説明

糸伸ばし装置

【課題】本発明は、からくりの動力伝達手段として使用される糸の初期伸びを効率的に抑制できるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る糸伸ばし装置は、からくりの動力伝達手段として使用される糸Wが巻かれている糸巻ドラム5を回転可能な状態で支持するドラム支持部50と、縮径、あるいは拡径可能に構成されており、ドラム支持部50に支持された糸巻ドラム5から糸Wを巻き取れるように構成された巻き取りドラム20と、糸Wを巻き取った後の巻き取りドラム20を拡径させて、糸Wに張力を加える張力付与機構30とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、からくりの動力伝達手段として使用される糸に張力を加えて伸ばす糸伸ばし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糸を動力伝達手段として使用するからくりの一例が、図5に示されている。このからくりは、台車101を第1の位置P1と第2の位置P2間で往復移動させる装置であり、その台車101の移動範囲の両側に第1滑車103と第2滑車104とが設けられている。そして、第1滑車103と第2滑車104とにそれぞれ糸Wが掛けられて、その糸Wの両端が互いに接続されている。即ち、糸Wがベルト状に形成されて第1滑車103と第2滑車104とに掛けられている。そして、前記糸Wの一部分Wtが台車101に接続されている。これにより、例えば、第1滑車103と第2滑車104とが図5において左回転すると、台車101が糸Wに引っ張られて、第1の位置P1から第2の位置P2まで右方向(実線矢印参照)に移動するようになる。また、第1滑車103と第2滑車104とを右回転させることで、前記台車101が第1の位置P1まで戻されるようになる(点線矢印参照)。
【0003】
一般的に、からくりでは、加工性や安全性を考慮してナイロン製の糸Wが使用される。しかし、ナイロン製の糸Wは使用初期に伸びるため、糸Wの伸びに起因して台車101の位置ずれが発生する。このため、糸Wの更新時には、前記糸が伸びきるまで台車101の位置調整を頻繁に行なう必要があり、手間が掛かるという問題がある。
上記問題を解決するため、からくりに使用する糸Wを予め伸ばしておくことが考えられる。
特許文献1,2の技術では、糸を巻き取りドラムに巻き取る際に所定の張力を加え、前記糸を伸ばしながら巻き取れるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−113291号公報
【特許文献2】実開平6−6351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、糸を巻き取る際に所定の張力を付与する方法では、糸に対して張力を長時間加え続けることが難しいため、糸を十分に伸ばすことはできない。
このため、巻き取りドラムに巻き取った後の糸をからくりに使用しても、初期伸びを効果的に抑制することはできない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、からくりの動力伝達手段として使用される糸の初期伸びを効率的に抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、からくりの動力伝達手段として使用される糸が巻かれている糸巻ドラムを回転可能な状態で支持するドラム支持部と、縮径、あるいは拡径可能に構成されており、前記ドラム支持部に支持された糸巻ドラムから前記糸を巻き取れるように構成された巻き取りドラムと、前記糸を巻き取った後の前記巻き取りドラムを拡径させて、前記糸に張力を加える張力付与機構とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によると、からくりの動力伝達手段として使用される糸を巻き取りドラムで巻き取った後、その巻き取りドラムを拡径させて前記糸に張力を加えるようにしている。このため、糸に加える張力の調整が容易であり、さらに糸に張力を加える時間も自由に設定できる。したがって、糸を十分に伸ばせるようになり、この糸をからくりの動力伝達手段として使用することで、糸の初期伸びを効率的に抑制できる。
【0009】
請求項2の発明によると、巻き取りドラムを拡径状態に保持するロック機構を備えていることを特徴とする。
このため、糸に対して張力を加えた状態で放置でき、糸に対して容易に長時間張力を加えられるようになる。
【0010】
請求項3の発明によると、ドラム支持部と巻き取りドラムとの間には、前記巻き取りドラムに糸が巻き取られているときに、前記糸巻ドラムと巻き取りドラムとの間の糸を前記巻き取りドラムの軸方向に移動させる糸移動機構が設けられていることを特徴とする。
このため、巻き取りドラムに巻き取られている糸がその巻き取りドラムの半径方向において重ならなくなり、前記巻き取りドラムを拡径する際に、前記糸に対して均一な張力を加えられるようになる。
【0011】
請求項4の発明によると、ドラム支持部には、巻き取りドラムに糸が巻き取られているときに、そのドラム支持部に支持されている糸巻ドラムに対して回転抵抗を付与する抵抗付与部が設けられていることを特徴とする。
このため、糸を巻き取りドラムに巻き取る際に、前記糸に所定の張力を加えられるようになる。
【0012】
請求項5の発明によると、ドラム支持部は、糸巻ドラムを抵抗付与部から離した状態で回転可能に支持できるように構成されていることを特徴とする。
このため、糸巻ドラムを使用して巻き取りドラムに巻かれた糸を効果的に巻き取ることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、からくりの動力伝達手段として使用する糸の初期伸びを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る糸伸ばし装置を表す全体斜視図である。
【図2】前記糸伸ばし装置の巻き取りドラムを表す側面図である。
【図3】前記糸伸ばし装置の糸移動機構を表す側面図である。
【図4】前記糸伸ばし装置のドラム支持部を表す側面図(A図)、糸巻ドラムに糸を巻き取る様子を表す斜視図(B図)である。
【図5】糸を動力伝達手段として使用するからくりの一例を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、図1から図4に基づいて本発明の実施形態1に係る糸伸ばし装置について説明する。本実施形態の係る糸伸ばし装置10は、からくりに使用されるナイロン製の糸を伸ばす装置であり、T型ベース12と、糸伸ばし装置本体10xと、糸移動機構40と、ドラム支持部50とから構成されている。
ここで、図中の前後左右及び上下は、糸伸ばし装置10の前後左右及び上下に対応している。
T型ベース12は、前後方向に延びる角筒状の前後ベース片14と、左右方向に延びる角筒状の左右ベース片13とから構成されており、その左右ベース片13の中央側面に前後ベース片14の前端が接続されることで平面T字形に形成されている。そして、T型ベース12の前後ベース片14上に、前側から順番に糸伸ばし装置本体10x、糸移動機構40、及びドラム支持部50が配置されている。
【0016】
<糸伸ばし装置本体10xについて>
糸伸ばし装置本体10xは、糸Wを巻き取って、その巻き取った糸Wに張力を加える部分であり、T型ベース12の前後ベース片14上に水平回転可能な状態で設置されている。糸伸ばし装置本体10xは、糸Wを巻き取れるように構成された巻き取りドラム20と、その巻き取りドラム20を拡径させて糸Wに張力を加える張力付与機構30とから構成されている。
巻き取りドラム20は、図1、図2に示すように、回転支柱21と、その回転支柱21の周囲に90°間隔で配置されて、糸Wが外側から巻かれる四個のドラム片22と、各々のドラム片22と回転支柱21とを連結する四組のリンク機構24とから構成されている。
【0017】
回転支柱21は円柱形に形成されており、図2に示すように、その回転支柱21の下端部21eがT型ベース12上に上向きに形成された短管状の第1軸受14jよって軸心回りに回転可能に支持されている。また、回転支柱21には、下端部21eの上側にベルトVが掛けられるプーリ21pが設けられており、そのプーリ21pの上側に下部フランジ21fが固定されている。そして、下部フランジ21fの上面に、各々のドラム片22に対応するリンク機構24が連結させる角形ステー21sが円周方向に90°間隔で形成されている。
また、回転支柱21の上部には、その回転支柱21に沿って移動可能に構成された上部フランジ32が設けられており、その上部フランジ32の下面に、各々のドラム片22に対応するリンク機構24が連結させる角形ステー32sが円周方向に90°間隔で形成されている。上部フランジ32は、回転支柱21が挿通される円筒部32eを備えており、その円筒部32eの側面に雌ネジが形成された貫通孔32w(雌ネジ孔32w)が半径方向に形成されている。そして、その雌ネジ孔32wにロックハンドル38の軸部に形成された雄ネジ38nが螺合されるようになっている。これにより、ロックハンドル38の雄ネジ38nを上部フランジ32の雌ネジ孔32wにねじ込むことで、雄ネジ38nの先端で回転支柱21の外周面を押圧できるようになり、この状態で回転支柱21に対する上部フランジ32の上下動が禁止される。
【0018】
四組のリンク機構24は、四個のドラム片22が均等に拡径、あるいは縮径可能なように、各々のドラム片22と回転支柱21とを連結する機構である。各々のリンク機構24は等しい構成であり、X字状に連結された上側リンク241と下側リンク242とから構成されている。上側リンク241と下側リンク242とは、互いの先端近傍位置が連結ピン24xによって上下回動可能な状態で連結されている。そして、上側リンク241の基端部が上部フランジ32の角形ステー32sに連結ピン24u等を介して上下回動可能なように連結されている。また、下側リンク242の基端部が下部フランジ21fの角形ステー21sに同じく連結ピン24d等により上下回動可能なように連結されている。また、上側リンク241の先端部がドラム片22の裏側に設けられたリンク受け部220の下部と縦長穴221、連結ピン24zによって上下回動可能なように連結されている。さらに、下側リンク242の先端部がドラム片22のリンク受け部220の上部と連結ピン24y等によって上下回動可能なように連結されている。
上記構成により、上部フランジ32が回転支柱21に沿って下降すると、各リンク機構24の上側リンク241の基端部が押し下げられて、前記上側リンク241と下側リンク242とは連結ピン24xを中心に互いに接近する方向に回動する。これにより、各リンク機構24は半径方向に延びるように動作し、各々のドラム片22は拡径方向に移動する。また、上部フランジ32が回転支柱21に沿って上昇すると、各リンク機構24の上側リンク241の基端部が引き上げられて、前記上側リンク241と下側リンク242とは連結ピン24xを中心に互いに離隔する方向に回動する。これにより、各リンク機構24の半径方向の寸法が減少し、各々のドラム片22は縮径方向に移動する。
【0019】
ドラム片22は、図1に示すように、四個のドラム片22が一組となって回転支柱21を中心に水平回転することで糸Wを巻き取れるように構成されている。ドラム片22は、平断面形状が円弧形をした角板である糸巻用縦板部22dと、糸巻用縦板部22dの下端位置でその糸巻用縦板部22dに対して表側に張出すように形成された棚状の横板部22sとから構成されている。そして、糸巻用縦板部22dの表面、即ち、凸円弧面に糸Wが巻かれるように構成されている。また、糸巻用縦板部22dの裏面である凹円弧面の中央に前述のリンク受け部220が設けられている。
さらに、一部のドラム片22には、そのドラム片22の裏面の上部と下部とに糸Wの端部が掛けられるフック22fが形成されている。
【0020】
張力付与機構30は、巻き取りドラム20に糸Wが巻き取られた後に、前記上部フランジ32を押し下げて各々のドラム片22を拡径させ、前記糸Wに張力を加える機構である。張力付与機構30は、回転支柱21の上端部に固定されて横方向に突出するサポート部34と、そのサポート部34に対して連結ピン34pを介して上下回動可能に連結された操作アーム31と、その操作アーム31の途中位置と上部フランジ32の上面に設けられた上部ステー32jとを連結する斜めリンク33とから構成されている。そして、斜めリンク33の上端が連結ピン33uによって上下回動可能に操作アーム31の途中位置に連結されており、斜めリンク33の下端が連結ピン33dによって上下回動可能に上部フランジ32の上部ステー32jに連結されている。
上記構成により、操作アーム31の操作端31tを持ってその操作アーム31を下方に回動させることで、斜めリンク33によって上部フランジ32を押し下げることが可能になる。これにより、各リンク機構24の働きで各々のドラム片22は拡径方向に移動し、巻き取りドラム20に巻き取られた糸Wに対して張力を加えられるようになる。そして、この状態で、ロックハンドル38の雄ネジ38nを上部フランジ32の雌ネジ孔32wにねじ込み、回転支柱21に対する上部フランジ32の上下動を禁止することで、糸Wに対して張力を加えた状態に保持できる。
さらに、操作アーム31の操作端31tを持って、回転支柱21、リンク機構24、及びドラム片22を水平回転させることができるようになる。
即ち、ロックハンドル38の雄ネジ38nと上部フランジ32の雌ネジ孔32w等が本発明のロック機構に相当する。
【0021】
<糸移動機構40について>
糸移動機構40は、糸Wが巻き取りドラム20に巻き取られているときに、その巻き取りドラム20に巻き取られる前の糸Wを徐々に上方に移動させ、前記糸Wが巻き取りドラム20上で半径方向に重ならないようにする機構である。糸移動機構40は、図3に示すように、糸Wを上方に移動させる螺旋支柱43と、その螺旋支柱43を軸心回りに回転可能に支持する下端軸受部44、上端支持部45と、螺旋支柱43を巻き取りドラム20と同期して回転させる回転機構47とから構成されている。
螺旋支柱43は円柱形に形成されており、図3に示すように、その螺旋支柱43の下端部43eがT型ベース12上に上向きに形成された短管状の下端軸受部44よって軸心回りに回転可能に支持されている。また、前記螺旋支柱43の上端部43uが上端支持部45によって軸心回りに回転可能に支持されている。
【0022】
上端支持部45は、螺旋支柱43と平行に立設された支柱部45pと、その支柱部45pの上部から横方向に張り出すように設けられた梁部45hとから構成されている。そして、前記梁部45hの先端に、螺旋支柱43の上端部43uが挿通される軸受孔45jが形成されている。
螺旋支柱43には、下端部43eの上側に回転機構47のベルトVが掛けられるプーリ43pが設けられている。さらに、螺旋支柱43には、前記プーリ43pの上側から前記梁部45hの下側まで螺旋状に突条43rが設けられている。ここで、突条43rは、螺旋支柱43の外周面に、例えば、紐状のものを巻き付けて固定することにより構成されている。そして、螺旋支柱43の外周面に当接した糸Wが突条43rと突条43rとの谷部分と嵌合するように、突条43rと突条43rとの間隔が設定されている。また、螺旋状の突条43rの巻き方向は、回転機構47の働きで螺旋支柱43が右回転(図3の矢印参照)したときに、糸Wを上方に移動させられるような方向に設定されている。
【0023】
<ドラム支持部50について>
ドラム支持部50は、図4(A)(B)に示すように、からくりに使用される糸Wが巻かれている糸巻ドラム5を水平回転可能な状態で支持する部分である。ドラム支持部50は、糸巻ドラム5の回転中心になるネジ軸52と、糸巻ドラム5の下側外周部5rを半径方向外側から押えて回転抵抗を付与する外周押え部54とから構成されている。ネジ軸52は、T型ベース12上に固定ナット51により立設されている。そして、ネジ軸52の中央上部位置にそのネジ軸52が糸巻ドラム5の中心に通された状態で糸巻ドラム5を下方から支えるドラム支持ナット53uが配置されている。
外周押え部54は、ドラム支持ナット53uの下側で横方向に張り出す横棒部54yと、その横棒部54yの先端のバネ受け材54fに固定された板バネ55とから構成されている。横棒部54yには、その基端部にネジ軸52が通される貫通孔(図示省略)が形成されている。そして、横棒部54yの貫通孔にネジ軸52が通されて、その横棒部54yの基端部が固定ナット53m,53dにより上下から挟まれて締付けられることで、横棒部54yはネジ軸52に固定される。そして、横棒部54yがネジ軸52に固定された状態で、板バネ55の先端が糸巻ドラム5の下側外周部5rを半径方向外側から押えられるように構成されている。
即ち、外周押え部54の板バネ55が本発明の抵抗付与部に相当する。
【0024】
さらに、ドラム支持ナット53uの位置を上方にずらすことで、糸巻ドラム5の下側外周部5rを外周押え部54の板バネ55から離した状態で、その糸巻ドラム5を回転自在に支持することが可能になる。
また、ドラム支持部50には、操作レバー58が設けられている。操作レバー58は、図4(B)に示すように、糸巻ドラム5を自在に回転させる際に、糸巻ドラム5の上面に取付けられるレバーであり、操作レバー58の回転中心部(図示省略)がネジ軸52の上端に回転自在な状態で嵌め込まれようになっている。
【0025】
<糸伸ばし装置10の取扱いについて>
糸伸ばし装置10によって糸Wを伸ばす場合には、先ず、図4(A)に示すように、糸巻ドラム5をドラム支持部50のネジ軸52にセットする。このとき、ドラム支持ナット53uにより糸巻ドラム5の高さを調整し、外周押え部54の板バネ55で糸巻ドラム5の下側外周部5rを半径方向外側から押えられるようにする。
次に、糸巻ドラム5から糸Wを引き出して、図1に示すように、その糸Wを糸移動機構40の支柱部45pの外周面に左側から掛け、さらに螺旋支柱43の外周面に右側から掛ける。そして、前記糸Wの引き出し端(先端)を巻き取りドラム20の下側のフック22fに連結する。
次に、糸伸ばし装置本体10xのロックハンドル38を緩める方向に回転させて回転支柱21に対する上部フランジ32の上下動を可能にし(ロック状態解除)、操作アーム31により上部フランジ32を上限位置まで引き上げて、巻き取りドラム20を縮径状態にする。この状態で、ロックハンドル38を締め、回転支柱21に対する上部フランジ32の上下動を禁止する(ロック状態)。
【0026】
次に、操作アーム31を使用して巻き取りドラム20を右回転させ、その巻き取りドラム20に糸Wを巻き取るようにする。このとき、糸巻ドラム5の下側外周部5rがドラム支持部50の板バネ55によって半径方向外側から押えられているため、糸Wには張力が加わるようになる。さらに、巻き取りドラム20の回転が、回転支柱21のプーリ21pからベルトVを介して螺旋支柱43のプーリ43pに伝達されるため、螺旋支柱43が巻き取りドラム20と同期して右回転するようになる。これにより、螺旋支柱43の外周面に当接して螺旋状の突条43rの谷部分に嵌合している糸Wがその螺旋状の突条43rの働きで徐々に上方に移動する。この結果、巻き取りドラム20に巻き取られている前記糸Wが巻き取りドラム20上で半径方向に重ならないようになる。このようにして、糸巻ドラム5の糸Wが巻き取りドラム20に巻き取られた状態で、糸Wの最終端を巻き取りドラム20の上側のフック22fに連結する。
【0027】
次に、糸伸ばし装置本体10xのロックハンドル38を緩める方向に回転させて上部フランジ32と回転支柱21とのロック状態を解除し、操作アーム31を押下げ方向に動作する。これにより、巻き取りドラム20の各リンク機構24の働きで各々のドラム片22が拡径方向に移動して、巻き取りドラム20に巻き取られた糸Wに対して張力が加えられる。この状態で、ロックハンドル38を締める方向に回転させて回転支柱21に対する上部フランジ32の上下動を禁止し(ロック状態)、糸Wに対して張力を加えた状態に保持する。そして、約10分間放置した後、ロックハンドル38で前記ロック状態を解除し、再び、操作アーム31を押下げ方向に操作して張力を加える(増締めする)。さらに、増締め後、ロックハンドル38により再びロック状態として、約1日放置する。この後、再び、増締めを行ない、増締め後、約1日放置して、糸伸ばし作業を終了する。
このようにして、糸伸ばし作業を終了すると、ドラム支持部50のドラム支持ナット53uを上方に移動させて、空の糸巻ドラム5を板バネ55に接しないようにネジ軸52にセットする。そして、図4(B)に示すように、糸巻ドラム5の上面に操作レバー58をセットする。次に、巻き取りドラム20の糸Wの最終端を糸巻ドラム5に連結し、操作レバー58を使用して糸巻ドラム5を回転させ、巻き取りドラム20から糸巻ドラム5に糸Wを巻き取るようにする。そして、糸巻ドラム5に糸Wが巻き取られた状態で作業が完了する。
このように、からくりに使用される糸Wが時間を掛けて伸ばされるため、この糸Wをからくりに使用しても糸Wの初期伸びに起因する不具合を抑制することができる。
【0028】
<本実施形態に係る糸伸ばし装置10の長所について>
本実施形態に係る糸伸ばし装置10によると、からくりの動力伝達手段として使用される糸を巻き取りドラム20に巻き取った後、その巻き取りドラム20を拡径させて糸Wに張力を加えることができる。このため、糸Wに加える張力の調整が容易であり、さらに糸Wに張力を加える時間も自由に設定できる。したがって、糸Wを十分に伸ばせるようになり、この糸Wをからくりの動力伝達手段として使用することで、糸Wの初期伸びを効率的に抑制できる。
また、巻き取りドラム20を拡径状態に保持するロックハンドル38等(ロック機構)を備えているため、糸Wに対して張力を加えた状態で放置でき、糸Wに対して容易に長時間張力を加えることができるようになる。
【0029】
また、ドラム支持部50と巻き取りドラム20との間には、糸移動機構40が設けられているため、巻き取りドラム20に巻き取られている糸Wが半径方向に重ならなくなり、その巻き取りドラム20を拡径する際に、糸Wに対して均一な張力を加えられるようになる。
また、ドラム支持部50には、巻き取りドラム20に糸Wが巻き取られているときに、糸巻ドラム5に対して回転抵抗を付与する板バネ55(抵抗付与部)が設けられているため、糸Wを巻き取りドラム20に巻き取る際に、糸Wに所定の張力を加えられるようになる。
また、ドラム支持部50は、糸巻ドラム5を板バネ55(抵抗付与部)から離した状態で回転可能に支持できるように構成されているため、前記糸巻ドラム5を使用して巻き取りドラム20に巻かれた糸Wを効果的に巻き取ることが可能になる。
【0030】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、四個のドラム片22と、四組のリンク機構24とから巻き取りドラム20を構成する例を示したが、三個のドラム片22と、三組のリンク機構24とから巻き取りドラム20を構成することも可能である。
また、本実施形態では、操作アーム31を下方に回動させる(押下げる)ことで、回転支柱21に対して上部フランジ32を下降させてドラム片22を拡開させる例を示した。しかし、回転支柱21側に雄ネジを形成し、上部フランジ32側に雌ネジ孔を形成して、雄ネジと雌ネジ孔との螺合作用を利用して、上部フランジ32を回転支柱21に対して下降させる構成も可能である。
また、本実施形態では、ロック機構をロックハンドル38の雄ネジ38nと上部フランジ32の雌ネジ孔32w等から構成する例を示した。しかし、上部フランジ32を回転支柱21の下部フランジ21fにフック等により連結してドラム片22を拡開状態に保持する構成でも可能である。
【符号の説明】
【0031】
5・・・・・糸巻ドラム
20・・・・巻き取りドラム
22・・・・ドラム片
24・・・・リンク機構
30・・・・張力付与機構
32w・・・雌ネジ孔(ロック機構)
38・・・・ロックハンドル(ロック機構)
38n・・・雄ネジ(ロック機構)
40・・・・糸移動機構
50・・・・ドラム支持部
54・・・・外周押え部(抵抗付与部)
55・・・・板バネ(抵抗付与部)
W・・・・・糸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
からくりの動力伝達手段として使用される糸が巻かれている糸巻ドラムを回転可能な状態で支持するドラム支持部と、
縮径、あるいは拡径可能に構成されており、前記ドラム支持部に支持された糸巻ドラムから前記糸を巻き取れるように構成された巻き取りドラムと、
前記糸を巻き取った後の前記巻き取りドラムを拡径させて、前記糸に張力を加える張力付与機構と、
を有することを特徴とする糸伸ばし装置。
【請求項2】
請求項1に記載された糸伸ばし装置であって、
前記巻き取りドラムを拡径状態に保持するロック機構を備えていることを特徴とする糸伸ばし装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された糸伸ばし装置であって、
前記ドラム支持部と巻き取りドラムとの間には、前記巻き取りドラムに前記糸が巻き取られているときに、前記糸巻ドラムと巻き取りドラムとの間の糸を前記巻き取りドラムの軸方向に移動させる糸移動機構が設けられていることを特徴とする糸伸ばし装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された糸伸ばし装置であって、
前記ドラム支持部には、前記巻き取りドラムに前記糸が巻き取られているときに、そのドラム支持部に支持されている前記糸巻ドラムに対して回転抵抗を付与する抵抗付与部が設けられていることを特徴とする糸伸ばし装置。
【請求項5】
請求項4に記載された糸伸ばし装置であって、
前記ドラム支持部は、前記糸巻ドラムを前記抵抗付与部から離した状態で回転可能に支持できるように構成されていることを特徴とする糸伸ばし装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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