説明

粒状肥料組成物

【課題】 長期間に渡って固結防止性能および粉立ち防止性能が持続する粒状肥料組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の粒状肥料組成物は、粒状肥料表面を鉱産物粉末とポリオール化合物とで被覆処理した粒状肥料組成物であって、粒状肥料に対して、前記鉱産物粉末の被覆量が0.1〜5重量%、前記ポリオール化合物の被覆量が0.1〜5重量%であることを特徴とし、中でも鉱産物が、タルク、カオリンまたは葉ろう石であり、ポリオール化合物がポリエーテルポリオールであるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固結防止性能および粉立ち防止性能が長期間に渡って持続する粒状肥料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒状肥料は、一般に、燐鉱石を硫酸、燐酸および硝酸の少なくとも1種を用いて酸分解した後、これをアンモニアで中和して得られる泥状スラリーおよび/または燐酸、硫酸、硝酸などをアンモニアで中和して得られるスラリー状生成物と、硫安、硝安、尿素、硫酸加里、塩化加里等の原料用固体肥料物質を転動造粒系等の公知の方法により混合造粒することによって取得されている。
また、原料用固体肥料物質単体粉末または混合物粉末を造粒系に供給して水、熱水および/またはスチーム、および/または結合材として廃糖蜜、リグニンスルホン酸塩、ベントナイト等を利用して造粒する方法も知られている。
そして、造粒生成物は乾燥、冷却された後、製品粒径粒子を篩別分離される。残りの生成物はいわゆる循環品として造粒系に返還供給されている。このようにして得られた粒状肥料は従来から2つの大きな品質上の問題点を有している。
【0003】
問題点の第一は、固結を起こし易いため取り扱う際にしばしば困難を来たすことである。粒状肥料の固結の原因は、一般に水分吸収に起因して隣接する粒子間に生ずる飽和溶液から大気の状態変化に際して析出する結晶が各粒子間の架橋になるためであると考えられており、従来から粒状肥料の固結防止方法として、タルク、活性白土、珪藻土等の鉱産物粉末を粒状肥料に対して0.5〜1重量%添加して被覆処理することにより肥料粒子相互間の接触を妨げる方法が一般的に行なわれている。
【0004】
しかしながら、これらの固結防止材を使用する方法においては、固結防止材を添加し、被覆処理した直後は固結防止効果が充分達成されるものの、数日程度経過すると固結防止材の鉱産物粉末が肥料粒面より徐々に剥離し、このため保管中に固結現象が増大するという欠点がある。
【0005】
問題点の第二は、前記の如く期間の経過と共に鉱産物粉末が肥料粒面より除々に剥離して来るため、施肥時に粉立ちが起こり施肥作業に支障をきたすという欠点がある。
【0006】
固結防止性能および水面浮上防止性能を改善する方法として、粒状肥料にトリエチレングリコールおよび鉱産物粉末を添加し、被覆処理する方法が知られている(特許文献1参照。)。
しかしながら、この方法に於いては、3ケ月程度迄は固結防止効果および粉立ち防止効果が持続するが、3ケ月程度からトリエチレングリコールが肥料の中に徐々に浸透して肥料粒面が乾いて来るため、鉱産物粉末が肥料粒面より徐々に剥離し、固結および粉立ちが増大して行くという欠点がある。
【特許文献1】特公平5−4954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、1年程度の長期間に渡って固結防止性能および粉立ち防止性能が持続する粒状肥料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、長期間に渡って固結防止性能および粉立ち防止性能が持続する粒状肥料組成物について鋭意検討した結果、粒状肥料表面を鉱産物粉末とポリオール化合物とで被覆処理することによって、長期間に渡って固結防止性能および粉立ち防止性能が持続する粒状肥料組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、粒状肥料表面を鉱産物粉末とポリオール化合物とで被覆処理した粒状肥料組成物であって、粒状肥料に対して、前記鉱産物粉末の被覆量が0.1〜5重量%、前記ポリオール化合物の被覆量が0.1〜5重量%であることを特徴とする粒状肥料組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粒状肥料組成物は、固結防止性能および粉立ち防止性能が従来品に比して大幅に改善され、1年程度の長期間保管しても固結および粉立ち現象が増大することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の粒状肥料は、硫安、塩安、硝安、硝酸ソーダ、硝酸石灰、硝安石灰、硝安ソーダ、尿素、ウレアホルム等等の窒素質肥料、燐安、過燐酸石灰、重過燐酸石灰等の燐酸質肥料、塩化加里、硫酸加里等の加里質肥料、およびこれらの肥料物質の組み合わせによって得られる窒素−燐酸、窒素−加里、および燐酸−加里の2成分系、窒素−燐酸−加里の3成分系、あるいはこれらにマグネシウム、硼素、マンガン等植物の生育に必要な要素を含有させた粒状肥料である。
【0011】
本発明で使用する鉱産物粉末としては、タルク、カオリン、珪藻土、活性白土、珪砂、ベントナイト、葉ろう石等が挙げられるが、中でもタルク、カオリン、葉ろう石が好ましい。
この鉱産物粉末の添加量は、通常、粒状肥料に対して約0.1〜5重量%、好ましくは約0.5〜3重量%である。添加量が少な過ぎると固結防止効果が不十分であり、また多過ぎても固結防止効果の著しい向上は望めない。
鉱産物粉末の添加方法は、特に制限されることはなく、常法の手段を用いることが出来る。通常、回転円筒、または回転皿等の装置を用いて粒状肥料を転動さながら、これに鉱産物粉末を添加混合して被覆処理する方法が採られる。
【0012】
本発明で使用するポリオール化合物としては、アミノアルコール、アミン等を触媒として用い、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドとを重付加して得られるポリエーテルポリオール、テトラヒドロフランを重合して得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル型ポリオール、イサノ油やひまし油等の水酸基を保有する天然油脂や多価アルコールとポリエーテルポリオールとカルボン酸化合物を反応させる等の方法で得られるポリエステル型ポリオール等が挙げられるが、中でもポリエーテルポリオールが好ましい。
ポリオール化合物の添加量は、通常、粒状肥料に対して約0.1〜5重量%、好ましくは約0.5〜3重量%である。添加量が少な過ぎると粉立ち防止効果が不十分であり、また多過ぎても粉立ち防止効果の著しい向上は望めず、経済的に不利となるばかりでなく、肥料成分の低下をも来たす。
ポリオール化合物の添加方法は、特に制限されるものではなく、前記の鉱産物粉末と同様に、常法の手段を用いて行われる。
【0013】
本発明においては、鉱産物粉末とポリオール化合物の添加順序は、同時でも任意の異なった順序でもよく、また添加量が多い場合には分割添加してもよい。
なかでも鉱産物粉末、次いでポリオール化合物の順に添加するのが固結防止効果および粉立ち防止効果の点から好ましい。
この場合には、肥料粒面に添加、被覆処理された鉱産物粉末を、次いで添加されるポリオール化合物が良く捕捉しながら、肥料粒面に添着保持するため、これによって固結の原因である肥料粒子相互間の接触が妨げられる。また、肥料粒面に添加されたポリオール化合物は粘度が前記のトリエチレングリコールに比べて高い、例えば25℃下における粘度はトリエチレングリコールが約40センチポイズ、本発明で好ましいものとして挙げたポリエーテルポリオール(スミフェン(登録商標)TM、住友バイエルウレタン社製品)は約650センチポイズであり、これによって肥料粒子表面に添加されたポリエーテルポリオールはトリエチレングリコールに比べて肥料粒子中の空隙内に浸透して行き難くなる結果、長期間に渡ってポリエーテルポリオールが鉱産物粉末を保持し続けることから、固結防止効果および粉立ち防止効果が極めて長期間持続するものと推察される。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は特記しない限りすべて重量部および重量百分率を示す。
また、実施例に於いて固結強度および粉立ち量(剥離量)の測定は、以下の方法で行なった。
【0015】
(I)固結強度の測定方法:
図1に使用する測定器の断面を示す。内径6cm、高さ5cmのポリ塩化ビニル製の円筒容器(1)中の中心に、長さ6cm、直径3mmで、先端が外径6mmで高さ2mmの円錐状のステンレス製フック(2)を立てて、80gの試料(3)を充填し、中心をステンレス製フックが貫通する孔を有する円筒(4)(外径:4.5cm、内形:5mm)を円筒容器に挿入し、試料上に置いた。円筒に10kgの荷重(5)をかけて試料を固めた後、ステンレス製フックおよび試料が入った円筒容器をポリエチレン袋で密封し、温度40℃、湿度80%の恒温恒湿槽内で72時間放置した後、容器中に立てたフックの引き抜き強度(kg)を測定し、固結強度を求めた(指標として、引き抜き強度0.5kg以下は殆ど固結していないと見なした)。
(II)粉立ち量(剥離量)の測定方法:
市販の卓上形標準篩い振とう機に、200mmΦで目開きが210μm(60メッシュ)の標準篩いをセットし、この篩いの中に粒状肥料200gを入れ、回転数約264rpm、タッピング数約146回/分の条件下に10分間篩い分けし、篩われた210μm以下の粉の量を測定し粉立ち量とした。
【0016】
実施例1、比較例1
粒径2〜4mmの硫燐安系粒状肥料[肥料成分13−13−13(13−13−13はN−P25−K2Oとしての含量%を示す。)、配合割合:燐酸2アンモン29.3%、硫安39.6%、塩化加里22%、石膏9.1%、含有水分:1.22%]1kgを皿型造粒機で転動させながらタルク[149μm(100メッシュ)パス品]を表1に示す割合で添加し、このものを転動させながら次いでポリエーテルポリオール(スミフェン(登録商標)TM、住友バイエルウレタン(株)製)を表1に示す割合で添加した。このようにして得た硫燐安系粒状肥料組成物をポリエチレン袋で密封し、次いで温度30℃、湿度60%の恒温恒湿槽内で1年間放置した後、各試料について固結強度および粉立ち量を測定した。結果を表1に示す。






【0017】
【表1】


表1より、本発明の鉱産物粉末およびポリオール化合物を添加、被覆処理した粒状肥料組成物は、従来品に比べて極めて優れた固結防止効果および粉立ち防止効果を長期間有することが解る。
【0018】
実施例2、比較例2
粒径2〜4mmの尿素系粒状肥料[肥料成分18−18−18(18−18−18はN−P25−K2Oとしての含量%を示す。)、配合割合:燐酸2アンモン40%、尿素16%、ウレアホルム10%、塩化加里30%、石膏4%、含有水分:0.72%]1kgを皿型造粒機で転動させながらカオリン[149μm(100メッシュ)パス品]を表2に示す割合で添加し、このものを転動させながら次いでポリエーテルポリオール(スミフェン(登録商標)TM、住友バイエルウレタン(株)製)を表2に示す割合で添加した。このようにして得た尿素系粒状肥料組成物をポリエチレン袋で密封し、次いで温度30℃、湿度60%の恒温恒湿槽内で1年間放置した後、各試料について固結強度および粉立ち量を測定した。結果を表2に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
実施例3、比較例3
粒径2〜4mmの硝燐安系粒状肥料[肥料成分18−8−18(18−8−18はN−P25−K2Oとしての含量%を示す。)、配合割合:燐酸2アンモン18.5%、硝安44.4%、硫酸加里31.3%、石膏5.8%、含有水分:0.77%]1kgを皿型造粒機で転動させながら葉ろう石(149μm(100メッシュ)パス品)を表3に示す割合で添加し、このものを転動させながら次いでポリエーテルポリオール(スミフェン(登録商標)TM、住友バイエルウレタン(株)製)を表3に示す割合で添加した。このようにして得た硝安系粒状肥料組成物をポリエチレン袋で密封し、次いで温度30℃、湿度60%の恒温恒湿槽内で1年間放置した後、各試料について固結強度および粉立ち量を測定した。結果を表3に示す。
【0021】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例で用いた固結強度の測定器の断面模式図である。
【符号の説明】
【0023】
1:ポリ塩化ビニル製円筒容器
2:ステンレス製フック
3:試料
4:円筒
5:荷重


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状肥料表面を鉱産物粉末とポリオール化合物とで被覆処理した粒状肥料組成物であって、粒状肥料に対して、前記鉱産物粉末の被覆量が0.1〜5重量%、前記ポリオール化合物の被覆量が0.1〜5重量%であることを特徴とする粒状肥料組成物。
【請求項2】
ポリオール化合物がポリエーテルポリオールである請求項1記載の粒状肥料組成物。
【請求項3】
鉱産物が、タルク、カオリンまたは葉ろう石である請求項1記載の粒状肥料組成物。



【図1】
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