説明

粘着テープ

【課題】 湿熱環境下においても各種被着体に対して良好な保持力を有し、大面積で長期間貼着した場合にも、好適に剥離可能な粘着テープを提供する。
【解決手段】 2−エチルヘキシルアクリレート、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有モノマー及び窒素含有ビニルモノマーをモノマー成分として含有し、カルボキシル基含有モノマーとしてアクリル酸及びメタクリル酸を併用したアクリル系共重合体を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を使用し、当該カルボキシル基と架橋する架橋剤として、オキサゾリン系架橋剤をアクリル系共重合体中のカルボキシル基に対して0.5〜5のモル比にて使用した粘着剤層を使用することにより、貼り付け時には好適な接着性を有し、かつ樹脂フィルム基材とのアンカリングが良好で大面積であっても好適に再剥離可能な粘着テープを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム基材に、アクリル系共重合体エマルジョン粒子が水系媒体中に分散した水分散型アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層が設けられた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムを基材とする粘着テープは、印刷層等を設けることにより容易に情報表示面を形成できるため、各種製品等の販促用ラベルやキャンペーン用の情報表示ラベル等に使用されている。販促やキャンペーン等に使用されるラベルは、販売店の店頭のガラス面や電車の側面、あるいは自動販売機等に貼り付けられるため、湿熱条件の変化する自然環境下でも安定して情報表示面を表示できるような好適な接着力が求められる。一方で、これらラベルは、販促期間やキャンペーン期間が終了すると剥離する必要があるため、剥離時には糊残りや、支持基材が破壊することなく剥離できる特性(いわゆる再剥離性)が要求される。また、このような再剥離性は、当該ラベル用途に限らず、ガラスや透明樹脂で構成される画像表示装置のディスプレイ画面や、プラスチック、金属等の各種成型品の表面を一時的に保護するための保護ラベル等においても重要な特性となる。さらに、地球環境保護の観点から、近年は、揮発性有機化合物(いわゆるVOC)の排出抑制が強く求められており、粘着テープにおいては、無溶剤タイプの粘着剤が注目され、溶剤剤型粘着剤から水分散型粘着剤への置換が要望されている。
【0003】
水分散型アクリル系粘着剤を使用した再剥離性の粘着テープとしては、例えば、アクリル酸とメタクリル酸とを併用し、架橋剤としてオキサゾリン系架橋剤を使用した粘着テープが開示されている(特許文献1参照)。また、低温接着性及び耐熱接着性に優れた再剥離性の粘着テープとして、アクリル酸とメタクリル酸を併用し、オキサゾリン系化合物を架橋剤として使用した粘着テープが開示されている(特許文献2参照)。これら粘着テープは、いずれも一定の再剥離性を有するものであるが、当該粘着テープに使用されている粘着剤を大面積の樹脂フィルム基材、特にPET基材に適用した場合には、被着体からの剥離する際に、粘着剤が基材から脱落する場合があった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−265537
【特許文献2】特開2007−39607
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、湿熱環境下においても各種被着体に対して良好な保持力を有し、大面積で長期間貼着した場合にも、好適に剥離可能な粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粘着テープは、2−エチルヘキシルアクリレート、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有モノマー及び窒素含有ビニルモノマーをモノマー成分として含有し、カルボキシル基含有モノマーとしてアクリル酸及びメタクリル酸を併用したアクリル系共重合体を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を使用し、当該カルボキシル基と架橋する架橋剤として、オキサゾリン系架橋剤をアクリル系共重合体中のカルボキシル基に対して0.5〜5のモル比にて使用した粘着剤層を使用することにより、貼り付け時には好適な接着性を有し、かつ樹脂フィルム基材とのアンカリングが良好で大面積であっても好適に再剥離可能な粘着テープを実現できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粘着テープは、揮発性有機化合物(いわゆるVOC)の排出や、有機溶剤臭が大幅に削減できる水分散型の粘着剤を使用しながらも、被着体に対して好適に接着し、長期間貼着した場合も過度に粘着力が上昇することなく、大面積で貼り付けした際にも剥離する際には加熱等の特別な処理を施さずに、いわゆる糊残りや、支持基材の破壊がなく好適に再剥離が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】アクリル系共重合体エマルジョンの塩基性溶液による電位差滴定で得られる滴定曲線の概念図である。
【図2】アクリル系共重合体エマルジョンの塩基性溶液による電位差滴定で得られる滴定曲線に基づく微分曲線の概念図である。
【図3】アクリル系共重合体エマルジョンの酸性溶液による電位差滴定で得られる滴定曲線の概念図である。
【図4】アクリル系共重合体エマルジョンの酸性溶液による電位差滴定で得られる滴定曲線に基づく微分曲線の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物>
(アクリル系共重合体)
本発明に使用する水分散型アクリル系粘着剤組成物においては、アクリル系共重合体エマルジョン粒子を形成するアクリル系共重合体として、2−エチルヘキシルアクリレート、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸及び窒素含有ビニルモノマーをモノマー成分として含有するアクリル系共重合体を使用する。
【0010】
本発明においては、2−エチルヘキシルアクリレートをモノマー成分として使用することにより、粘着テープに好適な再剥離性を付与できる。2−エチルヘキシルアクリレートの含有量としては、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがさらに好ましい。2−エチルヘキシルアクリレートの含有量を当該範囲とすることで、経時で粘着剤と被着体との密着を抑制し易く、接着力が過度に上昇しにくいため、経時でも好適な再剥離性を保持できる。
【0011】
また、2−エチルヘキシルアクリレートと併用して炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することで、再剥離性を維持しながら強接着性を大きく向上させることができる。炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが使用でき、なかでも炭素数4〜8のアルキル基を有するアクリレートモノマーを使用することが好ましく、特にn−ブチルアクリレートを好ましく使用できる。また、n−ブチルアクリレートとt−ブチルメタクリレートとを併用することも好ましい。炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの使用量としては10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明においては、上記2−エチルヘキシルアクリレート及び炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの効果をより好適に発現するために、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレート及び炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の和を50〜98質量%とすることが好ましく、80〜98質量%とすることが特に好ましい。また、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレートと炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の比が、(2−エチルヘキシルアクリレート/炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート)で表される質量比で9/1〜2/8であることが好ましく、75/25〜25/75であることが特に好ましい。
【0013】
本発明においては、アクリル系共重合体を形成する(メタ)アクリレートモノマーとして、上記以外の(メタ)アクリレートモノマーを併用してもよい。上記以外の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリレートモノマーを例示でき、これらの1種または2種以上を併用することができる。なかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の炭素数2以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを併用することが好ましく、使用量としては1〜10質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、アクリル系共重合体エマルジョンの表面及び内部に酸基を導入するために、酸基を有するモノマーとして、アクリル酸及びメタクリル酸を併用する。アクリル酸及びメタクリル酸の有するカルボキシル基は、カルボキシル基同士の相互作用により凝集力を確保し易い、反応する架橋剤が多く凝集力を上げる手段が多い、後述する窒素含有ビニルモノマーとの相互作用を発現できる等の利点を有する。さらに、本発明においては、比較的親水性の高いアクリル酸と、アクリル酸よりも疎水性の強いメタクリル酸を併用することで、アクリル酸は粒子表面近傍へ、メタクリル酸は粒子内部に配向する傾向を示し、酸基がアクリル系共重合体エマルジョン粒子表面と内部にバランスよく配置できる。粒子表面近傍の酸基の存在により、エマルジョン粒子間の凝集力を確保でき、かつ、粒子内部に存在する酸基の存在によりエマルジョン粒子内部の凝集力を向上させることができる。これにより、得られる粘着剤層は、凝集力の低い部分を低減でき、経時での再剥離性の劣化を好適に抑制できるため、再剥離時に粘着剤層の脱落や糊残りが生じにくい。
【0015】
アクリル酸及びメタクリル酸の含有量は、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中のメタクリル酸及びアクリル酸の含有量の和が0.5〜10質量%、好ましくは、0.5〜5質量%、更に好ましくは1.5〜3.5質量%である。当該範囲内とすることで、架橋剤との架橋反応が良好に進行し易くなる。さらに、粘着剤層を形成した際に、粘着剤層に好適な凝集力が確保され、保持力と再剥離性が両立し易い。さらに、耐水性を確保する上で必要な凝集力と、粘着剤層表面の疎水性を確保することができる。
【0016】
メタクリル酸およびアクリル酸の併用比率は、メタクリル酸/アクリル酸のモル当量比が0.2以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、2以上であることが更に好ましく、3以上であることが一層より好ましく、4以上であることがより一層好ましく、6以上であることが更により一層好ましい。併用比率を当該範囲とすることで、アクリル系共重合体エマルジョン粒子中の表面酸基量と内部酸基量とを好適に制御できる。
【0017】
また、上述のアクリル系共重合体エマルジョン粒子中の酸基の分布を阻害しない範囲で、酸基を有するモノマーとして、他のカルボキシル基含有モノマーを併用しても良い。他のカルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマーから選ばれる1種又は2種以上を使用できる。これらカルボキシル基含有モノマーを併用する場合には、アクリル酸及びメタクリル酸とを含むカルボキシル基含有モノマーの総量が、上記0.5〜10質量%の範囲となるよう使用することが好ましい。
【0018】
本発明においては、アクリル系共重合体のモノマー成分として、さらに、窒素含有ビニルモノマーを使用する。窒素含有ビニルモノマーは、アクリル系共重合体エマルジョン粒子中の酸基、特にカルボキシル基と相互作用することで、粒子表面に配向し易いカルボキシル基を粒子内部に引き込む効果を生み出すと推察される。本効果を生み出すためには、窒素含有ビニルモノマーの含有量を上記下限以上とすることが好ましい。一方、含有量を増加させた場合に、後述する架橋剤との反応性が低下する傾向を示すが、上記上限以下とすることで、必要な反応性を確保することができる。本含有量範囲とした場合に、アクリル系共重合体エマルジョン粒子中の酸基の分布を、好適な分布範囲に収束させ易くなる。
【0019】
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は2種以上を使用できる。中でも、N−ビニルピロリドンを使用することが特に好ましい。
【0020】
アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の窒素含有ビニルモノマーの含有量は0.1〜4.5質量%であり、好ましくは、0.5〜4質量%、より好ましくは0.5〜3.5質量%の範囲で調整することで本発明の効果を好適に発現できる。
【0021】
アクリル系共重合体中の窒素含有ビニルモノマーとカルボキシル基を有するビニルモノマーの比率は、特に限定されるものではないが、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の窒素含有ビニルモノマーのモル数をX、カルボキシル基を有するビニルモノマーのモル数をYとした場合のモル比X/Yが1/1〜1/20であることが好ましく、1/1〜1/5がより好ましく、1/1〜1/3が更に好ましい。当該範囲内であれば、カルボキシル基を有するビニルモノマーと後述する架橋剤との反応が進行し易くなる。さらに、アクリル系共重合体エマルジョン中のカルボキシル基の分布を後述する範囲に収束させ易くなる。
【0022】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、上記以外のモノマーを必要に応じて使用することもでき、そのようなモノマーの例としては、水酸基含有モノマーとして、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のアルコール性水酸基含有モノマーを適宜使用できる。ケト基又はアルデヒド基含有モノマーとして、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセトアセテート、ブタンジオールアクリレートアセテート等が挙げられる。シラン系モノマーとして、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBM−502]、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBM−503]、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBE−502]、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBE−503]、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBM−5103]等が挙げられる。また、メチロール基含有モノマーとして、Nメチロールアクリルアミド等が挙げられる。また、燐酸基含有モノマーとして、例えば、ローディア日華(株)製 Sipomer PAM−100,PAM−200,PAM−300等が挙げられ、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の20質量%以下の割合で用いることができ、1種または2種以上使用できる。
【0023】
本発明に使用するアクリル系共重合体の重量平均分子量は50〜120万が好適であり、より好ましくは60〜100万である。当該範囲内とすることで、粘着剤が不織布へ含浸する際の柔軟性と、再剥離性に必要な凝集力をバランスよく両立することができる。前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件の例として、HLC−8220GPC(東ソー社製)を用いてカラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度は40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いることで測定できる。
【0024】
分子量を調整するために、重合には連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤、例えばラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどが使用できる。
【0025】
(酸基の分布)
本発明に使用する水分散型アクリル系粘着剤組成物は、水性媒体中に上記アクリル系共重合体のエマルジョン粒子が分散したアクリル系共重合体エマルジョンからなる組成物である。水分散型アクリル系粘着剤組成物中のアクリル系共重合体エマルジョン粒子は、アクリル系共重合体エマルジョン粒子表面の酸基量(ANSUR)と、アクリル系共重合体エマルジョン粒子内部の酸基量(ANIN)との比、(ANIN)/(ANSUR)が、1以上のアクリル系共重合体エマルジョン粒子であることが望ましい。本発明においては、内部の酸基量が、表面の酸基量と同等以上であるアクリル系共重合体を使用することにより、糊残りの低減や、経時での過度な接着力の上昇の抑制が可能となり、好適な再剥離性を有する粘着テープを実現できる。このようなアクリル系共重合体エマルジョン粒子を使用した水分散型アクリル系粘着剤組成物によれば、強接着力を有する粘着剤層を有する粘着テープとした場合にも優れた再剥離性を実現できるため、強接着と再剥離の相反する両特性に優れた粘着テープを実現できる。さらに、粒子間と粒子内両方への酸基配向による凝集力確保と、粒子表面の酸基量抑制による粘着剤層表面の親水性低減(疎水性向上)により、耐水性に優れる粘着テープを得ることができる。上記酸基量の比、(ANIN)/(ANSUR)は、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることが更に好ましく、2.0以上であることが一層好ましい。一方、上限はアクリル系共重合体エマルジョン粒子間の凝集力を確保できる表面酸基量(ASUR)があれば特に制限されないが、上記比が10以下であることが好ましく、5以下であることがさらに好ましい。上述の上限範囲内の場合、粒子間の相互作用が進み易くなり、粒子間における凝集力を高め易くなり、再剥離性ならびに耐水性が向上する。
【0026】
(酸基分布の測定方法)
本発明に使用するアクリル系共重合体エマルジョン粒子における酸基の分布は以下の方法により測定する。本発明におけるアクリル系共重合体エマルジョン粒子の酸基の分布を測定する方法は、測定誤差が少なく簡便な操作であることから電位差滴定を用いることが好ましい。電位差滴定による酸基の測定は、特開2007−003454に開示された方法に準じて行うことができ、詳細には以下の方法により測定される。
【0027】
本発明において、電位差滴定を用いたアクリル系共重合体エマルジョン粒子中の酸基の分布を測定する方法を以下に示す。
【0028】
電位差滴定に用いる酸性試料分散液の調整は、アクリル系共重合体エマルジョン粒子(固形分)とイオン交換水とを、(アクリル系共重合体エマルジョン/イオン交換水)で表される質量比で3/100となるよう調整する。水分散型アクリル系粘着剤組成物からのアクリル系共重合体エマルジョン粒子の抽出は、水性媒体に分散した状態で抽出しても水性媒体から分離した状態で抽出しても良い。また、アクリル系共重合体エマルジョンを調整後、添加剤等を添加する前に抽出すると抽出が容易である。調整する酸性試料分散液は、pHが4以下の酸性試料分散液であることが好ましく、アンモニア水等で中和された水分散型アクリル系粘着剤組成物から、水性媒体に分散した状態でアクリル系共重合体エマルジョンを抽出する場合には、必要に応じ試料分散液にギ酸や酪酸等の弱酸を添加してpHを4以下に調整することが好ましい。
【0029】
滴定は、電位差自動滴定装置を用いることができ、電位差自動滴定装置としては、例えば、京都電子株式会社製AT−610,AT−420N−WIN等が挙げられる。
【0030】
アクリル系共重合体エマルジョン粒子表面の酸基量(ANSUR)と内部の酸基量(ANIN)の算出は、電位差滴定により得られる滴定曲線に基づいて算出される。X軸を塩基滴下量、Y軸をpHとして電位差滴定を行うと、滴定開始点Pから滴定終了点Pの間に、塩基滴定開始後pHが極小となる極小点P、極小点Pに次いで表れる変曲点Pを有する滴定曲線(図1)が得られる。当該極小点Pおよび変曲点Pは、X軸を塩基滴下量(mL)、Y軸をΔE/mLとする滴定曲線の微分曲線(図2)に変換することで、より明確にPおよびPを読み取り易くなる。
【0031】
滴定曲線におけるP〜Pの領域は、試料分散液の水相中に遊離した酸が中和される領域であり、水相中の遊離酸の中和にともないpH値が減少し、全て中和された時点でpH値が極小となる極小値Pを示す。従って、当該領域にて滴下した塩基量が水相中の酸を中和するのに要する滴定量となる。この塩基滴定量と滴定に使用した無機塩基溶液の塩基濃度から、試料分散液中の水相中の酸基量(ANAQUA)[meq/g]を算出する。
【0032】
水分散型アクリル系粘着剤組成物中には、通常、アクリル系共重合体を重合する際に使用する酸が残存するため、アクリル系共重合体エマルジョン粒子を水性媒体に分散した状態で抽出すると試料分散液の水相中には遊離酸が存在する。一方で、アクリル系共重合体エマルジョン粒子のみを分離し、これをイオン交換水中に分散させた場合には、理論上水相中には酸が存在しないためP=Pとなる場合がある。
【0033】
水相中の酸が中和されると、次いで中和され易いアクリル系共重合体エマルジョン粒子表面の酸基が中和される。これが滴定曲線のP〜Pの領域となるため、当該領域にて滴下した塩基量が、アクリル系共重合体エマルジョン粒子表面の酸基を中和するのに要する滴定量となる。この塩基滴定量と滴定に使用した無機塩基溶液の塩基濃度から、アクリル系共重合体エマルジョン粒子表面の酸基量(ANSUR)[meq/g]を算出する。
【0034】
アクリル系共重合体エマルジョン粒子表面の酸基が中和されると、中和されにくいアクリル系共重合体エマルジョン粒子内部の酸基の中和が始まるが、これが滴定曲線中の変曲点Pとして現れる。アクリル系共重合体エマルジョン粒子内部の酸基量(ANIN)は、当該エマルジョン粒子が安定に粒子を形成している場合には、エマルジョン粒子内部に存在する酸基の全量を滴定により測定するのが困難あるいは煩雑となるため、上記算出結果と試料分散液中の全酸基量(ANTOTAL)とから、下式により算出することが好適である。
ANIN=ANTOTAL−(ANSUR+ANAQUA
【0035】
上記滴定に使用する無機塩基溶液は、滴定に使用する無機塩基としては、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを好ましく使用でき、水酸化カリウムを使用することが特に好ましい。滴定に使用する無機塩基の濃度は0.1〜2mol/Lの範囲で調整することが好ましい。
【0036】
その他の滴定条件としては、間欠等速滴定により滴定を行うことが好ましく、間欠時間は10秒、最大滴下量は20mL、間欠注入時の1回注入量は0.16mL/回が好ましく、注入速度は5秒/mL、データ採取する電位は4mL、pHを検出する滴定量は0.16mL毎に行うことが好ましい。
【0037】
具体的な測定方法を例示すると、アクリル系共重合体エマルジョン粒子(固形分)3gを含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を、スポイトにて300mLのポリエチレン製ビーカーに秤量して、次いで、そのポリエチレン製ビーカー内にイオン交換水を、被検サンプルの総量が100gになるまで注入し、攪拌する。そして、電極と温度保証電極を浸す。滴定ノズルの先は液面より高く、滴定試薬が電極にかからないように電極から2センチ離す。前記条件下にて、攪拌しながら、電位差自動滴定を開始する。測定終了後、得られた滴定曲線に自動印字された当量点の滴定量からmeq/gを算出する。
【0038】
前記酸性試料分散液中の全酸基量(ANTOTAL)は、仕込み量から算出した酸基の理論量から算出しても、以下に示したように無機酸溶液による電位差滴定による計測方法で得られた値を用いても良い。電位差滴定により試料分散液中の全酸基量(ANTOTAL)を計測する方法について、以下に示す。
【0039】
試料分散液の調整は、上記で使用する酸性試料分散液と同等の試料分散液に、水酸化カリウムをpH13になるまで添加し、粒子内部も含めた全ての酸基を中和させる。アクリル系共重合体エマルジョン粒子の分散液をpH13の塩基性試料分散液とすると、静電気相互作用により、内部の酸基は全てエマルジョン粒子表面に引き出される。このため当該塩基性試料分散液を無機酸溶液により逆滴定することで、アクリル系共重合体エマルジョン粒子表面の酸基と内部の酸基を同等に滴定でき、試料分散液中の全酸基量を算出できる。
【0040】
滴定に使用する酸は硫酸を好ましく使用でき、その濃度は0.1mol/Lであることが好ましい。電位差滴定装置としては上記と同様の装置を好ましく使用できる。
【0041】
X軸を酸滴下量、Y軸をpHとして電位差滴定を行うと、滴定開始点Qから滴定終了点Qの間に、酸滴定量の少ない順に変曲点Q、Q、Qを有する滴定曲線が得られる(図3)。これら変曲点は、X軸を酸滴下量(mL)、Y軸をΔE/mLとする滴定曲線の微分曲線(図4)に変換することで、より明確に変曲点を読み取り易くなる。これら変曲点Q1、Q、QにおけるX座標がそれぞれの点における酸滴下量となり、Q〜Qにおける酸滴下量はpH13に調整する際に用いた水酸化カリウムの残渣を中和するのに要する滴定量である。Q〜Qにおける酸滴下量は、アクリル系共重合体エマルジョン粒子中に存在する全ての酸基を中和するのに要する滴定量であり、Q〜Qにおける酸滴下量は水相中の酸基を中和するのに要する滴定量である。従って、これら酸滴下量のうちQ〜Qにおいて滴下した酸滴下量と滴定に用いた酸の濃度を基にmeq/gに換算することで、上記酸性試料分散液中の全酸基量(ANTOTAL)が算出される。
【0042】
具体的な測定方法を例示すると、アクリル系共重合体エマルジョン粒子(固形分)3gを含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物をスポイトにて300mLのポリエチレン製ビーカーに秤量して、次いで、そのポリエチレン製ビーカー内にイオン交換水を、被検サンプルの総量が100gになるまで注入し、攪拌する。続いて、被検サンプルがpH13になるまで、1Nの水酸化カリウムを添加し、攪拌する。そして、電極と温度保証電極を浸す。前記に示した滴定条件と同様に電位差自動滴定を開始する。測定終了後、得られた滴定曲線に自動印字された当量点の滴定量からmeq/gを算出する。
【0043】
アクリル系共重合体エマルジョン粒子内部への酸基の導入は、モノマー組成や、重合方法を適切に選定することにより制御できる。モノマー組成としては、酸モノマーの疎水性を高めることにより粒子内部に酸基を導入することができる。また、酸基と相互作用する窒素含有モノマーを共重合させることにより、粒子内部に酸基を導入することもできる。一方、重合方法としては、いわゆる滴下重合法を選定し、滴下前半と滴下後半に滴下させる乳化液の組成を変更させる方法で制御できる。具体的には、滴下前半では酸モノマーの比率を高め、滴下後半では酸基を有するモノマーの比率を低くすることで、粒子内部に酸モノマーを導入することができる。
【0044】
本発明におけるアクリル系共重合体エマルジョン粒子の平均粒子径は特に制限されるものではないが、エマルジョン粒子内部に酸基を導入しやすいことから、300〜1000nmであることが好ましく、300〜800nmであることが更に好ましく、300〜600nmであることが一層好ましく、300〜400nmがより一層好ましい。
【0045】
ここでの粒子の平均粒子径とは、エマルジョン粒子の体積基準での50%メジアン径をいい、数値は動的光散乱法により測定して得られる値に基づくものである。平均粒子径が小さくなりすぎた場合、粒子の表面積が増え、粒子表面が水と接触する割合が増加する。その結果、例えば酸基としてカルボキシル基を使用する場合には、カルボキシル基がカルボキシラートアニオンにイオン化し易くなり、粒子表面にカルボキシル基が局在化する傾向が強くなる。
【0046】
このため、得られるアクリル系共重合体エマルジョン表面の酸基量と内部の酸基量との比(ANIN)/(ANSUR)が、上述したような所望する範囲に入り難くなる場合がある。従って、平均粒子径は300nmを超えることが好ましい。一方、平均粒子径が大きくなりすぎた場合、粘着剤層形成後のエマルジョン粒子同士の融着を促進させるために過度に大きい平均粒子径は好ましくなく、1000nm以下に抑制することが好ましい。
【0047】
(製造方法)
水性媒体中にアクリル系共重合体エマルジョン粒子が分散したアクリル系共重合体エマルジョンは、エマルジョン型の粘着剤を得る乳化重合法により製造できる。乳化重合においては、重合安定性を確保するため、陰イオン性や非イオン性の乳化剤、その他の分散安定剤が適量用いられる。特に乳化剤は制限されず、公知の乳化剤を用いることができる。陰イオン性乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられ、非イオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
更に、公知の「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤を使用することが好ましい。具体的には、ラテムルS−180[花王(株)製]、ラテムルPD−104[花王(株)製]、アクアロンHS−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンHS−20[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−05[第一工業製薬(株)製]、アクアロンRN−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンRN−20[第一工業製薬(株)製]、アクアロンER−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンER−20[第一工業製薬(株)製]、ニューフロンティアA−229E[第一工業製薬(株)製]、アデカリアソープSE−10[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSE−20[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSR−10N[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSR−20N[旭電化工業(株)製]等が挙げられる。反応性乳化剤を使用することで、重合安定性に加え、被膜の耐水性が向上するため好ましい。
【0048】
乳化重合法の中でも、滴下重合法を使用することが好ましい。また、酸基を粒子内部に導入し易くするために、滴下重合法を選定し、滴下前半と滴下後半に滴下させる乳化液の組成を変更させる方法で制御しても良い。具体的には、滴下前半では酸モノマーの比率を高め、滴下後半では酸モノマーの比率を低くすることで、粒子内部に酸モノマーを導入することができる。
【0049】
乳化重合に際し用いられる重合開始剤は限定されず、公知の重合開始剤を用いることができる。具体的に、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−アルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤、芳香族カルボニル化合物等のカルボニル系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤などが挙げられる。
【0050】
(水性媒体)
本発明において使用する水性媒体は、水の単独使用でもよく、あるいは水と水溶性溶剤の混合溶剤を用いてもよい。本発明で使用可能な上記の「水と水溶性溶剤の混合溶剤」とは、実質的に水を主体とした水溶性溶剤との混合溶剤であり、混合溶剤の全量に対して、水溶性溶剤の含有率が好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。前記水溶性溶剤とは、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、あるいはN−メチルピロリドン等の極性溶剤が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0051】
(粘着付与樹脂)
本発明に使用する水分散型アクリル系粘着剤組成物においては、得られる粘着剤層の強接着性を調整するために粘着付与樹脂を使用することが好ましい。本発明に使用する粘着付与樹脂としては、水分散型の粘着剤組成物に使用する観点から、エマルジョン型の粘着付与樹脂を好ましく使用できる。当該エマルジョン型の粘着付与樹脂としては、ロジン系、重合ロジン系、重合ロジンエステル系、ロジンフェノール系、安定化ロジンエステル系、不均化ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、石油樹脂系等が例示できる。
【0052】
中でも、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂と、ロジンフェノール系粘着付与樹脂が好ましく、これらを併用で配合することが特に好ましい。具体的には、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂は、スーパーエステルE−650[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−788[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−786−60[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−865[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製]、ハリエスターSK−508[ハリマ化成(株)製]ハリエスターSK−508H[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−816E[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−822E[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−323NS[ハリマ化成(株)製]等が挙げられ、ロジンフェノール系粘着付与樹脂は、タマノルE−100[荒川化学工業(株)製]、タマノルE−200[荒川化学工業(株)製]、タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製]等が挙げられる。
【0053】
これらを併用する場合には、前記重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(A)とロジンフェノール系粘着付与樹脂(B)との比が、(A)/(B)で表される質量比で5/1〜1/5であることが好ましく、3/1〜1/3がより好ましい。当該範囲内であれば、耐熱性と再剥離性をバランスよく向上させることができる。
【0054】
粘着付与樹脂の軟化点において、軟化点が120〜180℃であることが好適であり、より好ましくは140〜180℃である。軟化点の高い粘着付与樹脂を配合することで、耐熱性が向上する。
【0055】
アクリル系共重合体/粘着付与樹脂の配合比において、アクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/10〜100/40が好適であり、より好ましくはアクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/15〜100/35である。当該範囲内であれば、耐熱性と再剥離性をバランスよく向上させることができる。
【0056】
(添加剤)
本発明に使用する水分散型アクリル系粘着剤組成物においては、添加剤として、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤、顔料・染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを粘着剤組成物に任意で添加することができる。
【0057】
(固形分濃度)
また、本発明に使用する水分散型アクリル系粘着剤組成物の固形分濃度は、特に制限されるものではないが、製造時のコストや輸送コストという観点、及び、乾燥して使用する際の乾燥性に優れるという観点から、固形分濃度が40〜70重量%であることが好ましい。
【0058】
(初期ゲル分率)
本発明に使用する水分散型アクリル系粘着剤組成物は、当該組成物から架橋反応を進行させないように水性媒体を除去して固形分のみとした際の未架橋の当該固形分のゲル分率(以下、初期ゲル分率と称する)が15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることがより一層好ましい。本発明においては、水分散型アクリル系粘着剤組成物の初期ゲル分率を当該範囲とすることで、樹脂フィルム基材、特にPET基材への投錨性が極めて好適となり、良好な再剥離性を実現しやすくなる。また、初期ゲル分率が当該範囲となる水分散型アクリル系粘着剤組成物を使用して、架橋反応を進行させないように水性媒体を除去した後、架橋反応を進行させて粘着剤層を形成することで、耐反発性に優れた粘着テープを形成できる。
【0059】
初期ゲル分率は、水分散型アクリル系粘着剤組成物作成時の重合温度、開始剤の種類や使用量により調整できる。初期ゲル分率を15質量%以下にする際には、例えば、開始剤として、アゾ系開始剤、過硫酸塩系開始剤及び過酸化物系開始剤を使用することが好ましい。なかでも、アゾ系開始剤や、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤を好ましく使用できる。
【0060】
初期ゲル分率は、架橋剤を含有しない水分散型アクリル系粘着剤組成物から水性媒体を除去して固形分を得た後、当該固形分をトルエンに24時間浸漬して不溶分を測定することができる。
【0061】
乳化重合に際しての重合温度は、使用する重合開始剤に応じて適宜調整すれば良いが、例えば、過硫酸アンモニウムを用いた場合に、初期ゲル分率を15質量%以下とする際には、重合温度は70℃未満が好ましく、65℃未満がより好ましい。
【0062】
<粘着テープ>
本発明の粘着テープは、樹脂フィルムを基材とし、当該基材の少なくとも一面に上記の水分散型アクリル系粘着剤組成物を乾燥及び架橋して形成される粘着剤層を有する粘着テープである。当該水分散型アクリル系粘着剤組成物の架橋は、水分散型アクリル系粘着剤組成物に、水分散型アクリル系粘着剤組成物に含まれるアクリル系共重合体中のカルボキシル基に対し、0.5〜5のモル比のオキサゾリン系架橋剤を添加して架橋させる。本発明においては、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物によりアクリル系共重合体エマルジョン粒子の粒子間及び粒子内部に架橋点を存在させ、これをオキサゾリン系架橋剤により架橋させることにより好適な凝集力を実現し、好適な接着性と好適な再剥離性とを実現できる。本発明の粘着テープは、大面積であっても好適に剥離可能な再剥離性を有し、貼付面積が16cm以上の大きな面積や、貼付試料幅が40mm以上の場合に特に好適な効果を奏することができる。
【0063】
オキサゾリン系架橋剤としては、エポクロスWS−500[(株)日本触媒製]、エポクロスWS−700[(株)日本触媒製]、エポクロスK−2010E[(株)日本触媒製]、エポクロスK−2020E[(株)日本触媒製]、エポクロスK−2030E[(株)日本触媒製]等を使用できる。なかでも水性媒体に溶解性を有するもの(WS)が好適な凝集力を実現しやすくなるため好ましい。
【0064】
オキサゾリン系架橋剤の含有量は、水分散型アクリル系粘着剤組成物に含まれるアクリル系共重合体中のカルボキシル基に対し0.5〜5、好ましくは、0.8〜4.5、さらに好ましくは0.8〜3のモル比にて使用することで、粘着剤層の架橋を好適に調整でき、好適な保持力と大面積でも再剥離が容易な粘着剤層とすることができる
【0065】
(基材)
本発明の粘着テープに使用する樹脂フィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下PET)、トリアセチルセルロース(以下TAC)、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。なかでも、本発明においては、樹脂フィルム基材としてPET基材を使用した際に、粘着剤層との好適なアンカリングにより、優れた剥離性を実現できる。
【0066】
また、これら樹脂フィルム基材には、粘着剤層との密着性を向上させる目的で、易接着処理が設けられていることも好ましい。易接着処理としては、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいは、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理、また、ポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂などのプライマーコーティングなどが挙げられる。例えば、易接着処理を施したPETフィルムとしては、ユニチカ(株)EMBLET PTM(プライマーコーティング)、ユニチカ(株)製EMBLET SG(コロナ放電処理)、帝人(株)製テイジンテトロンフィルム G2,HS,O3,HSL,U2(プライマーコーティング)、東レ(株)製ルミラー S105(コロナ放電処理)、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製T100E等が挙げられる。PETフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、柔軟性を損なわない厚みとして、1〜200μmの範囲が好ましく、1〜100μmの範囲がより好ましい。1〜200μmの範囲の厚みのPETフィルムを用いることで、再剥離性のおける作業性が向上できる。
【0067】
(粘着剤層)
本発明の粘着テープの粘着剤層は、上記水分散型アクリル系粘着剤をオキサゾリン系架橋剤により架橋して形成される粘着剤層であり、粘着剤層の架橋度合いの指標として、粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率が、50〜90%であることが好ましく、60〜80%であることがより好ましく、65〜78%であることが特に好ましい。ゲル分率を当該範囲とすることで、再剥離性と強接着性をバランスよく確保することができる。
【0068】
本発明の粘着テープにおける粘着剤層は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物から溶媒を除去して得られる層である。両面粘着テープを形成した際の両面を合算した粘着剤層の好ましい厚さは30〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。
【0069】
本発明における粘着剤層は、動的粘弾性スペクトルにおける正接損失の上に凸のピーク値を示す温度が、−60℃〜−5℃であることが好ましく、−30℃〜−10℃であることがより好ましい。本範囲にある場合、再剥離性と強接着性をバランスよく両立し易くなる。
【0070】
上述の動的粘弾性特性は、動的粘弾性の測定においては、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hzで−50℃から150℃までの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)を測定する。試験片は厚み0.5〜2.5mmの粘着剤を単独で平行円盤の間に挟んでも良いが、基材と粘着剤の積層体を幾重にも重ねて平行円盤の間に挟んでも良い。なお、後者の場合は粘着剤のみの厚さが前記の範囲となるように調整する。粘着剤としての厚さを上記の範囲に調整すると、中間に基材が挟まっていても粘着剤の動的粘弾性スペクトルに影響はないことを本発明者等は確認している。
【0071】
(粘着テープの製造工程)
不織布に粘着剤層を積層するには、粘着剤溶液をロールコーターやダイコーター等を用い、直接樹脂基材に塗布した後、乾燥工程を経て、セパレーターを貼り合わせる方法(以下、直塗り法という)や、セパレーター上にいったん粘着剤溶液をコーティングし、乾燥工程を経た後、樹脂基材に転写する方法(以下、転写法という)を用いることができる。
【0072】
粘着テープの180度ピール粘着力は、JIS−Z−0237に準拠した測定において、ステンレス板を被着体とし、23℃・50%の環境下、2kgローラーにて1往復の加圧貼付を行い、〔A〕23℃・50%の環境下で1時間放置したサンプルと、〔B〕60℃・0〜5%の環境下で10日放置した後、23℃・50%の環境下で1時間放置したサンプルを準備し、〔A〕および〔B〕の粘着テープサンプルを180度方向に1000m/minの速度で引き剥がした際の粘着力(〔A〕および〔B〕)を測定した際に、〔A〕の粘着力が1〜10N/20mmであることが好ましく、〔B〕−〔A〕の粘着力の差が10N/20mm以内であることが好ましい。本範囲の粘着力の場合、再剥離性と強接着性をバランス良く両立し易くなる。なお、評価する際の粘着テープは20mm幅×100mm長に切断することで粘着テープサンプルを調整し、両面粘着テープの場合には、両面粘着テープを厚さ25μmのPETフィルムで裏打ちし、20mm幅×100mm長に切断することにより両面粘着テープサンプルを調整する。
【0073】
本発明の粘着テープは、樹脂フィルム基材の片面に粘着剤層が設けられた片面粘着テープの粘着剤層が設けられていない表面に、直接の印刷や、別途作成した加飾層を積層することで、情報表示面を有する粘着ラベルとすることができる。また、これら情報表示をなす印刷や加飾層を有する場合には、当該印刷や加飾層を保護するためにコーティング層が設けられていてもよい。
【0074】
本発明の粘着テープは、好適な保持力と、各種の被着体に対し大面積であっても好適に剥離可能な優れた再剥離性とを有することから、テレビ、パソコン、携帯電話などのディスプレイ画面、窓ガラスなどのガラス面の他、プラスチック、金属などの材料から構成された平面、曲面、凹凸面などの様々な形状の被着面の、衝撃や擦り傷からの保護または遮光のために使用する保護ラベル、あるいはPOP広告として、裏面に貼り付け及び剥離を繰り返し行う粘着ラベルとすることができる。
【実施例】
【0075】
[水分散型アクリル系粘着剤組成物の調製方法]
(実施例1)
<乳化液の調製>
容器にイオン交換水75gと界面活性剤アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製;有効成分25%]20gと界面活性剤ラテムルPD−104[花王(株)製;有効成分20%]37.5gを入れ、均一に溶解した。そこに、n−ブチルアクリレート318.5g、2−エチルヘキシルアクリレート136.5g、メチルメタクリレート25g、N−ビニルピロリドン7.5g、アクリル酸1.5g、メタクリル酸11g、ラウリルメルカプタン0.2gを加えて乳化し、乳化液632.7gを得た。
【0076】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に、イオン交換水342.5gを入れ、窒素を吹き込みながら60℃まで昇温した。攪拌下、乳化液の一部[3.2g]、過硫酸アンモニウム水溶液5g[有効成分3%]、亜硫酸水素ナトリウム水溶液5g[有効成分3%]を添加し、60℃を保ちながら1時間で重合させた。引き続き、残りの乳化液629.5gと、過硫酸アンモニウム水溶液40g[有効成分1.25%]を別々の漏斗を使用して、反応容器を60℃に保ちながら8時間かけて滴下重合した。滴下終了後、反応容器を60℃に保ちながら2時間攪拌した後、内容物を冷却し、アクリル系共重合体エマルジョン(A)を得た。引き続き、pHが8.0になるようにアンモニア水で調整した。これを200メッシュ金網で濾過し、アクリル系共重合体エマルジョン(B)を得た。ここで、得られた水分散型アクリル系共重合体エマルジョン(B)は固形分濃度50%、平均粒子径は367nm、重量平均分子量は776,000であった。
【0077】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記のアクリル系共重合体エマルジョン(B)1000g[固形分;500g]に、レベリング剤としてサーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、消泡剤としてサーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂としてエマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]固形分で75g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]固形分で50gを添加し、100メッシュ金網で濾過し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物に、架橋剤としてオキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[(株)日本触媒製;固形分25%、オキサゾリン基量4.5mmol/g(solid)]542gを添加して、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を調整した。
【0078】
(実施例2)
<乳化液の調製>
実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0079】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0080】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]542gを、330gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0081】
(実施例3)
<乳化液の調製>
実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0082】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0083】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]542gを、198gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0084】
(実施例4)
<乳化液の調製>
実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0085】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0086】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]542gを、106gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0087】
(実施例5)
<乳化液の調製>
n−ブチルアクリレート318.5gを、227.5gに変更し、2−エチルヘキシルアクリレート136.5gを、227.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0088】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
上記にて得られた乳化液を用いた以外は実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。ここで、得られたアクリル系共重合体エマルジョンは固形分濃度50%、平均粒子径は341nm、平均重量分子量は750,000であった。
【0089】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用いた以外は実施例2と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0090】
(実施例6)
<乳化液の調製>
n−ブチルアクリレート318.5gを、136.5gに変更し、2−エチルヘキシルアクリレート136.5gを、318.5gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0091】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
上記にて得られた乳化液を用いた以外は実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。ここで、得られたアクリル系共重合体エマルジョンは固形分濃度50%、平均粒子径は324nm、重量平均分子量は780,000であった。
【0092】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用いた以外は、実施例2と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0093】
(実施例7)
<乳化液の調製>
実施例5と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0094】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例5と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0095】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]330gを、106gに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0096】
(実施例8)
<乳化液の調製>
実施例5と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0097】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例5と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0098】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]330gを、エポクロスWS−500[(株)日本触媒製;固形分39%、オキサゾリン基量4.5mmol/g(solid)]214gに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0099】
(実施例9)
<乳化液の調製>
実施例5と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0100】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例5と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0101】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−500[固形分39%]214gを、128gに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0102】
(実施例10)
<乳化液の調製>
実施例5と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0103】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例5と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0104】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−500[固形分39%]214gを、68gに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0105】
(実施例11)
<乳化液の調製>
実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0106】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0107】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用いた以外は、実施例9と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0108】
(実施例12)
<乳化液の調製>
実施例5と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0109】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例5と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0110】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−500[固形分39%]214gを、エポクロスWS−300[(株)日本触媒製;固形分10%、オキサゾリン基量7.7mmol/g(solid)]485gに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0111】
(実施例13)
<乳化液の調製>
容器にイオン交換水75gと界面活性剤アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製;有効成分25%]20gと界面活性剤ラテムルPD−104[花王(株)製;有効成分20%]37.5gを入れ、均一に溶解した。そこに、n−ブチルアクリレート230.5g、2−エチルヘキシルアクリレート230.5g、メチルメタクリレート25g、N−ビニルピロリドン1.5g、アクリル酸1.5g、メタクリル酸11g、ラウリルメルカプタン0.2gを加えて乳化し、乳化液632.7gを得た。
【0112】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
上記にて得られた乳化液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。ここで、得られたアクリル系共重合体エマルジョンは固形分濃度50%、平均粒子径は330nm、重量平均分子量は800,000であった。
【0113】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0114】
(実施例14)
<乳化液の調製>
アクリル酸1.5gを7.5gに変更し、メタクリル酸11gを5gに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0115】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
上記にて得られた乳化液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。ここで、得られたアクリル系共重合体エマルジョンは固形分濃度50%、平均粒子径は302nm、重量平均分子量は770,000であった。
【0116】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0117】
(実施例15)
<乳化液の調製>
アクリル酸1.5gを5gに変更し、メタクリル酸11gを7.5gに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0118】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
上記にて得られた乳化液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。ここで、得られたアクリル系共重合体エマルジョンは固形分濃度50%、平均粒子径は300nm、重量平均分子量は750,000であった。
【0119】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0120】
(比較例1)
<乳化液の調製>
実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0121】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0122】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]542gを、4gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0123】
(比較例2)
<乳化液の調製>
実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0124】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0125】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]542gを、26gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0126】
(比較例3)
<乳化液の調製>
実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0127】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0128】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]542gを、オキサゾリン系架橋剤エポクロスK−2020E[(株)日本触媒製;固形分40%、オキサゾリン基量1.8mmol/g(solid)]41.25gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0129】
(比較例4)
<乳化液の調製>
実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0130】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に、イオン交換水342.5gを入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。攪拌下、乳化液の一部[3.2g]、過硫酸アンモニウム水溶液5g[有効成分3%]、亜硫酸水素ナトリウム水溶液5g[有効成分3%]を添加し、80℃を保ちながら1時間で重合させた。引き続き、残りの乳化液629.5gと、過硫酸アンモニウム水溶液40g[有効成分1.25%]を別々の漏斗を使用して、反応容器を80℃に保ちながら8時間かけて滴下重合した。滴下終了後、反応容器を80℃に保ちながら2時間攪拌した後、内容物を冷却し、アクリル系共重合体エマルジョン(A)を得た。引き続き、pHが8.0になるようにアンモニア水で調整した。これを200メッシュ金網で濾過し、アクリル系共重合体エマルジョン(B)を得た。ここで、得られた水分散型アクリルポリマーは固形分濃度50%、平均粒子径は354nm、重量平均分子量は測定不可能であった。
【0131】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用い、オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]542gを、オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−500[(株)日本触媒製;固形分39%、オキサゾリン基量4.5mmol/g(solid)]4.23gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0132】
(比較例5)
<乳化液の調製>
実施例1と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0133】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0134】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]542gを、エポキシ系架橋剤テトラッド−C[三菱瓦斯化学(株)製]0.15gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0135】
(比較例6)
<乳化液の調製>
実施例5と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0136】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
実施例5と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0137】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用い、エポキシ系架橋剤テトラッド−C 0.15gを、1.5gに変更した以外は、比較例5と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0138】
(比較例7)
<乳化液の調製>
容器にイオン交換水75gと界面活性剤アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製;有効成分25%]20gと界面活性剤ラテムルPD−104[花王(株)製;有効成分20%]37.5gを入れ、均一に溶解した。そこに、n−ブチルアクリレート227.5g、2−エチルヘキシルアクリレート227.5g、メチルメタクリレート25g、N−ビニルピロリドン7.5g、アクリル酸12.5g、ラウリルメルカプタン0.2gを加えて乳化し、乳化液632.7gを得た。
【0139】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
上記にて得られた乳化液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。ここで、得られたアクリル系共重合体エマルジョンは固形分濃度50%、平均粒子径は338nm、重量平均分子量は808,000であった。
【0140】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用い、オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]542gを、46gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0141】
(比較例8)
<乳化液の調製>
比較例7と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0142】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
比較例7と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0143】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
オキサゾリン系架橋剤エポクロスWS−700[固形分25%]46gを、386gに変更した以外は、比較例7と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0144】
(比較例9)
<乳化液の調製>
比較例7と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0145】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
比較例7と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0146】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記で得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用いた以外は、比較例5と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0147】
(比較例10)
<乳化液の調製>
比較例7と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0148】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
比較例7と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0149】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記で得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用いた以外は、比較例6と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0150】
(比較例11)
<乳化液の調製>
容器にイオン交換水75gと界面活性剤アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製;有効成分25%]20gと界面活性剤ラテムルPD−104[花王(株)製;有効成分20%]37.5gを入れ、均一に溶解した。そこに、n−ブチルアクリレート231.25g、2−エチルヘキシルアクリレート231.25g、メチルメタクリレート25g、アクリル酸12.5g、ラウリルメルカプタン0.2gを加えて乳化し、乳化液632.7gを得た。
【0151】
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
上記にて得られた乳化液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。ここで、得られたアクリル系共重合体エマルジョンは固形分濃度50%、平均粒子径は326nm、重量平均分子量は810,000であった。
【0152】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用いた以外は、比較例5と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0153】
(比較例12)
比較例11と同様の方法で、乳化液を調製した。
【0154】
比較例11と同様の方法で、アクリル系共重合体エマルジョンを製造した。
【0155】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
上記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョンを用いた以外は、比較例6と同様の方法で、架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造した。
【0156】
[両面粘着テープの調製方法]
前記の架橋剤を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離処理した厚さ75μmのポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚さが65μmになるように塗工して、100℃で5分間乾燥して得た粘着シートを、前述の樹脂基材の両面に転写し、90℃の熱ロールで4kgf/cmの圧力でラミネートし、両面粘着テープを得た。尚、該両面粘着テープは40℃2日エージング後に試験に使用した。
【0157】
上記にて得られた実施例及び比較例の粘着剤組成物及び両面粘着テープにつき、以下の評価を行った。得られた結果を表1〜4に示した。
【0158】
[評価方法(水分散型アクリル系粘着剤組成物)]
(アクリル系共重合体エマルジョン中のカルボキシル基分布の測定方法)
実施例1で得られたアクリル系共重合体エマルジョン(A)[固形分濃度50%]6g(固形分3g)をスポイトにて300mLのポリエチレン製ビーカーに秤量して、次いで、そのポリエチレン製ビーカー内にイオン交換水94gを注入し、攪拌する(被検サンプルの総量を100gとした)。そして、電極と温度保証電極を浸す。滴定ノズルの先は液面より高く、滴定試薬が電極にかからないように電極から2センチ離し、設置した。メソッドファイルの設定を、滴定モードは間欠等速滴定とし、間欠時間は10秒、最大滴下量は20mL、間欠注入時の1回注入量は0.16mL/回、注入速度は5秒/mL、データ採取する電位は4mL、データを採取する滴定量は0.16mLに指定した。攪拌しながら、電位差自動滴定を行った。得られた滴定曲線より算出したアクリル系共重合体エマルジョン粒子表面に存在する酸基量は、0.097meqv./g、粒子内部に存在する酸基量は0.196meqv./gであった。
【0159】
実施例2〜6および比較例1〜13のアクリル系共重合体エマルジョンについても同様に測定を行い、滴定曲線より算出したアクリル系共重合体エマルジョン粒子表面に存在する酸基量、粒子内部に存在する酸基量を算出した。
【0160】
(アクリル系共重合体エマルジョンの平均粒子径)
日機装(株)製マイクロトラックUPA型粒度分布測定装置にて測定した平均粒子径(体積基準での50%メジアン径)の値を求めた。
【0161】
(アクリル系共重合体エマルジョンの重量平均分子量)
以下のGPC測定条件にて、アクリル系共重合体エマルジョンの重量平均分子量を測定した。
測定装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSK−GEL HXL−H(ガードカラム)
(2)TSK−GEL GMHXL
(3)TSK−GEL GMHXL
(4)TSK−GEL GMHXL
サンプル濃度:4mg/mLとなるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
注入量:100μL
カラム温度:40℃
【0162】
[評価方法(両面粘着テープ)]
(再剥離性の評価)
両面粘着テープを厚さ25μmのPETフィルムで裏打ちし、50mm幅×100mm長に切断することにより、両面粘着テープサンプルを調整した。次いで、各種被着体[ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(以下ABS)板、ポリカーボネート(以下PC)板、PC/ABSポリマーアロイ(以下PC/ABS)板]に対し、23℃・50%の環境下、2kgローラーにて1往復の加圧貼付を行い、60℃90%の環境下で10日間静置した。その後、23℃・50%RHの環境下で1時間静置し、両面粘着テープサンプルを135度方向に25m/minの速度で引き剥がした際の再剥離性を評価した。尚、再剥離性の評価は以下の基準で行った。
◎:被着体への糊残り及び不織布の切断による粘着テープの残留面積が、貼付面積の3%未満。
◎〜○:被着体への糊残りによる粘着テープの残留面積が、貼付面積の3%以上10%未満。
○:被着体への糊残りによる粘着テープの残留面積が、貼付面積の10%以上30%未満。
△:被着体への糊残りによる粘着テープの残留面積が、貼付面積の30%以上80%未満。
×:被着体への糊残りによる粘着テープの残留面積が、貼付面積の80%以上。
【0163】
(強接着性及び被着体貼付後の経時での接着力上昇の評価)
両面粘着テープを厚さ25μmのPETフィルムで裏打ちし、20mm幅×100mm長に切断することにより両面粘着テープサンプルを調整した。次いで、ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板、PC/ABS板、ABS板、PC板を被着体とし、23℃・50%の環境下、2kgローラーにて1往復の加圧貼付を行い、〔A〕23℃・50%の環境下で1時間放置したサンプルと、〔B〕60℃90%の環境下で10日放置した後、23℃・50%の環境下で1時間放置したサンプルを準備した。
その後、〔A〕および〔B〕の両面粘着テープサンプルを180度方向に1000m/minの速度で引き剥がした際の接着力(〔A〕および〔B〕)を測定した。次いで、上昇した接着力(〔B〕−〔A〕)を算出した。尚、粘着力の測定は、JIS−Z−0237に準拠して測定を実施した。
【0164】
(保持力)
両面粘着テープを20mm幅×100mm長に切断し、23℃・50%の環境下でステンレス板に、貼付面積20mm×20mmになるように2kgローラー1往復で加圧圧着し、1時間静置した。次いで、70℃・5%環境下で0.5kgの荷重を掛け、落下時間を測定した。24時間(1440分)以上保持した場合を、表1では「1440<」と表示した。
【0165】
【表1】

【0166】
【表2】

【0167】
【表3】

【0168】
【表4】

【0169】
上記表1〜2より明らかなように、実施例1〜15の水分散型アクリル系粘着剤組成物を使用した本発明の粘着テープは、被着体に対して良好な保持力を有し、かつ優れた再剥離性を有するものであった。一方、上記表3〜4より明らかなように、比較例1〜4は、架橋剤量が少ないため、経時での接着力が上昇しやすく、複数の被着体に対しての接着力〔B〕は高くなり、再剥離性が劣るものであった。また、架橋剤量が少ないため、保持力が劣るものであった。比較例5〜6の粘着テープは、エポキシ系架橋剤を使用しているため、PET基材への投錨性が劣り、再剥離性が乏しいものであった。比較例7〜12は、メタクリル酸を含有せず、アクリル系共重合体エマルジョン粒子内部の酸基量が低いため、経時での接着力が上昇しやすく、複数の被着体に対しての接着力〔B〕が高くなり、再剥離性が乏しいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムからなる基材の少なくとも一面に粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層が、水性媒体中にアクリル系共重合体エマルジョン粒子が分散した水分散型アクリル系粘着剤組成物を乾燥及び架橋して形成される粘着剤層であり、
水分散型アクリル系粘着剤組成物前記アクリル系共重合体エマルジョン粒子を形成するアクリル系共重合体が、2−エチルヘキシルアクリレート、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有モノマー及び窒素含有ビニルモノマーをモノマー成分として含有し、前記カルボキシル基含有モノマーとしてアクリル酸及びメタクリル酸を、前記アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の0.1〜10質量%含有し、
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物の架橋が、前記アクリル系共重合体中のカルボキシル基に対し、0.5〜5のモル比のオキサゾリン系架橋剤による架橋であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中のアクリル酸とメタクリル酸の含有量の比が、(メタクリル酸/アクリル酸)で表されるモル等量比で1.3以上である請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレート及び炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の和が50〜98質量%である請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレート及び炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の和が50〜98質量%、窒素含有ビニルモノマーの含有量が0.15〜4.5質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレートと炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の比が、(2−エチルヘキシルアクリレート/炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート)で表される質量比で9/1〜2/8である請求項1〜4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記アクリル系共重合体エマルジョン粒子の粒子径が300〜1000nmである請求項1〜5のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項7】
前記アクリル系共重合体エマルジョン粒子が、アクリル系共重合体エマルジョン粒子/イオン交換水=3/100の質量比で調整した酸性試料分散液に、無機塩基溶液の滴下による電位差滴定を行って、滴定開始点P、滴定開始後pHが極小となる極小点P、極小点Pに次いで表れる変曲点Pを有する滴定曲線の微分曲線を測定した際に、
〜Pにおいて滴下した塩基滴下量から算出されるアクリル系共重合体エマルジョン粒子表面の酸基量(ANSUR)、
および、P〜Pにおいて滴下した塩基滴下量から算出される酸基量を、酸性試料分散液中の全酸基量(ANTOTAL)から減じて算出されるアクリル系共重合体エマルジョン粒子内部の酸基量(ANIN)の比(ANIN)/(ANSUR)が1以上のアクリル系共重合体エマルジョン粒子である請求項1〜6のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物から架橋反応を進行させないように水性媒体を除去して固形分のみとした際の固形分のゲル分率が15質量%以下である請求項1〜7のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記粘着剤層のゲル分率が60〜80%である請求項1〜8のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項10】
温度23℃、相対湿度50%RHの環境下でステンレス板に対し、2kgローラーを使用して圧着回数一往復で圧着し、1時間静置した後の剥離速度1000mm/minにおける180°引き剥がし接着力(FA1)が、1〜10N/20mmである請求項1〜9のいずれかに記載の粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−80045(P2011−80045A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199862(P2010−199862)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】