説明

精製炭化水素油の製造方法および精製炭化水素油

【課題】水素化処理により炭化水素油中に含まれる硫黄分や窒素分を低減して精製炭化水素油を製造するにあたり、炭化水素油中の150℃未満の留分に含まれているアロマ量の低下を抑制することが可能な精製炭化水素油の製造方法を提供する。
【解決手段】10容量%留出温度が50〜95℃、97容量%留出温度が220〜300℃の蒸留性状を有する炭化水素油であって、該炭化水素油中の全アロマ量に対する沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量の比率が0.3〜0.9である原料炭化水素油を水素化処理して精製炭化水素油とする、精製炭化水素油の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製炭化水素油の製造方法および該製造方法を用いて製造した精製炭化水素油に関し、特には、水素化処理により炭化水素油中の硫黄分を低減して精製炭化水素油とする際に、炭化水素油の沸点150℃未満の留分中のアロマ分(芳香族炭化水素)の量が低下してしまうことを抑制可能な精製炭化水素油の製造方法および該製造方法を用いて製造した精製炭化水素油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原油の精製処理においては、原油を常圧蒸留装置により常圧蒸留して、軽質ガス、LPガス、ナフサ(軽質ナフサ、重質ナフサ)、灯油、軽油および残油のそれぞれの留分に分離してから、各留分ごとに精製処理を行っている。
【0003】
そして、通常、原油のナフサ留分や、製油所の各装置または他の分解装置を用いて生産されたナフサ留分は、接触改質装置を用いて、オレフィン分やアロマ分に富む高オクタン価のガソリン基材へとリフォーミング(接触改質)され、或いは、石油化学品の原料であるベンゼン、トルエン、キシレン(以下、「BTX」と称すことがある)等に転換される。ここで、この接触改質装置に用いられる触媒の多くは白金やレニウム等の貴金属を含有するものであり、硫黄や窒素などの触媒被毒物質に対する耐性が低いため、ナフサ留分は、水素化処理を経て硫黄や窒素などを除去した上で接触改質装置にて処理されている。なお、水素化処理後のナフサ留分中の硫黄、窒素濃度は、水素化処理の反応条件により異なるものの0.5質量ppm程度まで低減されている。
【0004】
そして、従来、ナフサ留分の水素化処理技術としては、ナフサ留分と水素とをコバルト、ニッケル及びモリブデンの少なくとも1種を含有する多孔質酸化物系触媒の存在下で接触させることにより、ナフサ留分中の硫黄や窒素等のヘテロ化合物を除去する方法が知られており(例えば、特許文献1〜4参照)、特に、ナフサ留分は、より重質な灯油や軽油、残油等に比べて水素化処理が容易であることから、3MPaG以下の低圧、反応温度250〜330℃の比較的低温で水素化処理する方法が良く知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、従来のナフサ留分の水素化処理方法では、常圧蒸留後のナフサ留分のみからなる炭化水素油を水素化処理しているため、硫黄や窒素などの除去反応と共にナフサ留分に含まれている芳香族炭化水素の水素化反応も進行してしまい、得られた精製ナフサ留分に含まれているBTX等のアロマ分の量(以下、単に「アロマ量」と称することがある)が低下して、ガソリン基材のオクタン価の向上が十分に図れなかったり、石油化学製品の原料として十分な量のBTXが得られなかったりすることがあった(例えば、非特許文献2参照)。また、水素化処理において原料中に含まれているアロマ分の量が減少することは、エネルギー効率的にも工業的にも効率的でなかった。
【特許文献1】特開2001−353444号公報
【特許文献2】特開2005−105027号公報
【特許文献3】特開2005−272759号公報
【特許文献4】特開平05−070780号公報
【非特許文献1】石油学会編、水素化精製プロセス、59ページ、講談社(1998)
【非特許文献2】石油精製技術便覧(改訂版)、57ページ、産業図書株式会社(1971)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の課題を有利に解決したものであり、本発明の目的は、水素化処理により炭化水素油中に含まれる硫黄分や窒素分を低減して精製炭化水素油を製造するにあたり、炭化水素油中の沸点150℃未満の留分に含まれているアロマ量の低下を抑制することが可能な精製炭化水素油の製造方法、および該製造方法を用いて製造した精製炭化水素油を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の留分に含まれるアロマ量の比率が特定の範囲内にある炭化水素油を原料として水素化処理することにより、沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量を低減させることなく硫黄分や窒素分等の除去が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の精製炭化水素油の製造方法は、10容量%留出温度が50〜95℃、97容量%留出温度が220〜300℃の蒸留性状を有する炭化水素油であって、該炭化水素油中の全アロマ量に対する沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量の比率が0.3〜0.9である原料炭化水素油を水素化処理して精製炭化水素油とすることを特徴とする。このような蒸留性状およびアロマ量の比率を有する炭化水素油を原料として用いて水素化処理を行えば、炭化水素油中の沸点150℃未満の留分に含まれているアロマ量の低下を抑制しつつ、硫黄分の低い精製炭化水素油を製造することができる。なお、本発明において、蒸留性状とはJIS K2254に準拠して測定したものを指す。また、全アロマ量とは沸点150℃未満の留分中のアロマ量と沸点150℃以上の留分中のアロマ量とを合計したものを指し、ここで、沸点150℃未満の留分のアロマ量はJIS K2536(全組成分析)にて測定したもの、沸点150℃以上の留分のアロマ量はJPI−5S−49−97(石油製品−炭化水素タイプ試験法)に準拠して測定したものを指す。
【0009】
ここで、本発明の精製炭化水素油の製造方法は、前記原料炭化水素油の沸点150℃未満の留出量が50〜90容量%であることが好ましい。沸点150℃未満の留出量が50〜90容量%の炭化水素油を原料として用いれば、アロマ分の多い沸点150℃未満の留分を含む精製炭化水素油を効率的に得ることができるからである。
【0010】
また、本発明の精製炭化水素油は、上記精製炭化水素油の製造方法を用いて製造した精製炭化水素油であって、前記原料炭化水素油中の沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量に対する前記精製炭化水素油中の沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量の比率が0.8以上、好ましくは0.8〜1.2のもの、及び/または、前記原料炭化水素油中の沸点150℃以上の留分に含まれるアロマ量に対する前記精製炭化水素油中の沸点150℃以上の留分に含まれるアロマ量の比率が0.6以上、好ましくは0.6〜1.1のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ナフサ留分を単独で水素化処理していた従来技術とは異なり、水素化処理の反応温度の上昇と共に精製炭化水素油の沸点150℃未満の留分中のアロマ分の量が低下することがなく、原料となる炭化水素油中の沸点150℃未満の留分に含まれているアロマ量の低下を抑制しつつ硫黄分を効果的に低減することが可能な、精製炭化水素油の製造方法を提供することができ、また、硫黄分の低い精製炭化水素油を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔原料炭化水素油〕
本発明に使用する原料炭化水素油としては、10容量%留出温度が50〜95℃、好ましくは55〜95℃、より好ましくは60〜90℃、97容量%留出温度が220〜300℃、好ましくは225〜280℃の蒸留性状を有する炭化水素油が挙げられる。なお、上記原料炭化水素油としては、50容量%留出温度が100〜150℃、より好ましくは115〜140℃である炭化水素油を更に好適に使用できる。
【0013】
更に、本発明に使用する原料炭化水素油は、ナフサ留分に該ナフサ留分よりも重質な留分、例えば、灯油留分等を混合した炭化水素油であっても良い。
【0014】
ここで、上記ナフサ留分としては、沸点が30〜200℃程度の留分、例えば、原油等を蒸留して得られる直留ナフサ留分、各種石油精製プロセス(例えば、熱分解装置、接触分解装置、接触改質装置、直接脱硫装置、間接脱硫装置等)から得られる精製油を蒸留して得られるナフサ留分、廃プラ油、オイルシェル若しくはオイルサンドをビスブレーキング等の熱分解処理および/または蒸留して得られるナフサ留分、並びにそれらのナフサ留分の混合物が挙げられる。
【0015】
また、ナフサ留分と混合する重質留分としては、混合後の炭化水素油の蒸留性状が前記範囲を満足するものであれば任意の留分を用いることができ、例えば、原油等を蒸留して得られる直留灯油、各種石油精製プロセス(例えば、熱分解装置、直接脱硫装置、間接脱硫装置等)から得られる精製油を蒸留して得られる灯油留分(沸点140〜300℃程度の留分)などを用いることができる。
【0016】
本発明に用いる原料炭化水素油としては、常圧蒸留した際の沸点150℃未満の留出量が50〜90容量%、好ましくは60〜80容量%の炭化水素油が好適である。沸点150℃未満の留出量が前記範囲外となると、炭化水素油の水素化処理時における沸点150℃未満の留分に含まれているアロマ分の損失低減効果が低くなるため好ましくない。
【0017】
また、本発明に使用する原料炭化水素油は、上述した蒸留性状を有することに加え、常圧蒸留して得られる沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量を(A)、沸点150℃以上の留分に含まれるアロマ量を(B)としたとき、原料炭化水素油中の全アロマ量(A+B)に対する沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量(A)の比率、即ちA/(A+B)が、0.3〜0.9、好ましくは0.35〜0.85であることが必要である。A/(A+B)が前記範囲外であると、炭化水素油の水素化処理時にナフサ留分中のアロマ量が低下してしまうため好ましくない。
【0018】
〔水素化処理〕
本発明の精製炭化水素油の製造方法では、上記原料炭化水素油を水素化精製装置に送り、触媒の存在下、原料炭化水素油と水素とを接触させて、脱硫などの水素化処理を行う。ここで、上記水素化精製装置としては、気液下向並流型反応器を用いることが好ましい。
【0019】
水素化処理に用いる水素源は、水素含有ガスである限り特に制限されるものではないが、純度75%以上のものが好ましく、純度80%以上のものが更に好ましい。具体的には、水素源として、後述する精製重質ナフサの接触改質処理を行うための接触改質装置から副生する水素等を使用することができる。
【0020】
水素化処理用の触媒としては、100〜300m/gの表面積を有するアルミナ、シリカアルミナ、シリカ又はゼオライト等の担体に、活性金属としてコバルト、ニッケル、モリブデン及びタングステンから選ばれる2種以上の元素を担持した触媒を使用することができる。上記元素の代表的な組み合わせとしては、コバルト及びモリブデン(Co−Mo)、ニッケル及びモリブデン(Ni−Mo)、ニッケル及びタングステン(Ni−W)、ニッケル、コバルト及びモリブデン(Ni−Co−Mo)が挙げられる。上記活性金属の担持量としては、モリブデンは5〜20質量%、コバルト及びニッケルは1〜5質量%、タングステンは10〜30質量%が一般的である。
【0021】
また、水素化処理は、圧力が2〜8MPa、好ましくは2〜6MPa、反応温度が250〜380℃、好ましくは300〜360℃、H/油比が20〜200Nm/kL、好ましくは25〜200Nm/kL、液空間速度(LHSV)が1〜15h−1、好ましくは1.5〜10h−1の条件下で行うことができる。
【0022】
〔精製炭化水素油〕
上述のようにして得られた精製炭化水素油は、精製炭化水素油中の沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量を(C)としたとき、原料炭化水素油中の沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量(A)に対する精製炭化水素油中の沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量(C)の比率(C/A)が0.8以上、好ましくは0.8〜1.2、より好ましくは0.85〜1.1であることが好ましい。
【0023】
また、上述のようにして得られた精製炭化水素油は、上記アロマ量の比率(C/A)に加え、或いは、変えて、精製炭化水素油中の沸点150℃以上の留分に含まれるアロマ量を(D)としたとき、原料炭化水素油中の沸点150℃以上の留分に含まれるアロマ量(B)に対する精製炭化水素油中の沸点150℃以上の留分に含まれるアロマ量(D)の比率(D/B)が0.6以上、好ましくは0.6〜1.1、より好ましくは0.65〜1.0であることが好ましい。
【0024】
〔水素化処理後の分留〕
本発明の精製炭化水素油の製造方法を用いて製造した精製炭化水素油は、常圧蒸留装置に送り、常圧蒸留して、精製LPガス、精製ナフサ(精製軽質ナフサ、精製重質ナフサ)および精製灯油の各留分に分離することができる。ここで、精製ナフサとは、10容量%留出温度が50℃以上で90容量%留出温度が150℃以下の留分であり、この内の精製軽質ナフサとは、沸点が30〜100℃程度の留分を、精製重質ナフサとは沸点が75〜200℃程度の留分をいう。また、精製灯油とは、引火点が40℃以上で95容量%留出温度が300℃以下の留分をいう。なお、引火点とは、JIS K2265に準拠して測定した値を指す。
【0025】
なお、精製軽質ナフサおよび精製重質ナフサは、精製炭化水素油から直接分離しても良いが、常圧蒸留装置を用いて沸点30℃以上200℃未満のナフサ留分を一括で留出させた後に、全ナフサ留分をナフサ分離装置に送り、該全ナフサ留分から軽質ナフサと重質ナフサとを分離するようにしてもよい。
【0026】
そして、上述したような分留処理によって、精製炭化水素油から、精製LPガス、精製軽質ナフサ、精製重質ナフサ、精製灯油などの各留分が得られる。なお、精製LPガス留分は、LPガス処理装置で不純物を除去した後、ブタン及びプロパンに分離して、それぞれ製品ガスとして使用することができる。
【0027】
上述のようにして得られた精製ナフサは、前述のC/Aを満たし、且つ硫黄分は1.0質量ppm以下、好ましくは0.5質量ppm以下であることが好ましい。精製軽質ナフサは、そのままガソリンに調合することができる他、エチレン分解装置原料(石化原料)とすることもでき、必要に応じ改質処理やスイートニング処理を行っても良い。また、得られた精製重質ナフサは、接触改質装置で異性化や芳香族化した後、ガソリンに調合し、或いは、芳香族製品とすることができる。なお、この接触改質装置で副生する水素は、前述の水素化精製装置に送り炭化水素油の水素化処理用の水素源として利用することもできる。また、接触改質装置で副生するLPガス分は、前述のLPガス処理装置から得られる精製LPガスに混合することもできる。
【0028】
上述のようにして得られた精製灯油は、前述のD/Bを満たし、硫黄分は10質量ppm以下、好ましくは5質量ppm以下であることが好ましく、そのまま製品灯油とすることができる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
(炭化水素油の性状)
実施例及び比較例に使用した炭化水素油の性状を表1に示す。ナフサAと留分Eは同一の原油より蒸留分離したものであり、ナフサBと灯油Dは、ナフサAと留分Eとは別の原油より蒸留分離したものである。ナフサCは、全体のアロマ分が60vol%となるように、ナフサBに対し、ナフサB中のBTXの存在比率(ベンゼン:エチルベンゼン:トルエン:キシレン)と同じ比率に調製したベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレンの混合物を添加したものである。
【0031】
なお、実施例及び比較例において、蒸留性状はJIS K2254、密度はJIS K2249、硫黄分はJIS K2541に準拠して測定した。また、沸点150℃未満の留分のアロマ量はJIS K2536(全組成分析)に準拠して、沸点150℃以上の留分のアロマ量はJPI−5S−49−97(石油製品−炭化水素タイプ試験法)に準拠して測定を行ない、全アロマ量は沸点150℃未満の留分中のアロマ量と150℃以上の留分中のアロマ量とを合計して求めた。
【0032】
【表1】

【0033】
(実施例1)
原料炭化水素油として留分Eを用い、Co−Mo系触媒(アルミナ担体にコバルト2.4質量%、モリブデン15.3質量%を担持した、表面積が199m/gである触媒)を50cc充填した内径25mm×長さ1080mmの反応器において、水素純度:100%、圧力:5MPa、温度:290〜350℃、H/油比:200Nm/kL、LHSV:2.0h−1の反応条件下、下向並流式で炭化水素油の水素化処理を行ない、精製炭化水素油を製造した。得られた精製炭化水素油について、ガス分(H、炭素数4以下)を分離した後、常圧蒸留装置で沸点が150℃未満の留分と、沸点が150℃以上の留分とに分離した。分離した各留分のそれぞれについて収率、アロマ量、硫黄分の量などを求めた結果を表2に示す。
【0034】
(実施例2,3,5)
原料炭化水素油として、ナフサAと灯油Dとを67:33(容量比)で混合したもの(実施例2)、ナフサBと灯油Dとを67:33(容量比)で混合したもの(実施例3)、ナフサCと灯油Dとを67:33(容量比)で混合したもの(実施例5)を用いた以外は実施例1と同様にして精製炭化水素油を製造し、製造した精製炭化水素油から沸点が150℃未満の留分と沸点が150℃以上の留分を分離した。分離した各留分のそれぞれについて収率、アロマ量、硫黄分の量などを求めた結果を表2に示す。
【0035】
(実施例4)
LHSVを3.0h−1に変更した以外は実施例3と同様にして精製炭化水素油を製造し、製造した精製炭化水素油から沸点が150℃未満の留分と沸点が150℃以上の留分を分離した。分離した各留分のそれぞれについて収率、アロマ量、硫黄分の量などを求めた結果を表2に示す。
【0036】
(比較例1〜3)
原料炭化水素油として、ナフサA(比較例1)、ナフサB(比較例2)、ナフサC(比較例3)を用いた以外は実施例1と同様にして精製炭化水素油を製造した。得られた精製炭化水素油についてアロマ量、硫黄分の量などを求めた結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
ここで、図1に、実施例1、4及び比較例1における、原料炭化水素油中の沸点150℃未満の留分のアロマ量(A)に対する精製炭化水素油中の沸点150℃未満の留分のアロマ量(C)の比率(C/A)に対し、水素化処理の反応温度が与える影響を示す。図1より、比較例1では反応温度の上昇に伴い、C/A値が著しく減少していく(水素化処理中に沸点150℃未満の留分中のアロマ量が減っていく)のに対し、実施例1,4ではC/A値の減少が抑制されていることがわかる。なお、図1中において、実施例4のC/A値が1.0を超えることがあるのは、収率計算時の補正または水素化処理の間に重質留分に含まれていたアロマ分が軽質化し、沸点150℃未満の留分へと移ったことによるものであると推察される。
【0039】
また、表2の、実施例2と比較例1、実施例3と比較例2、および実施例5と比較例3より、10容量%留出温度が50〜95℃、97容量%留出温度が220〜300℃の蒸留性状を有する炭化水素油であって、該炭化水素油中の全アロマ量に対する沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量の比率が0.3〜0.9である原料炭化水素油を水素化処理して精製炭化水素油とすれば、沸点150℃未満の留分中のアロマ量の低減を抑制可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】沸点150℃未満の留分のアロマ量に対し、水素化処理の反応温度が与える影響を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10容量%留出温度が50〜95℃、97容量%留出温度が220〜300℃の蒸留性状を有する炭化水素油であって、該炭化水素油中の全アロマ量に対する沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量の比率が0.3〜0.9である原料炭化水素油を水素化処理して精製炭化水素油とする、精製炭化水素油の製造方法。
【請求項2】
前記原料炭化水素油の沸点150℃未満の留出量が50〜90容量%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法を用いて製造した精製炭化水素油であって、
前記原料炭化水素油中の沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量に対する前記精製炭化水素油中の沸点150℃未満の留分に含まれるアロマ量の比率が0.8以上、
及び/または、
前記原料炭化水素油中の沸点150℃以上の留分に含まれるアロマ量に対する前記精製炭化水素油中の沸点150℃以上の留分に含まれるアロマ量の比率が0.6以上である、
精製炭化水素油。

【図1】
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【公開番号】特開2010−111768(P2010−111768A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285632(P2008−285632)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】