説明

粘着式微小部品保持器具

【課題】電子部品等の微小部品を確実に保持することができて、かつ、取り外し作業は簡単に行うことができる粘着式微小部品保持器具を提供すること。
【解決手段】電子部品等の微小部材Pを保持可能な器具であって、粘着性および伸縮性を有するゴム基材11の内部に固形粒体12を混合してシート状に形成したシート材1と;このシート材1を延伸可能な可動機構とを具備して構成して、前記シート材1が収縮状態の時には、当該シート材1の表面に前記微小部材Pを付着保持可能にする一方、前記可動機構によりシート材1が延伸された時には、当該シート材1の厚みが減少されると共に、内封された固形粒体12がシート表面に隆起することによって、微小部材Pとの接触面積が減少して、当該シート材1の表面から剥離容易にするという技術的手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小部品の取り扱いに用いる器具の改良、更に詳しくは、電子部品等の微小部品を確実に保持することができて、かつ、取り外し作業は簡単に行うことができる粘着式微小部品保持器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品等の微小部品を取り扱うにあっては、この電子部品が微小でデリケートな性質であることから、専用のケースに収容して運搬されることが多く、このケースの内部に設けられた粘着性のシート材の表面に、この電子部品を貼着することにより保持することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、かかる運搬ケースなどに用いられていた粘着性のシート材は、微小部品を安定的に保持しておくために、ある程度の粘着強度が必要であった。
【0004】
しかしながら、粘着強度が大きいシート材は、必要以上に強く付着してしまうおそれがあり、逆に、微小部品を取り外すピックアップ作業がし難くなり、作業効率が低下してしまうというおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−325633号公報(第4−5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の微小部品の取り扱いに用いる器具に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、電子部品等の微小部品を確実に保持することができて、かつ、取り外し作業は簡単に行うことができる粘着式微小部品保持器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0008】
即ち、本発明は、電子部品等の微小部材Pを保持可能な器具であって、
粘着性および伸縮性を有するゴム基材11の内部に固形粒体12を混合してシート状に形成したシート材1と;このシート材1を延伸可能な可動機構2とを具備して構成して、
前記シート材1が収縮状態の時には、当該シート材1の表面に前記微小部材Pを付着保持可能にする一方、
前記可動機構2によりシート材1が延伸された時には、当該シート材1の厚みが減少されると共に、内封された固形粒体12がシート表面に隆起することによって、微小部材Pとの接触面積が減少して、当該シート材1の表面から剥離容易にするという技術的手段を採用したことによって、粘着式微小部材保持器具を完成させた。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、可動機構2を、シート材1の少なくとも一部を押圧可能な棒状の付勢バーを有し、この付勢バーを移動させることによって当該シート材1を延伸可能にするという技術的手段を採用した。
【0010】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、可動機構2を、シート材1の両縁端部にそれぞれ挟着したクリップバーを有し、かつ、これらクリップバーの少なくとも一方を移動させることによって当該シート材1を延伸可能にするという技術的手段を採用した。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、可動機構2に操作レバー部材21を配設するという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、可動機構2の操作レバー部材21を、テコ式に移動可能なカムから成るようにし、シート材1を延伸して、かつ、延伸状態を維持可能にするという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シート材1のゴム基材11をシリコーンゴムにするという技術的手段を採用した。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シート材1の固形粒体12をガラス粒にするという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0015】
本発明にあっては、電子部品等の微小部材を保持可能な器具であって、粘着性および伸縮性を有するゴム基材の内部に固形粒体を混合してシート状に形成したシート材と;このシート材を延伸可能な可動機構とを具備して構成して、
前記シート材が収縮状態の時には、当該シート材の表面に前記微小部材を付着保持可能である一方、
前記可動機構によりシート材が延伸された時には、当該シート材の厚みが減少されると共に、内封された固形粒体がシート表面に隆起することによって、微小部材との接触面積が減少して、当該シート材の表面から剥離容易にすることができる。
【0016】
したがって、本発明の粘着式微小部材保持器具によれば、電子部品等の微小部品を確実に保持することができて、かつ、取り外し作業は簡単に行うことができることから、実用的利用価値は頗る高いものがあると云える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の保持器具を表わす全体斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の保持器具の構造を表わす下面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の保持器具の構造を表わす断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態のシート材の収縮状態を表わす拡大概略図である。
【図5】本発明の第1実施形態の保持器具の構造を表わす下面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の保持器具の構造を表わす断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態のシート材の延伸状態を表わす拡大概略図である。
【図8】本発明の第1実施形態のシート材の延伸時を表わす拡大写真である。
【図9】本発明の第2実施形態の保持器具を表わす全体斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態の保持器具の構造を表わす上面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の保持器具の構造を表わす断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0019】
『第1実施形態』
本発明の第1実施形態を図1から図8に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものはシート材であり、このシート材1は、粘着性および伸縮性を有するゴム基材11の内部に固形粒体12を混合してシート状に形成されている。
【0020】
本実施形態では、シート材1のゴム基材11として、熱可塑性エラストマーなどのゴム系粘着性樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂などのタック性材料を採用することができ、本実施形態では、シリコーンゴムを採用する(ゴム硬度30程度)。
【0021】
また、本実施形態では、シート材1の固形粒体12をガラス粒にすることができる。具体的には、セラミック系、金属系(スチール、亜鉛など)、ガラス系などを採用することができると共に、平均粒径が0.105〜0.125mm程度のものが好ましい。そして、本実施形態では、前記ゴム基材11と固形粒体12との混合比率を、100:60(重量部)にする。
【0022】
また、符号2で指示するものは可動機構であり、この可動機構2は、前記シート材1を延伸可能な機構である。本実施形態では、この可動機構2として、シート材1の少なくとも一部を押圧可能な棒状の付勢バーを有しており、この付勢バーを移動させることによって当該シート材1を延伸することができる。
【0023】
本実施形態では、可動機構2に操作レバー部材21を配設するとともに、この操作レバー部材21を、テコ式に移動可能なカムから構成する。具体的には、手前側にレバーを配設する一方、奥側に扇状のカム部分を形成して、中央部近傍において揺動自在に枢支する(図2および図3参照)。
【0024】
そして、シート材1に何も力を与えない自然な状態では、シート材1は収縮しており、この収縮状態の時には、当該シート材1の表面に前記微小部材P(電子部品)を付着保持することができる(図4参照)。
【0025】
また、この操作レバー部材21を操作(例えば、左右に揺動)して、前記シート材1を支持する付勢バー(ローラー軸部)を移動して距離を拡開することにより、シート材1を延伸するとともに、この操作レバー部材21を一方に留めておくことにより、延伸状態を維持しておくことができる(図5および図6参照)。
【0026】
そして、前記可動機構2によりシート材1が延伸された時には、当該シート材1の厚みが減少されると共に、内封された固形粒体12がシート表面に隆起する(図7参照)。この際、表面の状態は、図8に示す拡大写真のようになっている。
【0027】
このように表面が隆起することによって、シート材1の表面と微小部材Pとの接触面積が減少して、当該シート材1の表面から剥離容易にすることができるのである。
【0028】
『第2実施形態』
次に、本発明の第2実施形態を図9から図11に基づいて説明する。本実施形態では、保持器具を、片手で操作できるペンタイプに構成したものであって、部品のピックアップ作業などに使用するものである(図9参照)。
【0029】
具体的には、図10および図11に示すように、シート材1の両端部がペン先端開口部近傍に止着されており、通常時は、可動機構2がペン躯体の内側に引っ込んでいてるために、シート材1を収縮状態にすることによって粘着状態にし、微小部材を付着させてピックアップすることができる。
【0030】
そして、本実施形態では、可動機構2の操作レバー部材21は、ボタン式に形成されていると共に、3点のヒンジ連結によって支持されており、このボタンを押すことによって、先端部が外側に押し出されて、前記シート材1を延伸させることができる。
【0031】
このように延伸させることによって、シート材1の厚みを減少して、内封された固形粒体12をシート表面に隆起させることによって、微小部材をリリース(剥離)させることができる。
【0032】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、可動機構2は、シート材1の両縁端部に直接クリップバーをそれぞれ挟着し、かつ、これらクリップバーの少なくとも一方を移動させることによってシート材1を延伸するように構成することもできる。
【0033】
また、シート材1のゴム基材11や固形粒体12も、用途に応じて粘度の大きさや粒径の大きさを適宜変更することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0034】
1 シート材
11 ゴム基材
12 固形粒体
2 可動機構
21 操作レバー部材
P 微小部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品等の微小部材(P)を保持可能な器具であって、
粘着性および伸縮性を有するゴム基材(11)の内部に固形粒体(12)を混合してシート状に形成したシート材(1)と;このシート材(1)を延伸可能な可動機構(2)とを具備して構成されており、
前記シート材(1)が収縮状態の時には、当該シート材(1)の表面に前記微小部材(P)を付着保持可能である一方、
前記可動機構(2)によりシート材(1)が延伸された時には、当該シート材(1)の厚みが減少されると共に、内封された固形粒体(12)がシート表面に隆起することによって、微小部材(P)との接触面積が減少して、当該シート材(1)の表面から剥離容易にしたことを特徴とする粘着式微小部材保持器具。
【請求項2】
可動機構(2)が、シート材(1)の少なくとも一部を押圧可能な棒状の付勢バーを有し、この付勢バーを移動させることによって当該シート材(1)を延伸可能であることを特徴とする請求項1記載の粘着式微小部材保持器具。
【請求項3】
可動機構(2)が、シート材(1)の両縁端部にそれぞれ挟着したクリップバーを有し、かつ、これらクリップバーの少なくとも一方を移動させることによって当該シート材(1)を延伸可能であることを特徴とする請求項1記載の粘着式微小部材保持器具。
【請求項4】
可動機構(2)に操作レバー部材(21)が配設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の粘着式微小部材保持器具。
【請求項5】
可動機構(2)の操作レバー部材(21)が、テコ式に移動可能なカムから成り、シート材(1)を延伸して、かつ、延伸状態を維持可能であることを特徴とする請求項4記載の粘着式微小部材保持器具。
【請求項6】
シート材(1)のゴム基材(11)がシリコーンゴムであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の粘着式微小部材保持器具。
【請求項7】
シート材(1)の固形粒体(12)がガラス粒であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の粘着式微小部材保持器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−20750(P2012−20750A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158331(P2010−158331)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000105936)サカセ化学工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】