説明

精製されたPlasmodiumおよびワクチン組成物

実質的に精製されたPlasmodiumスポロゾイト、および付随非スポロゾイト材料から実質的に分離されたPlasmodiumスポロゾイトの調製物が開示され、当該Plasmodiumスポロゾイトの調製物は、増大する純度レベルを有する。精製Plasmodiumスポロゾイトを含むワクチンおよび医薬組成物もまた提供される。Plasmodiumスポロゾイトの調製物の精製方法も、提供される。一実施形態においては、ヒトおよび他の哺乳動物宿主においてマラリアに対する防御免疫を付与するために、無菌的に生産された、無菌の、感染性の、実質的に精製された弱毒化Plasmodiumスポロゾイトを使用する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、真核病原体および寄生虫、具体的にはPlasmodiumスポロゾイトステージ寄生虫の精製に関する。より具体的には、実質的に純粋な寄生虫ならびにその調製および使用方法に関する。本出願は、弱毒化および非弱毒化精製スポロゾイトステージPlasmodium寄生虫のワクチンおよび医薬組成物、ならびに、マラリアおよび他の疾患を防止するため、疾患を処置するため、およびマラリアワクチンおよび薬物テストにおいてボランティアを感染させる手段として、組成物をワクチンおよび他の調製物において使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアは、毎年3〜5億人を侵し、100〜300万人の個体を殺すと推定される疾患である。それは、発展途上世界、特にサハラ以南のアフリカの人々に多大な経済的影響も有する。Plasmodium falciparumは、世界のマラリアによる死の大部分の原因である。World Tourist Organizationの報告によれば、2000年に記録された世界中の7億人近くの海外旅行者のうち、およそ900万人が西アフリカ、アフリカ中部、または東アフリカへの、3,700万人が東南アジアへの、600万人が南アジアへの、1,000万人がオセアニアへの旅行者であった。年間3万人以上の北アメリカ、ヨーロッパ、および日本からの旅行者がマラリアにかかると推定される。100年以上の間、マラリア伝染がある場所で行われた軍事行動の間にはいつも、敵の攻撃によるものよりもマラリアによる米軍の犠牲者のほうが多かった。第二次世界大戦中には約1,200万人日、ヴェトナム戦争中には120万人日が、マラリアにより失われた。
【0003】
Plasmodium寄生虫の伝染は、夕暮れから夜明けまで活動する、感染した雌アノフェレス蚊の刺咬および吸血により生じる。Plasmodiumは、成長のスポロゾイトステージで刺咬部から主に血流を介して肝臓に移動し、肝細胞の中で増殖し、P.falciparumの場合には感染細胞あたり約10,000〜40,000の子孫を生じる。これらの肝臓ステージの寄生虫は、スポロゾイトステージでは発現されないいくつかのタンパク質を発現する。このステージでは、寄生虫はメロゾイトとしてスポロゾイトおよび早期肝臓ステージの間に発現されるのと異なるいくつかのタンパク質を発現して再び血流に入り、赤血球に侵入し、さらなる増殖により寄生虫数が48時間毎におよそ10〜20倍増加する。マラリアの症状または兆しは一切誘発しない肝臓における5〜10日の成長とは異なり、血液ステージの感染は処置しないと溶血、悪寒戦慄、高熱、および衰弱をもたらす。ヒト疾患をもたらすPlasmodiumの主な四種(P.vivax、P.malariae、およびP.ovale [P.knowlesiもヒト疾患をもたらしうる])の中で最も危険なP.falciparumの場合には、脳、腎臓および肺等の重要臓器における微小循環血流の障害および代謝変化により疾患が悪化し、緊急に処置しないと死につながることが多い。
【0004】
P.falciparumマラリアに対する有効なワクチンは、今なお医学の大きな課題の一つである。100年以上の努力や、数億ドルの研究費や、医師や科学者の生涯をかけた献身や、多くの有望な実験的ワクチンにもかかわらず、人類の大きな伝染病禍の一つを軽減する市販のワクチンはない。
【0005】
一世代前に、クロロキン、DDTおよびベクターコントロールプログラムを用いた公衆衛生イニシアティブが、falciparumマラリアを世界的脅威でなくするかに見えた。有効なワクチンの不足がこれらの努力を難しくしたが、持続可能なコントロールは目前のように見えた。
【0006】
成功が近いという展望はすぐに消え、失敗の理由は複数あった。有効性が高い手頃な抗マラリア薬物処置に対して寄生虫が抵抗性を強め、ベクターコントロール政策が失効し、発展途上世界の流行地において移住、戦争および経済的混乱がますます多くなった。その結果、P.falciparumマラリアが復活し、毎年少なくとも25億人のヒトが危険にさらされ、3〜9億人の感染がもたらされ、100〜300万人の人々が亡くなるようになった。発展途上世界を悩ます多くの社会的、経済的、環境的および政治的問題のうち、P.falciparumマラリアはますます、これらの格差の根本原因であり悲惨な結果でもあるとみなされるようになっており、これらの複合的問題を解決する上での唯一の障害である。発展途上世界におけるP.falciparumマラリアのコントロールは、有効ワクチンなしでは不可能かもしれない。実際のところ、社会的、政治的および経済的現実を考えると、ワクチンが持続可能なコントロールプログラムの不可欠の要素であり得、世界的根絶キャンペーンに必要となると考えられる。
【0007】
過去25年の間は、研究努力の大半が、免疫を付与する寄生虫の抗原性サブユニットの同定に費やされているが、残念ながら満足な結果は得られていない。こうした努力およびそれに伴う適切なワクチン開発における困難が、記載されている(Nussenzweig V.,F.およびR.S.Nussenzweig,Adv.Immunol.,(1989)45:283−334;Hoffman S.L.等、Hoffman S.L.編、Malaria Vaccine Development:A Multi−Immune Response Approach(1996)Washington,D.C.:ASM Press,pp.35−75;Hoffman S.L.およびL.H.Miller,Hoffman S.L.編、Malaria Vaccine Development:a Multi−Immune Response Approach.(1996)Washington,D.C.:ASM Press,pp.1−13;Epstein,J.E.等、Curr.Opin.Mol.Ther.(2007)9:12−24;Richie,T.L.&A.Saul,Nature,(2002)415:694−701)。
【0008】
サブユニットマラリアワクチンを生産する努力が続けられている。このような試みの中で代表的なものであるPaoletti等(特許文献1、1998年6月16日発行)は、マラリアワクチンとして有効である可能性のある、NYVAC−Pf7と称される実施形態を含む、一つ以上のスポロゾイト周囲タンパク質をコードするPlasmodiumからのDNAを含む組み換えポックスウイルスを開示する。このコンストラクトをその後テストすると、期待外れであることが分かった(Ockenhouse,CF.等、J.Infect.Dis.(1998)177:1664−73)。
【0009】
同様に、別の候補サブユニットスポロゾイト周囲ワクチンが提案され、RTS,S/AS02Aとして同定された(Stoute J.A.等、J.Infect.Dis.(1998)178:1139−44)。モザンビークの1〜4歳児での、このワクチンの最初のフェーズ2b野外試験の結果(Alonso,P.L.等、Lancet(2004)364:1411−1420;Alonso,P.L.等、Lancet(2005)366:2012−2018;Epstein,J.E.等、Supra;Richie,T.L.,F.&A.Saul,上記)と、乳児での別のフェーズ2b野外試験の結果(Aponte,J.J.等(2007)The Lancet 370:1543−1551;Bejon,P.等(2008)NEJM 359:2521−32;Abdullah,S等(2008)NEJM 359:2533−44が報告された。ワクチンは、わずかな防御効果を示している。
【0010】
一方で、レシピエントが後に病原性寄生虫で(とりわけヒト宿主が弱毒化Plasmodium falciparumで)チャレンジされた際の、高レベルの防御免疫の付与における全寄生虫、放射線照射弱毒化スポロゾイト(蚊曝露によりヒト宿主に、静脈内(i.v.)接種により動物宿主に送達)の有効性の実証は、適切なワクチンの探求における早期のマイルストーンであった(Hoffman S.L.等、J.Infect.Dis.(2002)185:1155−64)。最終的にこれは、これらの早期の観察を、無病原体の弱毒化スポロゾイトを含む実用的ワクチンアプローチへと転換する上で存在する技術的ハードルを調査する努力につながった(Luke,T.C.&S.L.Hoffman,J.ExP.Biol.,(2003)206:3803−3808;Hoffman,S.L.,およびT.C.Luke、特許文献2および米国特許出願公開第2005/0208078号)。それにより、弱毒化スポロゾイトを利用したワクチンの実用性に対する一般的関心も高まっている(Menard,R.,Nature 2005)433:113−114;Waters,A.P.等、Science.(2005)307:528−530;Wykes,M.F.&M.F.Good,Int.J.Parasitol.(2007)37:705−712;Renia,L.等、Expert Rev.Vaccines,(2006)5:473−481;Epstein,J.E.等、上記)。
【0011】
他の弱毒化の様式も、示されている。例えば、Plasmodiumベルゲイの遺伝子変更からもたらされる弱毒化スポロゾイトが、P.ベルゲイマラリアに対してマウスを防御することが示された(Kappe等、特許文献3;Mueller等、Nature(2005);Mueller,等、PNAS(2005);van Dijk等、PNAS(2005)102:12194−12199);Waters,特許文献4;Labaied等、Infect.And Immun.(2007)。近年、P.falciparumのスポロゾイトの遺伝子的弱毒化が開示されている(van Schaijk等、PLoS ONE(2008)3:e3549);VanBuskirk等、PNAS。
【0012】
同様に、Plasmodiumの化学的弱毒化も記載されている(Purcell等、Infect.Immun.(2008)76:1193−99;Purcell等Vaccine(2008)26:4880−84)。
【0013】
他の者も、スポロゾイトの非精製調製物を培養し、純培養の肝臓ステージへの寄生虫の分化を誘導する方法を記載している(Kappe等、特許文献5)。
【0014】
上に記載した研究は、一定の限界を示す。例えば、蚊の刺咬によりヒト宿主に送達されるスポロゾイトはマラリアに対する有効な免疫応答を生成するが、そのような送達方法は、明らかにマラリアに対する防御を必要とする集団にワクチン接種をするための実用的な方法ではない。上で言及したマウスにおける追加的研究は、弱毒化スポロゾイトのマウスへの静脈内送達は有効であるが、それと比べて他の送達手段(例えば筋肉内)は有効でないことを示唆している。しかし、静脈内送達方法も、マラリアワクチンが多数の個体(子供および高齢者を含む)に送達されることになる場合には実用的ではない。静脈内送達はリスクが高く、コストが高く、このような方法を用いてワクチン接種を受けることには患者が同意する可能性がはるかに低い。したがって当技術分野において、ワクチンを様々な方法で投与できるような、防御免疫を提供する有効なマラリアワクチンを提供する必要があった。
【0015】
ヒトワクチンの考慮事項に関しては、免疫原の純度、および免疫原性または有毒でありうる非特異性付随材料の存否が、これまでに解決されていないさらなる重要な問題である。上に記載した研究において用いられる、単離され弱毒化されたスポロゾイトの調製物は、汚染材料および他の付随材料を含む。当技術分野において、ワクチン組成物に用いるための、無菌的に調製された無菌の精製スポロゾイト調製物を利用する、特にヒトにおいて、スポロゾイトベースのワクチンを開発する必要があった。このような無菌的に調製された精製スポロゾイト調製物は、このような調製物が非静脈送達方法により投与された場合に、非精製調製物より有効でもありうる。(例えば筋肉内、腹腔内、皮内、表皮、粘膜、粘膜下、皮膚、または皮下)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,766,597号明細書
【特許文献2】米国特許第7,229,627号明細書
【特許文献3】米国特許第7,122,179号明細書
【特許文献4】米国特許第7,550,138号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0233435号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
生きた感染性の実質的に精製されたスポロゾイト、特にPlasmodiumスポロゾイトの、弱毒化スポロゾイトならびに病原性スポロゾイトの組成物が開示される。生きた感染性の実質的に精製された寄生虫を生成する方法、および、実質的に精製された弱毒化スポロゾイトの組成物を、マラリアを防止するためのワクチンとして使用する方法も開示される。抗マラリア薬物およびワクチンの有効性を評価するのに有用な精製された病原性寄生虫を使用する方法、ならびに防御免疫を付与するのに有用なクロロキン等の抗マラリア剤(antimalarial agent)と併用する方法も、開示される。
【0018】
一実施形態においては、ヒトおよび他の哺乳動物宿主においてマラリアに対する防御免疫を付与するために、無菌的に生産された、無菌の、感染性の、実質的に精製された弱毒化Plasmodiumスポロゾイトを使用する方法が提供される。このような方法および組成物は、非精製調製物の使用から生じるうる合併症を伴わずに、P.falciparumおよび他のPlasmodium種によりもたらされるマラリアに対する防御免疫を付与するために用いることができる。
【0019】
一実施形態においては、実質的に精製された病原性Plasmodiumスポロゾイトの組成物、ならびにこれを研究ツールとして、臨床テストにおいて、および予防接種レジメンにおいて、使用する方法が提供される。
【0020】
生きた感染性の弱毒化された実質的に精製されたスポロゾイトの組成物、ならびにヒトおよび他の哺乳動物の対象に対する投与量、投与レジメンおよび投与経路が提供される。
【0021】
一実施形態においては、賦形剤中の精製されたPlasmodium寄生虫、特に成長のスポロゾイトステージの寄生虫が提供され、当該寄生虫は代謝的に活性で、感染性で、汚染材料を実質的に含まない。別の実施形態では、スポロゾイトは、無菌的に調製される。別の実施形態では、スポロゾイトは、寄生虫の生活環の肝臓ステージを超えた成長(成熟シゾントステージ)を防止するために、十分に弱毒化される。
【0022】
別の実施形態では、賦形剤中にあり付随材料を実質的に含まないPlasmodium種の生きた代謝的に活性の感染性の弱毒化スポロゾイトを提供するステップと、当該スポロゾイト調製物の少なくとも一用量を哺乳動物およびヒト宿主に投与するステップとを含む、当該宿主においてPlasmodium種によりもたらされるマラリアに対する防御免疫を付与する方法であり、マラリアの病理学的発現が防止され、宿主が後に当該種の病原性Plasmodiumスポロゾイトに対する曝露後にマラリア発症から防御される、方法が提供される。
【0023】
別の実施形態では、スポロゾイトと付随非スポロゾイト材料とを含む水性精製前調製物を提供し、調製物を、a)10ミクロンより大きい付随材料を保持し、スポロゾイトの通過を許容することができる公称孔径の第一排除フィルタと;b)約0.6ミクロンより大きい付随材料を保持し、スポロゾイトの通過を許容することができる公称孔径の第二排除フィルタと;c)1.2ミクロンより大きい付随材料を実質的にすべて保持し、スポロゾイトの通過を許容することができる正確な孔径の第三サイズ排除メンブレンフィルタを含む一組のサイズ排除フィルタに順次通すことにより、代謝的に活性の感染性寄生虫、特にPlasmodiumスポロゾイトを精製する方法が提供される。それから、実質的に精製されたスポロゾイトが、スポロゾイトを保持することができる孔径の収集フィルタに回収されてから、精製されたスポロゾイト調製物が、収集フィルタから溶出され、所望の濃度で再懸濁される。
【0024】
別の実施形態では、マラリア関連薬物、ワクチンなどの効能を決定するのに有用な組成物が提供される。本組成物は、生きた実質的に精製された病原性Plasmodium寄生虫を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、PfSPZの粗調製物および精製調製物の顕微鏡写真観察である(キャンペーン3)。顕微鏡写真は200×倍率で撮影された。図1aは、精製前である。SGM=837ng/25,000PfSPZ(サンプルは15×10PfSPZ/mlに調節された)図1bは、精製後である。SGM=0.23ng/25,000PfSPZ(サンプルは18×10PfSPZ/mlに調節された)
【図2】図2は、PfSPZの粗調製物および精製調製物の顕微鏡写真観察である(キャンペーン6)。顕微鏡写真は200×倍率で撮影された。図2aは、精製前である。SGM=781ng/25,000PfSPZ(サンプルは17.78×10PfSPZ/mlに調節された)図2bは、精製後である。SGM=0.65ng/25,000PfSPZ(サンプルは16.71×10PfSPZ/mlに調節された)
【図3】図3は、PfLSA−1のステージ特異的発現である(P.falciparumスポロゾイト対3日目肝臓ステージ寄生虫)。図3aは、抗PfCSPモノクローナル抗体でインキュベートされたPfSPZである。図3bは、抗PfLSA−1ポリクローナル抗体でインキュベートされたPfSPZである。図3cは、抗PfLSA−1ポリクローナル抗体でインキュベートされた3日目肝臓ステージ寄生虫である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
FDAにより認可されたマラリアワクチンは、現在存在しない。しかし、過去30年の間に発表された結果は、放射線照射により弱毒化された、1,000匹を超えるP.falciparum感染蚊の刺咬により送達されるP.falciparumスポロゾイトの投与が、90%を超える曝露個体において少なくとも42週間無菌防御免疫を提供し、世界中からのP.falciparumの複数の単離株に対して有効であったことを示している。これらの観察と同じくらい挑発的であることには、それらは、スポロゾイトの単離および精製、ならびにその無病原体条件下での実行を含む複数の技術的なハードルにより、ワクチンまたはマラリアワクチン開発への明らかなアプローチを示唆しなかった。さらに、多くの科学者による研究から、マウスモデル系において弱毒化スポロゾイトの静脈内投与によってのみ優れた防御が達成されうることが示された。ヒト免疫化で従来使用される投与の非経口非静脈経路、例えば皮下および筋肉内接種は、このマウスモデル系において適切な防御免疫につながらなかったため、ヒト用の弱毒化スポロゾイトワクチンを開発することが可能であるとは考えられなかった。P.falciparumによりもたらされるヒトマラリアにより類似すると考えられるマウスモデル系を利用して、スポロゾイトの非経口非静脈内投与が高レベルの防御につながることが分かっている(米国特許出願公開第2005/0208078号)。薬剤的に許容可能な生きた弱毒化マラリアワクチンへの他の多くの開発の技術的ハードルも克服されており、付随材料から単離された十分な量のスポロゾイトの無病原体的生産もその一つである(特に参照により本明細書に明示的に組み込まれるHoffman,SLおよびTC Luke,米国特許第7,229,627B2号を参照)。
【0027】
しかし、ヒト対象におけるルーチン使用に適したワクチンは、実質的に純粋な接種材料を必要とし、スポロゾイト接種材料は、それらが産生されたソースから実質的に精製されているスポロゾイトを必要とする。本明細書に提供されるワクチン組成物は、スポロゾイト自体に特異的でない付随(ソース)材料を実質的に伴わない、実質的に精製された形のPlasmodiumスポロゾイトを含む。加えて、本明細書に提供されるワクチン組成物のいくつかの実施形態では、ワクチン組成物は、汚染材料、微生物および外因性病原体を実質的に伴わない。実質的に精製されたスポロゾイトおよびスポロゾイトを精製する方法、ならびに精製スポロゾイトと賦形剤との組成物が、提供される。
【0028】
定義
「約」または「およそ」という用語は、当技術分野での慣行通り、一標準偏差以内を意味する。
【0029】
本明細書において名詞として用いられるところの「添加剤」とは、調製物の保存を促進するためにスポロゾイト調製物に加えられる化合物または組成物である。添加剤は、DMSOおよびグリセロール等の凍結保護剤、抗酸化剤などを含みうる。
【0030】
本明細書で用いられるところの「無病原体」とは、バクテリア、菌類、病原性ウイルス等の他の微生物の検出可能な汚染の導入がないことを意味する。無病原体法によるスポロゾイト調製から、他のいかなるタイプの微生物または感染性因子も伴わない、スポロゾイトの無病原体調製物がもたらされる。無病原体方法論をモニタするために用いられる微生物学的アッセイにより、汚染の存否が評価される。これには、参照により本明細書に組み込まれる微生物限度試験、現行のUSP<61>が含まれるがこれに限られない。
【0031】
本明細書で用いられるところの「付随」材料とは、寄生虫自体に特異的でない、寄生虫の粗調製物中の材料を意味する。例えばスポロゾイトの調製物において、付随材料は、スポロゾイト自体に特異的でないものである。付随材料には、スポロゾイトが生育または産生されるソースに特異的な材料、具体的には生物学的デブリ、より具体的にはタンパク質が含まれ、当該材料は粗調製物においてスポロゾイトとともに単離される。調製物を「粗」にするものは、調製物中の付随材料であり、スポロゾイトに関しては、スポロゾイトが成長しまたはスポロゾイトが単離された基質に特異的な材料が含まれる。宿主蚊の唾液腺から解剖および単離されたスポロゾイトに関しては、付随材料は、宿主材料、宿主タンパク質、唾液腺材料、唾液などである。付随材料は、調製物に意図的に加えられている成分、例えば賦形剤、希釈剤、添加剤などを含まない。いくつかの実施形態においては、粗調製物から除去されている付随材料の成分が、宿主に対するスポロゾイトの感染性スポロゾイトの免疫原性、またはスポロゾイトの提示を最適化するために、精製調製物に再び加えられうる。このように再び加えられた材料は、本明細書で定義されるところの付随とはみなされない。
【0032】
本明細書において使用されるところの「弱毒化」とは、生きた生物を殺さずにその生活環を完了できなくすることを意味する。生物は、いくつかの生活環ステージを通して複製し、タンパク質を発現し、成長する限定された能力を有しうるが、特定の生活環ステージで成長を止め、そのステージを超えては発生的に発達することができない。本明細書において開示される弱毒化Plasmodium寄生虫、すなわちスポロゾイトステージで放射線に曝露されている寄生虫に関しては、宿主の肝細胞を感染させ、ステージ特異的タンパク質を発現する能力を保持するが、肝臓ステージを超えて成長することができず、肝臓ステージ後に(メロゾイトステージ)感染宿主の血流に再び入ることができず、マラリアの疾患病状をもたらすことができない。他の弱毒化Plasmodium種寄生虫は、宿主の肝細胞を感染させ、肝臓ステージを超えて成長し、肝臓ステージ後に(メロゾイトステージ)感染宿主の血流に再び入り、赤血球を感染させる能力まで保持しうるが、その後、マラリアの疾患病状が現れるステージの前に成長を止めうる。
【0033】
本明細書において用いられるところの「防御免疫を付与する」とは、宿主における疾患の臨床兆候、病状、または症状が非処置宿主と比較して減少するように、または、疾患の感染もしくは臨床兆候、病状、または症状が集団内に現れる速度が非処置集団と比較して減少するように、病原体(例えばPlasmodium falciparum)によりもたらされる疾患(例えばマラリア)から防御するための免疫応答を生成する能力を、集団または宿主(すなわち個体)に与えることをさす。
【0034】
本明細書で用いられるところの「汚染物質」および汚染とは、バクテリア、ウイルス、マイコプラズマ、菌類などを含むがこれに限られない、外来の微生物またはウイルス汚染または病原性汚染を意味する。無病原体プロセスは汚染の導入を防止するように設計され、無菌調製物は汚染が存在しない。汚染物質は、非生物学的または無機有毒物質でもありうる。汚染物質は、プロセス中の任意のステップで、偶然または不注意により導入されうる。
【0035】
本明細書で用いられるところの「希釈剤」は、所望の濃度を達成するようにスポロゾイトおよびスポロゾイト組成物が調製される溶媒である。希釈剤は、例えば生理食塩水もしくはリン酸緩衝食塩水、またはmedium199もしくはmediumE199(アール平衡塩を伴うmedium199)等の溶媒でありうる。
【0036】
「賦形剤」とは、ワクチン等の医薬調製物の活性成分のための担体、ビヒクル、または希釈剤として使用される不活性物質を意味する。本明細書において用いられるところの、賦形剤とは、プロセスを助け、非特異的相互作用または吸収を最小化し、および/または体積を提供するために、単離および精製プロセスの間に調製物に加えられる成分である。賦形剤の例には、血液から精製されたもの、組み換えタンパク質として生産または合成生産されたものを含むがこれに限られない何らかのソースからの血清アルブミン、特にヒト血清アルブミン等の不活性タンパク質が含まれる。蚊の唾液腺から解剖されたスポロゾイトが、さらなる処理のために賦形剤中に置かれうる。賦形剤は、精製プロセスの全体にわたり活性維持、安定性増加、または単離したスポロゾイトの不注意による損失の防止を含むいくつかの理由で、医薬品に加えられうる。
【0037】
本明細書で用いられるところの「免疫応答」とは、抗体および/またはT細胞の生産により一般的に特徴づけられるがこれに限られない、弱毒化スポロゾイトの導入に対するレシピエントにおける反応を意味する。一般的に免疫応答は、Plasmodium種エピトープに特異的なCD4+T細胞もしくはCD8+T細胞の誘導または活性化等の細胞性応答、Plasmodium特異的抗体の生産増加の液性応答、あるいは細胞性応答および液性応答の両方でありうる。マラリアワクチンに関しては、スポロゾイトを含むワクチンにより確立される免疫応答には、細胞外スポロゾイトまたは寄生虫が宿主細胞、特に肝細胞および樹状細胞等の単核細胞に入った後の寄生虫のその他のステージにより発現されるタンパク質への応答および/または当該寄生虫の成分に対する応答が含まれるがこれに限られない。本発明においては、後の感染性生物によるチャレンジ時には、免疫応答により、疾患をもたらす無性赤血球ステージへの病原性寄生虫の成長が防止される。
【0038】
本明細書で定義されるところの「静脈内」とは、静脈等の特定された大きな血管の管腔内への直接的な意図的導入を意味する。
【0039】
本明細書において用いられるところの「代謝的に活性」とは、生きて、持続的機能およびいくつかの生活環プロセスを実行できることを意味する。弱毒化スポロゾイトに関しては、培養およびin vivoで肝細胞に侵入でき、いくつかの成長段階を通して分裂および発達する限定的能力を潜在的に有し、新たにステージ特異的タンパク質を発現するスポロゾイトが含まれるがこれに限られない。
【0040】
本明細書で定義されるところの「緩和する」とは、本来ならワクチン接種後に現れうるマラリアの強度、症状および/または病状を実質的に減少させ、あるいは和らげることを意味する。
【0041】
本明細書で定義されるところの、フィルタの孔径に関しての「公称」とは、有効な孔径を意味し、当該サイズの粒子の90%がフィルタにより排除されるような、球形粒子のフィルタ通過のための見かけの孔径をさす。。
【0042】
本明細書で定義されるところの「非経口」とは、消化管を通してではなく、皮内、皮下、筋肉内、眼窩内、嚢内、髄腔内、胸骨内、静脈内、経皮などの何らかの他の経路による導入を意味する。
【0043】
本明細書で定義されるところの、マラリアを防止する文脈で使用される「防止する」とは、マラリアの病状および臨床兆候の大半から全てが現れるのを防ぐことを意味する。
【0044】
本明細書で定義されるところの、スポロゾイトの調製物に関しての「精製する」とは、付随材料から分離すること、または望ましくないと考えられる材料から分離することを意味する。
【0045】
本明細書で定義されるところの、スポロゾイトに関しての「無菌」とは、一切の汚染微生物が存在しないことを意味する。スポロゾイトの無菌調製物は、無病原体調製法により得られる。参照により本明細書に組み込まれる、無菌試験(Sterility Test)現行USP<71>を含むがこれに限られない特異的アッセイにより、調製物の無菌性が決定される。
【0046】
スポロゾイトの調製物に関しての「実質的に精製された」とは、85ng/25,000スポロゾイト未満への付随汚染の量の減少、または付随汚染の少なくとも18倍の減少を意味する。前述の基準のいずれかの達成が、スポロゾイトの調製物を「実質的に精製された」ものとするのに十分である。
【0047】
本明細書で定義されるところの「治療的」とは、すでに明らかになっている臨床兆候または病状の減少に関する。本明細書で用いられるところの「治療的に有効な量」は、個体における疾患の臨床兆候、病状、または症状を減らすのに十分な量、または疾患の臨床兆候、病状または症状が集団内で現れる速度を減少させるのに十分な量を意味する。
【0048】
本明細書で用いられるところの「ワクチン」とは、賦形剤、アジュバントおよび/または添加剤あるいは保護剤と潜在的に組み合わせた、免疫原性剤と薬剤的に許容可能な希釈剤とを含む調製物である。免疫原は、感染性因子全体または感染性因子の分子サブセット(合成的または組み換え的に、感染性因子により生産される)からなりうる。ワクチンが対象に投与されると、免疫原が免疫応答を刺激し、これが後の感染性因子によるチャレンジ時に対象を病気から防御し、または感染性因子により生じる病状、症状または臨床兆候を緩和する。治療的(処置)ワクチンは、感染後に与えられ、疾患進行を減少させまたは止めることを目的とする。防止用(予防的)ワクチンは、初期感染を防止しまたは感染の速度もしくは負担を減少させることを目的とする。マラリア等の寄生虫症に対するワクチンにおいて使用される薬剤は、完全死滅(不活性)寄生虫、生きた弱毒化寄生虫(その生活環を通して完全には成長できない)、または寄生虫に伴う精製された分子もしくは人工的に製造された分子、例えば組み換えタンパク質、合成ペプチド、DNAプラスミド、およびPlasmodiumタンパク質を発現する組み換えウイルスまたはバクテリアでありうる。当業者には容易に理解されるように、ワクチンは賦形剤、希釈剤、担体、保存剤、アジュバントまたは他の免疫増強剤、あるいはその組み合わせ等の他の成分とともにスポロゾイトを含みうる。
【0049】
スポロゾイトの精製
Plasmodium種寄生虫が、Anopheles種蚊宿主、最も典型的にはAnopheles stephensi宿主において、培養ならびにin vivoで無菌的に成長させられる。Plasmodium種肝臓ステージ寄生虫を純培養する方法(Kappe等、米国特許出願公開第2005/0233435号)、ならびに弱毒化および非弱毒化Plasmodium種スポロゾイトを生産する方法、特に蚊において寄生虫を成長させ弱毒化し、弱毒化および非弱毒化スポロゾイトを採取する方法が当技術分野で公知であり、記載されている(Hoffman&Luke,米国特許第7,229,627号;米国特許出願公開第2005/0220822号を参照。
【0050】
本発明の精製態様は、スポロゾイトを蚊宿主唾液腺材料(以下「SGM」)、蚊特異的材料、および他の任意の非スポロゾイト材料または成分等の付随材料から分離し、これにより、スポロゾイトを含む実質的に精製された調製物を達成する。精製の一態様として、スポロゾイトが、SGM等の付随汚染材料に対して濃縮される。ここで、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いてスポロゾイトの粗調製物および精製調製物中に存在する付随抗原性SGMを定量することにより、調製物の純度が測定される(以下に「SGM−ELISA」)。キャピラリー電気泳動法、質量分析、逆相クロマトグラフィ、免疫ブロット、光散乱およびUVスペクトロメトリ等であるがこれに限られない他の方法も、付随材料を測定するために同様に適用されうる。蚊以外のソースからのスポロゾイトの精製に関しては、スポロゾイトが精製されることとなる粗調製物中の付随材料に関連した、ELISA等の同様のアッセイが、同様に適用されるだろう。蚊の唾液腺以外のソースからの付随材料の抗原に適応されるこのようなELISAアッセイの開発は、当業者に周知の類似のプロトコルを用いるだろう。説明のために、付随SGMの不純物アッセイのプロトコルが提供される。当然のことながら、このプロトコルは説明のために提供され、例えばスケールアップにより修正され、またはその他の方法で修正されうるものであり、請求される本発明の範囲を制限することを目的としない。
【0051】
精製方法
生きたPlasmodium種、例えばfalciparum、vivax、malariae、またはovaleを精製する方法が、本明細書に開示される。
【0052】
開示の方法は、新規な自明でない仕方でアセンブルされる、様々なタイプの、異なる孔径の一連のサイズ排除フィルタを利用する。この方法論は、生きた運動性寄生虫の調製物から、付随材料を取り除く。この方法の一態様は、順番通りのサイズ排除フィルタの孔径が、先行するサイズ排除フィルタの孔径より必ずしも小さくないということである。別の態様は、いくつかのフィルタが公称孔径のマトリックスを提供し、少なくとも一つのフィルタが、正確な孔直径のトラックエッチドフィルタを提供することである。少なくとも一つのフィルタが、寄生虫の直径に近い孔径またはこれよりわずかに小さい孔径を有する。
【0053】
例えば、Plasmodium種スポロゾイトの精製が開示されるが、当業者には当然のことながら、生物の物理的サイズに基づき、フィルタ孔径の調節も類似の精製を生み出す。例えば、Plasmodium falciparumスポロゾイトは、ロッド形であり、約0.8±0.2μmの直径および8.5±1.5μmの長さである。Hoffman,SL等In Tropical Infectious Disease第2版、2006,Elsevier,Philadelphia,PA pg1027;Xu,L.H.等1985 Zoo.Res.6:33−6。
【0054】
典型的に精製のための調製においては、150〜400匹の蚊から唾液腺が解剖される。針およびシリンジ(粉砕)中の前後への通過により、唾液腺からスポロゾイトが放出され、これらの腺からのスポロゾイトが集合的に精製される。しかし、スケールアップ調製においてはさらに数倍の、一実施形態では1,000匹まで、別の実施形態では5,000匹まで、別の実施形態では10,000匹までの蚊が解剖されうる。粉砕により唾液腺からスポロゾイトが放出され、粉砕された唾液腺調製物(精製前調製物)が、本明細書に開示されるサイズ排除濾過プロセスにより精製される。スポロゾイトは、精製プロセスの全体にわたり賦形剤、典型的にアール塩(E−199)を伴うMedium199中1%ヒト血清アルブミン(HSA)中に維持される。
【0055】
A−精製用材料の調製
粉砕された解剖産物(精製前調製物)が、一度に一つの管にまとめて受けられる。これが、SGM精製前調製物である。これは約100,000〜10億のスポロゾイト、好ましくは少なくとも100万のスポロゾイト、より好ましくは少なくとも2,500万のスポロゾイトに相当する。精製前調製物中のSGMの測定量は、通常25,000スポロゾイトあたり300ng〜12,000ngの間、より典型的には25,000スポロゾイトあたり400ng〜1,100ngの間である。それから精製前調製物は、賦形剤により10mlに希釈される。溶液およびサンプルは、精製の間15〜30℃の間に保たれる。
【0056】
B−精製手順
蠕動ポンプを用いて、希釈された精製前調製物が、少なくとも1ml/分であるが1000ml/分を超えない、好ましくは少なくとも2ml/分であるが500ml/分を超えない、より好ましくは少なくとも3mL/分で200mL/分を超えない流速で、一連のサイズ排除フィルタを横断してポンプ輸送される。対応する各フィルタを横断する流量は、少なくとも1L/時/m2であるが2000L/時/m2を超えず、好ましくは3L/時/m2〜1500L/時/m2、最も好ましくは少なくとも125L/時/m2であるが250L/時/m2を超えない。フィルタは、通常は医療グレードのシリコーン管により、直列に接続される。最初のフィルタ(フィルタ#1)または最初の二つのフィルタ(フィルタ#1および#2)はマトリックスフィルタであり、ポリプロピレンでできているのが好ましいが、ナイロン、混合セルロースエステルおよびホウ珪酸ガラスまたは当業者に周知のその他の材料が使用されうる。最後から二番目のフィルタ(フィルタ#3)はメンブレンフィルタであるのが好ましく、トラックエッチドポリカーボネートフィルタであるのが最も好ましいが、当業者に周知の同様の性質を有する他のフィルタが使用されうる。無病原体手順では、フィルタは無菌である。一実施形態においては、三つのフィルタ(フィルタ#1、フィルタ#2およびフィルタ#3)が直列に接続され、フィルタ#4での全量濾過によりスポロゾイトが捕捉される。追加のフィルタが、用いられうる。あるいは、(第59段落で後述されるように)一つまたは二つのフィルタだけが使用されうるが、三つのフィルタの使用が最適である。一実施形態においては、フィルタ#1は、少なくとも約2.5ミクロンであるが約30ミクロンを超えない、好ましくは少なくとも5ミクロンであるが20ミクロンを超えない公称孔径のメンブレンマトリクスである。一実施形態においては、使用されるフィルタは、約10ミクロンの公称孔径と、17.5cmの濾過面積を有する。(Polygard(登録商標)−CN Optiscale−Millipore Cat.No.SN1HA47HH3)。スケールアップ実施形態においては、濾過面積は1800cm2である。フィルタ#2(これもメンブレンマトリックス)の公称孔径は、少なくとも約0.3ミクロンであるが約1.2ミクロンより大きくない。一実施形態においては、孔径は約0.6ミクロンであり、濾過面積は17.5cm2である。(Polygard(登録商標)−CN Optiscale filter−Millipore Cat.No.SN06A47HH3)−Plasmodiumの直径よりも小さい。スケールアップ実施形態においては、濾過面積は、1800cm2である。一実施形態においては、フィルタ#3は、正確な孔直径および一貫した孔径のトラックエッチドメンブレンフィルタであり、少なくとも1.2ミクロンであるが3ミクロンより大きくない、すなわち先行するフィルタの公称孔径より大きな孔径を有する。一実施形態においては、使用されるフィルタは、1.2ミクロンの孔径と11.3cm2の濾過面積を有する。(Isopore membrane,直径47mm−Millipore Cat.No.RTTP04700)Swin−Locフィルタホルダに保持された(Whatman Cat.No.420400)。スケールアップ実施形態においては、濾過面積は、127cm2である。濾過された材料は、フィルタ#4で、直径90mmで28.7cm2の濾過面積の、0.8ミクロンを超えない、好ましくは0.6ミクロンを超えない、好ましくは0.2ミクロンを超えないトラックエッチド孔径の、Isoporeメンブレンが取り付けられた撹拌限外濾過セル(Millipore,model 8200)に捕捉される。一実施形態においては、孔径は0.4ミクロンである(Millipore Cat.No.HTTP09030)。スケールアップ実施形態においては、濾過面積は162cm2である。別のスケールアップ実施形態においては、濾過面積は63cm2である。システムは、溶媒で数回洗浄される。残余分体積が撹拌セルにおいて約40mlに達したら、撹拌セル容器出口が開かれ、約5〜10mlの残余残留分を残して重力により排液され、窒素等の圧縮ガスまたはピストン等の機械デバイスからの圧力の印加等の他の方法により残余分体積が減少されてもよいが、重力が好適な方法である。この残余残留分が、精製溶媒を用いた合計約35mlへの三回の洗浄とともに、典型的には無菌35ml オークリッジまたは同様の遠心管(管のサイズは調製物の体積に応じて変動)に、回収されて移される。35ml オークリッジ管内の溶媒中の精製スポロゾイトが、5,000g〜25,000g、好ましくは16,300gで、2分〜12分間、好ましくは5分間の遠心分離されて、スポロゾイトがペレット化される。上清溶媒がデカントされる。このステップは、上清中に残るより小さなさらなる浮遊材料および可溶性材料を除去することにより、スポロゾイト調製物をさらに精製する。
【0057】
この手順は、3サイズ排除フィルタ方法論を用いて、精製前調製物中の付随材料と比較して、精製スポロゾイト調製物中の付随材料の相当量を超える200〜10,000倍の減少(減少係数(reduction factor))を提供する。無菌精製スポロゾイトの精製調製物中の残余SGMの量は、ルーチン的に25,000スポロゾイトあたり付随材料25ng未満(SGMの初期量に対して97%を超える減少)、好ましくは25,000スポロゾイトあたり15ng未満(98%減少)、より好ましくは25,000スポロゾイトあたり1ng未満である(99.9%)。本明細書に記載の各精製調製物中の汚染SGMは、各精製調製物が得られる最初の粉砕精製前唾液腺材料中のSGMに対して、通常数千倍減少される。精製減少係数が少なくとも15倍であるのが好ましく、精製係数が少なくとも1,500倍であるのがより好ましく、少なくとも3,500倍であるのが最も好ましい。実施例1に記載の10のキャンペーンにおける減少係数の幾何平均は1625であり、精製プロセス中のSGMの99.93%の減少である。
【0058】
例えば、実施例1(表2)に示される解剖蚊唾液腺から単離された精製スポロゾイト調製物は、25,000のスポロゾイトあたり0.19ng〜1.01ngの範囲のSGMを含み、付随SGMの減少率は99.91%〜99.97%の範囲だった。あるいは、下の第59段落に記載の方法は、25,000あたり85ngのSGMを超えないスポロゾイト調製物を提供し(付随SGM材料の95%減少)、実質的に精製されていると考えられる。表2の(3つのサイズ排除フィルタを使用した)10の生産キャンペーンからの精製調製物中のSGMの幾何平均は、25,000のスポロゾイトあたり0.51ng SGMであり、95%信頼区間が25,000のスポロゾイトあたり0.34〜0.67ng SGMであった。
【0059】
代替的実施形態では、上の第56段落に記載のフィルタ列からフィルタ#3が取り除かれ、2サイズ排除フィルタ方法論(中間フィルタ#1およびフィルタ#2)が用いられる。上の第56段落に記載のように、スポロゾイトが捕捉される。この実施形態の例においては、1,555ng/25,000スポロゾイトの粗調製物がロードされ、記載のように(フィルタ#3はなしで)精製された。(0.4ミクロンまたは0.45ミクロンフィルタで)回収および再懸濁の後、精製調製物は、84ng/25,000スポロゾイトを含んだ。ここでは減少係数は18倍より大きく、94.6%のSGM汚染が除去された。この調製物は、実質的に精製されていると考えられる。
【0060】
精製スポロゾイトの収率の範囲は、開始調製物中のスポロゾイト数の30%〜100%の間、通常50%〜70%の間であった。
【0061】
この方法は、スポロゾイト粗調製物の汚染を減少する上で有効である。それから、スポロゾイトが保存される。一実施形態においては、スポロゾイトは、低温保存される(Leef J.L.等、Bull WHO57(suppl 1)(1979)87−91;Orjih A.U.,F.およびNussenzweig RS.Am.J.TroP.Med.Hyg.(1980)29(3):343−7)。一実施形態においては、スポロゾイトは凍結乾燥により保存される。一実施形態においては、スポロゾイトは冷凍により保存される。他の保存方法は、当業者に公知である。
【0062】
弱毒化
Plasmodiumスポロゾイトの弱毒化を誘導するいくつかの手段が、公知である。これらには、遺伝性遺伝子改変、遺伝子変異、放射線曝露、ならびに変異原性化学物質への曝露、代謝阻害化学物質への曝露、および高または低温度または圧力等の環境条件への曝露が含まれる。
【0063】
放射線曝露によりスポロゾイトの弱毒化を誘導する方法が開示されており(例えばHoffman&Luke,米国特許第7,229,627号;米国特許出願公開第2005/0220822号を参照)、参照により本明細書に組み込まれる。スポロゾイトは、少なくとも100Gyであるが1000Gyを超えない、好ましくは120〜200Gy、最も好ましくは約150Gyにより弱毒化されうる。本明細書に開示のワクチンのPlasmodium寄生虫の弱毒化は、スポロゾイトステージ寄生虫が代謝的に活性のままで、肝細胞に侵入する能力(効力)を伴って感染性であることを可能にし、その一方で寄生虫が完全成熟肝臓シゾントステージには成長せず、宿主血流に再び入り、赤血球に侵入しまたは疾患をもたらす成長段階に達することができないこと(安全性)を確保する。当業者は、寄生虫の成長段階をルーチン的に決定し、必要に応じて弱毒化を調節できる。
【0064】
肝細胞のPlasmodium感染の生物学は、in vitroアッセイにより効力および安全性の両方を実証する機会を提供する。通常、スポロゾイトは、蚊の刺咬部位から主に血流を介して、しかし潜在的にリンパ系を介して、肝臓に移動する。それらは肝臓内では肝細胞中で増殖し、P.falciparumの場合には、感染細胞あたり約10,000〜40,000の子孫(メロゾイト)を生じる。これらの肝臓ステージの寄生虫は、スポロゾイトステージまたは後の成長ステージでは発現されない複数のタンパク質を発現する。肝臓でメロゾイトステージに成長した後、それらは肝細胞から放出され、スポロゾイトおよび早期肝臓ステージの間に発現されるのと異なるステージ特異的タンパク質組を発現して再び血流に入り、赤血球に侵入し、さらなる増殖により寄生虫数が48時間毎におよそ10〜20倍増加する。病気の症状または兆しは一切誘発しない肝臓における5〜10日の成長とは異なり、血液ステージの感染は処置しないと溶血、悪寒戦慄、高熱、および衰弱、ならびにその他の多くのマラリアの症状および兆しをもたらす。
【0065】
効力アッセイ
精製放射線照射弱毒化P.falciparumスポロゾイトの感染効力のレベルは、免疫蛍光アッセイ(IFA:immunofluorescence assay)を用いて、ヒト肝細胞培養におけるP.falciparum肝臓ステージ抗原−1(PfLSA−1:Liver Stage Antigen−1)の発現を測定することにより評価されうる。PfLSA−1は、スポロゾイトにより発現されないが、肝細胞への侵入に成功後のP.falciparum寄生虫(弱毒化および野生型の両方)により発現されるタンパク質である(図3)。PfLSA−1の発現は、弱毒化スポロゾイトが代謝的に活性であることを示す。
【0066】
ヒト肝細胞(細胞系統HC−04[1F9]、Prachumsri,J.およびN.Yimamnuaychok,米国特許第7,015,036号参照)が、10%ウシ胎仔血清および2%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液を補充した1:1比率のダルベッコ改変イーグル培地およびF−12ハム混合物(HC−04増殖培地)を使用して、感染のおよそ24±6時間前に播種される。細胞は、エンタクチンコラーゲン−IVラミニン(ECL:Entactin Collagen−IV Laminin)(Upstate)でコーティングされた8ウェルLab Tek Permanox(NUNC)チャンバスライドに、4.0×104細胞/0.3ml/ウェルの濃度で播種され、37±1℃、5%CO2および80%の相対湿度でインキュベートされる。単層集密度が播種後24±6時間で80%以上に達したら、培養上清が各ウェルから吸引され、0.3mlの新鮮HC−04増殖培地と交換され、インキュベータに戻される。
【0067】
弱毒化P.falciparumスポロゾイトが、HC−04増殖培地で500スポロゾイト/μlの濃度に希釈される。そして300μlの培地を吸引後、50μlの希釈寄生虫サンプルが各ウェルに加えられ、合計2.5×104の細胞により各ウェル中のHC−04細胞を感染させる。感染肝細胞が3±0.5時間インキュベートされ、上清の穏やかな吸引によりHC−04増殖培地で三回洗浄され、ウェルあたり0.3mlの新鮮培地で培養される。培養物は、一切の汚染の存在を示すものにつき3日間毎日観察される。汚染の非存在下において、培養上清が個々のウェルから吸引され、毎日0.3mlの新鮮HC−04増殖培地と交換されて、インキュベータに戻される。感染後72±6時間で、考えうる汚染につき培養物が顕微鏡で観察される。汚染の非存在下において、培養物が0.3mlのリン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)を用いて三回洗浄され、0.3mlの冷メタノール(−20℃保存)により室温で固定され、0.3mlのPBSを用いてさらに三回洗浄され、0.3mlの同に保存される。スライドは、一次抗体としての抗PfLSA−1ポリクローナルウサギ血清およびAlexa fluor−488標識抗ウサギ二次抗体を使用した免疫蛍光法のために染色されるまで、72時間まで2〜8℃で冷蔵庫に保存されうる。染色されたスライドから、プラスチックチャンバおよびガスケットが除去される。スライドは、Vectashield封入剤(Vector)を用いてマウントされ、カバーsliPでカバーされる。落射蛍光位相差顕微鏡を使用してウェルあたりのPfLSA−1を発現する全寄生虫を計数することにより、スライドが評価される(図3)。調製物の汚染がいずれのステップでも存在せず、蛍光寄生虫数が少なくとも200/ウェルである場合に、スポロゾイトは強力であるとみなされる。
【0068】
ワクチン組成物
弱毒化および病原性の、生きたPlasmodiumスポロゾイトを含む医薬組成物、ならびに、疾患を防止するための防止用ワクチン組成物として、およびワクチンおよび薬物のテストにおいてボランティアを感染させるための病原性チャレンジ組成物として、これらの組成物を使用する方法が提供されている(特にHoffman、米国特許出願公開第2005/0220822号を参照)。様々なカテゴリの弱毒化スポロゾイトが、ワクチン用に検討されている。これらには、遺伝性遺伝子改変、遺伝子変異、放射線曝露、および化学物質曝露を含む様々な方法により弱毒化されたスポロゾイトが含まれる。寄生虫の直接的遺伝子操作によりつくられる様々な弱毒化分離株が、P.falciparum(van Schaijk等、PLoS ONE(2008)3:e3549)ならびにネズミ特異的Plasmodium種(Kappe等、米国特許第7,122,179号;van Dijk等、PNAS(2005)102:12194−12199;Labaied等、Infect Immun.(2007)75:3758)について記載されている。一実施形態においては、ヒト特異的Plasmodiumの放射線照射弱毒化が、ガンマ放射線への曝露により達成される。(Hoffman,S.L.等(2002)185:1155−1164)。本明細書に提供される精製プロセスは、完全感染性スポロゾイトならびに弱毒化スポロゾイトの精製を対象とする。
【0069】
一実施形態では、弱毒化Plasmodiumスポロゾイトが、感染前、感染中または感染後に発現されうる他のPlasmodium種のまたは他の病原性生物の外因性遺伝子を含むように遺伝的に操作されうる。
【0070】
精製病原性スポロゾイトを含むワクチン接種方法論も、企図される。例えば、病原性スポロゾイトが、無性赤血球ステージ寄生虫に対して有効な抗マラリア薬(例えばクロロキン)で並行して処置される個体に投与され、または後で無性赤血球ステージ寄生虫に対して有効な抗マラリア薬で処置される個体に投与され、これにより、寄生虫が防御免疫応答を刺激するのを可能にしながら、in vivoで寄生虫により生じる病状を防止しうる。Roestenberg,M.,等(2009)NEJM 361:468−478;Pombo,D.J.等(2002)Lancet 360:610−617。
【0071】
無菌の精製された病原性スポロゾイトは、ワクチンおよびワクチン方法論の有効性を、これらのワクチンおよびワクチン方法論で以前に処置されたボランティアのチャレンジ研究において評価するための、チャレンジプロトコルにおいても有用である。同様に、精製された病原性スポロゾイトは、化学予防的薬物および療法の有効性を評価するための研究においてマラリアの症状、兆しまたは病状を生成するのにも有用である。
【0072】
無菌精製スポロゾイトを含む組成物およびワクチンは、付随材料または汚染により好ましくない免疫応答、外来性感染症または他の予想外の結果がもたらされるリスクを減少または除去するため、精製された無菌の生きた病原性スポロゾイトならびに精製された無菌の生きた弱毒化スポロゾイトは一般的に、それらの非無菌非精製対応物よりも有用である。精製された生きた弱毒化Plasmodium種スポロゾイトを含むワクチンは通常、非経口および本明細書に記載の他の経路により投与される。このようなワクチンは、マラリアの重症度、その兆候、症状またはその病状の防止または減少に有用である。
【0073】
一実施形態においては、無菌的に調製された弱毒化精製スポロゾイトを含む組成物およびワクチンは、以前にマラリアをもたらす病原体に曝露されていない、または曝露されているが完全に防御されていないヒトおよび他の哺乳動物対象において、部分的防御、増強された防御、または完全な防御を提供する。これらの組成物およびワクチンは、Plasmodiumの種、例えばP.falciparumまたはP.vivaxなどを含むマラリアをもたらす寄生虫から疾患を生じさせる感染症を発症する可能性を減少し、感染時に病気になる可能性を減少し、感染時に熱等の病気の重症度を減少し、感染者における寄生虫の濃度を減少し、または、マラリア原虫に曝露された集団におけるマラリアによる死亡率を減少するのにも同様に有用である。多くの場合には、部分的防御または免疫を付与されていない個体と比較して免疫化された個体が寄生虫により感染しまたは感染から病気になるのにかかる時間の遅れさえも、有益である。同様に、集団の約30%にこれらの利益のいずれかをもたらすワクチン処置戦略は、共同体および共同体に住む個体の健康に有意な影響を有しうる。病原性スポロゾイトを含む他の実施形態においては、開示の組成物は、ワクチン、マラリア処置のための薬物、ならびに他のマラリアの処置および防止の効能を実証するために有用である。
【0074】
対象におけるマラリア防止のための方法が、提供される。本方法は、無菌的に調製されており、実質的に精製された生きた弱毒化Plasmodiumスポロゾイトを、マラリアを防止するのに有効な量含むワクチンを、対象に投与するステップを含む。
【0075】
これらの方法に従ってワクチンが投与される対象は、マラリア寄生虫により感染しやすい任意のヒトまたは他の哺乳動物でありうる。このような方法では、投与は、経口投与等消化管を介し得、または投与は、粘膜投与、鼻腔内投与、表皮投与、皮膚投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜下投与、静脈内投与などを含むがこれに限らない非経口投与でありうる。さらに、投与は、連続注入によるもの、または一つまたは複数のボーラスによるもの、ならびに極微針により媒介される送達でありうる。
【0076】
マラリアの防止および/または処置は、熟練した実務家により、マラリア感染にともなう臨床または病理学的発現、例えば体温上昇、頭痛、疲労、昏睡、または寄生された赤血球の割合の評価により、直ちに確認されうる。したがって、本発明の方法によれば、対象は、精製された生きた弱毒化Plasmodiumスポロゾイトを含むワクチンの投与後に、マラリアの臨床的兆し、症状または病理学的発現の改善または非存在を示す。
【0077】
ワクチンおよび免疫原の有効および最適な投与量範囲は、当技術分野において公知の方法を用いて決定されうる。抗マラリア効果を達成するための適切な投与量に関する指針は、本明細書に開示される例示的アッセイから提供される。より具体的には、必要な技術を有する当業者は、本明細書および引用文献に記載される免疫化パターンからの結果から推定して、テストワクチン接種スケジュールを提供しうる。ボランティア対象が予定の間隔で様々な投与量で接種され、テスト血液サンプルが、後の感染寄生虫への曝露時のマラリアに対する防御のレベルにつき評価される。このような結果を用いて、哺乳動物、特にヒト対象の有効な免疫化のための、最適化された免疫化用量および投薬レジメン(スケジュール)を改良しうる。防御免疫を付与するのに有効な用量は、1〜6用量の投薬レジメンにおいて投与される5,000〜400,000精製弱毒化スポロゾイト、より具体的には少なくとも2用量の投薬レジメンにおける15,000〜270,000精製弱毒化スポロゾイト、最も具体的には3または4用量の投薬レジメンにおける25,000〜150,000精製弱毒化スポロゾイトである。
【0078】
対象における免疫応答は、抗原特異的または寄生虫ステージ特異的抗体応答の測定;公知技術による末梢血リンパ球の直接測定;ナチュラルキラー細胞細胞毒性アッセイ(Provinciali等(1992)J.Immunol.Meth.155:19−24)、細胞増殖アッセイ(Vollenweider等(1992)J.Immunol.Meth.149:133−135)、免疫細胞およびサブセットの免疫学的アッセイ(Loeffler等(1992)Cytom.13:169−174;Rivoltini等(1992)Can.Immunol.Immunother.34:241−251);および細胞媒介性免疫の皮膚テスト(Chang等(1993)Cancer Res.53:1043−1050)を含むがこれに限られない液性および細胞性免疫応答の評価を含むがこれに限られない標準テストにより測定されうる。例えば、Coligan等(編)(2000)Current Protocols in Immunology,Vol.1,Wiley&Sonsなど、免疫系の強度を測定する様々な方法および分析が、記載されている。
【0079】
提供されるワクチンは、付随材料を実質的に伴わない精製された生きた弱毒化Plasmodiumスポロゾイトの無病原体および非無病原体組成物、ならびに、薬剤的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体を伴う組成物を含む。これらのワクチンは、後の感染性寄生虫への曝露時にマラリアを防止または緩和するのに有効である。医薬組成物およびワクチンを調製する方法は、当業者に周知である(例えばRemington,The Science and Practice of Pharmacy第21版,Hendrickson,編(USIP:2005)を参照)。
【0080】
精製された生きた弱毒化または非弱毒化Plasmodiumスポロゾイトを適切な希釈剤およびバッファとともに含む、無菌的にまたは他の方法で調製されたワクチン組成物が、本発明に包含される。希釈剤、一般にリン酸緩衝食塩水(PBS)または、生理食塩水(NS:Normal Saline)は、様々なバッファpHおよびイオン強度である。このような組成物は、血清アルブミン、特にヒト血清アルブミン等の賦形剤も含みうる。血清アルブミンは、ヒト血液等の自然に生じるソースから精製されるか、あるいは組み換えDNAまたは合成技術により作られうる。このような組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、および/または保存剤もしくは低温保存剤等の添加剤も含みうる。ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の高分子化合物の顆粒調製物へのまたはリポソームへの、材料の取り込みも用いられうる。(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(1990),Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18042)参照により本明細書に組み込まれる1435〜1712頁を参照。
【0081】
ワクチンの有効量を決定するために、通常の熟練した実務家は、レシピエントの治療状況、年齢、および健康状態を考慮して、適切な投薬を確認することが可能である。選択される投与量は、所望の治療効果、投与ルート、および所望の処置期間に依存する。投与量レベルを決定するための実験は、通常の技術を有する当業者により、様々な投薬レジメンがマラリアに対する防御を誘導する能力につき評価される適切なヒト臨床試験により、確認されうる。
【0082】
開示のワクチンおよびこれらのワクチンを使用する開示の方法は、各成分が別々に対象に投与される個別のワクチンを含むワクチンレジメンの、一つの成分として有用でありうる。レジメンは、弱毒化Plasmodium種スポロゾイトおよび他のタイプのPlasmodiumワクチンによる順次免疫化を含む、いわゆるプライムブースト戦略でありうる。これは、弱毒化スポロゾイトをプライムとして、アジュバント中のPlasmodium関連リコンビナントタンパク質またはタンパク質類をブーストとして含めばよく、またはその逆でありうる。これは、Plasmodium関連タンパク質を発現するPlasmodium関連DNAワクチンまたはアデノウイルス等の組み換えウイルスをプライムとして、精製弱毒化スポロゾイトワクチンをブーストとして含んでもよく、その逆でもありうる。弱毒化Plasmodium種スポロゾイトおよび死滅および生きて弱毒化されたものを含む何らかの形の赤血球ステージ寄生虫による順次免疫化または混合免疫化も含みうる。別個の成分を含む複合ワクチンは、個別のワクチン成分を含むワクチンレジメン、プライム/ブーストレジメン、コンポーネントワクチン、コンポーネントワクチンキットまたはコンポーネントワクチンパッケージと称されうる。例えば、複合ワクチンは、生きた精製無病原体弱毒化スポロゾイトを含むワクチンを成分として含みうる。複合物は、組み換えタンパク質、合成ポリペプチド、これらの要素自体をコードするか、または組み換えウイルス、組み換えバクテリア、もしくは組み換え寄生虫に機能的に取り込まれたDNAを含むがこれに限られない、一つ以上の組み換えまたは合成サブユニットワクチン成分をさらに含みうる。ワクチン成分は、細胞外で早期肝臓ステージに成長させられる無病原体弱毒化純培養スポロゾイトも含みうる。
【0083】
西アフリカ、東アフリカ、東南アジアなど、世界の様々な地域からのP.falciparum株が記載されている。一つの弱毒化スポロゾイト株を接種されたボランティアには、他の株に対する防御がみられる(Hoffman,S.L.等(2002)J.Inf.Dis.185:1155−1164)。一実施形態においては、Plasmodium種の複数の単離株および/または株が、スポロゾイト組成物またはワクチン製剤において組み合わせられる。
【0084】
いくつかのPlasmodium種、主にP.falciparumおよびP.vivaxが、ヒトにおいてマラリアをもたらすことが知られている。P.malariae、およびP.ovaleを含む他のPlasmodium種もマラリアをもたらす。P.knowlesiも、ヒト疾患をもたらすことが知られている。一実施形態においては、二つ以上のPlasmodium種が、ワクチン処方において組み合わせられる。さらに他の実施形態においては、ワクチンレジメンの個別の成分が、異なる種から、例えばいくつかの用量はP.falciparumから、その他はP.vivax.から、得られうる。
【0085】
別の実施形態では、スポロゾイトはトランスジェニックまたは組み換え寄生虫、すなわち本明細書において導入遺伝子と称される、それを含む寄生虫の種とは異質のDNA配列または遺伝子を含み発現する寄生虫でありうる。(例えばFranke−Fayard,等、Molec.and Biochem.Parasitol.2004 A Plasmodium berghei reference line that constitutively expresses GFP at a high level throughout the complete life cycle.137:23−33;Wengelnik,K.等、The EMBO J.1999 The A−domain and the thrombospondin−related motif of Plasmodium falciparum TRAP are implicated in the invasion process of mosquito salivary glands.18:5195−5204参照)。当業者には当然のことながら、トランスジェニック寄生虫、すなわち導入遺伝子を含むものは、本明細書に開示の方法論に従って、トランスジェニック寄生虫が作られた親寄生虫と同じ様式で同じ程度に精製されうる。
【0086】
最近発表された結果は、ヒトマラリア系で生じることにつき高度な予測性を有することを示されている齧歯目マラリア系における異種間防御を報告する(Sedegah,M.等(2007)Parasite Immunol.29:559−565)。これは、P.falciparumを含むワクチン組成物がP.vivaxおよび/または他のヒトPlasmodium種に対して防御免疫を提供しうることを示唆する。
【0087】
医薬組成物は、保存、低温保存、凍結乾燥、噴霧乾燥、冷蔵、または室温で熱安定化されるなどすればよい。
【0088】
以上の記載および以下の実施例はいずれも、例示的かつ説明的であるにとどまり、請求される本発明を制限するものではない。さらに、本発明は、記載される具体的実施形態に限られず、したがって当然ながら変動しうる。さらに、本発明の範囲はその請求項だけにより制限されるため、具体的実施形態を記載するために用いられる用語は制限を意図しない。
【0089】
特に断りがない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語の意味は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されているものである。当業者にはさらに当然のことながら、従来技術において本明細書に記載のものと同様または等価の任意の方法および材料も、本発明を実施またはテストするために用いられうる。さらに、本明細書に記載の全ての特許、特許出願および刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるところの、単数形「1つの(a)」、「または」、および「前記(the)」は、文脈により別の意味が明示されない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば「弱毒化スポロゾイトワクチン(an attenuated sporozoite vaccine)」への言及には、複数のこのようなスポロゾイトが含まれ、「前記薬剤」への言及には、一つ以上の薬剤および当業者に公知のその等価物への言及が含まれる、などとなる。
【0091】
さらに、代謝的に活性で、生きているが、その生活環およびマラリアの臨床兆候および病状をもたらす能力において弱毒化されているスポロゾイトは、弱毒化スポロゾイト、生きた弱毒化スポロゾイト、および代謝的に活性の生きた弱毒化スポロゾイトと様々に呼ばれる。
【0092】
本明細書および請求項に記載される数値的パラメータは、本発明の所望の性質に応じて変動しうる近似値である。少なくとも、均等論の適用を請求項の範囲に制限しようとするものではないが、各数値的パラメータは少なくとも、報告される有効数字の数に照らして、通常の概算技術を適用して解釈されなければならない。だが、具体的実施例に記載される数値は、できるだけ正確に報告されている。しかし、実験的測定から到達されるいかなる数値も、その実験的測定値の標準偏差からの一定の誤差を本質的に含む。
【0093】
以上の教示に照らし、本発明の多くの修正および変更が考えられる。したがって当然のことながら、添付の特許請求の範囲内で、本発明は特に記載されているのとは別の方法により実施されうる。
【0094】
以下の実施例は、本発明をさらに例示する。それらは、本発明を例示し、本発明のある実施形態の様々な有益な性質を開示するにすぎない。これらの実施例は、本発明を制限するものとして解釈されてはならない。
【実施例】
【0095】
(実施例1)
付随SGMの測定−ELISA
提供される方法により、任意のPlasmodium種のスポロゾイトを精製しうる。本明細書に提供される実施例は、P.falciparumのスポロゾイト(PfSPZ)の精製を記載する。しかし、他の実施形態は、P.vivax、P.ovale、P.malariae、および/またはP.knowlesiを利用する。さらに他の実施形態は、これらの寄生虫の混合物を利用する。さらに他の実施形態は、各種の弱毒化スポロゾイトを利用する。さらに他の実施形態は、その寄生虫とは異質のDNA配列または遺伝子を含み発現する弱毒化スポロゾイトを利用する。
【0096】
A−抗SGMウサギ抗血清の調製
i)蚊からの唾液腺摘出
蚊唾液腺に対するウサギ抗血清を生成するために、生後10〜14日の昆虫飼育場飼育Anopheles stephensi蚊を、4□Cの冷蔵庫中におよそ5分間置いて静止させた。静止した蚊を、70%エタノールを含むペトリ皿に短時間置き、それから、1Xリン酸緩衝食塩水(PBS)を含むペトリ皿に移した。各蚊から一対の唾液腺を、顕微鏡ガラススライド上で1X PBS中において手で解剖し、20〜30μlの1X PBSを含む1.7ml透明無菌マイクロチューブ(Axygen Scientific Inc.CA)へ移した。毎日およそ100の蚊を解剖し、30μlのPBS中の100対の唾液腺を−70□Cでフリーザ内に置いた。一回の免疫化のために十分な唾液腺が得られたら、バイアルをフリーザから除去し、室温に解凍してプールした。
【0097】
ii)唾液腺処理
一次接種のためには、1,000匹の蚊から唾液腺を解剖し、−70℃で保存した。接種の日に、ドライアイス/エタノールバスを用い室温で解凍する三つの追加的凍結融解サイクルによりサンプルを解凍し、プールし、溶解した。唾液腺を600μlの最終体積の1X PBSにおいて再構築し、Montanide ISA 720(SEPPIC,Inc.,Fairfield,NJ)で乳化した。
【0098】
その後の全ての免疫化では、毎日500匹の蚊から唾液腺を解離し、−70℃で保存した。接種の日に、サンプルを解凍し、プールし、乳棒(Kontes EF2488A)で均質化した。プールに加えた100μlのPBSで、乳棒をすすいだ。サンプルを600μlPBSの最終体積に再構築し、再構築の30分後以内に乳化した。
【0099】
iii)唾液腺乳化
2mlガラスバイアル(アジュバントコントロールの二つのバイアル;アジュバント中唾液腺の二つのバイアル)を得た。750μlのMontanide ISA 720アジュバントを、5ミクロンフィルタシリンジに通した。700μlの濾過されたアジュバントを、各ガラスバイアルに注射した。300μlのPBSをコントロールバイアルに、300μlのPBS中唾液腺を実験バイアルに加えた。バイアルを、ゴムストッパでカバーした。各バイアルを、アルミニウムシールキャップでさらキャップしシールをクリンパで押圧した。バイアルを、ボルテックスパッドの小穴に置き、テープで留め、30分間ボルテックスした。
【0100】
iv)エマルジョンおよび接種量
一次免疫化のためには、二つのガラスバイアルを用いて、1,000匹の蚊からの抗原を乳化し(各々1,000μlの300:700体積比の唾液腺/PBS:Montanideアジュバントを含む)、合計2mlのエマルジョン体積を得た。後続の免疫化のためには、500匹の蚊からの抗原を、2,000μlの合計体積で同様に乳化した。従って、抗原の濃度の半分が、一次接種材料と同じエマルジョン体積において後続の免疫化で注射された。すべての免疫化におけるコントロールウサギは、300:700の体積比のPBS:アジュバントを含む2mlのエマルジョンを受けた。すべてのエマルジョンが、乳化の1時間以内にウサギに接種された。
【0101】
実験ウサギは、2,000μlの唾液腺:アジュバント(300:700の体積比)エマルジョンを、部位あたり250μlで8部位に皮下注射された。コントロールウサギは、2,000μlのPBS:アジュバント(300:700の体積比)エマルジョンを、部位あたり250μlで8部位に皮下注射された。
【0102】
v)ウサギ免疫化スケジュール
表1は、本明細書に提供される実施例において使用されるポリクローナル抗体を生成するために用いた免疫化スケジュールを提供する。このスケジュールは、ポリクローナル抗体調製の方法について制限することを目的とせず、本明細書において使用される抗体の例および開示としてのみ提供される
【0103】
【表1】

B−SGM ELISAアッセイ
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、付随材料を定量した。例として、P.falciparumスポロゾイトの調製物におけるA.stephensi唾液腺に由来する唾液腺材料(SGM)を定量した。SGM標準液(非感染蚊の唾液腺から調製)の希釈物および粗唾液腺調製物からのスポロゾイトのサンプルならびに精製スポロゾイト調製物のサンプルを伴うELISAプレート(Nunc MaxiSorp Cert,N/Ster,PS,96well Flat−Bottom Immuno Plate,Cat.No.439454)を、アッセイのために調製した。一次抗体は、1:200で希釈されたウサギ抗SGM血清(上のAに記載)であった。二次抗体は、1:5,000で希釈されたアルカリホスファターゼ結合抗ウサギIgGであった(Promega,Cat.No.S373B)。KPL Blue Phos SubstrateおよびStop Kits(KPL,Cat No.50−88−06および50−89−00)を用いた。Molecular Devices Microplate Readerで、635nmでプレートを読みとった。
【0104】
スポロゾイト調製物中のSGMを定量するために用いられるアッセイには、二つの要素がある。第一は、既知濃度の参照用SGMでの標準曲線を生成するステップからなり、第二は、精製前および精製後サンプル中に存在するSGMの量を定量するステップからなる。既知のSGM濃度のSGM参照標準(RS−SGM)を捕捉抗原として使用して、アッセイごとに新しい標準曲線が生成される。標準曲線を確立するために、濃度が減少するRS−SGM(2.0〜0.05μg/mL)の希釈系列を、1%HSAを伴うE−199において調製した。精製前および精製後スポロゾイト調製物中の残余SGMを評価するために、これらのサンプルも、1%HSAを伴うE−199において系列希釈した。希釈したRS−SGMサンプルおよびスポロゾイト調製物を、1X PBSを伴う0.25%HSAにさらに希釈し、三通りにELISAプレートに加えた。このPBSへの希釈は、HSAの含量を低下させるために必要である。HSAはブロッキング剤として働き、アッセイの感度を減少させうる。SGMでコーティングされたELISAプレートを、まずウサギポリクローナル抗SGM抗血清(第100段落を参照)で、その後、酵素標識抗ウサギ抗体で、最後に酵素基質でインキュベートした(第101段落を参照)。SGMの存在下で酵素基質の色が変化し、ウェルの含量の光学濃度(OD:optical densities)が変化する。マイクロプレートリーダを使用して、各サンプルのODを決定した。スポロゾイト調製物中のSGMの量を決定するために、これらのサンプルおよび参照標準のOD値に、共通の漸近線および勾配を有するがサンプルごとに別々のED50値を有するロジスティック混合モデルをあてはめた。ED50の相対値を参照用サンプル中の既知の(または指定の)SGM濃度と組み合わせて用いて、精製前スポロゾイトおよびVBPサンプル中のSGM濃度を推定した。共通の参照標準およびテストサンプルを含む三つの実験アッセイに基づく変動の推定値を組み込んだ全データから、95%信頼下限および信頼上限がスポロゾイト調製物につき同様に決定された。各スポロゾイト調製物中に存在すると分かっているスポロゾイトの数から、SGMのng/25,000スポロゾイト、および付随材料の減少係数ならびに減少率を計算した。
【0105】
表2は、10の生産キャンペーンの結果を示す。「開始」は、感染蚊から解剖された唾液腺の粉砕後プールされた粗調製物中のng SGM/25,000スポロゾイトの測定量を表す。「最終」は、本明細書に提供される方法により精製された調製物中のSGMの対応する測定量を表す。この方法論は、スポロゾイトの99.9%以上の実質的精製をもたらす。
【0106】
ng SGM/25,000スポロゾイトにつき提供される、実験的測定に起因する値は、記載の現行アッセイからの結果に基づき、絶対ではなく、他のアッセイまたは分析の方法が用いられた場合にはいくらか異なりうることが認められる。
【0107】
【表2】

(実施例2)
キャンペーン3におけるスポロゾイトの精製
本開示のサイズ排除濾過を用いて、粉砕された唾液腺調製物からスポロゾイトを精製した。スポロゾイトは、精製プロセスの間中、精製溶媒中に維持した。精製の終わりに、目視(鏡検)、バイオ負荷テスト(USP<61>)、ミコプラズマおよびスピロプラズマのテスト、ウイルス汚染物質のin vitro決定;ならびにSGM−ELISAアッセイのためにサンプルを除去した。
【0108】
A−スポロゾイトの精製
精製のための材料の調製:272〜356匹の間の蚊からの粉砕された解剖産物を、全てまとめて管に受け取った。解剖産物のサンプル(5μl)を除去し、プール後目視のために22oCで取り置いた(図1a)。そして、残りの解剖産物を、精製溶媒で10mlに希釈した。この時点でサンプル(合計100μl)を計数(20μl)およびSGMアッセイ(60μl)のため除去した。すべての溶液およびサンプルを、精製の間約22℃に保った。
【0109】
精製手順:約4ml/分(約140L/時/m2)の流速で蠕動ポンプを用いて、希釈解剖産物を、直列に接続された三つのフィルタ(フィルタ#1、フィルタ#2およびフィルタ#3)を横断してポンプ輸送し、フィルタ#4で全量濾過により捕捉した。デプスフィルタであるフィルタ#1は、10ミクロンの孔径を有した(Polygard(登録商標)−CN Optiscale−Millipore Cat.No.SN1HA47HH3)。デプスフィルタであるフィルタ#2の孔径は、0.6ミクロンであった(Polygard(登録商標)−CN Optiscale filter−Millipore Cat.No.SN06A47HH3)。フィルタ#3は、1.2ミクロンの孔径を有した(Isopore membrane,直径47mm−Millipore Cat.No.RTTP04700)、Swin−Locフィルタホルダに保持された(Whatman Cat.No.420400)。濾過された材料は、直径90mmおよび0.4μmの孔径のIsoporeメンブレン(Millipore Cat.No.HTTP09030)が取り付けられた、フィルタ#4で撹拌限外濾過セル(Millipore,model 8200)に捕捉された。試行(run)#1のための合計100mlの精製溶媒および試行#2〜5のための合計120mlを、希釈解剖産物と共にメンブレンを横断してポンプ輸送した。この後、もう100mlの精製溶媒をフィルタ#4に適用した。残余分体積が約5〜10mlに達したら、合計35mlの精製溶媒を使用した洗浄により収集し、無菌35mlオークリッジ遠心管へ移した。さらに35mlの洗浄を同じように収集し、これも第二無菌35mlオークリッジ遠心管へ移した。この35mlオークリッジ管を16,340gで5分間遠心分離し、計数のために再懸濁し、約22℃で保った。
【0110】
計数後に、材料を約15〜18×10スポロゾイト/mlの濃度に再懸濁した。150μlをSGMの評価のために除去し、SGM−ELISAアッセイを行う前に−70℃で冷凍保存した。20μlを精製PfSPZ調製物から除去し、顕微鏡スライドに適用した(図1b)。少なくとも5分間、30分間までスポロゾイトを沈殿させ、200×倍率でスポロゾイトを見た。同様の手順を、精製前サンプルにつき実施した(図1aおよび1b)。キャンペーンの各試行の具体的データが表3に示され、精製前および精製後サンプルの顕微鏡分析(顕微鏡写真)が図1aおよび1bに示される。
【0111】
キャンペーン3では、試行あたり272〜356匹の蚊を用いた七試行で(合計2146匹の蚊)、試行あたりの精製スポロゾイトの収率が40%〜75%(平均57%)であり、インプロセスおよび放出アッセイのための全てのサンプルの除去前に合計61.3×10精製スポロゾイトが得られる。SGMアッセイ(実施例1−表2−キャンペーン3)は、精製スポロゾイトが0.23ng SGM/25,000スポロゾイトを含むことを示した。プールされた精製前材料のSGM含量は、836.64ng/25,000スポロゾイトを含んだ。この実施例では、精製プロセスにおいて全体として3,637倍のスポロゾイトの精製があった。修正されたUSP<61>バイオ負荷アッセイは、コロニー形成単位がないこと、換言すれば微生物汚染がないことを示した。
【0112】
【表3】

(実施例3)
キャンペーン6におけるスポロゾイトの精製
上記の実施例2に記載のようにサイズ排除濾過を用いて、粉砕唾液腺調製物からスポロゾイトを精製した。スポロゾイトは、精製プロセスの間中、精製溶媒中に維持した。目視(鏡検)、微生物学的テスト、およびSGM−ELISAアッセイによるサンプル中のSGMの量の定量のためにサンプルを除去した。実施例2のようにサンプルを調製し精製した。
【0113】
キャンペーン6においては、試行あたり343〜395匹の間の蚊を用いた八試行で(合計2997匹の蚊)、試行あたりの精製スポロゾイトの収率が51%〜87.5%の範囲(平均72.3%)であり、インプロセスおよび放出アッセイのための全てのサンプルの除去前に合計160.5×10精製スポロゾイトが得られる(表4)。SGM−ELISAアッセイ(実施例1−表2−キャンペーン6)は、精製スポロゾイトが0.65ng SGM/25,000スポロゾイトを含むことを示した。プールされた精製前材料のSGM含量は、780.66ng/25,000スポロゾイトを含んだ。この実施例では、精製プロセスにおいて全体として1,201倍のスポロゾイトの精製があった。修正されたUSP<61>バイオ負荷アッセイは、コロニー形成単位がないこと、換言すれば微生物汚染がないことを示した。精製前および精製後サンプルの顕微鏡分析(顕微鏡写真)が、図2に示される。
【0114】
【表4】

(実施例4)
キャンペーン5、6および7からの放射線照射(150GY)P.falciparumスポロゾイトによるヒト肝細胞系統(HC−04[1F9])のインフェクション。
【0115】
方法。PfSPZをHC−04(1F9)細胞とともに3日間インキュベートしてから、PfLSA−1の発現を評価した。
【0116】
【表5】

結果および解釈。肝臓ステージ寄生虫において発現されるPlasmodium falciparum肝臓ステージ抗原−1(PfLSA−1)の検出は、弱毒化および精製スポロゾイトの効力を示すものである。表5に示すように、スポロゾイトが150Gyに曝露された後に、P.falciparum肝臓ステージ寄生虫によりPfLSA−1が発現される。
【0117】
(実施例5)
放射線照射(100、120、142.5、150Gy)または放射線非照射P.falciparumスポロゾイトによるヒト幹細胞系統(HC−04[1F9])のインフェクション。
【0118】
方法。スポロゾイトを、HC−04(1F9)細胞において3日間インキュベートしてから、PfLSA−1の発現を評価した。
【0119】
【表6】

結果および解釈。表示のように(表6)様々な線量に曝露された25,000PfSPZを、HC−04(1F9)細胞を含む8ウェルLab−Tekスライドの各ウェルに加えた。スライドを3日間インキュベートし、PfLSA−1を発現する寄生虫につき評価した。表6に示すように、放射線非照射Pfスポロゾイトと比較して、150Gyに曝露されたPfスポロゾイトは、このアッセイにおいて放射線非照射Pfスポロゾイトの活性の91%を有した。この差は、2テールスチューデントt検定(p=0.21)において統計的に有意なレベルに達しなかった。
【0120】
本発明の他の実施形態は、本明細書において開示される本発明の明細書および実施を考慮することにより当業者に明らかとなる。明細書および実施例は、例示としてのみ考えられることが意図される。さらに、以上において本発明が適切な実施形態に関して記載されているが、これらの実施形態は本発明を理解することだけを目的とする。本発明の真の範囲および精神を提供する請求項から本発明が逸脱しない限り、様々な変更または修正が可能である。
【図1a】

【図1b】

【図2a】

【図2b】

【図3a】

【図3b】

【図3c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Plasmodium種寄生虫の実質的に精製された調製物。
【請求項2】
前記寄生虫が、代謝的に活性である、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
前記寄生虫が、感染性スポロゾイトである、請求項2に記載の調製物。
【請求項4】
賦形剤をさらに含む、請求項3に記載の調製物。
【請求項5】
前記Plasmodium種が、P.falciparumである、請求項4に記載の調製物。
【請求項6】
前記賦形剤が、ヒト血清アルブミンを含む、請求項4に記載の調製物。
【請求項7】
前記スポロゾイトが、蚊から精製される、請求項4に記載の調製物。
【請求項8】
前記スポロゾイトが、唾液腺材料の精製前調製物から精製される、請求項7に記載の調製物。
【請求項9】
前記スポロゾイトが、宿主の感染後に前記寄生虫がマラリアの疾患病状をもたらすことができないように、十分に弱毒化される、請求項4に記載の調製物。
【請求項10】
前記スポロゾイトが、一つ以上の導入遺伝子を含む、請求項4に記載の調製物。
【請求項11】
前記スポロゾイトの種が、P.falciparumである、請求項10に記載の調製物。
【請求項12】
25,000スポロゾイトあたり15ナノグラム未満の付随材料を含む、請求項4に記載の調製物。
【請求項13】
25,000スポロゾイトあたり1ナノグラム未満の付随材料を含む、請求項12に記載の調製物。
【請求項14】
25,000スポロゾイトあたり0.12ナノグラム未満の付随材料を含む、請求項12に記載の調製物。
【請求項15】
付随材料の少なくとも98%が、前記精製前材料から除去されている、請求項8に記載の調製物。
【請求項16】
付随材料の少なくとも99.9%が、前記精製前材料から除去されている、請求項8に記載の調製物。
【請求項17】
付随材料の少なくとも99.97%が、前記精製前材料から除去されている、請求項8に記載の調製物。
【請求項18】
前記弱毒化が、遺伝性遺伝子改変もしくは遺伝子変異の導入により、または放射線曝露、化学物質暴露、もしくは環境曝露により、確立される、請求項9に記載の調製物。
【請求項19】
前記弱毒化が、放射線曝露により確立される、請求項18に記載の調製物。
【請求項20】
前記放射線曝露が、少なくとも100Gyであるが、1000Gyを超えない照射である、請求項19に記載の調製物。
【請求項21】
前記曝露が、150Gyである、請求項20に記載の調製物。
【請求項22】
無菌的に調製され、汚染を伴わない、請求項12に記載の調製物。
【請求項23】
ヒト宿主または他の哺乳動物宿主においてPlasmodium種寄生虫により誘導されるマラリアに対する防御免疫を付与する方法であり、前記方法は、前記Plasmodium種の代謝的に活性の弱毒化スポロゾイトの実質的に精製された調製物の少なくとも一用量の投与を含み、前記Plasmodium種の病原性寄生虫への後の曝露時に、前記マラリアの病理学的発現が前記宿主において防止される、方法。
【請求項24】
前記調製物が、賦形剤をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記賦形剤が、ヒト血清アルブミンを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも二用量の前記調製物の投与を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
三以上の用量の前記調製物の投与を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記弱毒化が、遺伝性遺伝子改変もしくは遺伝子変異の導入により、または放射線曝露、化学物質暴露、もしくは環境曝露により、確立される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記弱毒化が、放射線曝露により確立される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記Plasmodium種が、P.falciparum、P.vivax、P.ovale、P.knowlesiまたはP.malariaeである、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記種が、P.falciparumである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
代謝的に活性のPlasmodiumスポロゾイトの精製のための方法であり、前記方法は、
(a)スポロゾイトと付随非スポロゾイト材料とを含む、水性精製前調製物を提供するステップと;
(b)
(i)10ミクロンより大きい付随材料を保持するが、前記スポロゾイトの通過を許容することができる孔径の、第一排除フィルタと;
(ii)約1.2ミクロンより大きい付随材料を保持するが、前記スポロゾイトの通過を許容することができる孔径の、第二排除フィルタと;
(iii)1.2ミクロンまたはそれより小さな材料を通過させ、前記スポロゾイトの通過を許容することができる孔径の、第三メンブレンフィルタと;
を含む、一組のサイズ排除フィルタに、前記スポロゾイト調製物を順次通すステップと;
(c)前記スポロゾイトを保持することができる孔径の収集フィルタに、実質的に精製されたスポロゾイトを収集するステップと;
(d)前記回収された実質的に精製されたスポロゾイトを、前記収集フィルタから除去し、これにより、付随非スポロゾイト材料を実質的に伴わない精製スポロゾイト調製物を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項33】
前記第一フィルタ、前記第二フィルタ、および前記第三フィルタがシステムにおいて順次接続され、前記スポロゾイトがある流量で前記フィルタを横断して通過する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記システムが、少なくとも3L/時/mであるが1500L/時/mを超えない流量を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記流量が、少なくとも125L/時/mであるが250L/時/mを超えない、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第一排除フィルタが、10ミクロンの公称孔径を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記第二排除フィルタが、0.6ミクロンの公称孔径を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記第三フィルタが、1.2ミクロンの孔径を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記収集フィルタが、0.4ミクロンの孔径を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記精製スポロゾイト調製物中の前記付随非スポロゾイト材料の量が、25,000スポロゾイトあたり15ナノグラム未満である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記精製スポロゾイト調製物中の前記付随非スポロゾイト材料の量が、25,000スポロゾイトあたり1ナノグラム未満である、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記精製スポロゾイト調製物中の前記付随非スポロゾイト材料が、25,000スポロゾイトあたり0.12ナノグラム未満である、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記精製前調製物中の付随材料の少なくとも98%が除去されている、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記精製前調製物中の付随材料の少なくとも99.9%が除去された、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記精製前調製物中の付随材料の少なくとも99.97%が除去される、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
ヒト宿主または他の哺乳動物宿主において、Plasmodium種寄生虫により誘導されるマラリアに対する防御免疫を付与する方法であり、前記方法が、前記Plasmodium種の病原性スポロゾイトの実質的に精製された調製物の少なくとも一用量の投与と同時の抗マラリア剤のレジメンの投与を含み、前記Plasmodium種の病原性寄生虫に対する後の曝露時に前記宿主において前記マラリアの病理学的発現が防止される、方法。
【請求項47】
前記抗マラリア剤が、クロロキンである、請求項46に記載の方法。

【公表番号】特表2012−515203(P2012−515203A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546286(P2011−546286)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/020564
【国際公開番号】WO2010/083111
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(504372041)サナリア, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】