説明

粘着剤組成物及び粘着部材

【課題】 高接着力タイプ又は再剥離タイプに調製可能な耐湿特性を有する粘着剤組成物及び粘着部材を提供すること。
【解決手段】 粘着剤組成物は、下記の一般式(A)で表されるアクリル系単量体60〜98重量%と、一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体40〜2重量%とからなるアクリル系共重合体を有効成分とすることを特徴とする粘着剤組成物。

一般式(A):CH=C(R)COOR(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数が1〜18の直鎖もしくは分岐のアルキル基である)
一般式(B):
【化4】


(式中、R11、R12は、それぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はハロゲンである)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高接着力タイプ又は再剥離タイプに調製可能な耐湿特性を有する粘着剤組成物及びその粘着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
作業現場での塗布乾燥工程等を要しない簡便性や良好な作業衛生性等の利点に着目されて粘着剤組成物及びその粘着部材は、種々の分野で多種多様な用途に使用され、それに応じて各種のものが開発提案されている。その中でもアクリル系ポリマーを主成分とするアクリル系粘着剤は、耐光性、耐候性、耐油性、耐老化性、耐熱性等の接着特性に優れることから、プラスチックや紙等からなる支持基材に付設して広範な用途に使用されている。
【0003】
しかし、一般に粘着剤は、液状タイプの接着剤に比べて接着力や凝集力、特に高温での凝集力等の接着特性に乏しいという難点があり、その克服が久しい課題となっている。極性基含有の単量体を共重合させたアクリル系ポリマーにして凝集力等の改善を図ることもなされているが、粘着剤の耐湿特性の低下を伴うという問題があった。粘着剤が耐湿特性に乏しいと多湿環境下で接着力が経時的に低下し、屋外等での使用における信頼性が乏しくなる。そのため、耐光性、耐候性等に優れるアクリル系粘着剤の利点が充分に活かされないこととなる。
【0004】
一方、粘着剤の主要な用途の一つに表面保護等の目的で仮着しておき、必要に応じ再剥離できることが要求されるものがある。例えば、金属板、化粧板、ガラス板、プラスチック板等の種々の物品からなる被着体に表面保護材等として仮着し、その表面の損傷、塵埃の付着、酸化変質等を防止するが、その目的を終えて被着体を実用に供する際にはその表面保護材等が剥離されるという、再剥離が必須の用途がある。
【0005】
かかる再剥離が必須(再剥離タイプ)の粘着部材における粘着剤にあっては、仮着時に剥がれ等を生じることのない充分な接着力を保持しつつ、再剥離時には糊成分等の汚染物質が被着体に残存しないで容易に再剥離できることが剥離後の洗浄工程の省略等の点より強く望まれる。
【0006】
しかし従来のアクリル系粘着剤にあっては、被着体に対する接着力が経時的に上昇して再剥離が困難となったり、剥離後に汚染物質を残存させるなどの問題が発生しやすいという難点があった。この場合にも、前述の如くアクリル系ポリマーに極性基含有の単量体を共重合させて改善を図るという提案もあるが、同様に粘着剤の耐湿特性の低下を伴うという問題が発生した。
【0007】
【特許文献1】特開平8−151559号公報
【特許文献2】特開平9−235537号公報
【特許文献3】特開2001−164219号公報
【特許文献4】特開2003−105283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐湿特性の低下を伴うことなく、金属やプラスチック等の各種の被着体、取り分けアクリル、カーボネート、ポリエステル等のプラスチック面への接着力又は再剥離性能を向上させたアクリル系の粘着剤組成物と粘着部材の提供を課題とする。また、本発明の粘着剤組成物によれば、高い接着力タイプ又は再剥離タイプの粘着部材を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意、実験、検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の粘着剤組成物は、下記の一般式(A)で表されるアクリル系単量体60〜98重量%と、一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体40〜2重量%とを用いてなるアクリル系共重合体を有効成分とすることを特徴とする。

一般式(A):CH=C(R)COOR(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数が1〜18の直鎖もしくは分岐のアルキル基である)
【0010】
一般式(B):
【化2】

(式中、R11、R12は、それぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はハロゲンである)
【0011】
ここで、前記アクリル系共重合体は、前記アクリル系単量体と前記カーボネート基含有単量体と共重合しうる他種の単量体をさらに用いてなることができる。
【0012】
本発明において、前記共重合しうる他種の単量体の使用量は、アクリル系共重合体を形成する各共重合成分の合計重量中30重量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記アクリル系単量体とカーボネート基含有単量体と共重合しうる他種の単量体は、カルボキシル基含有単量体、水酸基含有単量体、酸無水物系単量体、スルホン酸基含有単量体、リン酸基含有単量体、アミド系単量体、アミノ基含有単量体、酢酸ビニルもしくはスチレン又はこれらの誘導体、ビニル系単量体、及び、前記一般式(A)で表されるアクリル系単量体以外のアクリル酸エステル系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1つであることができる。
【0014】
本発明の粘着剤層は、上記いずれかの粘着剤組成物を用いてなることを特徴とする。
ここで、この粘着剤層は20℃の酢酸エチルに対する可溶解分率が50%未満であることができる。
【0015】
本発明の粘着部材は、上記いずれかの粘着剤層を、支持基材上の少なくとも一方の面に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カーボネート基含有の単量体を共重合体成分とするアクリル系共重合体を用いたので、耐湿特性に優れる粘着剤組成物を得ることができる。また、アクリル系共重合体の架橋状態を調節することにより、被着体に対して優れた接着力を示す高接着力タイプの粘着剤組成物、または、被着体に対する接着力の経時変化が小さくて容易に再剥離できる再剥離タイプの粘着剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の粘着剤組成物は、少なくとも、一般式(A):CH=C(R)COOR(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数が1〜18の直鎖もしくは分岐のアルキル基である)で表されるアクリル系単量体と、下記一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体とを用いてなるアクリル系共重合体を含有する。
【0018】
一般式(B):
【化3】

(式中、R11、R12は、それぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はハロゲンである)
【0019】
一般式(A)で表されるアクリル系単量体は、式中のRが炭素数1以上、18以下のアルキル基である。式中のRの炭素数が18を超えると、形成される粘着剤層の接着力が乏しくなる。一般式(A)で表されるアクリル系単量体としては、例えば、式中のRがエチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、イソステアリル基の如き炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等が挙げられる。
【0020】
本発明において、一般式(A)で表されるアクリル系単量体は、一種類でも2種類以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本発明に用いられる一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体は、具体的には、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、1,2−ジメチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、1,2−ジエチルビニレンカーボネート、1−エチル−2−メチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、イソプロピルビニレンカーボネート、ブチルビニレンカーボネート、t−ブチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、クロロビニレンカーボネート、ブロロビニレンカーボネート等が挙げられる。この中では、重合性、耐水性の点からビニレンカーボネートを用いることが好ましい。
【0022】
本発明に用いられるアクリル系共重合体は、一般式(A)で表されるアクリル系単量体60〜98重量%、好ましくは70〜97重量%と、一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体40〜2重量%、好ましくは30〜3重量%とを合計100重量%となるように使用することが好ましい。
【0023】
一般式(A)で表されるアクリル系単量体の共重合割合が60重量%未満ではガラス転移温度(Tg)が高くなるので粘着剤としての濡れ性が低下し易く、タック(粘着性)に乏しくなる。一方、アクリル系単量体の共重合割合が98重量%を超えると、一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体の共重合割合が少なくなりすぎるので接着特性と耐湿性とを両立させにくくなる。また、一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体の含有量が40重量%を超えると、ガラス転移温度(Tg)を低く保持することが困難になるのでタックが乏しくなり易い。
【0024】
本発明に用いられるアクリル系共重合体は、一般式(A)で表されるアクリル系単量体及び一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体と共に、これらと共重合しうる(C)成分を用いて得ることができる。但し、(C)成分の使用量は、アクリル系共重合体を形成する各共重合成分の合計重量中、例えばアクリル系単量体とカーボネート基含有単量体と(C)成分との合計重量中、30重量%以下であることが好ましい。(C)成分の共重合割合が30重量%を超えると、アクリル系ポリマーの耐光性、耐候性等の性能が発現しにくくなったり、得られる粘着剤層がバランスのとれた粘着特性を発現しにくくなる場合がある。
【0025】
本発明において(C)成分としては、一般式(A)で表されるアクリル系単量体及び一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体と共重合しうる単量体であれば用いることができるが、例えば、(C)成分として、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸の如きカルボキシル基含有単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸の如き酸無水物系単量体等が挙げられる。
【0026】
また、(C)成分としては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の如きスルホン酸基含有単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェートの如きリン酸基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミドの如きアミド系単量体、ジアミノエチル(メタ)アクリレートの如きアミノ基含有単量体、酢酸ビニルもしくはスチレン又はこれらの誘導体、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルカルボン酸アミド類の如きビニル系単量体等も挙げられる。
【0027】
更にまた、(C)成分としては一般式(A)で表されるアクリル系単量体以外の(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルの如き水酸基含有単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルやテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)フッ化(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートの如き一般式(A)で表されるアクリル系単量体以外の(メタ)アクリル酸エステル系単量体等が挙げられる。
【0028】
アクリル系共重合体は分子間架橋剤を用いて架橋処理されてもよく、この場合には、分子間架橋剤と反応しうる官能基を有する単量体が(C)成分として好ましく用いられる。このような分子間架橋剤と反応しうる官能基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸等で代表されるカルボキシル基含有単量体、酸無水物系単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルで代表される水酸基含有単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0029】
ここで分子間架橋剤としては公知の分子間架橋剤のいずれをも用いることができ、例えば、多官能性イソシアネート系化合物、多官能性エポキシ系化合物、多官能性メラミン系化合物、金属塩等で代表される多官能性化合物等を適宜用いることができる。
【0030】
本発明においては、アクリル系共重合体は分子間架橋剤を用いずに得ることもできる。例えば、一般式(A)で表されるアクリル系単量体、一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体、及び、(C)成分とを、電子線等の放射線により架橋処理して共重合体を形成してもよい。この場合には、自己架橋型の(C)成分を用いることが好ましく、例えば、(C)成分として2個以上の結合手を有する単量体等が好ましく用いられる。
【0031】
自己架橋型の(C)成分の具体例としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
また、グリシジル(メタ)アクリレートの如きエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドの如きアクリルアミド系化合物、(メタ)アクリル酸プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸プロピルジメトキシシラン、(メタ)アクリル酸プロピルトリエトキシシランの如き多官能性アルコキシシラン、ジビニルベンゼン等も自己架橋型の(C)成分として挙げられる。
【0033】
本発明に用いられるアクリル系共重合体は、例えば、一般式(A)で表されるアクリル系単量体及び一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体と、必要に応じて(C)成分やその他の添加剤等との混合物を用い、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の方法を適宜に用いて共重合させることにより形成することができる。例えば、溶媒または水の存在下で、熱分解による開始剤を用いてラジカルを発生させるか、紫外線照射によりラジカルを発生させる開始剤を用いてラジカルを発生させることにより重合を行うことができる。なお、塊状重合法を用いる場合には、紫外線照射による重合方式が好ましく適用される。
【0034】
重合処理に際しては、適用される重合法に応じた熱重合開始剤、光重合開始剤等を適宜、必要に応じて用いる。その使用量は、適宜決定することができるが、一般的には共重合させる単量体の総重量に対して0.001〜5重量%の範囲内である。
【0035】
本発明に用いられる熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドの如き有機過酸化物等が挙げられる。
【0036】
また、用いられる熱重合開始剤として、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)の如きアゾ系化合物等も挙げられる。
【0037】
本発明に用いられる光重合開始剤としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α、α'−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2'−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1の如きケトン系若しくはアセトフェノン系化合物、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾインエーテル系化合物等が挙げられる。
【0038】
また、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタールの如きケタール系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンの如きチオキサンソン系化合物、その他、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート等の化合物等も挙げられる。
【0039】
本発明の粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層は、分子間架橋剤を用いる分子間架橋剤方式、自己架橋型単量体を用いる架橋方式、あるいはこれらを併用した複合架橋方式等を適宜用いて、必要に応じて架橋構造とすることができる。本発明の粘着剤組成物を架橋処理することで、粘着剤層の接着特性を調節したり、粘着部材を構成する支持基材への投錨性、密着性等を改良することができる。
【0040】
ここで分子間架橋剤を用いる分子間架橋剤方式とは、アクリル系共重合体に分子間架橋剤を配合して加熱処理、あるいは、紫外線、電子線等の放射線を照射する放射線処理によって架橋状態の粘着剤層を形成するものである。この場合分子間架橋剤の配合量は、分子間架橋剤と反応するアクリル系共重合体中の官能基の種類や含有量によって、アクリル系共重合体の分子量や分子量分布等によって、あるいは、再剥離性能が要求されるか否か等によって、適宜、決定されることが好ましい。一般には、アクリル系共重合体100重量部当たり、分子間架橋剤を0.001〜20重量部用いることが好ましく、更に好ましくは0.01〜10重量部であり、特に好ましくは0.1〜5重量部である。また、再剥離性能が要求される場合には、通例、分子間架橋剤を0.05〜15重量部用いることが好ましい。
【0041】
形成される粘着剤層は架橋処理により接着特性を調節することができる。例えば、20℃の酢酸エチルに対するアクリル系共重合体の可溶解分率が50%未満、好ましくは40%未満となるように架橋処理すれば、再剥離が容易な粘着剤層とすることができる。アクリル系共重合体の可溶解分率が50%以上では、被着体に対する接着力の経時上昇が大きな粘着剤層となり易い。
【0042】
被着体に対する接着力は、アクリル系共重合体の可溶解分率が高くなるほど大きくすることができる。従って、再剥離型の粘着剤層では、その可溶解分率を50%より順次低下させることによって被着体に対する接着力を低下させることができる。このように可溶解分率を調節することにより再剥離型の粘着剤層に要求される接着力の経時上昇を抑制しつつ、被着体に対する接着力を適当な範囲に調節することができる。被着体に対する大きな接着力が要求されない、再剥離型の粘着剤層における通例の用途には、当該可溶解分率を10%未満に調節したものが一般的に好ましく用いられる。
【0043】
ちなみに、アクリル酸2−エチルヘキシル78重量部、ビニレンカーボネート20重量部、及び、アクリル酸2重量部を用いて調製したアクリル系共重合体100重量部を、4官能性エポキシ系架橋剤3重量部で架橋処理することにより、20℃の酢酸エチルに対するアクリル系共重合体の可溶解分率を8.5%に調節することができる。
【0044】
なお、本発明において可溶解分率とは、アクリル系共重合体1重量部を20℃の酢酸エチル100重量部に168時間浸漬した後、その液を200メッシュのポリアミド製等の濾過布を介して濾過し、その場合に濾過できなかったアクリル系共重合体(不溶解分)の乾燥重量を測定してアクリル系共重合体の重量から差し引き、この値を百分率で示したものである。
【0045】
本発明の粘着剤組成物は、例えばアクリル系共重合体を適当な有機溶剤に溶解させたものや溶液重合液等に基づく溶液タイプ、乳化重合液や懸濁重合液等に基づくエマルジョン若しくは分散液タイプ、などの適宜な形態に調製することができる。その調製に際しては必要に応じて、例えば天然若しくは合成の樹脂類、ガラス繊維もしくはガラスビーズ、金属粉またはその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料や着色剤等の添加剤、酸化防止剤等の、通常、粘着剤に配合されることのある適宜な配合剤を加えることができる。
【0046】
また、必要に応じて、粘着剤組成物には本発明の効果を阻害しない範囲内で、粘着付与剤、老化防止剤等を添加して粘着特性を調整することができる。
【0047】
本発明の粘着部材は、支持基材の片面又は両面に、本発明の粘着剤組成物を用いてなる粘着剤層を設けたものであり、粘着剤組成物としては上記適宜な形態に調製されたものを用いることができる。
【0048】
粘着部材を構成する支持基材としては、プラスチックフィルム、紙、織布、不織布、発泡体、金属箔等からなる適宜な薄葉体等が一般に用いられる。支持基材の片表面又は両表面には、剥離剤等による剥離性の付与処理、コロナ放電処理、下塗り剤等による接着力強化処理等の適宜な処理を施すことができる。ポリエチレン、ポリプロピレンの如き非極性物質からなる支持基材に対しては、接着力強化処理を施すことが、粘着剤層が被着体に残存する糊残りを予防するうえで有効であり、再剥離用途の場合などに好ましく適用することができる。
【0049】
支持基材の厚さは、特に限定されるものではなく、粘着部材が適用される用途等によって適宜決定されるこことが好ましいが、例えば、0.025mm〜10mmの範囲であることが好ましい。
【0050】
支持基材上への粘着剤層の付設は、流延方式や塗布方式などの適宜な方式で粘着剤組成物を支持基材上に塗布し、それに乾燥処理や架橋処理等の必要な処理を施して粘着剤層とする方式、あるいは、セパレータ、例えば薄葉体を剥離剤で表面処理したもの、ポリプロピレン、ポリエステルの如き弱接着性のフィルム等の上に上記に準じて形成した粘着剤層を支持基材上に転着する方式等の適宜な方式で行うことができる。
【0051】
粘着剤層の厚さは、高接着力タイプあるいは再剥離タイプ等の用途に応じて適宜決定してよい。一般には、前者用には10〜200μm、後者用には1〜20μmの厚さとされる。なお、粘着剤層は、基材全面に設けられていてもよいし、点状等の分布状態、あるいは、直線状や波線状の如く条状として部分的に設けられていてもよい。例えば再剥離用途の場合には、支持基材上に部分的に設けることが好ましい。
【0052】
本発明の粘着部材は、粘着剤層の表面の汚染を防ぐために、使用時まで粘着剤層の表面を剥離ライナーにて被覆させておくことが好ましい。この剥離ライナーは、一般的に粘着テープ等の粘着部材に用いられるものを使用することができる。具体的には、上質紙、グラシン紙、パーチメント紙等の表面に、シリコーン等の剥離性能を有する剥離剤をコーティングしたものや、上質紙にレジンをアンカーコートしたもの又はポリエチレンをラミネートしたもの等の表面にシリコーン等の剥離性能を有する剥離剤をコーティングしたものを使用することができる。
【0053】
本発明の粘着剤組成物は、カーボネート基含有の単量体を共重合体成分とするアクリル系共重合体を含有するので、耐湿特性を低下させずに金属やプラスチック等の各種の被着体、取り分けアクリル、カーボネート、ポリエステル等のプラスチック面への接着力又は再剥離性能を向上させることができる。したがって、本発明の粘着剤組成物を用いれば、高接着力タイプ又は再剥離型タイプの粘着剤層を有する粘着部材を得ることができる。その理由は不明であるが、カーボネート基含有単量体の優れた耐水性と、当該単量体の適度な極性により、得られる粘着剤層に所望の適度な凝集力を発生させることができるものと考えられる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、以下の実施例において、「部」は特にことわりがない限り「重量部」を意味する。
【0055】
各実施例および各比較例における測定および評価は以下の方法に基づいて行った。
《測定方法及び評価方法》
(1)可溶解分率
粘着剤層からサンプルを約1g採取し、これを秤量してその重量(W1)を求めた。次いで、このサンプルを23℃の酢酸エチル100g中に168時間浸漬し、可溶解分を抽出した。不溶解分(残渣)を200メッシュのポリアミド製濾過布にて濾別し、乾燥させ、秤量して重量(W2)を求めた。可溶解分率を下記式にて算出した。

可溶解分率(%)={(W1−W2)×100}/W1
【0056】
(2)接着力−I
粘着部材を幅20mmに切断し、被着板として厚さ2mmのアクリル板に1kgのゴムローラーを一往復させて圧着した後、23℃で20分間保存してその剥離力を測定し、初期接着力を求めた。ただし、接着力は、23℃条件下、剥離速度50mm/分で、180度ピールを行って剥離力を測定したものであり、5点の測定値の平均値である。
【0057】
(3)接着力−II
粘着部材を幅20mmに切断し、被着板として厚さ2mmのステンレス板(SUS 304 BA)に1kgのゴムローラーを一往復させて圧着した後、23℃で20分間保存してその剥離力を測定し、初期接着力を求めた。次いで、50℃で5日間保存した後23℃条件下で雰囲気温度まで冷却して保存後の接着力を求め、また、初期接着力に対する保存後の接着力の割合も求めた。ただし、各接着力は、23℃条件下、剥離速度50mm/分で、180度ピールを行って剥離力を測定したものであり、5点の測定値の平均値である。
【0058】
(4)耐水性
接着力−Iの測定において初期接着力を求めた後、その被着板に貼着している粘着部材を、50℃で5日間保存した。その後、23℃条件下で雰囲気温度まで冷却して保存したものを、23℃の蒸留水中に4日間浸漬してから取り出し、濡れた状態でその剥離に要する力を測定した。ただし、接着力は、23℃条件下、剥離速度50mm/分で、180度ピールを行ったものであり、5点の測定値の平均値である。
【0059】
(実施例1)
温度計、還流冷却管、窒素導入口及び攪拌機を備えた容器に、酢酸エチル150部を入れ、それにアクリル酸ブチル78部、ビニレンカーボネート20部、アクリル酸2部、及び、アゾビスイソブチロニロリル0.5部を加えた。系中を窒素置換し、攪拌しつつ、60℃で8時間、次いで80℃で2時間重合させてアクリル系共重合体溶液を得た(重合率99%)。
【0060】
次に、得られたアクリル系共重合体溶液に、アクリル系共重合体100部当たり3部の日本ポリウレタン工業株式会社製の「コロネートL」(トリメチロールプロパン1モルにトリレンジイソシアネート3モル付加物)を加えて粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を厚さ25μmのポリエステルフィルム上に塗布し、80℃で20分間乾燥させて厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着部材を形成した。この粘着部材を更に40℃で7日間硬化させて、評価用粘着部材A1を作成した。
得られた評価用粘着部材A1について、上記測定方法および評価方法に基づいて、可溶解分率及び接着力−Iの測定と、耐水性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0061】
(実施例2)
実施例1において、アクリル酸ブチルの使用量を88部、ビニレンカーボネートの使用量を10部、アクリル酸の使用量を2部とした以外は実施例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製し、次いで、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例1と同様にして厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着部材と評価用の粘着部材A2を得た。
得られた評価用粘着部材A2について、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0062】
(実施例3)
実施例1において、アクリル酸ブチルの使用量を93部、ビニレンカーボネートの使用量を5部、アクリル酸の使用量を2部とした以外は実施例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製し、次いで、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例1と同様にして厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着部材と評価用の粘着部材A3を得た。
得られた評価用粘着部材A3について、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
(実施例4)
実施例1において、アクリル酸ブチル78部の替わりにアクリル酸2−エチルヘキシルを78部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製した。
次に、得られたアクリル系共重合溶液に、アクリル系共重合体100部当たり3部の日本ポリウレタン工業株式会社製の「コロネートL」(トリメチロールプロパン1モルにトリレンジイソシアネート3モル付加物)を加えて粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を厚さ25μmのポリエステルフィルム上に塗布し80℃で20分間乾燥させて、厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着部材を形成し、この粘着部材を評価用粘着部材A4とした。
得られた評価用粘着部材A4については実施例1と同様の測定および評価を行い、その結果を表1に示した。
【0064】
(比較例1)
実施例1において、ビニレンカーボネート20部の替わりにN−ビニルピロリドンを20部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製した。次いで、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例1と同様にして厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着部材と評価用の粘着部材C1を得た。
得られた評価用粘着部材C1について、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
実施例1において、ビニレンカーボネートを用いずに、アクリル酸ブチルの使用量を78部、アクリル酸の使用量を22部とした以外は実施例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製した。次いで、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例1と同様にして厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着部材と評価用の粘着部材C2を得た。
得られた評価用粘着部材C2について、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0066】
(比較例3)
実施例1において、ビニレンカーボネートを用いずに、アクリル酸ブチルの使用量を98部、アクリル酸の使用量を2部とした以外は実施例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製した。次いで、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例1と同様にして厚さ50μmの粘着剤層を有する粘着部材と評価用の粘着部材C3を得た。
得られた評価用粘着部材C3について、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0067】
(実施例5)
実施例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液を得た。次に、得られたアクリル系共重合体溶液に、アクリル系共重合体100部当たり0.5部の三菱瓦斯化学株式会社製の「テトラッドC」(4官能性エポキシ系架橋剤)を加えて粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を厚さ25μmのポリエステルフィルム上に塗布し、80℃で20分間乾燥させて厚さ5μmの粘着剤層を有する粘着部材を形成した。この粘着部材を更に40℃で7日間硬化させて、評価用粘着部材B1を作成した。
得られた評価用粘着部材B1について、上記測定方法および評価方法に基づいて、可溶解分率及び接着力−IIの測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0068】
(実施例6)
アクリル酸ブチルの使用量を88部、ビニレンカーボネートの使用量を10部、アクリル酸の使用量を2部とした以外は実施例1と同様にして、実施例2と同様のアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製した。次いで、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例5と同様にして厚さ5μmの粘着剤層を有する粘着部材と評価用の粘着部材B2を得た。
得られた評価用粘着部材B2について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0069】
(実施例7)
アクリル酸ブチルの使用量を93部、ビニレンカーボネートの使用量を5部、アクリル酸の使用量を2部とした以外は実施例1と同様にして、実施例3と同様のアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製した。次いで、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例5と同様にして厚さ5μmの粘着剤層を有する粘着部材と評価用の粘着部材B3を得た。
得られた評価用粘着部材B3について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0070】
(実施例8)
実施例1において、アクリル酸ブチル78部の替わりにアクリル酸2−エチルヘキシルを78部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製した。
次に、得られたアクリル系共重合溶液に、アクリル系共重合体100部当たり10部の日本ポリウレタン工業株式会社製の「コロネートL」(トリメチロールプロパン1モルにトリレンジイソシアネート3モル付加物)を加えて粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を用いて、実施例5と同様にして厚さ5μmの粘着剤層を有する粘着部材を形成し、この粘着部材を評価用粘着部材B4とした。
得られた評価用粘着部材B4について、実施例5と同様の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0071】
(比較例4)
ビニレンカーボネート20部の替わりにN−ビニルピロリドンを20部用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1と同様のアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製した。次いで、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例5と同様にして厚さ5μmの粘着剤層を有する粘着部材と評価用の粘着部材D1を得た。
得られた評価用粘着部材D1について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0072】
(比較例5)
ビニレンカーボネートを用いずに、アクリル酸ブチルの使用量を78部、アクリル酸の使用量を22部とした以外は実施例1と同様にして、比較例2と同様のアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製した。次いで、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例5と同様にして厚さ5μmの粘着剤層を有する粘着部材と評価用の粘着部材D2を得た。
得られた評価用粘着部材D2について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0073】
(比較例6)
ビニレンカーボネートを用いずに、アクリル酸ブチルの使用量を98部、アクリル酸の使用量を2部とした以外は実施例1と同様にして、比較例3と同様のアクリル系共重合体溶液(重合率99%)を作製した。次いで、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例5と同様にして厚さ5μmの粘着剤層を有する粘着部材と評価用の粘着部材D3を得た。
得られた評価用粘着部材D3について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
表1から明らかなように、実施例1〜4の評価用粘着部材A1〜A4は、初期接着力が600g/20mm以上で、しかも耐水性の評価から水浸漬後の接着力の低下が少ないものであることが分かった。一方、比較例1及び2の評価用粘着部材C1、C2は耐水性の評価において水浸漬後の接着力が大幅に低下するものであることが分かり、比較例3の評価用粘着部材C3は初期接着力が500g/20mm未満であることが分かった。高接着力が要求される高接着力タイプの粘着部材としては、初期接着力が500g/20mm以上、好ましくは600g/20mm以上であり、しかも水浸漬後の接着力の低下が少ないことが望ましい。本発明の評価用粘着部材A1〜A4はこれらの条件を満たすものであり、高接着力タイプの粘着部材として良好な粘着特性を発揮することができるが、比較用の評価用粘着部材C1〜C3はこれらの条件の全てを同時に満たすことはできず、高接着力タイプの粘着部材として適したものではない。
【0077】
また、表2から明らかなように、実施例5〜8の評価用粘着部材B1〜B4は、可溶解分率が50%未満であり、初期接着力が500g/20mm以上、保存後の接着力の上昇率が1.5倍以下であることが分かった。一方、比較例4及び5の評価用粘着部材D1、D2は保存後の接着力の上昇率が1.5倍より大きく被着体に対する接着力の経時上昇が大きなものであり、比較例6の評価用粘着部材D3は初期接着力が500g/20mm未満のものであることが分かった。再剥離が要求される再剥離タイプの粘着部材は、可溶解分率が50%未満であり、初期接着力が500g/20mm以上、好ましくは600g/20mm以上、しかも保存後の接着力の上昇率が初期接着力値の1.5倍以下、好ましくは1.4倍以下であることが望ましい。評価用粘着部材B1〜B4は、これらの条件を全て満たすものであり、再剥離タイプの粘着部材としての良好な粘着特性を発揮することができる。一方、評価用粘着部材D1〜D3は、これらの条件の全てを同時に満たすことはできず、再剥離タイプの粘着部材として適したものではない。
【0078】
以上の結果から、本発明の粘着剤組成物を用いれば、高接着タイプに適した特性を有する粘着剤層または再剥離タイプに適した特性を有する粘着剤層を実現することができることが分かった。また、これらの粘着剤層を有する粘着部材は、高接着力タイプの粘着部材又は再剥離タイプの粘着部材として適したものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の粘着剤組成物は、耐湿特性を低下させずに接着力を向上させるか、あるいは、再剥離性を向上させることができる。そのため、高接着力を要求される粘着部材にも、再剥離性が要求される粘着部材にも適用することができ、広い分野での応用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(A)で表されるアクリル系単量体60〜98重量%と、一般式(B)で表されるカーボネート基含有単量体40〜2重量%とを用いてなるアクリル系共重合体を有効成分とすることを特徴とする粘着剤組成物。

一般式(A):CH=C(R)COOR(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数が1〜18の直鎖もしくは分岐のアルキル基である)
一般式(B):
【化1】

(式中、R11、R12は、それぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はハロゲンである)
【請求項2】
前記アクリル系共重合体が、前記アクリル系単量体と前記カーボネート基含有単量体と共重合しうる他種の単量体をさらに用いてなることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記共重合しうる他種の単量体の使用量が、アクリル系共重合体を形成する各共重合成分の合計重量中30重量%以下であることを特徴とする請求項2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリル系単量体とカーボネート基含有単量体と共重合しうる他種の単量体が、カルボキシル基含有単量体、水酸基含有単量体、酸無水物系単量体、スルホン酸基含有単量体、リン酸基含有単量体、アミド系単量体、アミノ基含有単量体、酢酸ビニルもしくはスチレン又はこれらの誘導体、ビニル系単量体、及び、前記一般式(A)で表されるアクリル系単量体以外のアクリル酸エステル系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項2又は3記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を用いてなる粘着剤層。
【請求項6】
20℃の酢酸エチルに対する可溶解分率が50%未満であることを特徴とする請求項5記載の粘着剤層。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の粘着剤層を、支持基材上の少なくとも一方の面に有することを特徴とする粘着部材。


【公開番号】特開2006−241388(P2006−241388A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61896(P2005−61896)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】