説明

粘着トラップ

【課題】粘着トラップに捕獲された農業害虫のみならず衛生害虫の同定を現場にて且つ容易に行うことが出来るようにする。
【解決手段】粘着剤が付着される粘着フィルム2の粘着面に捕獲される害虫の写真4を印刷する。害虫の写真4は2つとし、一つは1倍のもの4a、もう一つはルーペで見る大きさに拡大したもの4bとし、捕獲される害虫の同定が、印刷されたものと比較することで極めて容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粘着剤を用いて飛翔性農業害虫や衛生害虫の捕獲用の粘着トラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着剤が付着されたフィルムを用いて飛翔性農業害虫をその粘着剤の粘着力にて捕獲するものが公知である。公知文献と特許文献1及び特許文献2がある。この特許文献1では、多孔質リボンに粘着剤を含浸させ、そのリボンをジグザグに折り畳んで皿状容器内に収納し、蓋体で密閉して構成され、使用時には蓋体を引き上げると、折り畳まれた粘着リボンが伸び、直線状となり、使用出来るように成っている。
【0003】
また、特許文献2では、粘着フィルムに飛翔農業害虫の種類による特定の色が着色されると共に、粘着フィルムの外周囲に黒の色彩枠を付した構成で、飛翔農業害虫に対する誘引効果を増大させるようにしている。
【特許文献1】実公昭58−8059号公報
【特許文献2】特開2000−4754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着トラップは、害虫の発生を予察(モニタリング)したり、防除目的として害虫を大量に捕殺することが出来る。実際に害虫の発生をモニタリングするためには、粘着トラップに捕らえられた害虫の種類を同定する必要がある。
【0005】
例えば農業害虫の同定を行うためには、ある程度経験が必要である。さらに粘着トラップに捕らえられた農業害虫は、死後の過時により外見の変化が起こっており、これの同定にはさらに経験が必要とされる。また、粘着トラップに捕獲される飛翔農業害虫として、例えばコナジラミ類、アブラムシ類、ハモグリバエ類、アザミウマ類などを挙げることが出来るが、これらの農業害虫は小さく、体長が1mm以下のものも多く、肉眼では見えづらく、コナジラミ類では、白い点のように見えてしまう。
【0006】
このため、同定には実体顕微鏡またはルーペを用いる。この際、図鑑等を用いてそこに載っている農業害虫例を比較することで種類を確認する。そのため、同定は栽培現場では行えず、室内で行われるため、即時性に欠ける不具合があった。
【0007】
このため、この発明は、粘着トラップに捕獲された農業害虫のみならず衛生害虫(以下害虫という)の同定を現場にて且つ容易に同定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る粘着トラップは、粘着剤が付着された粘着フィルムの該粘着面に捕獲される飛翔性の害虫の写真を予め載せると共に、載せられる害虫の写真を少なくとも2つ以上として、倍率が1倍のものから、ルーペで見る大きさの数倍から数10倍に拡大した複数のものを載せることを特徴としている(請求項1)。
【0009】
これにより、粘着トラップの粘着面に捕獲された害虫と、同じく粘着面上に載せられた害虫の写真と比較することから、即座に同定できる。特にルーペで見る倍率に合わせた害虫の写真があることから、同じ大きさにて比較検討が容易となる。なお、害虫の写真を倍率を異にする2つ載せているが、これに限らず3つなど複数のものを載せることが出来る。
【0010】
また、捕獲される害虫であって、捕獲後の所定の日数を経過した写真を載せることが好ましい(請求項2)。これにより、死後数日を過ぎると変化する害虫の同定も容易となる。
【0011】
さらに、捕獲される害虫であって、前記ルーペで見る拡大した大きさの写真に並んで、更に拡大した写真を載せることが好ましい。これにより、害虫を詳細に確認、検討が出来る。
【0012】
さらにまた、害虫として、一種類のみならず複数種が載せることが好ましく(請求項4)、粘着トラップに捕獲される害虫が一種類でないことが多く、その場合には、種類別に同定が出来る。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明によれば、粘着トラップの粘着面に載せられた害虫と捕獲された害虫の写真と直ちに比較でき、しかもルーペで拡大した写真をも載せているので、同定は極めて容易となり、現場にて比較・同定することが可能となる(請求項1)。
【0014】
また、害虫の死後数日を過ぎた例も載せてあるから、同定も容易である(請求項2)。また、ルーペで見る拡大した大きさの写真に並んで更に拡大した写真を載せるため、詳細に検討が出来るものである(請求項3)。そして、複数の害虫が捕獲されることが多く、これにも対処するために、複数種の害虫を載せている(請求項4)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1において、この発明の実施例が示され、粘着トラップ1は、帯状の粘着フィルム2の一面又は両面に粘着剤が添付されると共に、この粘着面に飛翔性害虫である農業害虫の写真4が印刷されて載せられて構成されている。
【0016】
前記粘着フィルム2は、布又は合成樹脂にて製造され、縦長のものであり、例えば捕獲する飛翔性農業害虫(以下農業害虫という)の好む色、例えばコナジラミ類では、黄色に着色されているし、またアザミウマ類では、青に着色されている。
【0017】
前記粘着フィルム2の表面(粘着面)に、前述したように農業害虫の写真4が印刷されて載せられているが、該農業害虫の写真4は、粘着フィルム2に粘着剤が付着される前に印刷されることは勿論である。その印刷された農業害虫が捕獲直後で現実の大きさである1倍のもの4a、農業害虫の大きさが1倍であるが捕獲されてから数日を経過したもの4bが示されている。
【0018】
また、ルーペで拡大した大きさ(3倍から10倍程)の捕獲直後で現実の大きさのもの5a、農業害虫の大きさ(3倍から10倍程)の捕獲されてから数日を経過したもの5bが示されている。これにより、ルーペにて拡大した農業害虫と同等の大きさにて対比が出来ることから、捕獲された農業害虫の同定が容易となる。捕獲後数日を過ぎたものでも、一倍のもの4b、ルーペで拡大のもの5bがあり、比較して、捕獲された農業害虫の同定は容易となる。
【0019】
なお、実施例では、ルーペで拡大した大きさのものを一つ載せているが、2つなど複数載せても良いことは勿論である。また、ルーペで拡大した大きさよりも更に拡大した大きさのもの6(20〜30倍)をも示していて、農業害虫を詳細に確認出来るようにしている。
【0020】
さらに、粘着トラップ1に捕獲される農業害虫が複数の場合もあり、この実施例ではアブラムシ7が1倍で示されている。しかし、載せられていないが、ルーペで拡大された大きさのものも示しても良いことは勿論である。さらにまた、この実施例にあっては、農業害虫の例を示しているが、これに限らず、ハエなどの衛生害虫にも適用できること勿論であり、その場合には、写真を衛生害虫とすることで対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例の正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 粘着トラップ
2 粘着フィルム
4 農業害虫の写真
4a 捕獲直後の農業害虫で1倍のもの
4b 捕獲後数日を経過した1倍のもの
5a ルーペで拡大した大きさで捕獲直後の農業害虫
5b ルーペで拡大した大きさで捕獲後数日を経過した農業害虫
6 ルーペで拡大した大きさよりも更に拡大した農業害虫
7 アブラムシの写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤が付着された粘着フィルムの粘着面に捕獲される飛翔性の害虫の写真を予め載せると共に、載せられる害虫の写真を少なくとも2つ以上として、倍率が1倍のものから、ルーペで見る大きさの数倍から数10倍に拡大した複数のものを載せることを特徴とする粘着トラップ。
【請求項2】
捕獲される害虫であって、捕獲後の所定の日数を経過した写真を載せることを特徴とする請求項1記載の粘着トラップ。
【請求項3】
捕獲される害虫であって、前記ルーペで見る拡大した大きさの写真に並んで、更に拡大した写真を載せることを特徴とする請求項1記載の粘着トラップ。
【請求項4】
害虫として、一種類のみならず、複数種が載せられることを特徴とする請求項1,2又は3記載の粘着トラップ。


【図1】
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【公開番号】特開2009−11286(P2009−11286A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179593(P2007−179593)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(505094984)株式会社アグリ総研 (7)
【出願人】(507212735)株式会社アグリセクト (4)
【Fターム(参考)】