粒子線治療装置
【課題】照射自由度が高く、正常組織への照射量を低減できる粒子線治療装置を得ることを目的とする。
【解決手段】供給された荷電粒子ビームBecを治療計画に基づく3次元の照射形状に整形するよう前記荷電粒子ビームをそれぞれ異なる方向に走査制御する2つのスキャニング電磁石2a,2bを備えた走査電磁石2と、走査電磁石2により走査された荷電粒子ビームBecが走査電磁石2の下流に設定された複数のビーム軌道7のうち、選択されたひとつのビーム軌道を通るように荷電粒子ビームBecの軌道を切り替える偏向電磁石4,5と、を備え、走査電磁石2からアイソセンタまでの距離を長くとるようにした。
【解決手段】供給された荷電粒子ビームBecを治療計画に基づく3次元の照射形状に整形するよう前記荷電粒子ビームをそれぞれ異なる方向に走査制御する2つのスキャニング電磁石2a,2bを備えた走査電磁石2と、走査電磁石2により走査された荷電粒子ビームBecが走査電磁石2の下流に設定された複数のビーム軌道7のうち、選択されたひとつのビーム軌道を通るように荷電粒子ビームBecの軌道を切り替える偏向電磁石4,5と、を備え、走査電磁石2からアイソセンタまでの距離を長くとるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん等の治療を目的として陽子線や重イオン線を照射する粒子線治療装置に関するものであり、特にスポットスキャニング、ラスタースキャニングなどの走査型照射を応用した粒子線治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線やγ線を体外から照射すると、体の表面近くで線量が最大となり、それ以降は深さとともに次第に減少していく。そのため、深いところにあるがん病巣に十分な線量を与えようとすると、がん病巣より浅いところにある正常細胞により大きなダメージを与えることになる。一方、粒子線照射では、照射エネルギーによって人体内に入る深さが定まり、その深さ前後でエネルギーを急激に放出して止まるブラッグピークと呼ばれる現象がある。そこで、この現象を利用し、粒子線のエネルギーを適切に調節すれば、体表面からがん病巣までの道筋にある正常な細胞への影響を抑え、腫瘍細胞だけを殺傷することができる。そのため、粒子線は、がん病巣に集中的に照射することができるので、患者にとって負担が少なく高齢者にも優しい治療方法として期待されている。
【0003】
他方、粒子線照射では、加速器のように大がかりな線源を必要とするので、X線源のように線源自体を容易に移動することができず、患部に適切な角度で照射するために、様々な提案がなされている。例えば、脳や眼球にできた腫瘍を治療する場合、患者は椅子型の患者保持装置に座り、荷電粒子ビームが水平照射される水平照射室にて行うことが一般的である。荷電粒子ビームはアイソセンタとよばれる照射目標位置に照射されるように設計され、患部の位置決めはX線撮影画像を見ながら椅子型の患者保持装置を動かすような放射線治療用の椅子型患者保持装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、椅子型患者保持装置において回転中心に患部を移動できる調整装置を備えたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、粒子線照射では、上述したようにブラッグピークを有するものの、体外から照射した粒子線ビームは、体表面側へもある程度は影響をおよぼす。そこで、粒子線治療装置では、重要な正常組織への照射を避けるため、照射角度を患部に合わせて適切に設定できることが求められている。また、がん病巣に複数の方向から照射する多門照射が提案されており、正常組織への照射を減らす効果が知られている。
【0005】
しかし、従来の椅子型患者保持装置を用いる水平照射方法では、照射角度を変えるとき、患者を乗せて椅子型患者保持装置ごと姿勢を変える必要があり、患者にとって負担がかかるといった問題点があった。例えば椅子型患者保持装置を前方向や横方向に倒すとき、特に高齢の患者には大きな負担となる。
【0006】
そのため、高自由度な照射角度を実現するため、固定ポート照射ではなく回転ガントリと呼ばれる回転照射型の粒子線治療装置を用い、ベッド型患者保持装置と組み合わせる方法もよく知られている。しかしこの方法では、装置が大掛かりとなり、イニシャルコスト(導入費用)やランニングコストがかかる、設置するために広い空間を占領してしまう、などの問題点があった。なお、回転ガントリを用いた粒子線治療装置は陽子線ではよく使われているが、荷電粒子として炭素イオン等の重イオンを用いる場合、ビーム軌道を曲げる曲率半径が大きく、巨大な電磁石を回転させる必要があるため装置化がさらに困難である。また、回転ガントリを用いて多門照射を行うことができるが、照射角度を変えるときには回転ガントリとともに照射装置が回転駆動するため、技師が照射室に入り照射装置と患者とが衝突しないよう、確認をしながらでないと照射角度を変えられないという問題点があった。
【0007】
そこで、回転ガントリを用いずに照射角度に自由度をもたせるため、偏向電磁石によって規定される複数のビーム軌道毎に照射ノズルやスキャニング電磁石を移動させるようにしたビーム照射装置(例えば、特許文献3、4参照)が提案されている。
【0008】
ここで、粒子線治療装置の照射系について説明すると、大きく以下の2つの機能が必要である。ひとつは荷電粒子ビームを所望の角度で所望の位置にむけて照射するための機能、もうひとつは腫瘍などの照射対象を選択的に照射するための照射形状を整形するための機能である。そして、照射形状を整形するための機能の実現方式によって、粒子線治療装置は2つに大別される。ワブラ電磁石、散乱体、レンジモジュレータ、患者コリメータ、患者ボーラス等により構成される照射ノズルを用いて照射領域を一気に照射するブロード照射型とよばれるものと、スキャニング電磁石等によって小さな照射領域を走査して段階的に照射領域を照射するスキャニング照射型とよばれるものとである。いずれの場合でも、照射ノズルまたはスキャニング電磁石から照射対象に向かって、粒子線は発散方向に広がるように進むことになるので、照射ノズルやスキャニング電磁石と照射対象との距離が近いと、発散角が大きくなり、同じ照射対象に照射するのでも発散角が小さい場合に比べて荷電粒子が体表面を通過する面積が小さくなるので、体表面での照射密度が大きくなり、正常組織である体表面への被害が増えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−89928号公報(段落0012、図1)
【特許文献2】特開平5−111540号公報(段落0018、図3)
【特許文献3】特開2002−113118号公報(段落0013、図1)
【特許文献4】特表2003−528659号公報(段落0055、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、偏向電磁石により規定したビーム軌道に合わせて照射ノズルやスキャニング電磁石を移動させる場合、照射ノズルやスキャニング電磁石を偏向電磁石の下流に設置することになる。すると、照射ノズルまたはスキャニング電磁石から照射対象までの距離は短くせざるを得ない。そのため、粒子線の発散角が大きくなるので、体表面での照射密度が上がり、正常な組織への照射量が増大するという問題点があった。さらに、重量が大きな照射ノズルやスキャニング電磁石を移動させるために、装置が複雑化するという問題点があった。
【0011】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、照射自由度が高く、正常組織への照射量を低減できる粒子線治療装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる粒子線治療装置は、供給された荷電粒子ビームを治療計画に基づく3次元の照射形状に整形するよう前記荷電粒子ビームをそれぞれ異なる方向に走査制御する2つのスキャニング電磁石を備えた走査電磁石と、前記走査電磁石により走査された荷電粒子ビームが前記走査電磁石の下流に設定された複数のビーム軌道のうち、選択されたひとつのビーム軌道を通るように前記荷電粒子ビームの軌道を切り替える偏向電磁石と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粒子線治療装置は、ビーム軌道を切替える偏向電磁石より上流側にスキャニング電磁石を設置したので、荷電粒子ビームが発散する距離を長くすることにより、照射自由度が高く、正常組織への照射量を低減できる粒子線治療装置を得ることができる。
【0014】
また、本発明にかかる粒子線治療装置の調整方法によれば、ビーム軌道毎に照射制御値のデータ列を読込んで荷電粒子ビームを実照射し、アイソセンタ部における荷電粒子ビームの実照射位置座標のデータ列と照射制御値のデータ列との組合せから照射位置座標から制御値への逆写像モデルの未知パラメータを設定するようにしたので、どのような軌道を選んでも正確な照射が可能な粒子線治療装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる粒子線治療装置の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態2にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる粒子線治療装置の機能を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかる粒子線治療装置の調整方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2の変形例にかかる粒子線治療装置の調整方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態3にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかる粒子線治療装置の機能を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態3の変形例にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態5にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態5の変形例にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
以下、本発明にかかる粒子線治療装置の実施の形態1について説明する。図1、2は本発明の実施の形態1にかかる粒子線治療装置を説明するためのもので、図1は粒子線治療装置の全体構成を示す図、図2は粒子線治療装置の機能を示すブロック図である。粒子線治療装置は、図1に示すように、加速された荷電粒子ビームBecを拡散させずに輸送するためのビーム輸送ダクト1、ビーム輸送ダクト1を挟むようにビーム輸送ダクト1の外側に配置され、輸送された荷電粒子ビームBecを走査するスキャニング電磁石2(2a,2b)、走査された荷電粒子ビームBecを取り出すためのビーム取り出し窓3、スキャニング電磁石2の下流に配置され、ビーム取り出し窓3から取り出された荷電粒子ビームBecを、以降の複数のビーム軌道(7a,7b,7c)へと切り替えるための偏向電磁石4、複数のビーム軌道(7a,7b,7c)において最終的な照射目標位置であるアイソセンタCへと荷電粒子ビームBecを偏向するための偏向電磁石5(5a、5b(7cでは不要))、及び、座位で患者Kを保持するための椅子型患者保持装置6とを備えている。
【0017】
そして、粒子線治療装置は、照射計画指示部9から指示された照射方法に従って、上記スキャニング電磁石2(2a,2b)、偏向電磁石4、偏向電磁石5(5a、5b)の動作、および荷電粒子ビームBecの運動エネルギーを調整するために図示しない上流の荷電粒子ビーム供給部の動作を制御するための照射制御部8を備えている。
【0018】
つぎに、各部の制御について図2を用いて説明する。照射計画指示部9は、本実施の形態1においては、粒子線治療装置と独立した装置であり、患部への適切な治療計画を生成する治療計画装置9aと、各種データを保持し、生成した治療計画に従って、具体的な照射角度や照射形状等のデータを出力するサーバ9bとを備えている。そして、本実施の形態1にかかる粒子線治療装置の照射制御部8では、照射計画指示部9から出力された照射角度(ビーム軌道)や照射形状に基づいて生成された目標照射座標(x,y,z)の点列データ等のデータに従い、統括制御部8aを中心に照射制御を行う。照射制御部8の制御値生成部8bは、アイソセンタCにおいて指定された照射形状を形作る座標(x,y,z)への照射を実現するために、目標照射座標(x,y,z)から、走査電磁石2a,2bおよび荷電粒子ビームBecのエネルギー(荷電粒子の運動エネルギー)の制御値(Ia,Ib,Eb)を算出するための関数f1(x,y,z)を照射角度(ビーム軌道7a、7b、7c)に応じて選択する。そして、制御値生成部8bは、ビーム軌道(7a、7b、7c)に応じて選択した関数f1(関数f1はルックアップテーブルでもよい)を用いて、目標照射座標(x,y,z)から制御値(Ia,Ib,Eb)を算出し、算出した制御値(Ia,Ib,Eb)を統括制御部8aに出力し、最終的にスキャニング電磁石2(2a,2b)と加速器を制御する。ここで、目標照射座標(x,y,z)は、照射対象であるアイソセンタC近傍でのビーム軌道の中心軸に対して垂直な平面内の座標軸x、yと、照射深さ方向の座標軸zからなる座標系での座標である。また、制御値は、照射形状を実現するためのスキャニング電磁石2(2a,2b)への制御値(Ia,Ib)と、荷電粒子ビームBecのエネルギーを決定する加速器への制御値(Eb)であり、とくに3次元の制御値(Ia,Ib,Eb)を以降照射制御値と称する。
【0019】
そして、統括制御部8aは、ビーム軌道を設定(7a、7b、7c)するために、ビーム切替制御部8cに偏向電磁石4、5a,5bへの制御指示信号を出力する。また、制御値生成部8bで生成された照射制御値(Ia,Ib,Eb)は、それぞれ走査電磁石2a、2b、荷電粒子ビーム供給部である加速器へとそれぞれ出力される。補足であるが、走査電磁石2a、2bへの制御値は、具体的には電流値、ヒステリシスを考慮して補正計算した電流値や設定磁場強度等であり、加速器への制御値は、具体的には荷電粒子の目標運動エネルギー等である。
【0020】
なお、図示しないが、椅子型患者保持装置6は、アイソセンタCを通る回転軸を中心に回転することができ、その回転角度や高さなどの位置や姿勢も統括制御部8aによって制御することができる。
【0021】
次に動作について説明する。図示しない加速器により加速された荷電粒子ビームBecは、図示しない輸送系を経由してビーム輸送ダクト1へと導かれる。ビーム輸送ダクト1に導かれた荷電粒子ビームBecは、腫瘍などの照射対象を選択的かつ所望の線量を照射する照射形状を実現するよう制御値(Ia,Ib)が入力されたスキャニング電磁石2により、走査(スキャン(例えば2aによりx方向、2bによりy方向))制御される。走査制御された荷電粒子ビームBecはビーム取り出し窓3から取り出され、ここで、ビーム軌道切り替え用の偏向電磁石4へと導かれる。偏向電磁石4に導かれた荷電粒子ビームBecは、設定された軌道に応じて偏向電磁石4により偏向される。ここで、軌道7aの場合は図中上向きに偏向され、軌道7bの場合は図中下向きに偏向され、軌道7cの場合は偏向されずに直進することになる。軌道7aの場合は、偏向電磁石5aが動作し、下向きに偏向されて上方からアイソセンタCに向けて荷電粒子ビームBecが照射される。軌道7bの場合は、偏向電磁石5bが動作し、上向きに偏向されて下方からアイソセンタCに向けて荷電粒子ビームBecが照射される。軌道7cの場合は水平方向からアイソセンタCに向けて荷電粒子ビームBecが照射される。
【0022】
つまり、荷電粒子ビームBecを3次元の照射形状に整形するためのスキャニング電磁石2a、2bを、ビーム軌道を規定する偏向電磁石4、5a、5bよりも上流側に配置したので、荷電粒子ビームBecは、最短でもビーム取り出し窓3からアイソセンタCまでの長い距離の間で発散させることになる。例えば、アイソセンタCにおける照射領域の大きさが10cmで、ビーム取り出し窓3からアイソセンタCまでの距離が5mある場合、発散角は2.3度になり、10mある場合は1.1度になる。一方、特許文献3,4のようにスキャニング手段を偏向電磁石の下流に配置する場合、発散が始まる位置からアイソセンタCまでの距離を長く取ろうとすると装置が大掛かりになってしまうので、実質的に距離を取ることは困難である。そのため、例えば距離が1mになった場合、発散角は11度まで、50cmにまで近くなった場合、23度まで拡大してしまう。この場合、例えば体表面から10cmの深さの患部に粒子線を照射したときの、体表面部分での照射密度比(体表面での照射密度/患部における照射密度)は、本実施の形態のように距離10mや5mの場合はそれぞれ1.0であるのに対し、距離が1mでは1.2に、距離が50cmでは1.6にまで増大して正常組織へのダメージが大きくなってしまう。
【0023】
また、本実施の形態1にかかる粒子線治療装置では、スキャニング電磁石2a、2bでのビームを曲げる角度を大きくする必要がないので、スキャニング電磁石の大きさを低減でき、消費電力も低減できる。
【0024】
以上のように、本実施の形態1にかかる粒子線治療装置によれば、供給された荷電粒子ビームBecを治療計画に基づく3次元の照射形状に整形するよう走査する走査(スキャニング)電磁石2a,2bと、走査電磁石2a,2bにより走査された荷電粒子ビームBecが走査電磁石2a,2bからアイソセンタCまでに設定された複数のビーム軌道7a,7b,7cのうち、選択されたひとつのビーム軌道を経てアイソセンタCに到達するように荷電粒子ビームBecの軌道を切り替える偏向電磁石4、5a,5bと、を備えるように構成したので、照射対象であるアイソセンタから遠く離れた位置から荷電粒子ビームBecが発散し始めることになり、発散角を抑制することができる。そのため、照射自由度が高く、体表面での照射密度の増大を防止し、正常組織への照射量を低減することができる。
【0025】
つまり、従来では最下流に配置されるスキャニング電磁石2の下流側に偏向電磁石4、5を配置したことにより、大掛かりな回転ガントリを用いることなく、照射角度の自由度の高い、コンパクトな粒子線治療装置を得ることができる。照射角度の自由度が高いため、患者の姿勢を変える必要がなく(変えてもよいが、従来の固定ポートからの水平照射に比べて大きく変える必要がなく)、高齢者の患者にとっても負担の少ない粒子線治療装置を得ることができる。また、大掛かりな回転ガントリを用いたりスキャニング電磁石を移動させたりすることなく、照射自由度の高いコンパクトな粒子線治療装置が得られる。
【0026】
とくに、3次元の照射形状を形作る照射位置座標(x,y,z)を、選択されたビーム軌道7a,7b,7cに応じて設定された関数f1を用いて変換し、変換して得られた照射制御値(Ia,Ib,Eb)を用いて走査電磁石2a,2bおよび荷電粒子ビームBecのエネルギーを制御する照射制御部8を備えるように構成した。
【0027】
制御値を生成する具体的な方法は実施の形態2で詳しく述べるが、照射形状を形作る機能である走査電磁石が最下流にない複雑な系であって、ビーム軌道が複数ある場合においても、目標照射座標への高精度な照射を実現する制御値生成ができる。これにより、どのような軌道を選択しても正確な照射が可能となるので、照射精度を高く保ちつつ、照射系機器の配置に自由度を持たすことが可能となった。
【0028】
さらに、走査電磁石2の下流に設けたビーム軌道を切り替えるための偏向電磁石は、走査電磁石2から走査出力された荷電粒子ビームBecを選択された軌道(7a,7b,7c)に応じて偏向させる第1の偏向電磁石であるビーム切替電磁石4と、ビーム切替電磁石4の下流であって、複数のビーム軌道毎に設けられ、ビーム切替電磁石4により偏向された荷電粒子ビームBecをアイソセンタCに向けて偏向させる第2の偏向電磁石である偏向電磁石5a,5b(軌道7cに対しては必要ないが、基本的にビーム軌道毎に設けられたと称する)とを備えるようにしたので、ビーム軌道を切り替える際に位置を移動するものがなく、容易に照射角度を切り替えることができる。
【0029】
また、上記実施の形態によれば、スキャニング電磁石2を複数のビーム軌道に応じて複数用意したり、移動できるようにしたりする必要がない。更に、回転ガントリを用いた方式のように照射角度を変えるときに患者の近傍で駆動する照射部がないため、照射角度を変えるたびに技師が照射室に入ることなく、遠隔で多門照射を行う粒子線治療装置を得ることができる。
【0030】
なお、本実施の形態1における粒子線治療装置では偏向電磁石5として紙面の上下方向に2つの偏向電磁石5a、5bを配し、偏向電磁石4では紙面での上下方向にのみ軌道を変化させる例を示しているが、これに限られることはない。例えば、紙面の上下方向の数を変化させてもよいし、軌道7cを中心とする周方向のどの位置に配置してもよい。その場合、ビーム切替偏向電磁石4を設定したビームの軌道に応じて、軌道7cを中心として適宜回転させるようにしてもよい。
【0031】
また、本実施の形態1においては、関数f1の導出方法について特に明示していないが、偏向電磁石4、5の性質に応じてビーム軌道毎にシミュレーションを行い設定することが可能である。また、後述する実施の形態2のように実測値に基づいて生成した逆写像数式モデルを使用するようにしてもよい。
【0032】
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2にかかる粒子線治療装置および粒子線治療装置の調整方法について説明する。図3〜5は本発明の実施の形態2にかかる粒子線治療装置および粒子線治療装置の調整方法を説明するためのもので、図3は粒子線治療装置の全体構成を示す図、図4は粒子線治療装置の機能を示すブロック図、図5は粒子線治療装置の調整方法を示すフローチャートである。実施の形態2における粒子線治療装置では、照射形状を形作る目標照射座標(x,y,z)の点列データからビーム軌道に応じて3次元の照射制御値(Ia,Ib,Eb)を算出するための関数として実測値に基づく逆写像数式モデルf2-1を使用すること、逆写像数式モデルの未知パラメータを設定するための機能について詳細に記載するが、他の部分については実施の形態1と同様である。また、図3においては、粒子線治療装置の調整の説明に用いない患者Kや椅子型患者保持装置6を省略している。
【0033】
本実施の形態2においては、アイソセンタC近傍での粒子線ビームBecの照射位置(ビーム軌道の中心に対して垂直な平面内の座標(x,y)、およびビーム軌道に平行な深さZ)を測定するためのビーム測定部10(ビームプロファイルモニタ10a、10bおよび水ファントム10c)と、照射制御値と実測値に基づいてビーム軌道毎の逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを設定する逆写像算出部12とを備えている。
【0034】
ビーム測定部10は、ビーム軌道毎に設置するものであり、図3においてはビーム軌道7aでの照射形状を測定する場合について記載している。ビーム測定部10は、基本的に10a、10b、10cそれぞれの中心を結ぶ線(ビーム測定部10におけるz軸)をビーム軌道の中心に合わすように設置し、水ファントムは照射範囲全体をカバーできるようにアイソセンタCを含むように配置する、ビームプロファイルモニタ10aと10bは、ビーム軌道上の水ファントム10cの上流側にビーム軌道方向に沿って深さ(z方向)が異なる位置に配置し、ビーム軌道に垂直な平面内でのビームの位置(紙面におけるz方向に垂直な方向をx、紙面に垂直な方向をyとする)を測定する。
【0035】
なお、図3、4では、逆写像算出部12を照射制御部8や照射計画指示部9と独立して配置し、逆写像算出部12で算出した逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータをデータサーバ9bに保存し、実際の治療の際には、データサーバ9bに保存した逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを制御値生成部8bが呼び出して使用する場合を示している。しかし、逆写像算出部12を照射制御部8や照射計画指示部9内に内蔵してもよく、逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータの取得や使用ができるのであれば、保存場所やデータの受け渡し方法はどのような形態であっても構わない。そして、逆写像数式モデルf2-1による照射形状(x,y,z)から照射制御値(Ia,Ib,Eb)への変換は実施の形態1における関数f1を用いる場合と同様であるので、ここでは逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータの取得について説明を行う。
【0036】
X方向スキャニング電磁石2aの制御値をIa、Y方向スキャニング電磁石2bの制御値をIb、荷電粒子ビームのエネルギーに関する制御値をEbとし、照射される荷電粒子ビームの照射位置を(x,y,z)とする。スキャニング電磁石2aへの荷電粒子ビームBecの入射点が変動しないとすると、(Ia,Ib,Eb)が決まれば(x,y,z)も一意に決まるので、この物理現象は(Ia,Ib,Eb)から(x,y,z)への写像と考えることができる。照射形状を整形するための機能(例えばスキャニング電磁石)が最下流(アイソセンタCの直近)にあれば、この写像が直感的に理解することができ、かつ、簡単な写像となる。このため、従来、照射形状を整形するための機能は最下流に配置されていた。しかし、本発明にかかる粒子線治療装置では、発散角を抑えるために、照射形状を整形するためのスキャニング電磁石とアイソセンタCとの距離を離したり間に偏向電磁石があったりしたので、実施の形態1では、例えばシミュレーション等により写像として関数f1を求めるようにしていた。一方、本発明の実施の形態2では、図3、4に示すように実測値に基づき、所望の照射形状を形作る目標照射座標(x,y,z)の点列データから想定した照射制御値(Iae,Ibe,Ebe)を生成する逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを求めるようにした。
【0037】
つぎに、具体的なキャリブレーション(粒子線治療装置の調整方法)について説明する。なお、本実施の形態2においては、逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを取得するためのメイン制御は、逆写像算出部12が行うものとして、一例を図5のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
逆写像算出部12を起動させてキャリブレーションを開始する(ステップS10)と、ビーム軌道を設定するとともに、設定したビーム軌道に対応して荷電粒子ビームの実照射位置を測定するビーム測定部10を設置する(ステップS20)。ビーム測定部10の設置は手動でもよいが、アイソセンタCを中心として回転でき、設定したビーム軌道に応じて中心軸(ビームプロファイルモニタ10a,ビームプロファイルモニタ10b,および水ファントム10cそれぞれの中心を通る直線)をビーム軌道の中心に合わせるような図示しない装置を設け、逆写像算出部12の指令に応じて設定するようにしている。
【0039】
つぎに、データサーバ9bからキャリブレーションに必要なそれぞれ異なる複数の照射制御値(Ia,Ib,Eb)の組合せ(データ列:式(1))を読込み(ステップS100)、読み込んだデータ列に沿って順次(i=0〜n)実照射(ステップS110)および実照射位置座標の測定(ステップS120)を行う。具体的には、例えば、データ番号(i)順に、統括制御部8aは走査制御部8dに照射制御値を送り、走査制御部8dは、照射制御値(Iai,Ibi,Ebi)(i番目の場合)によって、走査電磁石2a,2b及び荷電粒子ビームのエネルギーを制御し、実際に試し照射を行う。
【0040】
【数1】
ただし、下添え数字はデータ番号を示す(データ数=n+1個の場合)。なお、照射制御値のデータ列は、照射制御部8のメモリに保存されていてもよい。
【0041】
実照射位置座標の測定は例えば、以下のようにして行う。ビームプロファイルモニタ10aにより、水ファントム10cのz方向基準点から、z方向にza距離離れたビームのビーム軌道に垂直な面内での座標(xa,ya,za)が得られる。ビームプロファイルモニタ10bにより、水ファントム10cのz方向基準点から、z方向にzb距離離れたビームの座標(xb,yb,zb)が得られる。水ファントム10cにおいてブラッグピークが生ずる深さzが得られれば、ブラッグピークが生ずる部分の座標(x,y,z)が得られる。これにより、i番目の照射制御値(Iai,Ibi,Ebi)に対する実照射形状(xi,yi,zi)が得られる。
【0042】
こうした実測定(ステップS110、S120)を、所定回数(i=0〜n)繰り返し、最終的にそれぞれ異なるn+1組の照射制御値(Ia,Ib,Eb)のデータ列に対応する実照射位置座標(x,y,z)のデータ列が得られる(ステップS200)。前述したように、照射制御値(Ia,Ib,Eb)から実照射座標位置(x,y,z)へは正方向の写像ととらえることができるので、照射制御値(Ia,Ib,Eb)の値をふって、それぞれの対応する実照射座標位置(x,y,z)を測定することにより、制御値のデータ列と測定値のデータ列の組合せから逆方向の写像を求める。
【0043】
これら複数(n+1個)の試し照射の実データ列の組合せから、逆写像数式f2-1を生成する。逆写像数式モデルの好適な例として多項式モデルが挙げられる。式(2)に多項式の一例として、最高次数が2次の場合の多項式を示す。
【0044】
【数2】
ただし、x、y、zは目標照射位置の座標であり、Iae、Ibe、Ebeは、それぞれ走査電磁石への制御値の推定値および荷電粒子ビームのエネルギーの制御値の推定値である。また、a000,a001,a002,・・・,a200,b000,b001,b002,・・・,b200,c000,c001,c002,・・・,c200は逆写像数式モデルf2-1の特性を決定する係数(未知パラメータ)である。
【0045】
未知パラメータである多項式の係数を求める好適な例は、最小二乗法である。最小二乗法により多項式の係数を求める式を式(3)、式(4)に示す。
【0046】
【数3】
【0047】
【数4】
ただし、上添えのTは、転置行列であることを示す。
【0048】
上記のようにして、ビーム軌道毎の逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを設定することができる(ステップS210)。
【0049】
これらの動作をステップS300において、必要なビーム軌道のパラメータの設定が完了していなければ(No)、次のビーム軌道(7b,7c)を設定(ステップS20)する。そして、必要なビーム軌道毎の逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータが得られれば(Yes)、キャリブレーションを完了する(ステップS400)。
【0050】
以上のキャリブレーションにより逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータ(多項式の各係数)を求めた後、本照射を実施する。まずスキャニング電磁石2aへのビーム入射点がキャリブレーション時から変動していないことを、ビーム輸送ダクト1に設けられたビームモニタ(図示しない)により確認する。この時ビーム入射点が変動していることが認められた場合には、上記キャリブレーション手順を再度行い、各係数を再び求めればよい。次に、治療計画装置からビーム軌道毎の目標照射位置座標を読込む(ステップS500)、目標照射位置座標も式(1)で示したような(x0,y0,z0)・・・(xm,ym,zm)のデータ列とすればよく、例えば、データ番号順に、目標照射位置座標を設定(ステップS510)し、ビーム軌道に対応して選択した逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを用いて照射制御値(Iaj,Ibj,Ebj)(j番目の場合)を生成する。(ステップS520)。そして生成した制御値により照射を行う(ステップS530)。これを必要な点数(m+1個)順次実施することにより、ビーム軌道毎に設定された目標照射位置を正確に再現した照射が可能となる。
【0051】
以上のように、本実施の形態2にかかる粒子線治療装置では、ビーム軌道(7a,7b,7c)に対応して、走査電磁石2a,2bへの制御値(Ia,Ib)および荷電粒子ビームBecのエネルギーの制御値Ebからなる(3次元の)照射制御値(Ia,Ib,Eb)と、3次元の照射制御値を用いて制御された荷電粒子ビームBecを試し照射した際のアイソセンタC部における実照射位置座標の測定値(x,y,z)、すなわち実データとに基づいて照射制御値推定値(Iae,Ibe,Ebe)を生成する逆写像数式モデルf2-1を使用するように構成したので、スキャニング電磁石が最下流になく、スキャニング電磁石2a,2bとアイソセンタC間の軌道が変化する複雑な系の場合でも、患部に対して正確な照射が可能となる。
【0052】
また、本実施の形態2にかかる粒子線治療装置の調整方法では、ビーム軌道を設定し、設定したビーム軌道(7a,7b,7c)に対応して荷電粒子ビームBecの実照射位置座標(x,y,z)を測定するビーム測定部10を設置するステップ(ステップS20)と、走査電磁石2a,2bへの2次元の制御値(Ia,Ib)と荷電粒子ビームBecのエネルギーの制御値Ebからなる照射制御値(Ia,Ib,Eb)であって、それぞれ異なる複数の照射制御値(データ列)を読込むステップ(ステップS100)と、読込んだ照射制御値にしたがって荷電粒子ビームBecを実照射し、アイソセンタC部における荷電粒子ビームBecの実照射位置座標(x,y,z)を測定するステップ(ステップS110、S120)と、測定した実照射位置座標の複数の測定結果(データ列)と対応する複数の照射制御値(データ列)との組合せから、逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを設定するステップ(ステップS210)と、を含むようにしたので、ビーム軌道毎に正確な照射が可能な粒子線治療装置が得られる。
【0053】
さらに、本実施の形態2にかかる粒子線治療装置は、走査電磁石2a,2bへの2次元の制御値(Ia,Ib)と荷電粒子ビームBecのエネルギーの制御値Ebからなる照射制御値(Ia,Ib,Eb)であって、それぞれ異なる複数の照射制御値(データ列)を読込むステップ(ステップS100)と、読込んだ照射制御値にしたがって実照射された荷電粒子ビームBecのアイソセンタC部における実照射位置座標(x,y,z)を測定するステップ(ステップS120)と、測定した実照射位置座標の複数の測定結果(データ列)と対応する複数の照射制御値との組合せから、逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを設定するステップ(ステップS210)と、を実行する逆写像算出部12を備えるように構成したので、自由度が高く正確な照射を継続的に行うことが可能となる。
【0054】
なお、本発明の実施の形態2では、逆写像算出部12にキャリブレーション時の実データを与えると最小二乗法により多項式の係数(未知パラメータ)を計算する機能を設けたが、照射制御部8や照射計画指示部9のように他の部分に計算機能を設けてもよい。
【0055】
また、多項式モデルの次数は、扱う粒子線照射装置の特性によって、非線形性が強いものは適宜次数を上げていけばよく、式(2)に示した最高次数=2のものである必要はない。本発明の実施の形態2では、いくつかの多項式モデルをあらかじめ用意し、オペレータが多項式モデルを選択できるようにした。例えば、上記式(2)では、x、y、zをそれぞれ同等に扱っているが、x、yに対するzの寄与が小さいので、演算処理を軽くするために、x、yに対してはzの次数を下げるような多項式モデルも設けておき、必要に応じて選択するようにしてもよい。
【0056】
また、本実施の形態2では、ひとつのビーム軌道に対して照射領域を網羅するn+1個のデータ列について説明したが、一度キャリブレーションを行った軌道に対し、校正をかける場合、測定する点数を適宜減らしてもよい。
【0057】
また、照射エリアをいくつかの小エリアに分割し、小エリアごとに写像を求めるようにするのも、特に非線形性が強い場合に効果的である。この場合、照射制御部8は、読み込んだ照射位置座標によって使用する未知パラメータを切替える、さらには逆写像数式モデル自体(例えば多項式の次数)を切替えるようにしてもよい。
【0058】
実施の形態2の変形例.
なお、本実施の形態2においては、キャリブレーションを実施する際の照射制御値をデータ列として読み込み、読み込んだデータ列毎に実照射をする例(図5におけるステップS100〜ステップS200)を示したが、制御値の各変数を一定間隔ごとに変化させる場合、図6に示すようなフローで実施してもよい。図6に示すフローは、図5におけるステップS100〜ステップS200に相当する部分を変形させた例を示すものであり、ステップS20以前、およびステップS210以降は図5と同様であるので記載を省略している。
【0059】
はじめに、主としてz方向(深さ)に影響する荷電粒子ビームBecのエネルギーの制御値Ebを初期値(例えばEb1,Eb2,・・・,Ebrにおいて、Eb1)に設定する(ステップS1010)。つぎに、スキャニング電磁石2bの制御値Ibを初期値(例えばIb1,Ib2,・・・,Ibqにおいて、Ib1)に設定する(ステップS1020)。つぎに、スキャニング電磁石2aの制御値Iaを初期値(例えばIa1,Ia2,・・・,Iapにおいて、Ia1)に設定する(ステップS1030)。そして設定した照射制御値で実照射(ステップS1100)し、アイソセンタC近傍での実照射位置座標(x,y,z)を測定する。
【0060】
これを、ステップS1200〜S1220において制御値ごとに必要な設定数が完了していなければ次の値(Ia2,・・・,Iap、Ib2,・・・,Ibq、Eb2,・・・,Ebr)に設定(ステップS1030、S1020,S1010)していき、順次増分(例えば、Ia1,・・・,Iap、Ib1,・・・,Ibq、Eb1,・・・,Ebrのそれぞれが等間隔で変化しているとする)していくと、p×q×r個の3次元格子状の照射制御値(Ia,Ib,Eb)のデータ列と照射形状(x,y,z)のデータ列との組み合わせが得られる(ステップS1220)。そして、上記データの組み合わせから最小二乗法により、逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを設定することが出来る(ステップS210)。
【0061】
本実施の形態2にかかる変形例によれば、一連の測定において2つの変数が一定で、1つの変数(本例ではIa)を変えていくように測定するため、水ファントムにより照射深さを測定する際に線量センサーをブラッグピークが生ずる位置に容易に追随させることができ、効率的に実照射位置座標を測定することができる。
【0062】
上記変形例では、ひとつのビーム軌道に対して照射領域を網羅する細かなほぼ格子状のデータ(p×q×r点)を取得する場合について説明したが、一度キャリブレーションを行った軌道に対し、校正をかける場合、測定する点数を適宜減らしてもよい。例えば、各制御値の増分量を大きくして網を粗くしてもよい。あるいは、照射エリアをいくつかのエリアに分割するようにしてもよい。この場合、各変数の増分や始点、終点を定めることになるので、視覚的にどのように測定点数を減少させたか(精度を粗くしたのか、エリアを小さくしたのかなど)が把握しやすくなる。
【0063】
実施の形態3.
上記実施の形態1、2では、スキャニング電磁石2の下流に複数のビーム軌道を設け、ビーム軌道切り替え用の偏向電磁石4により荷電粒子ビームを切り替えられるようにし、ビーム軌道ごとに必要な偏向電磁石5a,5bを設ける場合について述べた。本実施の形態3においては、偏向電磁石をビーム軌道に合わせて移動可能とし、ひとつの偏向電磁石で複数のビーム軌道に対応するようにした。図7、8は本発明の実施の形態3にかかる粒子線治療装置を説明するためのもので、図7は粒子線治療装置の構成を示す図、図8は機能を示すブロック図であり、偏向電磁石15vがビーム軌道7vに応じて移動できるようになっている。他の部分については、実施の形態1や2と同様である。
【0064】
なお、図7では図示していないが、偏向電磁石15vは可動支持部に移動可能に設置され、図8に示すように、ビーム軌道を切り替える際は、ビーム切替制御部8cvの指示により、選択したビーム軌道7vに応じて偏向電磁石15vを最適な位置に移動させる。
【0065】
つまり、本実施の形態3においては、偏向電磁石15vを移動できるようにしたことで、ひとつの偏向電磁石15vを複数のビーム軌道7vで共用できるようにした。この場合、照射角度を変えるときに物自体の位置が移動する部分は偏向電磁石15vのみであり、患者から十分遠い位置にあるので、この実施の形態3に示す方法でも、容易に遠隔多門照射は行える。
【0066】
なお、実施の形態2で示した逆写像数式モデルf2-1を用いて調整する手法は、本実施の形態3にも適用することができる。
【0067】
以上のように、本実施の形態3にかかる粒子線治療装置によれば、ビーム軌道を切り替えるための偏向電磁石は、走査電磁石2の下流に設けられ、走査電磁石2から走査出力された荷電粒子ビームBecを選択されたビーム軌道7vに応じて偏向させる第1の偏向電磁石であるビーム切替偏向電磁石4と、ビーム切替偏向電磁石4の下流であって、選択されたビーム軌道7vに対応して移動し、ビーム切替偏向電磁石4により偏向された荷電粒子ビームBecをアイソセンタCに向けて偏向させる第3の偏向電磁石である偏向電磁石15vと、を備えるように構成したので、ビーム軌道偏向用の偏向電磁石15vを駆動してひとつの偏向電磁石を複数のビーム軌道で共用でき、偏向電磁石及びその駆動電源の個数が少なくても、実施の形態1、実施の形態2で記載した効果を奏することができる。
【0068】
なお、図7では偏向電磁石15vが紙面の上下方向に移動する状態しか示していないが、紙面の奥行方向に移動させるようにしてもよい。このとき、偏向電磁石4も必要に応じて偏向方向を傾けるようにしてもよい。
【0069】
また、図9の変形例に示すように、偏向電磁石15vを例えば、ビーム軌道7vcを中心に回転移動させるようにしてもよい。この場合、偏向電磁石4は、偏向電磁石15vの移動に連動して、ビーム軌道7vcを中心に回転させるようにすればよい。
【0070】
実施の形態4.
実施の形態1では、スキャニング電磁石2の下流に複数のビーム軌道を設け、ビーム軌道切り替え用の偏向電磁石4によりビーム軌道を切り替えられるようにし、ビーム軌道ごとに必要な偏向電磁石5を設ける場合について述べたが、本実施の形態4にかかる粒子線治療装置では、図10に示すように、各ビーム軌道にビーム輸送ダクト20を設けた。他の機能や構成は実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
【0071】
ビーム輸送ダクト20を設ける目的は、荷電粒子ビームBecが空気中を通過することにより拡散し、ビームスポットサイズが大きくなることを抑えることである。スキャニング照射型の粒子線治療装置は、照射対象であるがん病巣を小領域ずつ照射するため、ビームスポットサイズは数mm程度に抑える必要がある。ビーム輸送ダクト20により、ビーム軌道を真空やヘリウムガスの状態に保つことができるので、荷電粒子ビームの拡散(走査による発散とは異なる)を抑制することができる。
【0072】
また、ダクトを外気と通気可能とした場合でも、荷電粒子線ビームの軌道上に異物や人等が入らないようにする防護機能を有することができる。
【0073】
なお、実施の形態2で示した逆写像数式モデルf2-1を用いる手法は、本実施の形態4にも適用することができ、外気の影響が抑えられるので、より正確な調整が可能となる。
【0074】
以上のように、第1の偏向電磁石4からアイソセンタCにかけて、複数のビーム軌道に対応する輸送ダクト20を設けたことにより、荷電粒子ビームの軌道を真空やヘリウムガスの雰囲気に保つことができ、スポットスキャニングに適した数mm程度の十分に小さいビームスポットサイズを照射できる粒子線治療装置を得ることができる。
【0075】
実施の形態5.
実施の形態3では、スキャニング電磁石2の下流に複数のビーム軌道を設け、ビーム軌道切り替え用の偏向電磁石4によりビーム軌道を切り替えられるようにし、切り替えたビーム軌道に対応して偏向電磁石15vを移動させる場合について述べたが、本実施の形態5にかかる粒子線治療装置では、図11に示すように、設定したビーム軌道に応じて移動または移動変形可能なビーム輸送ダクト30を設けた。他の機能や構成は実施の形態3と同様であり、説明を省略する。
【0076】
輸送ダクト30は、ビーム取り出し窓3に接続するビーム導入口30iと、アイソセンタCの直近に設置され、アイソセンタCに向けて荷電粒子ビームを出力するビーム出射口30eと、偏向電磁石4に対応して設置されたジョイント部30j1と、偏向電磁石15vに対応して移動する移動ジョイント部30j2と、ジョイント部30j1とジョイント部30j2間を結ぶ直管部30t1と、ジョイント部30j2とビーム出射口30eとを結ぶ直管部30t2からなり、直管部30t1,30t2は、それぞれジョイントに対して接続角を変更できるとともに、それぞれ直線性を保ったまま長さを変更(変形)できる。そして、輸送ダクト30内は、ジョイント部と直管部とを気密に接合することで真空やヘリウムガスの状態に保つことができる。
【0077】
また、本実施の形態5にかかる偏向電磁石15vに連動して移動または移動変形可能なビーム輸送ダクト30は、実施の形態3の変形例のように偏向電磁石15vが回転移動する場合にも対応可能である。図12は偏向電磁石15vの回転移動に連動して移動または移動変形可能なビーム輸送ダクト30を設けた場合の粒子線治療装置の構成を示すものである、動作については図11に示す場合と同様なので説明を省略する。
【0078】
なお、実施の形態2で示した逆写像数式モデルf2-1を用いる手法は、本実施の形態5にも適用することができ、外気の影響が抑えられるので、より正確な調整が可能となる。
【0079】
以上のように、第1の偏向電磁石4からアイソセンタCにかけて、選択されたビーム軌道に対応して移動または移動変形する輸送ダクト30を設けたことにより、ビーム軌道を真空やヘリウムガスの状態に保つことができ、スポットスキャニングに適した数mm程度の十分に小さいビームスポットサイズを照射できる粒子線治療装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ビーム輸送ダクト、 2 スキャニング電磁石(走査電磁石):2a X方向スキャニング電磁石、2b Y方向スキャニング電磁石、 3 ビーム取り出し窓、 4 ビーム切替偏向電磁石(第1の偏向電磁石)、 5 偏向電磁石 (第2の偏向電磁石):5a 偏向電磁石(ビーム軌道7a用)、5b 偏向電磁石(ビーム軌道7b用)、15v 偏向電磁石(移動式)、 6 椅子型患者保持装置、 7 ビーム軌道:7a,7va,7b,7vb,7c,7vc、 8 照射制御部、 9 照射計画指示部、 10 ビーム測定部:10a,10b ビームプロファイルモニタ、 10c 水ファントム、 20,30 ビーム輸送ダクト、 C アイソセンタ、 f1 関数、 f2-1 逆写像数式モデル、 Ia、Ib、Eb 制御値:(Ia,Ib,Eb)照射制御値、 (x,y,z) 照射位置座標
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん等の治療を目的として陽子線や重イオン線を照射する粒子線治療装置に関するものであり、特にスポットスキャニング、ラスタースキャニングなどの走査型照射を応用した粒子線治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線やγ線を体外から照射すると、体の表面近くで線量が最大となり、それ以降は深さとともに次第に減少していく。そのため、深いところにあるがん病巣に十分な線量を与えようとすると、がん病巣より浅いところにある正常細胞により大きなダメージを与えることになる。一方、粒子線照射では、照射エネルギーによって人体内に入る深さが定まり、その深さ前後でエネルギーを急激に放出して止まるブラッグピークと呼ばれる現象がある。そこで、この現象を利用し、粒子線のエネルギーを適切に調節すれば、体表面からがん病巣までの道筋にある正常な細胞への影響を抑え、腫瘍細胞だけを殺傷することができる。そのため、粒子線は、がん病巣に集中的に照射することができるので、患者にとって負担が少なく高齢者にも優しい治療方法として期待されている。
【0003】
他方、粒子線照射では、加速器のように大がかりな線源を必要とするので、X線源のように線源自体を容易に移動することができず、患部に適切な角度で照射するために、様々な提案がなされている。例えば、脳や眼球にできた腫瘍を治療する場合、患者は椅子型の患者保持装置に座り、荷電粒子ビームが水平照射される水平照射室にて行うことが一般的である。荷電粒子ビームはアイソセンタとよばれる照射目標位置に照射されるように設計され、患部の位置決めはX線撮影画像を見ながら椅子型の患者保持装置を動かすような放射線治療用の椅子型患者保持装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、椅子型患者保持装置において回転中心に患部を移動できる調整装置を備えたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、粒子線照射では、上述したようにブラッグピークを有するものの、体外から照射した粒子線ビームは、体表面側へもある程度は影響をおよぼす。そこで、粒子線治療装置では、重要な正常組織への照射を避けるため、照射角度を患部に合わせて適切に設定できることが求められている。また、がん病巣に複数の方向から照射する多門照射が提案されており、正常組織への照射を減らす効果が知られている。
【0005】
しかし、従来の椅子型患者保持装置を用いる水平照射方法では、照射角度を変えるとき、患者を乗せて椅子型患者保持装置ごと姿勢を変える必要があり、患者にとって負担がかかるといった問題点があった。例えば椅子型患者保持装置を前方向や横方向に倒すとき、特に高齢の患者には大きな負担となる。
【0006】
そのため、高自由度な照射角度を実現するため、固定ポート照射ではなく回転ガントリと呼ばれる回転照射型の粒子線治療装置を用い、ベッド型患者保持装置と組み合わせる方法もよく知られている。しかしこの方法では、装置が大掛かりとなり、イニシャルコスト(導入費用)やランニングコストがかかる、設置するために広い空間を占領してしまう、などの問題点があった。なお、回転ガントリを用いた粒子線治療装置は陽子線ではよく使われているが、荷電粒子として炭素イオン等の重イオンを用いる場合、ビーム軌道を曲げる曲率半径が大きく、巨大な電磁石を回転させる必要があるため装置化がさらに困難である。また、回転ガントリを用いて多門照射を行うことができるが、照射角度を変えるときには回転ガントリとともに照射装置が回転駆動するため、技師が照射室に入り照射装置と患者とが衝突しないよう、確認をしながらでないと照射角度を変えられないという問題点があった。
【0007】
そこで、回転ガントリを用いずに照射角度に自由度をもたせるため、偏向電磁石によって規定される複数のビーム軌道毎に照射ノズルやスキャニング電磁石を移動させるようにしたビーム照射装置(例えば、特許文献3、4参照)が提案されている。
【0008】
ここで、粒子線治療装置の照射系について説明すると、大きく以下の2つの機能が必要である。ひとつは荷電粒子ビームを所望の角度で所望の位置にむけて照射するための機能、もうひとつは腫瘍などの照射対象を選択的に照射するための照射形状を整形するための機能である。そして、照射形状を整形するための機能の実現方式によって、粒子線治療装置は2つに大別される。ワブラ電磁石、散乱体、レンジモジュレータ、患者コリメータ、患者ボーラス等により構成される照射ノズルを用いて照射領域を一気に照射するブロード照射型とよばれるものと、スキャニング電磁石等によって小さな照射領域を走査して段階的に照射領域を照射するスキャニング照射型とよばれるものとである。いずれの場合でも、照射ノズルまたはスキャニング電磁石から照射対象に向かって、粒子線は発散方向に広がるように進むことになるので、照射ノズルやスキャニング電磁石と照射対象との距離が近いと、発散角が大きくなり、同じ照射対象に照射するのでも発散角が小さい場合に比べて荷電粒子が体表面を通過する面積が小さくなるので、体表面での照射密度が大きくなり、正常組織である体表面への被害が増えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−89928号公報(段落0012、図1)
【特許文献2】特開平5−111540号公報(段落0018、図3)
【特許文献3】特開2002−113118号公報(段落0013、図1)
【特許文献4】特表2003−528659号公報(段落0055、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、偏向電磁石により規定したビーム軌道に合わせて照射ノズルやスキャニング電磁石を移動させる場合、照射ノズルやスキャニング電磁石を偏向電磁石の下流に設置することになる。すると、照射ノズルまたはスキャニング電磁石から照射対象までの距離は短くせざるを得ない。そのため、粒子線の発散角が大きくなるので、体表面での照射密度が上がり、正常な組織への照射量が増大するという問題点があった。さらに、重量が大きな照射ノズルやスキャニング電磁石を移動させるために、装置が複雑化するという問題点があった。
【0011】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、照射自由度が高く、正常組織への照射量を低減できる粒子線治療装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる粒子線治療装置は、供給された荷電粒子ビームを治療計画に基づく3次元の照射形状に整形するよう前記荷電粒子ビームをそれぞれ異なる方向に走査制御する2つのスキャニング電磁石を備えた走査電磁石と、前記走査電磁石により走査された荷電粒子ビームが前記走査電磁石の下流に設定された複数のビーム軌道のうち、選択されたひとつのビーム軌道を通るように前記荷電粒子ビームの軌道を切り替える偏向電磁石と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粒子線治療装置は、ビーム軌道を切替える偏向電磁石より上流側にスキャニング電磁石を設置したので、荷電粒子ビームが発散する距離を長くすることにより、照射自由度が高く、正常組織への照射量を低減できる粒子線治療装置を得ることができる。
【0014】
また、本発明にかかる粒子線治療装置の調整方法によれば、ビーム軌道毎に照射制御値のデータ列を読込んで荷電粒子ビームを実照射し、アイソセンタ部における荷電粒子ビームの実照射位置座標のデータ列と照射制御値のデータ列との組合せから照射位置座標から制御値への逆写像モデルの未知パラメータを設定するようにしたので、どのような軌道を選んでも正確な照射が可能な粒子線治療装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる粒子線治療装置の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態2にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる粒子線治療装置の機能を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかる粒子線治療装置の調整方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2の変形例にかかる粒子線治療装置の調整方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態3にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかる粒子線治療装置の機能を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態3の変形例にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態5にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態5の変形例にかかる粒子線治療装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
以下、本発明にかかる粒子線治療装置の実施の形態1について説明する。図1、2は本発明の実施の形態1にかかる粒子線治療装置を説明するためのもので、図1は粒子線治療装置の全体構成を示す図、図2は粒子線治療装置の機能を示すブロック図である。粒子線治療装置は、図1に示すように、加速された荷電粒子ビームBecを拡散させずに輸送するためのビーム輸送ダクト1、ビーム輸送ダクト1を挟むようにビーム輸送ダクト1の外側に配置され、輸送された荷電粒子ビームBecを走査するスキャニング電磁石2(2a,2b)、走査された荷電粒子ビームBecを取り出すためのビーム取り出し窓3、スキャニング電磁石2の下流に配置され、ビーム取り出し窓3から取り出された荷電粒子ビームBecを、以降の複数のビーム軌道(7a,7b,7c)へと切り替えるための偏向電磁石4、複数のビーム軌道(7a,7b,7c)において最終的な照射目標位置であるアイソセンタCへと荷電粒子ビームBecを偏向するための偏向電磁石5(5a、5b(7cでは不要))、及び、座位で患者Kを保持するための椅子型患者保持装置6とを備えている。
【0017】
そして、粒子線治療装置は、照射計画指示部9から指示された照射方法に従って、上記スキャニング電磁石2(2a,2b)、偏向電磁石4、偏向電磁石5(5a、5b)の動作、および荷電粒子ビームBecの運動エネルギーを調整するために図示しない上流の荷電粒子ビーム供給部の動作を制御するための照射制御部8を備えている。
【0018】
つぎに、各部の制御について図2を用いて説明する。照射計画指示部9は、本実施の形態1においては、粒子線治療装置と独立した装置であり、患部への適切な治療計画を生成する治療計画装置9aと、各種データを保持し、生成した治療計画に従って、具体的な照射角度や照射形状等のデータを出力するサーバ9bとを備えている。そして、本実施の形態1にかかる粒子線治療装置の照射制御部8では、照射計画指示部9から出力された照射角度(ビーム軌道)や照射形状に基づいて生成された目標照射座標(x,y,z)の点列データ等のデータに従い、統括制御部8aを中心に照射制御を行う。照射制御部8の制御値生成部8bは、アイソセンタCにおいて指定された照射形状を形作る座標(x,y,z)への照射を実現するために、目標照射座標(x,y,z)から、走査電磁石2a,2bおよび荷電粒子ビームBecのエネルギー(荷電粒子の運動エネルギー)の制御値(Ia,Ib,Eb)を算出するための関数f1(x,y,z)を照射角度(ビーム軌道7a、7b、7c)に応じて選択する。そして、制御値生成部8bは、ビーム軌道(7a、7b、7c)に応じて選択した関数f1(関数f1はルックアップテーブルでもよい)を用いて、目標照射座標(x,y,z)から制御値(Ia,Ib,Eb)を算出し、算出した制御値(Ia,Ib,Eb)を統括制御部8aに出力し、最終的にスキャニング電磁石2(2a,2b)と加速器を制御する。ここで、目標照射座標(x,y,z)は、照射対象であるアイソセンタC近傍でのビーム軌道の中心軸に対して垂直な平面内の座標軸x、yと、照射深さ方向の座標軸zからなる座標系での座標である。また、制御値は、照射形状を実現するためのスキャニング電磁石2(2a,2b)への制御値(Ia,Ib)と、荷電粒子ビームBecのエネルギーを決定する加速器への制御値(Eb)であり、とくに3次元の制御値(Ia,Ib,Eb)を以降照射制御値と称する。
【0019】
そして、統括制御部8aは、ビーム軌道を設定(7a、7b、7c)するために、ビーム切替制御部8cに偏向電磁石4、5a,5bへの制御指示信号を出力する。また、制御値生成部8bで生成された照射制御値(Ia,Ib,Eb)は、それぞれ走査電磁石2a、2b、荷電粒子ビーム供給部である加速器へとそれぞれ出力される。補足であるが、走査電磁石2a、2bへの制御値は、具体的には電流値、ヒステリシスを考慮して補正計算した電流値や設定磁場強度等であり、加速器への制御値は、具体的には荷電粒子の目標運動エネルギー等である。
【0020】
なお、図示しないが、椅子型患者保持装置6は、アイソセンタCを通る回転軸を中心に回転することができ、その回転角度や高さなどの位置や姿勢も統括制御部8aによって制御することができる。
【0021】
次に動作について説明する。図示しない加速器により加速された荷電粒子ビームBecは、図示しない輸送系を経由してビーム輸送ダクト1へと導かれる。ビーム輸送ダクト1に導かれた荷電粒子ビームBecは、腫瘍などの照射対象を選択的かつ所望の線量を照射する照射形状を実現するよう制御値(Ia,Ib)が入力されたスキャニング電磁石2により、走査(スキャン(例えば2aによりx方向、2bによりy方向))制御される。走査制御された荷電粒子ビームBecはビーム取り出し窓3から取り出され、ここで、ビーム軌道切り替え用の偏向電磁石4へと導かれる。偏向電磁石4に導かれた荷電粒子ビームBecは、設定された軌道に応じて偏向電磁石4により偏向される。ここで、軌道7aの場合は図中上向きに偏向され、軌道7bの場合は図中下向きに偏向され、軌道7cの場合は偏向されずに直進することになる。軌道7aの場合は、偏向電磁石5aが動作し、下向きに偏向されて上方からアイソセンタCに向けて荷電粒子ビームBecが照射される。軌道7bの場合は、偏向電磁石5bが動作し、上向きに偏向されて下方からアイソセンタCに向けて荷電粒子ビームBecが照射される。軌道7cの場合は水平方向からアイソセンタCに向けて荷電粒子ビームBecが照射される。
【0022】
つまり、荷電粒子ビームBecを3次元の照射形状に整形するためのスキャニング電磁石2a、2bを、ビーム軌道を規定する偏向電磁石4、5a、5bよりも上流側に配置したので、荷電粒子ビームBecは、最短でもビーム取り出し窓3からアイソセンタCまでの長い距離の間で発散させることになる。例えば、アイソセンタCにおける照射領域の大きさが10cmで、ビーム取り出し窓3からアイソセンタCまでの距離が5mある場合、発散角は2.3度になり、10mある場合は1.1度になる。一方、特許文献3,4のようにスキャニング手段を偏向電磁石の下流に配置する場合、発散が始まる位置からアイソセンタCまでの距離を長く取ろうとすると装置が大掛かりになってしまうので、実質的に距離を取ることは困難である。そのため、例えば距離が1mになった場合、発散角は11度まで、50cmにまで近くなった場合、23度まで拡大してしまう。この場合、例えば体表面から10cmの深さの患部に粒子線を照射したときの、体表面部分での照射密度比(体表面での照射密度/患部における照射密度)は、本実施の形態のように距離10mや5mの場合はそれぞれ1.0であるのに対し、距離が1mでは1.2に、距離が50cmでは1.6にまで増大して正常組織へのダメージが大きくなってしまう。
【0023】
また、本実施の形態1にかかる粒子線治療装置では、スキャニング電磁石2a、2bでのビームを曲げる角度を大きくする必要がないので、スキャニング電磁石の大きさを低減でき、消費電力も低減できる。
【0024】
以上のように、本実施の形態1にかかる粒子線治療装置によれば、供給された荷電粒子ビームBecを治療計画に基づく3次元の照射形状に整形するよう走査する走査(スキャニング)電磁石2a,2bと、走査電磁石2a,2bにより走査された荷電粒子ビームBecが走査電磁石2a,2bからアイソセンタCまでに設定された複数のビーム軌道7a,7b,7cのうち、選択されたひとつのビーム軌道を経てアイソセンタCに到達するように荷電粒子ビームBecの軌道を切り替える偏向電磁石4、5a,5bと、を備えるように構成したので、照射対象であるアイソセンタから遠く離れた位置から荷電粒子ビームBecが発散し始めることになり、発散角を抑制することができる。そのため、照射自由度が高く、体表面での照射密度の増大を防止し、正常組織への照射量を低減することができる。
【0025】
つまり、従来では最下流に配置されるスキャニング電磁石2の下流側に偏向電磁石4、5を配置したことにより、大掛かりな回転ガントリを用いることなく、照射角度の自由度の高い、コンパクトな粒子線治療装置を得ることができる。照射角度の自由度が高いため、患者の姿勢を変える必要がなく(変えてもよいが、従来の固定ポートからの水平照射に比べて大きく変える必要がなく)、高齢者の患者にとっても負担の少ない粒子線治療装置を得ることができる。また、大掛かりな回転ガントリを用いたりスキャニング電磁石を移動させたりすることなく、照射自由度の高いコンパクトな粒子線治療装置が得られる。
【0026】
とくに、3次元の照射形状を形作る照射位置座標(x,y,z)を、選択されたビーム軌道7a,7b,7cに応じて設定された関数f1を用いて変換し、変換して得られた照射制御値(Ia,Ib,Eb)を用いて走査電磁石2a,2bおよび荷電粒子ビームBecのエネルギーを制御する照射制御部8を備えるように構成した。
【0027】
制御値を生成する具体的な方法は実施の形態2で詳しく述べるが、照射形状を形作る機能である走査電磁石が最下流にない複雑な系であって、ビーム軌道が複数ある場合においても、目標照射座標への高精度な照射を実現する制御値生成ができる。これにより、どのような軌道を選択しても正確な照射が可能となるので、照射精度を高く保ちつつ、照射系機器の配置に自由度を持たすことが可能となった。
【0028】
さらに、走査電磁石2の下流に設けたビーム軌道を切り替えるための偏向電磁石は、走査電磁石2から走査出力された荷電粒子ビームBecを選択された軌道(7a,7b,7c)に応じて偏向させる第1の偏向電磁石であるビーム切替電磁石4と、ビーム切替電磁石4の下流であって、複数のビーム軌道毎に設けられ、ビーム切替電磁石4により偏向された荷電粒子ビームBecをアイソセンタCに向けて偏向させる第2の偏向電磁石である偏向電磁石5a,5b(軌道7cに対しては必要ないが、基本的にビーム軌道毎に設けられたと称する)とを備えるようにしたので、ビーム軌道を切り替える際に位置を移動するものがなく、容易に照射角度を切り替えることができる。
【0029】
また、上記実施の形態によれば、スキャニング電磁石2を複数のビーム軌道に応じて複数用意したり、移動できるようにしたりする必要がない。更に、回転ガントリを用いた方式のように照射角度を変えるときに患者の近傍で駆動する照射部がないため、照射角度を変えるたびに技師が照射室に入ることなく、遠隔で多門照射を行う粒子線治療装置を得ることができる。
【0030】
なお、本実施の形態1における粒子線治療装置では偏向電磁石5として紙面の上下方向に2つの偏向電磁石5a、5bを配し、偏向電磁石4では紙面での上下方向にのみ軌道を変化させる例を示しているが、これに限られることはない。例えば、紙面の上下方向の数を変化させてもよいし、軌道7cを中心とする周方向のどの位置に配置してもよい。その場合、ビーム切替偏向電磁石4を設定したビームの軌道に応じて、軌道7cを中心として適宜回転させるようにしてもよい。
【0031】
また、本実施の形態1においては、関数f1の導出方法について特に明示していないが、偏向電磁石4、5の性質に応じてビーム軌道毎にシミュレーションを行い設定することが可能である。また、後述する実施の形態2のように実測値に基づいて生成した逆写像数式モデルを使用するようにしてもよい。
【0032】
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2にかかる粒子線治療装置および粒子線治療装置の調整方法について説明する。図3〜5は本発明の実施の形態2にかかる粒子線治療装置および粒子線治療装置の調整方法を説明するためのもので、図3は粒子線治療装置の全体構成を示す図、図4は粒子線治療装置の機能を示すブロック図、図5は粒子線治療装置の調整方法を示すフローチャートである。実施の形態2における粒子線治療装置では、照射形状を形作る目標照射座標(x,y,z)の点列データからビーム軌道に応じて3次元の照射制御値(Ia,Ib,Eb)を算出するための関数として実測値に基づく逆写像数式モデルf2-1を使用すること、逆写像数式モデルの未知パラメータを設定するための機能について詳細に記載するが、他の部分については実施の形態1と同様である。また、図3においては、粒子線治療装置の調整の説明に用いない患者Kや椅子型患者保持装置6を省略している。
【0033】
本実施の形態2においては、アイソセンタC近傍での粒子線ビームBecの照射位置(ビーム軌道の中心に対して垂直な平面内の座標(x,y)、およびビーム軌道に平行な深さZ)を測定するためのビーム測定部10(ビームプロファイルモニタ10a、10bおよび水ファントム10c)と、照射制御値と実測値に基づいてビーム軌道毎の逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを設定する逆写像算出部12とを備えている。
【0034】
ビーム測定部10は、ビーム軌道毎に設置するものであり、図3においてはビーム軌道7aでの照射形状を測定する場合について記載している。ビーム測定部10は、基本的に10a、10b、10cそれぞれの中心を結ぶ線(ビーム測定部10におけるz軸)をビーム軌道の中心に合わすように設置し、水ファントムは照射範囲全体をカバーできるようにアイソセンタCを含むように配置する、ビームプロファイルモニタ10aと10bは、ビーム軌道上の水ファントム10cの上流側にビーム軌道方向に沿って深さ(z方向)が異なる位置に配置し、ビーム軌道に垂直な平面内でのビームの位置(紙面におけるz方向に垂直な方向をx、紙面に垂直な方向をyとする)を測定する。
【0035】
なお、図3、4では、逆写像算出部12を照射制御部8や照射計画指示部9と独立して配置し、逆写像算出部12で算出した逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータをデータサーバ9bに保存し、実際の治療の際には、データサーバ9bに保存した逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを制御値生成部8bが呼び出して使用する場合を示している。しかし、逆写像算出部12を照射制御部8や照射計画指示部9内に内蔵してもよく、逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータの取得や使用ができるのであれば、保存場所やデータの受け渡し方法はどのような形態であっても構わない。そして、逆写像数式モデルf2-1による照射形状(x,y,z)から照射制御値(Ia,Ib,Eb)への変換は実施の形態1における関数f1を用いる場合と同様であるので、ここでは逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータの取得について説明を行う。
【0036】
X方向スキャニング電磁石2aの制御値をIa、Y方向スキャニング電磁石2bの制御値をIb、荷電粒子ビームのエネルギーに関する制御値をEbとし、照射される荷電粒子ビームの照射位置を(x,y,z)とする。スキャニング電磁石2aへの荷電粒子ビームBecの入射点が変動しないとすると、(Ia,Ib,Eb)が決まれば(x,y,z)も一意に決まるので、この物理現象は(Ia,Ib,Eb)から(x,y,z)への写像と考えることができる。照射形状を整形するための機能(例えばスキャニング電磁石)が最下流(アイソセンタCの直近)にあれば、この写像が直感的に理解することができ、かつ、簡単な写像となる。このため、従来、照射形状を整形するための機能は最下流に配置されていた。しかし、本発明にかかる粒子線治療装置では、発散角を抑えるために、照射形状を整形するためのスキャニング電磁石とアイソセンタCとの距離を離したり間に偏向電磁石があったりしたので、実施の形態1では、例えばシミュレーション等により写像として関数f1を求めるようにしていた。一方、本発明の実施の形態2では、図3、4に示すように実測値に基づき、所望の照射形状を形作る目標照射座標(x,y,z)の点列データから想定した照射制御値(Iae,Ibe,Ebe)を生成する逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを求めるようにした。
【0037】
つぎに、具体的なキャリブレーション(粒子線治療装置の調整方法)について説明する。なお、本実施の形態2においては、逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを取得するためのメイン制御は、逆写像算出部12が行うものとして、一例を図5のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
逆写像算出部12を起動させてキャリブレーションを開始する(ステップS10)と、ビーム軌道を設定するとともに、設定したビーム軌道に対応して荷電粒子ビームの実照射位置を測定するビーム測定部10を設置する(ステップS20)。ビーム測定部10の設置は手動でもよいが、アイソセンタCを中心として回転でき、設定したビーム軌道に応じて中心軸(ビームプロファイルモニタ10a,ビームプロファイルモニタ10b,および水ファントム10cそれぞれの中心を通る直線)をビーム軌道の中心に合わせるような図示しない装置を設け、逆写像算出部12の指令に応じて設定するようにしている。
【0039】
つぎに、データサーバ9bからキャリブレーションに必要なそれぞれ異なる複数の照射制御値(Ia,Ib,Eb)の組合せ(データ列:式(1))を読込み(ステップS100)、読み込んだデータ列に沿って順次(i=0〜n)実照射(ステップS110)および実照射位置座標の測定(ステップS120)を行う。具体的には、例えば、データ番号(i)順に、統括制御部8aは走査制御部8dに照射制御値を送り、走査制御部8dは、照射制御値(Iai,Ibi,Ebi)(i番目の場合)によって、走査電磁石2a,2b及び荷電粒子ビームのエネルギーを制御し、実際に試し照射を行う。
【0040】
【数1】
ただし、下添え数字はデータ番号を示す(データ数=n+1個の場合)。なお、照射制御値のデータ列は、照射制御部8のメモリに保存されていてもよい。
【0041】
実照射位置座標の測定は例えば、以下のようにして行う。ビームプロファイルモニタ10aにより、水ファントム10cのz方向基準点から、z方向にza距離離れたビームのビーム軌道に垂直な面内での座標(xa,ya,za)が得られる。ビームプロファイルモニタ10bにより、水ファントム10cのz方向基準点から、z方向にzb距離離れたビームの座標(xb,yb,zb)が得られる。水ファントム10cにおいてブラッグピークが生ずる深さzが得られれば、ブラッグピークが生ずる部分の座標(x,y,z)が得られる。これにより、i番目の照射制御値(Iai,Ibi,Ebi)に対する実照射形状(xi,yi,zi)が得られる。
【0042】
こうした実測定(ステップS110、S120)を、所定回数(i=0〜n)繰り返し、最終的にそれぞれ異なるn+1組の照射制御値(Ia,Ib,Eb)のデータ列に対応する実照射位置座標(x,y,z)のデータ列が得られる(ステップS200)。前述したように、照射制御値(Ia,Ib,Eb)から実照射座標位置(x,y,z)へは正方向の写像ととらえることができるので、照射制御値(Ia,Ib,Eb)の値をふって、それぞれの対応する実照射座標位置(x,y,z)を測定することにより、制御値のデータ列と測定値のデータ列の組合せから逆方向の写像を求める。
【0043】
これら複数(n+1個)の試し照射の実データ列の組合せから、逆写像数式f2-1を生成する。逆写像数式モデルの好適な例として多項式モデルが挙げられる。式(2)に多項式の一例として、最高次数が2次の場合の多項式を示す。
【0044】
【数2】
ただし、x、y、zは目標照射位置の座標であり、Iae、Ibe、Ebeは、それぞれ走査電磁石への制御値の推定値および荷電粒子ビームのエネルギーの制御値の推定値である。また、a000,a001,a002,・・・,a200,b000,b001,b002,・・・,b200,c000,c001,c002,・・・,c200は逆写像数式モデルf2-1の特性を決定する係数(未知パラメータ)である。
【0045】
未知パラメータである多項式の係数を求める好適な例は、最小二乗法である。最小二乗法により多項式の係数を求める式を式(3)、式(4)に示す。
【0046】
【数3】
【0047】
【数4】
ただし、上添えのTは、転置行列であることを示す。
【0048】
上記のようにして、ビーム軌道毎の逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを設定することができる(ステップS210)。
【0049】
これらの動作をステップS300において、必要なビーム軌道のパラメータの設定が完了していなければ(No)、次のビーム軌道(7b,7c)を設定(ステップS20)する。そして、必要なビーム軌道毎の逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータが得られれば(Yes)、キャリブレーションを完了する(ステップS400)。
【0050】
以上のキャリブレーションにより逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータ(多項式の各係数)を求めた後、本照射を実施する。まずスキャニング電磁石2aへのビーム入射点がキャリブレーション時から変動していないことを、ビーム輸送ダクト1に設けられたビームモニタ(図示しない)により確認する。この時ビーム入射点が変動していることが認められた場合には、上記キャリブレーション手順を再度行い、各係数を再び求めればよい。次に、治療計画装置からビーム軌道毎の目標照射位置座標を読込む(ステップS500)、目標照射位置座標も式(1)で示したような(x0,y0,z0)・・・(xm,ym,zm)のデータ列とすればよく、例えば、データ番号順に、目標照射位置座標を設定(ステップS510)し、ビーム軌道に対応して選択した逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを用いて照射制御値(Iaj,Ibj,Ebj)(j番目の場合)を生成する。(ステップS520)。そして生成した制御値により照射を行う(ステップS530)。これを必要な点数(m+1個)順次実施することにより、ビーム軌道毎に設定された目標照射位置を正確に再現した照射が可能となる。
【0051】
以上のように、本実施の形態2にかかる粒子線治療装置では、ビーム軌道(7a,7b,7c)に対応して、走査電磁石2a,2bへの制御値(Ia,Ib)および荷電粒子ビームBecのエネルギーの制御値Ebからなる(3次元の)照射制御値(Ia,Ib,Eb)と、3次元の照射制御値を用いて制御された荷電粒子ビームBecを試し照射した際のアイソセンタC部における実照射位置座標の測定値(x,y,z)、すなわち実データとに基づいて照射制御値推定値(Iae,Ibe,Ebe)を生成する逆写像数式モデルf2-1を使用するように構成したので、スキャニング電磁石が最下流になく、スキャニング電磁石2a,2bとアイソセンタC間の軌道が変化する複雑な系の場合でも、患部に対して正確な照射が可能となる。
【0052】
また、本実施の形態2にかかる粒子線治療装置の調整方法では、ビーム軌道を設定し、設定したビーム軌道(7a,7b,7c)に対応して荷電粒子ビームBecの実照射位置座標(x,y,z)を測定するビーム測定部10を設置するステップ(ステップS20)と、走査電磁石2a,2bへの2次元の制御値(Ia,Ib)と荷電粒子ビームBecのエネルギーの制御値Ebからなる照射制御値(Ia,Ib,Eb)であって、それぞれ異なる複数の照射制御値(データ列)を読込むステップ(ステップS100)と、読込んだ照射制御値にしたがって荷電粒子ビームBecを実照射し、アイソセンタC部における荷電粒子ビームBecの実照射位置座標(x,y,z)を測定するステップ(ステップS110、S120)と、測定した実照射位置座標の複数の測定結果(データ列)と対応する複数の照射制御値(データ列)との組合せから、逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを設定するステップ(ステップS210)と、を含むようにしたので、ビーム軌道毎に正確な照射が可能な粒子線治療装置が得られる。
【0053】
さらに、本実施の形態2にかかる粒子線治療装置は、走査電磁石2a,2bへの2次元の制御値(Ia,Ib)と荷電粒子ビームBecのエネルギーの制御値Ebからなる照射制御値(Ia,Ib,Eb)であって、それぞれ異なる複数の照射制御値(データ列)を読込むステップ(ステップS100)と、読込んだ照射制御値にしたがって実照射された荷電粒子ビームBecのアイソセンタC部における実照射位置座標(x,y,z)を測定するステップ(ステップS120)と、測定した実照射位置座標の複数の測定結果(データ列)と対応する複数の照射制御値との組合せから、逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを設定するステップ(ステップS210)と、を実行する逆写像算出部12を備えるように構成したので、自由度が高く正確な照射を継続的に行うことが可能となる。
【0054】
なお、本発明の実施の形態2では、逆写像算出部12にキャリブレーション時の実データを与えると最小二乗法により多項式の係数(未知パラメータ)を計算する機能を設けたが、照射制御部8や照射計画指示部9のように他の部分に計算機能を設けてもよい。
【0055】
また、多項式モデルの次数は、扱う粒子線照射装置の特性によって、非線形性が強いものは適宜次数を上げていけばよく、式(2)に示した最高次数=2のものである必要はない。本発明の実施の形態2では、いくつかの多項式モデルをあらかじめ用意し、オペレータが多項式モデルを選択できるようにした。例えば、上記式(2)では、x、y、zをそれぞれ同等に扱っているが、x、yに対するzの寄与が小さいので、演算処理を軽くするために、x、yに対してはzの次数を下げるような多項式モデルも設けておき、必要に応じて選択するようにしてもよい。
【0056】
また、本実施の形態2では、ひとつのビーム軌道に対して照射領域を網羅するn+1個のデータ列について説明したが、一度キャリブレーションを行った軌道に対し、校正をかける場合、測定する点数を適宜減らしてもよい。
【0057】
また、照射エリアをいくつかの小エリアに分割し、小エリアごとに写像を求めるようにするのも、特に非線形性が強い場合に効果的である。この場合、照射制御部8は、読み込んだ照射位置座標によって使用する未知パラメータを切替える、さらには逆写像数式モデル自体(例えば多項式の次数)を切替えるようにしてもよい。
【0058】
実施の形態2の変形例.
なお、本実施の形態2においては、キャリブレーションを実施する際の照射制御値をデータ列として読み込み、読み込んだデータ列毎に実照射をする例(図5におけるステップS100〜ステップS200)を示したが、制御値の各変数を一定間隔ごとに変化させる場合、図6に示すようなフローで実施してもよい。図6に示すフローは、図5におけるステップS100〜ステップS200に相当する部分を変形させた例を示すものであり、ステップS20以前、およびステップS210以降は図5と同様であるので記載を省略している。
【0059】
はじめに、主としてz方向(深さ)に影響する荷電粒子ビームBecのエネルギーの制御値Ebを初期値(例えばEb1,Eb2,・・・,Ebrにおいて、Eb1)に設定する(ステップS1010)。つぎに、スキャニング電磁石2bの制御値Ibを初期値(例えばIb1,Ib2,・・・,Ibqにおいて、Ib1)に設定する(ステップS1020)。つぎに、スキャニング電磁石2aの制御値Iaを初期値(例えばIa1,Ia2,・・・,Iapにおいて、Ia1)に設定する(ステップS1030)。そして設定した照射制御値で実照射(ステップS1100)し、アイソセンタC近傍での実照射位置座標(x,y,z)を測定する。
【0060】
これを、ステップS1200〜S1220において制御値ごとに必要な設定数が完了していなければ次の値(Ia2,・・・,Iap、Ib2,・・・,Ibq、Eb2,・・・,Ebr)に設定(ステップS1030、S1020,S1010)していき、順次増分(例えば、Ia1,・・・,Iap、Ib1,・・・,Ibq、Eb1,・・・,Ebrのそれぞれが等間隔で変化しているとする)していくと、p×q×r個の3次元格子状の照射制御値(Ia,Ib,Eb)のデータ列と照射形状(x,y,z)のデータ列との組み合わせが得られる(ステップS1220)。そして、上記データの組み合わせから最小二乗法により、逆写像数式モデルf2-1の未知パラメータを設定することが出来る(ステップS210)。
【0061】
本実施の形態2にかかる変形例によれば、一連の測定において2つの変数が一定で、1つの変数(本例ではIa)を変えていくように測定するため、水ファントムにより照射深さを測定する際に線量センサーをブラッグピークが生ずる位置に容易に追随させることができ、効率的に実照射位置座標を測定することができる。
【0062】
上記変形例では、ひとつのビーム軌道に対して照射領域を網羅する細かなほぼ格子状のデータ(p×q×r点)を取得する場合について説明したが、一度キャリブレーションを行った軌道に対し、校正をかける場合、測定する点数を適宜減らしてもよい。例えば、各制御値の増分量を大きくして網を粗くしてもよい。あるいは、照射エリアをいくつかのエリアに分割するようにしてもよい。この場合、各変数の増分や始点、終点を定めることになるので、視覚的にどのように測定点数を減少させたか(精度を粗くしたのか、エリアを小さくしたのかなど)が把握しやすくなる。
【0063】
実施の形態3.
上記実施の形態1、2では、スキャニング電磁石2の下流に複数のビーム軌道を設け、ビーム軌道切り替え用の偏向電磁石4により荷電粒子ビームを切り替えられるようにし、ビーム軌道ごとに必要な偏向電磁石5a,5bを設ける場合について述べた。本実施の形態3においては、偏向電磁石をビーム軌道に合わせて移動可能とし、ひとつの偏向電磁石で複数のビーム軌道に対応するようにした。図7、8は本発明の実施の形態3にかかる粒子線治療装置を説明するためのもので、図7は粒子線治療装置の構成を示す図、図8は機能を示すブロック図であり、偏向電磁石15vがビーム軌道7vに応じて移動できるようになっている。他の部分については、実施の形態1や2と同様である。
【0064】
なお、図7では図示していないが、偏向電磁石15vは可動支持部に移動可能に設置され、図8に示すように、ビーム軌道を切り替える際は、ビーム切替制御部8cvの指示により、選択したビーム軌道7vに応じて偏向電磁石15vを最適な位置に移動させる。
【0065】
つまり、本実施の形態3においては、偏向電磁石15vを移動できるようにしたことで、ひとつの偏向電磁石15vを複数のビーム軌道7vで共用できるようにした。この場合、照射角度を変えるときに物自体の位置が移動する部分は偏向電磁石15vのみであり、患者から十分遠い位置にあるので、この実施の形態3に示す方法でも、容易に遠隔多門照射は行える。
【0066】
なお、実施の形態2で示した逆写像数式モデルf2-1を用いて調整する手法は、本実施の形態3にも適用することができる。
【0067】
以上のように、本実施の形態3にかかる粒子線治療装置によれば、ビーム軌道を切り替えるための偏向電磁石は、走査電磁石2の下流に設けられ、走査電磁石2から走査出力された荷電粒子ビームBecを選択されたビーム軌道7vに応じて偏向させる第1の偏向電磁石であるビーム切替偏向電磁石4と、ビーム切替偏向電磁石4の下流であって、選択されたビーム軌道7vに対応して移動し、ビーム切替偏向電磁石4により偏向された荷電粒子ビームBecをアイソセンタCに向けて偏向させる第3の偏向電磁石である偏向電磁石15vと、を備えるように構成したので、ビーム軌道偏向用の偏向電磁石15vを駆動してひとつの偏向電磁石を複数のビーム軌道で共用でき、偏向電磁石及びその駆動電源の個数が少なくても、実施の形態1、実施の形態2で記載した効果を奏することができる。
【0068】
なお、図7では偏向電磁石15vが紙面の上下方向に移動する状態しか示していないが、紙面の奥行方向に移動させるようにしてもよい。このとき、偏向電磁石4も必要に応じて偏向方向を傾けるようにしてもよい。
【0069】
また、図9の変形例に示すように、偏向電磁石15vを例えば、ビーム軌道7vcを中心に回転移動させるようにしてもよい。この場合、偏向電磁石4は、偏向電磁石15vの移動に連動して、ビーム軌道7vcを中心に回転させるようにすればよい。
【0070】
実施の形態4.
実施の形態1では、スキャニング電磁石2の下流に複数のビーム軌道を設け、ビーム軌道切り替え用の偏向電磁石4によりビーム軌道を切り替えられるようにし、ビーム軌道ごとに必要な偏向電磁石5を設ける場合について述べたが、本実施の形態4にかかる粒子線治療装置では、図10に示すように、各ビーム軌道にビーム輸送ダクト20を設けた。他の機能や構成は実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
【0071】
ビーム輸送ダクト20を設ける目的は、荷電粒子ビームBecが空気中を通過することにより拡散し、ビームスポットサイズが大きくなることを抑えることである。スキャニング照射型の粒子線治療装置は、照射対象であるがん病巣を小領域ずつ照射するため、ビームスポットサイズは数mm程度に抑える必要がある。ビーム輸送ダクト20により、ビーム軌道を真空やヘリウムガスの状態に保つことができるので、荷電粒子ビームの拡散(走査による発散とは異なる)を抑制することができる。
【0072】
また、ダクトを外気と通気可能とした場合でも、荷電粒子線ビームの軌道上に異物や人等が入らないようにする防護機能を有することができる。
【0073】
なお、実施の形態2で示した逆写像数式モデルf2-1を用いる手法は、本実施の形態4にも適用することができ、外気の影響が抑えられるので、より正確な調整が可能となる。
【0074】
以上のように、第1の偏向電磁石4からアイソセンタCにかけて、複数のビーム軌道に対応する輸送ダクト20を設けたことにより、荷電粒子ビームの軌道を真空やヘリウムガスの雰囲気に保つことができ、スポットスキャニングに適した数mm程度の十分に小さいビームスポットサイズを照射できる粒子線治療装置を得ることができる。
【0075】
実施の形態5.
実施の形態3では、スキャニング電磁石2の下流に複数のビーム軌道を設け、ビーム軌道切り替え用の偏向電磁石4によりビーム軌道を切り替えられるようにし、切り替えたビーム軌道に対応して偏向電磁石15vを移動させる場合について述べたが、本実施の形態5にかかる粒子線治療装置では、図11に示すように、設定したビーム軌道に応じて移動または移動変形可能なビーム輸送ダクト30を設けた。他の機能や構成は実施の形態3と同様であり、説明を省略する。
【0076】
輸送ダクト30は、ビーム取り出し窓3に接続するビーム導入口30iと、アイソセンタCの直近に設置され、アイソセンタCに向けて荷電粒子ビームを出力するビーム出射口30eと、偏向電磁石4に対応して設置されたジョイント部30j1と、偏向電磁石15vに対応して移動する移動ジョイント部30j2と、ジョイント部30j1とジョイント部30j2間を結ぶ直管部30t1と、ジョイント部30j2とビーム出射口30eとを結ぶ直管部30t2からなり、直管部30t1,30t2は、それぞれジョイントに対して接続角を変更できるとともに、それぞれ直線性を保ったまま長さを変更(変形)できる。そして、輸送ダクト30内は、ジョイント部と直管部とを気密に接合することで真空やヘリウムガスの状態に保つことができる。
【0077】
また、本実施の形態5にかかる偏向電磁石15vに連動して移動または移動変形可能なビーム輸送ダクト30は、実施の形態3の変形例のように偏向電磁石15vが回転移動する場合にも対応可能である。図12は偏向電磁石15vの回転移動に連動して移動または移動変形可能なビーム輸送ダクト30を設けた場合の粒子線治療装置の構成を示すものである、動作については図11に示す場合と同様なので説明を省略する。
【0078】
なお、実施の形態2で示した逆写像数式モデルf2-1を用いる手法は、本実施の形態5にも適用することができ、外気の影響が抑えられるので、より正確な調整が可能となる。
【0079】
以上のように、第1の偏向電磁石4からアイソセンタCにかけて、選択されたビーム軌道に対応して移動または移動変形する輸送ダクト30を設けたことにより、ビーム軌道を真空やヘリウムガスの状態に保つことができ、スポットスキャニングに適した数mm程度の十分に小さいビームスポットサイズを照射できる粒子線治療装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ビーム輸送ダクト、 2 スキャニング電磁石(走査電磁石):2a X方向スキャニング電磁石、2b Y方向スキャニング電磁石、 3 ビーム取り出し窓、 4 ビーム切替偏向電磁石(第1の偏向電磁石)、 5 偏向電磁石 (第2の偏向電磁石):5a 偏向電磁石(ビーム軌道7a用)、5b 偏向電磁石(ビーム軌道7b用)、15v 偏向電磁石(移動式)、 6 椅子型患者保持装置、 7 ビーム軌道:7a,7va,7b,7vb,7c,7vc、 8 照射制御部、 9 照射計画指示部、 10 ビーム測定部:10a,10b ビームプロファイルモニタ、 10c 水ファントム、 20,30 ビーム輸送ダクト、 C アイソセンタ、 f1 関数、 f2-1 逆写像数式モデル、 Ia、Ib、Eb 制御値:(Ia,Ib,Eb)照射制御値、 (x,y,z) 照射位置座標
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された荷電粒子ビームを治療計画に基づく3次元の照射形状に整形するよう前記荷電粒子ビームをそれぞれ異なる方向に走査制御する2つのスキャニング電磁石を備えた走査電磁石と、
前記走査電磁石により走査された荷電粒子ビームが前記走査電磁石の下流に設定された複数のビーム軌道のうち、選択されたひとつのビーム軌道を通るように前記荷電粒子ビームの軌道を切り替える偏向電磁石と、
を備えたことを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項2】
前記偏向電磁石は、ビーム切替電磁石であることを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
【請求項3】
前記偏向電磁石の下流に、前記複数のビーム軌道に対応する輸送ダクトを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の粒子線治療装置。
【請求項4】
前記偏向電磁石の下流に、前記選択されたビーム軌道に対応して移動または移動変形する輸送ダクトを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の粒子線治療装置。
【請求項5】
前記3次元の照射形状を形作る照射位置座標を、前記選択されたビーム軌道に応じて設定された関数を用いて変換し、変換して得られた制御値を用いて前記走査電磁石および前記荷電粒子ビームのエネルギーを制御する照射制御部、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の粒子線治療装置。
【請求項1】
供給された荷電粒子ビームを治療計画に基づく3次元の照射形状に整形するよう前記荷電粒子ビームをそれぞれ異なる方向に走査制御する2つのスキャニング電磁石を備えた走査電磁石と、
前記走査電磁石により走査された荷電粒子ビームが前記走査電磁石の下流に設定された複数のビーム軌道のうち、選択されたひとつのビーム軌道を通るように前記荷電粒子ビームの軌道を切り替える偏向電磁石と、
を備えたことを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項2】
前記偏向電磁石は、ビーム切替電磁石であることを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
【請求項3】
前記偏向電磁石の下流に、前記複数のビーム軌道に対応する輸送ダクトを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の粒子線治療装置。
【請求項4】
前記偏向電磁石の下流に、前記選択されたビーム軌道に対応して移動または移動変形する輸送ダクトを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の粒子線治療装置。
【請求項5】
前記3次元の照射形状を形作る照射位置座標を、前記選択されたビーム軌道に応じて設定された関数を用いて変換し、変換して得られた制御値を用いて前記走査電磁石および前記荷電粒子ビームのエネルギーを制御する照射制御部、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の粒子線治療装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−284509(P2010−284509A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88596(P2010−88596)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【分割の表示】特願2009−548256(P2009−548256)の分割
【原出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【分割の表示】特願2009−548256(P2009−548256)の分割
【原出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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