説明

粘度測定器および粘度測定方法

【課題】粘性液体の粘度を簡易的に測定する粘度測定器等を提供すること。
【解決手段】粘度測定器は、粘性液体を表面に複数のスリットを設けた板の傾斜面の上部より流し、粘性液体が粘性によりスリット幅に対する抵抗によりオーバーフローするスリット幅を検出し、粘性液体の粘度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性液体の粘度を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シルク印刷工事等を行う場合、インク中の溶剤分の揮発によりインクの粘度が高くなり、特に表面が凹凸した面に印刷した文字などにニジミ、つぶれなどが発生しやすかった。
【0003】
しかし、現在の粘度計は、振動式、回転式、落下式などがあるが、測定するためにはある程度のインク量が必要であり、また、シルク印刷工事中等では、測定するためのインク量を確保するこができなく、その結果、粘度を測定することが困難であった。
【0004】
このため、シルク印刷工事時等の粘度調整は、作業者のノウハウの領域となっていた。
【0005】
関連技術として、傾斜面にドープセメントを垂れ落として粘度を検査する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録3078981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の関連技術では、シルク印刷工事時等の粘度調整は、作業者のノウハウの領域となり、定常的に印刷品質を確保することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、粘性液体の粘度を簡易的に測定する粘度測定器および粘度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粘度測定器は、粘性液体を表面に複数のスリットを設けた板の傾斜面の上部より流し、前記粘性液体が粘性によりスリット幅に対する抵抗によりオーバーフローするスリット幅を検出し、前記粘性液体の粘度を測定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の粘度測定方法は、粘性液体を表面に複数のスリットを設けた板の傾斜面の上部より流すステップと、
前記粘性液体が粘性によりスリット幅に対する抵抗によりオーバーフローするスリット幅を検出し、前記粘性液体の粘度を測定するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粘性液体の粘度を簡易的に測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第一の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1に示す本実施の形態におけるスリット型簡易粘度測定器1は、粘性のあるインクが流れる溝102、スリット104及びインクの流れを整流するための整流部103を備える。なお、図2に一の整流部103およびスリット104の拡大図を示す。
【0012】
図1に示すように、スリット幅104の調整は、整流部103の幅を調整することで行ってもよく、スリット幅の違う6種類104a〜104fを有する。一例として6種類としたがこれに限定されないのはもちろんである。なお、図1において、スリット104fはインクがオーバーフローしている状態を示すため、インクに隠れている。
【0013】
また、整流部103には、インクの流れ201を整流するためと、インクが通過後に溜りが出来ないよう、両端に「R」型処理を設けた形状としてもよい。
【0014】
なお、整流部103の長さ107はここでは一例として6mmとする。すなわち、各スリット幅6種類104a〜104fに関してすべて同じ長さとする。
【0015】
以下に、スリット104の形成方法の一例を図3を参照して説明する。スリット104は、めっき工法を用い形成する。例えば、銅合金材101(1)の真鍮表面にインクが流れる溝102を1mmの深さ105で機械加工し表面を研磨する(2)。
【0016】
次に、レジストを塗布し、各スリット幅6種類104a〜104fを描いたフイルムを基に、レジストを露光および現像する(3)。
【0017】
その後、銅めっきを50〜60μm施し(4)、レジストを剥離しスリット104を形成する(5)。
なお、スリット部104の深さ106は、めっき厚さの50〜60μmと同じである。
【0018】
更に、素材及びめっき表面の微細な凹凸は、インクの流れに影響するため、化学研磨等により表面を平滑とすることであってもよい。その後、更に、めっき表面にインクが付着しないようテフロン(登録商標)を含有する無電解ニッケルめっきを5μm以上実施しコーテングすることであってもよい(6)。表面にテフロン含有の無電解ニッケル施すと、溶剤で洗浄すればインクの残渣もなく、何度でも速やかに使える。
【0019】
上記のスリット104の形成方法の他に種々の公知の技術・手法によりスリット104を形成してよいのはもちろんである。また、粘度測定器、整流部、溝、スリット等は適切な材質・形状であれば広く含む。
【0020】
また、図4を参照すると、本実施の形態におけるスリット型簡易粘度測定器1は、インク2を滴下したときの受け部109と、インクの捕集部110及びスリット部分にインクを流すための所定の角度108を有する。
【0021】
次に、本実施の形態におけるスリット型簡易粘度測定器1を用いた粘度測定方法の動作について、図5のフローチャートを参照して詳細に説明する。ここでは一例として、シルク印刷工事を前提として説明する。
【0022】
シルク印刷工事前に、図4に示すようなインク2の粘度を調べるため、インク2を受け部109に定量滴下する(S501)。測定器には角度108が設けてあるので、インク2は重力によりインクが流れ出す。
【0023】
流れたインク201は、図1に示すような溝102に沿って流れ、最初の整流部103に差しかかるが、先端には「R」型処理があるためスリット104aに導かれて流れて行き、スリット104aではスリット幅が広いため、通過時にほとんど抵抗を受けることなく通過していく(S502)。更に、インクは、スリット104b、104c、104d、104eを通過(S503〜S506)し、スリット104fにインク201が差し掛かると、スリット幅が狭いのでインクの粘性の影響で、インク通過時に抵抗を受け流れにくくなる。更に流れてくるインク量に追いつかず、ついにはスリット104fをオーバーフローし(S507)、インク202が、捕集部110へ流れてしまう(S508)。このときの、スリット104fに設定されているスリット幅が工事前のインクの粘度となる(S509)。なお、スリット幅に対応した粘度が予め測定されており正確な値がわかるように処理されていてもよい。
【0024】
次に、シルク印刷工事中のインク2の粘度を確認する。上記のシルク印刷工事前の時と同様に、インク2を受け部108に定量滴下する。工事中にインク中の溶剤が揮発しているので粘性は上昇しているので、スリット幅が最初の時に比べ広いところ、例えばスリット104cのところで、インク201がオーバーフローすることが確認される。このときスリット104cに設定されているスリット幅がシルク印刷工事中のインクの粘度となる。なお、スリット幅に対応した粘度が予め測定されており正確な値がわかるように処理されていてもよいのは同様である。
【0025】
このように、シルク印刷工事では、インク2の粘度が変化するので、シルク印刷工事中に対応するスリット104cとシルク印刷工事前に対応する104fの範囲でインク2の粘度の管理を行い、粘度に応じた印刷のための処理を行うことで、シルク印刷品質の安定に寄与することができる。
【0026】
上記の本実施の形態によれば、粘性の高いインクがスリット部を通過する時、通過時の流れに抵抗を示し、スリット104通過するインクの流れの変化を調べることで、簡易的に粘度を測定することができる。
【0027】
また、角度108を変える事で粘性が、大きく違う場合でもインクの流れるスピードを一定とすることで、広範囲の粘度を測定することができる。
【0028】
また、少量のインク2で測定できる。本実施の形態では2〜3mlで可能である。
【0029】
本発明の他の実施の形態として、スリット幅104が同じ場合、スリットの長さを変える事で、インクが通過時の流れにも抵抗が変化する原理を利用し、スリットの長さを数種設けることで、簡易的に粘度を測定することができる。
【0030】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る粘度測定器の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスリットの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る粘度測定器の形成方法を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る粘度測定器の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 スリット型簡易粘度測定器
102 溝
103 整流部
104a〜f スリット
109 受け部
110 捕集部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性液体を表面に複数のスリットを設けた板の傾斜面の上部より流し、前記粘性液体が粘性によりスリット幅に対する抵抗によりオーバーフローするスリット幅を検出し、前記粘性液体の粘度を測定することを特徴とする粘度測定器。
【請求項2】
前記板の傾斜面の上部より下部の方向に、順番に幅を狭くしたスリットを設けることを特徴とする請求項1記載の粘度測定器。
【請求項3】
前記板の傾斜面の上部より下部の方向に、順番に長さを長くしたスリットを設けることを特徴とする請求項1記載の粘度測定器。
【請求項4】
板の傾斜面の傾斜角度を変える事ができることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の粘度測定器。
【請求項5】
粘性液体を表面に複数のスリットを設けた板の傾斜面の上部より流すステップと、
前記粘性液体が粘性によりスリット幅に対する抵抗によりオーバーフローするスリット幅を検出し、前記粘性液体の粘度を測定するステップと、を有することを特徴とする粘度測定方法。
【請求項6】
前記板の傾斜面の上部より下部の方向に、順番に幅を狭くしたスリットを設けることを特徴とする請求項5記載の粘度測定方法。
【請求項7】
前記板の傾斜面の上部より下部の方向に、順番に長さを長くしたスリットを設けることを特徴とする請求項5記載の粘度測定方法。
【請求項8】
板の傾斜面の傾斜角度を変えるステップをさらに有することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の粘度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−139471(P2010−139471A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318288(P2008−318288)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)