精製方法
陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む、Streptococcus pyogenesのGAS炭水化物を精製するための方法。該方法は、GAS炭水化物の良好な収率を提供する。本発明の糖類は、ヒアルロン酸、タンパク質および核酸汚染が低レベルである。本発明者らは、陰イオン交換クロマトグラフィー中に、不純物は陰イオン交換マトリックスに結合するが、一方GAS炭水化物は系を素通りして溶離物中に流入する、すなわち、糖が「貫流する」ことを可能にする条件下でGAS炭水化物の精製を実施することができることを見出した。これらの条件を使用すると、GAS炭水化物をマトリックスから溶離するために、イオン強度を増大させるかまたはpHを上昇させる移動相緩衝液その他を使用する必要がないので、精製方法は簡単になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2008年10月27日に出願された米国仮出願番号61/108,763の利益を主張し、上記米国仮出願は、その全容が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、細菌の多糖類、特にStreptococcus pyogenesの多糖類を、特にワクチンの調製において使用するために精製する分野におけるものである。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
細菌由来の多糖類は、多年にわたりワクチンに使用されてきた。しかしながら、糖類はT非依存性抗原であるから、それらは免疫原性に乏しい。担体への結合体化は、T非依存性抗原をT依存性抗原に変換して、それにより記憶応答を増強し、保護免疫が発達するのを可能にすることができる。最も有効な糖ワクチンは、それ故、複合糖質に基づくものであり、プロトタイプの結合体化ワクチンはHaemophilus influenzaeタイプb(「Hib」)に対するものであった[例えば参考文献95の第14章を参照されたい]。
【0004】
結合体化ワクチンについて記載された別の細菌は、「A群連鎖球菌」、または単に「GAS」としても公知のStreptococcus pyogenesである。該結合体化ワクチンは、GAS炭水化物を含み、それは細菌の細胞壁の成分である。この研究の多くはJohn Zabriskieおよび共同研究者により実施され、参考文献1、2および3などの文献において論じられている。
【0005】
糖系ワクチンへの出発点は糖それ自体であり、一般にこれが標的細菌から精製される。GAS炭水化物の精製のためのZabriskie法は、参考文献4および5の方法に基づき、参考文献6(特許文献1)に詳細に記載されている。Zabriskieにより使用された別の方法は、参考文献8および9に記載された参考文献7と同様な方法に基づく。別の方法は参考文献10に記載されている。これらの方法は、還元的酸処理によるGAS炭水化物の抽出を含む。具体的には、Streptococcus pyogenesの細胞が亜硝酸ナトリウムおよび氷酢酸と組み合わされて、細胞が溶解し、それによりGAS炭水化物が放出される。次に、生成した細胞溶解産物懸濁物は、サイズ排除クロマトグラフィーにより(参考文献10に記載のように)、例えば、溶離液としてリン酸緩衝生理食塩水を使用するゲル濾過により(参考文献6(特許文献1)に記載のように)、またはタンジェンシャルフロー濾過(tangential flow filtration)により(参考文献8に記載のように)精製され、その後、GAS炭水化物が適当な担体タンパク質と結合体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,866,135号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
参考文献6および8〜10は、使用された精製方法によりGAS炭水化物のどのような収率が達成されるかを示していない。その上、参考文献6および8は、生じたGAS炭水化物調製物が「1%(w/w)未満のタンパク質および核酸を含有する」[6]または「タンパク質および核酸を含まない」[8]と述べているが、タンパク質または核酸以外の不純物を除去する提案がない。それ故、GAS炭水化物を精製するためのさらなる改善された方法、特により高い収率および純度を達成する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の開示)
本発明は、糖が陰イオン交換クロマトグラフィーに供される精製方法に基づく。本発明者らは、陰イオン交換クロマトグラフィーがGAS炭水化物の良好な収率を提供することを見出した。その上、陰イオン交換クロマトグラフィーは、特に純粋なGAS炭水化物調製物を提供する。特に、本発明者らは、GAS炭水化物がGAS莢膜多糖に由来するヒアルロン酸でしばしば汚染されることを見出した。陰イオン交換クロマトグラフィーは、GAS炭水化物のヒアルロン酸汚染を減少させるのに特に有効である。これは、ヒアルロン酸はそれ自体で免疫原性であることが公知であるので[11]、GAS炭水化物がワクチンにおける使用を意図されるときに特に有利である。したがって、ヒアルロン酸の存在は、GAS炭水化物に対する免疫応答に干渉し得る。その上、ヒアルロン酸は、ヒト組織と交差反応性である抗体を誘発すると考えられており([12]および[13])、そのため医薬製品中のその存在は、健康にとって有害であり得る。陰イオン交換クロマトグラフィーは、GAS炭水化物のタンパク質および核酸汚染を減少させるのにも特に有効である。
【0009】
さらなる利点として、本発明者らは、陰イオン交換クロマトグラフィー中に、不純物は陰イオン交換マトリックスに結合するが、一方GAS炭水化物は系を素通りして溶離物中に流入する、すなわち、糖が「貫流する」ことを可能にする条件下でGAS炭水化物の精製を実施することができることを見出した。これらの条件を使用すると、GAS炭水化物をマトリックスから溶離するために、イオン強度を増大させるかまたはpHを上昇させる移動相緩衝液その他を使用する必要がないので、精製方法は簡単になる。
【0010】
本発明者らは、GAS炭水化物がしばしばGAS炭水化物のポリラムノシル改変体で汚染されることも見出した。本発明の精製方法は、GAS炭水化物のポリラムノース汚染を減少させるために特に有効である。
【0011】
したがって、本発明は、陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む、Streptococcus pyogenesのGAS炭水化物を精製するための方法を提供する。Streptococcus pyogenesのGAS炭水化物は、ヒアルロン酸、連鎖球菌性タンパク質および核酸の少なくとも1つを含む懸濁物に含まれることがある。特に、本発明は、陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む、GAS炭水化物をヒアルロン酸から分離する方法を提供する。ヒアルロン酸は、典型的にはStreptococcus pyogenesの莢膜多糖に由来する。この方法中で、他の精製工程を、陰イオン交換クロマトグラフィー工程の前または後のいずれかに含めることもできる。例えば、濾過工程(単数または複数)は、高分子量の汚染物質(細胞残渣など)を除去するために含めることができる。同様に、低分子量の汚染物質(Streptococcus pyogenes多糖類のフラグメントなど)を除去するために、特に前記濾過工程(単数または複数)後に、限外濾過工程(単数または複数)を含めることができる。また、ゲル濾過工程(単数または複数)は、特定の長さのGAS炭水化物分子を選択し、且つ汚染、特にタンパク質による汚染を低減するために含めることができる。ゲル濾過工程(単数または複数)に加えて、またはその代わりに、本発明の方法は、GAS炭水化物を濃縮する1回または複数回の工程を含むことができる。濾過および/または限外濾過工程(単数または複数)は、典型的には陰イオン交換クロマトグラフィー工程の前に実施され、一方、ゲル濾過工程(単数または複数)および/または濃縮工程(単数または複数)は、典型的には陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に実施される。GAS炭水化物の糖は、その後のワクチン調製のために加工することができる。したがって、透析および/または凍結乾燥工程などの種々の加工工程を方法中に含めることができる。この方法は、精製されたGAS炭水化物を担体分子と結合体化する工程も含むこともできる。典型的には、この結合体化工程は、上記精製工程(単数または複数)の後に実施される。
【0012】
したがって、本発明は、Streptococcus pyogenesのGAS炭水化物を精製するための方法において、陰イオン交換クロマトグラフィーの使用からなる改善を提供する。陰イオン交換クロマトグラフィーの結果として、ヒアルロン酸、タンパク質および核酸による汚染が限定されたGAS炭水化物が、良好な収率で生じる。
【0013】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程の収率は、典型的には70%を超える(例えば>75%、>80%、>85%、>90%)。実用的限界は、収率が90%を超えないこともあることを意味する(例えば、<90%、<80%、<75%その他であることもある)。
【0014】
本発明は、Streptococcus pyogenes菌からGAS炭水化物を精製するための方法であって、200ng/ml未満(例えば≦150ng/ml、≦100ng/ml、≦90ng/ml、≦80ng/ml、≦75ng/ml、≦60ng/ml、≦50ng/ml、≦40ng/ml、≦25ng/ml、≦20ng/ml、≦10ng/mlその他)のレベルのヒアルロン酸汚染を含む組成物を提供する方法も提供する。典型的には、ヒアルロン酸汚染のレベルは、100ng/ml未満、特に80ng/ml未満である。ヒアルロン酸汚染のレベルは、精製された試料中に存在するGAS炭水化物の重量に対するヒアルロン酸の重量によって表すこともできる。この方法では、本発明は、GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.75%、≦0.5%、≦0.25%、≦0.1%その他)のヒアルロン酸汚染のレベルを含む組成物を提供する、Streptococcus pyogenes菌からGAS炭水化物を精製するための方法を提供する。典型的には、ヒアルロン酸汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸1重量%未満である。これより低いレベル、例えばGAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸0.005重量%以下も得ることが可能である。
【0015】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース50重量%未満(例えば≦40%、≦30%、≦25%、≦20%、≦15%、≦10%、≦8%、≦6%、≦5%、≦4%、≦2%、≦1%その他)のポリラムノース汚染のレベルを含む組成物を提供する、Streptococcus pyogenes菌由来のGAS炭水化物を精製するための方法も提供する。典型的には、ポリラムノース汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース20重量%未満である。これより低いレベル、例えばGAS炭水化物の重量に対してポリラムノース5重量%以下も得ることが可能である。
【0016】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対してタンパク質4.0重量%未満(例えば、≦3.5%、≦3.1%、≦3.0%、≦2.5%、≦2.0%、≦1.5%、≦1.0%、その他)のタンパク質汚染のレベルを含む組成物を提供する、Streptococcus pyogenes菌からGAS炭水化物を精製するための方法も提供する。典型的には、タンパク質汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してタンパク質およそ2重量%である。
【0017】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対して核酸5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.75%、≦0.5%、≦0.25%、≦0.1%その他)の核酸汚染のレベルを含む組成物を提供する、Streptococcus pyogenes菌由来のGAS炭水化物を精製するための方法も提供する。典型的には、核酸汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対して核酸1重量%未満である。これより低いレベル、例えば、GAS炭水化物の重量に対して核酸0.5重量%未満を得ることも可能である。
【0018】
本発明は、(a)ヒアルロン酸汚染のレベルが200ng/mlまたは5%未満(上記の通り)である;(b)ポリラムノース汚染のレベルが50%未満(上記の通り)である;(c)タンパク質汚染のレベルが4.0%未満(上記の通り)である、および(d)核酸汚染のレベルが5%未満(上記の通り)である、Streptococcus pyogenes菌由来のGAS炭水化物を精製するための方法も提供する。
【0019】
本発明は、本発明の方法により得ることができる、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。
【0020】
本発明は、200ng/ml未満(例えば≦150ng/ml、≦100ng/ml、≦90ng/ml、≦80ng/ml、≦75ng/ml、≦60ng/ml、≦50ng/ml、≦40ng/ml、≦25ng/ml、≦20ng/ml、≦10ng/mlその他)のヒアルロン酸汚染のレベルを含む、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。典型的には、ヒアルロン酸汚染のレベルは、100ng/ml未満、特に80ng/ml未満である。ヒアルロン酸汚染のレベルは、組成物の合計重量に対してヒアルロン酸の重量により表すこともできる。この方法で、本発明は、GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.75%、≦0.5%、≦0.25%、≦0.1%その他)のヒアルロン酸汚染のレベルを含む、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物を提供する。典型的には、ヒアルロン酸汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸1重量%未満である。これより低いレベル、例えば、GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸0.005重量%以下も得ることも可能である。
【0021】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース50重量%未満(例えば≦40%、≦30%、≦25%、≦20%、≦15%、≦10%、≦8%、≦6%、≦5%、≦4%、≦2%、≦1%その他)のポリラムノース汚染のレベルを含むStreptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。典型的には、ポリラムノース汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース20重量%未満である。これより低いレベル、例えば、GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース5重量%以下も得ることも可能である。
【0022】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対してタンパク質4.0重量%未満(例えば≦3.5%、≦3.1%、≦3.0%、≦2.5%、≦2.0%、≦1.5%、≦1.0%、その他)のタンパク質汚染のレベルを含む、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。典型的には、タンパク質汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してタンパク質およそ2重量%である。
【0023】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対して核酸5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.75%、≦0.5%、≦0.25%、≦0.1%その他)の核酸汚染のレベルを含む、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。典型的には、核酸汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対して核酸1重量%未満である。これより低いレベル、例えば、GAS炭水化物の重量に対して核酸0.5重量%未満も得ることが可能である。
【0024】
本発明は、(a)ヒアルロン酸汚染のレベルが200ng/mlまたは5%未満(上記の通り)である;(b)ポリラムノース汚染のレベルが50%未満(上記の通り)である;(c)タンパク質汚染のレベルが4.0%未満(上記の通り)である、および(d)核酸汚染のレベルが5%未満(上記の通り)である、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、S.pyogenes由来のGAS炭水化物の構造を例示する。
【図2】図2は、S.pyogenes由来のGAS炭水化物の構造とA群改変体連鎖球菌からのGAS炭水化物の構造とを比較する。
【図3】図3は、GAS炭水化物について典型的NMRスペクトルを示す。
【図4】図4は、ゲル濾過後のGAS炭水化物についての典型的NMRスペクトルを示す。
【図5】図5は、陰イオン交換、カチオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフの方法を使用して得られたGAS炭水化物調製物のヒアルロン酸汚染と3kDaカットオフ膜を用いる限外濾過のみの後に見られた汚染とを比較する。
【図6】図6は、GAS炭水化物を精製するための最適化された方法のまとめである。
【図7】図7は、Q−Sepharoseでの陰イオン交換クロマトグラフィーにより精製されたGAS炭水化物についての典型的クロマトグラムを示す。
【図8】図8は、タンジェンシャルフロー濾過による濃縮後のGAS炭水化物についての典型的HPLC−SEプロファイルを示す。
【図9】図9は、ゲル濾過後のGAS炭水化物についての注を付けたNMRスペクトルを示す。
【図10】図10は、ゲル濾過後のGAS炭水化物についての典型的クロマトグラムを示す。
【図11】図11は、1)陰イオン交換クロマトグラフィー工程および2)10kDaタンジェンシャルフロー濾過工程の後のGAS炭水化物に対して実施された分析ゲル濾過クロマトグラムを示す。
【図12】図12は、10kDaタンジェンシャルフロー濾過;10kDaタンジェンシャルフロー濾過およびゲル濾過;ならびにゲル濾過のみの後のGAS炭水化物の1H NMRスペクトルを示す。
【図13】図13は、GAS炭水化物−CRM197結合体を得るための反応スキームを例示する。
【図14】図14は、GAS炭水化物−CRM197結合体のSDS−Pageゲル分析を示す。
【図15】図15は、リンカーを含むGAS炭水化物−CRM197結合体の、1)SDS−Pageゲル分析および2)SEC−HPLC分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(GAS炭水化物)
S.pyogenesのGAS炭水化物(GAS細胞壁多糖、またはGASPとしても公知)は、典型的には、交互のα−(1→2)結合およびα−(1→3)結合からなるL−ラムノピラノース(Rhap)骨格および交互のラムノース環にβ−(1→3)結合したD−N−アセチルグルコサミン(GlcpNAc)残基を有する分岐構造(図1および[14])を特徴とする。Rhap骨格は存在するがGlcpNAc分岐がないA群改変体連鎖球菌は記載されている(すなわちポリラムノース、図2および[6])。本発明は、好ましくは、A群改変体連鎖球菌よりもむしろS.pyogenes由来のGAS炭水化物を含む。実際、本発明の精製方法は、S.pyogenes由来のGAS炭水化物のポリラムノース汚染を減少させるのに特に有効である。
【0027】
本発明により精製された糖類は、一般にそれらの天然型であるが、それらは改変されていてもよい。例えば、糖は天然のGAS炭水化物より短くても、または化学的に改変されていてもよい。
【0028】
したがって、本発明により使用される糖は、自然界で見出される実質的に全長のGAS炭水化物であってもよく、天然の長さより短くてもよい。全長の多糖類は、本発明で使用するために、例えば弱酸中の加水分解により、加熱により、サイズで分けるクロマトグラフィーその他により、より短いフラグメントを生じるように解重合することができる。GAS炭水化物上の末端ユニットに相当すると考えられる短いフラグメントが、ワクチンで使用するために提案されている[15]。したがって、短いフラグメントは本発明において予見されている。しかしながら、実質的に全長の糖類を使用することが好ましい。本発明により精製された糖類は、典型的には、約10kDa、特に約7.5〜8.5kDaの分子量を有する。分子量は、HPLC、例えばTSKゲルG3000SWカラム(Sigma)を使用するSEC−HPLCにより、プルラン標準、例えばPolymer Standard Service[16]から入手できるものなどに比較して測定することができる。この測定の典型的条件は、100mM NaPi、100mM NaClおよび5%アセトニトリルを含む溶離緩衝液を0.5ml/分の流速で用いる定組成溶離を含む。GAS炭水化物の存在は、214nmにおける吸光度を測定することにより検出することができる。
【0029】
糖は、天然に見出されるGAS炭水化物に比較して化学的に改変されていてもよい。例えば、糖は、脱N−アセチル化(部分的にまたは完全に)、N−プロピオニル化(部分的にまたは完全に)その他を受けていてもよい。脱アセチル化その他の、例えば免疫原性に対する効果は、日常的アッセイにより評価することができる。
【0030】
(出発原料)
本発明の方法は、典型的には、水性形態にあるGAS炭水化物で、例えば水性懸濁物として、ヒアルロン酸および/またはポリラムノースをさらに含んで出発する。連鎖球菌のタンパク質および/または核酸が懸濁物中に存在してもよい。通常、懸濁物は、ヒアルロン酸、ポリラムノース、タンパク質および核酸を含む。ヒアルロン酸は、通常、Streptococcus pyogenesの莢膜多糖に由来する。
【0031】
典型的には、出発原料は、GAS炭水化物が放出されるように細菌自体(または細菌の細胞壁を含有する材料)を処理することにより調製される。例えば、細菌は、好ましくは定常相における細菌の培養液から採収することができる。培養液は、採収に先だって熱不活化することができる。例えば、本発明者らは、90℃で60分間の熱処理が培養液の不活化に適することを見出した。採収は、培養液を遠心分離して細菌のペレットを例えば水または生理食塩水緩衝液中に再懸濁させることを含むことができる。遠心分離に先だって、培養液は、タンジェンシャルフロー濾過により、例えば0.2μmの中空繊維カートリッジフィルタを使用して処理することができる[8]。遠心分離は、任意の適当な速度で、例えば100gと10,000gとの間で実施することができる。300gの速度は、有効であることが見出された。3000gの速度は参考文献8で言及されている。細菌が生理食塩水緩衝液中に再懸濁される場合、懸濁物を、さらなる処理の前に水で希釈することができる[8]。
【0032】
GAS炭水化物は、化学的、物理的または酵素的処理を含む種々の方法により細菌から放出させることができる。典型的な化学的処理は、例えば亜硝酸ナトリウムおよび氷酢酸を使用する還元的酸処理[例えば参考文献4、5、7および10に記載されている]であり、それは細菌からGAS炭水化物を放出させる。典型的には、等容積の4N硝酸ナトリウムおよび氷酢酸を細菌の懸濁物に加えて、混合物を適当な長さの時間、例えば1時間攪拌する。処理は適当な温度、例えば37℃で実施する。混合物の最終pHは典型的にはおよそ3.0である。混合物のpHは、例えば4M水酸化ナトリウムを使用しておよそ6から7に中和することができる。混合物は水で希釈することができる[8]。
【0033】
(濾過および限外濾過)
培養後に例えば上で論じた還元的酸処理により得られたGAS炭水化物は、一般に不純であり、ヒアルロン酸および/またはポリラムノースで汚染されている。連鎖球菌のタンパク質および/または核酸も存在することがある。高分子量種を除去することによりGAS炭水化物を精製するために、1回または複数回の濾過工程を使用することができる。例えば、本発明者らは、直交濾過(orthogonal filtration)を含む濾過工程は、濾液中に保持される、GAS炭水化物からの不純物を除去するために使用することができることを見出した。典型的には、直交濾過は、0.65μmのフィルタを使用して実施される。例えば、Sartopure GF2TM(Sartorius)カプセル(面積は0.2m2)を使用することができる。しかし、0.2μmのフィルタも使用することができる。収率を改善するために、いかなる残留濾液も、フィルタから取り出して濾液の残部と併せることができる。この取り出しは、例えば、推進力(例えば蠕動性推進力または圧力)をフィルタに加えることにより、または系に蒸留水を供給することにより行うことができる。
【0034】
低分子量種を除去することによりGAS炭水化物を精製するために、1回または複数回の限外濾過工程を使用することもできる。限外濾過は、GAS炭水化物を濃縮することもできる。好ましくは、1回または複数回の限外濾過工程は、上記の濾過工程(単数または複数)の後に実施される。本発明者らは、例えばタンジェンシャルフロー濾過による透析濾過工程が、濃縮物中に保持される、GAS炭水化物から不純物を除去するために特に有効であることを見出した。GAS炭水化物溶液は、透析濾過に先だって例えば約15〜20倍濃縮することができる。タンジェンシャルフロー濾過は、1M NaClに対して(例えば約10倍の容積に対して)、および次に水に対して(例えばさらなる10倍の容積に対して)実施するのが適当である。タンジェンシャルフロー濾過は、3、5、10または30kDaカットオフ膜を使用して水に対して実施することができる。例えば、HydrosartTM(Sartorius)5kDaカットオフ膜(膜面積0.1m2)を使用することができる。HydrosartTMは、安定化されたセルロース膜であり、親水性で且つ広いpH範囲にわたって安定である。しかしながら、本発明者らは、30kDaカットオフ膜を使用するタンジェンシャルフロー濾過が、大規模方法に、より適することを見出した。このタンジェンシャルフロー濾過も、GAS炭水化物の実質的損失なしでよりよいタンパク質汚染除去およびより短い濾過時間を可能にする。タンジェンシャルフロー濾過後に、濃縮物は、例えば約5倍濃縮され得る。収率を改善するために、膜を例えば2回、膜のデッドボリュームに対応する蒸留水で洗浄して、洗液を濃縮物に加えることができる。
【0035】
濾過および/または限外濾過の後、GAS炭水化物調製物を濃縮することができる。典型的には、GAS炭水化物調製物は、さらなる処理の前に水に対して透析濾過される。
【0036】
(陰イオン交換クロマトグラフィー)
本発明の方法は、陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む。本発明者らは、陰イオン交換クロマトグラフィーが、糖の良好な収率を保ちながら、GAS炭水化物のヒアルロン酸、タンパク質および核酸汚染の除去に特に有効であることを見出した。
【0037】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、上で論じた濾過および/または限外濾過工程の後に実施することができる。
【0038】
陰イオン交換クロマトグラフィーは、任意の適当な陰イオン交換マトリックスを使用して実施することができる。普通に使用される陰イオン交換マトリックスは、Q樹脂(第四級アミンに基づく)およびDEAE樹脂(ジエチルアミノエタンに基づく)などの樹脂である。本発明者らは、Q樹脂(例えばQ−SepharoseTMXLまたはQ−SepharoseTMFF樹脂(GE Healthcare))が特に適当であることを見出したが、他の樹脂も使用することができる。精製されるべき材料の量に対して適当な樹脂の量は、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。例えば、本発明者らは、GAS炭水化物0.5mgまたは1mg当たり1mLの樹脂が効果的であり得ることを見出した。
【0039】
陰イオン交換クロマトグラフィーのための適当な開始緩衝液および移動相緩衝液も、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて使用するための典型的な緩衝液には、N−メチルピペラジン、ピペラジン、L−ヒスチジン、ビストリス、ビストリスプロパン、トリエタノールアミン、トリス、N−メチル−ジエタノールアミン、ジエタノールアミン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミン、ピペリジンおよびリン酸緩衝液が含まれる。本発明者らは、有利なことに、不純物が陰イオン交換マトリックスに結合し、一方、GAS炭水化物は系を素通りして溶離物に流入する、GAS炭水化物の「貫流」を可能にする条件下で、陰イオン交換クロマトグラフィー工程を実施することができることを見出した。これら条件の使用により、マトリックスからGAS炭水化物を溶離するために、イオン強度を増大させるかまたはpHを上昇させる移動相緩衝液その他を使用する必要がないので、精製方法は簡単になる。貫流陰イオン交換クロマトグラフィーのための適当な条件は、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。リン酸緩衝液、例えばリン酸ナトリウム緩衝液は、陰イオン交換クロマトグラフィーのための移動相に適当であり得る。緩衝液は任意の適当な濃度であってよい。例えば、10mMリン酸ナトリウムは適当であることが見出されている。
【0040】
本発明者らは、アルコールを移動相緩衝液に加えるとGAS炭水化物の収率を増加させることができることを見出した。本発明者らは、移動相緩衝液中のアルコールがGAS炭水化物調製物における濁りを減少させ得ることも見出した。しかしながら、本発明者らは、少しもアルコールを含有しない移動相緩衝液を使用することが大規模方法に、より適することを見出した。使用されるときは、任意の適当な濃度のアルコールが移動相緩衝液中に存在してもよい。例えば、アルコールは、移動相緩衝液に添加されて5容積%と50容積%との間の最終アルコール濃度(例えばおよそ10容積%、15容積%、20容積%、25容積%、30容積%)を与えることができる。典型的には、アルコールは、移動相緩衝液に15容積%と25容積%との間、特に20容積%の最終アルコール濃度を与えるように添加される。アルコールは好ましくは低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、2−メチル−プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、ジオール、その他である。適当なアルコールの選択は、過度の負担なしに経験的に試験することができるが、フェノールなどのアルコールよりもむしろエタノールおよびイソプロパノール(プロパン−2−オール)などのアルコールが好ましい。典型的には、アルコールはエタノールである。アルコールは、純粋な形態で添加することもまたは混和性溶媒(例えば水)で希釈された形態で添加することもできる。好ましい溶媒混合物は、およそ70:30とおよそ95:5との間の好ましい比(例えば75:25、80:20、85:15、90:10)のアルコール:水混合物である。
【0041】
溶離物のGAS炭水化物を含有する画分は、215nmにおけるUV吸収を測定することにより決定することができる。溶離した材料は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程前のGAS炭水化物調製物と比較して高度に精製されていた。GAS炭水化物を含有する全ての画分を合わせてさらに処理することができる。
【0042】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、例えば1、2、3、4または5回繰り返すことができる。しかしながら、典型的には、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は1回実施されるであろう。
【0043】
(ゲル濾過)
本発明の方法は、1回または複数回のゲル濾過の工程を含むことができる。このゲル濾過は、特定の長さのGAS炭水化物分子を選択し且つ特にタンパク質による汚染をさらに減少させるために使用される。しかしながら、本発明者らは、参考文献6とは反対に、ゲル濾過工程は、高純度のGAS炭水化物を得るために必要とされないことを見出した。したがって、この工程は、本発明の方法から省略することができる。この工程を省略すると、該方法を大規模に実現することの可能性を促進し得る。
【0044】
例えば、ゲル濾過工程(単数または複数)は、上で論じた陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に実施することができる。
【0045】
ゲル濾過工程(単数または複数)は、任意の適当なゲル濾過マトリックスを使用して実施することができる。普通使用されるゲル濾過マトリックスは、デキストランゲル、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリアクリロイルモルホリンゲル、およびポリスチレンゲルその他をベースとする。架橋デキストランゲルおよび混合ポリアクリルアミド/アガロースゲルも使用することができる。本発明者らは、デキストランゲル(例えばSephacryl S100ゲルまたはSephadexTMG50ゲル(両方ともGE Healthcare))が特に適当であることを見出したが、他のゲルも使用することができる。精製されるべき材料の量に対してゲルの適当な量は、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。例えば、本発明者らは、GAS炭水化物0.2mg当たり1mLのゲルが有効であり得ることを見出した。同様に、任意の所与のゲル濾過カラムに対して適当なGAS炭水化物調製物の容積は、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。通常、ゲル濾過カラムに適用されるGAS炭水化物調製物の容積は、カラム容積の5%を超えない。
【0046】
ゲル濾過のために適当な移動相緩衝液は、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。ゲル濾過で使用するための典型的な緩衝液には、N−メチルピペラジン、ピペラジン、L−ヒスチジン、ビストリス、ビストリスプロパン、トリエタノールアミン、トリス、N−メチル−ジエタノールアミン、ジエタノールアミン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミン、ピペリジンおよびリン酸緩衝液が含まれる。例えば、リン酸緩衝液、例えばリン酸ナトリウム緩衝液は、移動相に適し得る。緩衝液は任意の適当な濃度であってよい。例えば、10mMリン酸ナトリウムは移動相として使用することができる。
【0047】
本発明者らは、有利なことに、ゲル濾過は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程と同じ移動相緩衝液を使用して実施することができることを見出した。この緩衝液を使用すると、異なった緩衝液を調製する必要がないので、精製方法が簡単になる。例えば、10mMリン酸ナトリウム緩衝液は、両工程の移動相として使用することができる。
【0048】
またしても、ゲル濾過のための移動相緩衝液にアルコールを添加することは好ましい。この添加は、GAS炭水化物の収率を増大させる、および/またはGAS炭水化物調製物中の濁りを減少させることができる。任意の適当な濃度のアルコールを移動相緩衝液中で使用することができる。例えば、アルコールは、移動相緩衝液に、5容積%と50容積%との間の最終アルコール濃度(例えばおよそ10容積%、15容積%、20容積%、25容積%、30容積%)を与えるように添加することができる。典型的には、アルコールは、移動相緩衝液に、15容積%と25容積%との間、特に20容積%の最終アルコール濃度を与えるように添加される。アルコールは、好ましくは低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、2−メチル−プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、ジオールなどである。適当なアルコールの選択は、過度の負担なしに経験的に試験することができるが、フェノールなどのアルコールよりもむしろエタノールおよびイソプロパノール(プロパン−2−オール)などのアルコールが好ましい。典型的には、アルコールはエタノールである。アルコールは、純粋な形態で添加することもまたは混和性溶媒(例えば水)で希釈された形態で添加することもできる。好ましい溶媒混合物は、およそ70:30とおよそ95:5との間の好ましい比(例えば75:25、80:20、85:15、90:10)のアルコール:水混合物である。
【0049】
溶離物のGAS炭水化物を含有する画分は、215nmにおけるUV吸収を測定することにより決定することができる。本発明者らは、GAS炭水化物が溶離物に2本のピークとして存在し得ることを見出した。1本のピークは高分子量GAS炭水化物糖類に対応し、他の(しばしば、より小さい)ピークは低分子量GAS炭水化物糖類に対応する。GAS炭水化物調製物がその後ワクチン調製物として加工されることになっていれば、通常、高分子量GAS炭水化物糖類を含有する画分が選択される。あるいは、高分子量および低分子量両方のGAS炭水化物糖類を含有する画分を、さらなる処理の前にプールすることもできる。
【0050】
GAS炭水化物調製物は、さらなる処理の前に、水に対して透析濾過することもできる。
【0051】
(濃縮)
本発明の方法は、1回または複数回のゲル濾過工程に加えて、またはその代わりに、GAS炭水化物を濃縮する1回または複数回の工程を含むことができる。この濃縮は、下で記載するように、その後のGAS炭水化物の担体分子との結合体化のために適当な濃度の試料を得るために有用である。しかしながら、本発明者らは、この濃縮工程は、高純度のGAS炭水化物を得るために必要とされないことを見出した。したがって、この工程は、本発明の方法から省略することができる。
【0052】
本発明者らは、大規模方法のためには、GAS炭水化物を濃縮する1回または複数回の工程の使用が、ゲル濾過の使用より適当であることを見出した。GAS炭水化物を上記のように30kDaカットオフ膜を使用してタンジェンシャルフロー濾過により精製するときに、GAS炭水化物を濃縮する1回または複数回の工程の使用は特に適当である。本発明者らは、このタンジェンシャルフロー濾過工程の使用が、GAS炭水化物から不純物、特にポリラムノースを除去するために、方法中にゲル濾過工程(単数または複数)を含める必要のないことを意味することを見出した。
【0053】
例えば、濃縮工程(単数または複数)は、上で論じた陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に実施することができる。上で論じたゲル濾過工程(単数または複数)に加えて使用される場合、濃縮工程(単数または複数)は、上で論じたゲル濾過工程(単数または複数)の前または後に実施することができる。しかしながら、通常、濃縮工程(単数または複数)は、ゲル濾過工程(単数または複数)の代わりに使用される。
【0054】
濃縮工程(単数または複数)は、任意の適当な方法により実施することができる。例えば、本発明者らは、濃縮工程(単数または複数)は、上記のように、限外濾過工程(単数または複数)、例えば5または10kDaカットオフ膜を使用するタンジェンシャルフロー濾過であってよいことを見出した。例えば、HydrosartTM(Sartorius)10kDaカットオフ膜(膜面積200cm2)を使用することができる。通常は、HydrosartTM(Sartorius)5kDaカットオフ膜(膜面積200cm2)が使用される。本発明者らは、5kDaカットオフ膜が10kDaカットオフ膜よりも高い収率を提供し得ることを見出した。理論に束縛されることは望まず、5kDa膜は、GAS炭水化物の質量から遠いカットオフを提供し、その結果、より高い収率を提供すると考えられる。
【0055】
GAS炭水化物調製物は、さらなる処理の前に水に対して透析濾過することができる。しかしながら、本発明者らは、さらなる透析濾過は、透過物中のGAS炭水化物の損失を生じ得ることを見出した。
【0056】
(GAS炭水化物のさらなる処理)
精製後、糖を、汚染物質を除去するためにさらに処理することができる。これは、少しの汚染でさえ許容されない状況で(例えば、ヒト向けワクチン生産用)、特に重要である。
【0057】
糖は、真空乾燥に供することができる。この処理は、通常は、貯蔵のために糖を安定化するためではなくて、糖を乾燥していかなる残留アルコールも除去するために使用される。
【0058】
濾過をさらに繰り返すこともできる。
【0059】
精製されたGAS炭水化物は、典型的には、10と30との間、例えば20と24との間の重合度(精製された試料におけるアルデヒド基の濃度により測定される[17])を有する。しかしながら、この多糖は解重合してオリゴ糖を形成することができる。オリゴ糖は、ワクチンに使用するための多糖類にとって好ましいことがある。多糖からオリゴ糖への解重合は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程の前または後に起こり得る。解重合が実施されれば、生成物は、一般に、短い長さのオリゴ糖を除去するために、サイズで分けられる。これは、限外濾過に続くイオン交換クロマトグラフィーなどの種々の方法で達成することができる。本発明の組成物が解重合された糖を含む場合、解重合はいかなる結合体化にも先行することが好ましい。
【0060】
天然のGAS炭水化物中のD−N−アセチルグルコサミン残基が脱N−アセチル化されているならば、その場合、本発明の方法は、再N−アセチル化の工程を含むことができる。制御された再N−アセチル化は、例えば5%重炭酸アンモニウム中で、無水酢酸(CH3CO)2Oなどの試薬を使用して、便利に実施することができる[18]。
【0061】
これらの付加的工程は、一般に室温で実施することができる。
【0062】
(貯蔵)
GAS炭水化物調製物は、精製方法中の任意の段階で、貯蔵のために、例えば、真空下の凍結乾燥により凍結乾燥するか、または溶液中で(例えば、最終濃縮工程が含まれた場合にはそれからの溶離物として)凍結することができる。したがって、調製物は方法の1つの工程から他の工程へ直ちに移される必要がない。例えば、GAS炭水化物調製物が濾過および/または限外濾過により精製されることになっていれば、その場合、それは、この精製に先だって、凍結乾燥するかまたは溶液中で凍結することができる。同様に、GAS炭水化物は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程に先だって凍結乾燥するかまたは溶液中で凍結することができる。GAS炭水化物調製物がゲル濾過により精製されることになっていれば、それは、この工程に先だって凍結乾燥するかまたは溶液中で凍結することができる。同様に、GAS炭水化物調製物が濃縮されることになっていれば、それは、この工程に先だって凍結乾燥するかまたは溶液中で凍結することができる。凍結乾燥された調製物は、さらなる処理に先だって適当な溶液中で再構成される。同様に、凍結された溶液は、さらなる処理に先だって解凍される。
【0063】
本発明の方法により得られた精製されたGAS炭水化物は、任意の適当な方法で貯蔵のために処理することができる。例えば、糖は、上記のように凍結乾燥することができる。あるいは、糖は、水溶液中で、典型的には低温で、例えば−20℃で貯蔵することができる。便利なことに、糖は陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過または濃縮工程からの溶離物として貯蔵することができる。
【0064】
(結合体化)
本発明の最終精製されたGAS炭水化物は、さらに改変することなく、例えばインビトロ診断用のアッセイで使用するために、免疫化その他で使用するために、抗原として使用することができる。
【0065】
しかしながら、免疫化目的のためには、糖をタンパク質などの担体分子と結合体化することが好ましい。一般的に、糖類の担体への共有結合による結合体化は、そのことがそれらをT非依存性抗原からT依存性抗原へと変換するので、糖類の免疫原性を増強して、その結果、免疫学的記憶のための初回刺激を可能にする。結合体化は、小児科用ワクチンのために特に有用であり[例えば参考文献19]、周知の技法である[例えば参考文献20から28において論評されている]。したがって、本発明の方法は精製されたGAS炭水化物を担体分子、例えば担体タンパク質と結合体化するさらなる工程を含むことができる。
【0066】
一態様において、本発明は、それ故、(i)本発明の方法により得ることができるGAS炭水化物と(ii)担体分子との結合体を提供する。
【0067】
担体分子は、GAS炭水化物と直接的にかまたはリンカーを通して共有結合で結合体化することができる。
【0068】
GAS炭水化物の担体タンパク質への直接結合は、例えば参考文献6および8で報告されている。GAS炭水化物結合体化の典型的な先行技術の方法は、破傷風トキソイド(TT)などの担体タンパク質に対する精製された糖の還元的アミノ化[例えば参考文献29への参照により参考文献8で論じられたような]を含む。還元的アミノ化には、担体中のアミノ酸の側鎖上のアミン基と糖中のアルデヒド基とが関わる。GAS炭水化物の糖は末端残基にアルデヒド基を含む。したがって、この基は担体への結合体化のために使用することができる[例えば参考文献8で論じられたように]。あるいは、追加のアルデヒド基を、例えば糖の非還元性末端の酸化により、結合体化前に発生させることもできる。
【0069】
リンカー基による結合は、任意の公知の手順、例えば、引用文献30および31に記載された手順を使用して行うことができる。好ましいタイプの結合は、アジピン酸リンカーであり、それは、遊離−NH2基(例えばアミノ化によりGAS炭水化物に導入された)とアジピン酸とをカップリングして(例えば、ジイミド活性化を使用して)、次にタンパク質と生じた糖−アジピン酸中間生成物とをカップリングすることにより形成することができる[32、33、34]。他の好ましいタイプの結合は、カルボニルリンカーであり、それは、改変されたGAS炭水化物の遊離ヒドロキシル基のCDIとの反応[35、36]、続いてタンパク質との反応によりカルバメート結合を形成することにより形成され得る。他のリンカーには、β−プロピオンアミド[37]、ニトロフェニル−エチルアミン[38]、ハロゲン化ハロアシル[39]、グリコシド結合[40]、6−アミノカプロン酸[41]、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP)[42]、アジピン酸ジヒドラジドADH[43]、C4からC12の部分[44]、その他が含まれる。カルボジイミド縮合も使用することができる[45]。別の結合体化方法は、GBS莢膜の糖について参考文献46で記載されたように、糖中の−NH2基を(脱N−アセチル化によるか、またはアミン導入後のいずれか)二官能性リンカーと併せて使用することを含む。
【0070】
GAS炭水化物結合体化のための他の適当な方法は、参考文献6で論じられている。
【0071】
好ましい担体タンパク質は、ジフテリア毒素または破傷風毒素、またはそれらのトキソイドまたは変異体などの細菌毒素である。通常、これらが結合体ワクチンに使用される。CRM197ジフテリア毒素変異体は特に好ましい[47]。
【0072】
他の適当な担体タンパク質には、N.meningitidisの外膜タンパク質複合体[48]、合成ペプチド[49、50]、ヒートショックタンパク質[51、52]、百日咳タンパク質[53、54]、サイトカイン[55]、リンホカイン[55]、ホルモン[55]、増殖因子[55]、ヒト血清アルブミン(好ましくは組み替え);種々の病原体由来抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[56]、例えば、N19[57]、H.influenzae由来のタンパク質D[58〜60]、ニューモリシン[61]またはその無毒性誘導体[62]、肺炎球菌の表面タンパク質PspA[63]、鉄取り込みタンパク質[64]、C.difficile由来の毒素AまたはB[65]、組み替えPseudomonas aeruginosaの外毒素A(rEPA)[66]、GBSタンパク質[112]、GASタンパク質[67]などが含まれる。
【0073】
担体への結合は、好ましくは、例えば、担体タンパク質中のリシン残基、またはアルギニン残基の側鎖中の−NH2基を通してである。結合は例えばシステイン残基の側鎖中の−SH基を通してであってもよい。
【0074】
例えば担体抑制の危険性を減ずるために、GAS炭水化物抗原に対して2種以上の担体タンパク質を使用することが可能である。したがってGAS炭水化物の糖類は、CRM197と結合体化した一部および破傷風トキソイドと結合体化した他のものを有する2群にあることもできる。しかし一般的には、全ての糖類に同じ担体タンパク質を使用することが好ましい。
【0075】
単一の担体タンパク質が2種以上の糖抗原を担持することもできる[68、69]。
【0076】
1:10(すなわちタンパク質過剰)と10:1(すなわち糖過剰)との間の糖:タンパク質比(w/w)を有する結合体が好ましい。1:5と1:2.5との間の比のように、1:5と5:1との間の比が好ましい。
【0077】
結合体は、遊離の担体と併せて使用することもできる[70]。所与の担体タンパク質が、本発明の組成物中で、遊離のものと結合体化したものとの両方の形態で存在するとき、結合体化していない形態は、好ましくは、全体としての組成物中の担体タンパク質の総量の5重量%以下であり、およびより好ましくは2重量%未満で存在する。
【0078】
結合体化後、遊離の糖類と結合体化した糖類とは分離することができる。疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル限外濾過、透析濾過その他を含む多くの適当な方法がある[参考文献71および72、その他も参照されたい]。
【0079】
(結合体と他の抗原との組合せ)
本発明の方法により調製された糖類(特に上記のように結合体化後)は、例えば互いにおよび/または他の抗原と混合することができる。したがって、本発明の方法は、糖を1種または複数種のさらなる抗原と混合するさらなる工程を含むことができる。
【0080】
複数の異なったGAS炭水化物結合体を混合することもできる。組成物は、別々の結合体を調製して、それからその結合体を組み合わせることにより製造される。
【0081】
さらなる抗原(単数または複数)は、非GAS病原体由来の抗原を含むことができる。したがって、本発明の組成物は、追加の細菌性、ウイルス性または寄生性抗原を含む1種または複数種の非GAS抗原をさらに含むことができる。これらは以下から選択することができる。
【0082】
−N.meningitidis血清型B由来のタンパク質抗原、例えば参考文献73から79におけるタンパク質抗原で、特に好ましくはタンパク質「287」(下を見られたい)および誘導体(例えば「ΔG287」)。
【0083】
−N.meningitidis血清型B由来の外膜小胞(OMV)調製物、例えば参考文献80、81、82、83その他に開示されたものなど。
【0084】
−N.meningitidis血清型A、C、W135および/またはY由来の糖抗原、例えば、血清型C由来の参考文献84で開示されたオリゴ糖または参考文献85のオリゴ糖など。
【0085】
−Streptococcus pneumoniaeからの糖抗原[例えば参考文献86〜88;参考文献95の第22および23章]。
【0086】
−A型肝炎ウイルスからの抗原、例えば、不活化ウイルス[例えば89、90;参考文献95の第15章]など。
【0087】
−B型肝炎ウイルスからの抗原、例えば、表面および/またはコア抗原[例えば90、91;参考文献95の第16章]など。
【0088】
−C型肝炎ウイルスからの抗原[例えば92]。
【0089】
−Bordetella pertussisからの抗原、例えば、百日咳ホロトキシン(PT)およびB.pertussisからの線維状赤血球凝集素(FHA)、場合により、さらにペルタクチンおよび/または凝集原2および3との組合せ[例えば参考文献93および94;参考文献95の第21章]など。
【0090】
−ジフテリア抗原、例えば、ジフテリアトキソイド[例えば参考文献95の第13章]など。
【0091】
−破傷風抗原、例えば、破傷風トキソイド[例えば参考文献95の第27章]など。
【0092】
−Haemophilus influenzae B由来の糖抗原[例えば参考文献95の第14章]
−N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば73、74、75]。
【0093】
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば96、97、98、99、100、101、102]。
【0094】
−Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば103]。
【0095】
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば104]。
【0096】
−ポリオ抗原(単数または複数)[例えば105、106;参考文献95の第24章]、例えばIPVなど。
【0097】
−狂犬病抗原(単数または複数)[例えば107]、例えば、凍結乾燥不活化ウイルスなど[例えば108、RabAvertTM]。
【0098】
−はしか、おたふく風邪、および/または風疹抗原[例えば参考文献95の第19、20および26章]。
【0099】
−インフルエンザ抗原(単数または複数)[例えば、参考文献95の第17および18章]、例えば、赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質など。
【0100】
−Moraxella catarrhalisからの抗原[例えば109]。
【0101】
−Streptococcus agalactiaeからの抗原(B群連鎖球菌)[例えば67、110〜112]。
【0102】
糖または炭水化物抗原が使用される場合、免疫原性を増強するために、それは、好ましくは、担体と結合体化される。H.influenzae B、髄膜炎菌および肺炎球菌の糖抗原の結合体化は周知である。
【0103】
毒性のタンパク質抗原は、必要な場合には無毒化され得る(例えば、化学的および/または遺伝的手段による百日咳毒素の無毒化[94])。
【0104】
ジフテリア抗原が組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含むことが好ましい。
【0105】
抗原はアルミニウム塩に吸着させることができる。
【0106】
組成物中の各抗原は、典型的には、少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の所与の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘起するのに十分なものである。
【0107】
本発明の組成物中においてタンパク質抗原を使用する代わりに、その抗原をコードする核酸を使用することもできる[例えば参考文献113から121]。したがって、本発明の組成物のタンパク質成分は、該タンパク質をコードする核酸(好ましくは例えばプラスミドの形態にあるDNA)で置き換えることができる。
【0108】
実際問題として、本発明の組成物中に含まれる抗原の数には上限があり得る。本発明の組成物中の抗原の数は、20未満、19未満、18未満、17未満、16未満、15未満、14未満、13未満、12未満、11未満、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、または3未満であってよい。
【0109】
(医薬組成物および方法)
本発明は、(a)本発明の糖(場合により、結合体の形態で)を(b)薬学的に許容される担体と混合する工程を含む、医薬組成物を調製する方法を提供する。そのような担体の詳細な議論は引用文献122で参照できる。
【0110】
本発明の組成物は、種々の形態で調製することができる。例えば、組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかで注射用として調製することができる。注射に先だって液体ビヒクルにおける溶液または懸濁物にするのに適した固体形態も調製することができる。組成物は、局所投与用に、例えば、軟膏、クリーム剤または散剤として調製することもできる。組成物は、経口投与用に、例えば、錠剤またはカプセル剤として、またはシロップ剤として(場合により風味を付けて)調製することもできる。組成物は、肺投与用に、例えば、微細粉末またはスプレーを使用する吸入薬として調製することもできる。組成物は、座剤またはペッサリーとして調製することもできる。組成物は、鼻用、耳用または眼用の投与のために、例えば、滴剤として、スプレーとして、または散剤として調製することもできる[例えば123]。
【0111】
医薬組成物は、好ましくは無菌である。それは好ましくは発熱物質を含まない。
【0112】
その組成物は、好ましくは、例えば、pH6とpH8との間、一般にはおよそpH7に緩衝化されている。組成物は水性であっても、凍結乾燥されていてもよい。
【0113】
本発明は、本発明の医薬組成物を含有する送達デバイスも提供する。該デバイスは、例えば、注射器または吸入器であってよい。
【0114】
本発明の医薬組成物は、免疫学的に有効な量のGAS炭水化物免疫原を含む、好ましくは免疫原性組成物である。「免疫学的に有効な量」は、単回用量または一連の一部としてのいずれかでのその量の個体への投与が、処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置されるべき個体の健康および身体的状態、年齢、処置されるべき個体の分類学上の群(例えばヒトでない霊長類、霊長類、その他)、個体の免疫系の抗体合成能力、所望の保護の程度、ワクチンの処方物、主治医の医学的状況評価、および他の関連要因によって変化する。その量は、日常的試行により決定することができる比較的広い範囲に入ると期待される。
【0115】
処方されれば、本発明の組成物は、被験体に直接投与することができる。処置されるべき被験体は動物であってもよく、特に、ヒト被験体を処置することができる。
【0116】
本発明の免疫原性組成物は、治療的に(すなわち現存の感染を処置するために)または予防的に(すなわち将来の感染を予防するために)使用することができる。
【0117】
医薬組成物は、バイアルまたは注射器中に詰めることができる。注射器は針を付けてかまたは針なしで供給することができる。注射器は、単回用量の組成物を含み、それに対してバイアルは、単回用量または複数回の用量を含むことができる。
【0118】
本発明の糖類の水性組成物は、他のワクチンを、凍結乾燥された形態から再構成するのに適する。本発明の組成物がそのような即時再構成のために使用されることになっている場合、本発明は、凍結乾燥された材料を本発明の水性組成物と混合する工程を含む、そのような凍結乾燥されたワクチンを再構成するための方法を提供する。再構成された材料は、注射用に使用することができる。
【0119】
(一般的事項)
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなってもよく、または何かを付け加えて、例えばX+Yを含んでもよい。
【0120】
数値xに関係する「約」という用語は、例えば、x±10%を意味する。
【0121】
「実質的に」という用語は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを全く含まなくてもよい。必要な場合、「実質的に」という用語は、本発明の定義から省いてもよい。
【0122】
本発明が複数の逐次的工程を含む方法を提供する場合、本発明は、その全工程より少ない工程数を含む方法も提供することができる。例えば、糖が汚染核酸および/またはタンパク質を除去することにより部分的に既に精製されているならば、その場合、この工程は、本発明の方法から省略することができる。同様に、汚染物質を除去する工程を実施して陰イオン交換クロマトグラフィーに使える材料を与えることはできるが、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は実施される必要はない。前処理した材料は、糖調製における中間体として有用であり、後の使用のために、例えば後の陰イオン交換クロマトグラフィーのために使用、貯蔵、移出その他をすることができるので、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、本発明の範囲内にあるように実施する必要はない。これらの異なった工程は、大きく異なったときに異なった人達により異なった場所(例えば異なった国で)で実施することができる。
【0123】
糖環は開環および閉環した形態で存在することができて、本明細書中の構造式では閉環した形態が示されるが、開環した形態も本発明により包含されることは理解される。同様に、糖類は、ピラノースおよびフラノースの形態で存在することができること、および本明細書中の構造式ではピラノース形態が示されるが、フラノース形態も包含されることは理解される。糖類の異なったアノマー形態も包含される。
【実施例】
【0124】
(本発明を実施する様式)
(実施例1)
(Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物の精製)
各精製工程の後、GAS炭水化物構造をNMR分析により検証した(下を見られたい)。GAS炭水化物について典型的NMRスペクトルを図3に提示する。
【0125】
(工程1:GAS炭水化物抽出)
4LのStreptococcus pyogenes菌の増殖培養物を80℃で熱不活化して300gで遠心分離した。ペレット化した細菌を生理食塩水緩衝液中に再懸濁して、GAS炭水化物を還元的酸処理により放出させた。簡単に説明すると、0.1容積の4N亜硝酸ナトリウムおよび0.1容積の氷酢酸を、細菌の懸濁物に攪拌しながら、混合物が最終pHがおよそ3.0になるまで加えた。次にpHがおよそ6〜7になるまで中和した。
【0126】
(工程2:濾過および限外濾過)
混合物を0.6μmフィルタ(Sartopure GF2、Sartorius)を使用して濾過し、次に3kDaカットオフ膜(膜面積0.1m2)を使用して限外濾過した。調製物はその容積が約200mLになるまで濃縮し、約10容積の水を使用して水に対して透析した。GAS炭水化物調製物のこの段階におけるタンパク質汚染を測定すると、約20〜30%であることが示された。
【0127】
(工程3および4:クロマトグラフィー工程)
以下のクロマトグラフィー工程をAKTATMシステム(Farmacia)で実施した。GAS炭水化物は、溶離物の画分で215nmのUV吸収を測定することにより検出した。
【0128】
Q SepharoseTMXL樹脂(GE Healthcare)を使用して、GAS炭水化物調製物を陰イオン交換クロマトグラフィーにより処理した。GAS炭水化物はカラム貫流物において集めた。GAS炭水化物0.5mg当たり1mLの樹脂を使用した。移動相緩衝液は、20容積%エタノールを補充した10mMリン酸ナトリウム緩衝液であった。GAS炭水化物は貫流物中に単独ピークとして現れた。GAS炭水化物を含有する全ての画分をプールした。GAS炭水化物調製物のタンパク質汚染をこの段階で測定し、約5%であることが示された。
【0129】
次に、SephadexTMG50ゲル(GE Healthcare)を使用して、GAS炭水化物調製物をゲル濾過により処理した。GAS炭水化物0.2mg当たり1mLのゲルを使用した。GAS炭水化物調製物の容積がゲル濾過カラムの容積の5%を超えることを許容しなかった。移動相緩衝液は、20容積%エタノールを補充した10mMリン酸ナトリウム緩衝液であった。GAS炭水化物は、貫流物中に2本のピークとして現れた:a)高分子量GAS炭水化物種の大きいピーク;およびb)低分子量GAS炭水化物種の小さいピークである。第一のピークをワクチンの調製で使用するために選択した。GAS炭水化物調製物のタンパク質汚染をこの段階で測定し、約2〜3%であることが示された。GAS炭水化物の収率は50〜90%であった。
【0130】
ゲル濾過後のGAS炭水化物について典型的NMRスペクトルを図4に提示する。NMRスペクトルピークの積分によりGAS炭水化物が正しい構造を有することが確認される(表I)。
【0131】
【表1】
(貯蔵)
GAS炭水化物調製物は−20℃で貯蔵した。
【0132】
(異なったクロマトグラフィー法の有効度の比較)
GAS炭水化物調製物の汚染を減少させる、異なったタイプのクロマトグラフィーの有効度を比較した。クロマトグラフィーのタイプは、ゲル濾過(SephadexTMG50ゲルを使用);陰イオン交換(Q SepharoseTMXL樹脂を使用);カチオン交換(SP SepharoseTMXL樹脂を使用);および疎水性相互作用(フェニルSepharoseTM6Fast Flow樹脂を使用)であった。全ての樹脂およびゲルは、GE healthcareから入手した。各タイプのクロマトグラフィーから得られたGAS炭水化物の最終収率(CHO)およびGAS炭水化物調製物のタンパク質汚染を測定した(表II)。
【0133】
【表2】
これらのデータは、陰イオン交換クロマトグラフィーが、特に参考文献6で使用されたゲル濾過と比較して高いGAS炭水化物の収率を生じることを示す。陰イオン交換クロマトグラフィーは、試験した全ての方法の中でタンパク質汚染の量も最小となる。
【0134】
陰イオン交換、カチオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフィー法により得られたGAS炭水化物調製物のヒアルロン酸汚染を、3kDaカットオフ膜を用いた限外濾過単独後に見られた汚染と比較した(図5)。これらのデータは、陰イオン交換クロマトグラフィーが、試験した全ての方法の中でヒアルロン酸汚染の量が最小になることを示す。
【0135】
(分析方法)
(GAS炭水化物濃度測定)
パルス電流測定検出を用いる高速陰イオン交換クロマトグラフィーを、DIONEXTMシステムを使用して実施した。GAS炭水化物調製物は、4Mトリフルオロ酢酸中で加水分解した。50mM NaOHを移動相緩衝液として、CarboPacTMPA1分析カラムを使用した。カラムを再生するために500mM NaOHを使用した。N−アセチル−グルコサミンおよびラムノースに対する保持時間は、それぞれ5.3分および7.2分であった。ラムノースおよびN−アセチル−グルコサミンのピークを積分して、GAS炭水化物の量を標準較正曲線に基づいて計算した。
【0136】
(タンパク質濃度)
タンパク質汚染はMicroBCAアッセイ(Pierce)を使用して測定した。
【0137】
(核酸濃度)
核酸濃度は260nmにおける吸光度(A)により測定した。濃度は、Lambert−Beer則、A=εbc(cは試料の濃度であり;bは試料の長さであり(1cm)およびεは0.020(μg/ml)−1cm−1である(DNA2本鎖に対する文献値))を使用して定量した。多糖の溶液は、石英キュベット中1mg/ml(水または緩衝液)で、対応する水または緩衝液で機器をリセットして、分光光度計(分光光度計Lambda 25 Perkin Elmer)で読んだ。核酸の濃度は、c=A/εbとして計算した。この値から、核酸濃度を多糖濃度で除し、結果に100を乗じることにより、核酸汚染の%を計算した。
【0138】
(NMR分析)
試料(約1mgの多糖)を、プロトン化したH2O溶媒を排除するために、凍結乾燥により調製した。次に生成物を重水(D2O、99.9%D原子、Aldrichから)に溶解して均一溶液を生成させた。本発明者らは、凍結乾燥が糖部分の物理化学構造に影響しないことを見出した。
【0139】
1H NMR実験を、Bruker AvanceTM600MHz分光計で、5mm広帯域プローブ(Bruker)を使用して25℃で記録した。XWINNMRTMソフトウェアパッケージ(Bruker)をデータ取得および処理のために使用した。32kのデータポイントをプロトンスペクトルについて10ppmのスペクトル幅にわたって集めた。発信機は参照シグナル(4.79ppm)としても使用するHDO周波数に設定した。
【0140】
1−DプロトンNMRスペクトルを標準ワンパルス実験を使用して取得した。
【0141】
(ヒアルロン酸(HA)残存含有率の推定)
残存ヒアルロン酸含有率はCorgenix Incの市販キット(製品番号029−001)により推定した。このHA試験キットは、ヒアルロン酸に結合するタンパク質(HABP)として公知の捕捉分子を使用する酵素連結結合タンパク質アッセイ(enzyme−linked binding protein assay)である。適当に希釈された血清または血漿およびHA参照溶液をHABPでコートしたマイクロウェル中でインキュベートして、試料中に存在するHAを固定化された結合性タンパク質(HABP)と反応させた。結合していない試料分子の洗浄による除去後、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)と結合したHABP溶液がマイクロウェルに加えられて、結合したHAと複合体を形成する。別の洗浄工程に続いて、色素形成基質のテトラメチルベンジジンおよび過酸化水素が添加されて反応混合物に色変化を生じさせる。色の強度を、分光光度計を用いて450nmで光学的密度(OD)単位により測定する。未知のおよび対照試料のHAレベルを、ブランク試薬(0ng/mL)とキットで提供されたHA参照溶液(50、100、200、500、800ng/mL)とから調製された参照曲線に対して決定した。
【0142】
(実施例2)
(Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物精製の最適化)
培養後に得られたGAS炭水化物は、一般に不純であり、ヒアルロン酸、タンパク質、ポリラムノースおよび核酸で汚染されている。タンジェンシャルフロー濾過、陰イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(ゲル濾過)に基づく実施例1の精製方法は、大規模化可能性を促進して且つ純度を改善するために最適化されている。
【0143】
最適化された精製方法(図6にまとめた)は、ヒアルロン酸を除去し、ポリラムノース汚染を<20%に減少させて、残存タンパク質汚染を<4%に減少させる。この方法の逐次工程は下でより詳細に記載する。
【0144】
(0.65μm直交濾過)
この最初の精製工程は、0.65μmの直交濾過を使用して粒子状汚染を除去する。濾過前に、硝酸ナトリウムおよび氷酢酸処理後に得られたGAS炭水化物懸濁物のpHを約6から7に中和した。次に、Sartopure GF2TMカプセル0.65μm(Sartorius)を使用して混合物を濾過した。5Lの発酵物から得られた約2Lの懸濁物に対して、通常0.2m2の濾過表面を使用して、作業は約30〜40分で完了した。
【0145】
表IIIは、この工程からの濾液について典型的なGAS炭水化物濃度を示す。
【0146】
【表3】
(30kDaタンジェンシャルフロー濾過)
第2の工程は低分子量種(例えばタンパク質、核酸およびヒアルロン酸)を除去するためのタンジェンシャルフロー濾過である。異なったカットオフ膜を、精製を改善し処理時間を短縮するために比較した。
【0147】
0.1m2の膜面積を有するHydrosartTM3kDa、5kDa、10kDaおよび30kDaカットオフ膜(Sartorius)を使用し、5Lの発酵物からの材料を処理した。粗多糖溶液を約15〜20倍濃縮し、最初に約10容積の1M NaClに対して、続いて約10容積を使用する水に対して透析した。タンジェンシャルフロー濾過工程は、蠕動ポンプ(WatsonMarlow)を備えた0.1m2のカセット(Sartorius)のためのホルダーを使用して実施した。使用した加圧条件は、Pin=1.0バールおよびPout=0.4バールであり、透過物の流量を、カットオフ膜に応じて、18から100ml/分で以下のように変化させた。
3kDa、流量=18mL/分
5kDa、流量=40mL/分
10kDa、流量=50mL/分
30kDa、流量=80〜100mL/分。
【0148】
30kDaカットオフ膜は、濃縮物からのGAS炭水化物の実質的損失なしに、タンパク質汚染および濾過時間のよりよい減少を提供することが見出された(表IV)。
【0149】
【表4】
(Q−Sepharoseクロマトグラフィー)
陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、GAS炭水化物のヒアルロン酸汚染ならびにタンパク質および核酸含有率を減少させるのに特に有効である。
【0150】
該工程はAktaTMシステム(G & E Healthcare)を使用して実施され、GAS炭水化物は215nmでのUV吸収により検出される。限外濾過工程からの濃縮物には、NaPiの最終緩衝液濃度を10mM、pHを7.2にするために、pH7.2の100mM NaPi緩衝液を添加した。次に、このGAS炭水化物調製物を、10mM NaPi緩衝液(pH7.2)中で平衡化させたQ SepharoseTMXL樹脂(G & E Healthcare)を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより処理した。典型的には、1mgのGAS炭水化物に対して1mLの樹脂を使用した。陰イオン交換クロマトグラフィーは、GAS炭水化物の「貫流」が可能になるように設定することができ、ここで、不純物は陰イオン交換マトリックスに結合する。
【0151】
GAS炭水化物は、カラム貫流の画分で集められ、主として単独ピークとして現れた(図7)。該画分をプールした(図7中に示されるピークの尾の画分は除外して)。
【0152】
方法のこの段階における、例示的なプール画分に対する多糖回収率、タンパク質含有率およびヒアルロン酸含有率(%)を表Vに示す。
【0153】
【表5】
別の方法において、GAS炭水化物調製物は、pH7.2の100mM NaPi緩衝液中でpH7.2に達するまで予備平衡化させ、次にpH7.2の10mM NaPi緩衝液中で1.8〜2.0mS/cmの導電率に達するまで平衡化させたQ SepharoseTMFF樹脂(G & E Healthcare)を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより処理した。クロマトグラフィーは表VIにより実施した。
【0154】
【表6】
(10kDaまたは5kDaタンジェンシャルフロー濾過)
タンジェンシャルフロー濾過工程は、GAS炭水化物溶液の濃縮をもたらす。これはGAS炭水化物の濃度がそれに続く結合体化のために最適化されることを可能にする。
【0155】
この方法が5Lの発酵物について実施されたとき、タンジェンシャルフロー濾過工程は、膜面積200cm2のHydrosartTM10kDaカットオフ膜を備えたTandemmod.1082TMシステム(両方ともSartorius)を使用して実施した。加圧条件は、Pin=0.5バールおよびPout=0.0バールであり、流量は4〜5mL/分に設定した。濾過はGAS炭水化物の所望の濃度に達するまで継続した。この濃縮工程後の透析濾過は、透過物中のGAS炭水化物の損失を生じ得るので回避した。
【0156】
あるいは、タンジェンシャルフロー濾過工程は、HydrosartTMの膜面積200cm2の5kDaカットオフ膜(Sartorius)を使用して実施した。加圧条件は、Pin=0.7バールおよびPout=0.0バールであり、流量は2mL/分に設定した。
【0157】
濃縮工程後の精製されたGAS炭水化物の最終回収量は、最初の5Lの発酵物から約300mgであることが見出された。
【0158】
方法のこの段階における例示的試料に対する多糖回収率ならびにタンパク質、ポリラムノース、ヒアルロン酸および核酸の含有率(%)を表VIIに示す。精製されたGAS炭水化物のHPLC−SEプロファイルを図8に示す。
【0159】
【表7】
理論に束縛されることは望まず、タンパク質含有率(MicroBCAアッセイ(Pearce)により測定した)は、GAS炭水化物試料中のラムノース種の存在が原因の干渉のために人為結果として高い可能性があると考えられる。SDS−Pageゲル(NuPAGETM7%トリスアセテートゲル、Invitrogen)により、還元性および非還元性条件で、過剰のGAS炭水化物試料(630μg、タンパク質汚染レベルが2%ならば約12.6μgを意味する)について測定されたときに、この高レベルのタンパク質は検出されない。
【0160】
(分析方法)
(残存ポリラムノース含有率の推定)
NMRピークの帰属(図9)に基づいて、ポリラムノースの残存含有率を積分比:
ポリラムノース(%)=[H1RhaBVAR/(H1RhaA+H1RhaAVAR)]×100
により推定した。
【0161】
(実施例3)
(10kDaまたは5kDaタンジェンシャルフロー濾過工程とゲル濾過工程との比較)
実施例1においては、汚染をさらに減少させるために、陰イオン交換クロマトグラフィー工程に続いて、ゲル濾過工程を実施した。対照的に、実施例2の最適化された方法は、方法のこの段階でゲル濾過の代わりに、タンジェンシャルフロー濾過(5kDaまたは10kDa)を含む。この2つの選択手段により、おおよそ同じレベルのGAS炭水化物を回収できる。しかしながら、タンジェンシャルフロー濾過は、より低いレベルのポリラムノース汚染を生じるように思われる(1HNMRにより測定した)。
【0162】
(ゲル濾過工程)
クロマトグラフィーはAktaTMシステム(G & E Healthcare)で実施し、ゲル濾過はSephacryl S100ゲル(G & E healthcare)で実施した。GAS炭水化物調製物の容積が、ゲル濾過カラムの容積の5%を超えることは許容しなかった。移動相緩衝液はpH7.2の10mM NaPi緩衝液であった。
【0163】
多糖は貫流物中に2本のピーク:a)GAS炭水化物の大きいピーク、およびb)ポリラムノースの小さいピーク(図10)として現れた。ポリラムノースの量は非常に多く、全多糖試料の約40〜50%であった。
【0164】
(タンジェンシャルフロー濾過工程)
対照的に、最適化された方法で得られたGAS炭水化物の純度はそれより高い。
【0165】
図11は、1)最適化された方法の陰イオンクロマトグラフィー工程の後の、および2)陰イオンクロマトグラフィーの後に行うこの方法の10kDaタンジェンシャルフロー濾過工程の後の、GAS炭水化物試料の分析ゲル濾過クロマトグラムを示す。
【0166】
ポリラムノース汚染のレベルを測定するために、これらのおよび他のゲル濾過から得られた材料を、1HNMRにより比較した。図12は、1)最適化された方法の10kDaタンジェンシャルフロー濾過工程の後;2)最適化された方法の10kDaタンジェンシャルフロー濾過工程に続くゲル濾過のさらなる工程の後;および3)10kDaタンジェンシャルフロー濾過工程がゲル濾過工程で置き換えられた、最適化された方法の改変版の後、に得られた試料のスペクトルを示す。スペクトルは非常に類似しており、30kDaタンジェンシャルフロー濾過および陰イオンクロマトグラフィー工程が、GAS炭水化物を精製してポリラムノース汚染を低くする(<20%)のに十分であることを示す。ゲル濾過工程は必要とされず、一方、10kDaまたは5kDaタンジェンシャルフロー濾過で実施された濃縮工程は、GAS炭水化物のさらなる加工、例えば担体分子との結合体化にとって単に便利なだけである。
【0167】
(実施例4)
(結合体調製物)
(直接還元的アミノ化反応)
精製されたGAS炭水化を、直接還元的アミノ化反応により担体タンパク質CRM197と結合体化させた(図13)。還元的アミノ化反応には、担体タンパク質中のリシンの側鎖のアミン基と、糖中、特にGAS炭水化物多糖の還元性末端にあるアルデヒド基とが関わる。
【0168】
結合体化に先だって、精製されたGAS炭水化物をrotavaporシステムで乾燥した。次に、乾燥したGAS炭水化物をpH8.0のNaPi 200mM緩衝液中に溶解して最終濃度を10mg/mLにした。担体タンパク質CRM197を、pH8.0のNaPi 200mM緩衝液中のGAS炭水化物溶液に加え、NaBH3CN(Aldrich)を加えた。多糖:タンパク質比は4:1(重量/重量)であり、多糖:NaBCNH3比は2:1(重量/重量)であった。反応後、溶液を0.22μmで濾過して37℃に2日間保った。
【0169】
これら2日間の後、SDS−Pageゲル分析(NuPAGETM7%トリスアセテートゲル(Invitrogen))を実施して共有結合の結合体形成を検証した。結果を図14に示す。
【0170】
(別法による結合体化反応)
GAS炭水化物は担体分子とリンカーを介して結合体化することもできる。精製されたGAS炭水化物を担体タンパク質CRM197と、アジピン酸リンカーを介して結合体化した。
【0171】
最初の工程で、GAS炭水化物多糖の還元性末端にあるアルデヒド基の還元的アミノ化を実施した。精製されたGAS炭水化物を水に溶解して最終濃度を4mg/mLにした。AcONH4を300g/Lの濃度になるまで加え、NaBH3CNをAcONH4とのモル比が1:5になるまで加えた。混合物を混合し、混合物のpHを確認しておよそ7.0〜7.5にした。次に、混合物を37℃に60時間保った。最後に、反応混合物を10kDaタンジェンシャルフロー濾過で精製し、約10容積を使用するNaCl 0.1Mに対して、次に約10容積を使用する水に対して透析した。
【0172】
第2の工程においては、アミノ化されたGAS炭水化物をリンカーにより活性化した。アミノ化されたGAS炭水化物は、先ずrotavaporシステム(Buchi)を使用して濃縮し、次に水中に溶解して濃度40μmol/mLアミノ基にした。DMSOを混合物中の水の量の9倍に等しい量で加え、Et3Nをアミノ基と10:1のモル比になるように加えた。最後に、SIDEA(アジピン酸のスクシンジエステル)をアミノ基とのモル比が12:1になるように加えた。混合物を室温で2時間混合した。AcOEt(最終反応容積の80%)および1MのNaCl(最終反応容積の1.5%)を混合物に一滴ずつ加え、溶液を氷上に1時間保つと、その時間中に活性化されたGAS炭水化物が白色固体として沈殿する。次に、懸濁物を4000rpm(1780×g)で15分間遠心分離し、ペレット化した沈殿物を沈殿用容積(GAS炭水化物を沈殿させるのに使用したAcOEtの最初の容積)の3分の1に等しい量のAcOEtで5回洗浄した。各洗浄は5分間の混合、次に4000rpmでさらに5分間の遠心分離からなる。洗浄後、沈殿物は終夜乾燥させた。
【0173】
最終工程では、活性化されたGAS炭水化物をCRM197タンパク質と結合体化した。この反応は、活性化されたGAS炭水化物中の活性エステル基のモル数とCRM197のモル数とが20:1の結合体比を使用して実施した。CRM197は、pH7.2のNaPi 100mM緩衝液を使用して最終濃度が20mg/mLになるように希釈した。それに続いて、活性化されたGAS炭水化物粉末を、タンパク質溶液に穏やかに攪拌しながら徐々に加えた。次に、反応混合物を穏やかな混合下で3時間室温に保った。
【0174】
SDS−Pageゲル分析(NuPAGETM7%トリスアセテートゲル(Invitrogen))を実施して、共有結合の結合体形成を検証した。SEC−HPLC分析も実施した。結果を図15に示す。SDS−PageゲルおよびSEC−HPLC分析は、リンカーを含む結合体と直接還元的アミノ化により得られた結合体との間にいかなる有意差も示唆しなかった。
【0175】
(実施例5)
(マウスによる研究)
直接還元的アミノ化反応によりCRM197と結合体化した精製GAS炭水化物の効果を、腹腔内GASチャレンジアッセイで試験した。明礬アジュバントと共に腹腔内投与することにより、結合体で(10μg糖の用量で)マウスを免疫化した。Streptococcus pyogenesのM1株でチャレンジしたとき、マウスの51%が生存したのに対し、免疫化しなかった対照は16%の生存であった。別の試験では、マウスをM1またはM23株のいずれかでチャレンジした。この研究では、M1株でチャレンジした免疫化マウスの56%が生存したのに対し、免疫化しなかった対照は20%であり、一方、M23株でチャレンジしたマウスの41%が生存したのに対し、対照は11%であった。したがって、本発明の方法により精製されたGAS炭水化物は保護免疫を提供する。
【0176】
本発明は単に例として記載され、本発明の範囲および精神内に留まりながら、改変をなすことが可能であることは理解される。
【0177】
(参考文献)
【0178】
【数1】
【0179】
【数2】
【0180】
【数3】
【0181】
【数4】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2008年10月27日に出願された米国仮出願番号61/108,763の利益を主張し、上記米国仮出願は、その全容が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、細菌の多糖類、特にStreptococcus pyogenesの多糖類を、特にワクチンの調製において使用するために精製する分野におけるものである。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
細菌由来の多糖類は、多年にわたりワクチンに使用されてきた。しかしながら、糖類はT非依存性抗原であるから、それらは免疫原性に乏しい。担体への結合体化は、T非依存性抗原をT依存性抗原に変換して、それにより記憶応答を増強し、保護免疫が発達するのを可能にすることができる。最も有効な糖ワクチンは、それ故、複合糖質に基づくものであり、プロトタイプの結合体化ワクチンはHaemophilus influenzaeタイプb(「Hib」)に対するものであった[例えば参考文献95の第14章を参照されたい]。
【0004】
結合体化ワクチンについて記載された別の細菌は、「A群連鎖球菌」、または単に「GAS」としても公知のStreptococcus pyogenesである。該結合体化ワクチンは、GAS炭水化物を含み、それは細菌の細胞壁の成分である。この研究の多くはJohn Zabriskieおよび共同研究者により実施され、参考文献1、2および3などの文献において論じられている。
【0005】
糖系ワクチンへの出発点は糖それ自体であり、一般にこれが標的細菌から精製される。GAS炭水化物の精製のためのZabriskie法は、参考文献4および5の方法に基づき、参考文献6(特許文献1)に詳細に記載されている。Zabriskieにより使用された別の方法は、参考文献8および9に記載された参考文献7と同様な方法に基づく。別の方法は参考文献10に記載されている。これらの方法は、還元的酸処理によるGAS炭水化物の抽出を含む。具体的には、Streptococcus pyogenesの細胞が亜硝酸ナトリウムおよび氷酢酸と組み合わされて、細胞が溶解し、それによりGAS炭水化物が放出される。次に、生成した細胞溶解産物懸濁物は、サイズ排除クロマトグラフィーにより(参考文献10に記載のように)、例えば、溶離液としてリン酸緩衝生理食塩水を使用するゲル濾過により(参考文献6(特許文献1)に記載のように)、またはタンジェンシャルフロー濾過(tangential flow filtration)により(参考文献8に記載のように)精製され、その後、GAS炭水化物が適当な担体タンパク質と結合体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,866,135号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
参考文献6および8〜10は、使用された精製方法によりGAS炭水化物のどのような収率が達成されるかを示していない。その上、参考文献6および8は、生じたGAS炭水化物調製物が「1%(w/w)未満のタンパク質および核酸を含有する」[6]または「タンパク質および核酸を含まない」[8]と述べているが、タンパク質または核酸以外の不純物を除去する提案がない。それ故、GAS炭水化物を精製するためのさらなる改善された方法、特により高い収率および純度を達成する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の開示)
本発明は、糖が陰イオン交換クロマトグラフィーに供される精製方法に基づく。本発明者らは、陰イオン交換クロマトグラフィーがGAS炭水化物の良好な収率を提供することを見出した。その上、陰イオン交換クロマトグラフィーは、特に純粋なGAS炭水化物調製物を提供する。特に、本発明者らは、GAS炭水化物がGAS莢膜多糖に由来するヒアルロン酸でしばしば汚染されることを見出した。陰イオン交換クロマトグラフィーは、GAS炭水化物のヒアルロン酸汚染を減少させるのに特に有効である。これは、ヒアルロン酸はそれ自体で免疫原性であることが公知であるので[11]、GAS炭水化物がワクチンにおける使用を意図されるときに特に有利である。したがって、ヒアルロン酸の存在は、GAS炭水化物に対する免疫応答に干渉し得る。その上、ヒアルロン酸は、ヒト組織と交差反応性である抗体を誘発すると考えられており([12]および[13])、そのため医薬製品中のその存在は、健康にとって有害であり得る。陰イオン交換クロマトグラフィーは、GAS炭水化物のタンパク質および核酸汚染を減少させるのにも特に有効である。
【0009】
さらなる利点として、本発明者らは、陰イオン交換クロマトグラフィー中に、不純物は陰イオン交換マトリックスに結合するが、一方GAS炭水化物は系を素通りして溶離物中に流入する、すなわち、糖が「貫流する」ことを可能にする条件下でGAS炭水化物の精製を実施することができることを見出した。これらの条件を使用すると、GAS炭水化物をマトリックスから溶離するために、イオン強度を増大させるかまたはpHを上昇させる移動相緩衝液その他を使用する必要がないので、精製方法は簡単になる。
【0010】
本発明者らは、GAS炭水化物がしばしばGAS炭水化物のポリラムノシル改変体で汚染されることも見出した。本発明の精製方法は、GAS炭水化物のポリラムノース汚染を減少させるために特に有効である。
【0011】
したがって、本発明は、陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む、Streptococcus pyogenesのGAS炭水化物を精製するための方法を提供する。Streptococcus pyogenesのGAS炭水化物は、ヒアルロン酸、連鎖球菌性タンパク質および核酸の少なくとも1つを含む懸濁物に含まれることがある。特に、本発明は、陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む、GAS炭水化物をヒアルロン酸から分離する方法を提供する。ヒアルロン酸は、典型的にはStreptococcus pyogenesの莢膜多糖に由来する。この方法中で、他の精製工程を、陰イオン交換クロマトグラフィー工程の前または後のいずれかに含めることもできる。例えば、濾過工程(単数または複数)は、高分子量の汚染物質(細胞残渣など)を除去するために含めることができる。同様に、低分子量の汚染物質(Streptococcus pyogenes多糖類のフラグメントなど)を除去するために、特に前記濾過工程(単数または複数)後に、限外濾過工程(単数または複数)を含めることができる。また、ゲル濾過工程(単数または複数)は、特定の長さのGAS炭水化物分子を選択し、且つ汚染、特にタンパク質による汚染を低減するために含めることができる。ゲル濾過工程(単数または複数)に加えて、またはその代わりに、本発明の方法は、GAS炭水化物を濃縮する1回または複数回の工程を含むことができる。濾過および/または限外濾過工程(単数または複数)は、典型的には陰イオン交換クロマトグラフィー工程の前に実施され、一方、ゲル濾過工程(単数または複数)および/または濃縮工程(単数または複数)は、典型的には陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に実施される。GAS炭水化物の糖は、その後のワクチン調製のために加工することができる。したがって、透析および/または凍結乾燥工程などの種々の加工工程を方法中に含めることができる。この方法は、精製されたGAS炭水化物を担体分子と結合体化する工程も含むこともできる。典型的には、この結合体化工程は、上記精製工程(単数または複数)の後に実施される。
【0012】
したがって、本発明は、Streptococcus pyogenesのGAS炭水化物を精製するための方法において、陰イオン交換クロマトグラフィーの使用からなる改善を提供する。陰イオン交換クロマトグラフィーの結果として、ヒアルロン酸、タンパク質および核酸による汚染が限定されたGAS炭水化物が、良好な収率で生じる。
【0013】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程の収率は、典型的には70%を超える(例えば>75%、>80%、>85%、>90%)。実用的限界は、収率が90%を超えないこともあることを意味する(例えば、<90%、<80%、<75%その他であることもある)。
【0014】
本発明は、Streptococcus pyogenes菌からGAS炭水化物を精製するための方法であって、200ng/ml未満(例えば≦150ng/ml、≦100ng/ml、≦90ng/ml、≦80ng/ml、≦75ng/ml、≦60ng/ml、≦50ng/ml、≦40ng/ml、≦25ng/ml、≦20ng/ml、≦10ng/mlその他)のレベルのヒアルロン酸汚染を含む組成物を提供する方法も提供する。典型的には、ヒアルロン酸汚染のレベルは、100ng/ml未満、特に80ng/ml未満である。ヒアルロン酸汚染のレベルは、精製された試料中に存在するGAS炭水化物の重量に対するヒアルロン酸の重量によって表すこともできる。この方法では、本発明は、GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.75%、≦0.5%、≦0.25%、≦0.1%その他)のヒアルロン酸汚染のレベルを含む組成物を提供する、Streptococcus pyogenes菌からGAS炭水化物を精製するための方法を提供する。典型的には、ヒアルロン酸汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸1重量%未満である。これより低いレベル、例えばGAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸0.005重量%以下も得ることが可能である。
【0015】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース50重量%未満(例えば≦40%、≦30%、≦25%、≦20%、≦15%、≦10%、≦8%、≦6%、≦5%、≦4%、≦2%、≦1%その他)のポリラムノース汚染のレベルを含む組成物を提供する、Streptococcus pyogenes菌由来のGAS炭水化物を精製するための方法も提供する。典型的には、ポリラムノース汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース20重量%未満である。これより低いレベル、例えばGAS炭水化物の重量に対してポリラムノース5重量%以下も得ることが可能である。
【0016】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対してタンパク質4.0重量%未満(例えば、≦3.5%、≦3.1%、≦3.0%、≦2.5%、≦2.0%、≦1.5%、≦1.0%、その他)のタンパク質汚染のレベルを含む組成物を提供する、Streptococcus pyogenes菌からGAS炭水化物を精製するための方法も提供する。典型的には、タンパク質汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してタンパク質およそ2重量%である。
【0017】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対して核酸5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.75%、≦0.5%、≦0.25%、≦0.1%その他)の核酸汚染のレベルを含む組成物を提供する、Streptococcus pyogenes菌由来のGAS炭水化物を精製するための方法も提供する。典型的には、核酸汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対して核酸1重量%未満である。これより低いレベル、例えば、GAS炭水化物の重量に対して核酸0.5重量%未満を得ることも可能である。
【0018】
本発明は、(a)ヒアルロン酸汚染のレベルが200ng/mlまたは5%未満(上記の通り)である;(b)ポリラムノース汚染のレベルが50%未満(上記の通り)である;(c)タンパク質汚染のレベルが4.0%未満(上記の通り)である、および(d)核酸汚染のレベルが5%未満(上記の通り)である、Streptococcus pyogenes菌由来のGAS炭水化物を精製するための方法も提供する。
【0019】
本発明は、本発明の方法により得ることができる、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。
【0020】
本発明は、200ng/ml未満(例えば≦150ng/ml、≦100ng/ml、≦90ng/ml、≦80ng/ml、≦75ng/ml、≦60ng/ml、≦50ng/ml、≦40ng/ml、≦25ng/ml、≦20ng/ml、≦10ng/mlその他)のヒアルロン酸汚染のレベルを含む、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。典型的には、ヒアルロン酸汚染のレベルは、100ng/ml未満、特に80ng/ml未満である。ヒアルロン酸汚染のレベルは、組成物の合計重量に対してヒアルロン酸の重量により表すこともできる。この方法で、本発明は、GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.75%、≦0.5%、≦0.25%、≦0.1%その他)のヒアルロン酸汚染のレベルを含む、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物を提供する。典型的には、ヒアルロン酸汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸1重量%未満である。これより低いレベル、例えば、GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸0.005重量%以下も得ることも可能である。
【0021】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース50重量%未満(例えば≦40%、≦30%、≦25%、≦20%、≦15%、≦10%、≦8%、≦6%、≦5%、≦4%、≦2%、≦1%その他)のポリラムノース汚染のレベルを含むStreptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。典型的には、ポリラムノース汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース20重量%未満である。これより低いレベル、例えば、GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース5重量%以下も得ることも可能である。
【0022】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対してタンパク質4.0重量%未満(例えば≦3.5%、≦3.1%、≦3.0%、≦2.5%、≦2.0%、≦1.5%、≦1.0%、その他)のタンパク質汚染のレベルを含む、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。典型的には、タンパク質汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対してタンパク質およそ2重量%である。
【0023】
本発明は、GAS炭水化物の重量に対して核酸5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.75%、≦0.5%、≦0.25%、≦0.1%その他)の核酸汚染のレベルを含む、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。典型的には、核酸汚染のレベルは、GAS炭水化物の重量に対して核酸1重量%未満である。これより低いレベル、例えば、GAS炭水化物の重量に対して核酸0.5重量%未満も得ることが可能である。
【0024】
本発明は、(a)ヒアルロン酸汚染のレベルが200ng/mlまたは5%未満(上記の通り)である;(b)ポリラムノース汚染のレベルが50%未満(上記の通り)である;(c)タンパク質汚染のレベルが4.0%未満(上記の通り)である、および(d)核酸汚染のレベルが5%未満(上記の通り)である、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、S.pyogenes由来のGAS炭水化物の構造を例示する。
【図2】図2は、S.pyogenes由来のGAS炭水化物の構造とA群改変体連鎖球菌からのGAS炭水化物の構造とを比較する。
【図3】図3は、GAS炭水化物について典型的NMRスペクトルを示す。
【図4】図4は、ゲル濾過後のGAS炭水化物についての典型的NMRスペクトルを示す。
【図5】図5は、陰イオン交換、カチオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフの方法を使用して得られたGAS炭水化物調製物のヒアルロン酸汚染と3kDaカットオフ膜を用いる限外濾過のみの後に見られた汚染とを比較する。
【図6】図6は、GAS炭水化物を精製するための最適化された方法のまとめである。
【図7】図7は、Q−Sepharoseでの陰イオン交換クロマトグラフィーにより精製されたGAS炭水化物についての典型的クロマトグラムを示す。
【図8】図8は、タンジェンシャルフロー濾過による濃縮後のGAS炭水化物についての典型的HPLC−SEプロファイルを示す。
【図9】図9は、ゲル濾過後のGAS炭水化物についての注を付けたNMRスペクトルを示す。
【図10】図10は、ゲル濾過後のGAS炭水化物についての典型的クロマトグラムを示す。
【図11】図11は、1)陰イオン交換クロマトグラフィー工程および2)10kDaタンジェンシャルフロー濾過工程の後のGAS炭水化物に対して実施された分析ゲル濾過クロマトグラムを示す。
【図12】図12は、10kDaタンジェンシャルフロー濾過;10kDaタンジェンシャルフロー濾過およびゲル濾過;ならびにゲル濾過のみの後のGAS炭水化物の1H NMRスペクトルを示す。
【図13】図13は、GAS炭水化物−CRM197結合体を得るための反応スキームを例示する。
【図14】図14は、GAS炭水化物−CRM197結合体のSDS−Pageゲル分析を示す。
【図15】図15は、リンカーを含むGAS炭水化物−CRM197結合体の、1)SDS−Pageゲル分析および2)SEC−HPLC分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(GAS炭水化物)
S.pyogenesのGAS炭水化物(GAS細胞壁多糖、またはGASPとしても公知)は、典型的には、交互のα−(1→2)結合およびα−(1→3)結合からなるL−ラムノピラノース(Rhap)骨格および交互のラムノース環にβ−(1→3)結合したD−N−アセチルグルコサミン(GlcpNAc)残基を有する分岐構造(図1および[14])を特徴とする。Rhap骨格は存在するがGlcpNAc分岐がないA群改変体連鎖球菌は記載されている(すなわちポリラムノース、図2および[6])。本発明は、好ましくは、A群改変体連鎖球菌よりもむしろS.pyogenes由来のGAS炭水化物を含む。実際、本発明の精製方法は、S.pyogenes由来のGAS炭水化物のポリラムノース汚染を減少させるのに特に有効である。
【0027】
本発明により精製された糖類は、一般にそれらの天然型であるが、それらは改変されていてもよい。例えば、糖は天然のGAS炭水化物より短くても、または化学的に改変されていてもよい。
【0028】
したがって、本発明により使用される糖は、自然界で見出される実質的に全長のGAS炭水化物であってもよく、天然の長さより短くてもよい。全長の多糖類は、本発明で使用するために、例えば弱酸中の加水分解により、加熱により、サイズで分けるクロマトグラフィーその他により、より短いフラグメントを生じるように解重合することができる。GAS炭水化物上の末端ユニットに相当すると考えられる短いフラグメントが、ワクチンで使用するために提案されている[15]。したがって、短いフラグメントは本発明において予見されている。しかしながら、実質的に全長の糖類を使用することが好ましい。本発明により精製された糖類は、典型的には、約10kDa、特に約7.5〜8.5kDaの分子量を有する。分子量は、HPLC、例えばTSKゲルG3000SWカラム(Sigma)を使用するSEC−HPLCにより、プルラン標準、例えばPolymer Standard Service[16]から入手できるものなどに比較して測定することができる。この測定の典型的条件は、100mM NaPi、100mM NaClおよび5%アセトニトリルを含む溶離緩衝液を0.5ml/分の流速で用いる定組成溶離を含む。GAS炭水化物の存在は、214nmにおける吸光度を測定することにより検出することができる。
【0029】
糖は、天然に見出されるGAS炭水化物に比較して化学的に改変されていてもよい。例えば、糖は、脱N−アセチル化(部分的にまたは完全に)、N−プロピオニル化(部分的にまたは完全に)その他を受けていてもよい。脱アセチル化その他の、例えば免疫原性に対する効果は、日常的アッセイにより評価することができる。
【0030】
(出発原料)
本発明の方法は、典型的には、水性形態にあるGAS炭水化物で、例えば水性懸濁物として、ヒアルロン酸および/またはポリラムノースをさらに含んで出発する。連鎖球菌のタンパク質および/または核酸が懸濁物中に存在してもよい。通常、懸濁物は、ヒアルロン酸、ポリラムノース、タンパク質および核酸を含む。ヒアルロン酸は、通常、Streptococcus pyogenesの莢膜多糖に由来する。
【0031】
典型的には、出発原料は、GAS炭水化物が放出されるように細菌自体(または細菌の細胞壁を含有する材料)を処理することにより調製される。例えば、細菌は、好ましくは定常相における細菌の培養液から採収することができる。培養液は、採収に先だって熱不活化することができる。例えば、本発明者らは、90℃で60分間の熱処理が培養液の不活化に適することを見出した。採収は、培養液を遠心分離して細菌のペレットを例えば水または生理食塩水緩衝液中に再懸濁させることを含むことができる。遠心分離に先だって、培養液は、タンジェンシャルフロー濾過により、例えば0.2μmの中空繊維カートリッジフィルタを使用して処理することができる[8]。遠心分離は、任意の適当な速度で、例えば100gと10,000gとの間で実施することができる。300gの速度は、有効であることが見出された。3000gの速度は参考文献8で言及されている。細菌が生理食塩水緩衝液中に再懸濁される場合、懸濁物を、さらなる処理の前に水で希釈することができる[8]。
【0032】
GAS炭水化物は、化学的、物理的または酵素的処理を含む種々の方法により細菌から放出させることができる。典型的な化学的処理は、例えば亜硝酸ナトリウムおよび氷酢酸を使用する還元的酸処理[例えば参考文献4、5、7および10に記載されている]であり、それは細菌からGAS炭水化物を放出させる。典型的には、等容積の4N硝酸ナトリウムおよび氷酢酸を細菌の懸濁物に加えて、混合物を適当な長さの時間、例えば1時間攪拌する。処理は適当な温度、例えば37℃で実施する。混合物の最終pHは典型的にはおよそ3.0である。混合物のpHは、例えば4M水酸化ナトリウムを使用しておよそ6から7に中和することができる。混合物は水で希釈することができる[8]。
【0033】
(濾過および限外濾過)
培養後に例えば上で論じた還元的酸処理により得られたGAS炭水化物は、一般に不純であり、ヒアルロン酸および/またはポリラムノースで汚染されている。連鎖球菌のタンパク質および/または核酸も存在することがある。高分子量種を除去することによりGAS炭水化物を精製するために、1回または複数回の濾過工程を使用することができる。例えば、本発明者らは、直交濾過(orthogonal filtration)を含む濾過工程は、濾液中に保持される、GAS炭水化物からの不純物を除去するために使用することができることを見出した。典型的には、直交濾過は、0.65μmのフィルタを使用して実施される。例えば、Sartopure GF2TM(Sartorius)カプセル(面積は0.2m2)を使用することができる。しかし、0.2μmのフィルタも使用することができる。収率を改善するために、いかなる残留濾液も、フィルタから取り出して濾液の残部と併せることができる。この取り出しは、例えば、推進力(例えば蠕動性推進力または圧力)をフィルタに加えることにより、または系に蒸留水を供給することにより行うことができる。
【0034】
低分子量種を除去することによりGAS炭水化物を精製するために、1回または複数回の限外濾過工程を使用することもできる。限外濾過は、GAS炭水化物を濃縮することもできる。好ましくは、1回または複数回の限外濾過工程は、上記の濾過工程(単数または複数)の後に実施される。本発明者らは、例えばタンジェンシャルフロー濾過による透析濾過工程が、濃縮物中に保持される、GAS炭水化物から不純物を除去するために特に有効であることを見出した。GAS炭水化物溶液は、透析濾過に先だって例えば約15〜20倍濃縮することができる。タンジェンシャルフロー濾過は、1M NaClに対して(例えば約10倍の容積に対して)、および次に水に対して(例えばさらなる10倍の容積に対して)実施するのが適当である。タンジェンシャルフロー濾過は、3、5、10または30kDaカットオフ膜を使用して水に対して実施することができる。例えば、HydrosartTM(Sartorius)5kDaカットオフ膜(膜面積0.1m2)を使用することができる。HydrosartTMは、安定化されたセルロース膜であり、親水性で且つ広いpH範囲にわたって安定である。しかしながら、本発明者らは、30kDaカットオフ膜を使用するタンジェンシャルフロー濾過が、大規模方法に、より適することを見出した。このタンジェンシャルフロー濾過も、GAS炭水化物の実質的損失なしでよりよいタンパク質汚染除去およびより短い濾過時間を可能にする。タンジェンシャルフロー濾過後に、濃縮物は、例えば約5倍濃縮され得る。収率を改善するために、膜を例えば2回、膜のデッドボリュームに対応する蒸留水で洗浄して、洗液を濃縮物に加えることができる。
【0035】
濾過および/または限外濾過の後、GAS炭水化物調製物を濃縮することができる。典型的には、GAS炭水化物調製物は、さらなる処理の前に水に対して透析濾過される。
【0036】
(陰イオン交換クロマトグラフィー)
本発明の方法は、陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む。本発明者らは、陰イオン交換クロマトグラフィーが、糖の良好な収率を保ちながら、GAS炭水化物のヒアルロン酸、タンパク質および核酸汚染の除去に特に有効であることを見出した。
【0037】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、上で論じた濾過および/または限外濾過工程の後に実施することができる。
【0038】
陰イオン交換クロマトグラフィーは、任意の適当な陰イオン交換マトリックスを使用して実施することができる。普通に使用される陰イオン交換マトリックスは、Q樹脂(第四級アミンに基づく)およびDEAE樹脂(ジエチルアミノエタンに基づく)などの樹脂である。本発明者らは、Q樹脂(例えばQ−SepharoseTMXLまたはQ−SepharoseTMFF樹脂(GE Healthcare))が特に適当であることを見出したが、他の樹脂も使用することができる。精製されるべき材料の量に対して適当な樹脂の量は、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。例えば、本発明者らは、GAS炭水化物0.5mgまたは1mg当たり1mLの樹脂が効果的であり得ることを見出した。
【0039】
陰イオン交換クロマトグラフィーのための適当な開始緩衝液および移動相緩衝液も、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて使用するための典型的な緩衝液には、N−メチルピペラジン、ピペラジン、L−ヒスチジン、ビストリス、ビストリスプロパン、トリエタノールアミン、トリス、N−メチル−ジエタノールアミン、ジエタノールアミン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミン、ピペリジンおよびリン酸緩衝液が含まれる。本発明者らは、有利なことに、不純物が陰イオン交換マトリックスに結合し、一方、GAS炭水化物は系を素通りして溶離物に流入する、GAS炭水化物の「貫流」を可能にする条件下で、陰イオン交換クロマトグラフィー工程を実施することができることを見出した。これら条件の使用により、マトリックスからGAS炭水化物を溶離するために、イオン強度を増大させるかまたはpHを上昇させる移動相緩衝液その他を使用する必要がないので、精製方法は簡単になる。貫流陰イオン交換クロマトグラフィーのための適当な条件は、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。リン酸緩衝液、例えばリン酸ナトリウム緩衝液は、陰イオン交換クロマトグラフィーのための移動相に適当であり得る。緩衝液は任意の適当な濃度であってよい。例えば、10mMリン酸ナトリウムは適当であることが見出されている。
【0040】
本発明者らは、アルコールを移動相緩衝液に加えるとGAS炭水化物の収率を増加させることができることを見出した。本発明者らは、移動相緩衝液中のアルコールがGAS炭水化物調製物における濁りを減少させ得ることも見出した。しかしながら、本発明者らは、少しもアルコールを含有しない移動相緩衝液を使用することが大規模方法に、より適することを見出した。使用されるときは、任意の適当な濃度のアルコールが移動相緩衝液中に存在してもよい。例えば、アルコールは、移動相緩衝液に添加されて5容積%と50容積%との間の最終アルコール濃度(例えばおよそ10容積%、15容積%、20容積%、25容積%、30容積%)を与えることができる。典型的には、アルコールは、移動相緩衝液に15容積%と25容積%との間、特に20容積%の最終アルコール濃度を与えるように添加される。アルコールは好ましくは低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、2−メチル−プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、ジオール、その他である。適当なアルコールの選択は、過度の負担なしに経験的に試験することができるが、フェノールなどのアルコールよりもむしろエタノールおよびイソプロパノール(プロパン−2−オール)などのアルコールが好ましい。典型的には、アルコールはエタノールである。アルコールは、純粋な形態で添加することもまたは混和性溶媒(例えば水)で希釈された形態で添加することもできる。好ましい溶媒混合物は、およそ70:30とおよそ95:5との間の好ましい比(例えば75:25、80:20、85:15、90:10)のアルコール:水混合物である。
【0041】
溶離物のGAS炭水化物を含有する画分は、215nmにおけるUV吸収を測定することにより決定することができる。溶離した材料は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程前のGAS炭水化物調製物と比較して高度に精製されていた。GAS炭水化物を含有する全ての画分を合わせてさらに処理することができる。
【0042】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、例えば1、2、3、4または5回繰り返すことができる。しかしながら、典型的には、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は1回実施されるであろう。
【0043】
(ゲル濾過)
本発明の方法は、1回または複数回のゲル濾過の工程を含むことができる。このゲル濾過は、特定の長さのGAS炭水化物分子を選択し且つ特にタンパク質による汚染をさらに減少させるために使用される。しかしながら、本発明者らは、参考文献6とは反対に、ゲル濾過工程は、高純度のGAS炭水化物を得るために必要とされないことを見出した。したがって、この工程は、本発明の方法から省略することができる。この工程を省略すると、該方法を大規模に実現することの可能性を促進し得る。
【0044】
例えば、ゲル濾過工程(単数または複数)は、上で論じた陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に実施することができる。
【0045】
ゲル濾過工程(単数または複数)は、任意の適当なゲル濾過マトリックスを使用して実施することができる。普通使用されるゲル濾過マトリックスは、デキストランゲル、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリアクリロイルモルホリンゲル、およびポリスチレンゲルその他をベースとする。架橋デキストランゲルおよび混合ポリアクリルアミド/アガロースゲルも使用することができる。本発明者らは、デキストランゲル(例えばSephacryl S100ゲルまたはSephadexTMG50ゲル(両方ともGE Healthcare))が特に適当であることを見出したが、他のゲルも使用することができる。精製されるべき材料の量に対してゲルの適当な量は、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。例えば、本発明者らは、GAS炭水化物0.2mg当たり1mLのゲルが有効であり得ることを見出した。同様に、任意の所与のゲル濾過カラムに対して適当なGAS炭水化物調製物の容積は、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。通常、ゲル濾過カラムに適用されるGAS炭水化物調製物の容積は、カラム容積の5%を超えない。
【0046】
ゲル濾過のために適当な移動相緩衝液は、過度の負担なしに日常的実験により決定することができる。ゲル濾過で使用するための典型的な緩衝液には、N−メチルピペラジン、ピペラジン、L−ヒスチジン、ビストリス、ビストリスプロパン、トリエタノールアミン、トリス、N−メチル−ジエタノールアミン、ジエタノールアミン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミン、ピペリジンおよびリン酸緩衝液が含まれる。例えば、リン酸緩衝液、例えばリン酸ナトリウム緩衝液は、移動相に適し得る。緩衝液は任意の適当な濃度であってよい。例えば、10mMリン酸ナトリウムは移動相として使用することができる。
【0047】
本発明者らは、有利なことに、ゲル濾過は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程と同じ移動相緩衝液を使用して実施することができることを見出した。この緩衝液を使用すると、異なった緩衝液を調製する必要がないので、精製方法が簡単になる。例えば、10mMリン酸ナトリウム緩衝液は、両工程の移動相として使用することができる。
【0048】
またしても、ゲル濾過のための移動相緩衝液にアルコールを添加することは好ましい。この添加は、GAS炭水化物の収率を増大させる、および/またはGAS炭水化物調製物中の濁りを減少させることができる。任意の適当な濃度のアルコールを移動相緩衝液中で使用することができる。例えば、アルコールは、移動相緩衝液に、5容積%と50容積%との間の最終アルコール濃度(例えばおよそ10容積%、15容積%、20容積%、25容積%、30容積%)を与えるように添加することができる。典型的には、アルコールは、移動相緩衝液に、15容積%と25容積%との間、特に20容積%の最終アルコール濃度を与えるように添加される。アルコールは、好ましくは低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、2−メチル−プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、ジオールなどである。適当なアルコールの選択は、過度の負担なしに経験的に試験することができるが、フェノールなどのアルコールよりもむしろエタノールおよびイソプロパノール(プロパン−2−オール)などのアルコールが好ましい。典型的には、アルコールはエタノールである。アルコールは、純粋な形態で添加することもまたは混和性溶媒(例えば水)で希釈された形態で添加することもできる。好ましい溶媒混合物は、およそ70:30とおよそ95:5との間の好ましい比(例えば75:25、80:20、85:15、90:10)のアルコール:水混合物である。
【0049】
溶離物のGAS炭水化物を含有する画分は、215nmにおけるUV吸収を測定することにより決定することができる。本発明者らは、GAS炭水化物が溶離物に2本のピークとして存在し得ることを見出した。1本のピークは高分子量GAS炭水化物糖類に対応し、他の(しばしば、より小さい)ピークは低分子量GAS炭水化物糖類に対応する。GAS炭水化物調製物がその後ワクチン調製物として加工されることになっていれば、通常、高分子量GAS炭水化物糖類を含有する画分が選択される。あるいは、高分子量および低分子量両方のGAS炭水化物糖類を含有する画分を、さらなる処理の前にプールすることもできる。
【0050】
GAS炭水化物調製物は、さらなる処理の前に、水に対して透析濾過することもできる。
【0051】
(濃縮)
本発明の方法は、1回または複数回のゲル濾過工程に加えて、またはその代わりに、GAS炭水化物を濃縮する1回または複数回の工程を含むことができる。この濃縮は、下で記載するように、その後のGAS炭水化物の担体分子との結合体化のために適当な濃度の試料を得るために有用である。しかしながら、本発明者らは、この濃縮工程は、高純度のGAS炭水化物を得るために必要とされないことを見出した。したがって、この工程は、本発明の方法から省略することができる。
【0052】
本発明者らは、大規模方法のためには、GAS炭水化物を濃縮する1回または複数回の工程の使用が、ゲル濾過の使用より適当であることを見出した。GAS炭水化物を上記のように30kDaカットオフ膜を使用してタンジェンシャルフロー濾過により精製するときに、GAS炭水化物を濃縮する1回または複数回の工程の使用は特に適当である。本発明者らは、このタンジェンシャルフロー濾過工程の使用が、GAS炭水化物から不純物、特にポリラムノースを除去するために、方法中にゲル濾過工程(単数または複数)を含める必要のないことを意味することを見出した。
【0053】
例えば、濃縮工程(単数または複数)は、上で論じた陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に実施することができる。上で論じたゲル濾過工程(単数または複数)に加えて使用される場合、濃縮工程(単数または複数)は、上で論じたゲル濾過工程(単数または複数)の前または後に実施することができる。しかしながら、通常、濃縮工程(単数または複数)は、ゲル濾過工程(単数または複数)の代わりに使用される。
【0054】
濃縮工程(単数または複数)は、任意の適当な方法により実施することができる。例えば、本発明者らは、濃縮工程(単数または複数)は、上記のように、限外濾過工程(単数または複数)、例えば5または10kDaカットオフ膜を使用するタンジェンシャルフロー濾過であってよいことを見出した。例えば、HydrosartTM(Sartorius)10kDaカットオフ膜(膜面積200cm2)を使用することができる。通常は、HydrosartTM(Sartorius)5kDaカットオフ膜(膜面積200cm2)が使用される。本発明者らは、5kDaカットオフ膜が10kDaカットオフ膜よりも高い収率を提供し得ることを見出した。理論に束縛されることは望まず、5kDa膜は、GAS炭水化物の質量から遠いカットオフを提供し、その結果、より高い収率を提供すると考えられる。
【0055】
GAS炭水化物調製物は、さらなる処理の前に水に対して透析濾過することができる。しかしながら、本発明者らは、さらなる透析濾過は、透過物中のGAS炭水化物の損失を生じ得ることを見出した。
【0056】
(GAS炭水化物のさらなる処理)
精製後、糖を、汚染物質を除去するためにさらに処理することができる。これは、少しの汚染でさえ許容されない状況で(例えば、ヒト向けワクチン生産用)、特に重要である。
【0057】
糖は、真空乾燥に供することができる。この処理は、通常は、貯蔵のために糖を安定化するためではなくて、糖を乾燥していかなる残留アルコールも除去するために使用される。
【0058】
濾過をさらに繰り返すこともできる。
【0059】
精製されたGAS炭水化物は、典型的には、10と30との間、例えば20と24との間の重合度(精製された試料におけるアルデヒド基の濃度により測定される[17])を有する。しかしながら、この多糖は解重合してオリゴ糖を形成することができる。オリゴ糖は、ワクチンに使用するための多糖類にとって好ましいことがある。多糖からオリゴ糖への解重合は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程の前または後に起こり得る。解重合が実施されれば、生成物は、一般に、短い長さのオリゴ糖を除去するために、サイズで分けられる。これは、限外濾過に続くイオン交換クロマトグラフィーなどの種々の方法で達成することができる。本発明の組成物が解重合された糖を含む場合、解重合はいかなる結合体化にも先行することが好ましい。
【0060】
天然のGAS炭水化物中のD−N−アセチルグルコサミン残基が脱N−アセチル化されているならば、その場合、本発明の方法は、再N−アセチル化の工程を含むことができる。制御された再N−アセチル化は、例えば5%重炭酸アンモニウム中で、無水酢酸(CH3CO)2Oなどの試薬を使用して、便利に実施することができる[18]。
【0061】
これらの付加的工程は、一般に室温で実施することができる。
【0062】
(貯蔵)
GAS炭水化物調製物は、精製方法中の任意の段階で、貯蔵のために、例えば、真空下の凍結乾燥により凍結乾燥するか、または溶液中で(例えば、最終濃縮工程が含まれた場合にはそれからの溶離物として)凍結することができる。したがって、調製物は方法の1つの工程から他の工程へ直ちに移される必要がない。例えば、GAS炭水化物調製物が濾過および/または限外濾過により精製されることになっていれば、その場合、それは、この精製に先だって、凍結乾燥するかまたは溶液中で凍結することができる。同様に、GAS炭水化物は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程に先だって凍結乾燥するかまたは溶液中で凍結することができる。GAS炭水化物調製物がゲル濾過により精製されることになっていれば、それは、この工程に先だって凍結乾燥するかまたは溶液中で凍結することができる。同様に、GAS炭水化物調製物が濃縮されることになっていれば、それは、この工程に先だって凍結乾燥するかまたは溶液中で凍結することができる。凍結乾燥された調製物は、さらなる処理に先だって適当な溶液中で再構成される。同様に、凍結された溶液は、さらなる処理に先だって解凍される。
【0063】
本発明の方法により得られた精製されたGAS炭水化物は、任意の適当な方法で貯蔵のために処理することができる。例えば、糖は、上記のように凍結乾燥することができる。あるいは、糖は、水溶液中で、典型的には低温で、例えば−20℃で貯蔵することができる。便利なことに、糖は陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過または濃縮工程からの溶離物として貯蔵することができる。
【0064】
(結合体化)
本発明の最終精製されたGAS炭水化物は、さらに改変することなく、例えばインビトロ診断用のアッセイで使用するために、免疫化その他で使用するために、抗原として使用することができる。
【0065】
しかしながら、免疫化目的のためには、糖をタンパク質などの担体分子と結合体化することが好ましい。一般的に、糖類の担体への共有結合による結合体化は、そのことがそれらをT非依存性抗原からT依存性抗原へと変換するので、糖類の免疫原性を増強して、その結果、免疫学的記憶のための初回刺激を可能にする。結合体化は、小児科用ワクチンのために特に有用であり[例えば参考文献19]、周知の技法である[例えば参考文献20から28において論評されている]。したがって、本発明の方法は精製されたGAS炭水化物を担体分子、例えば担体タンパク質と結合体化するさらなる工程を含むことができる。
【0066】
一態様において、本発明は、それ故、(i)本発明の方法により得ることができるGAS炭水化物と(ii)担体分子との結合体を提供する。
【0067】
担体分子は、GAS炭水化物と直接的にかまたはリンカーを通して共有結合で結合体化することができる。
【0068】
GAS炭水化物の担体タンパク質への直接結合は、例えば参考文献6および8で報告されている。GAS炭水化物結合体化の典型的な先行技術の方法は、破傷風トキソイド(TT)などの担体タンパク質に対する精製された糖の還元的アミノ化[例えば参考文献29への参照により参考文献8で論じられたような]を含む。還元的アミノ化には、担体中のアミノ酸の側鎖上のアミン基と糖中のアルデヒド基とが関わる。GAS炭水化物の糖は末端残基にアルデヒド基を含む。したがって、この基は担体への結合体化のために使用することができる[例えば参考文献8で論じられたように]。あるいは、追加のアルデヒド基を、例えば糖の非還元性末端の酸化により、結合体化前に発生させることもできる。
【0069】
リンカー基による結合は、任意の公知の手順、例えば、引用文献30および31に記載された手順を使用して行うことができる。好ましいタイプの結合は、アジピン酸リンカーであり、それは、遊離−NH2基(例えばアミノ化によりGAS炭水化物に導入された)とアジピン酸とをカップリングして(例えば、ジイミド活性化を使用して)、次にタンパク質と生じた糖−アジピン酸中間生成物とをカップリングすることにより形成することができる[32、33、34]。他の好ましいタイプの結合は、カルボニルリンカーであり、それは、改変されたGAS炭水化物の遊離ヒドロキシル基のCDIとの反応[35、36]、続いてタンパク質との反応によりカルバメート結合を形成することにより形成され得る。他のリンカーには、β−プロピオンアミド[37]、ニトロフェニル−エチルアミン[38]、ハロゲン化ハロアシル[39]、グリコシド結合[40]、6−アミノカプロン酸[41]、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP)[42]、アジピン酸ジヒドラジドADH[43]、C4からC12の部分[44]、その他が含まれる。カルボジイミド縮合も使用することができる[45]。別の結合体化方法は、GBS莢膜の糖について参考文献46で記載されたように、糖中の−NH2基を(脱N−アセチル化によるか、またはアミン導入後のいずれか)二官能性リンカーと併せて使用することを含む。
【0070】
GAS炭水化物結合体化のための他の適当な方法は、参考文献6で論じられている。
【0071】
好ましい担体タンパク質は、ジフテリア毒素または破傷風毒素、またはそれらのトキソイドまたは変異体などの細菌毒素である。通常、これらが結合体ワクチンに使用される。CRM197ジフテリア毒素変異体は特に好ましい[47]。
【0072】
他の適当な担体タンパク質には、N.meningitidisの外膜タンパク質複合体[48]、合成ペプチド[49、50]、ヒートショックタンパク質[51、52]、百日咳タンパク質[53、54]、サイトカイン[55]、リンホカイン[55]、ホルモン[55]、増殖因子[55]、ヒト血清アルブミン(好ましくは組み替え);種々の病原体由来抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質[56]、例えば、N19[57]、H.influenzae由来のタンパク質D[58〜60]、ニューモリシン[61]またはその無毒性誘導体[62]、肺炎球菌の表面タンパク質PspA[63]、鉄取り込みタンパク質[64]、C.difficile由来の毒素AまたはB[65]、組み替えPseudomonas aeruginosaの外毒素A(rEPA)[66]、GBSタンパク質[112]、GASタンパク質[67]などが含まれる。
【0073】
担体への結合は、好ましくは、例えば、担体タンパク質中のリシン残基、またはアルギニン残基の側鎖中の−NH2基を通してである。結合は例えばシステイン残基の側鎖中の−SH基を通してであってもよい。
【0074】
例えば担体抑制の危険性を減ずるために、GAS炭水化物抗原に対して2種以上の担体タンパク質を使用することが可能である。したがってGAS炭水化物の糖類は、CRM197と結合体化した一部および破傷風トキソイドと結合体化した他のものを有する2群にあることもできる。しかし一般的には、全ての糖類に同じ担体タンパク質を使用することが好ましい。
【0075】
単一の担体タンパク質が2種以上の糖抗原を担持することもできる[68、69]。
【0076】
1:10(すなわちタンパク質過剰)と10:1(すなわち糖過剰)との間の糖:タンパク質比(w/w)を有する結合体が好ましい。1:5と1:2.5との間の比のように、1:5と5:1との間の比が好ましい。
【0077】
結合体は、遊離の担体と併せて使用することもできる[70]。所与の担体タンパク質が、本発明の組成物中で、遊離のものと結合体化したものとの両方の形態で存在するとき、結合体化していない形態は、好ましくは、全体としての組成物中の担体タンパク質の総量の5重量%以下であり、およびより好ましくは2重量%未満で存在する。
【0078】
結合体化後、遊離の糖類と結合体化した糖類とは分離することができる。疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル限外濾過、透析濾過その他を含む多くの適当な方法がある[参考文献71および72、その他も参照されたい]。
【0079】
(結合体と他の抗原との組合せ)
本発明の方法により調製された糖類(特に上記のように結合体化後)は、例えば互いにおよび/または他の抗原と混合することができる。したがって、本発明の方法は、糖を1種または複数種のさらなる抗原と混合するさらなる工程を含むことができる。
【0080】
複数の異なったGAS炭水化物結合体を混合することもできる。組成物は、別々の結合体を調製して、それからその結合体を組み合わせることにより製造される。
【0081】
さらなる抗原(単数または複数)は、非GAS病原体由来の抗原を含むことができる。したがって、本発明の組成物は、追加の細菌性、ウイルス性または寄生性抗原を含む1種または複数種の非GAS抗原をさらに含むことができる。これらは以下から選択することができる。
【0082】
−N.meningitidis血清型B由来のタンパク質抗原、例えば参考文献73から79におけるタンパク質抗原で、特に好ましくはタンパク質「287」(下を見られたい)および誘導体(例えば「ΔG287」)。
【0083】
−N.meningitidis血清型B由来の外膜小胞(OMV)調製物、例えば参考文献80、81、82、83その他に開示されたものなど。
【0084】
−N.meningitidis血清型A、C、W135および/またはY由来の糖抗原、例えば、血清型C由来の参考文献84で開示されたオリゴ糖または参考文献85のオリゴ糖など。
【0085】
−Streptococcus pneumoniaeからの糖抗原[例えば参考文献86〜88;参考文献95の第22および23章]。
【0086】
−A型肝炎ウイルスからの抗原、例えば、不活化ウイルス[例えば89、90;参考文献95の第15章]など。
【0087】
−B型肝炎ウイルスからの抗原、例えば、表面および/またはコア抗原[例えば90、91;参考文献95の第16章]など。
【0088】
−C型肝炎ウイルスからの抗原[例えば92]。
【0089】
−Bordetella pertussisからの抗原、例えば、百日咳ホロトキシン(PT)およびB.pertussisからの線維状赤血球凝集素(FHA)、場合により、さらにペルタクチンおよび/または凝集原2および3との組合せ[例えば参考文献93および94;参考文献95の第21章]など。
【0090】
−ジフテリア抗原、例えば、ジフテリアトキソイド[例えば参考文献95の第13章]など。
【0091】
−破傷風抗原、例えば、破傷風トキソイド[例えば参考文献95の第27章]など。
【0092】
−Haemophilus influenzae B由来の糖抗原[例えば参考文献95の第14章]
−N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば73、74、75]。
【0093】
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば96、97、98、99、100、101、102]。
【0094】
−Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば103]。
【0095】
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば104]。
【0096】
−ポリオ抗原(単数または複数)[例えば105、106;参考文献95の第24章]、例えばIPVなど。
【0097】
−狂犬病抗原(単数または複数)[例えば107]、例えば、凍結乾燥不活化ウイルスなど[例えば108、RabAvertTM]。
【0098】
−はしか、おたふく風邪、および/または風疹抗原[例えば参考文献95の第19、20および26章]。
【0099】
−インフルエンザ抗原(単数または複数)[例えば、参考文献95の第17および18章]、例えば、赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質など。
【0100】
−Moraxella catarrhalisからの抗原[例えば109]。
【0101】
−Streptococcus agalactiaeからの抗原(B群連鎖球菌)[例えば67、110〜112]。
【0102】
糖または炭水化物抗原が使用される場合、免疫原性を増強するために、それは、好ましくは、担体と結合体化される。H.influenzae B、髄膜炎菌および肺炎球菌の糖抗原の結合体化は周知である。
【0103】
毒性のタンパク質抗原は、必要な場合には無毒化され得る(例えば、化学的および/または遺伝的手段による百日咳毒素の無毒化[94])。
【0104】
ジフテリア抗原が組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含むことが好ましい。
【0105】
抗原はアルミニウム塩に吸着させることができる。
【0106】
組成物中の各抗原は、典型的には、少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の所与の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘起するのに十分なものである。
【0107】
本発明の組成物中においてタンパク質抗原を使用する代わりに、その抗原をコードする核酸を使用することもできる[例えば参考文献113から121]。したがって、本発明の組成物のタンパク質成分は、該タンパク質をコードする核酸(好ましくは例えばプラスミドの形態にあるDNA)で置き換えることができる。
【0108】
実際問題として、本発明の組成物中に含まれる抗原の数には上限があり得る。本発明の組成物中の抗原の数は、20未満、19未満、18未満、17未満、16未満、15未満、14未満、13未満、12未満、11未満、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、または3未満であってよい。
【0109】
(医薬組成物および方法)
本発明は、(a)本発明の糖(場合により、結合体の形態で)を(b)薬学的に許容される担体と混合する工程を含む、医薬組成物を調製する方法を提供する。そのような担体の詳細な議論は引用文献122で参照できる。
【0110】
本発明の組成物は、種々の形態で調製することができる。例えば、組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかで注射用として調製することができる。注射に先だって液体ビヒクルにおける溶液または懸濁物にするのに適した固体形態も調製することができる。組成物は、局所投与用に、例えば、軟膏、クリーム剤または散剤として調製することもできる。組成物は、経口投与用に、例えば、錠剤またはカプセル剤として、またはシロップ剤として(場合により風味を付けて)調製することもできる。組成物は、肺投与用に、例えば、微細粉末またはスプレーを使用する吸入薬として調製することもできる。組成物は、座剤またはペッサリーとして調製することもできる。組成物は、鼻用、耳用または眼用の投与のために、例えば、滴剤として、スプレーとして、または散剤として調製することもできる[例えば123]。
【0111】
医薬組成物は、好ましくは無菌である。それは好ましくは発熱物質を含まない。
【0112】
その組成物は、好ましくは、例えば、pH6とpH8との間、一般にはおよそpH7に緩衝化されている。組成物は水性であっても、凍結乾燥されていてもよい。
【0113】
本発明は、本発明の医薬組成物を含有する送達デバイスも提供する。該デバイスは、例えば、注射器または吸入器であってよい。
【0114】
本発明の医薬組成物は、免疫学的に有効な量のGAS炭水化物免疫原を含む、好ましくは免疫原性組成物である。「免疫学的に有効な量」は、単回用量または一連の一部としてのいずれかでのその量の個体への投与が、処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置されるべき個体の健康および身体的状態、年齢、処置されるべき個体の分類学上の群(例えばヒトでない霊長類、霊長類、その他)、個体の免疫系の抗体合成能力、所望の保護の程度、ワクチンの処方物、主治医の医学的状況評価、および他の関連要因によって変化する。その量は、日常的試行により決定することができる比較的広い範囲に入ると期待される。
【0115】
処方されれば、本発明の組成物は、被験体に直接投与することができる。処置されるべき被験体は動物であってもよく、特に、ヒト被験体を処置することができる。
【0116】
本発明の免疫原性組成物は、治療的に(すなわち現存の感染を処置するために)または予防的に(すなわち将来の感染を予防するために)使用することができる。
【0117】
医薬組成物は、バイアルまたは注射器中に詰めることができる。注射器は針を付けてかまたは針なしで供給することができる。注射器は、単回用量の組成物を含み、それに対してバイアルは、単回用量または複数回の用量を含むことができる。
【0118】
本発明の糖類の水性組成物は、他のワクチンを、凍結乾燥された形態から再構成するのに適する。本発明の組成物がそのような即時再構成のために使用されることになっている場合、本発明は、凍結乾燥された材料を本発明の水性組成物と混合する工程を含む、そのような凍結乾燥されたワクチンを再構成するための方法を提供する。再構成された材料は、注射用に使用することができる。
【0119】
(一般的事項)
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなってもよく、または何かを付け加えて、例えばX+Yを含んでもよい。
【0120】
数値xに関係する「約」という用語は、例えば、x±10%を意味する。
【0121】
「実質的に」という用語は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを全く含まなくてもよい。必要な場合、「実質的に」という用語は、本発明の定義から省いてもよい。
【0122】
本発明が複数の逐次的工程を含む方法を提供する場合、本発明は、その全工程より少ない工程数を含む方法も提供することができる。例えば、糖が汚染核酸および/またはタンパク質を除去することにより部分的に既に精製されているならば、その場合、この工程は、本発明の方法から省略することができる。同様に、汚染物質を除去する工程を実施して陰イオン交換クロマトグラフィーに使える材料を与えることはできるが、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は実施される必要はない。前処理した材料は、糖調製における中間体として有用であり、後の使用のために、例えば後の陰イオン交換クロマトグラフィーのために使用、貯蔵、移出その他をすることができるので、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、本発明の範囲内にあるように実施する必要はない。これらの異なった工程は、大きく異なったときに異なった人達により異なった場所(例えば異なった国で)で実施することができる。
【0123】
糖環は開環および閉環した形態で存在することができて、本明細書中の構造式では閉環した形態が示されるが、開環した形態も本発明により包含されることは理解される。同様に、糖類は、ピラノースおよびフラノースの形態で存在することができること、および本明細書中の構造式ではピラノース形態が示されるが、フラノース形態も包含されることは理解される。糖類の異なったアノマー形態も包含される。
【実施例】
【0124】
(本発明を実施する様式)
(実施例1)
(Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物の精製)
各精製工程の後、GAS炭水化物構造をNMR分析により検証した(下を見られたい)。GAS炭水化物について典型的NMRスペクトルを図3に提示する。
【0125】
(工程1:GAS炭水化物抽出)
4LのStreptococcus pyogenes菌の増殖培養物を80℃で熱不活化して300gで遠心分離した。ペレット化した細菌を生理食塩水緩衝液中に再懸濁して、GAS炭水化物を還元的酸処理により放出させた。簡単に説明すると、0.1容積の4N亜硝酸ナトリウムおよび0.1容積の氷酢酸を、細菌の懸濁物に攪拌しながら、混合物が最終pHがおよそ3.0になるまで加えた。次にpHがおよそ6〜7になるまで中和した。
【0126】
(工程2:濾過および限外濾過)
混合物を0.6μmフィルタ(Sartopure GF2、Sartorius)を使用して濾過し、次に3kDaカットオフ膜(膜面積0.1m2)を使用して限外濾過した。調製物はその容積が約200mLになるまで濃縮し、約10容積の水を使用して水に対して透析した。GAS炭水化物調製物のこの段階におけるタンパク質汚染を測定すると、約20〜30%であることが示された。
【0127】
(工程3および4:クロマトグラフィー工程)
以下のクロマトグラフィー工程をAKTATMシステム(Farmacia)で実施した。GAS炭水化物は、溶離物の画分で215nmのUV吸収を測定することにより検出した。
【0128】
Q SepharoseTMXL樹脂(GE Healthcare)を使用して、GAS炭水化物調製物を陰イオン交換クロマトグラフィーにより処理した。GAS炭水化物はカラム貫流物において集めた。GAS炭水化物0.5mg当たり1mLの樹脂を使用した。移動相緩衝液は、20容積%エタノールを補充した10mMリン酸ナトリウム緩衝液であった。GAS炭水化物は貫流物中に単独ピークとして現れた。GAS炭水化物を含有する全ての画分をプールした。GAS炭水化物調製物のタンパク質汚染をこの段階で測定し、約5%であることが示された。
【0129】
次に、SephadexTMG50ゲル(GE Healthcare)を使用して、GAS炭水化物調製物をゲル濾過により処理した。GAS炭水化物0.2mg当たり1mLのゲルを使用した。GAS炭水化物調製物の容積がゲル濾過カラムの容積の5%を超えることを許容しなかった。移動相緩衝液は、20容積%エタノールを補充した10mMリン酸ナトリウム緩衝液であった。GAS炭水化物は、貫流物中に2本のピークとして現れた:a)高分子量GAS炭水化物種の大きいピーク;およびb)低分子量GAS炭水化物種の小さいピークである。第一のピークをワクチンの調製で使用するために選択した。GAS炭水化物調製物のタンパク質汚染をこの段階で測定し、約2〜3%であることが示された。GAS炭水化物の収率は50〜90%であった。
【0130】
ゲル濾過後のGAS炭水化物について典型的NMRスペクトルを図4に提示する。NMRスペクトルピークの積分によりGAS炭水化物が正しい構造を有することが確認される(表I)。
【0131】
【表1】
(貯蔵)
GAS炭水化物調製物は−20℃で貯蔵した。
【0132】
(異なったクロマトグラフィー法の有効度の比較)
GAS炭水化物調製物の汚染を減少させる、異なったタイプのクロマトグラフィーの有効度を比較した。クロマトグラフィーのタイプは、ゲル濾過(SephadexTMG50ゲルを使用);陰イオン交換(Q SepharoseTMXL樹脂を使用);カチオン交換(SP SepharoseTMXL樹脂を使用);および疎水性相互作用(フェニルSepharoseTM6Fast Flow樹脂を使用)であった。全ての樹脂およびゲルは、GE healthcareから入手した。各タイプのクロマトグラフィーから得られたGAS炭水化物の最終収率(CHO)およびGAS炭水化物調製物のタンパク質汚染を測定した(表II)。
【0133】
【表2】
これらのデータは、陰イオン交換クロマトグラフィーが、特に参考文献6で使用されたゲル濾過と比較して高いGAS炭水化物の収率を生じることを示す。陰イオン交換クロマトグラフィーは、試験した全ての方法の中でタンパク質汚染の量も最小となる。
【0134】
陰イオン交換、カチオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフィー法により得られたGAS炭水化物調製物のヒアルロン酸汚染を、3kDaカットオフ膜を用いた限外濾過単独後に見られた汚染と比較した(図5)。これらのデータは、陰イオン交換クロマトグラフィーが、試験した全ての方法の中でヒアルロン酸汚染の量が最小になることを示す。
【0135】
(分析方法)
(GAS炭水化物濃度測定)
パルス電流測定検出を用いる高速陰イオン交換クロマトグラフィーを、DIONEXTMシステムを使用して実施した。GAS炭水化物調製物は、4Mトリフルオロ酢酸中で加水分解した。50mM NaOHを移動相緩衝液として、CarboPacTMPA1分析カラムを使用した。カラムを再生するために500mM NaOHを使用した。N−アセチル−グルコサミンおよびラムノースに対する保持時間は、それぞれ5.3分および7.2分であった。ラムノースおよびN−アセチル−グルコサミンのピークを積分して、GAS炭水化物の量を標準較正曲線に基づいて計算した。
【0136】
(タンパク質濃度)
タンパク質汚染はMicroBCAアッセイ(Pierce)を使用して測定した。
【0137】
(核酸濃度)
核酸濃度は260nmにおける吸光度(A)により測定した。濃度は、Lambert−Beer則、A=εbc(cは試料の濃度であり;bは試料の長さであり(1cm)およびεは0.020(μg/ml)−1cm−1である(DNA2本鎖に対する文献値))を使用して定量した。多糖の溶液は、石英キュベット中1mg/ml(水または緩衝液)で、対応する水または緩衝液で機器をリセットして、分光光度計(分光光度計Lambda 25 Perkin Elmer)で読んだ。核酸の濃度は、c=A/εbとして計算した。この値から、核酸濃度を多糖濃度で除し、結果に100を乗じることにより、核酸汚染の%を計算した。
【0138】
(NMR分析)
試料(約1mgの多糖)を、プロトン化したH2O溶媒を排除するために、凍結乾燥により調製した。次に生成物を重水(D2O、99.9%D原子、Aldrichから)に溶解して均一溶液を生成させた。本発明者らは、凍結乾燥が糖部分の物理化学構造に影響しないことを見出した。
【0139】
1H NMR実験を、Bruker AvanceTM600MHz分光計で、5mm広帯域プローブ(Bruker)を使用して25℃で記録した。XWINNMRTMソフトウェアパッケージ(Bruker)をデータ取得および処理のために使用した。32kのデータポイントをプロトンスペクトルについて10ppmのスペクトル幅にわたって集めた。発信機は参照シグナル(4.79ppm)としても使用するHDO周波数に設定した。
【0140】
1−DプロトンNMRスペクトルを標準ワンパルス実験を使用して取得した。
【0141】
(ヒアルロン酸(HA)残存含有率の推定)
残存ヒアルロン酸含有率はCorgenix Incの市販キット(製品番号029−001)により推定した。このHA試験キットは、ヒアルロン酸に結合するタンパク質(HABP)として公知の捕捉分子を使用する酵素連結結合タンパク質アッセイ(enzyme−linked binding protein assay)である。適当に希釈された血清または血漿およびHA参照溶液をHABPでコートしたマイクロウェル中でインキュベートして、試料中に存在するHAを固定化された結合性タンパク質(HABP)と反応させた。結合していない試料分子の洗浄による除去後、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)と結合したHABP溶液がマイクロウェルに加えられて、結合したHAと複合体を形成する。別の洗浄工程に続いて、色素形成基質のテトラメチルベンジジンおよび過酸化水素が添加されて反応混合物に色変化を生じさせる。色の強度を、分光光度計を用いて450nmで光学的密度(OD)単位により測定する。未知のおよび対照試料のHAレベルを、ブランク試薬(0ng/mL)とキットで提供されたHA参照溶液(50、100、200、500、800ng/mL)とから調製された参照曲線に対して決定した。
【0142】
(実施例2)
(Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物精製の最適化)
培養後に得られたGAS炭水化物は、一般に不純であり、ヒアルロン酸、タンパク質、ポリラムノースおよび核酸で汚染されている。タンジェンシャルフロー濾過、陰イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(ゲル濾過)に基づく実施例1の精製方法は、大規模化可能性を促進して且つ純度を改善するために最適化されている。
【0143】
最適化された精製方法(図6にまとめた)は、ヒアルロン酸を除去し、ポリラムノース汚染を<20%に減少させて、残存タンパク質汚染を<4%に減少させる。この方法の逐次工程は下でより詳細に記載する。
【0144】
(0.65μm直交濾過)
この最初の精製工程は、0.65μmの直交濾過を使用して粒子状汚染を除去する。濾過前に、硝酸ナトリウムおよび氷酢酸処理後に得られたGAS炭水化物懸濁物のpHを約6から7に中和した。次に、Sartopure GF2TMカプセル0.65μm(Sartorius)を使用して混合物を濾過した。5Lの発酵物から得られた約2Lの懸濁物に対して、通常0.2m2の濾過表面を使用して、作業は約30〜40分で完了した。
【0145】
表IIIは、この工程からの濾液について典型的なGAS炭水化物濃度を示す。
【0146】
【表3】
(30kDaタンジェンシャルフロー濾過)
第2の工程は低分子量種(例えばタンパク質、核酸およびヒアルロン酸)を除去するためのタンジェンシャルフロー濾過である。異なったカットオフ膜を、精製を改善し処理時間を短縮するために比較した。
【0147】
0.1m2の膜面積を有するHydrosartTM3kDa、5kDa、10kDaおよび30kDaカットオフ膜(Sartorius)を使用し、5Lの発酵物からの材料を処理した。粗多糖溶液を約15〜20倍濃縮し、最初に約10容積の1M NaClに対して、続いて約10容積を使用する水に対して透析した。タンジェンシャルフロー濾過工程は、蠕動ポンプ(WatsonMarlow)を備えた0.1m2のカセット(Sartorius)のためのホルダーを使用して実施した。使用した加圧条件は、Pin=1.0バールおよびPout=0.4バールであり、透過物の流量を、カットオフ膜に応じて、18から100ml/分で以下のように変化させた。
3kDa、流量=18mL/分
5kDa、流量=40mL/分
10kDa、流量=50mL/分
30kDa、流量=80〜100mL/分。
【0148】
30kDaカットオフ膜は、濃縮物からのGAS炭水化物の実質的損失なしに、タンパク質汚染および濾過時間のよりよい減少を提供することが見出された(表IV)。
【0149】
【表4】
(Q−Sepharoseクロマトグラフィー)
陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、GAS炭水化物のヒアルロン酸汚染ならびにタンパク質および核酸含有率を減少させるのに特に有効である。
【0150】
該工程はAktaTMシステム(G & E Healthcare)を使用して実施され、GAS炭水化物は215nmでのUV吸収により検出される。限外濾過工程からの濃縮物には、NaPiの最終緩衝液濃度を10mM、pHを7.2にするために、pH7.2の100mM NaPi緩衝液を添加した。次に、このGAS炭水化物調製物を、10mM NaPi緩衝液(pH7.2)中で平衡化させたQ SepharoseTMXL樹脂(G & E Healthcare)を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより処理した。典型的には、1mgのGAS炭水化物に対して1mLの樹脂を使用した。陰イオン交換クロマトグラフィーは、GAS炭水化物の「貫流」が可能になるように設定することができ、ここで、不純物は陰イオン交換マトリックスに結合する。
【0151】
GAS炭水化物は、カラム貫流の画分で集められ、主として単独ピークとして現れた(図7)。該画分をプールした(図7中に示されるピークの尾の画分は除外して)。
【0152】
方法のこの段階における、例示的なプール画分に対する多糖回収率、タンパク質含有率およびヒアルロン酸含有率(%)を表Vに示す。
【0153】
【表5】
別の方法において、GAS炭水化物調製物は、pH7.2の100mM NaPi緩衝液中でpH7.2に達するまで予備平衡化させ、次にpH7.2の10mM NaPi緩衝液中で1.8〜2.0mS/cmの導電率に達するまで平衡化させたQ SepharoseTMFF樹脂(G & E Healthcare)を使用して、陰イオン交換クロマトグラフィーにより処理した。クロマトグラフィーは表VIにより実施した。
【0154】
【表6】
(10kDaまたは5kDaタンジェンシャルフロー濾過)
タンジェンシャルフロー濾過工程は、GAS炭水化物溶液の濃縮をもたらす。これはGAS炭水化物の濃度がそれに続く結合体化のために最適化されることを可能にする。
【0155】
この方法が5Lの発酵物について実施されたとき、タンジェンシャルフロー濾過工程は、膜面積200cm2のHydrosartTM10kDaカットオフ膜を備えたTandemmod.1082TMシステム(両方ともSartorius)を使用して実施した。加圧条件は、Pin=0.5バールおよびPout=0.0バールであり、流量は4〜5mL/分に設定した。濾過はGAS炭水化物の所望の濃度に達するまで継続した。この濃縮工程後の透析濾過は、透過物中のGAS炭水化物の損失を生じ得るので回避した。
【0156】
あるいは、タンジェンシャルフロー濾過工程は、HydrosartTMの膜面積200cm2の5kDaカットオフ膜(Sartorius)を使用して実施した。加圧条件は、Pin=0.7バールおよびPout=0.0バールであり、流量は2mL/分に設定した。
【0157】
濃縮工程後の精製されたGAS炭水化物の最終回収量は、最初の5Lの発酵物から約300mgであることが見出された。
【0158】
方法のこの段階における例示的試料に対する多糖回収率ならびにタンパク質、ポリラムノース、ヒアルロン酸および核酸の含有率(%)を表VIIに示す。精製されたGAS炭水化物のHPLC−SEプロファイルを図8に示す。
【0159】
【表7】
理論に束縛されることは望まず、タンパク質含有率(MicroBCAアッセイ(Pearce)により測定した)は、GAS炭水化物試料中のラムノース種の存在が原因の干渉のために人為結果として高い可能性があると考えられる。SDS−Pageゲル(NuPAGETM7%トリスアセテートゲル、Invitrogen)により、還元性および非還元性条件で、過剰のGAS炭水化物試料(630μg、タンパク質汚染レベルが2%ならば約12.6μgを意味する)について測定されたときに、この高レベルのタンパク質は検出されない。
【0160】
(分析方法)
(残存ポリラムノース含有率の推定)
NMRピークの帰属(図9)に基づいて、ポリラムノースの残存含有率を積分比:
ポリラムノース(%)=[H1RhaBVAR/(H1RhaA+H1RhaAVAR)]×100
により推定した。
【0161】
(実施例3)
(10kDaまたは5kDaタンジェンシャルフロー濾過工程とゲル濾過工程との比較)
実施例1においては、汚染をさらに減少させるために、陰イオン交換クロマトグラフィー工程に続いて、ゲル濾過工程を実施した。対照的に、実施例2の最適化された方法は、方法のこの段階でゲル濾過の代わりに、タンジェンシャルフロー濾過(5kDaまたは10kDa)を含む。この2つの選択手段により、おおよそ同じレベルのGAS炭水化物を回収できる。しかしながら、タンジェンシャルフロー濾過は、より低いレベルのポリラムノース汚染を生じるように思われる(1HNMRにより測定した)。
【0162】
(ゲル濾過工程)
クロマトグラフィーはAktaTMシステム(G & E Healthcare)で実施し、ゲル濾過はSephacryl S100ゲル(G & E healthcare)で実施した。GAS炭水化物調製物の容積が、ゲル濾過カラムの容積の5%を超えることは許容しなかった。移動相緩衝液はpH7.2の10mM NaPi緩衝液であった。
【0163】
多糖は貫流物中に2本のピーク:a)GAS炭水化物の大きいピーク、およびb)ポリラムノースの小さいピーク(図10)として現れた。ポリラムノースの量は非常に多く、全多糖試料の約40〜50%であった。
【0164】
(タンジェンシャルフロー濾過工程)
対照的に、最適化された方法で得られたGAS炭水化物の純度はそれより高い。
【0165】
図11は、1)最適化された方法の陰イオンクロマトグラフィー工程の後の、および2)陰イオンクロマトグラフィーの後に行うこの方法の10kDaタンジェンシャルフロー濾過工程の後の、GAS炭水化物試料の分析ゲル濾過クロマトグラムを示す。
【0166】
ポリラムノース汚染のレベルを測定するために、これらのおよび他のゲル濾過から得られた材料を、1HNMRにより比較した。図12は、1)最適化された方法の10kDaタンジェンシャルフロー濾過工程の後;2)最適化された方法の10kDaタンジェンシャルフロー濾過工程に続くゲル濾過のさらなる工程の後;および3)10kDaタンジェンシャルフロー濾過工程がゲル濾過工程で置き換えられた、最適化された方法の改変版の後、に得られた試料のスペクトルを示す。スペクトルは非常に類似しており、30kDaタンジェンシャルフロー濾過および陰イオンクロマトグラフィー工程が、GAS炭水化物を精製してポリラムノース汚染を低くする(<20%)のに十分であることを示す。ゲル濾過工程は必要とされず、一方、10kDaまたは5kDaタンジェンシャルフロー濾過で実施された濃縮工程は、GAS炭水化物のさらなる加工、例えば担体分子との結合体化にとって単に便利なだけである。
【0167】
(実施例4)
(結合体調製物)
(直接還元的アミノ化反応)
精製されたGAS炭水化を、直接還元的アミノ化反応により担体タンパク質CRM197と結合体化させた(図13)。還元的アミノ化反応には、担体タンパク質中のリシンの側鎖のアミン基と、糖中、特にGAS炭水化物多糖の還元性末端にあるアルデヒド基とが関わる。
【0168】
結合体化に先だって、精製されたGAS炭水化物をrotavaporシステムで乾燥した。次に、乾燥したGAS炭水化物をpH8.0のNaPi 200mM緩衝液中に溶解して最終濃度を10mg/mLにした。担体タンパク質CRM197を、pH8.0のNaPi 200mM緩衝液中のGAS炭水化物溶液に加え、NaBH3CN(Aldrich)を加えた。多糖:タンパク質比は4:1(重量/重量)であり、多糖:NaBCNH3比は2:1(重量/重量)であった。反応後、溶液を0.22μmで濾過して37℃に2日間保った。
【0169】
これら2日間の後、SDS−Pageゲル分析(NuPAGETM7%トリスアセテートゲル(Invitrogen))を実施して共有結合の結合体形成を検証した。結果を図14に示す。
【0170】
(別法による結合体化反応)
GAS炭水化物は担体分子とリンカーを介して結合体化することもできる。精製されたGAS炭水化物を担体タンパク質CRM197と、アジピン酸リンカーを介して結合体化した。
【0171】
最初の工程で、GAS炭水化物多糖の還元性末端にあるアルデヒド基の還元的アミノ化を実施した。精製されたGAS炭水化物を水に溶解して最終濃度を4mg/mLにした。AcONH4を300g/Lの濃度になるまで加え、NaBH3CNをAcONH4とのモル比が1:5になるまで加えた。混合物を混合し、混合物のpHを確認しておよそ7.0〜7.5にした。次に、混合物を37℃に60時間保った。最後に、反応混合物を10kDaタンジェンシャルフロー濾過で精製し、約10容積を使用するNaCl 0.1Mに対して、次に約10容積を使用する水に対して透析した。
【0172】
第2の工程においては、アミノ化されたGAS炭水化物をリンカーにより活性化した。アミノ化されたGAS炭水化物は、先ずrotavaporシステム(Buchi)を使用して濃縮し、次に水中に溶解して濃度40μmol/mLアミノ基にした。DMSOを混合物中の水の量の9倍に等しい量で加え、Et3Nをアミノ基と10:1のモル比になるように加えた。最後に、SIDEA(アジピン酸のスクシンジエステル)をアミノ基とのモル比が12:1になるように加えた。混合物を室温で2時間混合した。AcOEt(最終反応容積の80%)および1MのNaCl(最終反応容積の1.5%)を混合物に一滴ずつ加え、溶液を氷上に1時間保つと、その時間中に活性化されたGAS炭水化物が白色固体として沈殿する。次に、懸濁物を4000rpm(1780×g)で15分間遠心分離し、ペレット化した沈殿物を沈殿用容積(GAS炭水化物を沈殿させるのに使用したAcOEtの最初の容積)の3分の1に等しい量のAcOEtで5回洗浄した。各洗浄は5分間の混合、次に4000rpmでさらに5分間の遠心分離からなる。洗浄後、沈殿物は終夜乾燥させた。
【0173】
最終工程では、活性化されたGAS炭水化物をCRM197タンパク質と結合体化した。この反応は、活性化されたGAS炭水化物中の活性エステル基のモル数とCRM197のモル数とが20:1の結合体比を使用して実施した。CRM197は、pH7.2のNaPi 100mM緩衝液を使用して最終濃度が20mg/mLになるように希釈した。それに続いて、活性化されたGAS炭水化物粉末を、タンパク質溶液に穏やかに攪拌しながら徐々に加えた。次に、反応混合物を穏やかな混合下で3時間室温に保った。
【0174】
SDS−Pageゲル分析(NuPAGETM7%トリスアセテートゲル(Invitrogen))を実施して、共有結合の結合体形成を検証した。SEC−HPLC分析も実施した。結果を図15に示す。SDS−PageゲルおよびSEC−HPLC分析は、リンカーを含む結合体と直接還元的アミノ化により得られた結合体との間にいかなる有意差も示唆しなかった。
【0175】
(実施例5)
(マウスによる研究)
直接還元的アミノ化反応によりCRM197と結合体化した精製GAS炭水化物の効果を、腹腔内GASチャレンジアッセイで試験した。明礬アジュバントと共に腹腔内投与することにより、結合体で(10μg糖の用量で)マウスを免疫化した。Streptococcus pyogenesのM1株でチャレンジしたとき、マウスの51%が生存したのに対し、免疫化しなかった対照は16%の生存であった。別の試験では、マウスをM1またはM23株のいずれかでチャレンジした。この研究では、M1株でチャレンジした免疫化マウスの56%が生存したのに対し、免疫化しなかった対照は20%であり、一方、M23株でチャレンジしたマウスの41%が生存したのに対し、対照は11%であった。したがって、本発明の方法により精製されたGAS炭水化物は保護免疫を提供する。
【0176】
本発明は単に例として記載され、本発明の範囲および精神内に留まりながら、改変をなすことが可能であることは理解される。
【0177】
(参考文献)
【0178】
【数1】
【0179】
【数2】
【0180】
【数3】
【0181】
【数4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む、Streptococcus pyogenesのGAS炭水化物を精製するための方法。
【請求項2】
前記精製されたGAS炭水化物が約10kDaの分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記糖が部分的にまたは完全に脱N−アセチル化されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
出発原料が、ヒアルロン酸および/またはポリラムノースをさらに含むGAS炭水化物の水性懸濁物である、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁物が、前記GAS炭水化物が放出されるようにS.pyogenesを処理することにより調製される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記GAS炭水化物が還元的酸処理により放出される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程に先だって、1回または複数回の濾過工程を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記濾過が0.65μmフィルタを使用する直交濾過である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程に先だって、1回または複数回の限外濾過工程を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記限外濾過が30kDaカットオフ膜を使用するタンジェンシャルフロー濾過である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程が、陰イオン交換マトリックスとしてQ樹脂を使用して実施される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程が、GAS炭水化物1mg当たり1mLの陰イオン交換マトリックス樹脂を使用して実施される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程が、前記GAS炭水化物の貫流を可能にする条件下で実施される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーの移動相緩衝液がアルコールを含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記移動相緩衝液中の最終アルコール濃度が15%と25%との間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルコールがエタノールである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に1回または複数回のゲル濾過工程を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ゲル濾過工程が、ゲル濾過マトリックスとしてデキストランゲルを使用して実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ゲル濾過工程が、GAS炭水化物0.2mg当たり1mLのゲル濾過マトリックスを使用して実施される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲル濾過工程が、前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程と同じ移動相緩衝液を使用して実施される、請求項17から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記ゲル濾過工程が、請求項14から16のいずれかに記載の移動相緩衝液を使用して実施される、請求項17から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に前記GAS炭水化物を濃縮する1回または複数回の工程を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記濃縮工程が、5または10kDaカットオフ膜を使用してタンジェンシャルフロー濾過により実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記精製されたGAS炭水化物を担体分子と結合体化するさらなる工程を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれかに記載の方法により得ることができる、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物。
【請求項26】
a)80ng/ml未満;またはb)GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸1重量%未満のレベルのヒアルロン酸汚染を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース20重量%未満のレベルのポリラムノース汚染を含む、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
GAS炭水化物の重量に対してタンパク質約2重量%のレベルのタンパク質汚染を含む、請求項25から27のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
GAS炭水化物の重量に対して核酸1重量%未満のレベルの核酸汚染を含む、請求項25から28のいずれかに記載の組成物。
【請求項1】
陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を含む、Streptococcus pyogenesのGAS炭水化物を精製するための方法。
【請求項2】
前記精製されたGAS炭水化物が約10kDaの分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記糖が部分的にまたは完全に脱N−アセチル化されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
出発原料が、ヒアルロン酸および/またはポリラムノースをさらに含むGAS炭水化物の水性懸濁物である、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁物が、前記GAS炭水化物が放出されるようにS.pyogenesを処理することにより調製される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記GAS炭水化物が還元的酸処理により放出される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程に先だって、1回または複数回の濾過工程を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記濾過が0.65μmフィルタを使用する直交濾過である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程に先だって、1回または複数回の限外濾過工程を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記限外濾過が30kDaカットオフ膜を使用するタンジェンシャルフロー濾過である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程が、陰イオン交換マトリックスとしてQ樹脂を使用して実施される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程が、GAS炭水化物1mg当たり1mLの陰イオン交換マトリックス樹脂を使用して実施される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程が、前記GAS炭水化物の貫流を可能にする条件下で実施される、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーの移動相緩衝液がアルコールを含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記移動相緩衝液中の最終アルコール濃度が15%と25%との間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルコールがエタノールである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に1回または複数回のゲル濾過工程を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ゲル濾過工程が、ゲル濾過マトリックスとしてデキストランゲルを使用して実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ゲル濾過工程が、GAS炭水化物0.2mg当たり1mLのゲル濾過マトリックスを使用して実施される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲル濾過工程が、前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程と同じ移動相緩衝液を使用して実施される、請求項17から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記ゲル濾過工程が、請求項14から16のいずれかに記載の移動相緩衝液を使用して実施される、請求項17から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に前記GAS炭水化物を濃縮する1回または複数回の工程を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記濃縮工程が、5または10kDaカットオフ膜を使用してタンジェンシャルフロー濾過により実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記精製されたGAS炭水化物を担体分子と結合体化するさらなる工程を含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれかに記載の方法により得ることができる、Streptococcus pyogenes由来のGAS炭水化物を含む組成物。
【請求項26】
a)80ng/ml未満;またはb)GAS炭水化物の重量に対してヒアルロン酸1重量%未満のレベルのヒアルロン酸汚染を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
GAS炭水化物の重量に対してポリラムノース20重量%未満のレベルのポリラムノース汚染を含む、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
GAS炭水化物の重量に対してタンパク質約2重量%のレベルのタンパク質汚染を含む、請求項25から27のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
GAS炭水化物の重量に対して核酸1重量%未満のレベルの核酸汚染を含む、請求項25から28のいずれかに記載の組成物。
【図4】
【図11】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−506853(P2012−506853A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532737(P2011−532737)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007346
【国際公開番号】WO2010/049806
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007346
【国際公開番号】WO2010/049806
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
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