説明

粘膜の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤

【課題】粘膜の非特異的過敏性亢進やアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏症における非特異的過敏性を抑制することができる、安全性が高い粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤、及びアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤を提供する。
【解決手段】ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含む粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー物質への繰返し暴露等によりアレルギーが重症化及び/又は慢性化等して過敏症となった粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤、及びアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー疾患は、外部からの抗原(アレルゲン)に対し免疫反応が起こる疾患であり、作用機序により大きくI〜IV型に分類されている。代表的なアレルギー疾患であるアレルギー性鼻炎は、鼻粘膜のI型アレルギー疾患であり、花粉、ハウスダスト等の様々なアレルゲンによって引き起こされ、発作型反復性のくしゃみ、水性鼻漏、鼻閉を3主徴とする。
【0003】
アレルギー性鼻炎の症状とは、粘液層に捕捉された抗原が以下のごとく処理される結果最終的に発現する症状である。すなわち、抗原は鼻粘膜に吸収された後、マクロファージなどの抗原提示細胞により処理され、これをT細胞が認識することによりinterleukin-4などのcytokinesを産生し、これらがB細胞に作用してIgE抗体が産生される。IgE抗体は鼻粘膜の肥満細胞膜上に結合して感作状態が成立し、ある期間の後再び侵入した抗原がIgE抗体に結合することによりhistamine、cysteinyl leukotrienes(CysLTs)などの化学伝達物質(chemical mediators)が遊離され、これらが組織を攻撃することによりアレルギーが発症する。
【0004】
近年、アレルギー疾患の患者数が急増し、しかもその症状は慢性化及び重症化している。さらに、このアレルギー疾患に罹患する患者の中には、繰り返し特定のアレルゲンに暴露されることにより、アレルゲンに対する即時性及び遅発性の反応性が増強され、それ以外の抗原や刺激に対しても過剰反応を示す状態(非特異的過敏性亢進)となることが知られている。例えば、アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性においては、鼻粘膜が抗原等の特異的刺激だけでなく、化学的刺激、塵埃、冷気等の非特異的刺激に対しても過剰反応する状態となっており、鼻粘膜の非特異的過敏性亢進が起こっている。重症及び/又は慢性症状に特徴的な鼻過敏性は、histamineなどを点鼻投与することにより評価されており、アレルギー性鼻炎患者は健常者に比して1000倍以上低濃度から反応性を示す。
【0005】
粘膜の非特異的過敏性亢進は、繰り返し暴露される特定のアレルゲンのみならず、他のアレルゲンによっても引き起こされるため、原因(アレルゲン)の除去ができない。このため対処法として、このアレルギー反応を抑制する物質の投与が行われている。粘膜の非特異的過敏性亢進を抑制するために、蜂蜜を有効成分とするアレルギー性過敏症抑制剤(特許文献1)、及び上気道過敏症の予防・治療剤(特許文献2)が考案されている。
【0006】
さらに、アレルギー疾患や、その重症化及び/又は慢性化による粘膜の非特異的過敏性亢進を発症すると、医薬品を長期にわたり服用する必要がある。このため、薬剤の長期服用による副作用の危険性が問題となり、副作用が少なく安全性が高い医薬品又は飲食品の開発が望まれている。
【0007】
I型アレルギー疾患に対しては、乳酸菌が抗アレルギー作用を有することが知られており、副作用が少ない抗アレルギー剤として利用されている。例えば、特許文献3には、ヒトの腸内細菌群より分離された乳酸菌を含有するヒスタミン遊離抑制効果を有するI型アレルギー抑制剤が開示されている。
【0008】
特許文献4には、乳酸菌を有効成分として含む抗アレルギー剤が開示されている。特許文献5及び6には、乳酸菌を含む抗アレルギー用組成物が開示されている。特許文献7には、新規微生物でアレルギーを処置することが開示されている。特許文献8には、新規微生物を含むアレルギー関連疾患を処置する組成物が開示されている。特許文献9には、有胞子乳酸菌を有効成分とする抗アレルギー剤が開示されている。特許文献10には、I型アレルギーの改善に有効なケフィア様炭酸含有ヨーグルトが開示されている。特許文献11には、抗アレルギーの乳酸菌が開示されている。
【0009】
これらの乳酸菌を用いた抗アレルギー剤は、I型アレルギー疾患には有効であるものの、アレルギー疾患の重症化等により発症する粘膜の非特異的過敏性亢進については、治療効果及び安全性が高い薬剤は未だ開発されていない。
【特許文献1】特開2005−179246号公報
【特許文献2】特開2000−290198号公報
【特許文献3】特開2000−095697号公報
【特許文献4】特開2004−26729号公報
【特許文献5】特開2005−137357号公報
【特許文献6】特開2005−139160号公報
【特許文献7】特開2006−109761号公報
【特許文献8】特開2006−288290号公報
【特許文献9】特開2007−55986号公報
【特許文献10】特開2008−182900号公報
【特許文献11】特開2008−169198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、粘膜の非特異的過敏性亢進やアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性における非特異的過敏性を抑制することができる、安全性が高い粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤、及びアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、有用菌であるビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌のアレルギー疾患への作用について鋭意研究を重ねた結果、従来の乳酸菌の抗アレルギー作用によるアレルギー性鼻炎への効果は、くしゃみ、鼻閉及び鼻漏等の症状を抑制するものであるが、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌はこのような作用のみならず、アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏症等のアレルギー性疾患の重症化及び/又は慢性化による非特異的過敏性亢進にも効果を示すこと、さらに、アレルギー性疾患(アレルギー性鼻炎等)と関係しない鼻等の粘膜の非特異的過敏性亢進にも効果を示すことを見出した。乳酸菌がアレルギー性鼻炎に対して抗アレルギー作用を示すことは知られていたが、粘膜の非特異的過敏性の抑制に有効であることの報告は、これまで一切なされておらず新規な知見である。また、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌は、鼻粘膜の非特異的過敏性の抑制に特に有効であることや、中でも、アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻粘膜の非特異的過敏性の抑制に有効であることを見出した。さらに、アレルギー性鼻炎が慢性化した患者では、粘膜の不可逆的肥厚が認められるが、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌は、鼻腔内の好酸球浸潤をも抑制することを見出し、これにより粘膜肥厚の抑制にも有効であることに想到した。
本発明者らは、上記知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(10)に関する。
(1)ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むことを特徴とする粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
(2)粘膜が、鼻粘膜である前記(1)に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
(3)非特異的過敏性亢進が、アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化によるものである前記(2)に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
(4)菌が、乾燥物である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
(5)菌が、シングルミクロンの菌体乾燥物である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
(6)菌が、生菌である前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
(7)菌が、死菌である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
(8)菌が、菌体の処理物である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
(9)ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むことを特徴とするアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤。
【0013】
本発明はまた、以下の抑制方法、使用等に関する。
ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含む組成物を哺乳類に投与する粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の抑制又は治療方法。
ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含む組成物を哺乳類に投与するアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の抑制又は治療方法。
【0014】
粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療のための、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌。
アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療のための、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌。
粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤を製造するための、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の使用。
アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤を製造するための、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の使用。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粘膜の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤、及びアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤は、アレルギー疾患の重症化及び/又は慢性化による粘膜の非特異的過敏性を効果的に予防又は治療することができ、しかも安全性が高いものである。本発明の粘膜の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤はさらに、アレルギー性鼻炎等のアレルギー性疾患に関係しない鼻等の粘膜の非特異的過敏性亢進の予防又は治療にも有効である。本発明で用いるビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌は腸内細菌であり、副作用がほとんどない安全な菌体であり、経口投与によっても粘膜の非特異的過敏性亢進に対する予防及び治療効果を発揮できることから、医薬品とした場合に投与しやすいだけでなく、食品として日常的に摂取することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤、及びアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤(以下、これらを単に本発明の予防又は治療剤ともいう)は、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むものである。
【0017】
本発明における「粘膜」は、下気道粘膜以外の粘膜であり、鼻粘膜、口腔粘膜、眼球粘膜、眼瞼粘膜等の眼粘膜、胃粘膜、頬側粘膜、腸管粘膜等の消化器粘膜等が挙げられる。本発明の予防又は治療剤は、鼻粘膜、口腔粘膜、眼粘膜等の非特異的過敏性亢進の予防又は治療に好適であり、鼻粘膜、口腔粘膜にさらに好適であり、鼻粘膜に特に好適である。本発明の予防又は治療剤はまた、鼻粘膜の非特異的過敏性亢進の合併症として口腔粘膜、眼粘膜等において非特異的過敏性亢進が起きている場合にも有効なものである。
【0018】
本明細書中、「粘膜の非特異的過敏性」とは、特定の抗原等の特異的刺激だけでなく、化学的刺激、塵埃、冷気等の不特定の、又は非特異的な刺激に対して粘膜が過剰に反応することをいう。この反応には、鼻粘膜の場合、くしゃみ、鼻閉、鼻漏、粘膜肥厚等が挙げられ、眼球粘膜の場合、かゆみ(そう痒感)、眼球結膜の充血、流涙、眼刺激、眼脂、光がまぶしい等が挙げられ、眼瞼粘膜の場合、かゆみ、瞼の腫れ、眼瞼浮腫、眼瞼縁の発赤、流涙等が挙げられ、口腔粘膜の場合、舌やのどの痛み・かゆみ・不快感、唇・舌・のどの腫脹(はれる)等が挙げられ、消化器粘膜の場合、腹痛、便通異常、悪心(気分が悪くむかむかした感じ)、嘔吐等が挙げられる。本発明における粘膜の非特異的過敏性亢進には、アレルギー疾患の重症化及び/又は慢性化が原因となるものと、そのような原因疾患によらないものとが含まれる。鼻粘膜の非特異的過敏性についていえば、過敏性非感染性鼻炎に分類される複合型鼻炎(鼻過敏症)のうち、アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化によるものの他、非アレルギー性鼻炎(血管運動性(本態性)鼻炎及び好酸球増多性鼻炎)による鼻粘膜の非特異的過敏性亢進も含まれる。なお、アレルギー反応が重症化及び/又は慢性化しておらず、非特異的過敏性が亢進していない鼻アレルギー等のアレルギー疾患は、本発明における「粘膜の非特異的過敏性亢進」には含まれない。
【0019】
本明細書中、「アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性」とは、上記「粘膜の非特異的過敏性亢進」のうち、アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化により鼻粘膜が非特異的過敏性亢進となった状態を意味する。なお、本明細書中、「鼻過敏性」には、外部からの非特異的抗原との抗体反応だけでなく、内部の(1)知覚過敏、神経過敏等の知覚系過敏性亢進、(2)腺細胞、血管平滑筋細胞、内皮細胞そのものの過敏性を含めた遠心路系の過敏性、(3)腺や血管の数、量の増加、(4)鼻粘膜上皮層のバリヤーの機能障害、(5)鼻粘膜を支配する副交感神経過緊張、交感神経の低下によるものも含まれる。
本発明の粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤は、アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤として、特に好適である。
【0020】
本発明において、「予防」には発症を抑制する又は遅延させることが含まれる。「治療」には、症状又は疾病を完全に治癒させることの他、症状を緩和することも含まれる。
【0021】
本発明に使用される菌は、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌であって、具体的には例えば、Bifidobacterium bifidum、B. longum、 B. breve、B. adolescentis、B. infantis、B.pseudolongum、B.thermophilum等のビフィズス菌;例えば、Lactobacillus acidophilus、L. casei、L. gasseri、L. plantarum、L. delbrueckii subsp bulgaricus、L. delbrueckii subsp lactis、L. fermentum、L. helveticus、L. johnsonii、L. paracasei subsp. paracasei、L. reuteri、L. rhamnosus、L. salivarius、L. brevis等の乳酸桿菌;例えば、Leuconostoc mesenteroides、Streptococcus(Enterococcus) faecalis、Streptococcus(Enterococcus) faecium、 Streptococcus(Enterococcus) hirae、Streptococcus thermophilus、 Lactococcus lactis、L. cremoris、Tetragenococcus halophilus、Pediococcus acidilactici、P. pentosaceus、Oenococcus oeni等の乳酸球菌;例えば、Bacillus coagulans等の有胞子性乳酸菌; Bacillus toyoi、B.licheniformis、Clostridium butyricum等の酪酸菌;その他の有用菌が挙げられる。
これらの菌体は、例えばATCC又はIFOなどの機関や財団法人 日本ビフィズス菌センターなどから容易に入手することができる。また、市販されているものを適宜使用することもできる。
【0022】
本発明で使用する菌としては、ビフィズス菌が好ましく、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium breveがより好ましく、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium longumがさらに好ましい。複数の菌を組み合わせて使用する場合には、ビフィズス菌と乳酸菌との組み合わせが好ましく、Bifidobacterium bifidumと、(i)Lactobacillus acidophilus、(ii)Lactobacillus gasseri、(iii)Streptococcus(Enterococcus) faecalis、又は(iv)Streptococcus(Enterococcus) faeciumの(i)〜(iv)のいずれかとの組み合わせが好ましく、中でも、Bifidobacterium bifidum G9-1と、(i)Lactobacillus acidophilus、(ii)Lactobacillus gasseri、(iii)Streptococcus(Enterococcus) faecalis、又は(iv)Streptococcus(Enterococcus) faeciumの(i)〜(iv)のいずれかとの組み合わせがより好ましい。ビフィズス菌と乳酸菌とを組み合わせて用いる場合の配合比率は特に限定されない。
【0023】
上記菌体は、公知の条件又はそれに準じる条件で培養することにより得ることができる。例えば、ビフィズス菌や乳酸菌の場合、グルコ−ス、酵母エキス、及びペプトン等を含む液体培地で前記ビフィズス菌や乳酸菌の1種又は2種以上を通常約25〜45℃程度で約4〜72時間程度、好気又は嫌気培養し、培養液から菌体を集菌し、洗浄し、湿菌体を得る。
【0024】
本発明において用いるビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌としては、生菌が好ましいが、菌の処理物を用いてもよい。菌の処理物とは、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌に何らかの処理を加えたものをいい、その処理は特に限定されない。該処理物として具体的には、該菌体の超音波などによる破砕液、該菌体の培養液又は培養上清、それらを濾過ないし遠心分離など固液分離手段によって分離した固体残渣などが挙げられる。また、細胞壁を酵素又は機械的手段により除去した処理液、トリクロロ酢酸処理又は塩析処理などして得られるタンパク質複合体(タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質など)やペプチド複合体(ペプチド、糖ペプチド等)なども該処理物として挙げられる。さらに、これらの濃縮物、これらの希釈物又はこれらの乾燥物なども該処理物に含まれる。また、該菌体の超音波などによる破砕液、該細胞の培養液又は培養上清などに対し、例えば各種クロマトグラフィーによる分離などの処理をさらに加えたものも本発明における該処理物に含まれる。ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の死菌体も本発明における該処理物に含まれる。前記死菌体は、例えば、酵素処理、約100℃程度の熱をかける加熱処理、抗生物質などの薬物による処理、ホルマリンなどの化学物質による処理、γ線などの放射線による処理などにより得ることができる。
【0025】
本発明において使用される菌は、乾燥物(菌体乾燥物)であってもよく、菌体乾燥物としては、シングルミクロンの菌体乾燥物が好ましい。菌体乾燥物とは、通常は乾燥された個々の菌体又は乾燥された菌体の集合物をいう。また、シングルミクロンとは、小数第1位を四捨五入して1〜10μmをいう。本発明に使用されるビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌として、シングルミクロンの菌体乾燥物を使用すると、製剤中の生菌率が上がるため、粘膜の非特異的過敏性亢進の予防及び治療効果が高くなる。
【0026】
菌体乾燥物の好ましい製造方法について説明する。上記菌体を溶媒に分散して菌体液とする。溶媒は、当業界で用いられる公知の溶媒を用いてよいが、水が好ましい。また、所望によりエタノールを加えてよい。エタノールを加えることによって、最初にエタノールが気化し、ついで水が気化するから、段階的な乾燥が可能となる。さらに、菌体液は、懸濁液であってもよい。溶媒は上記で示したものと同じでよい。また、懸濁させる際、懸濁剤、例えばアルギン酸ナトリウム等を使用してもよい。
また、上記菌体液には、さらに保護剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、又は静電気防止剤など当業界で一般に用いられている添加剤を通常の配合割合で添加してもよい。
【0027】
上記菌体液を、菌体乾燥物を製造するために噴霧乾燥装置による乾燥操作に付する。噴霧乾燥装置は、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できる微粒化装置を備えた噴霧乾燥装置が好ましい。非常に粒径の小さな噴霧液滴にすると、噴霧液滴の単位質量あたりの表面積が大きくなり、乾燥温風との接触が効率よく行われるため、生産性が向上する。
ここでシングルミクロンの液滴とは、噴霧液滴の粒径が小数第1位を四捨五入して1〜10μmであるものをいう。
【0028】
噴霧乾燥装置には、微粒化装置が、例えばロータリーアトマイザー(回転円盤)、加圧ノズル、又は圧縮気体の力を利用した2流体ノズルや4流体ノズルである噴霧乾燥装置が挙げられる。
本発明においては、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できるものであれば、上記形式のいずれの噴霧乾燥装置であってもよいが、4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置を使用するのが好ましい。
【0029】
4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置では、4流体ノズルの構造としては、気体流路と液体流路とを1系統として、これを2系統ノズルエッジにおいて対称に設けたもので、ノズルエッジに流体流動面となる斜面を構成している。
また、ノズルエッジの先端の衝突焦点に向かって、両サイドから圧縮気体と液体を一点に集合させる外部混合方式の装置がよい。この方式であれば、ノズル詰まりがなく長時間噴霧することが可能となる。
【0030】
4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置について図1を用いてさらに詳しく説明する。4流路ノズルのノズルエッジにおいて、液体流路3又は4から湧き出るように出た菌体液が、気体流路1又は2から出た高速気体流により流体流動面5で薄く引き伸ばされ、引き伸ばされた液体はノズルエッジ先端の衝突焦点6で発生する衝撃波で微粒化させることにより、シングルミクロンの噴霧液滴7を形成する。
【0031】
圧縮気体としては、例えば、空気、炭酸ガス、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス等を用いることができる。とくに、酸化されやすいもの等を噴霧乾燥させる場合は、炭酸ガス、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。
圧縮気体の圧力としては、約1〜15kg重/cm、好ましくは約3〜8kg重/cmである。
ノズルにおける気体量は、ノズルエッジ1mmあたり、約1〜100L/分、好ましくは約10〜20L/分である。
【0032】
その後、乾燥室において、その噴霧液滴に乾燥温風を接触させることで水分を蒸発させ菌体乾燥物を得る。
乾燥室の入り口温度は、約2〜400℃、好ましくは約5〜250℃、より好ましくは約5〜150℃である。入り口温度が約200〜400℃の高温であっても、水分の蒸発による気化熱により乾燥室内の温度はそれほど高くならず、また、乾燥室内の滞留時間を短くすることにより、生菌の死滅や損傷をある程度抑えることができる。
出口温度は、約0〜120℃、好ましくは約5〜90℃、より好ましくは約5〜70℃である。
【0033】
4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置では、液体流路が2流路あるので、異なった2種の菌体液又は菌体液と他の溶液若しくは懸濁液をそれぞれの液体流路から、同時に噴霧することにより、これらが混合された菌体乾燥物を製造できる。
例えば、異なった2種類の菌体の菌体液を同時に噴霧することにより、該2種の菌体を含有する菌体乾燥物が得られる。
【0034】
上記のように菌体乾燥物の粒径を小さくすることにより、生菌率が上がり、生菌率の多い製剤を提供できるという利点がある。
すなわち、シングルミクロンの菌体乾燥物を得るためにはシングルミクロンの噴霧液滴を噴霧するのが好ましい。噴霧液滴の粒径を小さくすると、噴霧液滴の単位質量あたりの表面積が大きくなるので、乾燥温風との接触が効率よく行われ、乾燥温風の熱による菌体の死滅又は損傷を極力抑えることができる。その結果として、生菌率が上がり生菌数の多い菌体乾燥物が得られる。
【0035】
本発明において、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の製剤中の生菌数は、製剤の一日投与量として、約10CFU以上、好ましくは約1×10CFU以上含むことが好ましい。
ここで、製剤中の生菌数の測定は菌体によって異なるが、例えば日本薬局方外医薬品規格に記載のされたそれぞれの菌体の定量方法により容易に測定できる。
【0036】
本発明の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤、及びアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤は、上記菌又はその処理物と、他の成分とを混合することにより容易に製造される。他の成分は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。本発明にかかる非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤、及びアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤は、医薬品や食品組成物の形態として用いることができる。医薬品の場合には、経口投与に適しており、内服剤とすることが好ましい。内服剤の剤型としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤、液剤等が挙げられる。中でも、錠剤又は散剤が好ましい。
【0037】
本発明にかかる非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤、及びアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤は、上述したように錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤、液剤等の薬剤の形態に加工されてもよい。かかる薬剤の加工方法は、公知の製剤方法に従ってよい。
【0038】
例えば、錠剤を製造する場合は、公知の打錠機を用いるとよい。該打錠機としては、例えば単発式打錠機又はロータリー型打錠機等が挙げられる。また、賦形剤(例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース又はリン酸ナトリウム等)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えばデンプン、カルメロースナトリウム等)、滑沢剤(例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、マクロゴール、ショ糖脂肪酸エステル等)等、当業界で使用される公知の添加剤等を含有していてもよい。
【0039】
また、例えば、散剤又は顆粒剤の製造方法としては、公知の方法に従ってよく、例えば上記菌体乾燥物をそのまま使用してもよい。丸剤、チュアブル剤又はトローチ剤の製造方法は、公知の方法に従って行われてよく、例えば錠剤を製造するのと同じ手段で作ることができる。
【0040】
本発明の予防又は治療剤の投与量としては、例えば、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を1日あたり約10CFU以上とすることが好ましく、約10CFU以上とすることがより好ましい。この量を、1日1回〜3回に分けて投与する。ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の1日あたりの投与量の上限は、約1012CFUであることが好ましい。
【0041】
本発明の予防又は治療剤の投与対象としては、粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性が亢進した個体が好適な対象であり、鼻粘膜の非特異的過敏性が亢進した個体がより好適であり、アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化により鼻粘膜の非特異的過敏性が亢進した個体、すなわちアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性を発症した個体がさらに好適な対象である。また、個体としてはヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等の哺乳類が好ましく、特にヒトが好ましい。
【0042】
ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を哺乳類(好ましくはヒト)に投与することにより、粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性を抑制又は治療することができる。
【0043】
本発明は、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含む組成物を哺乳類に投与する粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の抑制又は治療方法、及び、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含む組成物を哺乳類に投与するアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の抑制又は治療方法も包含する。
【0044】
本発明は、粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療のための、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌;アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療のための、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌;粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤を製造するための、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の使用;及び、アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤を製造するための、ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌の使用も包含する。
【実施例】
【0045】
以下実施例を示してさらに詳しく説明を行うが、本発明はこれによりなんら制限されるものではない。
【0046】
実施例1
1.菌(BBG9−1:Bifidobacterium bifidum G9-1)の調製方法
BBG9−1の菌体乾燥物の調製は以下のように行った。すなわち、BBG9−1の凍結保存菌株を37℃で24時間静置培養後、ビフィズス菌試験用液体培地(1)(日本薬局方外医薬品規格「ビフィズス菌」の項に記載)にこの培養菌液をビフィズス菌試験用液体培地(1)100に対して1の割合(容量比)で接種し、37℃で18時間静置培養した。得られた培養菌液を遠心分離し、水で3回洗浄後、適量の水を加え、湿菌体1kgに対し、グルタミン酸塩0.1kg及びデキストリン0.5kgの割合で加えて噴霧乾燥装置にて菌体乾燥物とした。これにより生菌数2.2×1011CFU/gの菌体乾燥物を得た。
【0047】
2.菌体乾燥物中の生菌数の測定
日本薬局方外医薬品規格「ビフィズス菌」の項に記載されているビフィズス菌の定量法に準じて測定した。すなわち、菌体乾燥物5gを精密に量り、希釈液(2)30mL中に加え、強く振り混ぜ、更に同希釈液を加えて正確に50mLとし、よく振り混ぜ、この菌液1mLを正確に量り、別に正確に分注した同希釈液9mL中に加える操作(10倍希釈法)を繰り返し、1mL中の生菌数が20〜200個となるよう希釈した。この液1mLをペトリ皿にとり、ここに50℃に保ったビフィズス菌試験用カンテン培地を20mL加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で48〜72時間嫌気培養し、出現したコロニー数と希釈倍率から菌体乾燥物中の生菌数を求めた。
【0048】
3.モデル動物の作製方法
非特異的過敏性亢進のモデル動物は、Nobe et al., Jpn. J. Pharmacol. 75, 243-251 (1997)、Nobe et al., Inflamm. res. 47 (1998) 369-374、及びMizutani et al., Jpn. J. Pharmacol. 86, 170-182 (2001)に記載の方法に基づいて作製した。以下に、モデル動物の作製方法を記載する。
【0049】
3.1 非特異的過敏性亢進のモデル動物の構築
(1)水酸化アルミニウム(Al(OH))を含むスギ花粉抽出液の調製
スギ花粉を100mg/mLにてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に加え、18時間4℃にて懸濁したのち、1700×g、15分間遠心分離を行い上澄を回収し、タンパク濃度が200μg/mLとなるようにPBSで希釈した。
【0050】
200mg/mLのAl(OH)水溶液を調製し、この水溶液1mLに塩化ナトリウム9mgを加え、さらに上記の希釈したスギ花粉抽出液1mLを氷中で攪拌しながら滴下し、Al(OH)を含むスギ花粉抽出液を調製した。
【0051】
(2)モルモットへのスギ花粉による感作
(1)で調製したスギ花粉抽出液をモルモットの鼻腔内に、1日2回、3μLずつ滴下し、7日間連続して投与した(0週〜第1週)。さらに最終感作1週間後より、1週間に1回の割合で、スギ花粉をモルモットの片鼻に約1.8mgずつ、すなわち両鼻孔で約3.6mg吸入させて反応惹起を行った。このスギ花粉吸入によりモルモットにアレルギー性鼻炎を発症させることができる。さらに、スギ花粉による反復反応惹起を繰り返すと、反応惹起4回目(第5週)以降で惹起後30分〜2時間(即時性)ならびに惹起後4〜6時間(遅発性)にそれぞれ鼻腔抵抗の上昇のピークが再現性よく観察された。また、ヒスタミンを鼻腔に投与しても濃度依存的な鼻腔抵抗の上昇が見られ、非感作群に対して1000倍以上の低濃度から反応性を示すようになった。このような二相性のアレルギー反応を示すモルモットを、非特異的過敏性亢進のモデル動物として使用した。
【0052】
4.モデル動物に対するBBG9−1の効果
上記1.で調製したBBG9−1の菌体乾燥物は、モデル動物に投与する直前に0.05mg/mLにて、生理食塩水に懸濁し、モデル動物に投与した。実験は以下の3つのモルモット群を用いて行なった。
モルモット群A(n=13):スギ花粉による反応惹起を行なわず、スギ花粉による感作を行なう1週間前〜スギ花粉による反復反応惹起期間中にわたって6回(1日1回を、6日)/週にて、上記1.で調製したBBG9−1の菌体乾燥物の代わりに、1回あたり生理食塩水を1mL/個体、経口投与するグループ。
モルモット群B(n=11):上記3.(2)で作製したモデル動物に、スギ花粉による感作を行なう1週間前〜スギ花粉による反復反応惹期間中にわたって6回(1日1回を、6日)/週にて、上記1.で調製したBBG9−1の菌体乾燥物を1回あたり0.05mg/1mL/個体、経口投与するグループ。
モルモット群C(n=12):上記3.(2)で作製したモデル動物に、スギ花粉による感作を行なう1週間前〜スギ花粉による反復反応惹期間中にわたって6回(1日1回を、6日)/週にて、上記1.で調製したBBG9−1の菌体乾燥物の代わりに、1回あたり生理食塩水を1mL/個体、経口投与するグループ。
【0053】
反応惹起16回目(17週)の反応惹起を行なった後、48時間後にロイコトリエンD(LTD)を点鼻投与し、呼吸機能の経時的変化を、two-chambered double-flow plethysmograph法を利用した多機能呼吸測定装置(Pulmos−I,M.I.P.S.)を用い、鼻腔抵抗(sRaw)を指標として、その変化をモニターした。結果を図2に示す。
【0054】
5.結果
鼻粘膜の非特異的過敏性を呈さない群A(灰色)では、LTDの投与量を上げても鼻腔抵抗が変化しないのに対して、鼻粘膜の非特異的過敏性が亢進した群C(白)ではLTDの投与により鼻腔抵抗が増大した。一方、鼻粘膜の非特異的過敏性が亢進したモルモットに上記で調製したBBG9−1を投与した群B(黒)は、群Aとほぼ同様の結果を示し、投与したBBG9−1により、LTDの投与による鼻粘膜の非特異的過敏性が有意に抑制されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進、及びアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性を効果的に予防又は治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置におけるノズルエッジ部分の内部構造を示す。
【図2】モデル動物(モルモット)の鼻粘膜の非特異的過敏性亢進に対する本発明の予防又は治療剤の抑制効果を示す図である。図2中の各点は、11〜13個体の平均±標準誤差(S.E.)を表す。棒グラフにおいて、灰色は、スギ花粉による反応惹起を行わず上記1.で調製したBBG9−1の菌体乾燥物の代わりに生理食塩水を経口投与したモルモットである(群A)。黒は、スギ花粉による感作及び反応惹起を行ない、上記1.で調製したBBG9−1の菌体乾燥物を経口投与したモルモットである(群B)。白は、スギ花粉による感作及び反応惹起を行ない、上記1.で調製したBBG9−1の菌体乾燥物の代わりに生理食塩水を経口投与したモルモットである(群C)。†及び*はそれぞれ、反応惹起しなかった個体(群A)からの有意差(†:p<0.05、††:p<0.01、†††:p<0.001)、及び感作した個体(群C:生理食塩水を投与)からの有意差(*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001)を表す。
【符号の説明】
【0057】
1、2 圧縮気体が供給される気体流路
3、4 被乾燥体を含む液体が供給される液体流路
5 流体流動面
6 衝突焦点
7 噴霧液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むことを特徴とする粘膜(下気道粘膜を除く)の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
【請求項2】
粘膜が、鼻粘膜である請求項1に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
【請求項3】
非特異的過敏性亢進が、アレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化によるものである請求項2に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
【請求項4】
菌が、乾燥物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
【請求項5】
菌が、シングルミクロンの菌体乾燥物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
【請求項6】
菌が、生菌である請求項1〜5のいずれか一項に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
【請求項7】
菌が、死菌である請求項1〜3のいずれか一項に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
【請求項8】
菌が、菌体の処理物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の非特異的過敏性亢進の予防又は治療剤。
【請求項9】
ビフィズス菌、乳酸菌及び酪酸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の菌を含むことを特徴とするアレルギー性鼻炎の重症化及び/又は慢性化による鼻過敏性の予防又は治療剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−90073(P2010−90073A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263107(P2008−263107)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(391015351)ビオフェルミン製薬株式会社 (6)
【Fターム(参考)】