説明

粒子配列体の製造方法

【課題】 短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶を有し、表面の縮みが抑制されて鮮明な構造色が発現される粒子配列体の製造方法の提供。
【解決手段】 粒子配列体の製造方法は、仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーを含有する液状媒体を用いて単分散の粒子を配列させて構造色を発現するコロイド結晶を形成させた後、仮固定用モノマーを重合させる工程と、本固定用モノマーを重合させる工程とをこの順に連続的に行うことを特徴とする。具体的には、前記液状媒体中に、下記一般式(1)で表されるタイミング基含有化合物が含有されている構成とすることができる。
一般式(1):M1−Time1−M2
〔上記一般式(1)において、Time1はタイミング基を示し、M1は前記仮固定用モノマーの残基、M2は前記本固定用モノマーの残基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造色を発現する粒子配列体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単分散の粒子を規則的に配列させることによって形成されるブラッグ反射が得られるコロイド結晶は、フォトニック部材、色材、色表示部材、反射板などとして使用することができることが知られており、最近、このようなコロイド結晶を得るための方法が盛んに研究されている(例えば特許文献1および非特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献2に開示されるように、通常、コロイド結晶における粒子の規則的な配列は、水の存在下に形成される。そして、配列させた粒子の固定化は、まず、水の存在下で固定処理(1段階目の固定処理)を行って粒子の3次元的な位置を固定し、この状態において、水の経時的な蒸発による性能変動を防ぐために水を除去する処理を行い、さらに、水を除去した後の空洞により光散乱などの問題が発生するために、当該空洞を埋めるために新たな固定化剤を充填する処理(2段階目の固定処理)を行わなければならない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−279633号公報
【特許文献2】特開2005−325173号公報
【非特許文献1】「高分子論文集」吉永ら、vol.64、No.1、p.21〜28、2007年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水の除去および新たな固定化剤の充填を含む2段階の固定処理を経る場合は、得られる粒子配列体が、その表面に縮みが発生したものとなったり、粒子の配列乱れが発生したものとなるおそれがある、という問題がある。また、粒子配列体の作製時間の短縮も求められている。
【0006】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶を有し、表面の縮みが抑制されて鮮明な構造色が発現される粒子配列体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粒子配列体の製造方法は、仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーを含有する液状媒体を用いて単分散の粒子を配列させて構造色を発現するコロイド結晶を形成させた後、仮固定用モノマーを重合させる工程と、本固定用モノマーを重合させる工程とをこの順に連続的に行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の粒子配列体の製造方法においては、前記液状媒体中に、下記一般式(1)で表されるタイミング基含有化合物が含有されている構成とすることができる。
一般式(1):M1−Time1−M2
〔上記一般式(1)において、Time1はタイミング基を示し、M1は前記仮固定用モノマーの残基、M2は前記本固定用モノマーの残基を示す。〕
【0009】
また、本発明の粒子配列体の製造方法においては、前記液状媒体中に、下記一般式(2)で表されるタイミング基含有化合物が含有されている構成とすることができる。
一般式(2):Time2−M3
〔上記一般式(2)において、Time2はタイミング基を示し、M3は前記仮固定用モノマーの残基を示す。〕
【0010】
さらに、本発明の粒子配列体の製造方法においては、前記液状媒体中に、下記一般式(3)で表されるタイミング基含有化合物が含有されている構成とすることができる。
一般式(3):Time3−M4
〔上記一般式(3)において、Time3はタイミング基を示し、M4は前記本固定用モノマーの残基を示す。〕
【発明の効果】
【0011】
本発明の粒子配列体の製造方法によれば、コロイド結晶の形成に用いた液状媒体中に仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーが含有されていることから、仮固定用モノマーの重合と本固定用モノマーの重合とを、この順に連続的に行うことができるために、コロイド結晶に係る粒子の配列の仮固定と本固定とを、粒子配列体の形成に係る反応系において当該反応系外からの物理的な添加物なしに連続させて行うことができるので、短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶を有し、表面の縮みが抑制されて鮮明な構造色が発現される粒子配列体を得ることができる。
【0012】
また、2つのモノマー残基を有するタイミング基含有化合物を用いる粒子配列体の製造方法によれば、当該タイミング基含有化合物における一方の仮固定用モノマーの残基M1と他方の本固定用モノマーの残基M2とを、この順に経時的に遊離させてそれぞれ重合させることができるために、残基M1の重合による仮固定と、残基M2の重合による本固定とを、粒子配列体の形成に係る反応系において当該反応系外からの物理的な添加物なしに連続させて行うことができるので、短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶を有し、表面の縮みが抑制されて鮮明な構造色が発現される粒子配列体を得ることができる。
【0013】
また、1つのモノマー残基を有するタイミング基含有化合物を用いる粒子配列体の製造方法によれば、当該タイミング基含有化合物における仮固定用モノマーの残基または本固定用モノマーの残基と、液状媒体に別個に含有された本固定用モノマーまたは仮固定用モノマーとを、任意の時間を挟んで経時的にそれぞれ重合させることができるために、仮固定と本固定とを、粒子配列体の形成に係る反応系において当該反応系外からの物理的な添加物なしに連続させて行うことができるので、短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶を有し、表面の縮みが抑制されて鮮明な構造色が発現される粒子配列体を得ることができる。
【0014】
なお、タイミング基含有化合物からのモノマー残基の遊離は、その構造によって異なるが、温度、光、pH、触媒などのドライビングフォースによって開始させることができる。2つのモノマー残基を有するタイミング基含有化合物においては、各モノマー残基の構造の違いによって、活性化エネルギーが異なるために、互いに異なる遊離の時期(タイミング)が選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
<第1の実施の形態>
本発明の粒子配列体の製造方法は、仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーを含有する液状媒体を用いて単分散の粒子を配列させて構造色を発現するコロイド結晶を形成させた後、仮固定用モノマーを重合させる工程と、本固定用モノマーを重合させる工程とをこの順に連続的に行う方法である。
この例の製造方法においては、仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーは、それぞれ、上記一般式(1)で表されるタイミング基含有化合物(以下、「特定のタイミング基含有化合物〔1〕」ともいう。)から供出されるものとされている。
【0016】
具体的には、例えば、図1〜図3に示されるように、まず、特定のタイミング基含有化合物〔1〕(23)を含有する液状媒体(21)に単分散の粒子(以下、単に「粒子」ともいう。)(12)を分散させたサスペンジョン液を調製し、これを例えば基板などの表面に塗布し、粒子(12)を静電斥力によって自己配列させて構造色を発現するコロイド結晶(16)を形成させた後、特定のタイミング基含有化合物〔1〕(23)から仮固定用モノマーの残基M1を遊離させて仮固定用モノマーを供出させ、これを重合させて仮固定ポリマー(24)を形成することにより、この仮固定ポリマー(24)によってコロイド結晶(16)における粒子(12)の配列状態を仮固定する。
その後、水を蒸発させた後、または水を蒸発させると共に仮固定用モノマーが遊離された特定のタイミング基含有化合物〔1〕(23α)から自動的に遊離される本固定用モノマーの残基M2による本固定用モノマーを重合させて本固定ポリマー(25)を形成することにより、この本固定ポリマー(25)および仮固定ポリマー(24)が固定化剤となってコロイド結晶(16)における粒子(12)の配列状態を最終的に固定され、これにより、粒子配列体(10)が得られる。
【0017】
特定のタイミング基含有化合物〔1〕を示す上記一般式(1)において、Time1はタイミング基を示し、M1は仮固定用モノマーの残基、M2は本固定用モノマーの残基を示す。
本発明において、タイミング基とは、環境を変動させることにより仮固定用モノマーの残基M1を遊離させた後、分子内求核置換反応や役鎖に沿った電子移動反応などによって一定時間後に自動的に本固定用モノマーの残基M2を遊離させて放出することのできる連結基をいう。
特定のタイミング基含有化合物〔1〕における仮固定用モノマーの残基M1を遊離させてから本固定用モノマーの残基M2を遊離させるまでの時間は、タイミング基の種類や粒子配列体(10)の形成に係る反応系の環境条件を選択することによって適宜に調整することができる。
また、仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーは、それぞれ、仮固定用モノマーの残基M1、本固定用モノマーの残基M2がタイミング基から遊離されることによってモノマーとして活性化されるものである。この仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーは、水溶性のものであることが好ましい。
仮固定の状態において、本固定用モノマーは、タイミング基Time1に結合された状態にあってモノマーとして不活性な状態とされている。
【0018】
特定のタイミング基含有化合物〔1〕におけるタイミング基Time1としては、仮固定用モノマーの残基M1および本固定用モノマーの残基M2を、時間差で順に遊離させることができるものであれば特に限定されず、種々のものを用いることができる。
タイミング基Time1としては、例えば、特開昭57−56837号公報、特開昭56−114946号公報に記載されたものなどを挙げることができる。
【0019】
仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーとしては、具体的には、下記式(M−i)〜(M−iv)に例示されるものを挙げることができる。
仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーは、互いに同一の構造のものであってもよく、異なった構造のものであってもよい。
また、タイミング基Time1が同じ種類のものであれば、仮固定用モノマーの残基M1および/または本固定用モノマーの残基M2としてそれぞれ2種類以上のものを使用してもよい。
【0020】
【化1】

【0021】
特定のタイミング基含有化合物〔1〕としては、具体的には、下記式(T1−1)〜(T1−8)に例示されるものが好ましい。
【0022】
【化2】

【0023】
特定のタイミング基含有化合物〔1〕の使用量は、用いる粒子(12)の種類や重合条件により異なるが、例えば、粒子(12)に対して体積比で5:1〜1:10の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1:0.5〜1:5の範囲内であり、特に好ましくは1:0.8〜1:1.2である。特定のタイミング基含有化合物〔1〕の使用量が過少である場合は、得られた粒子配列体が、コロイド結晶の粒子の配列状態を安定に維持できないものとなるおそれがある。一方、特定のタイミング基含有化合物〔1〕の使用量が過多である場合は、得られる粒子配列体が粒子間距離の過大なものとなって、発現される構造色が所望の波長領域にピーク波長を有する色とならないおそれがある。
【0024】
〔液状媒体〕
この例の粒子配列体(10)の製造方法に用いられる液状媒体(21)は、一般に液状の媒体として使用される各種の水および有機溶剤の、単体物または2種以上が好ましくは相溶された混合物である。液状媒体(21)としては、好ましくは少なくとも50質量%以上の水を含有するものであり、80質量%以上の水を含有するものがより好ましく、水の単体物が特に好ましい。有機溶媒としては、粒子(12)を溶解しないものであれば限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチルなどを例示することができ、これらの中ではアルコール系有機溶媒が好ましい。液状媒体(21)としては、100質量%水よりなるものを用いることが特に好ましい。
本発明において、液状媒体(21)とは、粒子(12)を構成する材料のガラス転移点温度(Tg)よりも低い温度において液体であるものをいう。
【0025】
この液状媒体(21)中には、仮固定用モノマーの重合および/または本固定用モノマーの重合に係る重合開始剤として、反応系外からの物理的な添加物なしに重合を開始させることのできる、例えば紫外線、熱などによって重合を開始させる重合開始剤が、予め添加されていることが好ましい。
【0026】
〔重合開始剤〕
液状媒体(21)に予め含有させる重合開始剤としては、種々の紫外線重合開始剤、熱重合開始剤などを用いることができ、具体的には、例えば2,2’−アゾビス{2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)}プロピオンアミド;2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロロリジノ−2−メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ハイドロキシメチル)−2−ハイドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などの水溶性アゾ重合開始剤;
(+/−)−カンファーキノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−イソニトロソプロピオフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、2−ピリジルトリブロモメチルスルホン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、
4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル安息香酸、4−クロロベンゾフェノン、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、9−フルオレノン、アセトフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジベンゾスベロン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロひ酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、2−ベンゾイル安息香酸メチル、N−メチルアクリドン、ニフェジピン、p−アニシル、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ−p−トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラートなどの光重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0027】
仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーの重合温度は、各々粒子(12)の凝集が発生しない範囲の温度であることが必要であり、例えば50〜90℃の範囲であることが好ましい。
【0028】
液状媒体(21)中における特定のタイミング基含有化合物〔1〕(23)の濃度は、例えば、1〜75質量%の範囲内であることが好ましい。液状媒体(21)中における特定のタイミング基含有化合物〔1〕(23)の濃度が上記の範囲内にあることによって、得られる粒子配列体(10)が水分子の蒸発に伴って発生する粒子の配列乱れが抑制されたものとなる。一方、液状媒体(21)中における特定のタイミング基含有化合物〔1〕(23)の濃度が過度に低い場合は、マトリックスとなるポリマーの割合が相対的に少なくなるために乾燥させて除去すべき水分子の量が多くなり、その結果、得られる粒子配列体が水分子の蒸発に伴って粒子の配列乱れが大きく生じたものとなって、当該粒子配列体に光散乱が大きく生じて構造色が白濁化してしまう、というおそれがあり、また、液状媒体(21)中における特定のタイミング基含有化合物〔1〕(23)の濃度が過度に高い場合は、仮固定用モノマーの重合および/または本固定用モノマーの重合によって配列された粒子(12)の3次元的な位置に乱れが生じるおそれがある。
【0029】
〔粒子〕
本発明において、粒子とは、3次元において粒子形状を有する固体の物質のことであり、真球に限定されるものではなく、おおよそ粒子形状を有すればよい。
粒子配列体(10)のコロイド結晶(16)を構成する粒子(12)を形成すべき材料としては、非水溶性であって、その屈折率がマトリックスの屈折率と異なるものであるものを、適宜に選択することができる。
【0030】
粒子配列体(10)のコロイド結晶(16)を構成する粒子(12)としては、種々のものを挙げることができる。
具体的には例えば、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(イソ)プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸単量体などの重合性単量体のうちの1種を重合した粒子、または2種以上を共重合した有機粒子を挙げることができる。
また、重合性単量体に架橋性単量体を加えて重合した有機粒子であってもよく、架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどを挙げることができる。
また例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、硫酸バリウム、酸化第二鉄などの無機酸化物および複合酸化物などや、ガラス、セラミックスなどにより形成された無機粒子を挙げることができる。
また例えば、上記の有機粒子または無機粒子をコア粒子として、これの表面に当該コア粒子を構成する材料と異なる材料のシェル層が形成されてなるコア−シェル型粒子を挙げることができる。シェル層は、金属微粒子、チタニアなどよりなる金属酸化物微粒子、チタニアなどよりなる金属酸化物ナノシートなどを用いて形成することができる。
さらに例えば、上記のコア−シェル型粒子から、焼成、抽出などの方法によってコア粒子を除去することにより得られる中空型粒子を挙げることができる。
これらの粒子のうち、有機粒子が好適に用いられる。
【0031】
粒子配列体(10)を構成する粒子(12)は、単一組成の単一物であっても複合物であってもよい。また、屈折率が高い材料によって粒子を形成する場合は低屈折率物質を内添するなどしてもよい。
【0032】
粒子(12)の平均粒径は、当該粒子(12)の屈折率およびマトリックスの屈折率との関係において設定する必要があり、さらに少なくともそのサスペンジョン液が安定したコロイド溶液となる大きさであることが好ましいところ、例えば体積基準のメジアン径で50〜500nmであることが好ましい。
粒子(12)の平均粒径が上記の範囲にあることにより、そのサスペンジョン液を安定したコロイド溶液とすることができ、また、得られる粒子配列体(10)において発現する構造色が近紫外〜可視〜近赤外域にピーク波長を有する色となる。
一方、粒子の平均粒径が50nm未満である場合は、粒子の配列工程において静電斥力の制御が困難となり、粒子の配列に乱れが生じ、その結果、得られる粒子配列体が、反射される光が強度の小さいものとなるおそれがあり、粒子の平均粒径が500nmよりも大きい場合は、光の散乱が大きく生じることによって構造色が白濁化するおそれがある。
【0033】
また、粒径分布を表すCV値は10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
CV値が10%より大きい場合は、規則的に配列されるべき粒子層が大きな乱れが生じたものとなって得られる粒子配列体が白濁化してその構造色が認識されにくいものとなることがある。
【0034】
平均粒径は、粒子(12)について走査型電子顕微鏡「JSM−7410」(日本電子社製)を用いて50,000倍の写真を2枚撮影し、この2枚の写真画像における粒子(12)の100個ずつについて、それぞれ最大長を測定し、その個数平均値を算出することにより、得られるものである。ここに、「最大長」とは、粒子(12)の周上の任意の2点による2点間距離のうち、最大のものをいう。
なお、粒子(12)が凝集体として撮影される場合には、凝集体を形成する一次粒子(粒子)の最大長を測定するものとする。
CV値は、個数基準の粒度分布における標準偏差および上記の平均粒径の値を用いて下記式(CV)より算出されるものである。
式(CV):CV値(%)=((標準偏差)/(平均粒径))×100
【0035】
粒子配列体(10)のコロイド結晶(16)を構成する粒子(12)は、コロイド結晶(16)を形成させる際に規則配列させやすいことから、単分散性の高いものであることが好ましい。
単分散性の高い粒子を得るために、粒子(12)が有機物による粒子である場合は、粒子(12)は、通常一般的に用いられるソープフリー乳化重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの重合法によって得ることが好ましい。
【0036】
粒子(12)は、マトリックスとの親和性を高いものとするために、各種の表面処理を行ってもよい。
【0037】
サスペンジョン液における粒子の濃度は、取り扱い性の観点から、例えば20質量%以下とすることが好ましい。
【0038】
サスペンジョン液の基板に対する塗布方法としては、スクリーン塗布法、ディップ塗布法、スピンコート塗布法、カーテン塗布法、LB(Langmuir−Blodgett)膜作成法などを利用することができる。
【0039】
粒子配列体(10)を形成させるための粒子(12)のサスペンジョン液を塗布する基板としては、例えばゴム、ガラス、セラミックスやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のフィルムやシートなどを使用することができる。
基板としては、表面の水に対する接触角はある程度低いものが好ましい。また、表面平滑性は高いものが好ましいことから、基板について適宜の表面処理を行ってもよい。また、ブラスト処理などを行って球体が付着し易い状態にして使用することもできる。
【0040】
〔粒子配列体〕
このような方法によって得られる粒子配列体(10)は、具体的には、仮固定ポリマー(24)および本固定ポリマー(25)よりなるマトリックス中に粒子(12)同士が面方向に非接触状態で規則的に形成される粒子層(15)が、厚み方向においても粒子(12)同士が非接触状態で規則的に配されたコロイド結晶(16)が含有された構成を有するものである。
このコロイド結晶(16)は、光が入射する方向に対して一方向に規則的に粒子(12)が配列された構成を有している。
【0041】
粒子配列体(10)においては、粒子(12)の屈折率とマトリックスの屈折率との差の絶対値(以下、「屈折率差」という。)が、0.02〜2.0であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.6である。
この屈折率差が0.02未満である場合は、構造色が発現しにくくなり、この屈折率差が2.0より大きい場合は、光の散乱が大きく生じることによって構造色が白濁化するおそれがある。
【0042】
粒子(12)の屈折率は公知の種々の方法で測定することができるところ、本発明における粒子(12)の屈折率は、液浸法によって測定した値とする。
粒子(12)の屈折率の具体的な例としては、例えばポリスチレンが1.59、ポリメタクリル酸メチルが1.49、ポリエステルが1.60、フッ素変性ポリメタクリル酸メチルが1.40、ポリスチレン・ブタジエン共重合が1.56、ポリアクリル酸メチルが1.48、ポリアクリル酸ブチルが1.47、シリカが1.45、酸化チタン(アナターゼ型)が2.52、酸化チタン(ルチル型)が2.76、酸化銅が2.71、酸化アルミニウムが1.76、硫酸バリウムが1.64、酸化第二鉄が3.08である。
【0043】
粒子配列体(10)における仮固定ポリマー(24)および本固定ポリマー(25)によるマトリックスの屈折率は、公知の種々の方法で測定することができるところ、本発明におけるマトリックスの屈折率は、別個にマトリックスを構成する仮固定ポリマー(24)および本固定ポリマー(25)のみよりなる薄膜を作成し、この薄膜をアッベ屈折率計にて測定した値とされる。
【0044】
〔構造色〕
この粒子配列体(10)において発現される構造色は、当該粒子配列体(10)において観察角に基づいて規定されて選択的に反射される光によって発現される色である。
【0045】
粒子配列体(10)において選択的に反射される光は、ブラッグの法則、スネルの法則より、下記式(1)で表される波長の光とされる。
なお、下記式(1)および下記式(2)は近似式であり、実際上はこれらの計算値に完全には合致しない場合もある。
式(1):λ=2nD(cosθ)
この式(1)において、λは構造色のピーク波長、nは下記式(2)で表される粒子配列体(10)の屈折率、Dは粒子層(15)の層間隔(粒子(12)の表示部材の垂線方向における間隔)、θは表示部材の垂線との観察角である。
式(2):n={na・c}+{nb・(1−c)}
この式(2)において、naは粒子(12)の屈折率、nbはマトリックスの屈折率、cは粒子配列体(10)における粒子(12)の体積率である。
ここに、構造色のピーク波長λは、分光測色計「CM−3600d」(コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定されるものである。
【0046】
粒子配列体(10)における粒子層(15)の厚みは、例えば0.1〜15μmであることが好ましい。
粒子層の厚みが0.1μm未満である場合は、反射される光が強度の小さいものとなる。
【0047】
粒子配列体(10)における粒子層(15)の周期数は、少なくとも1以上である必要があり、好ましくは5〜150である。
周期数が1未満である場合は、粒子配列体が構造色を発現するものとならない。
【0048】
粒子配列体(10)において発現される構造色は、可視域にピーク波長を有する色に限らず、紫外域または赤外域にピーク波長を有する色(光)であってもよい。
【0049】
粒子配列体(10)における層間隔Dは、50〜500nmであることが好ましい。
層間隔Dが上記の範囲にあることにより、得られる粒子配列体(10)において発現する構造色が近紫外〜可視〜近赤外域にピーク波長を有するものとなる。一方、層間隔Dが500nmよりも大きい場合は、得られる粒子配列体が構造色を発現するものとならないおそれがある。
【0050】
この例の粒子配列体の製造方法によれば、特定のタイミング基含有化合物〔1〕における一方の仮固定用モノマーの残基M1と他方の本固定用モノマーの残基M2とを、この順に経時的に遊離させてそれぞれ重合させることができるために、残基M1の重合による仮固定と、残基M2の重合による本固定とを、粒子配列体(10)の形成に係る反応系において当該反応系外からの物理的な添加物なしに連続させて行うことができるので、短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶(16)を有し、表面の縮みが抑制されて鮮明な構造色が発現される粒子配列体(10)を得ることができる。
【0051】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係る粒子配列体の製造方法は、第1の実施の形態において、仮固定用モノマーが上記一般式(2)で表されるタイミング基含有化合物(以下、「特定のタイミング基含有化合物〔2〕」ともいう。)から供出されるものであり、本固定用モノマーが適宜のモノマーであることの他は同様の構成を有するものである。
【0052】
具体的には、特定のタイミング基含有化合物〔2〕および本固定用モノマーを含有する液状媒体に粒子を分散させたサスペンジョン液を調製し、これを例えば基板などの表面に塗布し、粒子を静電斥力によって自己配列させて構造色を発現するコロイド結晶を形成させた後、特定のタイミング基含有化合物〔2〕から仮固定用モノマーを遊離させてこれを重合させて仮固定ポリマーを形成し、この仮固定ポリマーによってコロイド結晶における粒子の配列状態を仮固定し、その後、水を蒸発させた後、または水を蒸発させると共に本固定用モノマーを重合させて本固定ポリマーを形成することにより、この本固定ポリマーおよび仮固定ポリマーが固定化剤となってコロイド結晶における粒子の配列状態を最終的に固定され、これにより、粒子配列体が得られる。
【0053】
特定のタイミング基含有化合物〔2〕を示す上記一般式(2)において、Time2はタイミング基を示し、M3は仮固定用モノマーの残基を示す。
仮固定用モノマーは、仮固定用モノマーの残基M3がタイミング基から遊離されることによってモノマーとして活性化されるものである。
【0054】
特定のタイミング基含有化合物〔2〕におけるタイミング基Time2としては、仮固定用モノマーの残基M3を任意のときに遊離させることができるものであれば特に限定されず、種々のものを用いることができる。
タイミング基Time2としては、例えば、特開昭57−56837号公報、特開昭56−114946号公報に記載されたものなどを挙げることができる。
仮固定用モノマーとしては、具体的には、上記式(M−i)〜(M−iv)に例示されるものを挙げることができる。
また、タイミング基Time2が同じ種類のものであれば、仮固定用モノマーとして2種類以上のものを使用してもよい。
【0055】
特定のタイミング基含有化合物〔2〕としては、具体的には、下記式(T2−1)〜(T2−7)に例示されるものが好ましい。
【化3】

【0056】
〔本固定用モノマー〕
本固定用モノマーの具体例としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、ターシャリーブチルアクリルアミドスルフォン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩;N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級化物、(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレ−ト、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコ−ル(メタ)アクリレ−トなどの非架橋性モノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、N,N−メチレンビスアクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタンなどの1分子中にエチレン系不飽和基を2個以上有する化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの1分子中にエチレン系不飽和基を1個と他の反応性官能基とを有する化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール、ソルビット、グルコース、マンニット、マンニタン、ショ糖、ブドウ糖などの多価アルコール;エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルなどのポリエポキシ化合物;およびアルキレンカーボネートなどの架橋性モノマーなどを挙げることができ、これらは1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
これらのモノマーのうち、特に水溶性のモノマーを用いることが好ましい。
【0057】
本固定用モノマーおよび仮固定用モノマーの使用割合は、本固定用モノマー:仮固定用モノマーがモル比で例えば10:1〜1:10の範囲内であることが好ましい。本固定用モノマーの使用量が仮固定用モノマーの使用量に対して過少である場合は、仮固定ポリマー間に形成された空隙を、本固定ポリマーによって均質に埋めることが困難となるために、得られる粒子配列体が光散乱の大きく生じたものとなって構造色が白濁化してしまう、というおそれがある。一方、本固定用モノマーの使用量が仮固定用モノマーの使用量に対して過多である場合は、仮固定した状態における粒子の固定度合いが低いものとなり、粒子が動いて配列に乱れが生じるおそれがある。
【0058】
本固定用モノマーと仮固定用モノマーを供出する特定のタイミング基含有化合物〔2〕との合計の使用量は、用いる粒子の種類や重合条件により異なるが、例えば、粒子に対して体積比で5:1〜1:10の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1:0.5〜1:5の範囲内であり、特に好ましくは1:0.8〜1:1.2である。本固定用モノマーおよび特定のタイミング基含有化合物〔2〕の合計の使用量が過少である場合は、得られた粒子配列体が、コロイド結晶の粒子の配列状態を安定に維持できないものとなるおそれがある。一方、本固定用モノマーおよび特定のタイミング基含有化合物〔2〕の合計の使用量が過多である場合は、得られる粒子配列体が粒子間距離の過大なものとなって、発現される構造色が所望の波長領域にピーク波長を有する色とならないおそれがある。
【0059】
液状媒体中における特定のタイミング基含有化合物〔2〕の濃度は、例えば、1〜75質量%の範囲内であることが好ましい。液状媒体中における特定のタイミング基含有化合物〔2〕の濃度が上記の範囲内にあることによって、得られる粒子配列体が水分子の蒸発に伴って発生する粒子の配列乱れが抑制されたものとなる。一方、液状媒体中における特定のタイミング基含有化合物〔2〕の濃度が過度に低い場合は、マトリックスとなるポリマーの割合が相対的に少なくなるために乾燥させて除去すべき水分子の量が多くなり、その結果、得られる粒子配列体が水分子の蒸発に伴って粒子の配列乱れが大きく生じたものとなって、当該粒子配列体に光散乱が大きく生じて構造色が白濁化してしまう、というおそれがあり、また、液状媒体中における特定のタイミング基含有化合物〔2〕の濃度が過度に高い場合は、仮固定用モノマーの重合および/または本固定用モノマーの重合によって配列された粒子の3次元的な位置に乱れが生じるおそれがある。
【0060】
この例の粒子配列体の製造方法によれば、特定のタイミング基含有化合物〔2〕における仮固定用モノマーの残基M3と、本固定用モノマーとを、任意の時間を挟んで経時的にそれぞれ重合させることができるために、仮固定と本固定とを、粒子配列体の形成に係る反応系において当該反応系外からの物理的な添加物なしに連続させて行うことができるので、短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶を有し、表面の縮みが抑制されて鮮明な構造色が発現される粒子配列体を得ることができる。
【0061】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態に係る粒子配列体の製造方法は、第2の実施の形態において、仮固定用モノマーが適宜のモノマーであり、本固定用モノマーが上記一般式(3)で表されるタイミング基含有化合物(以下、「特定のタイミング基含有化合物〔3〕」ともいう。)から供出されるものであることの他は同様の構成を有するものである。
【0062】
具体的には、特定のタイミング基含有化合物〔3〕および仮固定用モノマーを含有する液状媒体に粒子を分散させたサスペンジョン液を調製し、これを例えば基板などの表面に塗布し、粒子を静電斥力によって自己配列させて構造色を発現するコロイド結晶を形成させた後、仮固定用モノマーを重合させて仮固定ポリマーを形成し、この仮固定ポリマーによってコロイド結晶における粒子の配列状態を仮固定し、その後、水を蒸発させた後、または水を蒸発させると共に特定のタイミング基含有化合物〔3〕から本固定用モノマーを遊離させてこれを重合させて本固定ポリマーを形成することにより、この本固定ポリマーおよび仮固定ポリマーが固定化剤となってコロイド結晶における粒子の配列状態を最終的に固定され、これにより、粒子配列体が得られる。
【0063】
特定のタイミング基含有化合物〔3〕を示す上記一般式(3)において、Time3はタイミング基を示し、M4は本固定用モノマーの残基を示す。
本固定用モノマーは、本固定用モノマーの残基M4がタイミング基から遊離されることによってモノマーとして活性化されるものである。
【0064】
特定のタイミング基含有化合物〔3〕におけるタイミング基Time3および本固定用モノマーとしては、それぞれ、第2の実施の形態における特定のタイミング基含有化合物〔2〕におけるタイミング基Time2および仮固定用モノマーと同じものを挙げることができる。
また、タイミング基Time3が同じ種類のものであれば、本固定用モノマーとして2種類以上のものを使用してもよい。
【0065】
また、特定のタイミング基含有化合物〔3〕としては、第2の実施の形態における特定のタイミング基含有化合物〔2〕と同じものを挙げることができる。
【0066】
さらに、この実施の形態において仮固定用モノマーとして用いるモノマーとしては、第2の実施の形態における本固定用モノマーとして挙げたモノマーを挙げることができ、特に水溶性モノマーを用いることが好ましい。
【0067】
仮固定用モノマーと本固定用モノマーを供出する特定のタイミング基含有化合物〔3〕との合計の使用量は、用いる粒子の種類や重合条件により異なるが、例えば、粒子に対して体積比で5:1〜1:10の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1:0.5〜1:5の範囲内であり、特に好ましくは1:0.8〜1:1.2である。仮固定用モノマーおよび特定のタイミング基含有化合物〔3〕の合計の使用量が過少である場合は、得られた粒子配列体が、コロイド結晶の粒子の配列状態を安定に維持できないものとなるおそれがある。一方、仮固定用モノマーおよび特定のタイミング基含有化合物〔3〕の合計の使用量が過多である場合は、得られる粒子配列体が粒子間距離の過大なものとなって、発現される構造色が所望の波長領域にピーク波長を有する色とならないおそれがある。
【0068】
液状媒体中における特定のタイミング基含有化合物〔3〕の濃度は、例えば、1〜75質量%の範囲内であることが好ましい。液状媒体中における特定のタイミング基含有化合物〔3〕の濃度が上記の範囲内にあることによって、得られる粒子配列体が水分子の蒸発に伴って発生する粒子の配列乱れが抑制されたものとなる。一方、液状媒体中における特定のタイミング基含有化合物〔3〕の濃度が過度に低い場合は、マトリックスとなるポリマーの割合が相対的に少なくなるために乾燥させて除去すべき水分子の量が多くなり、その結果、得られる粒子配列体が水分子の蒸発に伴って粒子の配列乱れが大きく生じたものとなって、当該粒子配列体に光散乱が大きく生じて構造色が白濁化してしまう、というおそれがあり、また、液状媒体中における特定のタイミング基含有化合物〔3〕の濃度が過度に高い場合は、仮固定用モノマーの重合および/または本固定用モノマーの重合によって配列された粒子の3次元的な位置に乱れが生じるおそれがある。
【0069】
この例の粒子配列体の製造方法によれば、特定のタイミング基含有化合物〔3〕における本固定用モノマーの残基M4と、仮固定用モノマーとを、任意の時間を挟んで経時的にそれぞれ重合させることができるために、仮固定と本固定とを、粒子配列体の形成に係る反応系において当該反応系外からの物理的な添加物なしに連続させて行うことができるので、短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶を有し、表面の縮みが抑制されて鮮明な構造色が発現される粒子配列体を得ることができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
なお、以下において、粒子の平均粒径およびCV値の測定は、上述の方法と同様の方法によって行った。
【0073】
<実施例1>
イオン交換水に、乳化重合法によって作製したポリスチレン粒子(平均粒径:200nm、CV値:5%)を分散させて、ポリスチレン粒子の濃度が50質量%であるサスペンジョン液を50g調製した。
次いで、固定化剤:上記式(T−1)で表されるタイミング基含有化合物の濃度が50質量%、紫外線重合開始剤:2,2’−アゾビス{2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)}プロピオンアミドの濃度が0.1質量%、および熱重合開始剤「VA044」(和光純薬社製)の濃度が0.1質量%となるようそれぞれが溶解された水溶液を50g調製した。
この水溶液および上記のサスペンジョン液を、冷暗所において混合・撹拌した後、ガラス板上にバーコーターによって膜厚が20μmとなるように塗布し、塗布層を形成させた。
この塗布層を目視で観察したところ、赤色の構造色を呈することが確認された。
さらに、紫外線を照射してコロイド結晶に係る粒子配列を仮固定した後、外温を50℃まで上昇させて水を蒸発させると共に熱硬化反応を行うことにより、膜状の粒子配列体〔1〕を得た。
【0074】
この粒子配列体〔1〕について、20人の被験者に、構造色の見栄えと膜面の状態を目視で観察し、その優劣を5段階(優が5、劣が1)で評価してもらい、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0075】
<実施例2>
実施例1において、固定化剤として上記式(T1−1)で表されるタイミング基含有化合物の代わりに上記式(T1−5)で表されるタイミング基含有化合物を用いたことの他は同様にして、構造色を発現する膜状の粒子配列体〔2〕を得た。
この粒子配列体〔2〕の構造色の見栄えと膜面の状態について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0076】
<実施例3>
実施例1において、固定化剤として上記式(T1−1)で表されるタイミング基含有化合物の代わりに、上記式(T2−1)で表されるタイミング基含有化合物およびN−メチロールアクリルアミドを、それぞれ水溶液中の濃度が25質量%および25質量%となるよう用いたことの他は同様にして、構造色を発現する膜状の粒子配列体〔3〕を得た。
この粒子配列体〔3〕の構造色の見栄えと膜面の状態について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0077】
<実施例4>
実施例1において、固定化剤として上記式(T1−1)で表されるタイミング基含有化合物の代わりに、上記式(T2−3)で表されるタイミング基含有化合物およびターシャリーブチルアクリルアミドスルフォン酸を、それぞれ水溶液中の濃度が25質量%および25質量%となるよう用いたことの他は同様にして、構造色を発現する膜状の粒子配列体〔4〕を得た。
この粒子配列体〔4〕の構造色の見栄えと膜面の状態について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0078】
<比較例1>
実施例1において、固定化剤として上記式(T1−1)で表されるタイミング基含有化合物の代わりにN−メチロールアクリルアミドを用いたことの他は同様にして、構造色を発現する膜状の粒子配列体〔x〕を得た。
この粒子配列体〔x〕の構造色の見栄えと膜面の状態について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0079】
<比較例2>
実施例1において、固定化剤として上記式(T1−1)で表されるタイミング基含有化合物の代わりにターシャリーブチルアクリルアミドスルフォン酸を用いたことの他は同様にして、構造色を発現する膜状の粒子配列体〔y〕を得た。
この粒子配列体〔y〕の構造色の見栄えと膜面の状態について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1から明らかなように、本発明に係る実施例1〜4によれば、比較例1,2と比較して、膜面の状態が縮みなどのない良好なものであると共に鮮やかな構造色が発現される粒子配列体が得られることが確認された。これは、実施例1〜4によれば、紫外線による重合によってコロイド結晶の粒子の位置が仮固定され、この状態が形成された後に、熱による重合によって本固定するモノマーが反応系に供出されてこれが重合されるためである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の粒子配列体の製造方法によって得られる粒子配列体は、フォトニック部材、色材、色表示部材、反射板などとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の粒子配列体の製造方法におけるコロイド結晶の形成する工程を模式的に示す説明用図である。
【図2】本発明の粒子配列体の製造方法における仮固定用モノマーを硬化する工程を模式的に示す説明用図である。
【図3】本発明の粒子配列体の製造方法によって得られる粒子配列体の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0084】
10 粒子配列体
12 粒子
15 粒子層
16 コロイド結晶
21 液状媒体
23 特定のタイミング基含有化合物〔1〕
23α 仮固定用モノマーの残基M1が遊離された特定のタイミング基含有化合物〔1〕
24 仮固定ポリマー
25 本固定ポリマー
D 層間隔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮固定用モノマーおよび本固定用モノマーを含有する液状媒体を用いて単分散の粒子を配列させて構造色を発現するコロイド結晶を形成させた後、仮固定用モノマーを重合させる工程と、本固定用モノマーを重合させる工程とをこの順に連続的に行うことを特徴とする粒子配列体の製造方法。
【請求項2】
前記液状媒体中に、下記一般式(1)で表されるタイミング基含有化合物が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列体の製造方法。
一般式(1):M1−Time1−M2
〔上記一般式(1)において、Time1はタイミング基を示し、M1は前記仮固定用モノマーの残基、M2は前記本固定用モノマーの残基を示す。〕
【請求項3】
前記液状媒体中に、下記一般式(2)で表されるタイミング基含有化合物が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列体の製造方法。
一般式(2):Time2−M3
〔上記一般式(2)において、Time2はタイミング基を示し、M3は前記仮固定用モノマーの残基を示す。〕
【請求項4】
前記液状媒体中に、下記一般式(3)で表されるタイミング基含有化合物が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列体の製造方法。
一般式(3):Time3−M4
〔上記一般式(3)において、Time3はタイミング基を示し、M4は前記本固定用モノマーの残基を示す。〕



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138303(P2010−138303A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316561(P2008−316561)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】