説明

粒子状陰イオン交換体及びその製造方法

【課題】十分なイオン交換量、機械的強度及び化学的安定性を有し、イオン種の吸着速度が速い、粒子状の陰イオン交換体を実現する。
【解決手段】結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、下記一般式(I)
【化1】


(式中、Rは炭素数1以上20以下のアルキル基であり、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子である)
で表される構造を有する置換基が導入されており、イオン交換量が1.5mmol/g以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状セルロース系陰イオン交換体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4級アンモニウム基等を有する強塩基性陰イオン交換樹脂の製造では、一般的に、ポリスチレンをジビニルベンゼンで架橋したビーズ等を基材樹脂として用いる。ここで、強塩基性陰イオン交換樹脂は、基材樹脂をクロロメチル化した後、トリメチルアミン等の3級アミンを反応させて4級アンモニウム化を行うことにより製造することができる。しかしながら、このような樹脂は架橋構造を有しているために、疎水性マトリックス樹脂内への陰イオン種の拡散速度が遅く、吸着速度の改善が望まれている。
【0003】
また、このような強塩基性陰イオン交換樹脂のイオン交換容量は、同じ基材樹脂からなる強酸性陽イオン交換樹脂よりも少ない。このため、例えば、水を脱塩処理する場合には、陽イオン交換樹脂より、陰イオン交換樹脂の使用量が多くなるため、コストが増大するという問題があり、高いイオン交換容量を有する強塩基性イオン交換樹脂が望まれている。
【0004】
更には、現在市販されているポリスチレン系基材を用いた強塩基性イオン交換樹脂の製造方法は複雑であり、また、石油原料由来の基材を用いているため、生分解性に劣り、廃棄後の処理が困難である等の問題がある。
【0005】
一方、セルロースは自然界中に最も多く存在する多糖類であり、また、水酸基を多数有するポリヒドロキシ化合物であり、安価で再生可能な資源として様々な分野で広く使われている。例えば、半金属吸着用のグルカミン型のセルロース系キレート吸着樹脂が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、非特許文献1で報告されているグルカミン型のセルロース系キレート吸着樹脂は、化学的に基材を活性化してグラフトさせる化学グラフト法により製造されるものであり、グラフト率が低く、グルカミン官能基密度が低いという問題がある。更に化学的方法を用いることから、製造プロセスの安全性、取扱い性等の問題がある。
【0007】
上記のようなグラフト反応を行う方法として、化学グラフト法の他に放射線グラフト法が知られている。放射線グラフト法はラジカル重合開始剤を使用せず、高分子基材に任意の反応性モノマーをグラフト鎖として導入する方法である。
【0008】
放射線グラフト法は、化学グラフト法と比べて、表面のみではなく内部まで反応性モノマーをグラフトすることができるという長所があり、例えば、放射線照射により活性化した高分子基材に、反応性モノマーをエマルション溶液中でグラフト重合させる方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、吸着樹脂に関するものではないが、セルロース繊維への放射線グラフトする方法が報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−344047号公報(2005年12月15日公開)
【非特許文献1】犬飼吉成(Y.Inukai)、外9名, 「グルカミン型セルロース系誘導体を用いたホウ素の除去(Removal of boron(III) by N-methylglucamin-type cellulose derivatives with higher adsorption rate)」 (2004), Analytical Chimica Acta,Vol.51.P261-265.(Elsevier Science)
【非特許文献2】F.カーン(F.Khan)、外2名,「γ線照射による黄麻繊維へのMMAエマルショングラフト重合(Gamma radiation-induced emulsion graft Copolymerization of MMA onto jute fiber)」 (2002),Advances in Polymer Teclmology,Vol.21.P132-140.(Wiley Periodicals)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の方法では、十分なイオン交換量、機械的強度及び化学的安定性を有し、イオン種の吸着速度が速い、粒子状の陰イオン交換体を製造することが困難であるという問題が生じる。
【0011】
具体的には、特許文献1には、ポリエチレン基材に反応性モノマーを重合させた場合のみが開示されており、セルロースを基材のような親水性基材を使用する場合の具体的な反応条件については一切開示されていない。基材が疎水性であれば、イオン種がイオン交換体へ接近し難いため、その吸着速度は低くなる。
【0012】
非特許文献2には、セルロース基材にメタクリル酸メチルを重合させる方法について具体的に開示されているが、そのグラフト率は最高でも30%程度であり、放射線の線量を30kGy以上にしてもグラフト率が向上しないことが記載されている。
【0013】
つまり、上記従来の方法では、30%を超えるグラフト率でモノマーをグラフト重合させることが困難であり、その結果、当該方法で得られる生成物を陰イオン交換体として用いるにはイオン交換量が不十分となる。
【0014】
また、上記セルロース系吸着剤は、例えば、イオン交換樹脂球用の吸着塔、再生設備等に充填して用いるには機械的強度及び化学的安定性が不十分である。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分なイオン交換量、機械的強度及び化学的安定性を有し、イオン種の吸着速度が速い、粒子状の陰イオン交換体及びその製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、非特許文献2に記載の方法で十分なイオン交換量を有する陰イオン交換体を製造することが困難である原因は、エマルジョンの濃度調整がうまくいっていないか、基材の非結晶部分が大きく存在するためラジカル寿命が短いことが原因であるとの結論に達した。
【0017】
より具体的には、基材の非結晶部分は、化学反応性が高く、ラジカルが発生し易いが、セルロース分子鎖の切断反応にラジカルが使用され易く、そのラジカル寿命は短いと考えた。そして、その結果、発生したラジカルにおける、グラフト反応に使用される割合は低くなっていると考えた。
【0018】
そこで、本発明者は、結晶化度の高いセルロースは、ラジカルが発生し易いが、セルロース分子鎖の切断反応にラジカルが使用され難いためそのラジカル寿命は長く、その結果、発生したラジカルにおける、グラフト反応に使用される割合は高くなるとの仮説を立て、その検証を行った。
【0019】
そして、代表的な放射線分解型高分子であり、且つ化学反応性が低いと考えられているために放射線グラフト法を適用するとの発想自体がなかった、結晶化度の高いセルロース粒子を用い、反応性モノマーを含有するエマルション中でグラフト重合させることにより、高いグラフト率でグラフト重合させることができることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
即ち、本発明に係る陰イオン交換体は、上記課題を解決するために、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、下記一般式(I)
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、Rは炭素数1以上20以下のアルキル基であり、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子である)
で表される構造を有するグラフト鎖が導入されており、イオン交換量が1.5mmol/g以上であることを特徴としている。
【0023】
上記構成によれば、十分なイオン交換量、機械的強度及び化学的安定性を有し、イオン種の吸着速度が速い、粒子状の陰イオン交換体を提供することができるという効果を奏する。
【0024】
本発明に係る陰イオン交換体では、平均粒子径が100μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、従来の陰イオン交換体の吸着塔、再生設備等をそのまま使用することができるという更なる効果を奏する。
【0026】
本発明に係る陰イオン交換体では、上記粒子状セルロース系基材は結晶化度が95%以上のセルロースからなることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、より高い機械的強度及び化学的安定性を有する陰イオン交換体を提供することができるという更なる効果を奏する。
【0028】
本発明に係る陰イオン交換体原料は、上記課題を解決するために、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、下記一般式(II)
【0029】
【化2】

【0030】
(式中、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子である)
で表される構造を有するグラフト鎖が、50%以上のグラフト率で導入されていることを特徴としている。
【0031】
上記構成によれば、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、高いグラフト率で、4級アンモニウム基を導入できる置換基が置換されているため、十分なイオン交換量、機械的強度及び化学的安定性を有し、イオン種の吸着速度が速い、粒子状の陰イオン交換体を提供することができるという効果を奏する。
【0032】
本発明に係る陰イオン交換体原料では、上記粒子状セルロース系基材は結晶化度が95%以上のセルロースからなることが好ましい。
【0033】
上記構成によれば、より高い機械的強度及び化学的安定性を有する陰イオン交換体を提供することができるという更なる効果を奏する。
【0034】
本発明に係る陰イオン交換体原料の製造方法は、上記課題を解決するために、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に電離放射線を照射する工程と、照射後の粒子状セルロース系基材を、下記一般式(III)
【0035】
【化3】

【0036】
(式中、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子である)
で表される構造を有するモノマーを含むエマルションと接触させることにより、当該モノマーを上記粒子状セルロース系基材にグラフト重合させてグラフト鎖を導入するグラフト鎖導入工程と、を含むことを特徴としている。
【0037】
上記方法によれば、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、高いグラフト率で、4級アンモニウム基を導入できる置換基を有するグラフト鎖を導入できるため、十分なイオン交換量、機械的強度及び化学的安定性を有し、イオン種の吸着速度が速い、粒子状の陰イオン交換体を提供し得る陰イオン交換体原料を製造することができるという効果を奏する。
【0038】
本発明に係る陰イオン交換体原料の製造方法では、上記Rはメチレン基であることが好ましい。
【0039】
上記方法によれば、より高い密度で4級アンモニウム基に変換し得る置換基を導入することができるため、イオン交換量がより高い陰イオン交換体を提供できる陰イオン交換体原料を製造することができるという更なる効果を奏する。
【0040】
本発明に係る陰イオン交換体原料の製造方法では、上記エマルションは水系エマルションであることが好ましい。
【0041】
上記方法によれば、揮発性の有機溶媒等を使用しないため、より改善された作業環境で陰イオン交換体原料を製造することができるという更なる効果を奏する。
【0042】
本発明に係る陰イオン交換体原料の製造方法では、上記エマルションは、上記モノマーを30質量%以上80質量%以下の範囲内含み、且つ界面活性剤を上記モノマーに対して3質量%以上8質量%以下の範囲内含むことが好ましい。
【0043】
本発明に係る陰イオン交換体原料の製造方法では、上記グラフト重合を50℃以上60℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。
【0044】
本発明に係る陰イオン交換体原料の製造方法では、上記グラフト重合を10分以上240分以下の範囲の反応時間で行うことが好ましい。
【0045】
本発明に係る陰イオン交換体原料の製造方法では、上記電離放射線は、γ線、電子線、又はX線であり、その線量が10kGy以上200kGy以下の範囲内であることが好ましい。
【0046】
本発明に係る陰イオン交換体の製造方法は、上記課題を解決するために、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、4級アンモニウム基が導入されている陰イオン交換体の製造方法であって、上記本発明に係る方法の何れか1つの方法により陰イオン交換体原料を製造する工程と、上記陰イオン交換体原料におけるグラフト鎖に4級アンモニウム基を導入させる4級アンモニウム化工程と、を含むことを特徴としている。
【0047】
上記方法によれば、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、高いグラフト率で、4級アンモニウム基に変換し得る置換基を有する陰イオン交換体原料を用いて4級アンモニウム化を行うため、十分なイオン交換量、機械的強度及び化学的安定性を有し、イオン種の吸着速度が速い、粒子状の陰イオン交換体を製造することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る陰イオン交換体は、以上のように、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、一般式(I)で表される構造を有するグラフト鎖が導入されており、イオン交換量が1.5mmol/g以上であることを特徴としている。
【0049】
このため、十分なイオン交換量、機械的強度及び化学的安定性を有し、イオン種の吸着速度が速い、粒子状の陰イオン交換体を提供することができるという効果を奏する。
【0050】
本発明に係る陰イオン交換体の製造方法は、以上のように、上記本発明に係る方法の何れか1つにより陰イオン交換体原料を製造する工程と、上記陰イオン交換体原料におけるグラフト鎖に4級アンモニウム基を導入させる4級アンモニウム化工程とを含むことを特徴としている。
【0051】
上記方法によれば、十分なイオン交換量、機械的強度及び化学的安定性を有し、イオン種の吸着速度が速い、粒子状の陰イオン交換体を製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明について詳しく説明する。尚、本明細書では、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを意味し、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。また、本明細書で挙げられている各種物性は、特に断りの無い限り後述する実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0053】
(A)陰イオン交換体
本実施の形態に係る陰イオン交換体は、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、一般式(I)で表される構造を有するグラフト鎖が導入されており、イオン交換量が1.5mmol/g以上である。
【0054】
(a−1)粒子状セルロース基材
上記陰イオン交換体は、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、一般式(I)で表される構造を有するグラフト鎖が導入されているものである。
【0055】
基材として、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材を用いることにより、化学的安定性を有し、機械的強度に優れた陰イオン交換体を得ることができる。また、天然素材であるセルロースを用いることから、環境に対する負荷が少なく、安価な陰イオン交換体を得ることができるとともに、親水性であるため水中での吸着性能を向上させることができる。更には、粒子状であることにより、従来のイオン交換樹脂球用の吸着塔、再生設備等をそのまま使用することができる。
【0056】
上記粒子状セルロース系基材は、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材であればよい。即ち、上記粒子状セルロース系基材は、結晶化度が80%以上のセルロースのみからなるものであることが好ましいが、吸着性能に悪影響を与えない限り他の成分が含まれていてもよい。ここで、「主成分とする」とは、好ましくは、上記粒子状セルロース系基材中に結晶化度が80%以上のセルロースが、90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上含まれていることを意味する。また、含まれ得る他の成分は特に限定されるものではないが、例えば、ヘミセルロース、リグニン、スターチ等が挙げられる。
【0057】
上記粒子状セルロース系基材の主成分であるセルロースは結晶化度が80%以上の粒子状セルロースである。ここで、結晶化度が80%以上の粒子状セルロースとは、粒子状セルロースの粒子において、結晶性部分の質量分率が80%以上のものであればよく、通常の結晶性部分と非結晶性部分とからなるセルロース粒子で結晶化度が80%以上のもの、80%以上が微結晶セルロースからなるセルロース粒子等を含む趣旨である。尚、ここで、微結晶セルロースとは、通常のセルロースの非結晶性部分を取り除いて精製したものであり、結晶化度は100%に近い。
【0058】
上記粒子状セルロース系基材の主成分であるセルロースは結晶化度が80%以上のものであればよいが、90%以上のものであることがより好ましく、95%以上のものであることが更に好ましく、99%以上のものであることが特に好ましい。結晶化度が99%以上の粒子状セルロース系基材としては、例えば、微結晶セルロース100%の集合体が挙げられる。上記微結晶セルロースとしては、具体的には、例えば、薬剤用等に市販されている微結晶セルロースが挙げられ、一例として、旭化成ケミカルズのセオラス(登録商標)、セルフィア(登録商標)等が挙げられる。
【0059】
また、上記粒子状セルロース系基材の形状は粒子状であれば特に限定されるものではなく、球形、楕円形、不定径破砕形状等であればよい。中でも、上記粒子状セルロース系基材の形状は機械的強度の観点から、球形であることがより好ましい。
【0060】
また、上記粒子状セルロース系基材の平均粒子径は、乾燥状態で、30〜800μmの範囲内であればよいが、50〜500μmの範囲内であることがより好ましく、100〜300μmの範囲内であることが更に好ましい。
【0061】
尚、本明細書において、他に特に規定する場合を除き、平均粒子径とは以下の方法で決定された値を意味する。まず、試料となる粒子の集合の数箇所から試料を採取する。それぞれの試料について、電子顕微鏡による観察を行い、数箇所から採取した試料全体で、合計100個以上の粒子に対して、それぞれ、対象となる粒子1つの長軸径、即ち、粒子の形状の最も寸法の大きい方向の寸法を計測する。計測した100個以上の値のうち、上下各20%を除いた、60%の計測値の平均を本明細書における平均粒子径とする。
【0062】
また、上記粒子状セルロース系基材は多孔質セルロースであってもよい。多孔質セルロースを用いることにより、得られる粒子状セルロース系陰イオン交換体は、細孔内にもキレート形成基及び/又はイオン交換基が導入されており、また、吸着対象が細孔内を流れることができる。それゆえ、吸着性能により優れた陰イオン交換体を得ることができる。
【0063】
(a−2)グラフト鎖
本実施の形態に係る陰イオン交換体は、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、一般式(I)で表される構造を有するグラフト鎖が導入されている。
【0064】
上記一般式(I)において、Rは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基であることが好ましい。また、上記一般式(I)におけるRは、炭素数1〜8のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、ブチレン基であることが好ましい。更には、上記一般式(I)におけるXはハロゲン原子であり、より具体的には、F、Cl、Br、I等が挙げられる。
【0065】
尚、一般式(I)におけるベンゼン環での置換基の位置は、オルト、メタ、パラ配置の何れであってもよいが、パラ配置がより好ましい。
【0066】
(a−3)陰イオン交換体
上記陰イオン交換体は、イオン交換量が1.5mmol/g以上であり、2.0mmol/g以上であることがより好ましく、3.0mmol/g以上であることが更に好ましい。上限については特に限定はされないが、例えば、5mmol/g以下とすることができる。
【0067】
上記イオン交換量が1.5mmol/g以上であることにより、陰イオン交換体として利用可能な吸着能力を有する陰イオン交換体を提供することができる。
【0068】
また、上記陰イオン交換体では、一般式(I)で表される構造を有する置換基が粒子状セルロース系基材に50%以上のグラフト率で導入されていることが好ましい。当該グラフト率は、より好ましくは100%以上であり、更に好ましくは200%以上である。グラフト率が50%以上であることにより、上記イオン交換量を1.5mmol/g以上とすることができる。
【0069】
尚、上記グラフト率の上限については特に限定はされないが、例えば、400%以下とすることができる。
【0070】
本実施の形態に係る陰イオン交換体の形状は、上記粒子状セルロース基材と同様、粒子状であれば特に限定されるものではなく、球形、楕円形、不定径破砕形状等であればよい。中でも、上記陰イオン交換体の形状は機械的強度の観点から、球形であることがより好ましい。
【0071】
また、上記陰イオン交換体の平均粒子径は100〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100〜800μmの範囲内であることがより好ましく、200〜500μmの範囲内であることが更に好ましい。平均粒子径が上記範囲であることにより、従来のポリスチレン系イオン交換樹脂球用の吸着塔、再生設備等をそのまま使用することができる。
【0072】
また、上記粒子状セルロース系陰イオン交換体は多孔質であってもよい。これにより吸着対象が細孔内を流れることができる。それゆえ、より優れた吸着性能を得ることができる。
【0073】
上記陰イオン交換体を処理対象と接触させる方法は特に限定されるものではないが、例えば、上記処理対象中に上記陰イオン交換体を投入して攪拌し又は振り混ぜる方法、或いは、上記陰イオン交換体を充填したカラム又は吸着塔に上記処理対象を通過させる方法等を用いることができる。
【0074】
(B)陰イオン交換体の製造方法
本実施の形態に係る陰イオン交換体は、従来は、グラフト鎖を高いグラフト率で導入することが困難であった、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に高いグラフト率でグラフト鎖が導入されているものである。このような高いグラフト率は、粒子状セルロース系基材を活性化後、高濃度の反応性モノマーを含有するエマルション中でグラフト重合することにより達成されると考えられる。
【0075】
即ち、上記陰イオン交換体は、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に電離放射線を照射する活性化工程と、照射後の粒子状セルロース系基材を、一般式(III)で表される構造を有するモノマーと接触させて、当該モノマーを上記粒子状セルロース系基材にグラフト重合させてグラフト鎖を導入するグラフト鎖導入工程と、導入された上記グラフト鎖に4級アンモニウム基を導入する4級アンモニウム化工程とを含む。
【0076】
(b−1)活性化工程
本実施の形態に係る陰イオン交換体の製造方法では、まず、活性化工程において、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材を活性化する。
【0077】
ここで、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材については、「(a−1)粒子状セルロース基材」で上述したものと同様であるのでここでは説明を省略する。
【0078】
本実施の形態では、上記活性化は、製造プロセスが簡単、安全、且つ、低公害であり、グラフト鎖を粒子状セルロース系基材の表面から内部まで導入することができ、吸着能力により優れた陰イオン交換体得ることができるため、電離放射線を照射することにより行う。
【0079】
上記電離放射線の線量は、10〜200kGyの範囲内であることが好ましく、20〜150kGyの範囲内であることがより好ましく、20〜100kGyの範囲内であることが更に好ましい。
【0080】
電離放射線の線量が10kGy以上であることにより、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に必要なラジカル活性点を生成することができる。また、電離放射線の線量が200kGy以下であることにより、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に加えられるダメージを抑制することができるという効果を奏する。それゆえ機械的強度が低下せず、化学的安定性に優れた陰イオン交換体を製造することができる。
【0081】
上記電離放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、X線等が挙げられるが、中でも、工業的な生産性の観点から、例えばコバルト−60からのγ線、電子線加速器による電子線、X線等をより好適に用いることができる。また、電子線加速器による電子線を用いる場合、電子線加速器としては、厚物の照射を行うことができる電子線加速器を用いることがより好ましく、加速電圧1MeV以上の中エネルギーから高エネルギーの電子線加速器を好適に用いることができる。
【0082】
また、照射時に、上記粒子状セルロース系基材の粒子を、例えばプラスチックバッグの中に、平板のようにして封着すれば、1MeV以下の中低エネルギー電子線加速器でも電子線を透過させることができるため、好適に上記粒子状セルロース系基材を活性化することができる。
【0083】
(b−2)グラフト鎖導入工程
上記活性化工程で活性化された粒子状セルロース系基材は、グラフト鎖導入工程で、一般式(III)で表される構造を有するモノマーを含むエマルションと接触させて、当該モノマーを上記粒子状セルロース系基材にグラフト重合させる。これにより、上記粒子状セルロース系基材にグラフト鎖が導入される。
【0084】
ここで、上記一般式(III)において、R及びXは一般式(I)と同義である。より具体的には、上記モノマーとしては、例えば、クロルメチルスチレン、クロルエチルスチレン等が挙げられる。尚、これらモノマーにおけるベンゼン環での置換基の位置は、オルト、メタ、パラ配置の何れであってもよいが、パラ配置がより好ましい。
【0085】
尚、上記グラフト重合では、一般式(III)で表される構造を有する上記モノマー以外のモノマーを共存させても構わないが、得られる陰イオン交換体のイオン交換量を高める観点から、一般式(III)で表される構造を有する上記モノマーのみを用いてグラフト重合を行うことが好ましい。
【0086】
本工程において用いられる上記エマルションに含まれる上記モノマーの量は、エマルション全量に対して30〜80質量%の範囲内であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましく、45〜55質量%であることが更に好ましい。これにより、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、高いグラフト率で上記モノマーをグラフト重合させることができる。更に活性化された粒子状セルロース系基材と、上記モノマーを含むエマルションとの接触時間も短縮することができる。また、上記疎水性モノマーの量が、エマルション全量に対して80質量%より大きくなると、エマルションが調製し難くなり、分散が不均一になったり安定性が悪くなったりする傾向がある。
【0087】
上記エマルションは水系エマルション、即ち、上記モノマーと水とを含むエマルションであることがより好ましい。尚、ここで用いられる水としては、イオン交換水、純水、超純水等を用いればよい。これにより、上記モノマーはミセル中に分散し、ラジカルの利用率と重合速度が高くなるため、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、高いグラフト率で上記モノマーをグラフト重合することができる。また、グラフト鎖導入工程において有機溶媒を使用しないため、プロセスのコスト低減、環境に対する負荷の低減、及びプロセスの安全性向上の点から好ましい。
【0088】
また、上記エマルションは、更に、上記モノマーに対して、3〜8質量%の界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、高いグラフト率で上記モノマーをグラフト重合させることができる。更には、活性化された粒子状セルロース系基材と上記モノマーを含むエマルションとの接触時間を短縮することができる。
【0089】
尚、上記エマルションの典型的な組成は、界面活性剤5質量%、モノマー50質量%、水45質量%である。
【0090】
本工程で用いることができる界面活性剤は、特に限定されるものではなく、通常エマルション重合で用いられている界面活性剤を好適に用いることができる。このような界面活性剤として具体的には、例えば、アルキルポリオキシエチレンエーテル、S−アルキルポリオキシエチレンエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル、N,N’−ジ(アルカノール)アルカンアミド、アミンオキシド等の非イオン界面活性剤;セッケン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α―オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチル、硫酸アルキル塩、硫酸アルキル(ポリオキシエチレン)塩、リン酸アルキル塩、N−アシルアミノ酸塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、モノアルキルトリメチルアンモニウムクロリド等のイオン性界面活性剤;スルホベタイン、ベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0091】
また、活性化された粒子状セルロース系基材と上記モノマーを含むエマルションとの接触方法は特に限定されるものではないが、例えば、活性化された粒子状セルロース系基材を、上記エマルションに浸漬する方法等が挙げられる。
【0092】
活性化された粒子状セルロース系基材と上記モノマーを含むエマルションとの接触時間は、接触方法として浸漬する方法を用いる場合、好ましくは10分〜240分であり、より好ましくは60分前後であり、短い接触時間で、高いグラフト率を達成することができる。
【0093】
また、反応温度、即ち、活性化された粒子状セルロース系基材と上記モノマーを含むエマルションとを接触させる温度は、接触方法として浸漬する方法を用いる場合、50〜60℃が好ましい。
【0094】
また、活性化された粒子状セルロース系基材と上記モノマーを含むエマルションとの接触は、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、ラジカルと酸素との反応を防止することができる。
【0095】
以上の工程により、陰イオン交換体の前駆体である、陰イオン交換体原料が得られる。上記方法により、結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、一般式(II)で表される構造を有するグラフト鎖を50%以上のグラフト率で導入させることができる。尚、同然のことながら、一般式(II)におけるR及びXは一般式(I)と同義である。
【0096】
上記グラフト率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは100%以上であり、更に好ましくは200%以上である。グラフト率が50%以上であることにより、最終的に得られる陰イオン交換体原料のイオン交換量を1.5mmol/g以上とすることができる。尚、上記グラフト率の上限については特に限定はされないが、例えば、400%以下とすることができる。
【0097】
(b−3)4級アンモニウム化工程
4級アンモニウム化工程では上記グラフト鎖導入工程で導入された上記グラフト鎖に4級アンモニウム基を結合させる。上記工程は、例えば、トリアルキルアミンを上記グラフト鎖と反応させることにより行うことができる。
【0098】
上記トリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0099】
尚、本工程における反応条件は、従来公知の方法における条件を適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。例えば、グラフト鎖が導入された上記セルロースを、所定濃度のトリアルキルアンモニウム水溶液に投入して、50℃で3時間反応させることにより行うことができる。そして、得られた化合物を水洗等することにより、本実施の形態に係る粒子状セルロース系陰イオン交換体を得ることができる。
【0100】
尚、上述の説明では、陰イオン交換体原料を4級アンモニウム化する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、陰イオン交換体原料をフォスファゼン塩基等の有機超強塩基と反応させてもよい。
【0101】
以上のように、本発明に係る陰イオン交換体は、以下の特徴を有する。
1.イオン交換基の官能基密度を高くすることができ、従来のポリスチレン系陰イオン交換体よりもイオン交換量を高くすることができる。
2.基材として親水性の粒子状セルロースを用いているため、イオン種のイオン交換基への吸着速度が速い。
3.基材として親水性の粒子状セルロースを用いているため、その生分解性により環境への付加が小さい。
4.放射線重合で製造されるため、製造プロセスは簡単、安全、低公害である。
【実施例】
【0102】
以下に、実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0103】
<グラフト率>
グラフト率、即ち、上記粒子状セルロース系基材に対する、グラフト重合により導入されているモノマーの量(質量百分率)は、以下の方法で求めた。
【0104】
グラフト重合後、モノマーが導入されたセルロース系粒子を、メタノール、アセトン等の有機溶媒に48時間浸漬して未反応のモノマー及びホモポリマーを除去した。その後、セルロース系粒子を更に水に12時間浸漬した後、水で洗浄し、50℃で24時間乾燥した。この乾燥後のセルロース系粒子の質量(W)と、モノマーを導入する前の粒子状セルロース系基材の乾燥質量(W)とからグラフト率を次式により算出した。
グラフト率(%)=((W−W)/W)×100
<イオン交換量>
イオン交換量は、酸及びアルカリ標準液による滴定法により求めた。
【0105】
<結晶化度>
セルロースの結晶化度は、広角X線回折(WAXD)により測定した。
【0106】
<砒素(V)のバッチ吸着試験>
5ppmの5価の砒素陰イオン水溶液100mLに、陰イオン交換体0.1gを入れ、室温で24時間攪拌させた。そして、上澄み液をサンプリングし、ICP発光分析装置により測定を行い、溶液中の初期濃度と処理後の残留濃度とから砒素の吸着量を求めた。
【0107】
〔実施例1〕
市販の微結晶セルロースのみで構成されたセルロース微粒子(旭化成ケミカルズ製、セルフィア(登録商標)203)10g(平均粒子径150〜300μm)を粒子状セルロース系基材として用い、当該粒子状セルロース系基材を、薄いプラスチックバッグの中に配置し、このプラスチックバッグを窒素で数回パージし封着した。続いて、粒子状セルロース系基材に、窒素雰囲気中、ドライアイスによる冷却条件下、工業用電子線加速器(NHVコーポレーション製、EPS−800)を用いて、電子線を100kGy照射し、ラジカル活性点を生成させた。
【0108】
照射後の粒子状セルロース系基材を、すぐに予め調製し窒素置換されたクロルメチルスチレン(CMS)を含むエマルションに浸漬して、50℃で2時間反応させた。使用したエマルションの組成は、エマルション液全量に対して、界面活性剤(和光純薬株式会社製、Tween20)5質量%、CMS50質量%、水45質量%であった。
【0109】
得られた粒子状セルロース系基材におけるCMSのグラフト率は130%であった。
【0110】
ここで、CMSのグラフト率、つまりクロルメチル官能基の数が、後に導入される4級アンモニウム化の転換率を左右する。
【0111】
上記のようにして得られた粒子状セルロースを、10質量%のトリメチルアミン水溶液に投入して、50℃で3時間反応させて、4級アンモニウム化を行った。そして、生成物を水で洗浄することにより、陰イオン交換体を得た。得られた陰イオン交換体の陰イオン交換量は3.75mmol/gであった。
【0112】
尚、市販のイオン交換樹脂(商品名:SA10A、ポリスチレンにトリメチルアンモニウムクロライド基が結合した強塩基性陰イオン交換樹脂、三菱化学社製)を、同様に測定した結果は、2.5mmol/gであった。また、砒素(V)のバッチ吸着試験の結果を、市販のイオン交換樹脂(商品名:SA10A)の結果と共に図1に示す。尚、図1における「IEC」は、イオン交換容量を意味する。
【0113】
図1に示す結果から、本発明に係る方法により得られた強塩基性陰イオン交換体は、親水性の基材上に、高密度で陰イオン交換官能基を有しているため、従来の陰イオン交換体よりも吸着が速く、吸着量が高いことが確認できた。
【0114】
〔比較例1〕
水の代わりに有機溶媒であるアセトンを上記エマルションに用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状セルロース系陰イオン交換体の製造を試みたが、CMSのグラフト反応は起こらなかった。
【0115】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の陰イオン交換体は十分なイオン交換量、機械的強度及び化学的安定性を有し、イオン種の吸着速度が速いため、水処理に用いられるイオン交換樹脂等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】実施例1で得られた陰イオン交換体及び市販のイオン交換樹脂の砒素のバッチ吸着試験結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、下記一般式(I)
【化1】

(式中、Rは炭素数1以上20以下のアルキル基であり、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子である)
で表される構造を有するグラフト鎖が導入されており、
イオン交換量が1.5mmol/g以上であることを特徴とする陰イオン交換体。
【請求項2】
平均粒子径が100μm以上1000μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の陰イオン交換体。
【請求項3】
上記粒子状セルロース系基材は結晶化度が95%以上のセルロースからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の陰イオン交換体。
【請求項4】
結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、下記一般式(II)
【化2】

(式中、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子である)
で表される構造を有するグラフト鎖が50%以上のグラフト率で導入されていることを特徴とする陰イオン交換体原料。
【請求項5】
上記粒子状セルロース系基材は結晶化度が95%以上のセルロースからなることを特徴とする請求項4に記載の陰イオン交換体原料。
【請求項6】
結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に電離放射線を照射する工程と、
照射後の粒子状セルロース系基材を、下記一般式(III)
【化3】

(式中、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子である)
で表される構造を有するモノマーを含むエマルションと接触させることにより、当該モノマーを上記粒子状セルロース系基材にグラフト重合させてグラフト鎖を導入するグラフト鎖導入工程と、
を含むことを特徴とする陰イオン交換体原料の製造方法。
【請求項7】
上記Rはメチレン基であることを特徴とする請求項6に記載の陰イオン交換体原料の製造方法。
【請求項8】
上記エマルションは、水系エマルションであることを特徴とする請求項6又は7に記載の陰イオン交換体原料の製造方法。
【請求項9】
上記エマルションは、上記モノマーを30質量%以上80質量%以下の範囲内含み、且つ界面活性剤を上記モノマーに対して3質量%以上8質量%以下の範囲内含むことを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の陰イオン交換体原料の製造方法。
【請求項10】
上記グラフト重合を50℃以上60℃以下の温度範囲で行うことを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の陰イオン交換体原料の製造方法。
【請求項11】
上記グラフト重合を10分以上240分以下の範囲の反応時間で行うことを特徴とする請求項6〜10の何れか1項に記載の陰イオン交換体原料の製造方法。
【請求項12】
上記電離放射線は、γ線、電子線、又はX線であり、その線量が10kGy以上200kGy以下の範囲内であることを特徴とする請求項6〜11の何れか1項に記載の陰イオン交換体原料の製造方法。
【請求項13】
結晶化度が80%以上のセルロースを主成分とする粒子状セルロース系基材に、4級アンモニウム基が導入されている陰イオン交換体の製造方法であって、
請求項6〜12の何れか1項に記載の方法により陰イオン交換体原料を製造する工程と、
上記陰イオン交換体原料におけるグラフト鎖に4級アンモニウム基を導入させる4級アンモニウム化工程と、
を含むことを特徴とする陰イオン交換体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−1393(P2010−1393A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161939(P2008−161939)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(503237806)株式会社NHVコーポレーション (37)
【Fターム(参考)】