説明

精密部品製造装置の輸送方法

【課題】輸送コストの比較的安価な船便を利用する場合等において、塵や埃、塩害等の影響を受けることなく、精密部品製造装置を安全且つ安価にユーザーに届けることのできる精密部品製造装置の輸送方法を提供する。
【解決手段】内部空気の温度及び湿度を調整する空調機と、内部空気を吸排しながら塵や埃、塩分を吸着して廃除するエアークリーナーと、それらを駆動する電源装置とをそれぞれ装備したコンテナを使用し、精密部品製造装置を該コンテナに積み込んでから、該コンテナをトレーラーに搭載し、ユーザーまでの輸送を該トレーラーにコンテナを搭載したまま精密部品製造装置を同一トレーラーで一貫輸送し、その一貫輸送中に前記空調機とエアークリーナーとを駆動しながらコンテナ内の温度及び湿度を調整し空気の汚染を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体素子、集積回路、ディスク、コンデンサー、液晶等の製造機のように異物での汚染を嫌う精密部品製造装置を例えば海を越えて外国へ輸送する場合に適用する輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上ばかりでなく海上でも大気中には目に見えない微粒子から肉眼で見える程度まで、0.001〜1.000μmの大きさの塵や埃が無数に浮遊している。このような空気汚染物質は精密さを必要とする作業の大きな障害となるため、無塵無菌の空気は、製品の歩留りの向上はもとより信頼性の確保に不可欠となっている。とりわけ、半導体分野では、集積度の高度化により塵埃を除去したクリーンルームで作業する必要があることはもちろん、その製造装置の海外への輸送においても、精密製造機能の維持・保全をはかるとともに製品への二次感染を防止する上から、塵や埃ばかりでなく塩害による汚染を製造装置の段階で防止する必要がある。
【0003】
従来、このような精密部品製造装置の海外輸送方法においては、ユーザーの近辺に一気に到着できる飛行機が輸送手段として、その間における汚染機会が時間的に又輸送手段の単一性から少ないことから多く用いられていた。しかし、これによると、塵や埃の侵入を許さない木箱による厳重な梱包をする必要があり、比較的大きい製造装置では、土台、支柱、梁、根太等で骨組みを造り、その外面に板を張った木造建築と比べても見劣りない完全密封の梱包となり、それが製造装置の製品価格の20%程度にも達することから、飛行賃とも相まって輸送コストが多大となり、しかも、例えば韓国向けであると、目的地までに6回もの積み替えが必要であった。
【0004】
木材による梱包によらないで、コンテナを利用することにより梱包費の削減は可能であるが、この場合は船便を利用すると、製造工場からのトラック輸送から船積み、積卸しからユーザーへのトラック便へというように積み替えが多くなるばかりでなく、その都度に待機時間が多く取られるために、目的地までにコンテナ内に許容限度を越えた塵や埃の侵入や塩害を受けやすい。しかも、トラックと船舶との間の受け渡しにクレーンが使用され乱暴な取扱いとなる事態もあるため、繊細な製造装置ではその際に振動により機械的に悪影響を受けやすいという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記のような実情に鑑みて、輸送コストの比較的安価な船便を利用する場合等において、塵や埃、塩害等の影響を受けることなく、精密部品製造装置を安全且つ安価にユーザーに届けることのできる精密部品製造装置の輸送方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明は、内部空気の温度及び湿度を調整する空調機と、内部空気を吸排しながら塵や埃、塩分を吸着して廃除するエアークリーナーと、それらを駆動する電源装置とをそれぞれ装備したコンテナを使用し、精密部品製造装置を該コンテナに積み込んでから、該コンテナをトレーラーに搭載し、ユーザーまでの輸送を該トレーラーにコンテナを搭載したまま精密部品製造装置を同一トレーラーで一貫輸送し、その一貫輸送中に前記空調機とエアークリーナーとを駆動しながらコンテナ内の温度及び湿度を調整し空気の汚染を防止することを特徴とする精密部品製造装置の輸送方法を提供するものである。
【0007】
精密部品製造装置の輸送方法を上記のように構成したから、例えば製造工場から目的地のユーザーに至るまで、精密部品製造装置はコンテナにより密閉され、しかも、コンテナに閉じ込められる積み替えなしの一貫輸送となるため、コンテナ内が空調機とエアークリーナーとにより塵や埃や塩害、結露等の影響や受けることなく、衝撃に対しても安全に輸送される。
【0008】
なお、海外輸送の場合には、当該コンテナをトレーラーに搭載し、工場から積荷港までの陸路、積荷港から積卸港までの海路、積卸港から海外ユーザーまでの陸路を該トレーラーにコンテナを搭載したまゝ同一トレーラーで一貫輸送することになる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、精密部品製造装置を例えば海外へ輸送するために、塵や埃や塩害、結露等の影響を受けることのないよう万全を期すことができ、しかも、運賃が安い船便を使用し、梱包資材も使い捨てにならないので、輸送コストを大幅に抑えることができ、現地での精密部品製造装置の使用に支障なく安全にしかもユーザーに負担なく安価に輸送できるという優れた効果がある。
【0010】
加えて、不活性ガスによりコンテナ内を常時陽圧に保持しておけば(請求項2)、塵や埃、塩分の侵入をさらに確実に阻止でき、しかも、精密部品製造装置の酸化(塩害として酸化を招きやすい)による不具合を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は精密部品製造装置を製造工場から海外のユーザーへ一貫輸送するトレーラー1を示し、図2はそのトレーラー1を海上輸送する船舶としてのフエリー3を示す。
【0013】
トレーラー1は、荷台において前後間の中央部が一段低く形成され、その安定した低段4にこの発明の実施に使用する空調コンテナ5が搭載され、前後段8,9に普通の付属コンテナ6,7が搭載される。そして、空調コンテナ5に、特に塵や埃等の汚染を防止する必要のある半導体素子、集積回路、ディスク、コンデンサー、液晶など、高い信頼性が要求される精密部品の製造装置が納められる。しかし、そのままではなく、それはアルミやステンレス等からなる反復使用可能な通い箱11に収納されている。したがって、木材による梱包に比してコスト安である。
【0014】
また、付属コンテナ6,7の中には、比較的信頼性に高度さが要求されない付属部品がこれも通い箱13に包装して納められる。また、コンテナ5,6,7の床に対して各通い箱11,13は耐震性クッション材を介して受けられている。なお、トレーラー1の荷台は、これもエアサスペンションにより振動が吸収されるようになっている。
【0015】
空調コンテナ5および付属コンテナ6,7は、それぞれアルミやステンレス等の資材により組み立てられ、ドアを閉めることにより密閉構造となるものであるが、空調コンテナ5は、さらに、空気調整装置を装備し、全体的に塵や埃ばかりでなく塩害の原因となる塩素イオンやナトリウムイオンの除去機能や、温度管理の機能を備えている。また、コンテナ5,6,7の壁は、スチール製部材の骨組みをアルミ板で挟み、その間に発泡ウレタンを介入させて機密性、断熱性が確保されている。
【0016】
空調装置については、コンテナ5の前端に空調機15を壁に貫通させて外へ露出して設け、内部にはエアークリーナー17,17を壁面に固定して設けてある。それぞれ内部空気を循環させてその機能を果たすものである。また、コンテナ5内部には、空調機15とエアークリーナー17を稼働させるための電源装置として発電機20が内装されている。なお、図示はしないが、さらに不活性ガスの発生装置を設けることもある。
【0017】
空調機15は、熱媒体となるガスの圧縮に伴う放熱と、圧縮を解く吸熱とにより、空気の温度を調整するもので、下部に空気取入口19を上部に空気排出口21がそれぞれ室内に開口されており、これを通して矢印の如く室内に空気を循環させることにより20°C±5°C程度に室内温度が保持され、これで製品に結露が発生しない湿度にも保持されている。ちなみに、半導体素子の製造装置では20°C程度が適当であり、国内での実験では、10月29日から同月31日までの走行で、その温度を一貫して保持することができた。
【0018】
エアークリーナー17は、ケースに室内の空気を吸引・排出するファンと、塵や埃や塩分などの汚染物を捉えるフイルターとを内装したもので、粒径が0.5μm以上の塵や埃については、上記実験中、1立方フィート(単位空気量)中の60分における平均値を600〜4000(個/ft)程度に抑えることができた。ちなみに、エアークリーナーを備えない普通のコンテナでは、30万〜40万(個/ft)程度であり、従来、それを10,000(個/ft)以下に抑えることが目安とされていたので、集塵には万全を期した整備をしたものといえる。
【0019】
図2は、フエリー3にトレーラー1を乗船した位置を鎖線で示したもので、潮風の影響の少ない船底に停車し置かれている。
【0020】
不活性ガスでコンテナ5内を陽圧に保持する場合については、コンテナ5内に例えば窒素ガスの発生装置を設け、一貫輸送中に常時窒素ガスを発生させておく。そうすれば、陽圧によりコンテナ5内へ外部から空気とともに塵や埃や塩分が侵入することがなくなるので、コンテナ5内をさらにクリーンに保持できる。しかも、特にデリケートな製造装置の輸送であっても酸化による不具合の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態を示す積荷したトレーラーの側面から見た断面図である。
【図2】この発明の実施形態を示す積荷したトレーラーを乗船させたフエリーの側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 トレーラー
3 フエリー
5 コンテナ
11 通い箱
15 空調機
17 エアークリーナー
20 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空気の温度及び湿度を調整する空調機と、内部空気を吸排しながら塵や埃、塩分を吸着して廃除するエアークリーナーと、それらを駆動する電源装置とをそれぞれ装備したコンテナを使用し、精密部品製造装置を該コンテナに積み込んでから、該コンテナをトレーラーに搭載し、ユーザーまでの輸送を該トレーラーにコンテナを搭載したまま精密部品製造装置を同一トレーラーで一貫輸送し、その一貫輸送中に前記空調機とエアークリーナーとを駆動しながらコンテナ内の温度及び湿度を調整し空気の汚染を防止することを特徴とする精密部品製造装置の輸送方法。
【請求項2】
前記コンテナに不活性ガスの発生装置を装備し、前記一貫輸送中に不活性ガスを発生させながらコンテナ内の気圧をやゝ陽圧に保持することを特徴とする請求項1記載の精密部品製造装置の輸送方法。








【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−189439(P2008−189439A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25516(P2007−25516)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(307002622)
【出願人】(307002633)
【Fターム(参考)】