説明

精製粘土製造方法、粘土鉱物分散液凍結体および精製粘土製造システム

【課題】効率的に、粘土鉱物の水分散液から粘土鉱物を濃縮することのできる、しかも実用性の高い、精製粘土製造方法、粘土鉱物分散液凍結体および精製粘土製造システムを提供する。
【解決手段】精製粘土製造方法は、粘土鉱物分散液1を凍結する凍結工程P1と、凍結工程P1により得られる凍結体2を融解する融解工程P2と、融解した粘土鉱物分散液3から粘土鉱物凝集物5を分離する分離工程P3とを備えて構成される。融解工程P2は、凍結体2を室温に静置するのみでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精製粘土製造方法、粘土鉱物分散液凍結体および精製粘土製造システムに係り、特に、従来よりも効率的に粘土鉱物の水分散液から水分を分離して粘土鉱物を濃縮することの可能な、精製粘土製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
精製粘土は従来、粘土鉱物を多く含む鉱物であるベントナイトを原料として、(i)水分散・水簸工程、(ii)得られた粘土分散液からの脱水・濃縮工程、(iii)粘土濃縮液の乾燥・粉砕工程を経ることにより、得られている。
図6は、従来の精製粘土製造方法を示す説明図である。図示するように、上記(ii)の脱水・濃縮工程は従来、遠心分離機を用いた適切な条件での遠心分離により粘土成分を沈降させて固液分離する方法、あるいは加熱濃縮によって行われている。
【0003】
なお、精製粘土についてはこれまで、複数の技術的取り組みもなされている。このうち後掲特許文献1に開示されているものは、高濃度、均質かつ分散性に優れた粘土含有ペーストを得るために、粘土を含有する水分散液を加熱して、10.5〜25.0重量%まで濃縮した粘土ペーストとする技術である。
【0004】
また特許文献2に開示されているものは、均質かつ高強度の粘土多孔体を得ることをも目的として、粘土を含有する水性分散液を加熱濃縮して固形分含有率が60重量%以下の水性濃縮化物を得、これを急速凍結し、その後凍結乾燥する技術である。
【0005】
また非特許文献1には、ベントナイト懸濁液を濃縮分離する方法として、凍結濃縮分離操作を行い、その際に超音波照射によって凍結界面を乱すことによって分離効率を高めることを目的とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−314538号公報「粘土含有ペーストの製造方法」
【特許文献2】特開平9−315877号公報「粘土多孔体の製造方法」
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】川崎健二・太田浩行・他、「超音波照射を利用した凍結濃縮分離操作のベントナイト懸濁液への適用性」,化学工学論文集,第35巻,第1号,pp133−137,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、粘土の粒子は数ミクロン以下である。したがって、図6にて示した従来の遠心分離法では、大量の水を用いて高回転数・長時間の運転による分離工程を実施する必要があるため、多大なエネルギーを消費することとなる。また、上述の各特許文献に開示された技術を含め、加熱濃縮法についても同様であり、水の気化熱のためには大きなエネルギーを必要とすることとなる。
【0009】
さらに粘土分散液は、粘稠性が強い上に粘土の止水作用も加わるため、濾別による分離も相当困難である。遠心分離装置等の投資コストが非常に高価になることとも相俟って、粘土分散液の有効な濃縮・脱水技術の開発が求められている現状である。
【0010】
なお、上述の非特許文献開示技術は、凍結濃縮分離操作において凍結速度を高める場合の分離効率向上のために、超音波照射を用いるというものである。したがって、粘土分散液から精製粘土を濃縮・脱水する技術、殊に高い実用性の求められる技術という観点からは、適した技術であるとはいえない。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点や状況を踏まえ、従来よりも効率的に、粘土鉱物の水分散液から粘土鉱物を濃縮することのできる、しかも実用性の高い、精製粘土製造方法、粘土鉱物分散液凍結体および精製粘土製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者は、粘土水分散液からの効率的な脱水方法を探索する中で、水分散液中の粘土鉱物が、分散液の凍結時に特徴的な挙動を見せることを見出した。そしてかかる知見に基づき、粘土鉱物の水分散液を冷却して凍結することにより分散液中の粘土鉱物と水分を分離し、さらに分離状態を維持したままこれを融解することによって簡易に粘土成分を濃縮する方法を開発するに至り、上述課題の解決手段としての本発明を完成した。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0013】
〔1〕 粘土鉱物分散液を凍結する凍結工程と、該凍結工程により得られる凍結体を融解する融解工程と、融解した粘土鉱物分散液から粘土鉱物凝集物を分離する分離工程とからなる、精製粘土製造方法。
〔2〕 粘土鉱物分散液を凍結する凍結工程と、該凍結工程により得られる凍結体を融解する融解工程と、融解した粘土鉱物分散液から粘土鉱物凝集物を分離する分離工程とからなり、各工程は一度のみ実施されることを特徴とする、精製粘土製造方法。
〔3〕 前記融解工程は前記凍結体を融解可能な温度に静置する工程であり、前記分離工程は該融解工程における静置をそのまま継続して前記粘土鉱物凝集物の自然沈降を得る工程であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の精製粘土製造方法。
〔4〕 前記凍結工程は、前記粘土鉱物分散液を最低温度が−20℃以下の温度条件にて凍結処理する工程であることを特徴とする、〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の精製粘土製造方法。
【0014】
〔5〕 前記凍結工程は、前記粘土鉱物分散液を最低温度を−20℃以下の一定温度条件に設定した冷凍庫中に置いて凍結処理する工程であることを特徴とする、〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の精製粘土製造方法。
〔6〕 前記粘土鉱物分散液の分散媒は水または水溶液であることを特徴とする、〔1〕ないし〔5〕のいずれかに記載の精製粘土製造方法。
〔7〕 前記粘土鉱物分散液の分散媒は、ナトリウム塩またはその他の粘土鉱物凝集を補助する凝集補助物質の添加された水または水溶液であることを特徴とする、〔1〕ないし〔5〕のいずれかに記載の精製粘土製造方法。
【0015】
〔8〕 原料鉱物としてベントナイトを用いることを特徴とする、〔1〕ないし〔7〕のいずれかに記載の精製粘土製造方法。
〔9〕 粘土鉱物分散液が凍結されて、粘土鉱物粒子の凝集物が内部に形成されている、粘土鉱物分散液凍結体。
〔10〕 粘土鉱物を分散媒に分散して水簸する水簸部と、該水簸部での処理により得られる粘土鉱物分散液を濃縮する濃縮部とを備えてなる精製粘土製造システムであって、該濃縮部には該粘土鉱物分散液の凍結処理を可能とするための凍結手段が設けられている、精製粘土製造システム。
【発明の効果】
【0016】
本発明の精製粘土製造方法、粘土鉱物分散液凍結体および精製粘土製造システムは上述のように構成されるため、これによれば、従来よりも効率的に粘土鉱物の水分散液から粘土鉱物を濃縮することができる。しかも本発明は、極めて簡素でありながら高い効果が得られる技術であり、エネルギーの大量消費や高額な投資コストも不要であるため、小規模の事業体においても導入が容易であり、実用性が高い。なお、径1μm以下の微細な粘土粒子の場合は、従来の遠心分離法では分散媒との分離が困難であったところ、本発明によれば容易に固液分離することができる。したがって本発明製造方法は、粘土精製に適した方法である。
【0017】
現在、精製粘土鉱物の多くは、農薬基材や化粧品、触媒などとして用いられているが、様々な有機物や無機物と複合化させることによる新規機能性ナノコンポジット材料の原料としても期待されており、今後の材料開発と共に需要が増すものと考えられている。
【0018】
モンモリロナイトは、精製粘土として得られる粘土鉱物の代表例であるが、精製粘土は高価であり(原材料の数百倍の価格)、従来このことが、需要の拡大を阻む一因となってきた。しかし、本発明によれば、精製粘土製造プロセスの省エネルギー化によって、新たな精製粘土製造法を提供できるとともに、精製粘土の低価格化も実現でき、それによる精製粘土需要の増加に貢献する効果を、大いに期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の精製粘土製造方法の基本構成を示すフロー図である。
【図2】本発明の精製粘土製造方法例を示すフロー図である。
【図3】図2に示す製造方法による粘土鉱物分離状態を示す写真である。
【図4】本発明の精製粘土製造システムの基本構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の精製粘土製造システムの例を示す説明図である。
【図6】従来の精製粘土製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明について、さらに詳細に説明する。
図1は、本発明の精製粘土製造方法の基本構成を示すフロー図である。図示するように本製法は、粘土鉱物分散液1を凍結する凍結工程P1と、凍結工程P1により得られる凍結体2を融解する融解工程P2と、融解した粘土鉱物分散液3から粘土鉱物凝集物5を分離する分離工程P3とを備えて、基本的に構成される。
【0021】
かかる構成により本製法によれば、まず凍結工程P1において、粘土鉱物分散液1が凍結処理されて凍結体2が得られ、ついで融解工程P2において、凍結体2が融解されて融解した粘土鉱物分散液3が得られ、ついで分離工程P3において、融解した粘土鉱物分散液3から粘土鉱物凝集物5が分離される。
【0022】
図において、各工程P1〜P3は、これを適宜回数繰り返し実施してもよいが、一度のみ実施することとしてもよい。工程を繰り返すことで、得られる粘土鉱物凝集物における粘土鉱物の精製度をより一層高めることができるが、一度のみの実施でも一定の十分な精製度を得ることができるからである。
【0023】
図において、融解工程P2は、凍結体2を融解可能な温度に静置する工程とし、また分離工程P3は、融解工程P2における静置をそのまま継続して粘土鉱物凝集物5の自然沈降を得る工程とすることができる。つまり融解工程P2と分離工程P3とは、そこで為される処理としては同一であるので、連続した一つの過程と把握することもできる。各工程をこのようなものにすることにより、室温などの融解可能な程度の温度や、ただ静置することによる自然沈降という極めて簡単な条件によって本製法を遂行でき、精製粘土鉱物の製造を得ることができる。
【0024】
なお、分散液に対して振動を与えたり撹拌がなされることがない限りは、融解工程P2において、凍結体2の融解をより促進させるような温度条件あるいは圧力条件等を用いたり、あるいはまた分離工程P3において、静置による自然沈降ではなく、遠心分離その他の適宜の分離方法を用いることとしてもよい。これらの場合であっても、本発明の範囲内である。
【0025】
本精製粘土製造方法においては、凍結工程P1における温度条件は特に限定されず、粘土鉱物分散液1を凍結可能な条件であれば、温度帯、降温速度、所定温度もしくは温度帯の維持時間などの温度条件は、どのようにも設定することができる。しかしながら、凍結工程P1を特に、粘土鉱物分散液1を最低温度が−5℃以下の温度条件にて凍結処理する工程としてもよい。あるいはまた、−20℃以下の温度条件にて凍結処理する工程としてもよい。このように、比較的おだやかな凍結条件としても、また、より凍結速度の速い凍結条件としてもよい。
【0026】
要するに本発明製造方法に係る凍結工程P1においては、分散媒の凝固点以下の温度条件によって粘土鉱物分散液1の凍結処理がなされるのであれば、具体的な条件には限定されず、いかなる条件でも用いることができる。本製造方法を円滑に進めるための一つの推奨例を挙げれば、最低温度が−20℃以下であるところのある一定温度に設定された冷凍庫を用い、この中に粘土鉱物分散液1を置いて凍結処理する、という方法を採ることができる。
【0027】
なお、粘土鉱物分散液1の分散媒としては、凍結工程P1に供するにあたって凝固点が低すぎず、かつ粘土鉱物を良好に分散できるものであれば特に限定されない。したがって分散媒としては、水または水溶液を用いることで、十分足りる。これらが実用的かつ簡便であるとともに、本発明の効果を充分に得ることができるからである。
【0028】
また、粘土鉱物分散液1の分散媒としては特に、ナトリウム塩、その他の無機電解質、もしくはアルコール、またはその他の粘土鉱物凝集を補助する凝集補助物質が添加された水もしくは水溶液を用いるものとしてもよい。このような凝集補助物質が分散媒に添加されていることによって、凍結工程P1および融解工程P2を経て得られる粘土鉱物凝集物5の生成を促進することができる。
【0029】
なお本発明製造方法における粘土鉱物分散液1の原料鉱物としては、水膨潤性粘土鉱物全般を用いることができる。たとえばベントナイトや、モンモリロナイト・サポナイト・ヘクトライト・ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物を原料鉱物として用いてもよい。
【0030】
ところで、本製法の凍結工程P1によって粘土鉱物分散液1が凍結されて得られる凍結体2は、粘土鉱物粒子の凝集物が内部に形成された状態の粘土鉱物分散液凍結体である。これは、凍結体の状態で冷凍庫に保蔵しておき、必要時に融解工程P2以降の工程に供するものとしてもよい。
【0031】
図2は、本発明の精製粘土製造方法例を示すフロー図であり、原料としてベントナイトを用いた例である。図示するように、まず原料ベントナイトを水分散・水簸工程に供する。つまりベントナイトを水中に分散させて静置する(水簸)。これによって不純物を沈降させ、除去し、上澄みを分離してこれを粘土分散液として、本願が提供する新しい脱水・濃縮工程たる、上述の各工程に供する。
【0032】
凍結工程にて粘土分散液を凍結させると、粘土粒子同士が凝集して水と分離し、氷の中にフレーク状の粗大粒子、つまり粘土鉱物凝集物が形成された状態となる。この粘土鉱物凝集物を撹拌せずに緩やかに融解させる(融解工程)と、粘土粒子の粘土鉱物凝集物としての凝集状態を保持させながら、簡単に自然沈降させて分散媒と分離することが可能である(分離工程)。このように本発明製法による脱水・濃縮工程、すなわち凍結工程−融解工程−分離工程によれば、従来の遠心分離法などと比較して、低エネルギーかつ低コストにて粘土分散液を濃縮し、精製粘土を製造することが可能である。
【0033】
この現象は、元々の粘土粒子径にはよらないため、従来の遠心分離法では分離が困難な径1μm以下の微細な粘土であっても、凝集状態においては重力加速度環境で簡易に沈殿させて、固液分離を促進することが可能である。以上の脱水・濃縮工程によって固液分離状態となった粘土鉱物凝集物は、最終的には乾燥・粉砕工程によって乾燥・粉砕されて、精製粘土が得られる。
【0034】
図3は、図2に示す製造方法による粘土鉱物分離状態を示す写真である。なお、図の左側のものは精製粘土水分散液の状態を示し、右側のものは分離後の状態を示す。図示するように、本発明製造方法を経ることによって、粘土鉱物の沈殿を良好に得ることが可能である。実際、一回のみの凍結・融解操作により、粘土鉱物分散液の70〜90%程の水分を分離することが可能である。
【0035】
図4は、本発明の精製粘土製造システムの基本構成を示すブロック図である。図示するように本システムS100は基本的に、粘土鉱物を分散媒に分散して水簸する水簸部50と、水簸部50での処理により得られる粘土鉱物分散液を濃縮する濃縮部80とを備えていて、濃縮部80にはさらに、粘土鉱物分散液の凍結処理を可能とするための凍結手段88が設けられていることを、主たる構成とする。
【0036】
かかる構成により本精製粘土製造システムS100では、水簸部50において粘土鉱物が分散媒に分散されて水簸され、水簸処理により得られる粘土鉱物分散液は、濃縮部80において、温度調節手段88を用いた凍結処理がなされ、さらにその後の融解処理の過程を経ることによって、粘土鉱物の濃縮がなされる。すなわち、分散媒と粘土とが分離されて精製粘土が得られる。このように分離された精製粘土は、乾燥処理、粉末化処理など適宜の後処理がなされて、最終的に乾燥状態の精製粘土製品が得られる。
【0037】
図5は、本発明の精製粘土製造システムの例を示す説明図である。図示するように、水簸部は水簸槽とし、ここで得られる粘土鉱物分散液はポンプで汲み上げ、これを濃縮部を構成する凍結手段たる製氷機に供して凍結体とし、凍結体は同じく濃縮部を構成する濃縮槽に収容してそのまま静置し、自然な融解に任せる。凍結体を構成していた粘土鉱物からなる凝集体と分散媒とは、融解によって分離し、粘土鉱物の凝集体は自然沈降する。沈降した粘土鉱物の凝集体を、適宜の手段にて乾燥処理等することにより、最終的な乾燥状態の精製粘土製品が得られる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によってさらに説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
ベントナイト(日本砿研製、津軽2号)50gを5Lの純水に懸濁させ、24時間静置した。その後、沈殿物を除去し、残った懸濁液を乾燥、粉砕することでモンモリロナイト粉末10.2gを得た。このモンモリロナイト粉末を純水に懸濁し、1wt%モンモリロナイト分散液を1L得た。
【0039】
1wt%モンモリロナイト分散液10mLをポリプロピレン製チューブに採り、−20℃に保持した冷凍庫内で凍結させた。凍結後、冷凍庫から凍結した分散液を取り出し、チューブに入った状態のまま、室温(約20℃)に保持することで融解させた。
【0040】
融解時に沈殿したモンモリロナイトの嵩を図り取ったところ、1.3mLであった。この結果、上澄みとして8.7mLの水分が分離された。上澄みの濁度(波長660nmにおける吸光度により測定し、濃度既知のモンモリロナイト分散液を用いて検量線を作成した。)から、モンモリロナイトの残存分析したところ、上澄み中におけるモンモリロナイトは0.23wt%であった。
【0041】
<実施例2>
実施例1で得られたモンモリロナイト粉末を純水に懸濁させ、1wt%モンモリロナイト分散液を1L得た。この分散液に10mmol・dm−3になるよう塩化ナトリウム粉末を添加し、溶解させた。その後、得られた分散液10mLをポリプロピレン製チューブに採り、実施例1と同様に−20℃に保持した冷凍庫内で凍結させた。凍結後、冷凍庫から凍結した分散液を取り出し、チューブに入った状態のまま、室温(約20℃)に保持することで融解させた。
【0042】
融解時に沈殿したモンモリロナイトの嵩を図り取ったところ、0.6mLであった。結果として9.4mLの水分を分離することができた。実施例1と同様に、上澄みの濁度を測定した結果、上澄みからはモンモリロナイト由来の濁りは検出できず、ほぼ全てが沈殿物として得られていることがわかった。
【0043】
<実施例3>
実施例2と同様にして、1wt%モンモリロナイト分散液1Lに20mmol・dm−3になるよう炭酸ナトリウムを添加した。その後、得られた分散液10mLをポリプロピレン製チューブに採り、−20℃に保持した冷凍庫内で凍結させた。凍結後、冷凍庫から凍結した分散液を取り出し、チューブに入った状態のまま、室温(約20℃)に保持することで融解させた。融解時に沈殿したモンモリロナイトの嵩を図り取ったところ、1.1mLであった。結果として8.9mLの水分を分離することができた。実施例1と同様に、上澄みの濁度を測定した結果、上澄みからはモンモリロナイト由来の濁りは検出できず、ほぼ全てが沈殿物として得られていた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の精製粘土製造方法、粘土鉱物分散液凍結体および精製粘土製造システムによれば、従来よりも簡易かつ効率的に粘土鉱物の水分散液から粘土鉱物を濃縮することができ、エネルギーの大量消費や高額な投資コストも不要であるため、導入しやすく、実用性が高い。
【0045】
また精製粘土は、農薬基材・化粧品・触媒等の従来の需要に加え、新規機能性ナノコンポジット材料の原料としても期待されているが、本発明により精製粘土の低価格化が実現されることにより、かかる精製粘土の需要拡大促進が見込まれる。したがって本発明は、無機・有機材料全般、環境関連産業、エネルギー産業、土石分野の産業、その他広範な産業分野において、利用性の高い発明である。
【符号の説明】
【0046】
1…粘土鉱物分散液
2…凍結体
3…融解した粘土鉱物分散液
5…粘土鉱物凝集物
P1…凍結工程
P2…融解工程
P3…分離工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土鉱物分散液を凍結する凍結工程と、該凍結工程により得られる凍結体を融解する融解工程と、融解した粘土鉱物分散液から粘土鉱物凝集物を分離する分離工程とからなる、精製粘土製造方法。
【請求項2】
粘土鉱物分散液を凍結する凍結工程と、該凍結工程により得られる凍結体を融解する融解工程と、融解した粘土鉱物分散液から粘土鉱物凝集物を分離する分離工程とからなり、各工程は一度のみ実施されることを特徴とする、精製粘土製造方法。
【請求項3】
前記融解工程は前記凍結体を融解可能な温度に静置する工程であり、前記分離工程は該融解工程における静置をそのまま継続して前記粘土鉱物凝集物の自然沈降を得る工程であることを特徴とする、請求項1または2に記載の精製粘土製造方法。
【請求項4】
前記凍結工程は、前記粘土鉱物分散液を最低温度が−20℃以下の温度条件にて凍結処理する工程であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の精製粘土製造方法。
【請求項5】
前記凍結工程は、前記粘土鉱物分散液を最低温度を−20℃以下の一定温度条件に設定した冷凍庫中に置いて凍結処理する工程であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の精製粘土製造方法。
【請求項6】
前記粘土鉱物分散液の分散媒は水または水溶液であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の精製粘土製造方法。
【請求項7】
前記粘土鉱物分散液の分散媒は、ナトリウム塩またはその他の粘土鉱物凝集を補助する凝集補助物質の添加された水または水溶液であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の精製粘土製造方法。
【請求項8】
原料鉱物としてベントナイトを用いることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の精製粘土製造方法。
【請求項9】
粘土鉱物分散液が凍結されて、粘土鉱物粒子の凝集物が内部に形成されている、粘土鉱物分散液凍結体。
【請求項10】
粘土鉱物を分散媒に分散して水簸する水簸部と、該水簸部での処理により得られる粘土鉱物分散液を濃縮する濃縮部とを備えてなる精製粘土製造システムであって、該濃縮部には該粘土鉱物分散液の凍結処理を可能とするための凍結手段が設けられている、精製粘土製造システム。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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