説明

粘土製品のコーティング剤と粘土製の花器

【課題】 人や環境に優しく、粘土製の容器に適した粘土製品のコーティング剤の開発と、花器だけでもそこに生けられる飾られる草花や木等を長い間枯れないようにする粘土製の花器を提供する。
【解決手段】 珪藻土を粒子状・粉末状にしこれを焼成したものに、所定の水とバインダーを加えてコーティング剤2を製造して、花器1の内側にコーティング剤2を塗布して焼き上げる。花器1の外側は釉薬を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘土製品を焼き上げる前に塗布する粘土製品のコーティング剤と、生けられる草花や木等の寿命を長くすることができる粘土製の花器に関する。
【背景技術】
【0002】
珪藻土(diatomite、diatomaceou earth)は、藻類の一種である珪藻の殻の化石よりなる堆積物(堆積岩)である。珪藻の殻は二酸化ケイ素(SiO2)でできており、珪藻土もこれを主成分とする。珪藻土の用途としては、吸着性に優れているため濾過助剤や、耐火性と断熱性に優れているため建材や保温材として、電気を通さないので絶縁体として、また適度な硬さから研磨剤としても使用されている。特許文献1には、珪藻土を素焼きにした植木鉢と、この植木鉢に水を供給する水受け皿等から構成される珪藻土植木鉢が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−129565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の植木鉢では、珪藻土のもつ多孔質により比較的樹木は長持ちするが、素焼きであるから、花器としては強度として劣る問題を有していた。また、水受け皿が常に必要になる問題を有する。すなわち、花器の種類等によっては、水受け皿を使用できない場合や、水受け皿を使用したくない場合がある。
【0005】
一方、花器は釉薬を施すことで、割れ難くしたり、水が漏れないようにされるが、釉薬の種類によっては、生けられる草花や木等に対して害になるものや、人(特にアレルギーのある人)に対して有害な物質を発散されるおそれのあるものは好ましくない。
【0006】
そこで本発明の目的は、人や環境に優しく、粘土製の容器やタイル等に適した粘土製品のコーティング剤の開発と、花器だけでもそこに生けられる飾られる草花や木等を長い間枯れないようにする粘土製の花器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載の粘土製品のコーティング剤は、粘土に水を加えて攪拌混合した混合材料を所定形状にして焼き上げて製造される粘土製品において、珪藻土を粒子状・粉末状にしこれを焼成したものに、所定の水とバインダーを加えてコーティング剤を製造して、このコーティング剤を前記粘土製品に塗布して焼き上げることを特徴とする。ここで、粘土製品とは、例えば、花器、鉢、容器類、食器類、タイル、れんが、粘土瓦、土管等を言う。
【0008】
本発明によれば、珪藻土を粒子状・粉末状にしこれを焼成したものに、所定の水とバインダーを加えてコーティング剤とし、これを粘土製品に塗布して焼き上げると、所定の硬度を有するようになり、水もちが良くなるとともに(水の冷却効果がある。)、粘土の持つ臭いを消す消臭等の役割を有する。
【0009】
本発明の請求項3記載の粘土製の容器は、粘土に水を加えて攪拌混合した混合材料を所定形状にして焼き上げて製造される草花や木等が生けられる粘土製の花器において、珪藻土を粒子状・粉末状にしこれを焼成したものに、所定の水とバインダーを加えてコーティング剤を製造して、前記花器の内側にコーティング剤を塗布して焼き上げることを特徴とする。
本発明によれば、上記発明による作用・効果に加えて、粘土製の花器に水を入れて、草花や木等を生けると、コーティング剤が水を浄化することとなる(水の温度を下げる効果がある。)。したがって、夏場でも、生けられる草花や木を格段に長い間枯れないようにする。
【0010】
本発明としては、前記所定の水が前記混合材料中の水であることが好ましい。
本発明によれば、粘土製の容器を製造するときに使用した水(粘土に水を加えて攪拌混合した混合材料の水)を使用しているので、粘土製品と馴染む、つまり粘土製品に塗布するに適したコーティング剤であり、花器としての割れ防止に優れると共に、この粘土製品に水を入れて使用すると、水を浄化して、水を長期間綺麗に保つ作用がある。
【0011】
本発明としては、前記粘土製品の花器に水を入れるとともに、炭を入れて、草花や木等が生けられたり、又、珪藻土(焼成した珪藻土)を前記粘土製品の花器に入れて使用して良い。
本発明によれば、粘土製の容器に炭や珪藻土を入れて使用すると、さらに水を浄化する。なお、草花や木等に栄養分を与えて、生けられる草花や木を更に長い間枯れないようにしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘土製品のコーティング剤によれば、珪藻土を粒子状・粉末状にしこれを焼成したものに、所定の水とバインダーを加えてコーティング剤とすることで、有害物質を含まず、有害物質を吸着して、粘土のいやな臭いを減少させる等の効果を有する。
本発明の粘土製の花器によれば、水を入れて草花や木等が生けられると、コーティング剤が水を浄化することとなる。したがって、生けられる草花や木を格段に長い間枯れないようにすることが可能になる。
そして、前記所定の水が前記混合材料中の水であることにより、粘土製品と馴染む、つまり粘土製品に塗布するに適したコーティング剤であり、より割れ難くしたり、水をより長く綺麗に維持する等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る粘土製の花器を示す斜視図である。
【図2】上記第1の実施の形態の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る粘土製の花器を示す斜視図である。
【図4】上記第1の実施の形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を引用しながら本発明の粘土製の花器の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る粘土製の花器を示す斜視図であり、図2は、断面図である。花器1は、通常の粘土(珪藻土以外)と、水を混合した混合材料を作成して、轆轤(ろくろ)にかけて、所定形状にする。そして、乾燥させた後、花器の外側は釉薬3を塗布するが、花器1の内側1bは釉薬3は塗布せずに、コーティング剤2を塗布する。なお、ろくろで所定形状に成形しながら、その内側にコーティング剤2を塗布する方法もある。
この粘土製品のコーティング剤2は、珪藻土を粒子状・粉末状にしてこれを焼成したものに、バインダー(つなぎ)として、水溶性セルロースエーテルを加え、所定の水を加えて攪拌する。ここでは、焼成した焼成粒を100〜250gで、水溶性セルロースエーテルを20gを加えた。珪藻土は、能登地方で産出する珪藻土であり、粘土を多く含み、このため、粘りが強くて形がつくりやすく、焼くと硬くしまる特徴を有する。この珪藻土を粒子状・粉末状にしこれを焼成する。予め400℃以上800℃以下の温度で焼成する。その理由は、表1に示すように、吸湿能を見た場合には、焼成しないものが最も吸湿効果を発揮しているが、例えば殺菌効果を得るためには焼成温度が400℃以上であることが必要である。また、珪藻土に含まれる不純物を消滅させる必要があること(天然の珪藻土を使用するため)、有色の珪藻土が焼成により白色になり色彩が出し易くなること、さらにはひび割れ(クラック)防止等の観点からも、400℃以上で焼成することが好ましい。精製品の比表面積当たりの吸湿能は、1200℃を除いて3.4〜4.8mg/mを有している。珪藻土の吸湿能は焼成温度に関わらずほぼ一定で、比表面積に強く依存していることがわかる。これは、あまり高温で焼成すると珪藻土の孔が破壊され、多孔質体であることの特徴が失われて吸湿特性が低下するためと考えられる。
【0015】
【表1】

【0016】
花器1は、上部側に開口が設けられるもの、その中央側面が上部開口側と底部側2bよりも膨出する中央膨出形状を呈する。すなわち、花器1の底部側2bよりも側面のほぼ中央が外部に膨出している、そして、この部分の内側にコーティング剤2bを厚く塗布している。なお、底部側2bもコーティング剤2を厚く塗布しても良い。
【0017】
すなわち、花瓶1の内壁と底側にコーティング剤2a,2bが塗布されている。花器1の外側は、釉薬3が施される。そして、焼成製造される。焼成の温度は800℃〜900℃である。このように製造された花器1に水を入れると、コーティング剤2が水を浄化する。したがって、生けられる草花や木を格段に長い間枯れないようになり、花や草木が長い間枯れずに室内等で観賞することができる。
【0018】
ここで、粘土製品のコーティング剤2は、珪藻土を粒子状・粉末状にして(5mm〜10mm程度にする)、これを焼成したものに(焼成した粒子の大きさとしては、約0.01〜0.3mm程度である。)、バインダーである水溶性セルロースエーテルを加え、所定の水を加えて攪拌する。水溶性セルロースエーテルは、のり(つなぎ)として使用するもので安全性の高いものである。そして、焼成した焼成粒を100gで、焼成した焼成粒を150gで水溶性セルロースエーテルを20gを加えたものでも良い。このようなコーティング剤2を塗布するので、脱臭効果や殺菌効果(抗菌効果)を発揮する。
【0019】
実施の形態の花器1は、仏壇の花瓶の場合、御墓の花瓶に好適である。なお、花器1の中に炭や所定の土や焼成した珪藻土を入れて使用しても良い。
また、図3と図4は、神棚の花瓶11に本発明を適用したものである(第2の実施の形態)。そして、神棚の花瓶11の底部2bは、左右の内壁2aよりも厚くなるようにコーティング剤2が塗布されている。なお、神棚の花瓶11の外壁側11bのみ底部も含めて釉薬3が塗布されている。
【0020】
(実施例1)
実施例1として、第1の実施の形態で通常の粘土で花器1を製造して、その内部に上記コーティング剤2でコーティングした。そして焼成して製造した。焼成は1度である。製造された粘土製の花器1にサカキ(榊)を入れて、7日間、窓の近くおいて直射日光が当たる状態に置いた。季節は6月下旬である。気温は27度から30度であった。これは強い日差しと言う過酷な条件の下で枯れる状態を比較するためである。
【0021】
(実施例2)
実施例2として、前記所定の水が前記混合材料中の水とした。すなわち、粘土に水を加えて攪拌混合した混合材料中の水を使用した。それ以外は、実施例1と同様、7日間、窓の近くおいて直射日光が当たる状態に置いた。
【0022】
(実施例3)
実施例3として、前記粘土が珪藻土を主成分とする粘土とした。すなわち、珪藻土を30重量%として通常の土の粘土を70重量%とした。そして、実施例1と同様、7日間、窓の近くおいて直射日光が当たる状態に置いた。
【0023】
(実施例4)
実施例4として、上記実施例2で、花器1の内部に炭(備長炭)を入れて、サカキ(榊)を入れて、7日間、窓の近くおいて直射日光が当たる状態に置いた。それ以外は、実施例1と同じである。
【0024】
(比較例1)
実施例3として、珪藻土を粒子状・粉末状にしたが、これを焼成しないものを使用した。そして、実施例1と同様、7日間、窓の近くおいて直射日光が当たる状態に置いた。
【0025】
(比較例2)
実施例3として、前記粘土が珪藻土を主成分とする粘土とした。珪藻土を70重量%として通常の土の粘土を30重量%とした。そして、実施例1と同様、7日間、窓の近くおいて直射日光が当たる状態に置いた。
【0026】
以上の実験結果から、最も長く枯れなかったサカキは、実施例4であり、その次に実施例3であり、その次に実施例2、次に実施例1の順になった。なお、焼成した焼成粒を100gで、焼成した焼成粒を150gで水溶性セルロースエーテルを20gを加えたものと、実施例1では、それほど差異は見られなかった。また、花器としての強度が強いのは、実施例2と4が最も強かった。その次に強度が強いのは実施例1であった。なお、実施例3の前記粘土が珪藻土を主成分とするものは、通常の土が含まれるものではあっても、乾燥の段階や釉薬3の塗布後の焼成においても亀裂が多発した。
また、菊の花を10日間上記と同じように活けたが、花器1の内部に水垢が付着していなく悪臭もなかった。水も花も枝もぬめりが生じていなかった。通常の花器ではぬめりと悪臭があり枝にもぬめりが生じる。水洗いして水垢を取り除く必要が有る。珪藻土の特徴は、気孔が有るため遠赤外線を取り入れることが可能である。水垢や臭いをなくして、水を長持ちさせる。本実施の花器1は水を入れたままで良い。
【0027】
以上、本実施の形態では、花器にコーティング剤2を塗布する例で説明したが、本発明のコーティング剤は、水を入れて使用する粘土製品や水がかかるような場所にも適用可能である。そして、コーティング剤が塗布される箇所が前記粘土製品に水を入れる箇所等であれば、その水の浄化作用を発揮することとする。また、タイルに使用すると、水の吸収と空気の浄化に加えて冷却効果を発揮する。
【符号の説明】
【0028】
1,11 粘土製の花器、
2 コーティング剤、
3 釉薬、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土に水を加えて攪拌混合した混合材料を所定形状にして焼き上げて製造される粘土製品において、珪藻土を粒子状・粉末状にしこれを焼成したものに、所定の水とバインダーを加えてコーティング剤を製造して、このコーティング剤を前記粘土製品に塗布して焼き上げることを特徴とする粘土製品のコーティング剤。
【請求項2】
前記所定の水が前記混合材料中の水であることを特徴とする請求項1記載の粘土製品のコーティング剤。
【請求項3】
粘土に水を加えて攪拌混合した混合材料を所定形状にして焼き上げて製造される草花や木等が生けられる粘土製の花器において、珪藻土を粒子状・粉末状にしこれを焼成したものに、所定の水とバインダーを加えてコーティング剤を製造して、前記花器の内側にコーティング剤を塗布して焼き上げることを特徴とする粘土製の花器。
【請求項4】
前記所定の水が前記混合材料中の水であることを特徴とする請求項3記載の粘土製品の花器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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