説明

粒状肥料組成物の製造方法、並びに、粒状肥料組成物

【課題】高品質の粒状肥料組成物をより少ない工程数で製造することができる粒状肥料組成物の製造方法等を提供する。
【解決手段】2種類以上の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物の製造方法であって、2種類以上の粒状肥料原料を混合しながら又は混合した後に、前記粒状肥料原料に対して被覆を設けることを特徴とする粒状肥料組成物の製造方法。本発明によれば、粒状肥料原料ごとに被覆工程を行う必要がなく、1回の被覆工程で各粒状肥料原料に対してまとめて被覆を設けることができ、必要な工程数が少なくなり工業生産に好適である。また被覆工程を最後に行うので、混合工程で被覆粒状肥料同士が擦れても、最終製品において被覆欠陥が生じる確率はきわめて低いものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒状肥料組成物の製造方法、並びに、粒状肥料組成物に関し、さらに詳細には、高品質の粒状肥料組成物をより少ない工程数で製造することができる粒状肥料組成物の製造方法、並びに、当該方法によって得ることができる粒状肥料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の農業就労人口の減少と高齢化・大規模化が進む状況の中で、粒状肥料表面を樹脂等で被覆して肥料成分の溶出を制御することにより利用効率を高め、追肥作業の省力化を可能とする被覆粒状肥料の重要性が高まってきている。一般に、被覆粒状肥料は、母核となる粒状肥料の表面に水透過性の被覆が設けられた構造を有している。そして、粒状肥料の種類、被覆の素材、被覆の厚さ等を適宜選択することにより、所望の肥料成分、肥効持続期間、溶出パターン等を有する種々の被覆粒状肥料を得ることができる。被覆の代表的な素材は樹脂である。
【0003】
より多様な肥効持続期間や溶出パターン等を達成するために、2種類以上の粒状肥料を混合して組み合わせた粒状肥料(粒状肥料組成物)も開発されている。特許文献1には、複数肥料銘柄を組み合わせた水稲用肥料が開示されている。この水稲用肥料は、被覆率が異なる複数種の粒状尿素を組み合わせたものであり、被覆はアルキド樹脂からなる。
【0004】
また、所望の特性を付与するために、被覆あるいは粒状肥料に他の成分を添加することも行われている。特許文献2には、緩効性(遅効性ともいう)の付与を目的として、粒状肥料あるいは熱硬化性樹脂の被覆にワックス等の疎水性化合物を含有させた被覆粒状肥料が開示されている。
【0005】
被覆粒状肥料の製造方法および製造装置については、肥料粒子を噴流として流動させながら被覆材を付着乾燥させる噴流方式によるもの(例えば、特許文献3)や、コンクリートミキサ型の転動装置によるもの(例えば、特許文献4)が代表的である。
【特許文献1】特開平5−105569号公報
【特許文献2】特開2000−44377号公報
【特許文献3】特開2002−362991号公報
【特許文献4】特開2005−89258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2種類以上の粒状肥料を混合して組み合わせた粒状肥料組成物を製造する方法としては、組み合わせるべき各々の粒状肥料を予め調製しておき、最後にこれらの粒状肥料を混合する方法が採用されている。これは、粒状肥料が樹脂等からなる被覆が設けられた被覆粒状肥料である場合も同様である。しかし、この方法によって2種類以上の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造する場合には、種々の課題が存在する。例えば、予め各々の被覆粒状肥料を調製しておく必要があるため、各々の被覆粒状肥料を調製する工程は独立したものとなり工程を共通化することが難しい。そのため、混合すべき被覆粒状肥料の種類が増えるほど、在庫すべき被覆粒状肥料の種類と量が増えてしまい、工業生産の面で不利となる。また、最後の混合工程で被覆粒状肥料同士が擦れ、最終製品において被覆欠陥が生じる確率が高まるという問題点もある。
【0007】
本発明の目的は、工業生産に好適で、且つより高品質の粒状肥料組成物を製造することができる粒状肥料組成物の製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、2種類以上の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物の製造方法であって、2種類以上の粒状肥料原料を混合しながら又は混合した後に、前記粒状肥料原料に対して被覆を設けることを特徴とする粒状肥料組成物の製造方法である。
【0009】
本発明は2種類以上の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物の製造方法にかかるものであり、2種類以上の粒状肥料原料を混合しながら又は混合した後に、前記粒状肥料原料に対して被覆を設けることを特徴とする。すなわち、本発明の粒状肥料組成物の製造方法では、粒状肥料原料の混合工程と同時に又は混合工程終了後に、被覆工程を行う。本発明の粒状肥料組成物の製造方法では、粒状肥料原料ごとに被覆工程を行う必要がなく、1回の被覆工程で各粒状肥料原料に対してまとめて被覆を設ける。そのため、必要な工程数が少なく、工業生産に特に適している。また、本発明の粒状肥料組成物の製造方法では被覆工程を最後に行うので、混合工程で被覆粒状肥料同士が擦れても、最終製品において被覆欠陥が生じる確率はきわめて低いものとなる。
【0010】
なお本発明における「組成物」は均一な混合物を含む概念であり、「粒状肥料組成物」には複数種の粒状肥料の均一な混合物が含まれる。
【0011】
ここで「粒状肥料原料」とは、粒状肥料組成物を構成する被覆粒状肥料の原料として使用され、被覆が設けられる対象となる粒状肥料をいう。被覆が設けられる対象である限り、全ての粒状肥料はそのまま粒状肥料原料となり得る。
【0012】
また、本発明では「2種類以上の粒状肥料原料」を用いるが、粒状肥料原料の種類については、肥料成分の違い、量の違い、粒径の違い、等により区別される。本発明で製造される粒状肥料組成物が含有する「2種類以上の被覆粒状肥料」における被覆粒状肥料の種類については、前述した肥料成分の違い、量の違い、粒径の違い等に加えて、被覆の素材の違い、厚さの違い、被覆率の違い、層数の違い(単一層か複数層か)、等により区別される。
【0013】
請求項2に記載の発明は、粒状肥料原料の少なくとも1種類は、非被覆粒状肥料原料であることを特徴とする請求項1記載の粒状肥料組成物の製造方法である。
【0014】
かかる構成により、単一層からなる被覆が設けられた被覆粒状肥料を少なくとも1種類含有する粒状肥料組成物を製造することができる。ここで「非被覆粒状肥料原料」とは、非被覆粒状肥料からなる粒状肥料原料をいう。すなわち、非被覆粒状肥料原料は母核と同義である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、粒状肥料原料の少なくとも1種類は、被覆粒状肥料原料であることを特徴とする請求項1又は2記載の粒状肥料組成物の製造方法である。
【0016】
かかる構成により、複数層からなる被覆が設けられた被覆粒状肥料を少なくとも1種類含有する粒状肥料組成物を製造することができる。ここで「被覆粒状肥料原料」とは、被覆粒状肥料からなる粒状肥料原料をいう。
【0017】
請求項4に記載の発明は、粒状肥料原料の少なくとも2種類が被覆粒状肥料原料であり、当該被覆粒状肥料原料は、被覆の厚さが互いに異なるものであることを特徴とする請求項3記載の粒状肥料組成物の製造方法である。
【0018】
かかる構成により、被覆の厚さが互いに異なる2種類以上の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、被覆粒状肥料原料が有する被覆の素材と同一の素材からなる被覆を、前記被覆粒状肥料原料に対して設けることを特徴とする請求項3又は4記載の粒状肥料組成物の製造方法である。
【0020】
かかる構成により、同一素材からなる複数層の被覆が設けられた被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、被覆粒状肥料原料が有する被覆の素材と異なる素材からなる被覆を、前記被覆粒状肥料原料に対して設けることを特徴とする請求項3又は4記載の粒状肥料組成物の製造方法である。
【0022】
かかる構成により、互いに異なる素材からなる複数層の被覆が設けられた被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、被覆粒状肥料原料が有する被覆の素材は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法である。
【0024】
また請求項8に記載の発明は、粒状肥料原料に対して設けられる被覆の素材は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法である。
【0025】
かかる構成により、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂の優れた特性を備えた被覆、さらには熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の両方の特性が組み合わされた被覆が設けられた被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
【0026】
熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレア・メラミン樹脂、尿素樹脂、及びシリコン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種のものである構成が推奨される(請求項9)。熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリエステル、ビニル重合物、ジエン系重合物、ポリオレフィン共重合物、及び塩化ビニル共重合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のものである構成も推奨される(請求項10)。
【0027】
請求項11に記載の発明は、粒状肥料原料の肥料成分は、1種類であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法である。
【0028】
かかる構成により、肥料成分が1種類で被覆の種類(厚さや素材など)が互いに異なる被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
【0029】
請求項12に記載の発明は、粒状肥料原料の肥料成分は、2種類以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法である。
【0030】
かかる構成により、肥料成分が異なる2種類以上の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
【0031】
肥料成分の少なくとも1種類が尿素である構成が推奨される(請求項13)。
【0032】
請求項14に記載の発明は、粒状肥料原料に対して被覆を設ける工程を、2回以上繰り返すことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法である。
【0033】
かかる構成により、所望の素材や厚さ等からなる複数層の被覆が設けられた被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
【0034】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法によって得ることができる粒状肥料組成物である。
【0035】
本発明は粒状肥料組成物にかかるものであり、本発明の粒状肥料組成物の製造方法によって得ることができるものである。本発明の粒状肥料組成物においては、被覆欠陥が極めて少ないので、多様な肥効持続期間や溶出パターンを確実に実現することができ、作物に対してより好適に肥料成分を供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の粒状肥料組成物によれば、1回の被覆工程で各粒状肥料原料に対してまとめて被覆を設けるので、必要な工程数が少なく、工業生産に特に適している。また被覆工程を最後に行うので、混合工程で被覆粒状肥料同士が擦れても、最終製品において被覆欠陥が生じる確率はきわめて低いものとなる。
【0037】
本発明の粒状肥料組成物は被覆欠陥が極めて少ないものであるので、多様な肥効持続期間や溶出パターンを確実に実現することができ、作物に対してより好適に肥料成分を供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の1つの様相は、2種類以上の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物の製造方法であって、2種類以上の粒状肥料原料を混合しながら又は混合した後に、前記粒状肥料原料に対して被覆を設けることを特徴とする粒状肥料組成物の製造方法である。すなわち本発明の粒状肥料組成物の製造方法は、2種類以上の粒状肥料原料を混合する混合工程と、当該粒状肥料原料に対して被覆を設ける被覆工程とを包含するが、混合工程と同時に又は混合工程終了後に被覆工程を行うこと特徴としている。
【0039】
混合工程を行うための手法としては、粉流体の混合操作に用いられている公知の手法をそのまま採用することができる。例えば、V型混合機や二重円錐型混合機といった代表的な混合機を用いて、2種類以上の粒状肥料原料を混合すればよい。一方、被覆工程を行うための手法としても、粒状肥料の被覆操作に用いられている公知の手法をそのまま採用することができ、例えば、パンコーティング法、流動コーティング法のいずれもが使用可能である。なお、上記した特許文献3(特開2002−362991号公報)や特開平10−158084号公報に開示されているような、肥料粒子を噴流として流動させながら被覆材を付着乾燥させる噴流方式による手法、特許文献4(特開2005−89258号公報)に開示されているようなコンクリートミキサ型の転動装置による手法、あるいは、特開平9−208355号公報に開示されているような、傾斜パン型転動造粒機を用いて一定の粒径の粒状肥料を攪拌装置自身の回転により転動させながら、樹脂を添加し、粒状肥料の表面上にて樹脂被膜を形成する手法によれば、混合工程と同時に被覆工程を行えるので、本発明の粒状肥料組成物の製造方法を実施するのに好適である。
【0040】
被覆工程については1回のみ行ってもよいが、2回以上繰り返して行うこともできる。これにより、複数層からなる被覆を設けることができる。この際、被覆の素材として同一のものを毎回使用すれば、所望の厚みを有する被覆を設けることができる。一方、被覆の素材を途中で変えれば、複数種類の素材からなる被覆を設けることができ、多様な溶出パターン等を発揮させるのに有用である。
【0041】
なお、混合工程・被覆工程に供するための粒状肥料原料については一般的な造粒技術により調製すればよく、市販されている被覆粒状肥料や非被覆粒状肥料をそのまま使用してもよい。
【0042】
本発明で用いられる粒状肥料原料は、非被覆粒状肥料原料と被覆粒状肥料原料のいずれでもよい。より具体的には、2種類以上の粒状肥料原料を、非被覆粒状肥料原料のみで構成してもよいし、被覆粒状肥料原料のみで構成してもよい。さらに、非被覆粒状肥料原料と被覆粒状肥料原料の両方を組み合わせて、2種類以上の粒状肥料原料を構成してもよい。
【0043】
1つの実施形態では、粒状肥料原料の少なくとも2種類が被覆粒状肥料原料であり、当該被覆粒状肥料原料は、被覆の厚さが互いに異なるものである。例えば、被覆の厚さが互いに異なる2種類以上の被覆粒状肥料原料を用い、これらの被覆粒状肥料原料に対して被覆を設けることにより粒状肥料組成物を製造することができる。本実施形態においては、被覆の厚さに加えて素材等も互いに異なる2種類以上の被覆粒状肥料原料を用いてもよい。
【0044】
粒状肥料原料として被覆粒状肥料原料を採用する実施形態においては、被覆粒状肥料原料が有する被覆の素材と同一の素材からなる被覆を、被覆粒状肥料原料に対して設けることができる。この実施形態では、同一の素材からなる複数層の被覆が設けられた粒状肥料組成物を製造することができる。また逆に、被覆粒状肥料原料が有する被覆の素材と異なる素材からなる被覆を、被覆粒状肥料原料に対して設けてもよい。
【0045】
用いる被覆粒状肥料原料が有する被覆や、粒状肥料原料に対して設ける被覆の素材については特に限定はないが、好ましくは熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂である。すなわち、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が有する特性を考慮し、これらを適宜組み合わせることで所望の溶出パターン等を発揮する粒状肥料組成物を製造することができる。
【0046】
熱硬化性樹脂としては特に限定はなく、公知の熱硬化性樹脂をそのまま採用することができる。熱硬化性樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレア・メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。なお、熱硬化性樹脂については1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
熱可塑性樹脂としては特に限定はなく、公知の熱可塑性樹脂をそのまま採用することができる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレンなどのポリオレフィン;熱可塑性ポリエステル等のポリエステル;ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどのビニル重合物;ブタジエン重合物、イソプレン重合物、クロロプレン重合物、ブタジエン−スチレン共重合物、エチレン−プロピレン−ジエン共重合物、スチレン−イソプレン共重合物などのジエン系重合物;エチレン−プロピレン共重合物、ブテン−エチレン共重合物、ブテン−プロピレン共重合物、エチレン−酢酸ビニル共重合物、エチレン−アクリル酸共重合物、エチレン−メタアクリル酸共重合物、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合物、エチレン−一酸化炭素共重合物、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合物などのポリオレフィン共重合物;塩化ビニル−ビニルアセテート共重合物、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合物などの塩化ビニル共重合物、等が挙げられる。なお、熱可塑性樹脂については1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
用いる粒状肥料原料の肥料成分は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。肥料成分としては特に限定はなく、一般に用いられている成分をそのまま採用できるが、主として窒素成分を含有するものが好ましく採用される。窒素成分を含有する肥料成分の具体例としては、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料(UF)、アセトアルデヒド加工尿素肥料(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料(IBDU)、グアニール尿素(GU)等が挙げられるが、尿素が特に好ましく採用される。
【0049】
窒素成分以外の肥料成分の例としては、リン酸、カリウム、珪酸、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ホウ素、鉄等が挙げられる。具体的には、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、苦土過リン酸、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安等のリン酸質肥料;塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム等のカリウム質肥料;珪酸カルシウム等の珪酸質肥料;硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム質肥料;生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等のカルシウム質肥料;硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン等のマンガン質肥料;ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素質肥料;鉄鋼スラグ等の含鉄肥料等の肥料取締法に定められる普通肥料(複合肥料を含む)、が挙げられる。
【0050】
本発明の粒状肥料組成物の製造方法において、粒状肥料原料に対して設ける被覆の量については、製造される粒状肥料組成物が所望の肥効を発揮できる量であれば特に限定はないが、例えば、最終的な被覆の量(粒状肥料原料が有する被覆の量と、被覆工程で設けられる被覆の量の和)が母核の量に対して2〜20重量%、より特定すれば5〜16重量%の範囲内となるように設ければよい。なお一般に、被覆の量が少なすぎると被覆の厚みを均一に保つのが困難となり、被覆欠陥を生じる懸念が増大する。一方、被覆の量が多すぎると肥料成分の量が相対的に減少するので、必要な施肥量が増して有益ではない。
【0051】
本発明の粒状肥料組成物の製造方法において、混合工程および被覆工程に供される粒状肥料原料の平均粒径としては特に限定はなく、例えば、被覆粒状肥料の最終的な平均粒径が1〜10mm、より特定すれば1〜5mmの範囲内となるように選択すればよい。粒状肥料原料の粒径を選択する基準の1つの例として、混合工程および被覆工程で2種類以上の粒状肥料原料が均一に混合および被覆される粒径であることが挙げられる。
【0052】
本発明の粒状肥料組成物の製造方法では、さらに各種の添加剤等を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。当該添加剤の例としては、タルク、炭酸カルシウム、金属酸化物等の無機質粉末;耐候性改良剤;着色剤;結合剤;界面活性剤、等が挙げられる。これらの添加剤等は、粒状肥料原料の母核、被覆粒状肥料原料が有する被覆、被覆工程で設ける被覆のいずれに含有させてもよく、具体的には、造粒工程、混合工程、被覆工程のいずれの工程で添加してもよい。
【0053】
本発明の粒状肥料組成物の製造方法では、さらに作物の生育以外の効果に関係する成分、例えば、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、植物生長調整剤等の生理活性物質、有機質肥料、等を含有する粒状肥料組成物を製造することもできる。これらの成分についても、粒状肥料原料の母核、被覆粒状肥料原料が有する被覆、被覆工程で設ける被覆のいずれに含有させてもよく、具体的には、造粒工程、混合工程、被覆工程のいずれの工程で添加してもよい。
【0054】
以下に、本発明の粒状肥料組成物の製造方法によって製造可能な粒状肥料組成物の具体的構成について、粒状肥料原料の種類、被覆粒状肥料原料が有する被覆の種類、及び被覆工程で設ける被覆の種類の組み合わせと対比させながら説明する。以下の例において、a,b,cは粒状肥料原料の母核の種類、A,Bは被覆の種類を指すものとする。また、母核aの表面に被覆A(単一層)が設けられた被覆粒状肥料または被覆粒状肥料原料を「a/A」、母核aの表面に被覆Aが2重に設けられた被覆粒状肥料または被覆粒状肥料原料を「a/AA」、母核aの表面に被覆Aが3重に設けられた被覆粒状肥料または被覆粒状肥料原料を「a/AAA」、母核aの表面に被覆A、当該被覆Aの表面(最表面)に被覆Bが設けられた被覆粒状肥料または被覆粒状肥料原料を「a/AB」のように表す。単なる「a」は母核aのみからなる非被覆粒状肥料原料を表す。
【0055】
〔例1〕
粒状肥料原料として「a」(非被覆粒状肥料原料)、並びに、「a/A」、「a/AA」及び「a/AAA」(いずれも被覆粒状肥料原料)の4種類を選択する。これらの粒状肥料原料に対して被覆Aを設けると、「a/A」、「a/AA」、「a/AAA」及び「a/AAAA」の4種類の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
この例は、粒状肥料原料の少なくとも2種類が被覆粒状肥料原料であり(「a/A」、「a/AA」及び「a/AAA」)、当該被覆粒状肥料原料は、被覆の厚さが互いに異なるものである実施形態に相当する。
【0056】
なお、この例の粒状肥料組成物を従来の方法で製造する場合には、被覆工程の回数が多くなり煩雑である。すなわち従来の方法では、母核「a」に被覆Aを設けて「a/A」、「a/AA」、「a/AAA」及び「a/AAAA」の4種類の被覆粒状肥料を個別に調製し、これらを最後に混合する。このときに必要とされる被覆工程の回数は、
「a」→「a/A」:1回
「a」→「a/AA」:2回
「a」→「a/AAA」:3回
「a」→「a/AAAA」:4回
であり、計10回となる。実生産において、1回の被覆工程で被覆率1%の被覆を設けるような工程を組み、被覆Aの被覆率を2%に設定すると、必要な回数は2倍の20回となる。
一方、この例に示した方法では、各粒状肥料原料の調製に必要な被覆工程の回数は、
「a」:0回
「a」→「a/A」:1回
「a」→「a/AA」:2回
「a」→「a/AAA」:3回
であり、これらを混合しながら又は混合した後に、最終の被覆工程を1回行う。その結果、被覆工程の回数は計7回となり、従来の方法(10回)と比較して回数が少なくて済む。上述した条件の実生産を行う場合には被覆工程の回数が計14回となり、従来の方法(20回)との回数の差はさらに大きくなる。
【0057】
〔例2〕
粒状肥料原料として「a/A」と「a/B」の2種類の被覆粒状肥料原料を選択する。これらの粒状肥料原料に対して被覆Bを設けると、「a/AB」と「a/BB」の2種類の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
なお、「a/AB」は被覆粒状肥料原料が有する被覆(A)の素材と異なる素材からなる被覆(B)を、被覆粒状肥料原料に対して設けたものに相当する。「a/BB」は被覆粒状肥料原料が有する被覆(B)の素材と同一の素材からなる被覆(B)を、被覆粒状肥料原料に対して設けたものに相当する。
【0058】
〔例3〕
粒状肥料原料として「a/A」、「b/A」及び「c/A」の3種類の被覆粒状肥料原料を選択する。これらの粒状肥料原料に対して被覆Aを設けると、「a/AA」、「b/AA」及び「c/AA」の3種類の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
母核a,b,cが互いに肥料成分が異なるものであれば、この例は粒状肥料原料の肥料成分が2種類以上である実施形態に相当する。
【0059】
〔例4〕
粒状肥料原料として「a」、「b」及び「c」の3種類の非被覆粒状肥料原料を選択する。これらの粒状肥料原料に対して被覆Aを設けると、「a/A」、「b/A」及び「c/A」の3種類の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
母核(非被覆粒状肥料原料)a,b,cが互いに肥料成分が異なるものであれば、この例は粒状肥料原料の肥料成分が2種類以上である実施形態に相当する。
【0060】
〔例5〕
粒状肥料原料として「a/A」、「b/A」及び「c/A」の3種類の被覆粒状肥料原料を選択する。これらの粒状肥料原料に対して被覆Bを設けると、「a/AB」、「b/AB」及び「c/AB」の3種類の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
母核a,b,cが互いに肥料成分が異なるものであれば、この例は粒状肥料原料の肥料成分が2種類以上である実施形態に相当する。
また「a/AB」、「b/AB」及び「c/AB」はいずれも被覆粒状肥料原料が有する被覆(A)の素材と異なる素材からなる被覆(B)を、被覆粒状肥料原料に対して設けたものに相当する。
【0061】
〔例6〕
粒状肥料原料として「a」(非被覆粒状肥料原料)、並びに、「b/A」及び「c/AA」(いずれも被覆粒状肥料原料)の3種類を選択する。これらの粒状肥料原料に対して被覆Aを設けると、「a/A」、「b/AA」及び「c/AAA」の3種類の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
この例は、粒状肥料原料の少なくとも2種類が被覆粒状肥料原料であり(「a/A」と「a/AA」)、当該被覆粒状肥料原料は、被覆の厚さが互いに異なるものである実施形態に相当する。
また母核a,b,cが互いに肥料成分が異なるものであれば、この例は粒状肥料原料の肥料成分が2種類以上である実施形態に相当する。
【0062】
〔例7〕
粒状肥料原料として「a」(非被覆粒状肥料原料)、並びに、「b/A」及び「c/AA」(いずれも被覆粒状肥料原料)の3種類を選択する。これらの粒状肥料原料に対して被覆Bを設けると、「a/B」、「b/AB」及び「c/AAB」の3種類の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物を製造することができる。
また母核a,b,cが互いに肥料成分が異なるものであれば、この例は粒状肥料原料の肥料成分が2種類以上である実施形態に相当する。
また、「b/AB」と「c/AAB」はいずれも被覆粒状肥料原料が有する被覆(A)の素材と異なる素材からなる被覆(B)を、被覆粒状肥料原料に対して設けたものに相当する。
【0063】
本発明の他の様相は、上述した本発明の粒状肥料組成物の製造方法によって得ることができる粒状肥料組成物である。本発明の粒状肥料組成物については、上述した本発明の粒状肥料組成物の製造方法にかかる実施形態と同じ構成をもって具体的に実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の被覆粒状肥料を含有する粒状肥料組成物の製造方法であって、2種類以上の粒状肥料原料を混合しながら又は混合した後に、前記粒状肥料原料に対して被覆を設けることを特徴とする粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項2】
粒状肥料原料の少なくとも1種類は、非被覆粒状肥料原料であることを特徴とする請求項1記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項3】
粒状肥料原料の少なくとも1種類は、被覆粒状肥料原料であることを特徴とする請求項1又は2記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項4】
粒状肥料原料の少なくとも2種類が被覆粒状肥料原料であり、当該被覆粒状肥料原料は、被覆の厚さが互いに異なるものであることを特徴とする請求項3記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項5】
被覆粒状肥料原料が有する被覆の素材と同一の素材からなる被覆を、前記被覆粒状肥料原料に対して設けることを特徴とする請求項3又は4記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項6】
被覆粒状肥料原料が有する被覆の素材と異なる素材からなる被覆を、前記被覆粒状肥料原料に対して設けることを特徴とする請求項3又は4記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項7】
被覆粒状肥料原料が有する被覆の素材は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項8】
粒状肥料原料に対して設けられる被覆の素材は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項9】
熱硬化性樹脂は、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレア・メラミン樹脂、尿素樹脂、及びシリコン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項7又は8記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項10】
熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、ポリエステル、ビニル重合物、ジエン系重合物、ポリオレフィン共重合物、及び塩化ビニル共重合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項7又は8記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項11】
粒状肥料原料の肥料成分は、1種類であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項12】
粒状肥料原料の肥料成分は、2種類以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項13】
肥料成分の少なくとも1種類は、尿素であることを特徴とする請求項11又は12記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項14】
粒状肥料原料に対して被覆を設ける工程を、2回以上繰り返すことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の粒状肥料組成物の製造方法によって得ることができる粒状肥料組成物。