説明

粘土材料及び粘土

【課題】弾力性に優れ、塑性変形し難く、温度が上昇しても弾性が低下することが少ない天然の食品や食品添加物から構成されている粘土材料及びその粘土材料からなる粘土を提供することである。
【解決手段】中空体バルーン、檜の粉末、ケナフの粉末及び硫酸カルシウムの粉末のいずれか1以上が含まれた骨材料と、カルボキシルメチルセルロースナトリウム粉末及び澱粉のいずれか1以上が含まれた糊料粉末と、寒天と、セルロースパウダーと、塩化カルシウムと、を備えたことを特徴とする粘土材料及びその粘土材料からなる粘土である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の食品や食品添加物などからなる粘土材料及びその粘土材料からなる粘土に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から存する紙粘土としての石粉粘土は、パルプ、無機粉末として炭酸カルシウム及びタルク、並びに糊料としてポバールが配合されている。この石粉粘土は、弾力があり過ぎて加工し難いという問題がある。また、ポバールなどの合成糊料がアトピー性皮膚炎の原因となることがあり、紙粘土の原料としては、好ましくない。
【0003】
一方、特許文献1には、タルクを含有させず、天然の食品や食品添加物から構成された紙粘土の粘土材料が記載されている。この特許文献1に記載された粘土材料は、中空体バルーン、檜の粉末、ケナフの粉末、又は硫酸カルシウムの粉末などの骨材料と、カルボキシルメチルセルロースナトリウム粉末や澱粉などの糊料粉末と、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、又はほう酸などの無機塩の粉末と、が配合されており、さらに寒天を添加することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−249811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された粘土材料は、石粉粘土などの粘土材料と比べて、弾力性に欠けて塑性変形し易いという問題がある。特に、温度が上昇すると、その弾性が低下するため、夏場においては、造形しても自重により直ぐに変形してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、天然素材から構成されるとともに、弾力性に優れ、塑性変形し難く、温度が上昇しても塑性変形が少ない粘土材料及びその粘土材料からなる粘土を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、中空体バルーン、檜の粉末、ケナフの粉末及び硫酸カルシウムの粉末のいずれか1以上が含まれた骨材料と、カルボキシルメチルセルロースナトリウム粉末及び澱粉のいずれか1以上が含まれた糊料粉末と、寒天と、セルロースパウダーと、塩化カルシウムと、を備えることによって、天然素材であっても、弾力性を向上させ、塑性変形させず、さらに温度が上昇しても塑性変形を少なくすることができることを見出した。すなわち、本発明は、粘土材料中空体バルーン、檜の粉末、ケナフの粉末及び硫酸カルシウムの粉末のいずれか1以上が含まれた骨材料と、カルボキシルメチルセルロースナトリウム粉末及び澱粉のいずれか1以上が含まれた糊料粉末と、寒天と、セルロースパウダーと、塩化カルシウムと、を備えたことを特徴とする粘土材料及びその粘土材料に加水して作製される粘土である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、天然素材から構成されるとともに、弾力性に優れ、塑性変形し難く、温度が上昇しても塑性変形が少ない粘土材料及びその粘土材料からなる粘土を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る粘土材料において、セルロースパウダーは、食品添加物として用いられる天然物であり、JIS標準ふるい20〜500メッシュの大きさのものが好ましい。20メッシュ以下であると紙粘土のきめが粗くなるという問題があり、500メッシュより大きいと、細か過ぎるので、加水して紙粘土を作る際に粉立ちして作業性を低下させるという問題がある。
【0010】
本発明に係る粘土材料は、天然の食品や食品添加物などから構成され、合成糊料を含有させていないので、アトピー性皮膚炎を生じさせることは少ない。また、本発明に係る粘土材料において、骨材料として硫酸カルシウムを用いた場合、硫酸カルシウムと塩化カルシウムは、その浸透圧により、抗菌・防黴効果を発揮するので、防腐剤を添加する必要がない。
【0011】
本発明に係る粘土材料は、寒天とセルロースパウダーを添加することにより、紙粘土の伸延性を向上させ、べとつきをなくし、剥離性を向上させることができる。また、一度、造形してからは、変形せず、特に温度が上昇しても塑性変形に影響を与えることが少なく、立体性を保つことができる。さらに、経時によるひび割れも生じ難いという特徴を有する。またさらに、本発明に係る粘土材料は、主成分が天然素材から構成されているので、生分解性を有し、環境の面においても優れている。
【0012】
本発明に係る粘土材料において、骨材料及び糊料粉末の総含有量は、10〜60重量%であることが好ましく、15〜50重量%であることがさらに好ましく、25〜45重量%であることが特に好ましい。寒天の含有量は、1〜10重量%であることが好ましく、2〜7重量%であることがさらに好ましく、2〜4重量%であることが特に好ましい。セルロースパウダーの含有量は、5〜30重量%であることが好ましく、10〜25重量%であることがさらに好ましく、15〜20重量%であることが特に好ましい。塩化カルシウムの含有量は、10〜50重量%であることが好ましく、15〜45重量%であることがさらに好ましく、25〜45重量%であることが特に好ましい。本発明に係る粘土材料には、水彩絵の具やポスタ−カラーなどで着色しても良い。
【0013】
本発明に係る粘土は、粘土材料に適量な水を加えて、30秒〜1分間混練することによって、作製することができる。
【実施例】
【0014】
実施例1
次に、本発明に係る粘土材料の実施例1として、表1に示す配合の粘土材料(43部)を用意した。これら粘土材料に水40mLを加え、1分間混練することにより、本発明に係る粘土の実施例1を得た。
【0015】
【表1】

【0016】
比較例1乃至6
また、比較例1として「ウイング」(CEC社製)、比較例2として「シルキークレイ」(紫香楽教材粘土(株)製)、比較例3として「かるがる」((株)パジコ製)、比較例4として「ハーティソフトホワイト」((株)パジコ製)、比較例5として「天使のねんど」(CEC社製)及び比較例6として「アーチスタソフト」((株)パジコ製)をそれぞれ用意した。
【0017】
比較例7
さらに、比較例7として、表2に示す配合の粘土材料を用意し、この粘土材料に水40mLを加え、1分間混練することにより、比較例7に係る粘土材料を得た。
【0018】
【表2】

【0019】
実験例1
次に、実施例1並びに比較例1乃至6に係る粘土について、周波数依存性測定を動的粘弾性測定装置(ARES;T.A.Instruments製)によって測定した。測定検体は、20℃にて静置した後に、20℃で測定した。歪は、0.1%に固定し、周波数を0.1〜10Hzまで変化させた際の物性変化を観察した。プランジャーは、φ25mmのパラレルプレートを用いた。その結果を図1及び2に示す。
【0020】
図1から明らかなように、実施例1に係る粘土は、比較例1乃至6に係る粘土材料に比して、低周波数域から高周波数域への動的貯蔵弾性率の変化が少なく、保形性が高いことが示された。また、図2から明らかなように、比較例1乃至6に係る粘土の損失正弦は、高周波数域において値が大きくなるのに対して、実施例1に係る粘土の損失正弦は、高周波数域においても値が小さくなる。このことより、比較例1乃至6に係る粘土の物性は、速い速度で歪ませると液性に傾くのに対して、実施例1に係る粘土の物性は、速い速度で歪ましても液性に傾くことはなく、保形性に優れていることが分かる。
【0021】
実験例2
次に、実施例1並びに比較例1乃至7に係る粘土の硬さ、弾力性及び復元性をテクスチャーアナライザー(TA.XT.plus:Stable Micro Systems社製)によって測定した。TPA(texture profile analysis)モード、probe直径49mm、test speed 10mm/sec、圧縮strain 70%の条件で測定した。検体は、いずれも20mm×20mm×10mm(wide×depth×height)に成型し、20℃に2.5時間静置させて試験に用いた。20℃における測定結果を表3に示す。
【0022】
【表3】

【0023】
表3から明らかなように、実施例1に係る粘土材料は、比較例1乃至7と比較して硬さがあり、弾力性が高いことから成型後の保形性に優れていることが示された。また、実施例1に係る粘土材料は、比較例1乃至7と比較して復元性が高いことから、混錬によりまとまりやすく、再成型能に優れていることが示された。
【0024】
実験例3
次に、実施例1及び比較例7に係る粘土材料について、実験例2と同様の方法により20℃及び37℃における硬さ、弾力性及び復元性を測定し、さらに付着性についても測定した。付着性の測定は、実施例2と同様にテクスチャーアナライザーで同一条件にて行った。20℃における結果を表4に示し、37℃における結果を表5に示し、37℃の20℃に対する低下率又は増加率を算出し、その結果を表6に示す。
【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
【表6】

【0028】
以上のように、実施例1に係る粘土は、比較例7に比して温度における変化が少なく、人肌の温度(37℃)においても、物性変化が少なく、加工し易いことが分かる。また、比較例7に係る粘土は、実施例1に係る粘土に比して37℃における付着性が増加しているので、手に付着して作業し難くなることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1並びに比較例1乃至6の周波数と動的貯蔵弾性率の関係を示すグラフである。
【図2】実施例1並びに比較例1乃至6の周波数と損失正弦の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空体バルーン、檜の粉末、ケナフの粉末及び硫酸カルシウムの粉末のいずれか1以上が含まれた骨材料と、カルボキシルメチルセルロースナトリウム粉末及び澱粉のいずれか1以上が含まれた糊料粉末と、寒天と、セルロースパウダーと、塩化カルシウムと、を備えたことを特徴とする粘土材料。
【請求項2】
請求項1記載の粘土材料に加水して作製される粘土。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−171517(P2007−171517A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368566(P2005−368566)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【出願人】(504080043)有限会社アドバンス (4)