説明

粘膜免疫を生成するための経口ワクチン

本発明の実施形態は、様々な細菌感染に対してワクチン接種した動物における粘膜免疫反応を改善するための、経口投与または消化管投与に有用な、脂質ベースの免疫原性組成物(アジュバントもしくは担体)を含む。ある実施形態において、本発明の脂質組成物は、様々な鎖長を有する脂肪酸の混合物を含み、それによって望ましい物理化学的性質を提供する。細菌の抗原を脂質ベースのアジュバントまたは担体と混合すると、得られる組成物は改善された粘膜免疫反応を誘発し、それによってクラミジアまたはヘリコバクターによって引き起こされる感染、および疾患の続発症を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本PCT国際特許出願は、発明者Frank E. AldwellおよびKenneth W. Beagley、「免疫原性組成物」というタイトルの、2008年10月8日出願の米国特許仮出願第61/195,631号、ならびに発明者Frank E. AldwellおよびKenneth W. Beagley、「免疫原性反応のためのアジュバント」というタイトルの、2008年10月10日出願の米国特許仮出願第61/295,882号に対する優先権を主張するものである。これらの出願は両方とも、参照によって全文が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概ね、ワクチンにおいて用いられる抗原または免疫原の免疫原性の貯蔵、投与、および改善に適する組成物に関する。詳しくは、本発明は、細菌の抗原に対する免疫反応を改善するのに有用な脂質ベースのアジュバントまたは担体に関する。より詳しくは、本発明は、特定の脂質成分を有する脂質ベースのアジュバントまたは担体に関し、クラミジア(Chlamydia)およびヘリコバクター(Helicobacter)によって引き起こされる感染に対する改善された免疫反応をもたらすためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの感染性病原体が粘膜表面に侵入し、感染および疾患をもたらしている。世界中のヒトおよび動物の集団の両方に影響を及ぼす2つの重要な粘膜の病原体は、クラミジアとヘリコバクターである。世界保健機関(WHO)は、1999年に世界中でクラミジアの性器感染の新症例は9200万件あり、先進国および開発途上国両方において感染の発生率は増大し続けていると推定した(KW, Timms P.、Journal of Reproductive Immunology、2000年、48(1)、47〜68頁)。ヘリコバクターは世界の人口の50%に感染し、いくつかの開発途上国において割合は90%を超えると考えられている(Del Giudice, G.ら、Annu Rev Immunol、2001年、19、523〜63頁; Frenck, R. W., Jr.およびJ. Clemens、Microbes Infect、2003年、5(8)、705〜13頁)。
【0004】
クラミジア
クラミジア属のメンバーは、眼の多血症、性器および呼吸器の疾患を引き起こし、これらには失明性のトラコーマ、骨盤内炎症性疾患、子宮外妊娠および卵管因子(tubal factor)不妊、間質性肺炎、ならびにアテローム性動脈硬化、多発性硬化症、成人発症型喘息、およびアルツハイマー病を含み得る慢性疾患など、重症な合併症がある。
【0005】
トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、および肺炎クラミジア(C.pneumoniae)は、様々な粘膜表面に感染し、骨盤内炎症性疾患(PID)、不妊、トラコーマを含めた数々の疾患を引き起こし、失明、呼吸器疾患、アテローム性動脈硬化、および喘息の増悪をもたらす(Faal, N.ら、PLoS Med、2006年、3(8)、e266頁;Mabey, D.およびR. Peeling、Sexually transmitted infections、2002年、78(2)、90〜2頁; Hansbro, P.M.ら、Pharmacol Ther、2004年、101(3)、193〜210頁;Horvat, J.ら、Am J Respir Crit Care Med、2007年)。
【0006】
クラミジア科の生物体は、偏性細胞内寄生性細菌である。これらはいくつかの代謝経路および生合成経路がなく、ATPを含めた中間体を宿主細胞に依存している。クラミジアは、(1)基本小体と呼ばれる感染性粒子、および(2)網様体と呼ばれる細胞質内の生殖型の2つのステージとして存在する。ヒトに通常感染するクラミジアの記載されている種は3つ存在する。トラコーマクラミジアは、眼疾患のトラコーマ、および性感染症であるクラミジアを引き起こす。オウム病クラミジア(C.psittaci)はオウム病を引き起こし、肺炎クラミジアは一形態の肺炎を引き起こす。さらに、マウスは、ネズミ科動物の生殖器の感染を引き起こすクラミジアムリダルム(C.muridarum)に感受性である。最初の2つは、細胞壁および外膜タンパク質における相違に基づく多くの血清型を含んでいる。肺炎クラミジアは1つの血清型、すなわちTWAR生物体を含んでいる。
【0007】
クラミジアは、細胞への付着を促進し得るヘマグルチニンを有する。細胞媒介性の免疫反応は、炎症の間の組織の損傷の主な原因であるが、内毒素様毒素が記載されている。
【0008】
クラミジアを含む、殆どのヒトおよび動物の病原体は、粘膜表面による感染を惹起する。同様に、クラミジアの性器感染は、粘膜表面の感染に起因し得る。したがって、このような病原体に対する防御免疫は、強力な粘膜免疫反応の誘発を必要とすることがある。粘膜部位による感染から保護するためのワクチンが明らかに必要とされているものの、今日使用されているワクチンは、皮内注射または皮下注射によって投与される。しかし、粘膜の免疫反応は、非経口的な免疫化の後では、一般的に弱い。
【0009】
トラコーマクラミジア感染症は、世界中で最も一般的な細菌性性感染症である。トラコーマクラミジアは、性感染性の性器および直腸の感染を引き起こす。男性におけるトラコーマクラミジア感染の頻度は、淋病の頻度に等しいか、またはそれを超えることがある。男性における、淋病以外の尿道炎、精巣上体炎、および直腸炎は、トラコーマクラミジアの感染に起因することがある。淋病患者のトラコーマクラミジアとの重複感染も生じる。若い女性における急性の卵管炎および子宮頸管炎は、頸部から上行するトラコーマクラミジア感染によって引き起こされ得る。淋病を有する女性において、トラコーマクラミジアによる高率の生殖器官の同時感染が報告されている。トラコーマクラミジアが、感染した女性のファロビウス管から単離された。一報告では、精子に付着したトラコーマクラミジアの基本小体が、卵管炎患者の腹腔から回収された。
【0010】
感染した産道でトラコーマクラミジアに曝された新生児は、5日から14日以内に急性結膜炎を発症することがある。この疾患は、顕著な結膜の紅斑、リンパ網内系の増殖、および膿性分泌物を特徴とする。感染を治療しないと間質性肺炎に発展することがあり、このタイプの間質性肺炎は生後4ヶ月から6ヶ月の間にのみ生じる。
【0011】
最近、トラコーマクラミジアが成人において下気道感染を引き起こすことが疑われており、トラコーマクラミジア肺炎のいくつかの症例が、病原体が単離された免疫不全患者において報告されている。トラコーマクラミジアは免疫応答性のヒトにおいて肺炎または気管支肺感染を引き起こすことがあることも、証拠によって示されている。
【0012】
トラコーマクラミジア感染に付随する続発症には、HIV/AIDS以外のあらゆるSTIの中で最も費用のかかる健康上の結果である、骨盤内炎症性疾患、子宮外妊娠、および不妊症が含まれる(Westrom L、Mardh P. A.、Br Med Bull、1983年4月、39(2)、145〜50頁)。さらに、現存するクラミジア感染は、HIV(Ho JLら、J Exp Med、1995年4月1日、181(4)、1493〜505頁)および単純ヘルペス感染(Kaul Rら、J Infect Dis、2007年12月1日、196(11)、1692〜7頁)にかかるリスクを増大する。殆どのクラミジア感染は無症候性の性質があるので(Woodall JP編集、「Proceedings of the Chlamydia Vaccine Development Colloquium」、2004年、Alexandia, Virginia: The Albert B. Sabin Vaccine Institute、2004年、15〜8頁におけるStamm WE.)、効果的な抗生物質治療が利用可能であっても感染の発生率の増大を遅らせることはできず、このサイレントな伝染病をコントロールするのに効果的なワクチンが必要とされると一般的に考えられている。
【0013】
ヘリコバクター
ヘリコバクターピロリ(H.pylori)を含むヘリコバクター属の細菌は、いくつかのタイプの消化器疾患の重要な原因であると考えられている。胃粘膜のヘリコバクター感染は、慢性活動性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの疾患の発症に関連し、胃腺癌の発症に関連している(Enno, A.ら、Am J Pathol、1998年、152(6)、1625〜32頁; Correa, P.、J Natl Cancer Inst、2003年、95(7)、E3頁;Ernst, P.およびB. Gold、Annu Rev Microbiol、2000年、54、615〜40頁; Uemura, N.ら、N Engl J Med、2001年、345(11)、784〜9頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】PCT/NZ2002/00132
【特許文献2】PCT/KR00/00025号(WO00/41682)
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】KW, Timms P.、Journal of Reproductive Immunology、2000年、48(1)、47〜68頁
【非特許文献2】Del Giudice, G.ら、Annu Rev Immunol、2001年、19、523〜63頁
【非特許文献3】Frenck, R. W., Jr.およびJ. Clemens、Microbes Infect、2003年、5(8)、705〜13頁
【非特許文献4】Faal, N.ら、PLoS Med、2006年、3(8)、e266頁
【非特許文献5】Mabey, D.およびR. Peeling、Sexually transmitted infections、2002年、78(2)、90〜2頁
【非特許文献6】Hansbro, P.M.ら、Pharmacol Ther、2004年、101(3)、193〜210頁
【非特許文献7】Horvat, J.ら、Am J Respir Crit Care Med、2007年
【非特許文献8】Westrom L、Mardh P. A.、Br Med Bull、1983年4月、39(2)、145〜50頁
【非特許文献9】Ho JLら、J Exp Med、1995年4月1日、181(4)、1493〜505頁
【非特許文献10】Kaul Rら、J Infect Dis、2007年12月1日、196(11)、1692〜7頁
【非特許文献11】Woodall JP編集、「Proceedings of the Chlamydia Vaccine Development Colloquium」、2004年、Alexandia, Virginia: The Albert B. Sabin Vaccine Institute、2004年、15〜8頁におけるStamm WE.
【非特許文献12】Enno, A.ら、Am J Pathol、1998年、152(6)、1625〜32頁
【非特許文献13】Correa, P.、J Natl Cancer Inst、2003年、95(7)、E3頁
【非特許文献14】Ernst, P.およびB. Gold、Annu Rev Microbiol、2000年、54、615〜40頁
【非特許文献15】Uemura, N.ら、N Engl J Med、2001年、345(11)、784〜9頁
【非特許文献16】Owen, R.およびA. Jones、Gastroenterology、1974年、66(2)、189〜203頁
【非特許文献17】Iwasaki, A.およびB. Kelsall、J Exp Med、2000年、191(8)、1381〜94頁
【非特許文献18】S.G. Mayrhofer、およびL. Spargo、Immunology、1990年
【非特許文献19】Hershberg, R.M.ら、J Clin Invest、1998年、792〜803年
【非特許文献20】Rescigno, M.ら、Nat Immunol、2001年、2(4)、361〜7頁
【非特許文献21】Bockman, D.ら、Ann N Y Acad Sci、1983年、409、129〜44頁
【非特許文献22】Bockman, D.およびM.Cooper、Am J Anat、1973年、136(4)、455〜77頁
【非特許文献23】Neutra, M.R.ら、Cell Tissue Res、1987年、537〜46頁
【非特許文献24】Weiner HL.、J Clin Invest、2000年10月、106 (8)、935〜7頁
【非特許文献25】Giudice, E.L.およびJ.D. Campbell、Adv Drug Deliv Rev、2006年、68〜89頁
【非特許文献26】Cross, M. Lら、Vet J、2006年
【非特許文献27】Williams NA、Hirst TR、Nashar TO.、Immunol Today、1999年2月、20(2)、95〜101頁
【非特許文献28】van Ginkel FWら、J Immunol、2000年、165(9)、4778〜82頁
【非特許文献29】Holmgren, J.ら、Vaccine、1993年、11(12)、1179〜84頁
【非特許文献30】Hickey, D.K.ら、Vaccine、2004年、22(31〜32)、4306〜15頁
【非特許文献31】Skelding, K.A.ら、Vaccine、2006年、24(3)、355〜66頁
【非特許文献32】Glenn, G.ら、J Immunol、1998年、161(7)、3211〜4頁
【非特許文献33】Yu, J.ら、Infect Immun、2002年、70(3)、1056〜68頁
【非特許文献34】Berry, L.J.ら、Infect Immun、2004年、72(2)、1019〜28頁
【非特許文献35】Fujinaga, Y.ら、Molecular Biology of the Cell、2003年
【非特許文献36】Orlandi, P.A.およびP.H. Fishman、J Cell Biol.、1998年、905〜15頁
【非特許文献37】Wolf, A.A.ら、J Biol Chem、2002年、16249〜56頁
【非特許文献38】Triantafilou, M.ら、J Cell Sci、2002年、2603〜11頁
【非特許文献39】Triantafilou, M.ら、J Biol Chem、2004年、40882〜9頁
【非特許文献40】Dolganiuc, A.ら、Alcohol Clin Exp Res、2006年、76〜85頁
【非特許文献41】Latz, E.ら、Nat Immunol、2004年、190〜8頁
【非特許文献42】Simons, K.およびW. L. Vaz、Annual review of biophysics and biomolecular structure、2004年、269〜95頁
【非特許文献43】Dykstra, M.ら、Annu Rev Immunol、2003年、457〜81頁
【非特許文献44】Klausner, R.D.ら、J Biol Chem、1980年、1286〜95頁
【非特許文献45】Stulnig, T.M.ら、J Cell Biol、1998年、143(3)、637〜44頁
【非特許文献46】Stulnig, T.M.ら、J Biol Chem、2001年、37335〜40頁
【非特許文献47】Weatherill, A.R.ら、J Immunol、2005年、174(9)、5390〜7頁
【非特許文献48】Bangham, A.D.およびR. W. Horne、J Mol Biol、1964年、660〜8頁
【非特許文献49】Niikura, M.ら、Virology、2002年、273〜80頁
【非特許文献50】Guerrero, R.A.ら、J Virol、2001年、9713〜22頁
【非特許文献51】Szoka, F.およびD. Papahadjopoulos、Proc Natl Acad Sci USA、1978年、4194〜8頁
【非特許文献52】Deamer, D.およびA.D. Bangham、Biochim Biophys Acta、1976年、629〜34頁
【非特許文献53】Chapman, C.J.ら、Chem Phys Lipids、1991年、201〜8頁
【非特許文献54】Sou, K.ら、Biotechnol Prog、2003年、1547〜52頁
【非特許文献55】Kirby, C.J.およびG. Gregoriadis、Journal of microencapsulation、1984年、33〜45頁
【非特許文献56】Morein, B.ら、Nature、1984年、457〜60頁
【非特許文献57】Sjolander, A.ら、Vaccine、2001年、2661〜5頁
【非特許文献58】Skene, C.D.およびP. Sutton、Methods、2006年、53〜9頁
【非特許文献59】Mishra, D.ら、Vaccine、2006年
【非特許文献60】Wang, D.ら、J Clin Virol、2004年、S99〜106頁
【非特許文献61】Perrie, Y.ら、Journal of liposome Research、2002年、185〜97頁
【非特許文献62】Erickson, R.H.およびY.S. Kim、Annu Rev Med、1990年、133〜9頁
【非特許文献63】Caldwell,H.D.ら、Infect Immun、1981年、1161〜76頁
【非特許文献64】Aldwell, F.E.ら、Infect Immun、2003年、71(1)、101〜8頁
【非特許文献65】Colditz, G.A.ら、Pediatrics、1995年、29〜35頁
【非特許文献66】Colditz, G.A.ら、JAMA、1994年、698〜702頁
【非特許文献67】Fine, P.E.、Lancet、1995年、1339〜45頁
【非特許文献68】Aldwell, F.ら、Vaccine、2003年、22(1)、70〜6頁
【非特許文献69】NoI Pら、J Wildl Dis、2008年4月、44(2)、247〜59頁
【非特許文献70】Clark Sら、Infect Immun、2008年6月2日
【非特許文献71】M. I. Crossら、Immunology and Cell Biology、1〜4、2007年11月13日
【非特許文献72】Gheorghiu, M.ら、Dev. Biol. Stand. Basel, Karger、87、251〜261頁
【非特許文献73】Challacombe, S.J.およびT.B. Tomasi、J Exp Med、1980年、1459〜72頁
【非特許文献74】Challacombeら、Vaccine、1997年2月、15(2)、169〜75頁
【非特許文献75】Briese Vら、Arch Gynecol、1987年、240(3)、153〜7頁
【非特許文献76】Biology of Reproduction、1997年、56(1)、33〜41頁
【非特許文献77】Zhang Xら、Biol Reprod、1997年4月、56(4)、1069頁
【非特許文献78】Whittum-Hudson JAら、Nature Medicine、1996年、2(10)、1116〜21頁
【非特許文献79】Grayston JT、Wang SP、Sexually Transmitted Diseases、1978年、5(2)、73〜7頁
【非特許文献80】Aldwell FEら、Vaccine、2006年3月15日、24(12)、2071〜8頁
【非特許文献81】Armand M.、Curr Opin Clin Nutr Metab Care、2007年3月、10(2)、156〜64頁
【非特許文献82】Horejsi V.、Immunol Rev、2003年2月、191、148〜64頁
【非特許文献83】Anderson HAら、Nat Immunol、2000年8月、1(2)、156〜62頁
【非特許文献84】Mahoney EMら、Proc Natl Acad Sci U S A、1977年11月、74(11)、4895〜9頁
【非特許文献85】Schweitzer SCら、J Lipid Res、2006年11月、47(11)、2525〜37頁
【非特許文献86】Calder PCら、Biochem Soc Trans、1989年12月、17(6)、1042〜3頁
【非特許文献87】Calder PCら、Biochem Soc Trans、1990年10月、18(5)、904〜5頁
【非特許文献88】Su, H.ら、Proc Natl Acad Sci U S A、1996年、93(20)、11143〜8頁
【非特許文献89】Sutton, P.ら、Vaccine、2000年、18(24)、2677〜85頁
【非特許文献90】Lee, A.ら、Gastroenterology、1997年、112(4)、1386〜97頁
【非特許文献91】Barker CJら、Vaccine、2008年3月4日、26(10)、1285〜96頁
【非特許文献92】Hickey, D.K.ら、Vaccine、2002年、22、4306〜4315頁
【非特許文献93】www.graphpad.com
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、当技術分野において以前に価値を認められなかった問題、すなわち多くのヒトおよび動物の病原体は粘膜を介して生物体に感染するが、粘膜において動物を防御するように作用する効果的なワクチンの開発が、不可能ではないにしても非常に困難であったという問題を見出した。主な問題は、経口的に送達されたワクチンの抗原がパイエル板などの免疫誘発性部位に到達する前に、それらが胃の酸性およびタンパク質分解性の破壊のため分解することにある。腸管関連リンパ組織の刺激が不十分であると、適応免疫よりもむしろ経口免疫寛容を誘発することもある。さらに、コレラ毒素(CT)の使用で齧歯動物の免疫が増大することがあっても、CTはヒトには許容されない。ヒトに用いるのに、クラミジアまたはヘリコバクターのいずれかに有効なワクチンは認可されていない。したがって、粘膜で有効であり、コレラ毒素の有益な効果を模倣するがヒトに観察される有害な副作用がない組成物および方法が、現在大いに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、意外にも、ある種の脂質組成物、特に長鎖脂肪酸を含むものをアジュバントまたは担体として用いた場合、これらおよび他の問題を解決して、粘膜の免疫を促進し、かつクラミジアおよびヘリコバクターが引き起こす粘膜感染からの保護をもたらすことができることを見出した。
【0018】
本発明者らはまた、意外にも、ある種の脂質組成物を、アジュバントまたは担体として単離されたクラミジア抗原と一緒に用いた場合、クラミジアに対する免疫をもたらすことができ、この免疫はコレラ毒素と同じくらい有効であるが、有害な毒性の副作用がないことも見出した。この所見は、参照によって全文が本明細書に援用される、ある種の脂質組成物は生存する生物体と用いる場合に免疫反応を改善し得るという以前の観察(PCT/NZ2002/00132)に基づき、完全に予想外であった。
【0019】
同様に、本発明者らは、意外にも、ある種の脂質組成物を、アジュバントまたは担体としてヘリコバクターピロリ抗原と一緒に使用した場合、粘膜のヘリコバクターピロリ感染に対する免疫をもたらすことができることを見出した。この所見は以前の観察に基づき、完全に予想外であった。
【0020】
さらに、ワクチン抗原が胃および消化系の他の部分において分解されるために、経口ワクチン投与には主な問題が存在する。これらの問題は、抗原がパイエル板などの免疫誘導性部位に到達する前に、抗原が胃の酸性および/またはタンパク質分解性で破壊されるためであり得る。したがって、腸管関連リンパ組織(「GALT」)の刺激が不十分であると、適応免疫よりもむしろ経口免疫寛容を引き起こすこともあり、保護をもたらすのではなく、抗原に付随する障害の増悪をもたらすことがある。
【0021】
したがって、本開示は、死菌抗原(生または弱毒化の生物体に対立するものとして)を経口的に活性なワクチンにおいて投与することができ、粘膜免疫を誘発し、それによって病原性の生物体による粘膜感染から動物を保護することができることの最初の実証を示すものである。
【0022】
本発明を、その特定の実施形態を参照にして記載する。本発明の他の特徴は図を参考にして理解され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】血清中(図1A)および膣洗浄液中(図1B)のMOMP特異的抗体を示すグラフである。IgGおよびIgAをELISAによって測定した。y軸は、免疫化群のエンドポイント力価(E.P.T)を非免疫化の対照のE.P.Tで除すことによって決定したE.P.Tの比を示す。脂質CとクラミジアMOMPは一緒に、非免疫化動物に比べて約2倍のIgA生成をもたらし、CpG/CTおよびMOMPが一緒に観察されたものと類似する効果であった。本発明者らは、脂質Cは、膣粘膜の、クラミジアMOMP抗原に対する免疫反応を増大することができると結論付ける。結果は、各実験において1群あたりマウス5匹を含む別々の2つの実験を代表するものである。非免疫化の対照に比べて*p<0.05、**p<0.01。エラーバー、平均の標準誤差。
【図2】クラミジアムリダルムで生細菌の攻撃後の膣スワブからの細菌の回収を示すグラフである。クラミジアムリダルムで膣内攻撃後、免疫化した(CpG/CTと混合したMOMP、脂質Cを配合したMOMP、またはCpG/CTと混合した、脂質Cを配合したMOMP)マウス、および対照マウスから3日間隔で膣スワブを採集した。膣スワブからの生細菌の回収(細菌の排出)を、3日間隔で細胞培養物によって決定した(図2A)。感染力の全レベルを、各曲線下の面積を測定することによって決定した(図2B)。結果は、各群5匹の動物の別々の2つの実験を代表するものである。本発明者らは、意外にも、MOMP単独に曝露した動物に比べて、脂質CおよびMOMPは一緒に、細菌の排出を約60%低減することを見出した(図2B)。CpG/CTおよびMOMPは一緒に、細菌の排出を57%低減した。さらに、本発明者らは、意外にも、脂質Cは、CpG/CT+MOMPで処置した動物に比べて細菌の排出を約48%低減した(脂質C+MOMP+CpG/CT)ことを見出した。非免疫化の対照に比べて、*p<0.05、***p<0.001。エラーバー、平均の標準誤差。これらの結果は、脂質CはCpG/CTと相乗的に作用して膣粘膜の免疫反応を増大し得ることを示している。
【図3】血清(上)および糞便ペレット洗浄液(下)中のヘリコバクターピロリ特異的抗体を示すグラフである。IgGおよびIgAをELISAによって測定した。y軸は、免疫化群のエンドポイント力価(E.P.T)を非免疫化対照のE.P.Tで除すことによって決定したE.P.Tの比を示す。結果は、各実験における1群あたりマウス5匹を含む別々の2つの実験を代表するものである。図3Aは、脂質Cは、非免疫化の対照に比べて血清中のヘリコバクターピロリ特異的IgGの生成が増大したことを示す。さらに、図3Bは、脂質Cは、糞便ペレット中のヘリコバクターピロリ特異的IgAを増大したことを示す(図3B)。脂質Cおよびヘリコバクターピロリ抗原で観察された保護の度合いは、回収した細菌における約25%の低減であり、これは生物体における細菌の負荷が低下したことを示す。エラーバー、平均の標準誤差。これらの結果は、脂質Cは消化管において粘膜免疫を促進し得ることを示している。
【図4】血清(図4A)、気管支肺胞洗浄液BAL(図4B)、および膣洗浄液(図4C)中のクラミジアMOMP特異的抗体を示すグラフである。IgGおよびIgAの力価をELISAによって測定した。y軸は、免疫化群のエンドポイント力価(E.P.T)を非免疫化対照のE.P.Tで除して決定したE.P.Tの比を示す。結果は、各実験における1群あたりマウス5匹を含む別々の2つの実験を代表するものである。非免疫化の対照に比べて、*p<0.05、**p<0.01。エラーバー、平均の標準誤差。経口の脂質CプラスMOMPは血清IgGにおいて中程度の増大をもたらした(図4A)。経口の脂質CプラスMOMPは、呼吸器において殆ど効果がなかった(図4B)。それとは対照的に、経口の脂質CプラスMOMPは、膣のMOMP特異的IgAを約2倍増大した(図4C)。
【図5】ヘリコバクターピロリSS1で胃内攻撃後の細菌の回収を示すグラフである。ヘリコバクターピロリSS1を、2回、1×107cfu胃内接種して最終の免疫化の1週間後にマウスを攻撃した。生細菌の攻撃6週間後、胃組織をホモジナイズし、GLAXOサプリメントを含むCSA寒天平板上で6日間培養した(材料と方法を参照されたい)。y軸は、ログスケールによって表した、ホモジナイズした胃組織1グラムあたりのコロニー形成単位数(cfu/グラム)を示す。脂質CおよびヘリコバクターピロリSS1抗原の併用での免疫化は、非免疫化の動物に比べて、胃内接種6週間後の胃組織からの細菌の回収における約25%の低減をもたらした。ヘリコバクターピロリ抗原プラスCpG/CTは細菌の回収を低減し、脂質Cを添加すると、非免疫化の対照に比べて約85%、細菌の回収をさらに低減した。結果は、2つの別々の実験を代表するものである。非免疫化の対照に比べて、*p<0.05。1実験あたり各群における動物n=5。エラーバー、平均の標準誤差。これらの結果は、脂質Cを含む経口組成物は、胃においてヘリコバクターピロリに対する粘膜の免疫を促進することができることを示している。
【図6】クラミジアムリダルムで生細菌の攻撃後の肺組織からの細菌の回収を示すグラフである。BALB/cメスTCIを、CpG/CTと混合したMOMP、脂質Cを配合したMOMP、またはCpG/CTと混合した、脂質Cを配合したMOMPで経口的に免疫化し、非免疫化の対照マウスを、生のクラミジアムリダルムで鼻腔内攻撃した。細菌攻撃12日後(感染ピークポイント)に肺を取り除き、回収した生のクラミジアの量を培養によって決定した。結果は、2つの別々の実験を代表するものである。これらの結果は、脂質CおよびMOMPで一緒に経口免疫化すると、非免疫化の対照に比べて、クラミジアの回収を低減することを示している。*p<0.05。1実験あたり各群における動物n=5。エラーバーは平均の標準誤差である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
粘膜免疫
粘膜表面は、病原性生物体が侵入する主な入口である。粘膜表面は、それ自体、全身の免疫系とは機能的および解剖学的に異なる粘膜免疫系によって防御されている。粘膜免疫系と全身免疫系とは一緒に働いて、病原体からの保護をもたらす。腸では、抗原提示細胞(「APC」)が、パイエル板および流入領域腸間膜リンパ節(draining mesenteric lymph nodes)内のリンパ球にエピトープを提示する管腔抗原をサンプリングする(Owen, R.およびA. Jones、Gastroenterology、1974年、66(2)、189〜203頁; Iwasaki, A.およびB. Kelsall、J Exp Med、2000年、191(8)、1381〜94頁)。APCおよびリンパ球両方の集団において豊富な、主な粘膜誘発性部位として、腸管関連リンパ組織(「GALT」)は、経口免疫化による保護的な粘膜免疫を誘発するための誘引性の部位を代表している。
【0025】
消化管は、通常の代謝プロセスから産生される「自己」抗原、摂取された食品の抗原、および共生の細菌叢または病原性生物体からの抗原を含めた様々な抗原に曝されている。効果的に機能するために、免疫系は、宿主に対して「良い」抗原を、おそらく「有害な」抗原と区別することが必要とされる。経口免疫寛容は、それによって免疫系が、有害ではないとみなされるこれらの抗原に対して無反応性である免疫の状態を産生する特定のメカニズムである。経口免疫化後の免疫提示のための抗原の取込みは、数々のメカニズムによって実現され得る。腸細胞は、抗原を吸収し、処理加工し、側底に発現されるMHCクラスII分子上のT細胞に提示する(S.G. Mayrhofer、およびL. Spargo、Immunology、1990年、Hershberg, R.M.ら、J Clin Invest、1998年、792〜803年)。
【0026】
固有層にわたって位置する樹状細胞(「DC」)は、上皮細胞間の密着結合を通してこれらの樹状突起を「押し込む」ことによって管腔の抗原をサンプリングする(Rescigno, M.ら、Nat Immunol、2001年、2(4)、361〜7頁)。ミクロフォールド(「M」)細胞は、管腔の抗原を、腸管上皮のバリアを越えて、DCおよびマクロファージを含む、下層をなす抗原提示細胞(「APC」)に非特異的に輸送する(Bockman, D.ら、Ann N Y Acad Sci、1983年、409、129〜44頁; Bockman, D. およびM.Cooper、Am J Anat、1973年、136(4)、455〜77頁; Neutra, M.R.ら、Cell Tissue Res、1987年、537〜46頁)。能動免疫によってGALTに導入されたタンパク質抗原は、一般的に、免疫性よりもむしろ寛容性の誘発をもたらす。
【0027】
消化管は入口であり、消化管は容易に利用できる、ワクチン接種のための非侵襲性の経路を形成するので、経口免疫化は、消化管、呼吸器、および尿生殖路の内膜の粘膜表面を越えて身体に侵入する感染性物質から宿主を保護する魅力的な手段として長い間考えられてきた。多くの動物試験において実証されている通り、経口免疫化の可能性はヒトにおいて認められておらず、経口ポリオワクチン、経口チフスワクチン、および経口コレラワクチンがヒトの使用に認可されているだけであり、これらは全て弱毒化生ワクチンである。ヒトにおける経口免疫化の使用を妨げていた限界には、抗原の投与量が大量に必要とされること、通常の消化プロセスによって抗原が破壊されること、およびタンパク質サブユニット抗原の摂取によってしばしば誘発される経口免疫寛容の誘発を克服する強力な粘膜アジュバントが必要とされることが含まれる(Weiner HL.、J Clin Invest、2000年10月、106 (8)、935〜7頁)。
【0028】
経口免疫化は、無針の、対費用効果の大きい、投与が容易な方法であり、HIV、B型肝炎、およびC型肝炎など、ヒトからヒトへ疾患を伝播する危険性が付随しない(Giudice, E.L.およびJ.D. Campbell、Adv Drug Deliv Rev、2006年、68〜89頁)。経口の経路は、野生動物を免疫化するための重要な方法でもある。経口のレジメンは、現在用いられている侵入捕獲に付随する動物のストレスがなく、疾患管理方法を免除するものである(Cross, M. Lら、Vet J、2006年)。このような理由で、経口の経路は、伝染病の伝播を最小にするために、大型動物およびヒト両方の集団の免疫化に対する可能性をもたらす。ヒトに広く用いられている市販の経口ワクチンには、セービンポリオワクチン、生-弱毒化腸チフスワクチン、および死菌全細胞のBサブユニット、およびコレラ弱毒化生ワクチンが含まれる。
【0029】
これらの結果は、経口投与された本発明のワクチンは、ヘリコバクターピロリの場合は胃で作用することができ(図3および5)、クラミジアの場合は生殖器官および肺で作用することができる(図1、2、4、および6)ことを示している。これらの結果は、本発明のワクチンの粘膜表面への送達は、様々な他の粘膜表面の反応を誘発することができることも示している。これらの所見は、したがって、本発明のワクチン組成物は、当技術分野では長期にわたる問題に対する解決を提供することを実証している。本発明の脂質組成物は、伝統的なアジュバントであるCpGおよびCTによって引き起こされる粘膜免疫をさらに増大することができるという所見は、本発明の組成物は、粘膜免疫を促進するように相乗的に作用することができることを示している。
【0030】
ワクチンアジュバント
免疫反応を改善するために、抗原を数々のアジュバント物質と混合して免疫原性を刺激する。一般に用いられているアジュバントには、ミョウバンおよび水中油型エマルジョンが含まれる。後者のグループは、フロイントの鉱物油のアジュバントによって代表される。しかし、フロイント完全アジュバント(「FCA」)のヒトおよび家畜のワクチンにおける使用は、報告されている毒性の反応のために禁忌である。これらの理由で、フロイントのアジュバントは、経口投与に適さないこともある。
【0031】
水中油型エマルジョンにおいて、油含量が高いために界面活性剤が必要とされている。界面活性剤の洗剤の性質により、これらは非経口投与または経口投与に適さない。さらに、認可されている界面活性剤でも毒性反応が報告されている。エマルジョンのさらなる欠点は、これらは、別のものの中に分散された不混和性の一液体の不均一な系であるということである。この調製物は、しばしば不安定であり、経時的に水相の分離をもたらし、したがって安定な懸濁液中にワクチンを維持するのが困難となっている。さらに、油中水型エマルジョンの水相中または伝統的なリポソーム中に閉じ込められた抗原は、胃または消化器系の他の部分における分解から保護される見込みはない。これとは対照的に、本発明の脂質含有組成物およびこれらを使用するための方法は、消化管において壊れやすいタンパク質の抗原を保護することができ、それによってタンパク質の抗原はパイエル板および消化管内の他の免疫学的に感受性な構造にアクセスすることができるようになり、それによって粘膜に対する免疫学的保護をもたらす。
【0032】
ADP-リボシル化外毒素
免疫原性の不十分なタンパク質抗原で経口免疫化をした後、適応免疫を増強するために、ADP-リボシル化外毒素(「bARE」)などのアジュバントを用いて免疫活性化を増強し、経口免疫寛容の誘発を防ぐ。経口免疫化の動物試験において最も一般的に用いられているアジュバントである、ADP-リボシル化細菌外毒素(ABARES) (Williams NA、Hirst TR、Nashar TO.、Immunol Today、1999年2月、20(2)、95〜101頁)、例えばコレラ毒素(「CT」)および大腸菌熱不安定性毒素(「LT」)は、胃および神経性両方の毒性のために、ヒトに用いることはできない(van Ginkel FWら、J Immunol、2000年、165(9)、4778〜82頁)。ヒトにおける経口免疫化のこの可能性のために、ABARESなどのアジュバントを置き換える安全なアジュバントを見出すことができるか否かが理解されるにすぎない。CTまたはLTなどのABAREは粘膜免疫の強力な刺激物質であり、経口、鼻腔内、および経皮を含めた数々の免疫化経路において実験的に用いられている(Holmgren, J.ら、Vaccine、1993年、11(12)、1179〜84頁; Hickey, D.K.ら、Vaccine、2004年、22(31〜32)、4306〜15頁; Skelding, K.A.ら、Vaccine、2006年、24(3)、355〜66頁; Glenn, G.ら、J Immunol、1998年、161(7)、3211〜4頁; Yu, J.ら、 Infect Immun、2002年、70(3)、1056〜68頁; Berry, L.J.ら、Infect Immun、2004年、72(2)、1019〜28頁)。しかし、経口および鼻腔内の経路を用いた家畜およびヒトの免疫化レジメンにこれらを用いることは毒性によって制限されており、毒性には、消化液のバランスの撹乱および中枢神経系における毒素の蓄積の両方が含まれる(van Ginkel, F.ら、J Immunol、2000年、165(9)、4778〜82頁)。
【0033】
本発明の組成物と比較するために用いられる、よく知られている強力な粘膜アジュバントであるCTおよびCpGは、それぞれ細胞のトール様受容体9(「TLR9」)およびガングリオシド受容体(「GM-1」)によって免疫反応を活性化する。GM-1およびTLRの活性化およびシグナル伝達は、細胞膜の脂質ラフトの会合に依存し、脂質ラフトの会合はタンパク質およびシグナル伝達分子の共存を可能にする(Fujinaga, Y.ら、Molecular Biology of the Cell、2003年; Orlandi, P.A.およびP.H. Fishman、J Cell Biol、1998年、905〜15頁; Wolf, A.A.ら、J Biol Chem、2002年、16249〜56頁; Triantafilou, M.ら、J Cell Sci、2002年、2603〜11頁; Triantafilou, M.ら、J Biol Chem、2004年、40882〜9頁; Dolganiuc, A.ら、Alcohol Clin Exp Res、2006年、76〜85頁; Latz, E.ら、Nat Immunol、2004年、190〜8頁)。
【0034】
脂質ラフトは、高比率の飽和脂肪酸を含んでいるスフィンゴ脂質およびコレステロール両方から構成され、周囲の不飽和リン脂質よりも高密度に充填された領域をもたらしている(Simons, K.およびW. L. Vaz、Annual review of biophysics and biomolecular structure、2004年、269〜95頁; Dykstra, M.ら、Annu Rev Immunol、2003年、457〜81頁)。遊離脂肪酸は、膜の二分子層内に挿入され、その構造にしたがって異なるドメインに直接組織化され、脂肪酸の代謝回転が高いために脂肪酸含量は動的である(Klausner, R.D.ら、J Biol Chem、1980年、1286〜95頁)。飽和脂肪酸を組み入れることは、脂質ラフトの形成を促進することによって膜の細胞シグナル伝達のメカニズムに直接影響を及ぼし、裏を返せば、高比率の不飽和脂肪酸によって阻害される(Stulnig, T.M.ら、J Cell Biol、1998年、143(3)、637〜44頁; Stulnig, T.M.ら、J Biol Chem、2001年、37335〜40頁; Weatherill, A.R.ら、J Immunol、2005年、174(9)、5390〜7頁)。
【0035】
リポソーム
ワクチンの生存能を保護するために、研究者たちは、不活性な粒子、リポソーム、生ベクター、およびウイルス様粒子(「VLP」)を含めた数々の送達ビヒクルの開発を調査してきた(Bangham, A.D.およびR. W. Horne、J Mol Biol、1964年、660〜8頁; Niikura, M.ら、Virology、2002年、273〜80頁; Guerrero, R.A.ら、J Virol、2001年、9713〜22頁)。
【0036】
リポソームおよび脂質小胞も、ワクチンとの使用、とりわけ容易にカプセル化することができる小型の免疫原性成分との使用について調査されている。一般的に、リポソームおよび小胞は、生の微生物などの大型の抗原のカプセル化には有用ではない。さらに、リポソームおよび小胞は高価であり、生成するのに時間がかかり、これらの調製に用いられる抽出の手順が、ワクチン調製物の化学構造または生存性の変化、したがってこれらの免疫原性の変化をもたらし得る。例えば、熱および溶媒は、タンパク質などの免疫原性成分の生物学的完全性を変えることがある。
【0037】
リポソームは典型的には小型であり(マイクロメートルのサイズ範囲における)、抗原または他の材料を配置することができる内部を有する球状の層構造である。リポソームは、脂質を、抗原または他の材料を含む水溶液と混合することによって作られる。混合物をボルテックスにかけた後、混合物中の脂質は、典型的なリポソーム構造を自発的に形成する傾向がある。ある場合には、脂質成分の水相成分との混合において助けるために洗剤を加えてもよい。透析して洗剤を除去するとき、脂質と水相とは分離する傾向があり、脂質は、水相をカプセル化するリポソーム構造を自発的に形成する。次いで、使用のためにリポソームを懸濁液中に維持するのが典型的である。
【0038】
リポソームのワクチン接種に対する免疫反応は、脂質の物理化学的性質に高度に依存しており、したがって逆相蒸発、エーテル蒸発、凍結-解凍押出し、および脱水-再水和など、数々の洗練された、複雑な技術が用いられる(Szoka, F.およびD. Papahadjopoulos、Proc Natl Acad Sci USA、1978年、4194〜8頁; Deamer, D.およびA.D. Bangham、Biochim Biophys Acta、1976年、629〜34頁; Chapman, C.J.ら、Chem Phys Lipids、1991年、201〜8頁; Sou, K.ら、Biotechnol Prog、2003年、1547〜52頁; Kirby, C.J.およびG. Gregoriadis、Journal of microencapsulation、1984年、33〜45頁)。
【0039】
PCT国際特許出願第PCT/KR00/00025号(WO00/41682、本明細書今後「Kim」)は、タンパク質薬物または抗原を組み入れる「親油性微粒子」(すなわちリポソーム)を開示している。微粒子は、0.1から200imの範囲のサイズを有する。親油性の微粒子を、水溶液中に親油性物質と一緒に、または有機溶媒の使用と一緒に、有効成分を含む固体粒子をコーティングすることによって調製することができる。得られる組成物は、注射に適する水中油型エマルジョンを含む。残念なことに、Kimの微粒子は経口の摂取に適さない。これらは、消化器系を通過するので、さらに、抗原の保護をもたらすにも十分に適さない。その結果、Kimの微粒子は、効果的な粘膜の経口免疫をもたらさない。
【0040】
さらに、リポソームを作成するための方法は、大規模な製造の対費用効果を制限する洗練された製造技術を必要とする(Szoka, F.およびD. Papahadjopoulos、Proc Natl Acad Sci USA、1978年、4194〜8頁; Deamer, D.およびA.D. Bangham、Biochim Biophys Acta、1976年、629〜34頁; Chapman, C.J.ら、Chem Phys Lipids、1991年、201〜8頁; Sou, K.ら、Biotechnol Prog、2003年、1547〜52頁; Kirby, C.J.およびG. Gregoriadis、Journal of Microencapsulation、1984年、33〜45頁)。
【0041】
部分的にはリポソームは壊れやすいので、かつ、水性の内側コンパートメント中の抗原が時間とともに分解し得るので、リポソームは経口免疫化において使用が制限されている。さらに、リポソームを作成するのに典型的に用いられる脂質は室温で液体であるものであり、したがって貯蔵の条件下では一般的に液体の形態である。これらの特徴が、リポソームベースのワクチンの有効期限を制限している。
【0042】
免疫刺激複合体
ISCOMS(登録商標)として知られる免疫刺激複合体は、主に、規定された極性領域および非極性領域を有するリン脂質およびコレステロールの分子から構成されている。さらに、ISCOMS(登録商標)は、高度に免疫原性のアジュバントであるサポニン(Quil A)を含んでいる(Morein, B.ら、Nature、1984年、457〜60頁)。リン脂質は球状のリングを形成し、水相内に様々な抗原を取り囲み、封入する疎水性力によって一緒に保持される脂質二重層を生成している。両方の系において膜の完全性を維持するのが決定的であり、そうでなければ抗原が局所の環境中に放出され、分解を受ける。したがって、最適な貯蔵条件の維持は、ワクチンの生存能力および送達に不可欠である。ISCOMS(登録商標)は、透析、限外ろ過、および超遠心など、リポソームほど複雑な製造技術を必要としない(Sjolander, A.ら、Vaccine、2001年、2661〜5頁)。これらの方法は、必然的に抗原の自発的な組入れをもたらす。
【0043】
さらに、別のアジュバントが最近記載されている。ISCOMATRIX(登録商標)は、ISCOMS(登録商標)に類似する脂質のアジュバントである。しかし、ISCOMATRIX(登録商標)は、抗原を物理的に組み入れないが、サポニンの免疫原性の性質によって免疫を誘発するためにアジュバントとして同時投与され、したがって経口免疫化の間ワクチン抗原の保護のための送達ビヒクルとして用いられない(Skene, C.D.およびP. Sutton、Methods、2006年、53〜9頁)。リポソームおよびISCOMS(登録商標)は、筋肉内、皮下、鼻腔内、経口、および経皮など、数々の経路によってワクチンを送達するのに実験的に用いられている(Mishra, D.ら、Vaccine、2006年; Wang, D.ら、J Clin Virol、2004年、S99〜106頁; Perrie, Y.ら、Journal of liposome Research、2002年、185〜97頁)。
【0044】
粘膜免疫化のための経口ワクチンアジュバントおよび担体としての脂質組成物
上記に記載した粘膜免疫を生成する上での困難は、本発明の脂質含有組成物によって意外にも克服された。先行技術の典型的な短鎖脂質(例えば、油)または先行技術のリン脂質を用いる代わりに、本発明者らは、懸濁液中に抗原を保持するための脂質マトリックスとして長鎖脂肪酸を使用すると、先行技術の組成物を凌ぐ明確な利点があることを見出した。第一に、長鎖脂肪酸は消化管における分解に対してより抵抗性であり、それによって抗原がその天然の高次構造を保持する保護的環境を提供し、それによって粘膜における免疫原性の反応を増大する。
【0045】
ヒトおよび他の動物は、自分たちの日々の食事の一部分として脂質を消費し、脂肪(トリアシルグリセロール)の消化は通常の代謝プロセスである。脂質は胃酸によって胃の中でかろうじて分解され、脂質消化の約90%は、腸管において胆汁酸塩およびリパーゼによって起こる(Erickson, R.H.およびY.S. Kim、Annu Rev Med、1990年、133〜9頁)。
【0046】
経口免疫化の間、飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸ほど容易に胆汁酸塩のミセル中に組み入れられず、したがって腸細胞によって容易に吸収されない。過剰な管腔の飽和脂肪酸は、特殊化されたミクロフォールド「M」細胞を越えてワクチン成分と一緒に非特異的に輸送され得る。上皮下のドーム(dome)内では、脂質マトリックスの飽和脂肪酸の部分が、抗原提示細胞(APC)の膜二重層中に組み入れられ、機能的なGM-1受容体およびTLR複合体の上方制御を促進する。本発明の脂質を配合したワクチンからの保護の増強は、無処置の抗原の物理的送達、および粘膜アジュバントによるAPCの活性化の両方によって2倍であることがある。
【0047】
多くの先行技術の製薬およびワクチンのための脂質組成物とは対照的に、本発明の脂質組成物は、リン脂質ではなくトリグリセリドから構成されている。トリグリセリドは、極性領域および非極性領域を含んでおらず、したがって同心球状の二重層に組織化しない。その代わりに、本発明のワクチンに用いられる脂質は、ワクチン成分が捕捉されるメッシュ様マトリックスを形成することができる。これは、湿度および水分などの様々な貯蔵要因に曝露される間、ならびに胃の厳しい酸性環境の間、脂質を組み入れた抗原の物理的保護をもたらす。
【0048】
上記の製剤に用いられる脂質は動物またはヒトの消費に適するのが望ましく、油、脂肪、およびロウを含めた、広範囲の天然の(植物もしくは動物由来の)、または合成の脂質製品から選択することができる。新しいワクチンを開発する上で、有害な副作用の産生を避けることは、ヒトにおけるワクチン使用の試験の主な決定要因である。毒性のアジュバントを同時投与せずに、「安全な」サブユニット抗原を使用することが理想的である。本発明の脂質製剤は、いかなる有害な副作用に関連しない、食品または製剤用グレードの食事用脂肪酸を用いて製造される。このような脂質を配合したMOMPでの経口免疫化は、クラミジア感染から呼吸器および性器の粘膜の著しい保護を誘発した。さらに、死菌全細胞のヘリコバクターピロリを本発明の脂質製剤に組み入れることで、ヘリコバクターピロリSS1での生細菌の攻撃後の消化管の保護を誘発した(図3および図5)。脂質Cおよびヘリコバクターピロリ抗原で観察されるこの程度の保護は、回収された細菌における約25%の低減であり、これは動物における細菌の負荷の低減を意味する。免疫化により、ヘリコバクターピロリSS1を胃内接種6週間後、胃組織から回収された細菌における著しい低減がもたらされた。
【0049】
死菌全細胞の生物体は、その免疫原性に対して同定も単離もされない多くの抗原から構成されている。しかし、精製されたMOMPは、クラスIおよびクラスII両方のT細胞のエピトープを含む、免疫優性の表面抗原である(Caldwell,H.D.ら、Infect Immun、1981年、1161〜76頁)。本発明によるMOMPの脂質製剤は、マウスを呼吸器および性器両方のクラミジア感染から部分的に保護する免疫反応を誘発した。
【0050】
本発明によるワクチンの製造は、特殊化した専門知識または装置を必要としない、単純で安価な機械的プロセスである。リポソームおよびICOMS(登録商標)は他の非脂質送達ビヒクルに比べて安価な選択肢として強調されるが、本発明の組成物の単純さはさらにもっと安価な代替を提供することができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、脂質製剤は約30℃を超える温度で液体であり得る。すなわち、最も通常には経口の経路によって、これが投与される動物における生理的温度で融点を達成するように、脂質を選択することができる。脂質が、大気圧、10℃〜30℃で固体の形態であるのが望ましく、大気圧、20℃から30℃までで依然として固体であるのが好ましい。しかし、脂質の融点は排他的なものではなく、融点の範囲での油、脂肪、およびロウを含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、本明細書で用いるための脂質は、約30℃とヒトの生理的温度である約37℃の間で、固相から液相への転移を経験することができる。脂質相の挙動の概要は、当技術分野において入手可能である。したがって、当業者であれば、当技術分野における情報および単純な実験に基づいて、所望の性質および融点を有する脂質を選択することができる。
【0053】
一般的に、適切な脂質製剤は、カルボン酸のグリセリルエステルなどのトリグリセリド、脂肪族鎖および-COOH末端からなる化合物、ならびに飽和脂肪酸および非飽和脂肪酸、ならびにこれらの混合を含むことができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、トリグリセリドは、主にC8からC20アシル基、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パリニック(parinic)酸、ラウリン酸、リノレン酸、アラキドン酸、およびエイコサペンタエン酸、またはこれらの混合を含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明において有用な脂質製剤は、C16〜C18などの長鎖脂肪酸を含む。長鎖脂肪酸は、マウスおよびフクロネズミに投与するワクチンにおけるBCGなど、生物体を保護するのにより効果的であることが見出されている。この方法で考えると、本発明における使用に好ましい脂質製剤は、約30%から約100%の、あるいは約60%から約100%の、あるいは約80%から約100%の、他の実施形態において約90%から約100%の、C16および/またはC18脂肪酸を含む。
【0056】
他の実施形態において、C16脂肪酸は、約10%から約40%の、あるいは約20%から約35%の、他の実施形態において約25%から約32%の全脂肪酸含量を表すことができる。C18脂肪酸は、約30%から約90%の、あるいは約50%から約80%の、さらに他の実施形態において約60%から約70%のC18の全脂肪酸含量を表すことができる。
【0057】
さらに他の実施形態は、C14またはそれより短い鎖を有する脂肪酸を約35%未満、あるいは約25%未満、なおさらなる実施形態において約10%未満含む脂質製剤を有する。
【0058】
ある実施形態における脂質の鎖長は、C14またはそれより短い鎖を有する脂肪酸を約5%未満、C16脂肪酸を約25%から約32%、C18脂肪酸鎖を約60%から約70%である。
【0059】
ある実施形態において、本発明で用いるための脂質製剤は、約20%から約60%の、あるいは約30%から約55%の、さらに他の実施形態において約40%から約50%の量の飽和脂肪酸を含むことができる。単不飽和(monounsaturated)脂肪酸は、約25%から約60%の、あるいは約30%から約60%の、さらに他の実施形態において約40%から約55%の範囲であってよい。多不飽和(polyunsaturated)脂肪酸は、約0.5%から約15%の、あるいは約3%から約11%の範囲、さらなる実施形態において約5%から約9%の範囲であってよい。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態は、約40%から約50%の飽和脂肪酸、約40%から約50%の単不飽和脂肪酸、および約5%から約9%の多不飽和脂肪酸を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明において用いるための脂質製剤は、HPLC分析によって決定して、ミリスチン酸約3%、パルミチン酸約26%、ステアリン酸約15%、オレイン酸約40%、およびリノール酸約6%を有する。
【0062】
さらなる実施形態において、本発明の脂質製剤は、ミリスチン酸約1%、パルミチン酸約25%、ステアリン酸約15%、オレイン酸約50%、リノール酸約6%を有する(「脂質C」)。いくつかのこれらの実施形態において、組成物は、脂質CおよびMOMPを含む。他の実施形態において、組成物は、脂質Cおよびヘリコバクターピロリ抗原を含む。本明細書で用いられる「脂質C」および「Lipo Vax」の語は等しい。
【0063】
本発明の他の実施形態は、脂質Cの変形である「脂質Ca」を含み、ミリスチン酸2.8%、パルミチン酸22.7%、パルミトレイン酸2.5%、ダツリック(daturic)酸1.1%、ステアリン酸15.9%、オレイン酸(C18:ln-7)38.0%、オレイン酸(C18:ln-9)1.7%、およびリノール酸4.0%を有し、総飽和脂肪組成42.4%、単不飽和脂肪組成42.2%、および多不飽和脂肪組成4.0%を有する。いくつかのこれらの実施形態において、組成物は、脂質CaおよびMOMPを含む。他の実施形態において、組成物は、脂質Caおよびヘリコバクターピロリ抗原を含む。
【0064】
あるいは、本発明の脂質製剤は、水素化ココナツ油を含む(「脂質K」)。いくつかの脂質K含有組成物は、カプリル酸(C8:0)7.6%、カプリン酸(C10:0)6.8%、ラウリン酸(C12:0)45.1%、ミリスチン酸(C14:0)18.3%、パルミチン酸(C16:0)9.7%、ステアリン酸(C18:0)2.7%、オレイン酸(C18:1)7.7%、およびリノール酸(C18:2)2.3%を含み、融点は約27.1℃である。いくつかのこれらの実施形態において、組成物は脂質KおよびMOMPを含む。他の実施形態において、組成物は脂質Kおよびヘリコバクターピロリ抗原を含む。
【0065】
脂質K含有の実施形態の他の変形(「脂質Ka」)は、重量で、カプロン酸(C6:0) 6.5%、カプリン酸(C10:0) 5.4 %、ラウレート(C12:0) 44.5%、ミリスチン酸(C14:0) 17.8%、パルミチン酸(C16:0) 9.8%、ステアリン酸(C18:0) 11.5%、オレイン酸(C18:0) 2.2%の組成を有し、総飽和脂肪組成95.5%、単不飽和脂肪組成2.2%の脂肪酸を含む。これらの脂質Kaのいくつかの実施形態において、組成物は脂質KaおよびMOMPを含む。これら脂質Kaの他の実施形態において、組成物は脂質Kaおよびヘリコバクターピロリ抗原を含む。
【0066】
さらに他の代替において、本発明の脂質製剤は、製薬用グレードの水素化ココナツ油を含む(「脂質PK」)。いくつかの脂質PK含有の実施形態は、重量で、カプロン酸7.0%、カプリン酸5.8%、ラウレート45.0%、ミリスチン酸18.2%、パルミチン酸9.9%、ステアリン酸2.9%、オレイン酸7.6%、およびリノール酸2.3%の組成を有し、総飽和脂肪組成88.8%、単不飽和脂肪組成7.6%、および多不飽和脂肪組成2.3%の脂肪酸を含む。これらのいくつかの実施形態において、組成物は脂質PKおよびMOMPを含む。他の実施形態において、組成物は脂質PKおよびヘリコバクターピロリ抗原を含む。
【0067】
さらなる代替において、本発明の脂質製剤は、重量で、カプロン酸6.7%、カプリン酸5.6 %、ラウレート44.3%、ミリスチン酸17.9%、パルミチン酸9.6%、ステアリン酸3.0%、オレイン酸8.4%、およびリノール酸2.6%の組成を有し、総飽和脂肪組成87.3%、単不飽和脂肪組成8.4%、および多不飽和脂肪組成2.6%の「脂質SPK」を含む。これらのいくつかの実施形態において、組成物は脂質SPKおよびMOMPを含む。他の実施形態において、組成物は脂質SPKおよびヘリコバクターピロリ抗原を含む。
【0068】
組成物は、容易に入手できる脂質成分から簡単に製造される。ある実施形態において、本発明の脂質組成物は、37℃を超える溶融状態に温めると様々な抗原および免疫調節物質の組入れを可能にし、しかし一旦冷却するとそれは安定した固相を形成する、精製および分画化両方をしたトリグリセリドからなる(Aldwell, F.E.ら、Infect Immun、2003年、71(1)、101〜8頁)。本発明のワクチンの製造は、特殊化した専門知識または装置を必要としない、単純で安価な機械的プロセスである。リポソームおよびICOMS(登録商標)は、他の非脂質送達ビヒクルに比べて安価な選択肢として強調されるが、本発明のワクチンを製造する単純さによりさらにより安価な代替が提供される。
【0069】
本発明の脂質製剤は、免疫原性組成物の調製において、および組成物内の抗原を分解から保護するのに有用である。脂質製剤は、生の生物体、とりわけ細菌の生存性を維持するのに特に有用である。脂質製剤は、休止中の状態ではなく、生の状態における生物体を維持するように作用する。これは、経口投与用に配合された生の生物体を含むワクチンには特に重要である。脂質はまた、均一な懸濁液中に抗原を維持する。すなわち、本発明の組成物において、免疫原性の成分は、固体またはペースト様の脂質マトリックスにわたって均一に分布していてよい。脂質はまた、経口投与した場合に消化管分泌物による破壊から抗原を保護する。皮下などの他の経路によって投与した場合、マクロファージの襲撃からの保護もあり得る。これにより、抗原の取込み、とりわけ消化管粘膜による生の生物体の取込み、およびその後の宿主における生物体の複製が可能になる。
【0070】
本発明の組成物は、貯蔵条件の間、分解に対してより耐性である。例えば、リポソームは非常に長く貯蔵すると凝集することが知られており、ある場合では、リポソーム調製物は、懸濁液中のリポソームの維持を支持する静電気的な反発をもたらすために、正または負いずれかの電荷をリポソーム中に組み込まなければならないことを必要とし得る。
【0071】
免疫原性成分
一般的に、ワクチンは、それに対して免疫反応が産生され得る1つまたは複数の物質を含む。このような物質には、脂質、タンパク質、炭水化物、または生物体に特異的な他の成分が含まれる。必要条件は簡単であり、物質は免疫細胞に提示されることが可能でなければならず、免疫細胞は免疫反応を生成することができなければならない。多くの場合では、タンパク質が免疫原である。
【0072】
他の場合には、生存する生物体が用いられる。この経路によってヒトを皮下的に免疫化した後に効果的な保護をすると、0〜80%の範囲であるBCGなど、生物体に対して高度に可変性であることが多い(Colditz, G.A.ら、Pediatrics、1995年、29〜35頁; Colditz, G.A.ら、JAMA、1994年、698〜702頁; Fine, P.E.、Lancet、1995年、1339〜45頁)。
【0073】
最近、本発明者らおよび同僚らの一人は、動物における経口ワクチンの送達に、脂質ベースの経口送達系である脂質Cを用いた(Aldwell FEら、Infect Immun、2003年、71(1)、101〜8頁; Aldwell, F.ら、Vaccine、2003年、22(1)、70〜6頁; PCT国際特許出願第PCT/NZ2002/00132号)。脂質C中に組み入れた生のマイコバクテリウムボビスカルメットゲラン桿菌(BCG)ワクチンをマウスに摂取させると、感染に対する耐性を生成した(Aldwell, FEら、Infect Immun、2003年、71(1)、101〜8頁)。生のマイコバクテリウムボビスでのエアロゾル攻撃から保護した脂質Cベースのワクチンで免疫化した場合、オジロジカ(white tail deer) (NoI Pら、J Wildl Dis、2008年4月、44(2)、247〜59頁)、モルモット(Clark Sら、Infect Immun、2008年6月2日)、およびブラッシュテイルポッサム(brushtail possums)(Aldwell FEら、Vaccine、2003年12月8日、22(1)、70〜6頁)において同様の結果が見出された。保護のレベルは、非組入れのBCGで免疫化した動物に見られたものを超えることが観察され、皮下の経路によって投与したBCGに等しく、全身および粘膜のT細胞による強力なインターフェロンγ(IFNγ)生成に関連していた。弱毒化生ワクチンの生物体である、BCGの脂質C組入れは、経口送達後のその免疫原性を大幅に増大したので、本発明者らは、脂質Cも、経口の経路によって送達されるクラミジアまたはヘリコバクターの規定されたサブユニットタンパク質抗原に対する免疫反応を増強し得ることを決定した。しかし、病原性生物体の場合、免疫化された動物が、確実に、病原体によって重篤かつ有害な影響を受けないことが重要である。
【0074】
上記に記載した生の生物体を用いてBCGに対して上首尾に免疫化したのとは対照的に、非生存の、非複製のBCG抗原を使用しても、免疫原性的に有効な免疫反応を誘発しなかった(M. I. Crossら、Immunology and Cell Biology、1〜4、2007年11月13日)。したがって、当技術分野におけるさらなる問題、すなわち非感染性の抗原の使用による病原性生物体に対する効果的な免疫反応の生成という問題が存在する。
【0075】
数々のワクチンが、生物体の凍結乾燥調製物の使用に頼っている。例えば、ヒトTBに対する現在のワクチンは、カルメットゲラン桿菌(「BCG」)と呼ばれる、弱毒化生細菌の凍結乾燥調製物をベースにしている。しかし、凍結乾燥の手順は、BCGの生存率の30%から50%の損失、および残存する生細菌の回収の低下をもたらすことが示されている(Gheorghiu, M.ら、Dev. Biol. Stand. Basel, Karger、87、251〜261頁)。使用前の生物体のより高い生存性を保持する組成物は、このようなワクチンの有効性に大いに寄与する。
【0076】
他の場合において、生物体からの特異的なタンパク質を使用するのが望ましい。クラミジアの場合、主要外膜タンパク質(MOMP)はクラミジア生物体の機能に関係づけられるので、このタンパク質は免疫原性化合物として用いられる。
【0077】
クラミジアの抗原成分
クラミジアの外側の細胞壁は、同じ1次配列を共有する、40キロダルトン(kDa)の主要外膜タンパク質(MOMP)、2つのシステインリッチのタンパク質である60kDaから62kDaの外膜複合体Bタンパク質(OmcB)、および12kDaから15kDaの外膜複合体Aタンパク質(OmcA)、74kDaの種特異的タンパク質、ならびに31kDaおよび18kDaの真核細胞結合性タンパク質を含む、いくつかの免疫原性タンパク質を含んでいる。
【0078】
血清型L2からの40kDa MOMPタンパク質に対する高度免疫マウスの抗血清は、間接免疫蛍光法の間、トラコーマクラミジア血清型Ba、E、D、K、L1、L2、およびL3の基本小体と反応するが、血清型A、B、C、F、G、H、I、およびJ、またはオウム病クラミジアとは反応しなかった。実際、トラコーマクラミジアのMOMP遺伝子のクローニングおよび配列決定により血清型L2およびBに対して同数のアミノ酸が明らかになり、血清型CのMOMP遺伝子はさらなる3個のアミノ酸に対するコドンを含んでいた。クラミジアのMOMPの多様性は、4つの配列可変性ドメインを反映したものであり、その2つは推定上の型特異的抗原決定基に対する候補である。トラコーマクラミジアの血清型間のMOMPの違いの根拠となるのは、緊密に関連する血清型では一団となったヌクレオチドの置換、ならびに関連の遠い血清型では挿入および欠失であった。MOMPを外側の基本小体のエンベロープ中に挿入する場合、MOMPの露出したドメインは、血清型別および保護的な抗原決定基の両方として役立つ。血清型CおよびBの主に保存されている領域は、短鎖可変ドメインに散在している。
【0079】
血清型D、E、F、G、H、I、J、およびKはヒトの疾患に関連することが知られている。血清型E、F、およびG対するワクチン接種は共に、約75〜80%の個体を保護する。血清型D、E、F、G、H、I、J、K、およびLはクラミジアによる性器感染に関連し、血清型A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、およびKは眼の感染に関連する。肺炎クラミジアはまた、アルツハイマー病、冠動脈疾患、および喘息に関連する。
【0080】
システインリッチの膜タンパク質上のエピトープを認識する3つのモノクローナル抗体は、ヒトトラコーマクラミジアの15の血清型全てと相互作用し、この抗原の種特異性を確立している。OmcAに対するモノクローナル抗体は、次亜種特異性および種特異性を示した。OmcBおよびOmcAのシステインリッチタンパク質は、自然感染において高度に免疫原性であるが、抗体はトラコーマクラミジアの基本小体の感染力を中和しない。
【0081】
したがって、ワクチン開発のための候補抗原は、クラミジアの主要外膜タンパク質(「MOMP」)である。本発明者らは、意外にも、脂質C中に組み入れた、または強力な粘膜アジュバントであるCTおよびCpGオリゴデオキシヌクレオチドと混合した、いずれかの、クラミジアのMOMPで経口免疫化した動物は、クラミジアムリダルムでの膣内攻撃から保護されたことを見出した。驚くべきことに、本発明者らは、脂質C、CpG/CT、およびMOMPの一緒の組合せは、脂質CプラスMOMP、またはCpG/CTプラスMOMPのいずれかに対して観察されたよりも大幅に、クラミジアムリダルムでの攻撃に対する免疫反応を改善したことを見出した。
【0082】
MOMPに対する免疫化の他に、クラミジア感染は、MOMPの免疫原性成分以外の免疫原性成分を用いて感受性の動物を免疫化することによって低減することができる。いくつかの別々の免疫原性成分が、トラコーマクラミジアおよびオウム病クラミジアにおいて認識されており、群特異的なものもあれば種特異的なものもある。基本小体および網様体から抗原を抽出するのに、洗剤が用いられている。肺炎クラミジア(TWAR生物体)は血清学的に独特であり、トラコーマクラミジア種および全てのオウム病クラミジア系統と異なる。
【0083】
クラミジアムリダルムからの免疫原性成分も、クラミジアによる感染のマウスモデルにおける試験に有用な組成物中に組み入れることができることが理解できる。一緒に混合し、本発明の経口的に活性なワクチン中に組み入れることができるクラミジア抗原の多くの組合せが存在することも理解され得る。
【0084】
ヘリコバクターの抗原成分
広範囲の接種源(innoculum)を提供するために、紫外線(「UV」)で死菌全細胞のヘリコバクターピロリシドニー株1(H.pylori SS1)を用いることができる。生物体全体を使用すると、ヘリコバクター抗原が免疫原性であることを決定する必要性を回避する。ヘリコバクターの他の株が、本発明の範囲から逸脱せずに用いることができることが理解され得る。
【0085】
本発明の実施形態
本発明の脂質組成物の製造
本発明の組成物は、当技術分野では知られている技術を用いて調製することができる。必要であれば脂質製剤を加熱して液化し、免疫原性成分および上記に記載した他の成分(用いる場合は)を加えると都合がよい。免疫原性組成物の分散は、混合、振盪、および免疫原性成分の生存性に有害作用を及ぼさない他の技術によって実現することができる。いくつかの実施形態において、抗原は脂質製剤にわたって均一に分散される。
【0086】
本発明で用いるための代替の組成物は、水を含めた水性の成分が本質的になくてよい。本明細書で用いられる「本質的にない」の語は、組成物が約10%未満の水性成分、好ましくは約5%未満の水性成分を含むことを意味する。上記に示したように、成分、とりわけ水性溶媒の存在により、特に腸における脂質製剤の保護効果が低減する。
【0087】
本発明の免疫原性組成物は、とりわけ免疫原性の弱い免疫原性成分に対して上記に示した通りのタイプの、第2のまたはさらなる免疫原性分子に対する反応を生成するのにも有用であり得る。これは、免疫原性分子を、組成物の別の免疫原性成分にコンジュゲートすることによって、免疫原性組成物における第2のまたはさらなる免疫原性分子の同時送達によって実現され得る。コンジュゲートは、標準の技術分野の技術を用いて実現することができる。特に、対象の抗原を、in vivoの抗体生成を妨害しないリンカー基によって免疫原性の担体またはアジュバントにコンジュゲートしてもよい。免疫原性の担体またはアジュバントは、上記で同定された生物体を含む免疫原性成分のいずれかであってよいが、好ましくはマイコバクテリウムであり、より好ましくはBCGである。適切なリンカー基には、オバルブミンなどのマンノース受容体結合性タンパク質、およびFc受容体に結合するものが含まれる。第2のまたはさらなる免疫原性分子は、好ましくはタンパク質またはペプチドである。とりわけ好ましいタンパク質は免疫避妊(immunocontraceptive)タンパク質である。脂質は、送達マトリックスとして再び作用する。組成物を投与すると、コンジュゲートした分子または同時送達された分子に対する免疫反応の増強がもたらされる。
【0088】
本明細書で用いられる「動物」の語は、温血動物、とりわけ哺乳動物を意味する。この語の意味の範囲内にある動物の例として、ヒト、イヌ、ネコ、トリ、ウシ、ヒツジ、シカ、ヤギ、ラット、マウス、ウサギ、フクロネズミ、アナグマ、モルモット、ケナガイタチ、ブタ、およびバッファローがある。特に単胃動物および反芻動物が、この語の範囲内に企図される。
【0089】
本発明のワクチン組成物の文脈において本明細書で用いられる「抗原」の語は、「免疫原」の語に等しく、動物における免疫反応を誘発することができる物質、または物質に対して免疫化された動物の抗体または免疫系細胞によって特異的に結合され得る物質を意味する。
【0090】
広範囲の送達経路のための製剤には、脂質製剤および1つまたは複数の免疫原性成分の他に、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、界面活性剤、懸濁化剤、保存剤、着色剤、塩、グルタミン酸一ナトリウム(MSG)を含む抗酸化剤、ビタミンEなどのビタミン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アルブミンデキストロース-カタラーゼ(ADC)、保護コーティング、誘引剤(attractant)および着臭剤(odourant)などの添加剤、ならびにそれだけには限定されないが脂質中に含まれている生物体または他の抗原の残存を助ける物質も含まれ得る。
【0091】
保護コーティングまたは腸コーティング(enterocoating)は、例えば、ゼラチンを含めた、ゲル、パラフィン、およびプラスチックから選択されてよい。コーティングは、経口の投与経路が選択された場合に、胃酸および酵素への曝露を防ぐ上でさらに助けとなる。
【0092】
経口投与に用いる場合、製剤には、例えば、着香料(アニス油、チョコレート、およびペパーミントを含む)、ならびに甘味料(グルコース、フルクトース、もしくはあらゆる他の糖、または人工甘味料を含む)など、嗜好性を改善する添加剤も含むことができる。
【0093】
前述より、免疫原性成分は、タンパク質またはペプチドの複合体などであってよいことが理解できる。
【0094】
一実施形態において、組成物は、上記で同定したもののいずれかから選択される少なくとも2つの免疫原性成分を含み、サブユニットの抗原の複数の組み合わせを含むことができる。3つまたはそれを超える免疫原性成分が実施可能である。
【0095】
組成物における免疫原性成分の濃度は、動物に投与したときに免疫反応、特に小腸の腸管関連リンパ組織における免疫反応を刺激するのに有効である量が存在するのであれば、当技術分野では知られているプロトコールにしたがって変化してよい。マイコバクテリアの場合、1×105から1×1010までのコロニー形成単位(CFU)/mlの範囲が好適である。1×107CFU/mlから1×109CFU/mlまでの濃度が好ましい。クラミジアMOMPおよびヘリコバクターピロリ抗原を含む、タンパク質およびペプチドタイプの抗原では、製剤1グラムあたり10〜1000Fgの範囲が好適である。ウイルスタイプの抗原では、1×103から1×1010、好ましくは1×105から1×108プラーク形成単位(PFU)/mlまでの範囲が好適である。免疫反応は、体液性 (例えば、抗体もしくは免疫メディエータなどの可溶性成分によって)であってよく、または粘膜免疫反応を含めた細胞媒介性であってよい。
【0096】
例えば、一連のin vivo実験において、本発明者らは、胃のヘリコバクター感染、ならびにクラミジアの性器、消化管、および呼吸器感染のBALB/cマウスモデルを試験した。これらの系はヒトの障害に関連することがよく知られており、保護的な粘膜免疫の誘発に対する、本発明の組成物および方法の有効性を決定するのに用いられた。
【0097】
死菌またはサブユニットワクチンは、弱毒化生ワクチンに対する安全な代替を提供し、有害反応があまり付随しない。死菌全細胞のヘリコバクターピロリ、または精製したクラミジアMOMP単独のいずれかでの経口免疫化は、生の細菌の攻撃後の粘膜表面を保護しない。したがって、本発明者らは、脂質を配合した組成物が、ヘリコバクターおよびクラミジアの粘膜感染に対する保護に対して強力な粘膜アジュバントであるCTおよびCpG-ODNの添加あり、およびなしで、非生存の全細胞の抗原および規定されたタンパク質抗原での経口免疫化後に粘膜免疫を誘発する可能性を調査した。
【0098】
本開示において、本発明の脂質組成物中に配合されたワクチンを用いてマウスを経口免疫化すると、複数の粘膜表面の生の細菌の攻撃からの保護を増強することを、本発明者らは実証した。CpG-ODNおよびコレラ毒素(CpG/CT)と混合した、脂質を配合した、死菌全細胞またはタンパク質の抗原は、腸における局所性だけではなく、解剖学的に遠位の性器および呼吸器の表面でも保護を誘発した。
【0099】
経口免疫化を主に制限しているのは、ワクチン接種のための抗原の最適投与量の決定および維持である。経口投与した抗原は、予測できない、幾分低い比率で腸管腔から吸収される。GALTに導入されたタンパク質抗原は、一般的に、免疫よりも寛容性の誘発をもたらす(Challacombe, S.J.およびT.B. Tomasi、J Exp Med、1980年、1459〜72頁)。このようなわけで、経口ワクチンは、適応免疫を追加免疫するのに高投与量の抗原および/またはアジュバントを必要とした。残念なことに、高投与量の抗原、および毒性のアジュバントの存在は、有害な副作用の可能性を増大する。この試験において、単独で投与した、クラミジアMOMP、および死菌全細胞のヘリコバクターピロリは両方とも、細菌感染から粘膜表面を保護することができず、結果は非免疫化の対照に匹敵する。強力な粘膜アジュバントの同時投与は、経口の経路を用いた保護免疫の誘発に望ましい。
【0100】
CTはヒトには毒性であるので、本発明のヒト免疫原性組成物の望ましくない成分である。しかし、CTはある種の他の動物には毒性ではないので、CTは他の動物における免疫を誘発するための免疫原性組成物中に含まれてよい。
【0101】
CpGはオリゴヌクレオチドであるので、その毒性はCTの毒性より低く、CpGを、ヒトに使用するための本発明の免疫原性組成物中に組み入れることができる。したがって、ヒトにおける免疫を誘発するために、本発明の組成物は、クラミジアの抗原、脂質製剤、およびCpGオリゴヌクレオチドを含むことができる。他の実施形態において、本発明の組成物は、クラミジアまたはヘリコバクターピロリいずれかからの抗原、脂質C、脂質Ca、脂質K、脂質Ka、脂質PK、または脂質SPKを含む脂質製剤、およびCpGオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0102】
有用性
本発明の組成物および方法は、粘膜に感染する生物体に対する免疫をもたらすのに有用である。本発明の脂質含有組成物は粘膜免疫をもたらすので、これらは複数の使用によく適している。本発明の免疫原性組成物は、安定なマトリックス中に抗原を維持する脂質製剤を含んでおり、このマトリックスを通して脂質製剤が均一に分散され得る。これにより一貫した投与量の抗原の投与が促進され、投与量ダンピング(dumping)および効果のない低投与量を回避する。脂質製剤はまた、抗原を、胃酸および消化酵素による分解から保護する。脂質ベースの製剤中の免疫原性成分の生存性の損失はまた、凍結乾燥製品に対して報告されている生存性の損失よりも著しく低い。高湿度または湿性の条件下の貯蔵も、製剤の疎水性の性質により、変質なしに実現することができる。
【0103】
ワクチン調製物における免疫原の安定性は、強力かつ持続性の保護免疫を誘発するのに重要である。これは、本発明の組成物を用いて実現することができる。組成物はまた、調製するのが簡単であり、生成がより手軽であり、針およびシリンジの使用を避けることができる場合は消費者受容性および安全性の増大が見出される。
【0104】
本開示は、クラミジアおよびヘリコバクター感染に対する粘膜免疫の誘発の直接的な証拠を提供するものである。本発明者らは、意外なことに、脂質C中に組み入れたMOMPでマウスを経口免疫化すると、クラミジアムリダルムでの性器攻撃からBALB/cマウスを保護する際、強力な粘膜アジュバントであるCTおよびCpGと混合したMOMPで免疫化するのと同じくらい有効であったことを見出した。これは、CT/CpGプラスMOMPで免疫化したマウスに比べて脂質Cで免疫化したマウスに観察された、より低レベルのIFNγ生成および生殖器官の抗体レベルを考慮すると驚くべきことであった。MOMPおよびCT/CpG両方の脂質Cの組入れはより大きなレベルの保護をもたらし、アジュバントを脂質Cと組み合わせた場合の相乗効果を示唆していたことは重要である。
【0105】
本発明者らはまた、意外なことに、紫外線(「UV」)で死菌全細胞のヘリコバクターピロリシドニー株1(H.pylori SS1)を組み入れる本発明の脂質組成物で経口的に免疫化すると、生の生物体での感染に対する粘膜免疫を誘発するのに有効であったことを見出した。さらに、コレラ毒素(「CT」)および細菌のCpGオリゴヌクレオチド(「CpG-ODN」または「CpG」)と混合した上記の組成物はまた、消化管、呼吸器、および性器の粘膜の保護免疫を誘発した。
【0106】
本発明の脂質/抗原組成物によってもたらされる保護の度合いは、抗原として抗原プラスCpG/CTで観察される保護の度合いに匹敵した。したがって、本発明の脂質組成物は、CTおよびCpGの有害な副作用なしに粘膜免疫をもたらす。
【0107】
粘膜保護は、血清および粘膜両方の分泌における、強力な脾臓のIFNγサイトカイン発現および抗原に特異的な抗体に関連していた。IgGは優勢的に血清およびBAL液中に検出され、IgA生成は性器洗浄液および糞便洗浄液において明白であった。この試験においてさらなるアジュバントであるCTおよびCpGの添加なしでの保護は、本発明の脂質組成物を配合したMOMPを用いた経口免疫化の後にも観察された。これは、生の細菌の攻撃後の呼吸器および生殖器官両方のクラミジアの負荷において50%の低減をもたらした。本発明の組成物での経口免疫化は、複数の粘膜表面で保護免疫を効果的に誘発した。
【0108】
経口免疫化は胃の病原体、より低い程度には呼吸器の病原体からの保護を誘発するのに通常用いられているが、経口免疫化はメスの生殖器官を標的にすることができることが数々の研究により実証されている。Challacombeら、Vaccine、1997年2月、15(2)、169〜75頁は、ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)微粒子中のオバルブミンで経口免疫化すると、膣洗浄液中の著しいOVA特異的抗体を誘発したことを示した。インフルエンザ生ウイルスで経口免疫化すると、膀胱、子宮、膣のホモジネートにおいて、および子宮洗浄液において、ウイルス特異的IgAを誘発した(Briese Vら、Arch Gynecol、1987年、240(3)、153〜7頁)。
【0109】
精子受容体ZP3を発現する組換えサルモネラ(Salmonella)でマウスを経口免疫化すると、膣分泌液中のZP-3特異的IgAおよび不妊症を誘発した(Zhang Xら(正誤の公開はBiol Reprod、1997年4月、56(4)、1069頁に発表された) Biology of Reproduction、1997年、56(1)、33〜41頁)。
【0110】
クラミジアの糖脂質外抗原に対する抗イディオタイプ抗体を含むPLG微粒子でマウスを経口免疫化すると、やはり、トラコーマクラミジアのヒト株での性器攻撃からマウスを部分的に保護した(Whittum-Hudson JAら、Nature Medicine、1996年、2(10)、1116〜21頁)。
【0111】
上記の試験は全て、生殖器官における免疫を誘発するのに、生(インフルエンザウイルス)もしくは弱毒化(サルモネラ)いずれかの生物体の使用、またはPLG微粒子中への抗原の組入れを必要とした。PLG微粒子の生成は高価であり、溶媒抽出法の使用はいくつかのタンパク質抗原の免疫原性を破壊し得る。さらに、クラミジア生ワクチンの使用は、トラコーマを予防するための生および死菌ワクチンの試験後に見られた炎症反応の増強のために認可される見込みがない(Grayston JT、Wang SP、Sexually Transmitted Diseases、1978年、5(2)、73〜7頁)。
【0112】
脂質Cは通常の食事の一部として定期的に消費される食品グレードの脂質からもっぱら構成されており、成分を単純に混合することによって簡単に調製することができるので、これらは、調製の容易さおよび費用の点でリポソームおよびPLG微粒子などの他の粒子性の送達系を凌ぐ著しい利点をもたらすことがある。さらに、脂質Cは33℃未満で固体を形成するので、貯蔵中の分解から成分の抗原を保護することができ、それによってワクチンの有効な貯蔵期間を延長する。BCGの脂質Cの組入れは、4℃および室温両方での長期の貯蔵の間、その生存性を確かに増強した(Aldwell FEら、Vaccine、2006年3月15日、24(12)、2071〜8頁)。
【0113】
本発明の脂質製剤の作用機序は完全に理解されていない。あらゆる特定の作用機序に拘泥されるものではないが、脂質Cのアジュバントまたは担体の効果は数々の要因によることがある。第1に、脂肪は、膵臓の酵素によって腸で分解され、胃では分解されないので(Armand M.、Curr Opin Clin Nutr Metab Care、2007年3月、10(2)、156〜64頁)、本発明の組成物は、胃の消化プロセスおよび酸性のpHからの破壊から抗原を保護することができ、抗原を小腸における、または腸の樹状細胞パイエル板などの誘導部位に送達することができる(Rescigno Mら、Nat Immunol 2001年、2(4)、361〜7頁)。
【0114】
脂質はまた、脂質ラフトおよび膜の流動性に対する影響によって、これらの誘導部位における免疫細胞の機能に直接影響を及ぼし得る。脂質ラフトは、MHC分子などのシグナル伝達分子として免疫細胞間のシグナル伝達に不可欠であり、T細胞およびB細胞の受容体は効果的な細胞-細胞シグナル伝達のために脂質ラフトにおいてクラスター形成する必要がある(Horejsi V.、Immunol Rev、2003年2月、191、148〜64頁; Dykstra Mら、Annu Rev Immunol、2003年、21、457〜81頁; Anderson HAら、Nat Immunol、2000年8月、1(2)、156〜62頁)。
【0115】
脂質ラフトは、通常、細胞膜の周囲の領域よりも大量の飽和脂肪酸を含んでおり、脂質ラフトの機能は脂質C中の飽和脂肪酸によって増強され得ることが可能である。裏を返せば、不飽和脂肪酸の部分が増大すれば膜の流動性を増大することができ、膜の流動性は食作用を増強し、それによってAPCによる抗原の取込みを潜在的に増大することができる(Mahoney EMら、Proc Natl Acad Sci U S A、1977年11月、74(11)、4895〜9頁; Weatherill ARら、J Immunol、2005年5月1日、174(9)、5390〜7頁; Schweitzer SCら、J Lipid Res、2006年11月、47(11)、2525〜37頁)。
【0116】
様々な脂質も抗炎症効果を有し、リンパ球の刺激を阻害すると報告されている(Calder PCら、Biochem Soc Trans、1989年12月、17(6)、1042〜3頁; Calder PCら、Biochem Soc Trans、1990年10月、18(5)、904〜5頁)。どのメカニズムが脂質Cのアジュバント効果に重要であるかを決定することが有用であり得る。食品グレードの脂質から配合された低毒性のアジュバントは、粘膜ワクチン接種に対する別の重大な利点をもたらすことがある。形質細胞の半減期は短く、正常の生殖周期の一部分としてのメスの生殖器官において組織がリモデリングするために、粘膜反応は一般的に短命である。免疫の保護レベルを維持するのに、それ自体頻繁な追加免疫が必要とされ得る。脂質Cでのこれらの、および他の試験において、本発明者らは、複数の経口投与量の脂質Cに対する有害反応がないことを観察し、これは頻繁な使用が十分耐容されることを示唆している。
【0117】
ベクター動物のワクチン接種
動物における疾患を低減する一方法は、病原体に対する動物の曝露を低減することである。ある種の病原体の場合、動物が疾患の徴候または症状を示さなくても、ベクター動物は病原体の「プール」を提供し得る。したがって、フクロネズミ、アナグマ、ウシ、齧歯動物、シカなどの野生動物のワクチン接種は、病原体によって引き起こされる疾患の発生率を低減するのに有効であり得る。ベクター動物にワクチン接種するには、ワクチンを粘膜の経路によって送達するのが望ましいことがある。したがって、経口ワクチンは、実践的で対費用効果の高い送達の選択肢を代表する。したがって、ある実施形態において、本発明の脂質組成物は、ワクチン接種するベクター動物に基づいて選択され得る誘引剤、着香料、および着臭剤を含むことができる。ヒトの経口ワクチン接種も、より対費用効果が高いワクチン接種方法であり、ユーザーの支持を見出す可能性がある。
【0118】
さらに、皮下などの他の方法において投与する場合、本発明の脂質製剤は、マクロファージまたは他のスカベンジャー細胞などによる襲撃からの保護をもたらすことができる。皮下投与または注射による投与では、脂質デポの製剤も、徐放を可能にして感染プロセスを模倣し、免疫反応のマウンティング(mounting)を促進する。
【0119】
本組成物は、生殖器官、眼、消化管、および呼吸器の病原体を含む、広範囲の感染性生物体に対する免疫反応を誘発するのに有効であり得る。例として、脂質Cは、生殖器官および消化管における免疫反応を誘発するのに有効であり得、脂質PKは、上部および下部消化管、ならびに呼吸器における免疫反応を誘発するのに有効であり得る。
【0120】
本発明の組成物はまた、広範囲の抗原のための、または免疫原性分子(とりわけ、投与量もしくは免疫原性の理由で免疫原性が劣るもの)の同時送達もしくはコンジュゲート送達のためのワクチンの送達系として用いることができる。本発明の組成物は、ワクチンアジュバントとしても有用であり、従来のアジュバント(例えば、フロイントの完全アジュバント、またはフロイントの不完全アジュバント)と一緒に送達することができる。
【0121】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明するために示すものである。当業者であれば、本明細書の開示および教示を容易に適応させて、過度の実験なしに他の実施形態を生成することができることが理解できる。このような実施形態は全て、本発明の一部分とみなされる。
【0122】
(実施例1)
組換えクラミジアMOMPの調製
クラミジア、およびマウスにおけるその感染性の性質は、ヒトの疾患において見られるものと非常に類似しており、したがって、このような感染、これらの性質、およびこれらの処置の研究はヒトの治療法を大いに予測するものである。クラミジア感染の研究では、主要外膜タンパク質(MOMP)を、Berryらから適用した方法によって精製した(Berry, L.J.ら、Infect Immun、2004年、72(2)、1019〜28頁)。簡潔に述べると、組換えマルトース結合性タンパク質(MBP)-MOMP融合タンパク質をコードするpMAL-c2ベクターを発現する、形質転換した大腸菌(Escherichia coli)(DH5α{pMMM3}) (Harlam Caldwell-Rocky Mountain Labs、Hamilton、MTから快く提供) (Su, H.ら、Proc Natl Acad Sci U S A、1996年、93(20)、11143〜8頁)を、アンピシリン栄養寒天上で増殖後単離し、超音波によって収集した(Berryらの通り)。
【0123】
クラミジアムリダルムの主要外膜タンパク質(MOMP)を、組換えマルトース結合性タンパク質(MBP)-MOMP融合タンパク質をコードするpMAL-c2ベクターを発現する、形質転換した大腸菌(DH5α{pMMM3}) (Harlan Caldwell、Rocky Mountain Labs、Hamilton、MTから快く提供)からBerryらの方法によって精製した。クラミジアムリダルムは、マウス生殖器官の感染を引き起こす病原体である。
【0124】
MOMPを、製造元の説明書(Sigma-Aldrich、Castle Hill、オーストラリア)にしたがって調製した透析管を用いて精製し、8M尿素からPBS(pH7.2)にリフォールディングした。Pierce BSAタンパク質推定キットを用いてタンパク質濃度を推定し、必要時まで-20℃で貯蔵した。
【0125】
(実施例2)
ヘリコバクターピロリに対して免疫化するための抗原の調製
ヘリコバクターピロリ感染の研究には、血液寒天ベースNo.2(Oxoid Ltd.、Basingstoke、英国)およびSuttonら(Sutton, P.ら、Vaccine、2000年、18(24)、2677〜85頁)によって公開されたSkirrowのサプリメント中5%(v/v)滅菌ウマ血液からなるカンピロバクター選択寒天(CSA)上で増殖させた、ヘリコバクターピロリシドニー株1(Dr Hazel Mitchell、University of New South Wales (Lee, A.ら、Gastroenterology、1997年、112(4)、1386〜97頁)によって快く提供された)を用いて、全体の死菌抗原を生成した。平板を滅菌PBS中に回収し、濃度(1mlあたりのコロニー形成単位)をMcFarlandの標準を用いて確立した。生細菌を、紫外線(UV)照射に曝露することによって不活性化し、細菌の生存性の欠如を培養によって確証した。死菌全細胞のヘリコバクターピロリを、使用まで-20℃で貯蔵した。
【0126】
(実施例3)
免疫化組成物の調製I
ミリスチン酸1%、パルミチン酸25%、ステアリン酸15%、オレイン酸50%、およびリノール酸6%を含む、分画化し、精製したトリグリセリドからなる脂質C製剤は、Immune Solutions Ltd(Dunedin、ニュージーランド)によって供給された。クラミジアの感染試験には、MOMP200μgを抗原として用い、107cfuの死菌全細胞のヘリコバクターピロリをヘリコバクターの免疫化に用いた。免疫化の群は、(1)非免疫化の対照動物、(2)10μgCpG-ODN 1826(5'- TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT -3';配列番号1)(Geneworks)および10μgコレラ毒素(Sapphire Biosciences)(CpG/CT)を混合した抗原で処置した動物、(3)脂質Cおよび抗原単独で処置した動物、ならびに(4)脂質CプラスCpG/CTと混合した抗原で処置した動物を含んでいた。
【0127】
脂質C、MOMP、CT、およびCpGを、脂質C150ulがMOMP単独200ug、またはCT(10ug)およびCpG(10ug)と一緒に含むように、三方コックおよびシリンジ2個を用いて混合した。これらの投与量のCTおよびCpGは、最適のアジュバント効果をもたらすことが予め見出されており、したがって、CTまたはCpGなしの免疫原で処置した動物に比べて、免疫反応を最大にするのに十分な投与量を表す。脂質を配合しなかったワクチンMOMPでは、単独、またはCTおよびCpGと組み合わせたもののいずれかをPBS中に調製した。配合したワクチンは全て、第1の免疫化の前に調製し、必要になるまで4℃で貯蔵した。非配合のワクチンは、各免疫化の日に調製することが必要とされた。
【0128】
(実施例4)
マウスの免疫化
特定病原体除去(SPF)のBALB/cメスマウスを、Animal Resource Centre(ARC)(Perth、WA)から入手した。動物を標準の昼夜サイクル下で収容し、滅菌した餌および水を適宜供給した。手順は全てThe University of Newcastle's Animal Care and Ethics Committeeによって認可された。
【0129】
マウスを、イソフルラン麻酔下、終端が球状の針を用いて経口胃管栄養法によって、1週間間隔で3回、免疫化溶液150ilで免疫化し、3週間後に追加免疫した。対照の動物は、同じく処置したが、免疫化はしなかった。
【0130】
クラミジアまたはヘリコバクターに感染したマウスは、ヒトにおいて観察される効果を合理的に予測する、技術分野では認められている系を代表する。したがって、これらのマウス系において本発明の組成物を用いて得られる結果は、クラミジアまたはヘリコバクターに感染したヒトに観察される効果を表す。
【0131】
(実施例5)
試料採取およびMOMP特異的IgGおよびIgAのELISA分析I
上記実施例4にしたがって免疫した動物の最終の免疫化の1週間後、滅菌PBS50ulで膣円蓋をフラッシュすることによって膣洗浄液(VL)を採集した。致死量のペントバルビタールナトリウムを投与後、心臓出血によって採血した。
【0132】
血清中のMOMP特異的IgGおよびIgAと、VLとを、ELISAによって測定した。Greiner immunopure ELISAプレート(Interpath Ltd、オーストラリア)を、ホウ酸緩衝液(pH9.6)中希釈したクラミジアムリダルムMBP-MOMP(2μg/ウエル)でコーティングし、4℃で一夜インキュベートした。プレートを、PBS中0.05%Tween 20(PBST)で3回洗浄し、5%ウシ胎仔血清を含むPBST100μlで、37℃で1時間ブロックした。プレートをPBST中3回洗浄し、試料100μlを2回ずつ加え、PBST中2倍の段階希釈をした。血清をPBST中1/100から1/12,800まで希釈し、VL液を1/20から1/2,560まで希釈した。滅菌PBSを各ELISAに対する陰性対照として用いた。プレートに覆いをし、37℃で1時間インキュベートし、次いでPBSTで3回洗浄した。MOMP結合した抗体を、HRP-コンジュゲートした、それぞれ1/500および1/1,000希釈した抗IgAまたは抗IgG(Southern Biotechnology Associates、Birmingham、AL)を用い、その後テトラメチルベンチジン(TMB)発色システムによって検出した。エンドポイント力価(E.P.T)値を、PBS対照ウエルの平均値+2つの標準偏差と定義した。抗原特異的な抗体の割合を、「試験」群で免疫化した試料に対するE.P.Tを、非免疫化の対照のE.P.Tで除すことによって算出した。
【0133】
(実施例6)
T細胞増殖およびサイトカイン生成I
脾臓のリンパ球を、上記実施例1における通りに処置した動物から記載した通りに調製し、CFSEで標識し、次いで完全RPMI(5%FCS、L-グルタミン、5×10-5M 2-メルカプトエタノール、HEPESバッファー、ペニシリン-ストレプトマイシンを補ったRPMI1640、全てTrace Biosciencesから)中5×106細胞/mlに懸濁した。細胞(100μl)を3つずつ、96ウエルプレートに加えた(陰性対照として未染色細胞を用いた)。培地(バックグラウンド対照)、抗原MOMP(2μg/ウエル)、またはConA(2μg/ウエル)(陽性対照)を好適なウエルに加えた。プレートを、5%CO2中37℃で96時間インキュベートし、次いで細胞を遠心分離によって採集した。細胞をPECy7プレコンジュゲートしたCD3抗体(Becton Dickinson)を用いて染色し、増殖性のT細胞をFACSCantoフローサイトメーター(Becton Dickinson、Sydney、オーストラリア)を用いて分析した。抗原とのin vitroの培養によって増殖が誘発された(>3細胞分裂)T細胞のパーセントを、Weaselソフトウエア(Walter and Elisa Hall Institute、Melbourne、オーストラリア)を用いて決定した。
【0134】
(実施例7)
MOMP特異的T細胞反応I
CFSEを用いた色素希釈アッセイによってT細胞の増殖をアッセイし、>3の細胞分裂を経験したCD3+細胞のパーセントとして表す。in vitroでMOMP+CT/CpGで免疫化したマウスからの細胞を再刺激することにより、>3ラウンドの分裂を経験した細胞の10.2%(範囲7〜13%)、および脂質C中MOMPで免疫化した動物からのCD3+脾細胞の9.7%(範囲8〜11%)の増殖がもたらされた。脂質C中MOMPおよびCT/CpGの組合せ両方での免疫化により、in vitroの刺激後、CD3 T細胞の9.9%(範囲8〜11%)の増殖がもたらされた(Table 1 (表1))。
【0135】
【表1】

【0136】
Table 1(表1)から見ることができるように、T細胞の増殖はMOMP+CpG/CT、および脂質C+MOMPによって、ならびに組合せの脂質C+MONP+Ct/CPGによって増大した。さらに、インターフェロンγ(IFNγ)は、脂質C中のMOMPで免疫した動物に比べて、CT/CpGアジュバントで免疫した動物において見られるより高レベルで、実験群全てからの細胞によって生成された主なサイトカインであった。Th2サイトカインIL-4およびIL-10の最高の生成も、MOMPプラスCT/CpGで免疫化した動物からの細胞において見られた。非免疫化の対照に比べて、実験群全てからの細胞に、IL-10およびIL-12生成における少々の増大が見られた。
【0137】
これらの結果は、クラミジアに感染したマウスは、この生物体に曝露されたヒトに観察される反応に類似の免疫反応を有する(例えば、T細胞の増殖およびIFNγ生成)ことを指摘している。これらの結果はまた、このマウス系において観察された結果は、ヒトにおいて観察される効果を予想するものであることも指摘している。
【0138】
(実施例8)
MOMP特異的抗体I
最終の免疫化の1週間後、MOMP特異的抗体が、血清および膣洗浄液中に検出された(図1)。図1Aは、血清IgG抗体は、MOMP+CT/CpGで免疫化した動物において最も高く(非免疫化の対照に比べて、EPT比>30、p <0.05)、脂質C中に組み入れられたMOMPおよびCT/CpGの両方で免疫化した動物においてやはり有意に増大した(EPT比>20、p <0.05)ことを示すグラフである。脂質C中のMOMPで免疫化した動物に、血清IgGレベルにおける5倍の増大が見られた(図1A)。
【0139】
MOMP+CpG/CTで免疫したマウスから採集した膣洗浄(VL)液も、IgGレベルの増大を示し、非免疫化の対照に比べて統計学的に有意な10倍の増大であった(p<0.05)。さらに、脂質CおよびMOMPは一緒に、IgAにおける2倍の増大をもたらし、これは非免疫化の対照に比べてVL液において観察された(図1B)。
【0140】
これらの結果は、本発明の組成物を用いた免疫化は、抗体の反応(例えば、IgG生成の増大)を誘発するのに効果的であったことを指摘している。本発明者らは、脂質Cは、クラミジアMOMP抗原に対する膣粘膜の免疫反応を増大することができると結論する。これらの結果は、クラミジアに感染したヒトに見られる効果を予測するものである。
【0141】
(実施例9)
クラミジアムリダルムの性器攻撃のための方法および細菌の回収I
膣内攻撃の7日前、マウスを全て実施例1または対照にしたがって処置し、酢酸メドロキシプロゲステロン(Depo-Ralovera、Kenral, Rydalmere、New South Wales、オーストラリア)2.5mgを皮下投与した。マウスをキシラジン(90mg/kg)およびケタミン(10mg/kg)で麻酔し、ショ糖リン酸グルタメート(sucrose phosphate glutamate (SPG))20μl中クラミジアムリダルム5×104ifuで膣内攻撃した。21日間、感染を進行させた。クラミジア感染のクリアランスを、感染0日目から18日目まで3日間隔で、滅菌冷SPGで湿らせた膣スワブ(鼻咽頭用Calgiswab、Interpath)の採集によってモニタリングした。スワブを、滅菌SPG500μlおよびガラスビーズ2個を含む滅菌エッペンドルフ管中に配置し、ボルテックスにかけ、次いで-80℃で貯蔵した。細菌の回収を、記載されている通りに(Barker CJら、Vaccine、2008年3月4日、26(10)、1285〜96頁)、McCoy細胞単層上のin vitroの細胞培養物を用いて評価し、適応させた(Hickey, D.K.ら、Vaccine、2002年、22、4306〜4315頁)。
【0142】
簡潔に述べると、McCoy細胞を、48ウエル平底プレート中、完全DMEM(5% FCS、HEPESバッファー、5ig/mlゲンタマイシン、および100ig/mlストレプトマイシン)中70%のコンフルエントに増殖させた。血清または膣洗浄液20ilを、1000封入体形成単位(IFU)のクラミジアムリダルム(トラコーマクラミジアマウス間質性肺炎次亜種、ATCC VR-123)基本小体(EB)と、37℃で30分間インキュベートした。抗体およびクラミジアムリダルム溶液を、完全DMEM中増殖させたMcCoy細胞に加え(最終体積250il)、5%CO2中37℃で3時間インキュベートした。培地を除去し、1ig/mlシクロヘキサミド(Sigma-Aldrich、Castle Hill、オーストラリア)を含む新鮮DMEM(500il)を各ウエルに加え、その後5%CO2中37℃で一夜インキュベートした。プレートを、光学顕微鏡によって、クラミジアの封入体の存在に対して観察し、この点で細胞をPBS中2回洗浄し、次いで100%メタノール中10分間固定し、その後クラミジア特異的染色をした。
【0143】
統計学的分析
データを平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表す。片側分散分析(ANOVA)およびその後Bonferroniの事後検定を用いて、各群に対する免疫グロブリン濃度とin vitroの中和活性との間の差を調べた。全試験に対して有意レベルをP<0.05に設定した。統計上の検定は全て、Windows(登録商標)用GraphPad Prismバージョン4.00(GraphPad Software、San Diego、California、米国)を用いて行った。
【0144】
(実施例10)
クラミジアの性器攻撃からの保護I
生細菌の攻撃後の細菌の排出を、3日間隔で採集した膣スワブのin vitroの培養物によって決定した(図2)。図2Aは、免疫化した動物および対照の動物におけるクラミジアムリダルムでの攻撃後の感染形成単位(IFU)の回収の効果の時間経過を示す。
【0145】
図2Bは、各曲線下総面積を測定することによって、総感染力を測定したグラフを示す。MOMP単独での経口免疫化は、非免疫化の対照と有意に差がなかった。MOMPおよびCpG/CTでの経口免疫化は、感染ピーク時の細菌の排出における30%の低減をもたらした(6日目、図2A)。18日の感染期間にわたって、MOMPおよびCpG/CTで免疫化をすると、非免疫化の対照に比べて感染力における50%の低減がもたらされた(図2B)。
【0146】
MOMPを脂質C中に組み入れると、総感染力における50%の低減がもたらされ(図2B、p<0.05)、6日目に細菌の排出における60%の低減がもたらされた(図2A)。最大レベルの性器の保護は、CpG/CTと同時投与した脂質Cを配合したMOMPで経口免疫化した後に観察された。この群は、全体的な感染における75%の低減を示し、6日目に回収したクラミジアムリダルムにおける75%の低減を示した(p<0.01)。経口免疫化は、全群において感染からの部分的な保護をもたらした。しかし、MOMPおよびCT/CpGの両方を脂質Cに組み入れると、脂質C中MOMP単独、またはMOMPプラスCT/CpGで免疫化した動物に見られたものを凌いで保護を有意に増大した。意外なことに、脂質Cを、MOMPおよびCpG/CTを含む組成物に加えると、クラミジアの回収をさらに低減した。CpG/CTの投与量は単独で最適であるので、脂質Cの添加による感染におけるさらなる低減は、先行技術のアジュバントCpG/CTと脂質Cとの間に完全に予想外の相乗作用が存在することを指摘している。
【0147】
これらの結果は、本発明の組成物を用いて動物を免疫化すると、クラミジアによるその後の接種によって引き起こされる感染を著しく低減し得ることを指摘している。さらに、これらの結果は、クラミジアによる感染からの実質的な免疫学的保護は、毒性のアジュバントであるCpGまたはCTを必要とせずに、本発明の脂質組成物を用いて得ることができることを指摘している。これらの結果は、ヒトに観察される効果を予測するものであり、クラミジア抗原を含む、以前の免疫原性組成物を凌ぐ、主な、予想外の利点を表すものである。
【0148】
(実施例11)
分析用の試料の採集II
血清、膣洗浄液、気管支肺胞洗浄液、および糞便ペレット洗浄液の試料を、最終免疫化の1週間後に得た。血清、膣洗浄液(VL)、および気管支肺胞洗浄液(BAL)をクラミジア試験用に採集し、血清および糞便ペレット(FP)洗浄液をヘリコバクターピロリ試験用に採集した。23ゲージ滅菌針および1mlシリンジを用いて、致死投与量のペントバルビトンナトリウム下、心臓からの終末部採血を行い、次いで、血液を1.5ml滅菌エッペンドルフ管に移し、遠心分離によって血清を得た。膣円蓋を滅菌リン酸緩衝食塩水(「PBS」)50μlでフラッシュすることによって、膣洗浄液を採集した。液を0.5ml滅菌エッペンドルフ管中に採集した。平滑末端化した23ゲージ針を気管中に挿入することによって気管支肺胞洗浄液を採集し、Hanks平衡塩類溶液(「HBSS」)750μlで肺を2回フラッシュし、1.5ml滅菌エッペンドルフ管中に採集した。血清、VL、およびBALの試料を-20℃で貯蔵する。
【0149】
新鮮な糞便ペレット2個を、1μg/mlダイズトリプシン阻害物質を含むsPBS1ml中に採集し、15分間ボルテックスにかけ、次いで10,000rpmで10分間遠心して固体を除去した。上清(800μl)を、グリセロール200μl+PMSF(200mM、Sigma)20μlを含む新鮮なエッペンドルフ管に加え、簡単にボルテックスにかけ、-80℃で貯蔵した。
【0150】
(実施例12)
抗原特異的IgGおよびIgAのELISAを測定するための方法II
血清中IgGおよびIgA特異的抗原レベル、VL、BAL、およびFPを、酵素結合免疫吸着検定法(「ELISA」)によって決定した。Greiner Immunopure(商標)ELISAプレート(Interpath Ltd、オーストラリア)を、免疫化モデルに応じてクラミジアムリダルムMBP-MOMP(2μg/ウエル)またはヘリコバクターピロリ粗製超音波処理物(0.05μg/ウエル)のいずれかでコーティングし、ホウ酸緩衝溶液(pH9.6)中希釈し、4℃で一夜インキュベートした。プレートを、PBS中0.05%Tween20(「PBST」)で3回洗浄し、クラミジア試験では5%ウシ胎仔血清を含むPBST100μlで、またはヘリコバクターピロリ試験ではPBST中5%スキムミルクで、37℃で1時間ブロックした。プレートをPBST中3回洗浄し、試料100μlをA列に2回ずつ加え、PBST中7回、2倍に段階希釈した。血清を、PBST中1/100から1/12,800まで希釈した。VL液を1/20から1/2,560まで希釈した。BAL液およびFP洗浄液をストレートで加え、1/128に希釈した。各ELISAに対する陰性対照として滅菌PBSを用いた。プレートに覆いをし、37℃で1時間インキュベートし、次いでPBSTで3回洗浄した。MOMPが結合した抗体を、それぞれ1/500および1/1,000希釈した、HRPコンジュゲートした抗IgAまたは抗IgGを用いて検出し(Southern Biotechnology Associates、Birmingham)、引き続きテトラメチルベンチジン(「TMB」)発色システム(Hickey, D.K.ら、Vaccine、2004年、22(31〜32)、4306〜15頁)にかけた。エンドポイント力価(E.P.T)カットオフ線を、PBS対照ウエルの平均値+PBSの2つの標準偏差であると決定した。抗原に特異的な抗体の比率を、「試験」群の免疫化試料に対するE.P.Tを、非免疫化の対照のE.P.Tで除すことによって算出した。
【0151】
(実施例13)
脾臓のT細胞増殖アッセイII
全組織をステンレススチール製の篩を通してホモジナイズすることによって、脾細胞の単細胞懸濁液を調製し、HBSS中2回洗浄した。赤血球を、赤血球溶解バッファー(NH4Cl)を添加することによって溶解し、HBSS中2回洗浄した。細胞を、CFSE(最終濃度5μM)を含む滅菌PBS中107/mlに再懸濁し、暗所、37℃で10分間、インキュベートした。2容積のFCSを加えることによってCFSEをクエンチし、完全RPMI(5%FCS、L-グルタミン、5×10-5M 2-メルカプトエタノール、HEPESバッファー、ペニシリン-ストレプトマイシンを補ったRPMI1640ベース、全てTrace Biosciencesから)中3回洗浄した。
【0152】
細胞を5×106細胞/mlの密度で再懸濁し、100OL109/f"Symbol"/s111を96ウエルプレートに3つずつ加えた(未染色の細胞を陰性対照として用いた)。培地(バックグラウンド対照)、抗原(クラミジアMOMP 2μg/ウエル、もしくはヘリコバクターピロリ粗製超音波処理物0.1μg/ウエル)、またはConconavalin A(「ConA」2μg/ウエル)(陽性対照として)を好適なウエルに加えた。プレートを5%CO2中37℃で96時間インキュベートし、次いで細胞を遠心分離によって採集した。細胞を、PerCy7プレコンジュゲートCD3抗体を用いて染色し、陽性の細胞を、FACSCanto(商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson、Sydney、オーストラリア)を用いてCFSE標識したT細胞を同定するために488nmの蛍光で分析した。in vitroの抗原との培養物によって増殖(>3細胞分裂)するよう誘発されたT細胞のパーセントを、Weasel(商標)ソフトウエア(Walter and Elisa Hall Institute、Melbourne、オーストラリア)を用いて決定した。
【0153】
(実施例14)
サイトカイン発現をアッセイするための方法II
脾細胞の単細胞懸濁液を、上記に記載した通りに調製した。細胞を、完全RPMI中5×106細胞/mlの密度で再懸濁し、100μlを96ウエルプレート(Greiner-Interpath Ltd)に3回ずつ加えた。培地(バックグラウンド対照)、抗原(クラミジアMOMP2μg/ウエル、もしくはヘリコバクターピロリ粗製超音波処理物0.1μg/ウエル)、またはConA(2μg/ウエル)(陽性対照)を好適なウエルに加え、5%CO2中37℃で72時間インキュベートした。上清を、新鮮なエッペンドルフ管中に採集し、Bioplex分析によるサイトカイン分析まで-80℃で貯蔵した。Bio-rad6-plexマウスサイトカインキット(Bio-Rad)により、培養上清物中のIFNγ、TNFα、インターロイキン-12、インターロイキン-4、インターロイキン-10、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GMCSF」)の濃度(pg/ml)を同定し、製造元の説明書にしたがってBioplex(商標)機器(BIO-RAD)上分析した。
【0154】
(実施例15)
ヘリコバクターピロリSS1攻撃および細菌の回収
ヘリコバクターピロリSS1を、5%(v/v)ウマ血清およびSkirrowのサプリメントを含むブレインハートインフージョン(「BHI」)ブロス培養液(Oxoid)中、CO210%および湿度95%、37℃で2日間増殖させた。細菌を300rpmで20分間遠心分離することによってペレット化し、108cfu/mlの濃度で再懸濁した。軽度のイソフルロタン(isoflurothane)麻酔下、胃管栄養法針を用いて細菌懸濁液(約107cfu/マウス)100μlを3日の期間にわたって2回、マウスを胃内接種した。最終の免疫化の1週間後に動物を攻撃し、6週間感染を進行させた。屠殺後、胃を切除し、大弯に沿って切断し、食塩水中すすいで内容物を除去した。胃底を除去し、胃を小弯に沿って半分に切断した。組織の半分の一方を重量測定し、BHI500μl中に配置した。胃の組織を、Tissue Tearor(商標)(Biospec Products Inc.)を用いてホモジナイズし、10倍段階希釈をBHI中調製した。各希釈の100μl(1:1000にニート)を、Glaxo Selective Supplement A(「GSSA」、バンコマイシン10μg/ml、ポリミキシンB0.33μg/ml、バシトラシン20μg/ml、ナリジクス酸1.2μg/ml、およびアムホテリシンB 5mg/ml)を補ったCSA血液寒天平板(上記の通り)上に塗抹した。
【0155】
37℃の加湿した微好気性の条件下で6日インキュベート後、コロニーを計数し、胃組織1グラムあたりのコロニー形成単位(「cfu」)を計測した。ヘリコバクターピロリ特異的ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)の確認も決定した。製造元の説明書にしたがってDNA Wizard(商標)抽出キット(Promega)を用いて、ホモジナイズした組織(20mg)を抽出した。Go Taq Green Master Mix(商標)(Promega、オーストラリア)、およびヘリコバクター特異的プライマーHp001 (5' TATGACGGGTATCCGGC 3'、配列番号2) およびHp 002 (5' ATTCCACTTACCTCTCCCA 3'、配列番号3) (配列はDr Sutton、Melbourne Universityによって快く提供された)を用いてDNA(20μl反応)をPCR増幅した。増幅条件は、95℃で2分間、その後30サイクル各94℃2秒、各53℃2秒、各72℃30秒、および72℃5分間の最終ステップであった。バンドを、エチジウムブロマイドを含む1.5%アガロースゲル上、UV光下で可視化した。
【0156】
(実施例16)
クラミジアムリダルムの性器攻撃および細菌の回収
膣内攻撃7日前、全てのマウスに酢酸メドロキシプロゲステロン(Depo-Ralovera;Kenral, Rydalmere、New South Wales、オーストラリア)2.5mgを皮下投与した。マウスに、キシラジン(90mg/kg)およびケタミン(10mg/kg)で腹腔内麻酔し、ショ糖リン酸グルタメート(「SPG」)20μl中クラミジアムリダルム5×104感染形成単位(「IFU」)で膣内攻撃した。21日間、感染を進行させた。クリアランスのモニタリングを、感染0日目から18日目まで3日間隔で、膣スワブ(滅菌冷SPGで湿らせた鼻咽頭用Calgiswab(商標)(Interpath))の採集によって観察した。各スワブを、滅菌SPG500μlおよびガラスビーズ2個を含む滅菌エッペンドルフ管中に配置し、-80℃で貯蔵した。
【0157】
細菌の回収を、in vitroの細胞培養物を用いて評価した。McCoy細胞の単層を70%のコンフルエントに増殖させ、ボルテックスにかけたスワブ溶液10μlを、5%FCS、hepesバッファー、ゲンタマイシン(5μg/ml)、およびストレプトマイシン(100μg/ml)を含む新鮮DMEM300μlを含む培養ウエルに加えた。37℃5%CO2で3時間のインキュベーション期間の後、培地を除去し、1μg/mlを含む新鮮な完全DMEM(Sigma-Aldrich、Castle Hill、オーストラリア)500μlで置き換え、37℃、5%CO2で一夜インキュベートした。封入体を光学顕微鏡下で可視化し、この時点に細胞を100%メタノール中10分間固定し、Hickeyらによるクラミジア特異的染色を用いて染色した(Hickey, D.K.ら、Vaccine、2004年、22(31〜32)、4306〜15頁)。
【0158】
(実施例17)
クラミジアムリダルム呼吸器攻撃および細菌の回収
呼吸器攻撃では、動物を軽度のイソフルロタン下で麻酔し、冷ショ糖リン酸グルタメート(「SPG」)溶液中クラミジアムリダルム103IFUを、鼻腔内接種によって投与した(各鼻孔に5μl)。次いで、マウスを各自のケージに戻し、バイオセーフティーPC2の条件下に収容し、12日間 (推定のピーク感染までの時間) 感染を進行させた。屠殺後、重量測定した左の肺組織を、ガラスビーズ2個を含むSPG500μl中に採集した。組織を鋏で細切し、1分間ボルテックスにかけた。組織5mgを、完全DMEM(5%FCS、hepesバッファー、5μg/mlゲンタマイシン、および100μg/mlストレプトマイシン)500μlを含む、70%コンフルエントに増殖させたMcCoy細胞単層を含む48ウエル培養プレートに加え、37℃5%CO2で3時間インキュベートした。培地を除去し、1mg/mlを含む新鮮な完全DMEM(Sigma-Aldrich、Castle Hill、オーストラリア)500μlで置き換え、37℃5%CO2で一夜インキュベートした。封入体を光学顕微鏡下で可視化し、この時点に細胞を100%メタノール中10分間固定し、Hickeyらによるクラミジア特異的染色を用いて染色した(Hickey, D.K.ら、Vaccine、2004年、22(31〜32)、4306〜15頁)。
【0159】
(実施例18)
統計学的分析および結果
データを、各実験群におけるマウス5匹の数に対する平均値±平均の標準誤差(SEM)として表す。片側分散分析(ANOVA)およびその後Bonferroniの事後検定を用いて、各群に対して免疫グロブリン濃度、ASC数、および中和能力の間の差を調べた。全検定に対して有意レベルをP<0.05に設定した。統計上の検定は全て、Windows(登録商標)用GraphPad Prism(商標)バージョン4.00(GraphPad Software、San Diego、California、米国、www.graphpad.com)を用いて行った。
【0160】
(実施例19)
T細胞反応II
T細胞の増殖を、CFSE色素希釈アッセイを用いて測定した。増殖を、>3の分裂を経験したCD3陽性細胞のパーセント値(%)として表す。MOMPおよびヘリコバクターピロリの超音波処理物だけがナイーブの細胞において低レベルの細胞分裂を引き起こすので、3ラウンドの細胞分裂をバックグラウンドの増殖に対する閾値であるとみなした。
【0161】
死菌ヘリコバクターピロリでの経口免疫化の後、CpG/CTと混合した、死菌全細胞のヘリコバクターピロリと配合した脂質Cで免疫化したマウスから単離した脾臓T細胞だけが、非免疫化の対照(1〜2%)に比べて分裂の増大(6〜7%)を示した。細胞の増殖は、MOMP抗原での経口免疫化後に、非免疫化の対照に比べて、免疫化の全群において増大した。in vitroでMOMP+CpG/CTで免疫化した動物からの細胞を再刺激すると、>3ラウンドの増殖を経験した細胞が7〜13%であるという結果になり、MOMP+脂質Cで免疫化した動物では7〜11%の細胞の増殖という結果になった。アジュバントおよび脂質Cの両方をMOMP抗原と組み合わせると、8〜11%のT細胞の増殖をもたらした。この組合せは、MOMP+CpG/CTまたは脂質Cを配合したMOMP単独で免疫化した動物からの細胞に見られたレベルを凌ぐ、T細胞の増殖をさらに増強しなかった(Table 2 (表2))。
【0162】
MOMPまたはヘリコバクターピロリ超音波処理物でのin vitro刺激後のサイトカインの生成を、Bioplex分析を用いて決定した。両方の免疫化モデルにおける全群に対して、T細胞によって生成された主なサイトカインはIFNγであった。CpG/CTアジュバントで免疫化した後、細胞によって生成されたIFNγの濃度は、脂質Cで免疫化した動物からの細胞に見られた濃度に比べて、概ね増強されていた。IL-4レベルは、死菌全細胞のヘリコバクターピロリで免疫化した後は一律に低かったが(<10pg/ml)、CpG/CTと混合したMOMPで免疫化した後のクラミジアの試験において>100pg/mlの結果が観察された。一般的に、全ての免疫化群からのIL-10レベルは、非免疫化の対照の培養物に見られたレベルを超えて増大した。しかし、IL-10生成は、MOMPまたは死菌全細胞のヘリコバクターピロリ抗原を脂質C中に配合した場合、実験間で変化した。in vitroの抗原刺激後のIL-12の生成の増大が、全ての免疫化の群からの細胞の培養物中に観察されたが、両方のモデルに対して脂質Cを配合した抗原単独の群において、実験間の変動が観察された(Table 2 (表2))。IFNγが主なサイトカインであった。
【0163】
Table 2 (表2)は、抗原特異的脾臓T細胞の増殖およびサイトカインの発現が、最終の免疫化の1週間後にin vitroで決定されたことを示す。
【0164】
【表2】

【0165】
経口免疫化により、全群において、最終の免疫化の1週間後に脾臓から単離したT細胞の、MOMP特異的な著しい増殖が誘発された。サイトカインの定量的な生成をBioplex分析によって決定し、結果をpg/mlとして示す。結果は2つの別々の実験を代表する。
【0166】
これらの結果は、ヘリコバクターピロリまたはクラミジアによる感染後、マウスは典型的な免疫反応で反応し、T細胞は増殖し、炎症メディエータの生成が増殖したことを指摘している。さらに、本発明の組成物を用いた免疫化は、ヘリコバクターピロリまたはクラミジアの接種に対する免疫反応を増大する上で有効であった。これらの結果は、毒性のCpGまたはCTアジュバントを使用せずに本発明の組成物を用いて、実質的な免疫学的保護を誘発することができることも指摘している。これらの結果はヒトに観察される効果を予測するものであり、先行技術の組成物を凌ぐ意外な改善を表すものである。
【0167】
(実施例20)
ヘリコバクター特異的抗体
死菌全細胞のヘリコバクターピロリでマウスを経口免疫化した後、ヘリコバクターピロリ粗製細胞超音波処理物でコーティングしたELISAプレートを用いて、血清および糞便ペレット(FP)中抗原特異的抗体の生成を検出した。経口免疫化により全身IgGおよび糞便IgAのヘリコバクターピロリ抗体の生成がもたらされた(図3)。CpG/CTと混合した、死菌全細胞のヘリコバクターピロリで免疫化した後、非免疫化の対照に比べて有意の増大が観察され、血清IgGおよび糞便IgAにおいてそれぞれ4倍(p<0.05)および6倍の増大がもたらされた。脂質Cの添加により、全身および胃粘膜両方の抗体生成が約50%低減した。脂質Cを配合した死菌全細胞のヘリコバクターピロリ単独を投与した動物は、非免疫化の対照に比べて、血清IgGの2倍の増大および糞便IgAにおける3倍の増大(p<0.05)を示した。CpG/CTと混合した死菌全細胞のヘリコバクターピロリの脂質C製剤も、血清IgGの2倍の増大、および糞便IgAにおける3倍の増大をもたらしたが、これは非免疫化の対照と統計学的に差がなかった。
【0168】
(実施例21)
クラミジアおよびヘリコバクターピロリ特異的抗体II
MOMP特異的抗体が、最終免疫化の1週間後、血清、気管支肺胞洗浄液(BAL)、および膣洗浄液(VL)試料中に検出された。CpG/CTと混合した、死菌全細胞のヘリコバクターピロリで免疫化した後、非免疫化の対照に比べて、有意の全身IgG生成が誘発された(p<0.05)。脂質Cを配合した免疫化溶液も、非免疫化の対照に比べて全身IgGを有意に増大した(図4A)。呼吸器BAL洗浄液における、非免疫化の対照に比べてIgG(7倍、p<0.01)およびIgA(5倍)両方の抗体の生成の増大が、CpG/CTと混合した非配合のMOMPを経口投与したマウスから観察された。MOMP+CpG/CTを脂質Cと配合した場合に3倍の増大が観察され、脂質Cを配合したMOMP単独で免疫化したマウスから採集したBAL液中に抗体の生成は観察されなかった(図4B)。MOMP+CpG/CTで免疫化したマウスから採集したVL液も、IgGレベルの増大を含んでおり、非免疫化の対照に比べて有意な10倍の増大であった(p<0.05)。さらに、非免疫化の対照に比べて全ての免疫化群に対して、VL液中にIgAにおける2倍の増大が観察されたが(図4C)、これは統計学的に有意ではなかった。
【0169】
(実施例23)
消化管保護
経口免疫化後、適応免疫反応が、腸において局所的に誘発されることが予想された。しかし、死菌全細胞のヘリコバクターピロリ抗原および強力な粘膜のアジュバントであるCpG/CTで免疫化したマウスは、細菌のコロニー形成における低減をもたらした。死菌全細胞のヘリコバクターピロリ抗原を単独で脂質Cマトリックス中に組み入れて消化酵素から抗原を保護すると、また、非免疫化の対照に比べてある程度の保護を確かに誘発した。脂質Cを組み入れた死菌全細胞のヘリコバクターピロリをCpG/CTと経口摂取させることによってのみ、コロニー形成における統計学的に有意な低減が観察された(p<0.05)。この免疫化群において、生のヘリコバクターピロリSS1細菌における1logの低減が、非免疫化の対照に比べて回収された(図5)。
【0170】
以下のTable 3 (表3)は、指定した組成物を接種後、ヘリコバクターピロリによる検出可能な感染を有する動物数に対するデータを表す。
【0171】
【表3】

【0172】
図5より、脂質Cおよびヘリコバクターピロリ抗原で処置した動物からの生存可能なヘリコバクターピロリの回収は、対照動物またはヘリコバクターピロリ抗原単独に曝露した動物のいずれかに比べて低減することが明らかであり、それによって、ワクチン接種した動物における細菌の負荷における低減を指摘するものである。脂質Cおよびヘリコバクターピロリ抗原で一緒に免疫化しても、生存可能なヘリコバクターピロリ生物体の回収があったので、完全な保護がもたらされず、そのように処置したマウスは感染の徴候を示した(Table 3 (表3))。
【0173】
これらの結果は、脂質C、および熱で死滅させたヘリコバクターピロリからの抗原を用いた経口免疫化は、罹患している組織における細菌の負荷を低減することによって、胃の感染を低減する上で有効であり得ることを指摘している。さらに、脂質Cを、ヘリコバクターピロリ抗原およびCpG/CTを含む経口投与する組成物に添加すると細菌の回収をさらに低減したという所見は、脂質Cおよび先行技術のアジュバントであるCpG/CTが相乗的に作用して、意外にもヘリコバクターピロリに対する粘膜免疫の増強をもたらし得ることを指摘していた。
【0174】
(実施例24)
呼吸器保護
クラミジアを、感染のピーク時(12日目)に、ホモジナイズした肺組織から単離し、感染形成単位をin vitroの細胞培養物によって本明細書に記載した方法を用いて決定した。結果を図6に示す。MOMP+CpG/CTの免疫化後のクラミジアの回収において、非免疫化の対照に比べて有意差はみられなかった。しかし、本発明者らは、経口投与した脂質C+MOMP+CpG/CTまたは脂質C+MOMPで免疫化した後、呼吸器の統計学的に有意な保護を観察した。これらの免疫化群において、非免疫化の対照に観察されたものに比べて、回収した細菌における50%の低減が観察された (p<0.05、各群n=10匹の動物)。
【0175】
これらの結果は、本発明の組成物での免疫化は、クラミジアによる感染から動物を保護する上で有効であり得ることを指摘している。これらの意外な発見は、毒性のCpGまたはCTアジュバントを用いる必要なしに、本発明の組成物を用いて有効な免疫学的保護をもたらすのが今や可能であることを指摘している。
【0176】
本明細書において、本発明者らは、長鎖脂肪酸および非感染性抗原を含む免疫原性組成物は、経口免疫化後の保護的な粘膜免疫を増強するための効果的な送達媒体であり得ることを実証した。さらに、本発明の脂質含有組成物を、「安全な」精製タンパク質抗原と組み合わせて用いて、性器および呼吸器の粘膜の保護を誘発することができる。本発明の脂質含有免疫原性組成物の、タンパク質抗原の経口投与のための使用は、ヒトのワクチン接種に現在使用中の生ワクチンに対する、安価で、投与が容易であり、安全な代替を潜在的に提供するものである。
(参考文献)










【特許請求の範囲】
【請求項1】
C16からC18脂肪酸を少なくとも30%含み、固体から液体の転移温度が約30℃を超える脂質製剤、および
経口または消化管の経路によって組成物を投与した動物において粘膜免疫反応を誘発することができる、クラミジアまたはヘリコバクターからの抗原成分
を含む、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記脂質製剤が、ミリスチン酸約1%、パルミチン酸約25%、ステアリン酸約15%、オレイン酸約50%、およびリノール酸約6%を含む(「脂質C」)、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂質製剤が、脂質C、脂質Ca、脂質K、脂質Ka、脂質PK、または脂質SPKを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記クラミジア生物体からの前記抗原成分が、1つまたは複数の主要外膜タンパク質(MOMP)、60kDa〜62kDaのシステインリッチタンパク質膜タンパク質、15kDaのシステインリッチ膜タンパク質、74kDaの種特異的タンパク質、31kDaの真核細胞結合性タンパク質、または18kDaの真核細胞結合性タンパク質である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記MOMPが、A、B、Ba、C、D、E、F、G、Hi、I、J、K、L1、L2、またはL3からなる群から選択される血清型である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ヘリコバクターの前記抗原成分が、ヘリコバクターピロリからの全体の死菌抗原である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
さらなるアジュバントをさらに含む、請求項1から6に記載の組成物。
【請求項8】
前記さらなるアジュバントが1つまたは複数のコレラ毒素(CT)およびCpGオリゴデオキシヌクレオチド(「CpG-ODN」:配列番号1)である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
MOMPおよび脂質Cを含む、経口用免疫原性組成物。
【請求項10】
請求項1から5または7から9のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、クラミジア科の生物体によって引き起こされる粘膜感染を治療するための方法。
【請求項11】
前記治療が、前記動物における粘膜免疫反応の誘発によって生じる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記動物がヒトである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、MOMP、脂質C、ならびに1つまたは複数のCTおよびCpG-ODNを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から9のいずれかに記載の組成物を動物に投与するステップを含み、免疫反応を示す所見を前記動物が有する、クラミジアまたはヘリコバクターによって引き起こされる感染からの免疫学的保護を動物にもたらすための方法。
【請求項15】
前記所見が、胸腺細胞(T細胞)の増殖、インターフェロンγ(IFNγ)、γ免疫グロブリン(IgG)、インターロイキン12(IL-12)、およびインターロイキン10(IL-10)の生成、または前記クラミジアもしくは前記ヘリコバクターの排出における低減からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
クラミジアによって引き起こされる粘膜感染を予防、低減、または治療するための経口用医薬の製造における、少なくとも30%のC16からC18脂肪酸、およびクラミジアからの少なくとも1つの抗原を含む脂質製剤の使用。
【請求項17】
前記少なくとも1つの抗原が、主要外膜タンパク質(MOMP)、60kDa〜62kDaのシステインリッチタンパク質膜タンパク質、15kDaのシステインリッチ膜タンパク質、74kDaの種特異的タンパク質、31kDaの真核細胞結合性タンパク質、または18kDaの真核細胞結合性タンパク質からなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記MOMPが、A、B、Ba、C、D、E、F、G、Hi、I、J、K、L1、L2、またはL3からなる群から選択される血清型である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記血清型が、D、E、F、G、H、I、J、K、およびLからなる群から選択され、前記使用が、クラミジアによって引き起こされる性器感染を予防、低減、または治療することである、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記脂質が、脂質C、脂質K、脂質PK、および脂質SPKからなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
前記ヘリコバクターによって引き起こされる粘膜感染を予防、低減、または治療するための経口用医薬の製造における、少なくとも30%のC16からC18脂肪酸、およびヘリコバクターからの少なくとも1つの抗原を含む脂質製剤の使用。
【請求項22】
前記少なくとも1つの抗原が死菌全細胞のヘリコバクターピロリである、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
請求項1から9のいずれかに記載の組成物、および
使用するための説明書
を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−505197(P2012−505197A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530588(P2011−530588)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007232
【国際公開番号】WO2010/041143
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511088298)イミューン・ソリューションズ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】