する導電性微粒子6の量は少ない。しかしながら、DPF13が故障すると、DPF13を通過する導電性微粒子6の量が多くなる。そのため、粒子状物質検出センサ10が検出した導電性微粒子6の量によって、DPF13が故障しているか否かを判断することができる。
【0032】
本例の作用効果について説明する。本例の粒子状物質検出センサ素子1は、図1に示すごとく、複数個の検出部3を備えている。そして、捕集する導電性微粒子6の最大粒径が、個々の検出部3ごとに異なるよう構成されている。
このようにすると、検出部3ごとに、粒径の範囲が異なる導電性微粒子6を捕集し、その範囲ごとに質量を検出することができる。これにより、図8に示すごとく、導電性微粒子6の粒度分布を求めることが可能になる。
【0033】
粒径がある程度揃った所定範囲内にある導電性微粒子6は、1個あたりの質量が略一定の値として予め算出できる。そのため、粒径がある程度揃った所定範囲に含まれる導電性微粒子6の全質量を検出して、その検出値を1個当たりの導電性微粒子6の質量で割れば、当該範囲に含まれる導電性微粒子6の個数を求めることができる。
【0034】
例えば、図8に示すごとく、粒径φが0〜0.1μmの範囲内である導電性微粒子6は、1個あたりの質量が予め算出できる。そのため、粒径φが0〜0.1μmの範囲内である導電性微粒子6の質量m1を、1個当たりの導電性微粒子6の質量で割れば、粒径φが0〜0.1μmの範囲に含まれる導電性微粒子6の個数を求めることができる。
この計算を、粒径φが0.1〜0.2μm、0.2〜0.3μm、0.3〜0.4μm、0.4〜0.5μmの範囲についても行い、足すことにより、粒径φが0〜0.5μmに含まれる導電性微粒子6の個数を求めることが可能になる。
【0035】
また、本例では、一対の電極4,5間に印加する電圧は検出部3ごとに異なる。
このようにすると、検出部3ごとに、捕集する導電性微粒子6の最大粒径を簡単に変えることができる。すなわち、導電性微粒子6は帯電しているため、電極4,5間に電圧を印加すると、導電性微粒子6は静電気力によって検出部3に引き寄せられる。粒径の大きな導電性微粒子6は質量が大きいため、電界強度が大きくないと引き寄せられない。それに対し、粒径の小さな導電性粒子は質量が小さいため、電界強度が小さくても引き寄せられる。そのため、電極4,5間に印加する電圧を検出部3ごとに変えることにより、それぞれの検出部3で捕集できる導電性微粒子6の最大粒径を変えることができる。
【0036】
以上のごとく、本例によれば、被測定ガスに含まれる導電性微粒子の個数を検出できる粒子状物質検出センサ素子及び粒子状物質センサを提供することができる。
【0037】
(実施例2)
本例は、図11に示すごとく、一対の電極4,5の間隔dを検出部3ごとに変えた例である。同図に示すごとく、本例の粒子状物質検出センサ素子1は3個の検出部3a〜3cを備える。第1検出部3aは電極4a,5aからなる。また、第2検出部3bは電極4b,5bからなる。第3検出部3cは電極4c,5cからなる。第1検出部3aにおける、電極4a,5aの間隔はd1であり、第2検出部3bにおける、電極4b,5bの間隔はd2である。そして、第3検出部3cにおける、電極4c,5cの間隔はd3である。本例では、d1<d2<d3となっている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0038】
本例の作用効果を説明する。上記構成にすると、全ての検出部3a〜3cにおいて、電極4,5間に印加する電圧を一定にした場合でも、各々の検出部3a〜3cの電極4,5間に生じる電界強度を変えることができる。電極4,5間に印加する電圧を検出部3a〜3cごとに変える場合は、電気回路が比較的複雑になりやすいが、全ての検出部3a〜3cにおいて電圧が一定であれば、電気回路を簡単な構成にすることができる。そのため、上記構成にすることにより、検出部3に接続する電気回路を簡単な構成にしつつ、各検出部3で捕集する導電性微粒子6の最大粒径を変えることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0039】
(実施例3)
本例は、複数の検出部に温度勾配をつけた例である。図12、図13に示すごとく、本例では、検出部3の中心からヒータ7の中心までの距離は検出部3ごとに異なる。そして、導電性微粒子6を捕集する際にヒータ7を出力することにより、複数個の検出部3a〜3cを、検出部3a〜3cごとに異なる温度に加熱するよう構成されている。
本例では、各検出部3a,3b,3cは、印加電圧が全て一定である。また、検出部3a〜3cは、電極4,5間の間隔dが全て一定である。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0040】
本例の作用効果について説明する。本例では、ヒータ7を使って、検出部3ごとに温度を変えることができる。加熱した検出部3の周囲では、空気の対流が生じる。温度が高い検出部3aでは対流は大きく、温度が低い検出部3cでは対流は小さい。粒径が大きな導電性微粒子6は質量が大きいため、大きな対流が生じている検出部3aでも捕集される。これに対し、粒径が小さな導電性微粒子6は質量が小さいため、対流が小さい検出部3cでないと捕集されない。
このように、検出部3ごとに温度を変えることにより、捕集される導電性微粒子6の最大粒径を変えることが可能になる。また、本例では、各検出部3a〜3cの印加電圧を一定にできるので、検出部3a〜3cに接続する電気回路を簡単な構成にすることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0041】
(実施例4)
本例は、検出部に温度勾配をつける方法を変更した例である。図14、図15に示すごとく、本例では、それぞれ発熱量が異なる複数のヒータ7a〜7cが絶縁基板2に設けられている。第1ヒータ7aは第1検出部3aの近傍に配置され、第2ヒータ7bは第2検出部3bの近傍に配置されている。また、第3ヒータ7cは第3検出部3cの近傍に配置されている。そして、導電性微粒子6を捕集する際にヒータ7a〜7cを出力することにより、複数個の検出部3a〜3cを、検出部3a〜3cごとに異なる温度に加熱するよう構成されている。
このようにすると、発熱量が異なる複数のヒータ7a〜7cを用いるため、それぞれの検出部3の温度を確実に変えることができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【符号の説明】
【0042】
1 粒子状物質検出センサ素子
10 粒子状物質検出センサ
2 絶縁基板
3 検出部
4 電極
5 電極
6 導電性微粒子
7 ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
該絶縁基板の表面に形成された複数の検出部とを備え、
個々の上記検出部は、所定の間隔をおいて相対向する一対の電極からなり、被測定ガスに含まれる導電性微粒子を上記一対の電極の間に捕集すると共に、該一対の電極間の電気抵抗を測定することにより、上記一対の電極間に捕集した上記導電性微粒子の量を検出できるよう構成されており、
上記複数の検出部は、捕集する上記導電性微粒子の最大粒径が、個々の上記検出部ごとに異なるよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子。
【請求項2】
請求項1において、上記一対の電極間に印加する電圧は上記検出部ごとに異なることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子。
【請求項3】
請求項1において、上記一対の電極の間隔は上記検出部ごとに異なるよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、ヒータが上記絶縁基板に設けられており、上記検出部の中心から上記ヒータの中心までの距離は上記検出部ごとに異なり、上記導電性微粒子を捕集する際に上記ヒータを出力することにより、上記複数個の検出部を、上記検出部ごとに異なる温度に加熱するよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、それぞれ発熱量が異なる複数のヒータが上記絶縁基板に設けられており、上記導電性微粒子を捕集する際に上記ヒータを出力することにより、上記複数個の検出部を、該検出部ごとに異なる温度に加熱するよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に記載の粒子状物質検出センサ素子を有する粒子状物質検出センサ。
【請求項1】
絶縁基板と、
該絶縁基板の表面に形成された複数の検出部とを備え、
個々の上記検出部は、所定の間隔をおいて相対向する一対の電極からなり、被測定ガスに含まれる導電性微粒子を上記一対の電極の間に捕集すると共に、該一対の電極間の電気抵抗を測定することにより、上記一対の電極間に捕集した上記導電性微粒子の量を検出できるよう構成されており、
上記複数の検出部は、捕集する上記導電性微粒子の最大粒径が、個々の上記検出部ごとに異なるよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子。
【請求項2】
請求項1において、上記一対の電極間に印加する電圧は上記検出部ごとに異なることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子。
【請求項3】
請求項1において、上記一対の電極の間隔は上記検出部ごとに異なるよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、ヒータが上記絶縁基板に設けられており、上記検出部の中心から上記ヒータの中心までの距離は上記検出部ごとに異なり、上記導電性微粒子を捕集する際に上記ヒータを出力することにより、上記複数個の検出部を、上記検出部ごとに異なる温度に加熱するよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、それぞれ発熱量が異なる複数のヒータが上記絶縁基板に設けられており、上記導電性微粒子を捕集する際に上記ヒータを出力することにより、上記複数個の検出部を、該検出部ごとに異なる温度に加熱するよう構成されていることを特徴とする粒子状物質検出センサ素子。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に記載の粒子状物質検出センサ素子を有する粒子状物質検出センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−13639(P2012−13639A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152818(P2010−152818)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
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