説明

糖衣した食品

【課題】食品としておいしさを十分に兼ね備え、かつ光又は酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質の安定化も兼ね備えた新しい糖衣した食品を提供すること。
【解決手段】中心層が光又は酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質を含んだ油脂性食品であって、該中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を有し、かつ該糖衣層の主成分が砂糖からなり、該糖衣層が砂糖の層とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、砂糖の層が結晶形態を有し、その結晶粒径が5〜15μmの範囲であることを特徴とする糖衣した食品。前記脂溶性機能性物質は還元型コエンザイムQ10、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)からなる群より選択される少なくとも1種類であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品としてのおいしさと機能性を併せ持った糖衣した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康ブームといわれはじめて久しいが、最近ではメタボリック症候群検診といった健康診断項目も増えたこともあって、さらに健康ブームに拍車を掛ける世の中になってきている。アメリカでは医療費が高額であることも手伝って、健康食品の市場は大なるものである。一方、日本においても健康食品のニーズは高まり、通販事業をはじめ市場規模を拡大している現状である。しかし、一般スーパーをはじめとした小売り業態では、まだまだ売り場を獲得しているとは言えない。これは、食品という概念から、おいしさといった嗜好面で未だ満足しうる商品が存在しないからだと考えられる。
【0003】
一方、食品の中において嗜好品として形成されてきた市場は、菓子市場である。その中においてももっとも市場規模の大きいカテゴリーは、チョコレート類である。このチョコレート市場は現在4000億円規模とも言われている。近年、このチョコレート市場において、おいしさに加え機能性を付与した商品が注目されている。例えば、チョコレートの中に含まれるポリフェノールに着目した高カカオ含有チョコレートが各チョコレートメーカーから商品化されていることは周知の事実である。さらには、γ−アミノ酪酸(GABA)を有効成分とし、カカオ由来の原料を含むことを特徴とするリラックス効果を有するチョコレートも提案されている(特許文献1)。また、基本菓子成分と、キャリアボディに各種活性成分を添加した付加的菓子成分とからなる菓子が提案されている(特許文献2)。また、手軽に菓子のように摂取するため油脂性食品が基食材内部に含浸され機能的栄養成分を含有する食品も提案もなされている(特許文献3)。これらは一般的に光、酸素による影響を受けにくい比較的安定な機能性物質が含有されているか、もしくは機能性物質の保護が十分に考慮されていない菓子である。
【0004】
また、光、酸素により酸化されやすい機能性物質の安定性を高める試みは、サプリメントや医薬品などにおいて多数研究がなされてきた。その機能性物質の中でも、特に還元型コエンザイムQ10は光や酸素により酸化されやすいことはよく知られており、様々な安定化方法が提案されている。例えば、アスコルビン酸塩と共存させる方法(特許文献4)、クエン酸と共存させる方法(特許文献5)などがあげられる。これらは、主に還元型コエンザイムQ10を安定的に得るための方法であり、いずれも還元型コエンザイムQ10と共存させることで得られる手段である。さらに、同様に酸化されやすい機能性物質として知られるドコサヘキサエン酸(DHA)類の安定化として南天の葉抽出エキス及びビタミンCと共存させる方法も提案されている(特許文献6)。これも同様に抗酸化効果を持つ物質とドコサヘキサエン酸を共存させることによって得られる方法である。
【0005】
一方、コーティング技術によって機能性物質の保護を試みる研究も多数なされてきた。中でもよく知られる技術としてはフィルムコーティングがあげられる。例えば、コーティング性と酸素遮断性が良好なフィルムコーティングが提案されている(特許文献7)。また、その中でももっとも酸素遮断性が良好な物質として水溶性ヘミロースのコーティング方法が提案されている(特許文献8)。これらのフィルムコーティングは酸素遮断性に優れるというメリットがあり、例えば色素を添加すれば光の影響も受けにくくなるというメリットがある。しかし、一般的に口解けが悪く、食品としておいしさには欠けるという面では大きな課題が残る。
【0006】
また、コーティングによる還元型コエンザイムQ10の安定化においても報告がなされている(特許文献9)。これは、還元型コエンザイムQ10を含む固形製剤が、水溶性媒体や油溶性媒体で被覆されているものであるが、構造上の特徴や糖衣率に対する記述もない。被覆する固形製剤に関しても、公知の製剤化方法に従って作られる剤形であり、好ましい形態としてはチュアブル錠等があげられる。
【0007】
また、機能性物質と糖衣食品としてのおいしさを持ち合わせた研究もなされてきた。アスコルビン酸含有食品添加用糖衣物とし粒状還元パラチノースを被覆したものが提案されている(特許文献10)。アスコルビン酸の変化を生じにくくさせカリカリとした軽い歯ざわりを併せ持つという特徴を持つがアスコルビン酸のみの安定性ということにとどまっている。本発明者らは以前に、中心層が錠菓又は丸薬であり、該中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を有し、該砂糖層が砂糖の層とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、かつ該砂糖の層が結晶形態を有し、その結晶の平均粒径が5〜15μmの範囲内であることを特徴とする糖衣した食品を発明した。これは、かりっとした食感を有し、かつ程よい酸味が感じられる糖衣した食品であり食品としてのおいしさがあるが、中心層は錠菓または丸薬に限定されている上、機能性物質には触れられてはいなかった(特許文献11)。
【0008】
食品としておいしさを十分に兼ね備え、かつ光や酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質の安定化も兼ね備えた新しい糖衣した食品は未だかつて実現されていなかった。
【特許文献1】特開2005−34856号公報
【特許文献2】特表2004−500003号公報
【特許文献3】特開2008−237102号公報
【特許文献4】特許第3892881号公報
【特許文献5】特許第3790530号公報
【特許文献6】特許第347401号公報
【特許文献7】特開平8−59512号公報
【特許文献8】特許第3663494号公報
【特許文献9】国際公開第2006/075502号パンフレット
【特許文献10】特許第3562660号公報
【特許文献11】特許第3765419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情を鑑みて研究されたものであり、食品としておいしさを十分に兼ね備え、かつ光又は酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質の安定化も兼ね備えた新しい糖衣した食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、前記特許文献10に記載の方法に基づき、中心層を光や酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質が含有された油脂性食品とし、さらに砂糖層とビタミンCの層で交互に重なり合った多層糖衣構造を形成し、また、中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を形成させることによって、光や酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質の安定化を実現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明の要旨は、
(1)中心層が光又は酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質を含んだ油脂性食品であって、該中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を有し、かつ該糖衣層の主成分が砂糖からなり、該糖衣層が砂糖の層とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、砂糖の層が結晶形態を有し、その結晶粒径が5〜15μmの範囲であることを特徴とする糖衣した食品、
(2)前記脂溶性機能性物質が、還元型コエンザイムQ10、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)から選択される少なくとも1種である前記(1)に記載の糖衣した食品、
(3)前記油脂性食品がチョコレートである前記(1)又は(2)に記載の糖衣した食品
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、光又は酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質を含んだ糖衣食品を提供することができる。
また、本発明の糖衣食品は、前記光又は酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質を酸化させずに含有させることが可能であり、前記機能性物質由来の特性を備えたものである。
中でも、前記脂溶性機能性物質として、還元型コエンザイムQ10、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を使用することができる。これらの機能性物質は、油脂性食品と共に摂取されるため、体内への吸収率が高まることで、それぞれの機能を効率よく発揮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、食品としてのおいしさと機能性を併せ持った糖衣した食品を得るために、中心層が光又は酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質を含んだ油脂性食品であって、該中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を有し、かつ該糖衣層の主成分が砂糖からなり、該糖衣層が砂糖の層とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、砂糖の層が結晶形態を有し、その結晶粒径が5〜15μmの範囲にコントロールすることを特徴とする。中心層において光又は酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質を油脂性食品中に含有させ、次いで、その表面に砂糖層とビタミンCの層とを交互に重なり合わせた多層の糖衣層を形成することで、中心層中の前記脂溶性機能性物質を劣化させることなく、保持することができる。また、糖衣層が砂糖層とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成されるため、かりっとした食感を有し、かつ程よい酸味が感じられるおいしさをもった食品となる。
【0014】
本発明の糖衣菓子の光又は酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質とは、脂溶性で経口摂取できる機能性物質として公知のものをいずれも用いることができ、サプリメント成分として公知のものが好ましい。本発明で用いる脂溶性機能性物質としては、以下の例示に限定されるものでないが、例えば、還元型コエンザイムQ10、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、リノール酸、γリノレン酸、αリノレン酸、ビタミンEなどあげられる。特に、サプリメントとして効果が注目されている還元型コエンザイムQ10、EPA及びDHAが望ましい。
【0015】
本発明で使用する還元型コエンザイムQ10とは、特開平10−109933号公報に記載されているように、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法より、酸化型コエンザイムQ10と還元型コエンザイムQ10の混合物を得た後、クロマトグラフィーをもちいて、流出液中の還元型コエンザイムQ10区分を濃縮する方法等により製造される。この場合には、上記還元型コエンザイムQ10中に残存する酸化型コエンザイムQ10を、水酸化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム等の一般的な還元剤を用いて還元した後、クロマトグラフィーによる濃縮を行ったものを使用してもよい。
また、既存の高純度コエンザイムQ10に上記還元剤を作用させて得た還元型コエンザイムQ10も使用できる。好ましくは既存の高純度コエンザイムQ10等の酸化型コエンザイムQ10、或いは酸化型コエンザイムQ10と還元型コエンザイムQ10の混合物を、アスコルビン酸塩類を用いて還元することにより得られたものも使用できる。
【0016】
本発明で使用するEPAは、遊離の脂肪酸またはEPA含有トリグリセライド、ジグリセライドもしくはモノグリセライドあるいはエステルである。また、本発明で使用するEPAは塩、例えば、アルカリ塩の形でも使用することができる。通常市販のEPAもしくはその塩、トリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライドまたは公知の方法で魚油等から精製したものを使用することが望ましい。
【0017】
本発明で使用するDHAは、イワシ、サバ、カツオ、マグロ等の魚から得られる魚油が例示され、特に、カツオ、マグロの頭部から採取したものは、多量のDHAを含有する魚油として好ましく例示することができる。これらの魚油はそのままで使用することもできるが、公知の方法で精製されたDHA高含有魚油を使用することが望ましい。
【0018】
本発明で用いる油脂性食品とは、油脂を主成分とし常温で固体状であり、加温により溶融状態となり、冷却により固化するものであればよく、特に限定はない。上記油脂としては特に制限されないが、例えば、動植物から天然油脂であってもよく、合成油脂や加工油脂であってもよい。より好ましくは食品に許容されるものである。植物油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、パーム油、アマニ油、菜種油、コーン油、大豆油、ゴマ油、ひまわり種子油、オリーブ油等をあげることができる。動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚脂、牛脂等をあげることができる。さらに、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば硬化油)もあげることができる。また、これらの混合物を使用してもよい。上記油脂を含んだ油脂性食品として、食品のおいしさの面からは特に、チョコレート、バター、またはファットスプレッドが好ましく、中でも主成分がチョコレートであることがより好ましい。本発明においてチョコレートとは、チョコレート利用食品の規格によるチョコレートのみを意味するものではなく、常温で固体状であり、加温により溶融状態となり、冷却により固化する、チョコレート類或いはチョコレート類似食品や硬化油脂をいずれも含有する。例えば、チョコレート類、ミルクチョコレート類、ホワイトチョコレートル類、香料等により各種風味を有するチョコレート類などをいずれも好適に用いることができる。また、テンパリングタイプ、ノーテンパリングタイプであることを問わない。
【0019】
また、本発明において、砂糖の層は、砂糖を溶解したシロップを用いて形成することができる。該シロップには、食感を阻害しない限り結合剤を使用することもできる。結合剤としては、アラビアガム、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、デキストリン、澱粉、ゼラチン、キサンタンガムが例示される。
更に、香気香味を付与するために香料や調味料、酸味料、甘味料などのその他添加物を添加することもできる。場合によっては最外層に着色料を添加した態様も本発明の範囲である。また、常法に従って表面をシェラック等の光沢剤を用いて、艶だしを行った態様も本発明の範囲である。
【0020】
本発明において糖衣に用いるビタミンCは、一般的に知られているビタミンCを用いればよく、粉末果汁等のビタミンCを多量に含有するものを用いてもよい。これらは単独でも2種以上併用してもよい。さらに、ビタミンCの粒度に特に制限はないが、325メッシュパス以下のものを使用することが望ましい。また、ビタミンCの量に関しては、目的のビタミンCの含有量に合わせて使用できるが、糖衣食品全量に対し0.1〜20重量%の添加量が好ましい。より好ましくは、0.5重量%〜1重量%の添加量である。ビタミンC添加量が0.1重量%未満であれば、ビタミンCの酸味、含有量が乏しくなり、本発明の効果は得られにくい。また、20重量%を超えれば、ビタミンCの酸味が強すぎるため、食するには不適切な糖衣菓子となる。
【0021】
本発明において、糖衣層は、中心層の表面に砂糖層とビタミンC層とが交互に形成されて構成されており、中心層に対してと糖衣層が重量で5倍以上であればよく、砂糖層とビタミンC層の数には特に限定はない。
【0022】
本発明の糖衣食品は、例えば、次の様に製造することができる。
本発明の油脂性食品中心層は、通常の油脂性食品と動揺にして製造できるが、上記還元型コエンザイムQ10、EPA及びDHAの添加は、油脂性食品を40℃以上に加温して融解させ、テンパリング処理直前に行うことが好ましい。還元型コエンザイムQ10、EPA及びDHAは、溶解した油脂性食品に添加して長時間保存すると、酸化安定性が著しく低下おそれがあるためである。テンパリング処理直前に添加し、テンパリング処理後、速やかに充填を行う。次いで、冷却、固化、デモールドを行い、光又は酸素により酸化され易い脂溶性機能性物質を含んだ油脂性食品を得る。この油脂性食品は、中心層となるものである。
本発明に用いる中心層は、前記脂溶性機能性物質を含有した油脂性食品であれば特に制限はなく、その形状も特に問われないが、球形に近い方が均一な糖衣に向いており好ましい。また、中心層の単重は0.1〜1.0g程度が望ましく、目的とする味や食感などにより適宜設定することができる。
【0023】
次いで、砂糖の水溶液(糖衣液)を用意し、レボーリングパンに入れておいた前記油脂性食品に均一にかかるように散布する。中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層にすることを考慮すれば、上記単重の範囲内が糖衣した食品としておいしく食すことができる範囲として好ましい。レボーリングパンの回転数は10〜50rpmで回転させながら操作を行う。
次に例えば温度5〜70℃、湿度35〜65%、風速3〜8m/秒程度の送風下で乾燥させる。
次いでビタミンC粉末を表面均一になるように散布する。ビタミンCを散布することで多層構造を形成し、カリッとしたクランチ性を有する食感となる。
上記作業を繰り返すことにより、砂糖とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、少なくとも中心層に対して5倍以上の糖衣層にしたときに初めて目的とする糖衣した食品を得ることができる。
【0024】
なお、本発明では、砂糖の結晶の平均粒径は、糖衣層の断面を電子顕微鏡により1000倍で観察し、任意に選択した5つの砂糖結晶の長辺と短辺の平均粒径とする。
【実施例】
【0025】
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中の数字は重量部、「%」は重量%を意味する。
【0026】
(実施例1)
「油脂性食品中心層の調製」
不二製油(株)製のミルクチョコレートEを40℃以上に加温して融解させ、脂溶性機能性物質として株式会社カネカ製還元型コエンザイムQ10(カネカQH)を、ミルクチョコレートと還元型コエンザイムQ10の合計量中0.5%となる量で添加後、テンパリング処理を行い即座に半球型のモールドに充填を行った。次いで、室温(20℃)にて冷却、固化、デモールドを行った。得られた半球型チョコレートの単重は0.20gであった。
【0027】
「糖衣液1の調製」
下記表1に示す組成の糖衣液1を調製した。糖度70%に調製し、25℃で温度保持した。なお、糖度とは100gの糖類の水溶液に含まれる糖分を百分率で示した値をいう。
【0028】
【表1】

【0029】
上記の油脂性食品中心層200gを糖衣用の回転釜に投入し、回転数15rpmで回転させながら、糖衣液1をかけて被覆し、糖衣層を形成した。中心重量に対して、2倍、3倍、4倍重量まで糖衣した各段階で粉末状のビタミンC(サイズは325メッシュ)を糖衣物総重量に対して1%、糖衣液1を投入後に散布し、25℃で乾燥する工程を繰り返し、砂糖の結晶粒径が5〜15μmになるようコントロールし多層になるように形成した。中心重量に対し、5倍の糖衣層を形成し単重1.2gの糖衣した食品を600g得た。得られた糖衣物は、糖衣層が砂糖層とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成されるため、かりっとした食感を有し、かつ程よい酸味が感じられるおいしさをもった糖衣した食品であった。
【0030】
(比較例1)
実施例1の糖衣工程においてビタミンCを全く添加しないほかは、実施例1と同様にして中心重量に対し5倍の糖衣層を形成し単重1.2gの糖衣した食品を600gの糖衣した食品を得た。得られた糖衣物は、砂糖層のみで形成されるため、かりっとした食感、酸味に乏しい糖衣した食品であった。
【0031】
(比較例2)
実施例1の糖衣工程においてビタミンCを1.2倍、1.4倍、1.6倍まで糖衣した各段階で粉末状のビタミンCを糖衣物総重量に対して1%、糖衣液1を投入後に散布し、25℃で乾燥する工程を繰り返し、2倍の糖衣層を形成し単重0.6gの糖衣した食品を600g得た。得られた糖衣物は、かりっとした食感に乏しい糖衣した食品であった。
【0032】
(実験例1)還元型コエンザイムQ10の保存安定試験
還元型コエンザイムQ10の含有量について試作直後、虐待試験を検証した結果、比較例1、2で得られた食品に比べて、実施例1で得られた糖衣した食品には残存率に優位性があり、還元型コエンザイムQ10の安定化も兼ね備えた糖衣食品であることがわかった。結果を表2に示す。なお、還元型コエンザイムQ10の含有量はHPLC分析で測定した。
【0033】
【表2】

【0034】
(実施例2)
「EPA含有油脂性食品中心層の調製」
不二製油(株)製のミルクチョコレートEを40℃以上に加温して融解させ、脂溶性機能性物質としてEPA製剤(EPA28:株式会社マルハニチロ社製)を、ミルクチョコレートとの合計量中0.5%となる量で添加後、テンパリング処理を行い即座に半球型のモールドに充填を行った。次いで、室温(20℃)にて冷却、固化、デモールドを行った。得られた半球型チョコレートの単重は0.20gであった。
【0035】
「糖衣液1の調製」
実施例1に示す糖衣液1を使用した。
上記の油脂性食品センター200gを糖衣用の回転釜に投入し、回転数15rpmで回転させながら、糖衣液1をかけて被覆し、糖衣層を形成した。中心重量に対して、2倍、3倍、4倍重量まで糖衣した各段階で粉末状のビタミンC(サイズは325メッシュ)を糖衣物総重量に対して1%、糖衣液1を投入後に散布し、25℃で乾燥する工程を繰り返し、砂糖の結晶粒径が5〜15μmになるようコントロールし多層になるように形成した。中心重量に対し、5倍の糖衣層を形成し単重1.2gの糖衣した食品を600g得た。得られた糖衣物は、糖衣層が砂糖層とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成されるため、かりっとした食感を有し、かつ程よい酸味が感じられるおいしさをもった糖衣した食品であった。
【0036】
(比較例3)
実施例2の糖衣工程においてビタミンCを全く添加しないほかは、実施例1と同様にして中心重量に対し5倍の糖衣層を形成し単重1.2gの糖衣した食品を600gの糖衣した食品を得た。得られた糖衣物は、砂糖層のみで形成されるため、かりっとした食感、酸味に乏しい糖衣した食品であった。
【0037】
(比較例4)
実施例2の糖衣工程においてビタミンCを1.2倍、1.4倍、1.6倍まで糖衣した各段階で粉末状のビタミンCを糖衣物総重量に対して1%、糖衣液1を投入後に散布し、25℃で乾燥する工程を繰り返し、中心重量に対し、2倍の糖衣層を形成し単重0.6gの糖衣した食品を600g得た。得られた糖衣物は、かりっとした食感に乏しい糖衣した食品であった。
【0038】
(実験例2)EPAの保存安定試験
EPAを含む食品として、問題となるのはEPAの劣化臭である。EPAの安定化度を確かめるため、時間の経過とともに発現する異味異臭を評価した。
比較例3、比較例4は時間の経過とともに不快な異味異臭の発生が認められた。実施例2に異味異臭の発生がほとんどなく、EPAの安定化も兼ね備えた糖衣した食品であることがわかった(表3)。
【0039】
− : 異味異臭の発生が認められない。
± : 異味異臭の発生がわずかに認められる。
+ : やや不快な異味異臭の発生が認められる。
【0040】
【表3】

【0041】
(実施例3)
「DHA含有油脂性食品中心層の調製」
不二製油(株)製のミルクチョコレートEを40℃以上に加温して融解させ、油溶性機能性物質としてDHA製剤(株式会社マルハニチロ食品社製:マグロ由来27%)を、ミルクチョコレートとの合計量中10.0%となる量で添加、攪拌し均一に融解したDHA含有率2.7%のチョコレート液を得た。後、半球型のモールドに流し込み室温(20℃)にて冷却、固化、デモールドを行った。
得られたDHA含有油脂性食品中心層の単重は0.20gであった。
【0042】
上記のDHA含有油脂性食品中心層200gを糖衣用の回転釜に投入し、回転数15rpmで回転させながら、糖衣液1をかけて被覆し、糖衣層を形成した。中心重量に対して、2倍、3倍、4倍重量まで糖衣した各段階で粉末状のビタミンC(サイズは325メッシュ)を糖衣物総重量に対して1%、糖衣液1を投入後に散布し、25℃で乾燥する工程を繰り返し、砂糖の結晶粒径が5〜15μmになるようコントロールし多層になるように形成した。中心重量に対し、5倍の糖衣層を形成し単重1.2gの糖衣した食品を600g得た。得られた糖衣物は、糖衣層が砂糖層とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成されるため、かりっとした食感を有し、かつ程よい酸味が感じられるおいしさをもった糖衣した食品であった。
【0043】
(比較例5)
実施例3の糖衣工程においてビタミンCを全く添加しないほかは、実施例3と同様にして中心重量に対し5倍の糖衣層を形成し単重1.2gの糖衣した食品を600gの糖衣した食品を得た。得られた糖衣物は、砂糖層のみで形成されるため、かりっとした食感、酸味に乏しい糖衣した食品であった。
【0044】
(比較例6)
実施例3の糖衣工程においてビタミンCを1.2倍、1.4倍、1.6倍まで糖衣した各段階で粉末状のビタミンCを糖衣物総重量に対して1%、糖衣液1を投入後に散布し、25℃で乾燥する工程を繰り返し、中心重量に対し、2倍の糖衣層を形成し単重0.6gの糖衣した食品を600g得た。得られた糖衣物は、かりっとした食感に乏しい糖衣した食品であった。
【0045】
(実験例3)DHAの保存安定試験
DHAを含む食品として、問題となるのはDHAの劣化臭である。DHAの安定化度を確かめるため、時間の経過とともに発現する異味異臭を評価した。
比較例5、比較例6は時間の経過とともに不快な異味異臭の発生が認められた。実施例3に異味異臭の発生がほとんどなく、DHAの安定化も兼ね備えた糖衣した食品であることがわかった(表4)。
【0046】
− : 異味異臭の発生が認められない。
± : 異味異臭の発生がわずかに認められる。
+ : やや不快な異味異臭の発生が認められる。
【0047】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心層が光又は酸素により酸化されやすい脂溶性機能性物質を含んだ油脂性食品であって、該中心層に対して重量で5倍以上の糖衣層を有し、かつ該糖衣層の主成分が砂糖からなり、該糖衣層が砂糖の層とビタミンCの層が交互に重なり合った状態で多層に形成され、砂糖の層が結晶形態を有し、その結晶粒径が5〜15μmの範囲であることを特徴とする糖衣した食品。
【請求項2】
前記脂溶性機能性物質が、還元型コエンザイムQ10、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)からなる群より選択される少なくとも1種類である請求項1に記載の糖衣した食品。
【請求項3】
前記油脂性食品がチョコレートである請求項1又は2に記載の糖衣した食品。

【公開番号】特開2010−124745(P2010−124745A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302171(P2008−302171)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】