説明

粘着テープ

【課題】製造工程において問題が生じ難く、短手方向に特異的に、手切れ性を有するとともに粘着剤の表面への滲みだしの心配がない、手切れ性が改善された粘着テープを提供する。
【解決手段】基材の裏面に粘着剤を備えた粘着テープ10であって、短手方向に延設された複数のスリット15が、該粘着テープ10の短手方向の両端部10e近傍に設けられており、前記粘着テープ10の短手方向の端部10e側の前記複数のスリットの各々の端部15eと、前記粘着テープ10の短手方向の端部10eとの間に間隙d1が設けられている粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。特に、手切れ性を改善した粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは通常カッターやハサミなどを用いてカットして使用される。しかし、特に、コンビニや医療の現場では、作業効率向上のため、道具を使わずに手で切断できるテープ、即ち手切れ性の良い粘着テープが嘱望されている。
【0003】
かかる嘱望に対して、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、長尺フィルムの縁部に微細な切込みを入れる技術が記載されている。かかる技術を粘着テープに適用することで、手切れ性の良い粘着テープが製造され得る。
【0004】
また、特許文献2には、幅方向に形成されてなる多数の溝状の凹部と、厚さ方向に形成されてなる多数の微細な孔とを有する薄物からなる基材であって、該孔の形成時に生じたバリは平坦化されてなる基材および粘着剤層からなる粘着テープ、が記載されている。
【0005】
更に、特許文献3には、基材と該粘着剤層とを貫通する貫通孔が少なくとも一方向の端部が列をなすように設けられており、該貫通孔の形状は扁平多角形状であって、前記列をなす端部のうち少なくとも一方向に対面する端部の角度が90°未満であることを特徴とする医療用粘着テープ、が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載の長尺フィルムの縁部に微細な切込みを入れる技術を粘着テープに適用すると、手切れ性は改善される。しかし、テープが過剰に切れやすくなり、製造工程においてテープ切断が発生し、工程ロスが増える可能性がある。
【0007】
また、特許文献2および特許文献3に記載の基材の全面に貫通孔を設ける技術を粘着テープに適用した場合も、手切れ性は改善される。しかし、テープの全面に貫通孔があるため、テープの強度が全体的に低下する。また、切れやすい方向が特定されないため、テープの長手方向にも裂けやすくなる。さらに、貫通孔を設けるため、製造工程においてバリが生じやすくなるとともに、製品に抜きかすが残留する可能性もある。加えて、粘着テープに貫通孔が設けられているため、裏面に積層された粘着剤が、貫通孔を介して、表面に滲みだす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−44808号公報
【特許文献2】特開2000−191988号公報
【特許文献3】特開2007−236764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は係る状況を鑑みなされたもので、製造工程において問題が生じ難く、短手方向に特異的に、手切れ性を有するとともに粘着剤の表面への滲みだしの心配がない、手切れ性が改善された粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の粘着テープは、基材の裏面に粘着剤を備えた粘着テープであって、短手方向に延設された複数のスリットが、該粘着テープの短手方向の両端部近傍に設けられており、前記粘着テープの短手方向の端部側の前記複数のスリットの各々の端部と、前記粘着テープの短手方向の端部との間に間隙が設けられている。
【0011】
上記構成によると、短手方向に延設された複数のスリットが、短手方向の両端部近傍、即ちテープの幅方向の両端部近傍に設けられているため、テープの手切れ性が改善される。
【0012】
また、粘着テープの幅方向の端部側の各スリットの端部と、粘着テープの幅方向の端部との間に、間隙が設けられている。即ち、スリットの端部は粘着テープの幅方向の端部に達していないため、テープの端部が引っかかって製造工程においてテープが切れることにより工程ロスが生じるといった問題は生じにくい。
【0013】
また、設けられているのがスリットであるため、貫通孔を設けた場合のように、粘着テープの打ち抜きを必要としない。そのため、製造工程においてバリが発生する可能性も低いとともに、抜きかすが粘着テープに残留する可能性もない。
【0014】
また、設けられているのがスリットであるため、貫通孔を設けた場合と比して、粘着剤が表面に滲み出す可能性が低い。
【0015】
また、スリットが短手方向に延設されているため、方向性のない貫通孔を設けた場合と比して、切断方向を短手方向に誘導することができる。
【0016】
本発明の粘着テープにおいて、前記複数のスリットは、長手方向において略等間隔に配置されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によると、複数のスリットが、長手方向において等間隔に設けられていることにより、長手方向のどの位置においても同様の手切れ性を粘着テープに与えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、製造工程において問題が生じ難く、短手方向に特異的に、手切れ性を有するとともに粘着剤の表面への滲みだしの心配がない、手切れ性が改善された粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る粘着テープの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る粘着テープの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した粘着テープの実施形態を図1および図2を用いて説明する。なお、以下の説明において、方向および向きについては、図中に記載した方向および向きを用いる。
【0021】
図1は粘着テープ10の全体斜視図である。長尺の粘着テープを捲き回してロール状に仕上げられている。この粘着テープは、二軸延伸ポリプロピレン樹脂の基材11の裏面14に粘着剤13が備えられている。また、基材11の表面12には、粘着剤13からの剥離を促す剥離処理が施されている。
【0022】
図2は粘着テープ10の部分拡大図である。短手方向に延設された複数のスリット15が、粘着テープ10の短手方向の両端部10e近傍に設けられており、粘着テープ10の短手方向の端部10e側の複数のスリット15の各々の端部15eと、粘着テープ10の短手方向の端部10eとの間に間隙d1が設けられている。また、この複数のスリット15は、長手方向において略等間隔に配置されている。
【0023】
より具体的には、粘着テープ10の短手方向の両方の端部10eから1mmの間隙d1を開けて、長さd2が1mmであるスリット15が短手方向に延設されている。粘着テープの幅は15mmであるため、スリット間の最短距離d3は、11mmとなる。
【0024】
また、複数のスリット15の間隔d4は、4mmとなっている。このように、等間隔でかつ短い間隔で、複数のスリット15が設けられているため、粘着テープ10は長手方向のいずれからでも、短手方向に、容易に、手で切ることができる。
【0025】
また、粘着テープ10の短手方向の両方の端部10eから1mmの間隙d1が設けられているため、端部10eには、切れ込み等を設ける必要がない。そのため、製造工程において、切れ込みが製造機械等に引っかかり、切れてしまうことを原因とする工程ロスは生じ難い。
【0026】
また、粘着テープ10は、従来の貫通孔を用いた手切れ性の良い粘着テープに比して、容易に製造することができる。貫通孔を作成するためには、通常、粘着テープに対して打ち抜き加工を行う打抜工程が必要となる。打抜工程において、打ち抜き加工によって打ち抜かれた、抜きかすが、テープに残留して不良品となる工程ロスが発生する。また、打ち抜きの結果、貫通孔周辺にバリが発生し易い。さらに、打抜工程そのものが工程増となる。
【0027】
一方、粘着テープ10は、粘着テープにスリット15を設けるだけで製造できるため、上記欠点が発生しない。スリット15は、切れ込み加工で作成できるため、打ち抜きに比して、バリが発生し難い。また、抜きかすは生じないので、抜きかすを原因とする工程ロスが生じない。また、粘着テープは通常大幅のものを製造した上で、所定の幅(本実施例においては15mm)に切断するのであるが、例えば、特許文献1と同様の構造のカッターロールを用いれば、この切断と同時にスリット15が作成できるため、特段に工程増となることもない。
【0028】
また、スリットを設けた場合には、切り欠き部分が存在しないため、切欠き部を有する貫通孔を設けた場合に比して、裏面14に設けた粘着剤13が表面12に回り込むようにしみだす可能性が小さい。かかる滲み出しが生ずると、粘着テープ全体がべたついたものとなり、使用者に不快感を与える。また、程度によっては、不良品となりうる。
【0029】
更に、複数のスリット15はそれぞれ短手方向に延設されているため、手切りした場合に粘着テープが切れる方向を、短手方向に誘導する。つまり手切りによる切断に、短手方向の方向性を与えることができる。そのため、方向性のない貫通孔を用いた従来に比して、長手方向に裂ける可能性が小さい、作業性の良い粘着テープを提供することができる。
【0030】
以上に説明した本実施形態によれば、上記した以下の効果を得ることができる。
【0031】
(1)本実施形態においては、複数のスリット15が、長手方向において等間隔に設けられていることにより、長手方向のどの位置においても同様の手切れ性を粘着テープに与えることができる。
【0032】
(2)本実施形態において、複数のスリット15が短手方向に延設されているため、方向性のない貫通孔を設けた場合と比して、切断方向を短手方向に誘導することができる。そのため、長手方向に裂ける可能性の低い、作業性の良い粘着テープである。
【0033】
(3)本実施形態における粘着テープ10に設けられているのがスリット15であるため、貫通孔を設けた場合と比して、粘着剤が表面に滲み出す可能性が低い。そのため、使用者に不快感を与える可能性が低く、粘着剤の表面への滲み出しを原因とする不良品の発生率も低くすることができる。
【0034】
(4)本実施形態の粘着テープは、複数のスリット15を設けているため、貫通孔を設けた場合のように、製造時に粘着テープの打ち抜きを必要としない。そのため、製造工程においてバリが発生する可能性も低いとともに、抜きかすが粘着テープに残留する可能性もない。
【0035】
(5)本実施形態の粘着テープは、複数のスリット15を設けているため、貫通孔を設けた場合のように、製造時に粘着テープの打ち抜きを必要としない。そのため、製造工程においてバリが発生する可能性も低いとともに、抜きかすが粘着テープに残留する可能性もない。
【0036】
(6)本実施形態の粘着テープにおける複数のスリット15の短手方向の端部15eと粘着テープの幅方向の端部10eとの間に、間隙d1が設けられている。即ち、スリットの端部は粘着テープの幅方向の端部に達していないため、テープの端部が引っかかって製造工程においてテープが切れることにより工程ロスが生じるといった問題は生じにくい。
【0037】
(7)本実施形態によると、短手方向に延設された複数のスリット15が、粘着テープ10の短手方向の両端部10e近傍に設けられているため、粘着テープの手切れ性が従来に比して改善される。
【0038】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
【0039】
・上記構成によると、基材11は二軸延伸ポリプロピレン樹脂で構成されているが、他の材料を用いてもよい。用途によって、各種樹脂、紙基材、布、不繊布などを用いてもよい。また、透明であっても、不透過性であってもよいし、無色であっても、着色されていてもよい。
【0040】
・上記構成によると、複数のスリット15の間隔d4は、4mmとなっているが、特に限定されることはない。例えば、20mm間隔としてもよい。この場合、粘着テープが20mm以下の小片になることを防止できる。要は、用途に応じて適当な間隔で複数のスリット15を設ければよい
【0041】
・上記構成によると、粘着テープ10の短手方向の両方の端部10eからの間隙d1は1mmであるが、特に限定されない。端部10eからの間隙d1はどの程度の切れやすさを求めるか、基材との関係等の要素によって適宜設定すればよい。
【0042】
・上記構成によると、スリット15の長さd2は1mmであるが、特に限定されない。スリット15の長さd2についても、どの程度の切れやすさを求めるか、基材との関係等の要素によって適宜設定すればよい。
【0043】
・上記構成によると、複数のスリット15は、長手方向において等間隔に設けられているが、この構成は必須ではない。長手方向のどの位置においても同様の手切れ性を粘着テープ10に与える必要がなければ、複数のスリット15の間隔は等間隔でなくてもよい。例えば、長さの異なる粘着テープ片を得たい場合には、複数のスリット15の間隔を目的に合わせ変えてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…粘着テープ
10e…端部
11…基材
12…表面
13…粘着剤
14…裏面
15…スリット
15e…端部
d1…間隙
d2…(スリットの)長さ
d3…スリット間の最短距離
d4…間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の裏面に粘着剤を備えた粘着テープであって、
短手方向に延設された複数のスリットが、該粘着テープの短手方向の両端部近傍に設けられており、
前記粘着テープの短手方向の端部側の前記複数のスリットの各々の端部と、前記粘着テープの短手方向の端部との間に間隙が設けられている粘着テープ。
【請求項2】
前記複数のスリットは、長手方向において略等間隔に配置されている請求項1に記載の粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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