説明

粘着シート

【課題】本発明は、貼付作業性および屈曲部追従性に優れた粘着シートを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくともウレタンポリマーを含有するフィルムを備えた基材層と、粘着剤層とを有する粘着シートであって、当該基材層は、(a)200mm/minの引張速度で伸長させた場合に、10%伸張までの移動量と応力の積から求められる仕事量が35〜160N・mmであり、かつ(b)200mm/minの引張速度で10%まで伸張させ、その状態で伸長を停止した時の応力が、最大応力の36.8%まで減衰する緩和時間が60秒以下である基材層であることを特徴とする粘着シートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともウレタンポリマーを含むフィルムを備えた基材を有する粘着シートに関し、特に、貼付作業性および屈曲部追従性に優れた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタンポリマーを含むフィルムは、高強度と高破断伸びを両立できるフィルムは知られている(例えば先行技術文献1〜3)。これらのフィルムは、フィルムとして高強度、高破断伸び等の強靭な物性を有しているが、例えば自動車塗膜等の塗装面保護用粘着シートの基材として用いようとすると、さまざまな形状の自動車塗膜面へ追従しつつ、気泡やシワが入らないように貼付でき、さらに屈曲部分に貼付した際にフィルム端部の浮きがないことが要求される。このようなフィルムには、適度な柔軟性、伸び、強度などが要求されるが、これらの物性を満足し、車両用塗膜面を保護するための保護シートとして適用できる粘着シートはこれまでなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−96140号公報
【特許文献2】特開2003−171411号公報
【特許文献3】特開2004−10661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、貼付作業性および屈曲部追従性に優れた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の粘着シートは、少なくともウレタンポリマーを含有するフィルムを備えた基材層と、粘着剤層とを有する粘着シートであって、当該基材層は、(a)200mm/minの引張速度で伸長させた場合に、10%伸張までの移動量と応力の積から求められる仕事量が35〜160N・mmであり、(b)200mm/minの引張速度で10%まで伸張させ、その状態で伸長を停止した時の応力が、最大応力の36.8%まで減衰する緩和時間が30秒以下である基材層を用いることを特徴とする。
【0006】
本発明においては、前記フィルムが、(メタ)アクリルポリマーおよびウレタンポリマーを含む複合フィルムであることが好ましい。
【0007】
また、前記(メタ)アクリルポリマーが、少なくとも(メタ)アクリル酸系モノマーおよびホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が273K以上である単官能(メタ)アクリル系モノマーを含む(メタ)アクリル成分、および多官能モノマーからなり、前記多官能モノマーをその他の(メタ)アクリル成分100重量部に対して10重量部〜20重量部含有し、
前記ウレタンポリマーが、ジオール成分とジイソシアネート成分からなり、ジイソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネートを含むことが好ましい。
【0008】
本発明においては、前記(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が前記複合フィルム中、0.5重量%以上、15重量%以下であることが好ましい。またホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が273K以上である単官能(メタ)アクリル系モノマーが、イソボルニルアクリレートであることが好ましい。
【0009】
本発明においては、前記(メタ)アクリルポリマーと前記ウレタンポリマーの重量比が、30/70〜70/30であることが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記基材層が、フッ素、ウレタン、または(メタ)アクリルのいずれかを含有する表面コート層を、少なくとも一方の面に有することが好ましい。
【0011】
また、前記粘着シートの少なくとも一方の面に、アプリケーションシートを有することが好ましい。
【0012】
本発明において上記粘着シートは、被着体の表面を保護するための保護シートとして使用されることが好ましく、特に輸送機用塗膜面を保護するための保護シートとして使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貼付作業性および屈曲部追従性に優れた粘着シートを実現することができる。この粘着シートは、特に、複雑な形状の塗膜面への貼付性に優れており、シワや気泡などを含まないよう容易に貼り付けることができる。さらに折り曲げ部に対する追従性に優れており、屈曲部分に貼付した際にフィルム端部の浮きがなく、例えば被着体の表面を保護する保護シートとして使用することができる。特に屋外において使用される物品の表面を保護する目的に使用することができ、特に輸送機用塗膜面を保護するための保護シートとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例の基材層の引張試験において得られる伸びと強度の関係を示すS−S曲線であり、仕事量の概念を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の粘着シートは、少なくともウレタンポリマーを含有するフィルムを備えた基材層と、粘着剤層とを有する粘着シートであって、当該基材層は、(a)200mm/minの引張速度で伸長させた場合に、10%伸張までの移動量と応力の積から求められる仕事量が35〜160N・mmであり、(b)200mm/minの引張速度で10%まで伸張させ、その状態で伸長を停止した時の応力が、最大応力の36.8%まで減衰する緩和時間が30秒以下である基材層を用いることを特徴とする。(a)仕事量、および(b)緩和時間については後述する。
【0016】
本発明の粘着シートを構成する基材層は、少なくともウレタンポリマーを含有するフィルムを有しており、このフィルムは複合フィルムであることが好ましい。
この複合フィルムは、少なくともウレタンポリマーを含有するフィルムであって、ウレタンポリマー単独フィルムまたは他のポリマーを更に含有するフィルムである。本発明において複合フィルムは、(メタ)アクリルポリマーとウレタンポリマーを含有することが好ましい。この場合、複合フィルム中の(メタ)アクリルポリマーとウレタンポリマーとの重量比率は、(メタ)アクリルポリマー/ウレタンポリマー=30/70〜70/30であり、さらに40/60〜60/40の範囲内であることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの含有比率が30/70未満では、(メタ)アクリルポリマーとウレタンポリマーの混合物の粘度が高くなりフィルム化が困難となる、あるいは得られたフィルムは柔軟性があり過ぎる為に大きな引張伸びを有することで作業性を悪化する場合があり、70/30を超えると、フィルムとしての柔軟性が得られない為に、貼付作業に必要な十分な引張伸びを有することが出来ず、作業性を悪化する場合がある。
【0017】
本発明において、(メタ)アクリルポリマーは、少なくとも(メタ)アクリル酸系モノマーおよびホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が273K以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを含む(メタ)アクリル成分を、および多官能モノマー用いてなることが好ましい。さらに、本発明においては、(メタ)アクリルポリマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が273K未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーをさらに含むアクリル成分を用いてなることが好ましい。
【0018】
本発明において(メタ)アクリル酸系モノマーとは、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では特にアクリル酸が好ましい。本発明においては、(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量は、複合フィルム中、1重量%以上、15重量%以下であり、2重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が1重量%未満では、反応に長時間を要し、フィルム化することが非常に困難であり、また、フィルムの強度が十分でない問題が生じる場合がある。(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が15重量%を超える場合には、フィルムの吸水率が大きくなり、耐水性に問題が生じる場合がある。複合フィルムが(メタ)アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含む場合、本発明において(メタ)アクリル酸系モノマーはウレタン成分、アクリル成分との相溶性に大きく影響するものであり、極めて重要な機能を有する必須構成要素である。
なお、本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする。また、本発明において(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル酸系モノマーのように、「(メタ)アクリル」と表示する場合には、メタクリル、アクリルを総称する概念とする。また、「アクリル」と表示した場合でも、一般常識上問題がなければ、メタクリルも含む概念とする。
【0019】
本発明において、Tgが273K以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは、2種以上を併用することができる。
【0020】
本発明においては、Tgが273K以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、および、ジシクロペンタニルアクリレートからなる群のうち少なくとも1つを用いることが好ましく、アクリロイルモルホリン及び/又はイソボルニルアクリレート、あるいは、アクリロイルモルホリン及び/又はジシクロペンタニルアクリレートを用いることが更に好ましく、特にイソボルニルアクリレートを用いることが好ましい。
【0021】
Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、アクリル成分中、20重量%以上、99重量%以下であることが好ましく、30重量%以上、98重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が20重量%未満では、フィルムの強度が十分でないという問題が生じることがあり、99重量%を超えると、フィルムの剛性が上がりすぎて脆くなる場合がある。
【0022】
本発明において、Tgが273K未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルオロフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは、2種以上を併用することができる。
本発明においては、Tgが273K℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、n−ブチルアクリレートを用いることが特に好ましい。
【0023】
Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーは含有されていなくても良い(含有量が0重量%)が、含有されている場合の含有量は、アクリル成分中、0重量%より多く、50重量%以下であることが好ましく、0重量%より多く、45重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が50重量%を超える場合には、フィルムの強度が十分でない問題が生じることがある。
【0024】
本発明において、多官能モノマーとしては1分子中にラジカル重合可能な不飽和基を2つ以上有するモノマーであって、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができ、特に好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。
【0025】
多官能モノマーは、(メタ)アクリル成分100重量部に対して、10重量部以上、20重量部以下、好ましくは12重量部以上、18重量部以下含まれることができる。多官能モノマーの含有量が10重量部以上であれば、貼り付け作業に必要な複合フィルムの強度は十分であり、20重量部以下であれば、弾性率が高くなりすぎることがなく、被着体表面の凹凸に追従することができる。
【0026】
(メタ)アクリル系モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
【0027】
本発明においては、上記(メタ)アクリル成分とともに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、及びその誘導体、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロドデカトリエンアクリレート、メトキシエチルアクリレート等のモノマーを共重合してもよい。なお、これら共重合されるモノマーの種類や使用量は、複合フィルムの特性等を考慮して適宜決定される。
【0028】
ウレタンポリマーは、ジオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ジオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、一般的には触媒が用いられるが、本発明によれば、ジブチルチンジラウレート、オクトエ酸錫のような環境負荷が生じる触媒を用いなくても反応を促進させることができる。
【0029】
低分子量のジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコールが挙げられる。
【0030】
また、高分子量のジオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいは上述の2価のアルコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールや、アクリルポリオール、カーボネートポリオール、エポキシポリオール、カプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらの中では、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD)等が好ましく使用される。
【0031】
アクリルポリオールとしては水酸基を有するモノマーの共重合体の他、水酸基含有物とアクリル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。エポキシポリオールとしてはアミン変性エポキシ樹脂等がある。
【0032】
本発明においては、上記ジオールを、アクリル系モノマーへの溶解性、イソシアネートとの反応性等を考慮して、単独あるいは併用して使用することができる。強度を必要とする場合には、低分子量ジオールによるウレタンハードセグメント量を増加させると効果的である。伸びを重視する場合には、分子量の大きなジオールを単独で使用することが好ましい。また、ポリエーテルポリオールは、一般的に、安価で耐水性が良好であり、ポリエステルポリオールは、強度が高い。本発明においては、用途や目的に応じて、ポリオールの種類や量を自由に選択することができ、また、塗布する基材等の特性、イソシアネートとの反応性、アクリルとの相溶性などの観点からもポリオールの種類、分子量や使用量を適宜選択することができる。
【0033】
本発明においては、ジイソシアネートとしてはイソホロンジイソシアネートを用いる。イソホロンジイソシアネートを用いることで、破断強度に優れたウレタンポリマーを得ることができ、さらに透明性、耐熱性にも優れるウレタンポリマーを得ることができる点で有利である。
イソホロンジイソシアネートを用いることにより前記特異的な効果が得られる理由は確かではないが、イソホロンジイソシアネートの2つのイソシアネート基の間に存在する炭素数が寄与すると考えられる。すなわち、イソホロンジイソシアネートの場合はイソシアネート基の間に存在する炭素数が4つであり、硬化してネットワークが形成されると2つのイソシアネート基間の炭素数が少ないほど、架橋密度があがるために高強度の特性が得ることが出来ると考えられる。また、イソホロンジイソシアネートはシクロヘキサン環にメチル基が3個結合した構造であって、高度に立体障害を与えると考えられ、伸長された場合であってもネットワークが解け難くなるために引張伸びに関しても高伸度を得ることが出来ると考えられる。
【0034】
本発明においては、本発明の粘着シートの性能を満足すればイソホロンジイソシアネート以外のジイソシアネートを用いることもできる。その他のジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体等が挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンジイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。
【0035】
これらのジイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。複合フィルムが適用される(塗布等される)基材等の特性、アクリル系モノマーへの溶解性、水酸基との反応性などの観点から、ジイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択すればよい。
【0036】
本発明において、ウレタンポリマーを形成するためのジオール成分とジイソシアネート成分の使用量は、ジオール成分の使用量は、ジイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が1.1以上、2.0以下であることが好ましく、1.15以上、1.35以下であることがさらに好ましい。NCO/OH(当量比)が1.1未満では、ウレタンポリマーを含む混合物の粘度が高くなりフィルム化が困難となる、あるいは得られたフィルムは柔軟性があり過ぎる為に大きな引張伸びを有することで作業性が悪化しやすい。また、NCO/OH(当量比)が2.0以下であれば、伸びと柔軟性を十分確保することができる。
【0037】
上記ウレタンポリマーに対し、水酸基含有アクリルモノマーを添加してもよい。水酸基含有アクリルモノマーを添加することにより、ウレタンプレポリマーの分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入することができ、アクリル系モノマーとの共重合性が付与され、ウレタン成分とアクリル成分との相溶性が高まり、破断強度などのS−S特性の向上を図ることもできる。水酸基含有アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。水酸基含有アクリルモノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜10重量部である。
【0038】
本発明において、(メタ)アクリルポリマーおよびウレタンポリマーを含む複合フィルムである場合には、ウレタンポリマーと(メタ)アクリルポリマーとがグラフト構造や架橋構造により相互に結合したヘテロジニアスネットワーク構造を有することが好ましい。ウレタンポリマーと(メタ)アクリルポリマーとが、それぞれ独自に架橋構造をとるIPN構造(相互侵入高分子網目層)や、ウレタンポリマー及び(メタ)アクリル系ポリマーの一方が架橋構造を有し、他の一方がリニア構造の高分子鎖を有していて該架橋構造の中に侵入しているようなsemi−IPN構造の場合は、粘着シートの伸張時の応力緩和性が発現しにくい場合がある。したがって、このような構造の場合には、使用する際の貼り付け作業性を向上させることが必要になる場合があり、例えば、アプリケーションシートの形成等が必要となる場合がある。
【0039】
複合フィルム等には、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、光安定剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。これらの添加剤は、ジイソシアネートとジオールとの重合反応前に、あらかじめ加えておいてもよいし、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとをそれぞれ重合させる前に添加してもよい。
【0040】
本発明においては、塗工の粘度調整のため少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0041】
本発明における複合フィルムが(メタ)アクリルポリマーとウレタンポリマーを含む複合フィルムである場合には、例えば、(メタ)アクリルモノマーを希釈剤として、この(メタ)アクリルモノマー中でジオールとジイソシアネートとの反応を行ってウレタンポリマーを形成し、(メタ)アクリルモノマーとウレタンポリマーとを主成分として含む混合物を基材(必要に応じて剥離処理されている)等の上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じて、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射して硬化させ、その後、基材等を剥離除去することにより、複合フィルムを形成することができる。あるいは、基材等を剥離除去せずに、基材等の上に複合フィルムが積層された形態で得ることもできる。
【0042】
具体的には、ジオールを(メタ)アクリルモノマーに溶解させた後、ジイソシアネート等を添加してジオールと反応させて粘度調整を行い、これを支持体等に、あるいは、必要に応じて支持体等の剥離処理面に塗工した後、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いて硬化させることにより、複合フィルムを得ることができる。この方法では、(メタ)アクリル系モノマーをウレタン合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。また、ジイソシアネートを(メタ)アクリル系モノマーに溶解させた後、ジオールを反応させてもよい。この方法によれば、分子量が限定されるということはなく、高分子量のポリウレタンを生成することもできるので、最終的に得られるウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができる。
【0043】
この際、酸素による重合阻害を避けるために、支持体等上に塗布した混合物の上に、剥離処理したシート(セパレータ等)をのせて酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に基材を入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0044】
本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。
【0045】
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、100〜5,000mJ/cm2、好ましくは1,000〜4,000mJ/cm2、更に好ましくは2,000〜3,000mJ/cm2である。紫外線の照射量が100mJ/cm2より少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5,000mJ/cm2より多いと、劣化の原因となることがある。
【0046】
また、紫外線等を照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると重合熱による停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすいので、通常は70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
【0047】
本発明において、少なくともウレタンポリマーを含む混合物(例えば、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーとを主成分とする混合物)には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル、アニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等の置換アセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等の置換アルファーケトール、2−ナフタレンスルフォニルクロライド等の芳香族スルフォニルクロライド、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等の光活性オキシムが好ましく用いられる。
【0048】
本発明に係る基材層の厚みは、目的等に応じて、例えば被覆保護する対象物の種類や箇所等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることが更に好ましく、200μm以上であることが特に好ましい。また、基材層の厚みは、1,000μm以下であることが好ましく、750μm以下であることが更に好ましく、特に、500μm以下であることが好ましい。基材層を構成する複合フィルムの厚みは、例えば、車両(例えば自動車)の塗膜面を保護する保護シート用途の場合には、50〜500μm程度であることが好ましく、更に好ましくは100〜300μm程度であることが好ましい。
【0049】
本発明の粘着シートは、複合フィルム等を有する基材層と粘着剤層とを有する。すなわち、上記基材層の片面または両面に粘着剤層を有する。粘着剤層を形成する粘着剤は、特に限定されず、(メタ)アクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコン系等、一般的なものを使用することができるが、低温での接着性や高温での保持性、コスト面等を考慮するとアクリル系の粘着剤が好ましい。粘着剤中には、公知の架橋剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを適宜添加することができる。粘着剤の形成方法も特に限定されるものではなく、基材に、溶剤系、エマルジョン系の粘着剤を直接塗布し、乾燥する方法、これらの粘着剤を剥離紙に塗布し、予め粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層を複合フィルムに貼り合わせる方法等を適用することができる。放射線硬化型粘着剤を基材に塗布し、粘着剤層と、フィルムの両方に放射線を照射することにより、基材と粘着剤層を同時に硬化させて、形成する方法も適用することができる。なお、この場合には、粘着剤層と基材層は、多層構成となるように塗布することもできる。
【0050】
粘着剤層の厚みについては、特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、通常は20μm以上であることが好ましく、更に好ましくは30μm以上、特に好ましくは40μm以上である。但し、上限値は通常100μm程度であることが好ましく、更に好ましくは80μm以下、特に好ましくは70μm以下である。
【0051】
本発明の粘着シートを構成する基材層は、ウレタンポリマーを含有するフィルム(特に複合フィルム)の一方の面に表面コート層を設けることができる。但し、表面コート層を設けた基材層は、(a)200mm/minの引張速度で伸長させた場合に、10%伸張までの移動量と応力の積から求められる仕事量が35〜160N・mmであり、(b)200mm/minの引張速度で10%まで伸張させ、その状態で伸長を停止した時の応力が、最大応力の36.8%まで減衰する緩和時間が30秒以下であることを満たすことが必要である。表面コート層は、耐候性、柔軟性等の観点から、フッ素、ウレタン、(メタ)アクリルを含有するものであることが好ましい。例えば、表面コート層として、フルオロエチレンビニルエーテル層を設けることが好ましい。表面コート層を設けることにより、光沢性、耐摩耗性、防汚性、撥水性、耐薬品性等の特性を付与することが可能となり、また、複合フィルム等自体の劣化を抑制する効果もある。なお、基材層が表面コート層を有する場合には、複合フィルム等の一方の面に表面コート層を有し、他方の面に粘着剤層を有する構成とすることが好ましい。
【0052】
コート層の厚みは、2〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜40μmであり、更に好ましくは8〜30μmである。コート層の厚みが2μm未満では、ピンホールなど、コート層が形成されない欠陥部位が発生しやすく、またコート層の特性が充分に発揮できない場合がある。また50μmを超えると、コート層の物性が複合フィルムの物性を低下させてしまう場合がある。
【0053】
本発明において基材層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、複合フィルム等の片面または両面に他のフィルムを積層することができる。他のフィルムを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等のような熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂等が挙げられる。なお、上記コート層を設ける場合には、コート層を基材層の最外層の位置に配置することが好ましい。
【0054】
本発明においては、基材層は、(a)200mm/minの引張速度で伸長させた場合に、10%伸張までの移動量と応力の積から求められる仕事量が35〜160N・mmであり、好ましくは38〜150N・mmであり、特に好ましくは40〜140N・mmである。なお、引張試験は、例えば、23℃の条件下で行うことが好ましい。基材層の仕事量が35N・mm未満であると貼付作業時に必要なフィルムの強靭性を十分に有することが出来ず、フィルムが伸びきってしまうなどの不具合があり、一方160N・mmを超えると、貼付作業時に必要なフィルムの柔軟性を有することが出来ず、屈曲部分への追従性が出来ないなどの不具合を生じる。
【0055】
仕事量とは、物理学における仕事のことであり、力×距離(=F・S)で定義される。物体になされた仕事は、[その物体に働いている力]と[その物体の移動距離]の積で表すことが出来、材料の粘り強さ(タフネス)であって外力によって破壊され難い性質を現す指標とすることが出来る。本発明の粘着シートにおいては、貼付作業時にさまざまな形状の屈曲表面へ追従させながら、気泡やシワが入らないように引張りながら貼付する際に、粘着シートに加わるエネルギー量(タフネス)を数値定量化が可能となり強靭性の指標とすることが出来る。この数値が低い場合は、粘着シートに加えられたエネルギー量に耐えることが出来ず、粘着シートが切れるなどの不具合を生じることがある。またこの数値が高すぎる場合は、柔軟性を損ない屈曲部分への追従性が得られず、シワなどが入って綺麗に貼付することが出来ないなどの不具合を生じる。
【0056】
仕事量の評価方法としては、後述する実施例において詳細に示すが、引張速度200mm/minで伸長させた場合の移動量(伸び)と応力の関係図(いわゆる応力−歪み曲線、図1参照)を作成し、10%伸長までの曲線の積分値を仕事量とすることができる。なお応力−歪み曲線の積分処理は、市販されている解析ソフトにより算出することができる。
【0057】
本発明においては、基材層は、(b)200mm/minの引張速度で10%まで伸張させ、その状態で伸長を停止した時の応力が、最大応力の36.8%まで減衰する緩和時間が30秒以下、好ましくは28秒以下、特に好ましくは25秒以下(通常、5秒以上)である。なお、引張試験は、例えば、23℃の条件下で行うことが好ましい。基材層の緩和時間が60秒を超えると端末折り返しをした際に粘着シートが浮き上がるという不具合がある。
【0058】
緩和時間とは、最大応力が1/e(36.8%)にまで低下する時間(eは自然対数であり、e=2.718)を示す指標であって、本発明の粘着シートにおいては 緩和時間が速く、さらには残留応力が低い程、貼付け時に発生する応力が残留し難く、貼付け後の浮きなどの不具合が発生し難いという意味を持つ。
【0059】
緩和時間の評価方法としては、後述する実施例において詳細に示すが、引張速度200mm/minで10%まで伸長させ、その状態で応力を測定していき、伸長時の最大応力の36.8%まで応力が減衰する時間を測定する。
【0060】
本発明の粘着シートは、上記(a)仕事量、および(b)緩和時間を満足することで本発明の効果を奏することが出来るが、特に保護シートとして用いる場合には、基材層の破断強度が20N/cm以上であることが好ましく、更に好ましくは25N/cm以上であり、特に好ましくは30N/cm以上である。ただし、通常、破断強度は300N/cm以下であることが好ましく、更に好ましくは250N/cm以下である。上記粘着シートでは、破断強度が20N/cm未満であると粘着シートの切れ等の不具合が生じることがある。
【0061】
また本発明の粘着シートを特に保護シートとして用いる場合には、基材層の破断伸度が50%以上であることが好ましく、更に好ましくは75%以上であり、特に好ましくは100%以上である。ただし、通常、破断伸度は200%以下であることが好ましく、更に好ましくは180%以下である。上記粘着シートでは、破断伸度が50%未満であると貼付時の作業性が低下し、シワや気泡の混入の原因となる場合がある。
【0062】
本発明の粘着シートは所定の接着強度を有することが好ましい。例えば、アクリル板との接着強度は2.0N/cm以上であることが好ましく、より好ましくは3.0N/cm以上であり、更により好ましくは4.0N/cm以上であり、特に好ましくは5.0N/cm以上である。ただし、通常は100N/cm以下であることが好ましく、より好ましくは70N/cm以下である。上記粘着シートのアクリル板との接着強度が2.0N/cm以上あれば、低温環境下でも塩化ビニル塗装部分等の凹凸面や曲面部へも十分な接着性を発揮して貼着することができる。接着強度が強すぎると、位置ずれ、ゴミや気泡の混入時に貼り替えが困難になる。
【0063】
本発明の粘着シートは、上記基材層および上記粘着剤層の他に、アプリケーションシートを更に有することができる。アプリケーションシートは、粘着シートの貼り付け作業を向上させるために、例えば貼付位置決め等のために有効に利用される。アプリケーションシートは粘着剤層が形成されている面とは反対側の面に積層される。なお、基材層が表面コート層を含む形態の場合には、表面コート層の上にアプリケーションシートが積層される。
【0064】
本発明に用いられるアプリケーションシートとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなるフィルム等に、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤等を塗布してなる粘着シート等が挙げられる。市販のアプリケーションシートを使用してもよいが、アプリケーションシートを含む態様の塗膜保護用粘着シートは、23℃における10%モジュラスが35N/cm以下になるように調整することがこのましい。
【0065】
本発明においては、アプリケーションシートは使用後に容易に剥離可能であることが好ましく、例えば、アプリケーションシートと基材層との間の接着強度が6.0N/25mm以下であることが好ましく、更に好ましくは4.5N/25mm以下であり、特に好ましくは3.0N/25mm以下である。ただし、その接着強度は、0.01N/25mm以上であることが好ましく、更に好ましくは0.02N/25mm以上である。アプリケーションシートと基材層との間の接着強度が6.0N/25mmより大きいと、粘着シートを被着体の所定位置に貼付した後、アプリケーションシートを剥離する際に粘着シートが被着体から浮く恐れがある。接着強度が0.01N/25mm未満では、貼り付け前に浮きが発生する恐れがある。
【0066】
本発明の粘着シートの製造方法について以下に述べる。例えば、まず、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(仮支持体1)の剥離処理面に複合フィルム用の塗布液を塗布し、その上に透明のセパレータ等をのせて、その上から紫外線等を照射して複合フィルムを形成し、その後、セパレータを除去する。別途、剥離処理されたポリエステルフィルム(仮支持体2)の剥離処理面に粘着剤層用の塗布液を塗布して粘着剤層を形成する。その後、この粘着剤層を、複合フィルム面に重ねて、基材層と粘着剤層とからなる塗膜保護用粘着シートを得ることができる。なお、ここでは、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(仮支持体1)/複合フィルム/粘着剤層/剥離処理されたポリエステルフィルム(仮支持体2)の層構成となっているが、この仮支持体1および仮支持体2は、使用時に、すなわち粘着シートが貼付適用される際に剥離除去されるものであるので、本発明の塗膜保護用粘着シートの構成には特に含めてはいない。ただし、これらの仮支持体1、仮支持体2等を、必要に応じて適宜設けることは可能であるし、これらの構成は本発明の技術的範囲に属するものである。
【0067】
本発明に係る基材層が表面コート層を含む場合には、上記製造方法の基材層の形成において、仮支持体1の上に、表面コート層用の塗布液を塗布して表面コート層を形成した後、その上に複合フィルム用の塗布液を塗布し、その上にセパレータ等をのせて、複合フィルムを形成すればよい。
【0068】
更にアプリケーションシートを有する粘着シートは、上記と同様にして、基材層および粘着剤層からなる粘着シートを作製した後、基材層に仮貼付されている仮支持体1を剥離除去して、この面にアプリケーションシートを積層して製造することができる。なお、基材層が複合フィルム等のみからなる場合には複合フィルム等の面上に、また、表面コート層を含む基材の場合には表面コート層の上にアプリケーションシートを重ねる。
【0069】
本発明の粘着シートは、貼付作業性および屈曲部追従性に優れた粘着シートを実現することができる。この粘着シートは、特に、複雑な形状の塗膜面への貼付性に優れており、シワや気泡などを含まないよう容易に貼り付けることができる。さらに折り曲げ部に対する追従性に優れており、屈曲部分に貼付した際にフィルム端部の浮きがなく、特に自動車、バイク、船舶、航空機等の輸送機の塗膜面を保護するための保護シートとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりがない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。また、以下の実施例において使用された測定方法および評価方法を下記に示す。
【0071】
(測定方法および評価方法)
(1)仕事量
仮支持体付きのままの状態で、基材層を、幅1cm×長さ13cmに切断した後、仮支持体1と剥離処理したPETフィルムとを除去し、引張試験機として「オートグラフASG−50D型」(島津製作所製)を用い、引張速度200mm/min、チャック間距離100mm、23℃で引張試験を行い、応力−歪み曲線(図1参照)を求めた。この図より、10%伸長までの曲線の積分値を、株式会社ヒューリンクス社製「Kaleida Graph Ver.4インテグレードエリア」により解析することで仕事量を算出した。
【0072】
(2)緩和時間
仮支持体付きのままの状態で、基材層を、幅1cm×長さ13cmに切断した後、仮支持体1(またはアプリケーションシート)と剥離処理したPETフィルムとを除去し、引張試験機として「オートグラフASG−50D型」(島津製作所製)を用い、引張速度200mm/min、チャック間距離100mm、23℃で引張試験を行い、基材層が10%伸張(10mm伸張)した状態で保持し、その時の応力の推移を測定した。伸長時の最大応力の36.8%に相当する応力まで減衰する時間を緩和時間とした。
【0073】
(3)破断強度・破断伸度
仮支持体付きのままの状態で、基材層を、幅1cm×長さ13cmに切断した後、仮支持体1(またはアプリケーションシート)と剥離処理したPETフィルムとを除去し、引張試験機として「オートグラフASG−50D型」(島津製作所製)を用い、引張速度200mm/min、チャック間距離100mm、23℃で引張試験を行い、応力−歪み曲線を求め、破断時の強度および伸度を求めた。
【0074】
(4)貼付性
仮支持体付きのままの状態で、粘着シートを、幅1cm×長さ13cmに切断した後、仮支持体1および仮支持体2を除去した。イソプロピルアルコールで洗浄したメタクリル板(三菱レイヨン(株)製のアクリライト)に、粘着シートの粘着剤層面を重ねて、ハンドローラーで圧着した。きれいに直線で貼着できた場合には記号「○」で示し、曲がって貼り付いてしまった場合には記号「×」で示した。
【0075】
(5)屈曲部追従性
仮支持体付きのままの状態で、粘着シートを、幅1cm×長さ5cmに切断した後、仮支持体1(またはアプリケーションシート)と仮支持体2とを除去し、イソプロピルアルコールで洗浄したアクリル焼付け塗装板(片面白色)(鋼板厚み1.0mm)(日本テストパネル(株)製)に接着長さが1mmになるように一端を貼り付け、粘着シートの他端を持って鋼板面に対して180°方向に折り返した。この状態で1hr保持し、粘着シートの塗装面からの浮きが発生したか否かを目視観察した。粘着シートの浮きが確認できなかったものを記号「○」で示し、粘着シートに浮きが発生したものを記号「×」で示した。
【0076】
(実施例1)
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を35.5部、n−ブチルアクリレート(BA)を9.5部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を35.05部とを投入し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の14.95部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを1.95部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0077】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを6部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、46/54であった。
【0078】
《表面コート層用塗布液の作製》
フルオロエチレンビニルエーテルのキシレンおよびトルエンによる溶解液(旭硝子(株)製の「LF600」、固形分50重量%含有)の100部に、硬化剤として、10.15部のイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製の「コロネートHX」)と、触媒として、3.5部のジブチル錫ラウリン酸のキシレン希釈液(固形分濃度が0.01%)と、希釈溶媒として、101部のトルエンとを添加して、表面コート層用塗布液(固形分率28%)を作製した。
【0079】
《基材層の作製》
得られた表面コート層用塗布液を、仮支持体1として剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)の上に塗布し、温度140℃で3分間乾燥および硬化させてフルオロエチレンビニルエーテル層を形成した。なお、乾燥後の表面コート層の厚みは10μmであった。
【0080】
得られた表面コート層の上に、作製した複合フィルム用塗布液を、硬化後の厚みが192μmと成るように塗布し、この上にセパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを重ねた。このPETフィルム面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm2、光量4,600mJ/cm2)を照射して硬化させて、仮支持体1の上に複合フィルム(表面コート層を備えている)を形成した。その後、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)を剥がした後、120℃で3分間乾燥させて、未反応の残存アクリル系モノマーを乾燥させ、基材層を得た。
【0081】
《粘着剤層の作製》
モノマー成分として、2−エチルへキシルアクリレート91部、アクリル酸4部およびイソボルニルアクリレート5部を混合した混合物に、光重合開始剤として、商品名「イルガキュア 651」(チバ・ジャパン社製)を0.05部と、商品名「イルガキュア 184」(チバ・ジャパン社製)を0.05部とを配合した後、粘度が約20Pa・s(B型粘度計No.6ローター、60rpm、測定温度23℃)になるまで紫外線を照射して、一部が重合したアクリル組成物(UVシロップ)を作製した。
【0082】
得られたUVシロップの100部に対して、ヘキサンジオールジアクリレートを0.5部、ヒンダードフェノール型酸化防止剤(チバ・ジャパン社製の商品名「イルガノックス1010」)を1部添加して粘着剤組成物を作製した。
【0083】
この粘着剤組成物を、仮支持体2として厚み75μmのポリエステルフィルムの剥離処理面に、最終製品としての厚みが50μmになるように塗布した。
この上に、剥離処理したPETフィルムを重ねて被覆し、次いで、PETフィルム面にメタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm2、光量4,600mJ/cm2)を照射して硬化させて、仮支持体2の上に粘着剤層を形成した。その後、剥離処理したPETフィルムを剥がした後、120℃で3分間乾燥させて、未反応の残存アクリル系モノマーを乾燥させ、粘着剤層を作製した。
【0084】
《粘着シートの作製》
得られた基材層の表面コート層と反対の面に、粘着剤層が重なるように貼り合わせて粘着シート(仮支持体1/表面コート層/複合フィルム/粘着剤層/仮支持体2の層構成)を作製した。
【0085】
《測定および評価》
得られた基材層および粘着シートについて、上記に示す測定方法および評価方法に従い、仕事量、緩和時間、貼付性、屈曲部追従性の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0086】
(実施例2)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを204μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0087】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を30部、n−ブチルアクリレート(BA)を15部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を35.04部とを投入し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の14.96部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを3.11部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0088】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、45/55であった。
【0089】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0090】
(実施例3)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを216μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0091】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を30部、t−ブチルアクリレート(t−BA)を15部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を35.46部とを投入し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の14.54部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを2.52部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.20であった。
【0092】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを9部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、45/55であった。
【0093】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0094】
(実施例4)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを189μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0095】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を25部、n−ブチルアクリレート(n−BA)を20部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を34.63部とを投入し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の15.37部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、イソホロンジアミン(IPDA)を1.09部、および4−ヒドロキシブチルアクリレートを2.77部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.30であった。
【0096】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを6部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、46/54であった。
【0097】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0098】
(実施例5)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを164μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0099】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を30部、n−ブチルアクリレート(n−BA)を15部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を16.67部、およびポリカーボネートジオール(「デュラノールG3450J」、数平均分子量800、旭化成ケミカルズ社製)を20.52部とを投入し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の6.83部および水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)5.98部の混合物を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを2.37部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.20であった。
【0100】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを6部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、46/54であった。
【0101】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0102】
(実施例6)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを162μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0103】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を35部、n−ブチルアクリレート(n−BA)を10部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を16.21部、およびポリカーボネートジオール(「デュラノールG3450J」、数平均分子量800、旭化成ケミカルズ社製)を19.95部とを投入し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の13.84部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、イソホロンジアミン(IPDA)を0.85部、および4−ヒドロキシブチルアクリレートを2.16部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0104】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを9部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、45/55であった。
【0105】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0106】
(実施例7)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを318μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0107】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を35部、t−ブチルアクリレート(t−BA)を10部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を35.71部とを投入し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の7.62部および水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)6.67部の混合物を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、イソホロンジアミン(IPDA)を0.94部、および4−ヒドロキシブチルアクリレートを2.38部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0108】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを6部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、46/54であった。
【0109】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0110】
(比較例1)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを150μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0111】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を35.5部、n−ブチルアクリレート(n−BA)を9.5部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.40部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)13.60部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを2部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0112】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを3部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、48/52であった。
【0113】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0114】
(比較例2)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを157μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0115】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を35部、n−ブチルアクリレート(n−BA)を10部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.81部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)13.19部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを2.62部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.20であった。
【0116】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを3部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、47/53であった。
【0117】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0118】
(比較例3)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを157μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0119】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を35部、t−ブチルアクリレート(t−BA)を10部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を19.53部、およびポリカーボネートジオール(「デュラノールG3450J」、数平均分子量800、旭化成ケミカルズ社製)を16.02部とを投入し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の14.45部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを3.47部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.30であった。
【0120】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを3部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、47/53であった。
【0121】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0122】
(比較例4)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを167μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0123】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を25部、n−ブチルアクリレート(n−BA)を20部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を19.53部、およびポリカーボネートジオール(「デュラノールG3450J」、数平均分子量800、旭化成ケミカルズ社製)を16.02部とを投入し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の7.15部および水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)6.25部の混合物を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを2.98部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0124】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを3部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、47/53であった。
【0125】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0126】
(比較例5)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを167μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0127】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を35部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を10部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を16.63部、およびポリカーボネートジオール(「デュラノールG3450J」、数平均分子量800、旭化成ケミカルズ社製)を20.46部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)12.91部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを3.54部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.30であった。
【0128】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを6部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、46/54であった。
【0129】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0130】
(比較例6)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを161μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0131】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を25部、t−ブチルアクリレート(t−BA)を20部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を20.68部、およびポリカーボネートジオール(「デュラノールG3450J」、数平均分子量800、旭化成ケミカルズ社製)を16.97部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)12.35部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、イソホロンジアミン(IPDA)を0.72部、および4−ヒドロキシブチルアクリレートを1.84部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.20であった。
【0132】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを6部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、46/54であった。
【0133】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0134】
(比較例7)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更し、かつ、複合フィルムの厚みを161μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0135】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル成分として、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を30部、t−ブチルアクリレート(t−BA)を15部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を16.79部、およびポリカーボネートジオール(「デュラノールG3450J」、数平均分子量800、旭化成ケミカルズ社製)を20.67部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)12.54部を滴下し、65℃で10時間反応させた。その後、イソホロンジアミン(IPDA)を0.88部、および4−ヒドロキシブチルアクリレートを2.24部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0136】
その後、多官能(メタ)アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレートを3部添加し、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製の「IRGACURE819」)を0.15部添加して、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。ウレタンポリマー/アクリル系モノマーの重量比率は、48/52であった。
【0137】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
表1から明らかのように、本発明の実施例1〜7の粘着シートは、当該基材層が、(a)200mm/minの引張速度で伸長させた場合に、10%伸張までの移動量と応力の積から求められる仕事量が35〜160N・mmであり、(b)200mm/minの引張速度で10%まで伸張させ、その状態で伸長を停止した時の応力が、最大応力の36.8%まで減衰する緩和時間が30秒以下であることを満足し、貼付性および屈曲部追従性においても優れた性能を有することが確認された。
【0140】
一方、仕事量が範囲外である比較例1〜7は、貼付性および屈曲部追従性に劣ることが分かった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともウレタンポリマーを含有するフィルムを備えた基材層と、粘着剤層とを有する粘着シートであって、当該基材層は、(a)200mm/minの引張速度で伸長させた場合に、10%伸張までの移動量と応力の積から求められる仕事量が35〜160N・mmであり、かつ(b)200mm/minの引張速度で10%まで伸張させ、その状態で伸長を停止した時の応力が、最大応力の36.8%まで減衰する緩和時間が30秒以下である基材層であることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記フィルムが、(メタ)アクリルポリマーおよびウレタンポリマーを含む複合フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
請求項2に記載の粘着シートであって、
前記(メタ)アクリルポリマーが、少なくとも(メタ)アクリル酸系モノマーおよびホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が273K以上である単官能(メタ)アクリル系モノマーを含む(メタ)アクリル成分と、多官能モノマーからなり、前記多官能モノマーを(メタ)アクリル成分100重量部に対して10重量部〜20重量部含有し、
前記ウレタンポリマーが、ジオール成分とジイソシアネート成分からなり、ジイソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネートを含むことを特徴とする粘着シート。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が前記複合フィルム中、0.5重量%以上、15重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の粘着シート。
【請求項5】
ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が273K以上である単官能(メタ)アクリル系モノマーが、イソボルニルアクリレートであることを特徴とする請求項3または4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記(メタ)アクリルポリマーと前記ウレタンポリマーの重量比が、30/70〜70/30であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記基材層が、フッ素、ウレタン、または(メタ)アクリルのいずれかを含有する表面コート層を、少なくとも一方の面に有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記粘着シートの少なくとも一方の面に、アプリケーションシートを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着シートが、被着体の表面を保護するための保護シートとして使用されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項10】
輸送機用塗膜面を保護するための保護シートとして使用されることを特徴とする請求項9に記載の粘着シート。



【図1】
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【公開番号】特開2012−62454(P2012−62454A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210285(P2010−210285)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】