説明

糸を保護する綜絖

【課題】糸を保護する綜絖を提供する。
【解決手段】本発明による綜絖は綜絖体(8)を有し、その厚みは糸鳩目(6)に向かって増大する。綜絖体(8)の側面はガイド面を構成する。該ガイド面は経糸方向に指向し、糸鳩目(6)に隣接して、隣接綜絖の糸鳩目(6)と糸鳩目(6)の間隔を維持するスペーサ手段(35、36)として働く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブル部分に記載の特徴を有する、綜絖シャフト用の綜絖に関する。
【背景技術】
【0002】
織機のシャフト及び綜絖を含む構成部品の質量の削減が、長い間必要とされてきた。織機構成部品の質量の削減は、シャフト駆動装置及び杼口形成機が著しく軽減された後も求められており、これはエネルギーを節約するため、さらに高い回転数を実現するためであり、一方で、摩耗の増加が生じず反対に摩耗の軽減が得られると考えられている。
【0003】
杼口形成中、綜絖は、糸鳩目を通って延びる経糸を経糸平面の外へ動かし、一方で綜絖の間を延びる他の経糸は、別の綜絖シャフトによって同方向又は反対方向に動かされる。この方法では、各杼口形成工程中、張られた経糸は綜絖の外側に沿って延びる。こうした事が原因で糸に極度な応力がかかり、それによって経糸が損傷する可能性が有り、極端な場合、経糸は破損する。
【0004】
特許文献1は、特別な形状の糸鳩目を有する綜絖について開示している。リードは適切に成形された平坦な材料からなる。糸鳩目の付近では、平坦な側面が経糸方向に対して傾きをもって配置されるようにねじられている。綜絖の間にくる経糸は、糸鳩目は通らず、糸鳩目の外側の縁端をかすめなければならず、これによって損傷する可能性があると考えられる。
【0005】
同文献がさらに開示している綜絖は、糸鳩目の付近でねじられておらず、しかし糸鳩目の境界を定める2つのウェブは単に反対方向に曲げられている。この方法では、綜絖の両側面は、それぞれに全長にわたって経糸方向に指向する。しかし、糸鳩目ウェブを折り曲げるため、糸鳩目内では上端及び下端の両方にそれぞれ尖った角が形成され、経糸の切断をもたらしやすいと考えられる。さらに、外に向けて横に折り曲げられた足は、隣接綜絖が互いに接近することを防止せず、結果として隣接綜絖の一方の足が他方の綜絖の糸鳩目を中断する。これも、経糸は、多少なりとも綜絖の尖った縁端の上で上下しながら延びることになるので、よって糸に損傷をもたらす可能性がある。
【0006】
特許文献2は、繊維強化プラスチック製の綜絖について開示している。綜絖体には、糸鳩目付近、及びそこから離れて延在する部分にも、丸みのある縁端部が設けられている。前述した綜絖と同様に、ここでも隣接する糸鳩目は互いに重なり合う。これにより、綜絖の間を延び、杼口形成中に糸鳩目のそばを通過しなければならない糸に、損傷を引き起こす恐れがある。これは特に高速運転の際に当てはまる。
【0007】
【特許文献1】独国特許発明第 43 36 362 C1号明細書
【特許文献2】欧州特許第 0403429号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、改良された綜絖を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による綜絖は、糸鳩目にスペーサ手段を備えた綜絖体を有する。スペーサ手段は糸鳩目付近の隣接綜絖が、経糸方向に見て重なるのを防止する。この方法で、綜絖間を延びる糸は、隣接綜絖の糸鳩目の横を通り過ぎる場合、もしそうであったとしても、極僅かに経糸方向から外されるだけである。特に経糸は、経糸が損傷する可能性がある綜絖の縁端又は糸鳩目の縁端に押し付けられることはない。特に熱に弱い糸は、鋭い縁端だけでなく、このように高速運転で生成される摩擦熱によっても損傷を受ける。綜絖が重なるのを避けることで、特に糸鳩目付近では、経糸のたわみの少ない、従って低摩擦の延びが、長手方向運動(経糸方向)及び杼口形成運動の両方について可能である。
【0010】
側面は全長にわたって好ましくは経糸方向に指向し、これは杼口形成にとって有効である。これは特に糸鳩目に隣接する領域及び糸鳩目自体に当てはまる。この方法で綜絖のそばを通過する糸の損傷は、糸鳩目によって形成される狭窄部により確実に防止される。
【0011】
この配置は、綜絖の前方及び後方の縁に丸みをつけると有利であり、糸への応力をさらに削減する。
【0012】
側面は好ましくは糸鳩目のところでは平坦な面である。糸鳩目の境界を定めるウェブは必ずしも横方向に弓形でなくてよい。むしろ基本的にはまっすぐである。この方法では、上又は下に経糸が押し付けられて損傷を受ける恐れのある尖った角がないように、糸鳩目の内部輪郭を定めることが提案される。さらに、糸鳩目を通過する糸はそこで吊るされたままにされないように防止されている。
【0013】
スペーサ手段は、好ましくは糸鳩目に隣接した側面の部分によって形成される。このような面部分は、例えば綜絖の垂直長さ方向でみると、糸鳩目の直ぐ上又は下に見られる。こうした領域において、綜絖体は、糸鳩目付近のウェブの側面の距離と同じくらい厚い。このようすると、隣接綜絖の糸鳩目は重なることがない。杼口形成中に綜絖の間で糸鳩目を通り過ぎる糸は、基本的には障害なく糸鳩目と交差する。
【0014】
側面は好ましくは、糸鳩目と交差する糸を確実に誘導するために、傾斜面として形成される。傾斜面は好ましくは平坦であるが、僅かに弓なりであってもよい。
【0015】
糸鳩目付近の2つの対向する側面の間の距離、すなわち糸鳩目の上及び下の綜絖体の厚みは、同方向で計測した糸鳩目の幅より大きい。こうした配置は、望ましい糸鳩目間隔を維持するのに役立つ。言い換えると、糸鳩目を通る経糸による分割、すなわち隣接する糸鳩目同士の中心距離は、糸鳩目の外側幅より小さくなることはなく、また明らかに、たとえ隣接綜絖が可能な限り最接近するまでお互いに向かって移動しても、その内側幅より小さくなることはない。
【0016】
糸鳩目は好ましくは、側面に平行なガイド面を形成する内側を有するウェブによって境界を定められる。こうした配置により、糸鳩目を通過する際に優しく糸を取り扱うようになる。さらに、糸鳩目は、好ましくは平坦なもしくはわずかに弓なりの面と、底部だけでなく上部で隣接し、該面は経糸方向に延在し、基本的に滑らかで、また糸が延びる際糸を優しく取り扱う役目を果たす。これらの表面は、綜絖の糸挿入側では糸鳩目から離れる方向にアーチを描き、必要であれば綜絖の糸出口側でも同様になる。これにより、特に開放杼口の場合、糸は優しく取り扱われる。
【0017】
糸鳩目の境界を定めるウェブは好ましくは経糸方向に互いにずれており、それによってある経糸方向の距離が得られる。さらに、ウェブは経糸方向に対して横方向にも互いにずれており、それによってある横方向の距離が得られる。経糸方向の距離は好ましくは横方向距離より大きい。このようにして、糸の自動引き込みがこのような綜絖で容易に実現可能であり、一方で綜絖は十分細いままであり、非常に細い糸を加工できる。
【0018】
側面には凹部が設けられてもよく、例えば綜絖の長さ方向Lに延在する溝などがある。こうした配置は、綜絖の質量を実質的に軽減しつつも、その強度に目に見える悪影響を与えることはない。綜絖体は重量の点で有利なプラスチックで製造してもよい。さらに、綜絖は、軽くて強い構造をもたらすボロン繊維入りアルミニウム等の繊維強化材料製であってもよい。綜絖体を同一の材料から継ぎ目なく形成することも可能で、こうして一体部品が得られる。これにより場所によって強度が弱まるのを防ぎ、単純に製造できる。綜絖体には、全体的又は部分的に例えば特に糸鳩目の付近に、側面だけでなく内側も磨耗軽減コーティングが施されてもよい。このような手段は特に糸が糸鳩目内で切れるのを防ぐ。
【0019】
糸鳩目は、セラミック、炭化タングステン、又は超硬合金などの耐摩耗性インサートで生成されてもよく、必要であればインサートにコーティングが施されてもよい。このようにして、軽量であると同時に高い耐磨耗性の綜絖が得られる。
【0020】
本発明の実施形態の特別な詳細は別の利点をもたらし、これは図面、明細書又は請求項から明らかになろう。
【0021】
図面において、本発明の例示された実施形態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、綜絖4を備えた綜絖シャフト3を有する織機1のいくつかの構成部品を示す。綜絖シャフト3は基本的に平坦で、長方形の枠で、その中に綜絖4が垂直に保持されている。綜絖4は経糸5を誘導する役割を果たし、経糸5の一部はそれぞれの糸鳩目6を通って誘導され、一部は綜絖の間に誘導される。図2にも示すように、綜絖は基本的には平行に横に並んで近くに隣接して保持される。織機1の運転中、綜絖シャフト3は素速く連続して上下に移動する。このために、かなり概略的に図示したシャフト駆動装置7が設けられる。シャフト3の各綜絖は好ましくは同一の構造である。それらは、例えば、図3による形状を有する。各綜絖4はほぼ細長片形状の細長い綜絖体8を有し、該綜絖体8は使用時には垂直に配向され、その中央領域には糸鳩目6を具備している。本実施形態では、C字形の端部糸鳩目9、10が綜絖体8の両端にある。端部糸鳩目9、10付近には、連続穴11、12、部分溝穴13、14及び切断エッジ15、16、17、18が形成されている。
【0023】
これらの基本的特徴に関しては、図3による綜絖4は、図4及び図5による綜絖4と基本的に一致している。相違点は、図4の綜絖4は閉じた端部糸鳩目9、10を有するのに対して、図5の綜絖4は内向きの湾曲フック19、20を備えたJ字形の端部糸鳩目9、10を有しているという点である。さらに相違点は、綜絖体8と端部糸鳩目9、10との配列(アライメント)にもある。図3の端部糸鳩目9、10は綜絖体8の直線延長部として配置されている一方で、図4及び図5の綜絖4では、経糸方向Kに対して偏りを持たせた隣接綜絖4a、4bの取り付けを可能にするずれ(偏り)がある。これにより二重糸鳩目とも呼ばれる二列の糸鳩目がもたらされる。さらに、各綜絖4の片側に切断エッジ15、17及び16、18をそれぞれ設けることも可能である。
【0024】
前述した実施形態では、綜絖体8は、好ましくは全体又は部分的にプラスチック、例えば繊維強化合成材料からなる。炭素繊維、グラスファイバ又は他のタイプの繊維が強化繊維として使用されてもよい。繊維の長さは均一でもよく、例えば2mmでもよい。さらに、長さの異なる繊維の繊維混合物を利用することも可能である。繊維は、例えば綜絖4の長さ方向Lに意図的に向きを決めてもよく、あるいは、好ましい向きなしにプラスチック内に埋め込まれてもよい。これについて、好ましくはグラスファイバが短繊維として使用され、その場合、綜絖体8は通常の鋳造加工で製造されてもよい。
【0025】
別の方法では、綜絖4は綜絖体に対して全体的又は限定的に、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム合金又はアルミニウム合金といった適切な金属から加熱プレス又は鍛造して生成されてもよい。綜絖4は、特に加工処理に強い経糸のために耐摩耗性コーティングが施されてもよい。これは、綜絖体の側面だけでなく特に糸鳩目6の領域にも適用される。例えばアルミニウム合金から鋳造又は鍛造される綜絖の場合、コーティングは好ましくはアルマイト層である。
【0026】
上述した実施形態では、端部糸鳩目9、10は綜絖4と一体部品であってもよい。これは、端部糸鳩目9、10は綜絖体8に継ぎ目なく接合し、これと同じ素材で作られることを意味する。しかし、別の方法では端部糸鳩目を綜絖体8に付加して、必要であれば異なる素材で作成することも可能である。これについての実施形態は、図6及び図7に図解されている。例えば、図6に従う端部糸鳩目9は綜絖体8の突起21が中へ伸びる凹部を有する。端部糸鳩目9は、凹部及び突起21を通って伸びている横ピン22を用いて綜絖体8へ固定される。このタイプの結合は、特に端部糸鳩目9を綜絖体8に接合するのに、それらが異なる素材製である場合に、適応される。綜絖体8がプラスチックであり、端部糸鳩目が例えばスチールである場合、端部糸鳩目は図7に示すように綜絖体8に鋳造されてもよい。例えば、端部糸鳩目は金型内に置かれ、綜絖体8と共に鋳造されてもよい。綜絖の材料から横ピンを形成することも可能であり、これによって綜絖体8の構成部品を構成することができる。この場合、独立した部品として形成された横ピンは必要ない。端部糸鳩目が数個の穴60、61を有する場合、材料結合に加えて確動係合も得られる。
【0027】
端部糸鳩目のために、特に耐摩耗性素材、例えば焼き戻しスチール、炭化タングステン又はセラミックを使用してもよい。端部糸鳩目9、10の綜絖体8への取り付けは、例えば、確動係合、あるいは接着又ははんだ付けによる材料接着により行われる。鋳造加工が行われる場合、綜絖体8は端部糸鳩目9、10に鋳造されてもよい。この場合、綜絖の材料から横ピンを形成し、綜絖体8の構成部品とすることが可能である。この場合、別に形成された横ピンは必要ない。
【0028】
図8は綜絖体8の形状と特に糸鳩目6の形状を示す。綜絖体8には幾つかの位置に区画線I−I〜VI−VIが設けられ、図9ではそれぞれの断面図が区画線に並列に並べられている。見ての通り、綜絖体8は2つの側面23、24を有し(例えば、断面図I−I又はVI−VIに示す)、それらは平坦で経糸方向Kに指向している。側面23、24は綜絖体8の平坦な側面を構成し、それらは経糸方向Kで見て、前方の小さい側面及び後方の小さい側面を有する丸みのある縁端部25及び26及び丸みのある縁端部27及び28に移行する。
【0029】
図9に特によく見られるように、綜絖体8の厚み、すなわち側面23、24の間の距離は糸鳩目6に向かって増大する。さらに、綜絖体8の寸法、すなわち幅を糸鳩目6に向かって増大させる(図示せず)ことも可能である。その結果、綜絖体の断面は糸鳩目6の方向に増大する。こうした断面の増大は、一方では側面23、24間の距離、他方で綜絖体8の幅の狭い側面間の距離の増加をもたらす。こうした綜絖体8の拡大はその経糸方向Kにおける安定性を増大させ、同時にピッチと列密度を減少させない。綜絖体8が最も厚い糸鳩目6の付近で、側面23、24は好ましくは平坦な面を形成する。ほぼ区画III−IIIから区画I−Iへ伸びる傾斜面形状又は楔形状領域では、厚みは減少し、側面23、24は互いに鋭角に指向した平坦面を形成する。区画I−Iに隣接して、側面23、24は好ましくは互いに平行に端部糸鳩目9、10の方向に伸び、それによって綜絖体8の厚みは一定になる。上述した糸鳩目6と綜絖体8の薄い部分の間の移行領域では、溝穴状又は溝状の凹部29、30、31、32が設けられてもよく、これは特に図9に見ることができる。凹部29、31及び30、32は側面23、24を中断し、綜絖体8の重量軽減に貢献しつつ、その剛性及び引っ張り・圧縮強度を損なうことはない。凹部29、31の両側の幅の狭いウェブ33、34及び凹部30、32の幅の狭いウェブ62、63はそのままで、滑らかな糸ガイド面を形成する。
【0030】
本発明による綜絖4の別の特性は糸鳩目6の構成にある。糸鳩目6は綜絖体8の最も厚い領域に配置される。綜絖体8の部分は糸鳩目の上下に位置し、図9の断面IV−IVに示されており、スペーサ手段35、36を形成する(図8)。その位置における側面23の領域37、38は隣接綜絖の対応する面領域と接触してもよいが、一方で、隣接する綜絖4の綜絖体8の領域が隣接綜絖の経糸空間内へ侵入することは防がれる。綜絖4の経糸空間は糸鳩目によって境界を定められ、図11の覆い(閉曲面)48によって表される。経糸空間は図3の紙面に対して平行に伸びる。これに関して、側面23、24は経糸方向Kに計測した幅一杯に糸鳩目6へ各々伸び、側面23、24はそのために経糸方向Kに指向し、それに対してねじれも傾きもしないのが有利である。
【0031】
糸鳩目6は横方向に側面が平行なウェブ39、40によって境界を定められる。ウェブ39、40の外側は、側面23、24によって形成される。内側はガイド面41、42によって形成され、これらは互いに平行に指向するとともに、側面23、24に対して平行である。ウェブ39、40は、綜絖体8の長さ方向Lに対して平行に伸びる。ウェブ39、40は経糸方向Kに対して及びその横方向に互いにずれている。ウェブ39、40は、経糸のための、経糸方向Kを向いた通路をそれら自体の間に形成する。ウェブ39、40は、長さ方向Lにそれらの全長にわたって、ほぼ長方形の覆い48の厚みの分、互いに距離を置いている。ウェブ39、40はこのようにして横方向に相互にずれており、各々は実質的に平坦であり、糸鳩目付近の綜絖体8より実質的に薄い。図12で特によく分かるように、ウェブ39、40は、綜絖体8上で互いに距離を置いた位置で経糸方向Kに対して横向きに設定される。
【0032】
糸鳩目6は、その上端及び下端でそれぞれ好ましくは基本的に平坦なあるいは溝形状の糸ガイド面43、44によって境界を定められる。それらは特に糸挿入側に向かって漏斗状に広がり、さらに図10に示すように、経糸(特に糸張力が低い糸でも)を適正に誘導することができるように後方糸出口側にも向かって広がる。上部及び下部の糸挿入面45、46はそれぞれ綜絖体8の頑丈な部分と隣接しており、そこに側面23の領域37、38がスペーサ手段35、36として形成される。
【0033】
図11はさらに糸鳩目6の幾何学的配置を示し、図13は区画線XIII−XIIIの部分を示す。ウェブ39、40は、必ずではないが、好ましくは経糸方向Kでは綜絖体8より幅が狭い。このように、ウェブ39、40は、図11の覆い47により破線で示された通路を横方向に開く。通路の幅は、ウェブ39、40の経糸方向の互いの距離(すなわち、経糸方向Kで計測した距離)によって決定される。覆い47によって描かれた通路は長方形で、丸みを付けられた縁を有する。この通路は経糸の機械化された引き込みを可能にする。さらに、ウェブ39、40は経糸方向Kに対して横向きに互いにずれており、これによって長手方向通路、すなわち経糸方向Kに伸びる覆い48で表される通路を定める。覆い48は同様にほぼ長方形の断面図を描き、上部及び下部の幅の狭い側面49、50は丸みを付けられてもよい。これは糸ガイド面43、44がほぼ溝形状の場合である。覆い48の幅はウェブ39、40の横方向の距離によって決定される。
【0034】
覆い47、48の間の角度51は好ましくは少なくとも30度で、本実施例では90度である。さらに、覆い47は好ましくは覆い48より幅が広い。覆い48は、その幅が誘導すべき糸の幅と等しければ十分である。図10に図示したよりも強調の度合いはかなり少ないものの、図11の糸鳩目6でも糸挿入面45、46は丸みをつけられる。さらに、図10から出発して、糸挿入面45、46は点で終端せず、幅全体に渡って延在する。こうした糸挿入面45、46の形状は張力の大きい経糸で作業する場合特に有利である。さらに、ウェブ33、34の接合部に丸みをつけた部分64、52が設けられ、覆い47に丸みを付けられた縁端部を与える。
【0035】
以上に述べた綜絖4は、次の通り作動する。
【0036】
図12は、経糸アセンブリ52を備えた綜絖4の列を示す。経糸53は糸鳩目6を通って延び、一方で原則として複数の経糸54は綜絖4の間を延び、こうして側面23、24のそばをかすめる。個々の例では、綜絖4の間に単に1本又は2本の糸54が延びてもよい。機織の工程中、綜絖4を備えた綜絖シャフトのみが素速く連続して長さ方向L(図12の紙面に直角方向)に往復運動し、経糸53、54を備えた杼口を開閉する。1つの動作段階の間、図11の綜絖4は上方へ移動し、一方で経糸54は綜絖の側面23のそばをかすめる。こうした作業の間、経糸は経糸方向Kに指向した1つの面にだけ接触可できる、すなわち、縁端部又は表面領域が経糸方向Kに対して斜めにのみ向けられている場合であっても、縁端部や表面領域にわたって延びない。特に、経糸54は綜絖4から離れて過度に広がってしまうことなく、糸鳩目6の上を横切る。綜絖4はその側面23、24により互いに重なり合うが、一方で隣接綜絖の部分はウェブ39、40であっても、隣接綜絖に属する糸鳩目6の覆い48の領域に入り込まない。こうした動きは、側面23に属する領域37、38によって防止される。側面領域37、38は、側面23の幅全体にわたって延在し、スペーサ手段35、36を構成する。
【0037】
側面領域37、38はウェブ40の外側と共通の平面にあり、長さ方向Lで上向き及び下向きにウェブ40に隣接し、ウェブ40が綜絖体8の経糸方向Kでみた後方端に置かれた場合、綜絖体8の前端まで伸びる。ウェブが前方の幅の狭い側面に配置された場合、例えばウェブ39の場合、同じ平面にあるそれぞれの表面領域は綜絖体8の後方の幅の狭い側面まで伸びる。
【0038】
なお、覆い47で表された横通路はなくてもよい。これは引き込まれる糸の自動化の程度による。ウェブ39、40はこのような場合、例えば経糸方向Kに見られるように綜絖体8の幅全体又はほぼ全体にわたって伸び、覆い48を有する幅の狭い通路だけを自由な状態にしておく。
【0039】
図14及び図15は、前述の綜絖4の改良実施形態を示す。改良実施形態の外部形状は前述の綜絖4と一致するので、その説明を参照されたい。前述の綜絖4から出発して、糸鳩目6は1つ又は複数の追加部品55、56、57で形成され、それらが糸鳩目6の形状の輪郭を定めている。追加部品55〜57は特別な耐摩耗性材料で作られ、例えば、セラミック、鋳造又は鍛造陽極酸化処理アルミニウム、焼き戻しスチール、炭化タングステン又は被覆炭化タングステン、あるいは例えば、PKDコーティングで生成される。確動係合及び/又は材料結合、鋳造、改鋳、半田付け、溶接、接着又はそれに類する手段により、追加構成部品を綜絖体8の残り部分に結合することが可能である。図15による実施形態では追加部品56、57はシェル形状の要素を形成し、この要素は固定ピン58、59を用いて綜絖体8上に保持されている。
【0040】
本発明による綜絖4は綜絖体8を有し、その厚みは糸鳩目6に向かって増大する。綜絖体8の側面23、24は経糸方向に指向したガイド面を構成し、糸鳩目6に隣接して、隣接綜絖の隣接する糸鳩目6どうしの間隔を保持するためのスペーサ手段35、36としての役目を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】相当概略化した部分的な織機の図である。
【図2】図1による織機の綜絖シャフトの概略部分正面図である。
【図3】図2の綜絖シャフトに配置するように意図された綜絖の側面図である。
【図4】図2による綜絖シャフト用に二重の糸鳩目構造を備えた綜絖の配置の別の実施形態及び様式の側面図である。
【図5】図2による綜絖シャフト用に二重の糸鳩目構造を備えた綜絖の配置の別の実施形態及び様式の側面図である。
【図6】図3による綜絖用に付加された端部糸鳩目の概略的斜視図である。
【図7】図3による綜絖用に付加された端部糸鳩目の改良実施形態の概略的斜視図である。
【図8】図3、4又は5による綜絖の中央部の部分側面図である。
【図9】図8による綜絖の、異なる位置での、断面図である。
【図10】図8の綜絖の改良実施形態の糸鳩目の詳細図である。
【図11】図8による綜絖の立体形状的関係を示す、概略的斜視図である。
【図12】概略的に示した経糸を備えた糸鳩目の高さにおける断面で図示した一列の綜絖を示す。
【図13】図11による綜絖の垂直断面図である。
【図14】糸鳩目インサートを有する綜絖の概略的部分斜視図である。
【図15】糸鳩目インサートを有する綜絖の改良実施形態の概略的部分斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 織機
3 綜絖シャフト
4 綜絖
4a、4b 隣接綜絖
5 経糸
6 糸鳩目
7 シャフト駆動装置
8 綜絖体
9、10 端部糸鳩目
11、12 連続穴
13、14 部分溝穴
15、16、17、18 切断エッジ
19、20 湾曲フック
21 突起
22 横ピン
23、24 側面
25、26、27、28 丸みのある縁端部
29、30、31、32 凹部
33、34、62、63 ウェブ
35、36 スペーサ手段
37、38 側面領域
39、40 ウェブ
41、42 ガイド面
43、44 糸ガイド面
45、46 糸挿入面
47、48 覆い
49、50 狭い側面
51 角度
64、52 丸みをつけた部分
52 経糸アセンブリ
53、54 経糸
55、56、57 追加部品
58、59 固定ピン
60、61 穴
K 経糸方向
L 長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面(23、24)を有する綜絖体であって、長さ方向(L)を定める細長い綜絖体(8)を有する綜絖シャフト(3)用の綜絖(4)であって、
綜絖体(8)は、経糸方向(K)を定める経糸(54)を受ける糸鳩目(6)を有し、
糸鳩目(6)は、長さ方向(L)対して横向きの通路を構成する綜絖(4)において、
スペーサ手段(35、36)が糸鳩目(6)に設けられることを特徴とする綜絖(4)。
【請求項2】
側面(23、24)は経糸方向(K)に指向し、糸鳩目(6)を越えて糸鳩目(6)から離れる方向に延在することを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項3】
側面(23、24)は、経糸方向(K)に関して丸みのある前方及び後方縁端部(25、26、27、28)を有することを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項4】
側面(23、24)は糸鳩目(6)の付近において平坦な面であることを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項5】
スペーサ手段(35、36)は、側面(23、24)の一部を形成する領域であって、糸鳩目(6)に隣接する領域(37、38)によって構成されることを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項6】
側面(23、24)は糸鳩目(6)から離れる方向に延在し、長さ方向(L)に対して傾斜がつけられることにより傾斜面を構成することを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項7】
傾斜面は平坦な面であることを特徴とする、請求項6に記載の綜絖。
【請求項8】
綜絖体(8)の断面は糸鳩目(6)から離れる方向において小さくなることを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項9】
対向する側面(23、24)の間の距離は同方向で計測した糸鳩目(6)の幅より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項10】
糸鳩目は、経糸方向(K)の前方及び後方でそれぞれのウェブ(39、40)によって境界を定められ、ウェブの外側は側面(23、24)の部分で形成され、ウェブはその内側に少なくとも経糸方向(K)に関して側面(23、24)と平行なガイド面(41、42)を有することを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項11】
弓なりにそった糸挿入面(45、46)が糸鳩目(6)の糸挿入側及び/又は糸出口側に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項12】
糸鳩目(6)は、経糸方向(K)の前方及び後方でそれぞれのウェブ(39、40)によって境界を定められ、経糸方向(K)に見た場合、ウェブ(39、40)の間に経糸方向の距離が存在することを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項13】
経糸方向の距離は、経糸方向(K)に対して横方向に計測したウェブ(39、40)の互いからの横方向の距離より大きいことを特徴とする、請求項12に記載の綜絖。
【請求項14】
綜絖体(8)はその糸鳩目(6)の位置で最大幅を有し、この幅は糸鳩目(6)から離れる方向に減少することを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項15】
側面(23、24)は少なくとも1つの凹部(29、30、31、32)によって中断されることを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項16】
凹部(29、30、31、32)は長さ方向(L)に延在する溝で形成されることを特徴とする、請求項15に記載の綜絖。
【請求項17】
綜絖体(8)は少なくとも部分的にプラスチック又は軽金属であることを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項18】
綜絖体(8)は繊維複合材であることを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項19】
綜絖体(8)は同一の材料から継ぎ目なく形成されることを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項20】
綜絖体(8)は磨耗軽減コーティングを有することを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項21】
綜絖体(8)は糸鳩目(6)に耐摩耗性インサート(55、56、57)を有することを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項22】
インサートはセラミック、サーメット、炭化タングステン又は超硬合金であることを特徴とする、請求項21に記載の綜絖。
【請求項23】
インサート(55、56、57)はコーティングされていることを特徴とする、請求項22に記載の綜絖。
【請求項24】
綜絖体(8)はその上に継ぎ目なしに形成された端部糸鳩目(9、10)を具備し、端部糸鳩目は綜絖体(8)と同じ材料であることを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項25】
端部糸鳩目(9、10)が綜絖体(8)に付加されていることを特徴とする、請求項1に記載の綜絖。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の綜絖(4)を有する綜絖シャフト(3)。
【請求項27】
請求項25に記載の綜絖シャフト(3)を有する織機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−9400(P2007−9400A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177869(P2006−177869)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(598132646)グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト (77)