説明

糸巻き掛け装置

【課題】各部の振動を生じにくくすることができ、一対の円筒状部材に対する糸の巻き掛け状態に乱れが生じないようにすることができる糸巻き掛け装置を提供する
【解決手段】ボビン3と、糸1を繰り出す回転駆動部Mと、糸1の先端部1Aを保持する保持部4と、張力付与部5と、一対の円筒状部材101,102を支持するテーブル29と、糸挿通部6を一対の円筒状部材101,102の周りに回転させて糸1を一対の円筒状部材101,102に巻き掛ける糸巻き掛け機構7と、張力検出手段8と、回転駆動部Mを制御する制御手段9とを備え、糸挿通部6は円運動しながらを糸1を巻き掛け、張力付与部5は第1テンションローラ21と第2テンションローラ22とを備え、ガイドリング50の軸芯方向の中心G1とボビン3の軸芯03との間の鉛直方向の長さL1が、ボビン3に巻回された糸1のロール径の最大値の3倍以上に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに径方向で対向する状態にテーブルに縦置きされた一対の円筒状部材に糸を巻き掛ける糸巻き掛け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドライブシャフト、プロペラシャフト等の動力伝達部分には、駆動軸から従動軸に回転トルクを伝達するためのカップリングとして、振動減衰機能を持つ弾性継手が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
図7,図8に示すように前記弾性継手99は、駆動軸に接続される駆動側のカラー101(円筒状部材に相当)と、ドライブシャフト等の従動軸に接続される従動側のカラー(円筒状部材に相当)102とが、それぞれ複数個、同心円上に交互に配列され、径方向で隣合った一対のカラー101,102の相互間に合成繊維糸等を多層多列に巻回して形成した無端の帯状繊維束103が巻き掛けられるとともに、これらの各カラー101,102と帯状繊維束103の周囲がゴムあるいは合成樹脂等の弾性材104で被覆されることにより、多角形や円形の環状をなすように形成されている。
【0004】
前記駆動側及び従動側の各カラー101,102は、円筒状部111,121の外周面に前記帯状繊維束103を保持する複数の第1フランジ112,122が形成されている。各カラー101,102は、それぞれ内筒部材105,106に対して圧入されており、内筒部材105,106を介して、駆動側のカラー101が駆動軸の軸端部に、また従動側のカラー102が従動軸の軸端部に、それぞれボルト等の締結手段により固定され、振動等を吸収しながら動力伝達するのに使用される。
【0005】
すなわち、弾性継手99は、前記弾性材104に埋設されている駆動側と従動側のカラー101,102間の部分では弾性変形が可能であり、駆動軸と従動軸の間に生じる軸方向の振動や捩れ等を、弾性材104の弾性変形により吸収しながら動力伝達を行なう。
【0006】
前記一対のカラー101,102に前記糸を巻き掛ける場合に冒頭に記載した糸巻き掛け装置が用いられている。この種の糸巻き掛け装置は、一般に、
前記糸が巻回されて支持部に回転自在に支持された横置き状態のボビンと、
前記ボビンを回転させて前記糸を繰り出す回転駆動部と、
前記ボビンから繰り出された糸の先端部を保持する保持部と、
前記保持部と前記ボビンの間の糸に張力を付与する張力付与部と、
前記保持部よりも糸の繰り出し方向上手側で前記糸を挿通させる糸挿通部と、
前記糸挿通部を前記一対の円筒状部材の周りに回転させて、前記糸挿通部と前記保持部の間の糸を前記一対の円筒状部材に巻き掛ける糸巻き掛け機構とを備え、
前記糸が前記ボビンから上方に向かって繰り出され、前記糸挿通部に上方から挿通されるように前記糸の繰り出し経路が設定され、
前記糸の張力を検出する張力検出手段と、
前記張力検出手段の検出結果に基づいて、前記糸の張力が設定値になると前記回転駆動部が回転駆動して前記ボビンから前記糸が繰り出され、前記糸の張力が設定値よりも小さくなると、前記回転駆動部の回転が停止して前記ボビンからの糸の繰り出しが停止するように前記回転駆動部を制御する制御手段とを備えている。
【0007】
従来、前記糸挿通部は、図12に示すように、テーブルに支持された一対の円筒状部材(カラー101,102)の軸芯O6間の中心を通る縦軸芯O1周りに長円運動しながら一対の円筒状部材に糸を巻き掛けるよう構成され、前記張力付与部は、装置フレームの上端部に位置する1個のテンションローラから構成されていた。図12は、円筒状部材に対する糸挿通部の軌跡を示す作用図であり、図12において、Cは前記縦軸芯O1を中心とするノズル6の長円形の軌跡である。
また、図13(a),図13(b)に示すように、ボビン3から繰り出されて上方Uに向かう糸1をボビン3の上方Uでガイドするガイドリング50が装置フレーム10の支柱10Aに支持され、このガイドリング50の直近下方にボビン3が配置されていた。
【特許文献1】特開2003−120712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の構成によれば、前記糸挿通部は、テーブルに支持された一対の円筒状部材の軸芯間の中心を通る縦軸芯周りに長円運動しながら一対の円筒状部材に糸を巻き掛けるよう構成されていたために、糸挿通部を回転させるための回転機構の構造が複雑化するとともに、糸の巻き掛けに時間がかかっていた。
【0009】
また、図13(b)に示すように、ガイドリング50の直近下方にボビン3が配置されている構造では、ガイドリング50とボビン3との間の糸1の下端がボビン3の軸方向一端部又は他端部に位置したときに、鉛直方向に対する前記糸1の傾斜角θ1(ボビン3の径方向外方側から見た状態でのガイドリング50とボビン3との間の糸1の傾斜角)が大きくなっていた。さらに、図13(a)に示すように、ボビン3の軸方向外方側から見た状態での前記糸1の傾斜角θ2も大きくなっていた。その結果、糸1の下端がボビン3の軸方向一端部又は他端部に位置したとき(図13(b)の実線)に、糸1がガイドリング50やボビン3のロール状の糸から受ける抵抗が大きくなり、逆に、糸1の下端がボビン3の軸方向中央に位置したとき(図13(b)の一点鎖線)は前記抵抗が小さくなり、これにより、糸1の張力の変化が大きくなって装置の各部が振動しやすくなっていた。そして、その振動に起因して、一対の円筒状部材に対する糸の巻き掛け状態に乱れが生じ、不良品が生じることがあった。
【0010】
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、糸の巻き掛け時間を短縮化して生産性を向上させることができ、各部の振動を生じにくくすることができ、一対の円筒状部材に対する糸の巻き掛け状態に乱れが生じないようにすることができる糸巻き掛け装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1による発明の構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
互いに径方向で対向する状態にテーブルに縦置きされた一対の円筒状部材に糸を巻き掛ける糸巻き掛け装置であって、
前記糸が巻回されて支持部に回転自在に支持された横置き状態のボビンと、
前記ボビンを回転させて前記糸を繰り出す回転駆動部と、
前記ボビンから繰り出された糸の先端部を保持する保持部と、
前記保持部と前記ボビンの間の糸に張力を付与する張力付与部と、
前記保持部よりも糸の繰り出し方向上手側で前記糸を挿通させる糸挿通部と、
前記糸挿通部を前記一対の円筒状部材の周りに回転させて、前記糸挿通部と前記保持部の間の糸を前記一対の円筒状部材に巻き掛ける糸巻き掛け機構とを備え、
前記糸が前記ボビンから上方に向かって繰り出され、前記糸挿通部に上方から挿通されるように前記糸の繰り出し経路が設定され、
前記糸の張力を検出する張力検出手段と、
前記張力検出手段の検出結果に基づいて、前記糸の張力が設定値になると前記回転駆動部が回転駆動して前記ボビンから前記糸が繰り出され、前記糸の張力が設定値よりも小さくなると、前記回転駆動部の回転が停止して前記ボビンからの糸の繰り出しが停止するように前記回転駆動部を制御する制御手段とを備え、
前記糸挿通部は、前記一対の円筒状部材の軸芯間の中心を通る縦軸芯周りに円運動しながら前記一対の円筒状部材に前記糸を巻き掛け、
前記ボビンから繰り出されて上方に向かう糸を前記ボビンの上方でガイドするガイドリングが装置フレームに支持され、
前記ガイドリングの軸芯方向の中心と前記ボビンの軸芯との間の鉛直方向の長さが、前記ボビンに巻回された糸のロール径の最大値の3倍以上に設定されている。
【0012】
[作用]
この構成によれば、糸挿通部は、テーブルに支持された一対の円筒状部材の軸芯間の中心を通る縦軸芯周りに円運動しながら一対の円筒状部材に糸を巻き掛けるから、例えば、糸挿通部が前記縦軸芯周りに長円運動しながら一対の円筒状部材に糸を巻き掛ける構造よりも、糸挿通部を回転させるための回転機構の構造を簡素化することができ、糸の巻き掛けにかかる時間を短くすることができる。
【0013】
また、ガイドリングの軸芯方向の中心と前記ボビンの軸芯との間の鉛直方向の長さが、前記ボビンに巻回された糸のロール径の最大値の3倍以上に設定されているから、ガイドリングとボビンとの間の糸の下端がボビンの軸方向一端部又は他端部に位置したときに、鉛直方向に対する前記糸の傾斜角(ボビンの径方向外方側から見た状態でのガイドリングとボビンとの間の糸の傾斜角)を小さくすることができるとともに、ボビンの軸方向外方側から見た状態での前記糸の傾斜角も小さくすることができる。
【0014】
その結果、前記糸の下端がボビンの軸方向一端部又は他端部に位置したときに、糸がガイドリングやボビンのロール状の糸から受ける抵抗を小さくすることができる。そして、糸の下端がボビンの軸方向中央に位置したときは前記抵抗が小さくなり、これにより、糸の張力の変化を小さくすることができて、装置の各部が振動するのを抑制することができ、一対の円筒状部材に対する糸の巻き掛け状態に乱れが生じないようにすることができる。後述のように、本発明者は、前記長さが、ボビンに巻回された糸のロール径の最大値の3倍以上であると、上記の作用効果を得ることができることを実験により確認した。逆に、前記長さが、ボビンに巻回された糸のロール径の最大値の3倍未満であると、前記糸の傾斜角を小さくすることはできず、上記の作用効果を得にくいことを確認した。
【0015】
請求項2による発明の構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
請求項1による発明の構成において、
前記ボビンの軸方向及び径方向の中心部の鉛直方向上方に前記ガイドリングが位置している。
【0016】
[作用]
請求項1の構成による上記の作用に加えて、次の作用を奏することができる。
前記ボビンの軸方向及び径方向の中心部の鉛直方向上方に前記ガイドリングが位置しているから、ガイドリングとボビンとの間の糸の下端がボビンの軸方向一端部又は他端部に位置したときに、鉛直方向に対する前記糸の傾斜角(ボビンの径方向外方側から見た状態でのガイドリングとボビンとの間の糸の傾斜角)を小さくすることができるとともに、ボビンの軸方向外方側から見た状態での前記糸の傾斜角も小さくすることができて、請求項1の構成による上記作用効果をより得やすくすることができる。
【0017】
請求項3による発明の構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
請求項2による発明の構成において、
前記張力付与部は、前記ガイドリングの上方に位置するテンションローラを備え、
前記テンションローラとガイドリングとの間の前記糸を鉛直姿勢に設定可能に前記テンションローラが配置されている。
【0018】
[作用]
請求項2の構成による上記の作用に加えて、次の作用を奏することができる。
前記テンションローラとガイドリングとの間の前記糸を鉛直姿勢に設定できるから、ガイドリングとボビンとの間の糸の下端がボビンの軸方向一端部又は他端部に位置したときに、糸がガイドリングから受ける抵抗をより小さくすることができて、請求項2の構成による上記作用効果をより得やすくすることができる。
【0019】
請求項4による発明の構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
請求項1〜3のいずれか一つによる発明の構成において
前記糸巻き掛け機構は、装置フレームに対して3次元方向に移動自在な可動体を備え、
前記可動体は、平面視で回転中心を前記縦軸芯と一致させて駆動回転する回転軸を備え、
前記回転軸の径方向で前記糸挿通部が前記回転中心から離れて位置する状態に、前記糸挿通部が連結部材を介して前記回転軸に連結されている。
【0020】
[作用]
請求項1〜3のいずれか一つの発明による作用に加え、次の作用を奏することができる。
【0021】
可動体が装置フレームに対して3次元方向に移動し、平面視で回転軸の回転中心を前記縦軸芯(テーブルに支持された前記一対の円筒状部材の軸芯間の中心を通る縦軸芯)と一致させる。そして、回転軸が縦軸芯周りに回転し、連結部材を介して回転軸に連結された糸挿通部が縦軸芯周りに回転する。糸挿通部は、回転軸の径方向で回転中心から離れて位置する状態に、連結部材を介して回転軸に連結されている。これにより、一対の円筒状部材に糸が巻き掛けられる。
【0022】
請求項5による発明の構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
請求項4による発明の構成において
前記糸挿通部は上下方向に沿う中空パイプ状のノズルから成り、前記ノズルの中空部に前記糸が挿通される。
【0023】
[作用]
請求項4の発明による作用に加え、次の作用を奏することができる。
糸挿通部は上下方向に沿う中空パイプ状のノズルから成り、前記ノズルの中空部に前記糸が挿通されるから、糸挿通部の構造を簡素化することができる。
【0024】
請求項6による発明の構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
請求項5による発明の構成において、
前記回転軸の径方向中央部に前記回転軸と同芯状の第1糸挿通孔が貫通形成され、
前記連結部材がL字形に形成され、
前記回転軸に、前記連結部材の一片の上端部が固定されて、前記連結部材の一片に第2糸挿通孔が貫通形成され、
上方から前記第1糸挿通孔に挿通された前記糸を前記第2糸挿通孔に案内する第1案内ローラと、前記第2糸挿通孔に挿通された前記糸を前記ノズルの中空部に上方から案内する第2案内ローラとが前記連結部材に設けられている。
【0025】
[作用]
請求項5の発明による作用に加え、次の作用を奏することができる。
ボビンから繰り出された糸は回転軸の第1糸挿通孔に上方から挿通され、第1案内ローラに案内されて連結部材の一片の第2糸挿通孔に挿通され、第2案内ローラによりノズルの中空部の上端部に案内されてノズルに挿通される。これにより、糸を円滑に繰り出すことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、
糸の巻き掛け時間を短縮化して生産性を向上させることができ、各部の振動を生じにくくすることができ、一対の円筒状部材に対する糸の巻き掛け状態に乱れが生じないようにすることができる糸巻き掛け装置を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図7,図8に自動車用の弾性継手99を示し、図1に、この弾性継手99を製作する際に用いる糸巻き掛け装置100の概略図を示してある。
【0028】
前記弾性継手99は、駆動軸に接続される駆動側のカラー101(円筒状部材に相当)と、ドライブシャフト等の従動軸に接続される従動側のカラー(円筒状部材に相当)102とが、それぞれ複数個、同心円上に交互に配列され、径方向で隣合った一対のカラー101,102の相互間に合成繊維糸等(以下、「糸1」)を多層多列に巻回して形成した無端の帯状繊維束103が巻き掛けられるとともに、これらの各カラー101,102と帯状繊維束103の周囲がゴムあるいは合成樹脂等の弾性材104で被覆されることにより、多角形や円形の環状をなすように形成されている。
【0029】
前記駆動側及び従動側の各カラー101,102は、円筒状部111,121の外周面に帯状繊維束103を保持する複数の第1フランジ112,122が形成されている。各カラー101,102は、それぞれ内筒部材105,106に対して圧入されており、内筒部材105,106を介して、駆動側のカラー101が駆動軸の軸端部に、また従動側のカラー102が従動軸の軸端部に、それぞれボルト等の締結手段により固定され、振動等を吸収しながら動力伝達するのに使用される。
【0030】
すなわち、弾性継手99は、弾性材104に埋設されている駆動側と従動側のカラー101,102間の部分では弾性変形が可能であり、駆動軸と従動軸の間に生じる軸方向の振動や捩れ等を、弾性材104の弾性変形により吸収しながら動力伝達を行なう。
【0031】
前記一対のカラー101,102に糸1を巻き掛ける場合に本発明の糸巻き掛け装置100を用いる。次に、この糸巻き掛け装置100について説明する。
【0032】
[糸巻き掛け装置100の構造]
図1〜図4,図9に示すように糸巻き掛け装置100は、互いに径方向Kで対向する状態にテーブル29に縦置きされた一対のカラー101,102に糸1を巻き掛ける装置であり、糸1が巻回されて支持部2に回転自在に支持された横置き状態のボビン3と、ボビン3をその軸芯O3周りに回転させて糸1を繰り出す電動モータM(回転駆動部に相当)と、ボビン3から繰り出された糸1の先端部1Aを保持する保持部4と、保持部4とボビン3の間の糸1に張力を付与する張力付与部5と、保持部4よりも糸の繰り出し方向上手側で糸1を挿通させるノズル6(糸挿通部に相当)と、ノズル6を一対のカラー101,102の周りに回転させて、ノズル6と保持部4の間の糸1を一対のカラー101,102に巻き掛ける糸巻き掛け機構7と、糸1の張力を検出する張力検出手段8とを備えている。そして、糸が1ボビン3から上方に向かって繰り出され、ノズル6に上方から挿通されるように糸1の繰り出し経路が設定されている。
【0033】
また、張力検出手段8の検出結果に基づいて、糸1の張力が設定値になると、電動モータMが回転駆動してボビン3から糸1が繰り出され、糸1の張力が設定値よりも小さくなると、電動モータMの回転が停止してボビン3からの糸1の繰り出しが停止するように電動モータMを制御する制御装置9(制御手段に相当)を備えている。
【0034】
ボビン3は装置フレーム10の下端部に配置されており、図4に示すように、中空の回転ドラム11と、この回転ドラム11の両端から径方向外方側に張出す第2フランジ12とを備え、回転ドラム11に糸1が巻回されている。また、回転ドラム11の軸方向の一端部から突出する第1軸部13がベアリングBを介して支持部2に支持され、軸方向の他端部から突出する第2軸部14が電動モータMに連結している。前記支持部2は装置フレーム10の一部分から成る。
【0035】
図2に示すように前記保持部4は、糸1の先端部1Aを挟持する一対の挟持部材15から成る。この一対の挟持部材15は流体圧シリンダによって挟持及び挟持解除作動する。一対の挟持部材15を流体圧シリンダ以外の駆動機構で挟持及び挟持解除作動するように構成してあってもよい。
【0036】
前記張力付与部5は、第1テンションローラ21と、第1テンションローラ21よりも糸の繰り出し方向下手側の第2テンションローラ22とを備え、第1テンションローラ21がボビン3の上方Uに位置し、第2テンションローラ22がノズル6の上方Uに位置している。
【0037】
第1テンションローラ21は、第1揺動軸芯O4周りに揺動する第1揺動アーム31を介して装置フレーム10に揺動自在に支持され、第2テンションローラ22は、第2揺動軸芯05周りに揺動する第2揺動アーム32を介して装置フレーム10に揺動自在に支持されている。また、第1揺動アーム31を第1揺動軸芯O4周りの一方向A1に揺動付勢する第1コイルスプリング41(第1付勢手段に相当)と、第2揺動アーム32を第2揺動軸芯O5周りの一方向A2に揺動付勢する第2コイルスプリング42(第2付勢手段に相当)とが設けられている。
【0038】
図6に示すように前記張力検出手段8は、第1揺動アーム31の基端部に入り切りされるリミットスイッチ16から成る。リミットスイッチ16はバネ板から成る揺動片17を備え、その揺動片17が第1揺動アーム31の基端部に押圧されると入り(ON)になる。リミットスイッチ16が入り(ON)になると、ボビン3が電動モータMにより繰り出し回転駆動される。逆に、揺動片17に対する第1揺動アーム31の基端部の押圧が解除されると切り(OFF)になって、電動モータMによるボビン3の繰り出し回転駆動が停止する。
【0039】
前記第1テンションローラ21への糸1の巻き掛け角を大きくするための第1補助ローラ51が、糸1の繰り出し方向Hで第1テンションローラ21の下手側(糸の繰り出し方向下手側)に配設され、第2テンションローラ22への糸1の巻き掛け角を大きくするための第2補助ローラ52が、糸1の繰り出し方向Hで第2テンションローラ22の上手側(糸の繰り出し方向上手側)に配設されている。第1補助ローラ51は第1支持アーム61を介して装置フレーム10に支持され、第2補助ローラ52は第2支持アーム62を介して装置フレーム10に支持されている。
【0040】
図9に示すように、前記一対のカラー101,102は支持具20にボルト18・ナット19で軸芯方向に挟持固定され、支持具20を介してテーブル29に支持される。支持具20には1個の弾性継手99を構成する6個のカラー101,102が固定される。この支持具20は円板状に形成されている。
【0041】
図2,図3に示すように、前記ノズル6は上下方向Zに沿う細長の円筒中空パイプ状に形成されており、中空部6Nに糸1が挿通されたノズル6が、テーブル29に支持された一対のカラー101,102の軸芯O6間の中心を通る縦軸芯O1周りに円運動しながら一対のカラー101,102に糸1を巻き掛ける(図9,図11参照)。図11はノズル6の作用を示す作用図(ノズル6の上方から見た作用図)である。図11に示すノズル6の作用については後で詳しく説明する。
【0042】
糸巻き掛け機構7は、装置フレーム10に対してX・Y・Zの3次元方向に移動自在なロボット23(可動体に相当)を備え、ロボット23は、回転中心O2を前記縦軸芯O1と一致させて駆動回転する回転軸24をそのヘッド25に備えている。そして、回転軸24の径方向Kでノズル6が前記回転中心O2から離れて位置する状態に、ノズル6が連結部材26を介して回転軸24の外周部に連結されている。ロボット23は複数の流体圧シリンダによりX・Y・Zの3次元方向に移動し、回転軸24は回転軸用の電動モータにより駆動回転する。
【0043】
図2,図3に示すように、回転軸24の径方向中央部に回転軸24と同芯状の断面円形の第1糸挿通孔81が貫通形成されている。そして連結部材26がL字形に形成され、回転軸24の下端部に連結部材26の一片26Aの上端部26Jが固定されて、連結部材26の一片26Aに上下方向に沿う長孔状の第2糸挿通孔82が貫通形成されている。さらに、上方Uから第1糸挿通孔81に挿通された糸1を第2糸挿通孔82に案内する第1案内ローラ71が連結部材26の一片26Aの上端部26Jに設けられ、第2糸挿通孔82に挿通された糸1をノズル6の中空部6Nに上方Uから案内する第2案内ローラ72が連結部材26の他片26Bの上面部に設けられている。第1案内ローラ71は、連結部材26の一片26Aに固定した第1ローラブラケット73に回転自在に支持され、第2案内ローラ72は、連結部材26の他片26Bの上面部に固定した第2ローラブラケット74に回転自在に支持されている。
【0044】
図3に示すように、連結部材26の一片26Aに対する第2糸挿通孔82の貫通方向から見て、回転軸24の第1糸挿通孔81からノズル6に至る糸1が一直線状の鉛直になるように、第1糸挿通孔81と第1案内ローラ71と第2糸挿通孔82と第2案内ローラ72とノズル6とを配置してある。
【0045】
装置フレーム10には、ボビン3と第1テンションローラ21との間で糸1をガイドする上下一対の円形のガイドリング50がアーム59を介して設けられている(図1,図5参照)。
【0046】
すなわち図1,図4に示すように、ボビン3から繰り出されて上方Uに向かう糸1をボビン3の上方Uでガイドする上下一対のガイドリング50が装置フレーム10の支柱10Aに支持され、下側のガイドリング50の軸芯方向の中心G1とボビン3の軸芯O3との間の鉛直方向の長さL1が、ボビン3に巻回されたロール状の糸1のロール径Rの最大値の3倍以上(本実施形態では5倍)に設定されている。また、前記長さL1は、ロール状の糸1の巻き長さL2(ボビン3の軸方向に対応する方向の長さ)の最大値の2倍以上(本実施形態では4倍)に設定され、上下一対のガイドリング50は、ボビン3の軸方向J及び径方向Kの中心部Xの鉛直方向上方Uに位置している。前記第1テンションローラ21は上下一対のガイドリング50の上方に位置し、第1テンションローラ21と下側のガイドリング50との間の前記糸1を鉛直姿勢に設定可能に前記第1テンションローラ21が配置されている。
【0047】
この構成によれば、下側のガイドリング50の軸芯方向の中心G1とボビン3の軸芯O3との間の鉛直方向の長さL1が、ボビン3に巻回されたロール状の糸1のロール径Rの最大値の3倍以上(本実施形態では5倍)に設定されているから、ガイドリング50とボビン3との間の糸1の下端がボビン3の軸方向一端部又は他端部に位置したときに、鉛直方向に対する糸1の傾斜角θ1(ボビン3の径方向外方側から見た状態でのガイドリング50とボビン3との間の糸の傾斜角θ1、図4参照)を小さくすることができるとともに、ボビン3の軸方向外方側から見た状態での前記糸1の傾斜角θ2(図14参照)も小さくすることができる。
【0048】
その結果、糸1の下端がボビン3の軸方向一端部又は他端部に位置したときに、糸1がガイドリング50やボビン3のロール状の糸1から受ける抵抗を小さくすることができる。そして、糸1の下端がボビン3の軸方向中央に位置したときは前記抵抗が小さくなり、これにより、糸1の張力の変化を小さくすることができて、装置の各部が振動するのを抑制することができ、一対のカラー101,102に対する糸1の巻き掛け状態に乱れが生じないようにすることができる。
【0049】
本発明者は、上記構造の糸巻き掛け装置を用いて、一対のカラー101,102に対する糸1の巻き掛け状態に乱れが生じないか否かの実験を行った。
[実験の内容]
図14に示すように、上記構造の糸巻き掛け装置100でボビン3を、上側位置W1と下側位置W3と上下中間位置W2との3箇所にそれぞれ位置させて、糸巻き掛け装置100を作動させた。
上側位置W1とは、下側のガイドリング50の軸芯方向の中心G1(図4参照)とボビン3の軸芯O3との間の鉛直方向の長さL1が、ボビン3に巻回された糸1のロール径Rの最大値の2倍の位置であり、上下中間位置W2とは前記長さL1が、ボビン3に巻回された糸1のロール径Rの最大値の3倍の位置、前記下側位置W3とは、ボビン3に巻回された糸1のロール径Rの最大値の前記長さL1が5倍の位置である。
【0050】
そして、一対のカラー101,102に対する糸1の巻き掛け状態を外観で判断して図15に示す結果を得た。図15において○は糸の巻き掛けに乱れがない状態であり、さらに、ゴムから成る弾性材を加硫成形して製品として問題がない状態である。×は乱れがある状態である。
この実験により、前記長さL1が、ボビン3に巻回された糸1のロール径Rの最大値の3倍以上あれば、糸1の巻き掛けに乱れがなく、しかも、ゴムから成る弾性材を加硫成形した製品としても問題がないことを確認することができた。
【0051】
[糸巻き掛け装置100の作動]
(1) ボビン3から繰り出された糸1がロボット23の回転軸24の第1糸挿通孔81と連結部材26の第2糸挿通孔82とノズル6の中空部6Nとに挿通され、糸1の先端部1Aが一対の挟持部材15に挟持された図1に示す状態で、回転軸24の回転中心O2が、テーブル29に支持された一対のカラー101,102の軸芯O6間の中心を通る縦軸芯O1(図9参照)と平面視で一致するようにロボット23が3次元移動する。
【0052】
(2) 回転軸用の電動モータが回転駆動し、回転軸24が回転中心O2(縦軸芯O1)周りに円運動して一対のカラー101,102に糸1を巻き掛ける。このとき、リミットスイッチ16の検出結果に基づいて、制御装置9が電動モータMを前述のように制御する。
【0053】
(3) 糸1の巻き掛けが終了すると回転軸用の電動モータが停止する。そして、糸1の巻き掛け終端部とノズル6の先端部(下端部)との間の糸部分を一対の挟持部材15で挟持し、一対の挟持部材15で挟持した糸部分と糸1の巻き掛け終端部との間の糸部分を、ロボット23のヘッド25に設けた切断刃で切断する。図10に糸1の巻き掛けが終了した一対のカラー101,102を示してある。
【0054】
(4) テーブル29に支持された別の一対のカラー101,102に対して、前記(2),(3)の作動を繰り返す。このようにして、6個のカラー101,102に対する糸1の巻き掛けが終了すると、糸1が巻回された6個のカラー101,102を支持具20ごと取り出す。
【0055】
[1] ノズル6は、テーブル29に支持された一対のカラー101,102の軸芯O6間の中心を通る縦軸芯O1周りに円運動しながら一対のカラー101,102に糸1を巻き掛けるから、例えば、ノズル6が前記縦軸芯O1周りに長円運動(図12参照)しながら一対のカラー101,102に糸1を巻き掛ける従来の構造よりも、ノズル6を回転させるための回転機構の構造を簡素化することができ、糸1の巻き掛けにかかる時間を短くすることができる。
【0056】
また、前記張力付与部5は、第1テンションローラ21と、第1テンションローラ21よりも糸の繰り出し方向下手側に位置する第2テンションローラ22とを備え、第1テンションローラ21がボビン3の上方Uに位置し、第2テンションローラ22がノズル6の上方Uに位置しているから、糸1の張力の変化に対するテンションローラの応答性を下記のように良くすることができる。
【0057】
すなわち、ノズル6が糸1の先端部側に加える引張り力の変化にノズル6の上方の第2テンションローラ22で対応することができ、ボビン3が糸1の後端部側に加える引張り力の変化にボビン3の上方の第1テンションローラ21で対応することができて、1個テンションローラで両引張り力の変化に対応する場合よりも、張力の変化に対するテンションローラの応答性を良くすることができる。その結果、装置の各部の振動を抑制することができる。
【0058】
ノズル6が一対のカラー101,102の軸芯O6間の中心を通る縦軸芯O1周りに円運動しながら一対のカラー101,102に糸1を巻き掛ける場合の作用図を図11に示してある。図11は、カラー101,102への糸1の巻き掛けの各時点でのノズル6の速度Vと、各時点でのカラー101,102の接線方向におけるノズル6の速度V1と、前記接線方向に直交する方向の速度V2とを示している。Cは前記縦軸芯O1を中心とするノズル6の円形の軌跡である。
【0059】
ノズル6は一定の回転速度で回転し、各時点で前記Vは一定であるが、各時点でのカラー101,102の接線方向におけるノズル6の速度V1は大小に異なっている。前記V1は糸1の繰り出し量(繰り出し長さ)に対応し、V1が大きいと糸1の繰り出し量(繰り出し長さ)が大きくなり、V1が小さいと糸1の繰り出し量(繰り出し長さ)が小さくなる。図11に示すように、ノズル6の円軌道(円軌跡)において、ノズル6がカラー101,102から離れていくときに糸1の繰り出し量が増大し、ノズル6がカラー101,102に近づくときに糸1の繰り出し量が減少している。
【0060】
つまり、糸1の巻き掛け中には糸1の繰り出し量の増減に起因して糸1の張力が絶えず変化しているが、本発明の構成によれば、上記のように、ノズル6が糸1の先端部側に加える引張り力の変化に、ノズル6の上方Uに位置する第2テンションローラ22で対応することができ、張力の変化に対するテンションローラの応答性を良くすることができて、装置の各部の振動を抑制することができる。
【0061】
[2] 第1補助ローラ51で第1テンションローラ21への糸1の巻き掛け角を大きくすることができ、第2補助ローラ52で第2テンションローラ22への糸1の巻き掛け角を大きくすることができて、第1テンションローラ21と第2テンションローラ22の回転や張力付与作用を円滑かつ確実に行わせることができる。従って、糸1の巻き掛け作動をより確実に行わせることができる。
【0062】
[3] 第1揺動アーム31を第1コイルスプリング41で揺動付勢して糸1に張力を付与し、第2揺動アーム32を第2コイルスプリング42で揺動付勢して糸1に張力を付与するから、張力付与部5を簡単な構造に構成することができる。また張力検出手段8は、第1揺動アーム31又は第2揺動アーム32により入り切りされるリミットスイッチ16から成るから、糸1の張力を正確に検出することができる構造でありながら、張力検出手段8の構造を簡素化することができる。
【0063】
[5] 前記糸挿通部は上下方向Zに沿う中空パイプ状のノズル6から成るから、糸挿通部の構造を簡素化することができる。
【0064】
[6] ボビン3から繰り出された糸1は回転軸24の第1糸挿通孔81に上方Uから挿通され、第1案内ローラ71に案内されて連結部材26の一片26Aの第2糸挿通孔82に挿通され、第2案内ローラ72によりノズル6の中空部6Nの上端部に案内されてノズル6に挿通されるから、糸1を円滑に繰り出すことができる。
【0065】
[7]従って、糸1の巻き掛け時間を短縮化して生産性を向上させることができ、各部の振動を生じにくくすることができる糸巻き掛け装置100を提供することができる。
【0066】
[別実施形態]
前記張力検出手段8をリミットスイッチ16以外の手段で構成してあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】糸巻き掛け装置の概略図
【図2】糸巻き掛け機構の一部切欠き側面図
【図3】糸巻き掛け機構の一部切欠き正面図
【図4】ボビンと回転駆動部を示す一部切欠き正面図
【図5】糸のガイドリングを示す平面図
【図6】第1テンションローラを示す側面図
【図7】弾性継手の正面図
【図8】図7のY−Y断面図
【図9】カラー(円筒状部材)を支持具に取付けた状態を示す断面図
【図10】支持具に取付けたカラー(円筒状部材)に糸を巻きつけた状態を示す断面図
【図11】ノズルの作用を示す作用図
【図12】従来の糸巻き掛け装置のノズルの作用を示す作用図
【図13】従来の糸巻き掛け装置を示す図
【図14】糸巻き掛けの実験の状態を示す図
【図15】糸巻き掛けの実験結果を示す図
【符号の説明】
【0068】
1 糸
1A 糸の先端部
2 支持部
3 ボビン
4 保持部
5 張力付与部
6 ノズル(糸挿通部)
6N ノズルの中空部
7 糸巻き掛け機構
8 張力検出手段
9 制御装置(制御手段)
10 装置フレーム
10A 支柱
11 回転ドラム
12 第2フランジ
13 第1軸部
14 第2軸部
15 挟持部材
16 リミットスイッチ
17 揺動片
18 ボルト
19 ナット
20 支持具
21 第1テンションローラ
22 第2テンションローラ
23 ロボット(可動体)
24 回転軸
25 ヘッド
26 連結部材
26A 一片
26B 他片
26J 一片の上端部
29 テーブル
31 第1揺動アーム
32 第2揺動アーム
41 第1コイルスプリング(第1付勢手段)
42 第2コイルスプリング(第2付勢手段)
50 ガイドリング
51 第1補助ローラ
52 第2補助ローラ
59 アーム
61 第1支持アーム
62 第2支持アーム
71 第1案内ローラ
72 第2案内ローラ
73 第1ローラブラケット
74 第2ローラブラケット
81 第1糸挿通孔
82 第2糸挿通孔
99 弾性継手
100 糸巻き掛け装置
101,102 カラー(円筒状部材)
103 帯状繊維束
104 弾性材
105,106 内筒部材
111,121 円筒状部
112,122 第1フランジ
A1 一方向(第1揺動アームの第1揺動軸芯周りの一方向)
A2 一方向(第2揺動アームの第2揺動軸芯周りの一方向)
B ベアリング
C ノズル(糸挿通部)の軌跡
H 糸の繰り出し方向
K 径方向
M 電動モータ(回転駆動部)
O1 縦軸芯
O2 回転中心
O3 ボビンの軸芯
O4 第1揺動軸芯
O5 第2揺動軸芯
O6 カラーの軸芯
U 上方
V ノズルの速度
V1 カラーの接線方向におけるノズルの速度
V2 カラーの接線方向と直交する方向の速度
Z 上下方向
θ1,θ2 糸の傾斜角
G1 ガイドリングの軸芯方向の中心
L1 ガイドリングの軸芯方向の中心とボビンの軸芯との間の鉛直方向の長さ
J 軸方向
R ロール径
W1 上側位置
W2 上下中間位置
W3 下側位置
X ボビンの軸方向及び径方向の中心部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに径方向で対向する状態にテーブルに縦置きされた一対の円筒状部材に糸を巻き掛ける糸巻き掛け装置であって、
前記糸が巻回されて支持部に回転自在に支持された横置き状態のボビンと、
前記ボビンを回転させて前記糸を繰り出す回転駆動部と、
前記ボビンから繰り出された糸の先端部を保持する保持部と、
前記保持部と前記ボビンの間の糸に張力を付与する張力付与部と、
前記保持部よりも糸の繰り出し方向上手側で前記糸を挿通させる糸挿通部と、
前記糸挿通部を前記一対の円筒状部材の周りに回転させて、前記糸挿通部と前記保持部の間の糸を前記一対の円筒状部材に巻き掛ける糸巻き掛け機構とを備え、
前記糸が前記ボビンから上方に向かって繰り出され、前記糸挿通部に上方から挿通されるように前記糸の繰り出し経路が設定され、
前記糸の張力を検出する張力検出手段と、
前記張力検出手段の検出結果に基づいて、前記糸の張力が設定値になると前記回転駆動部が回転駆動して前記ボビンから前記糸が繰り出され、前記糸の張力が設定値よりも小さくなると、前記回転駆動部の回転が停止して前記ボビンからの糸の繰り出しが停止するように前記回転駆動部を制御する制御手段とを備え、
前記糸挿通部は、前記一対の円筒状部材の軸芯間の中心を通る縦軸芯周りに円運動しながら前記一対の円筒状部材に前記糸を巻き掛け、
前記ボビンから繰り出されて上方に向かう糸を前記ボビンの上方でガイドするガイドリングが装置フレームに支持され、
前記ガイドリングの軸芯方向の中心と前記ボビンの軸芯との間の鉛直方向の長さが、前記ボビンに巻回された糸のロール径の最大値の3倍以上に設定されている糸巻き掛け装置。
【請求項2】
前記ボビンの軸方向及び径方向の中心部の鉛直方向上方に前記ガイドリングが位置している請求項1記載の糸巻き掛け装置。
【請求項3】
前記張力付与部は、前記ガイドリングの上方に位置するテンションローラを備え、
前記テンションローラとガイドリングとの間の前記糸を鉛直姿勢に設定可能に前記テンションローラが配置されている請求項2記載の糸巻き掛け装置。
【請求項4】
前記糸巻き掛け機構は、装置フレームに対して3次元方向に移動自在な可動体を備え、
前記可動体は、平面視で回転中心を前記縦軸芯と一致させて駆動回転する回転軸を備え、
前記回転軸の径方向で前記糸挿通部が前記回転中心から離れて位置する状態に、前記糸挿通部が連結部材を介して前記回転軸に連結されている請求項1〜3のいずれか一つに記載の糸巻き掛け装置。
【請求項5】
前記糸挿通部は上下方向に沿う中空パイプ状のノズルから成り、前記ノズルの中空部に前記糸が挿通される請求項4記載の糸巻き掛け装置。
【請求項6】
前記回転軸の径方向中央部に前記回転軸と同芯状の第1糸挿通孔が貫通形成され、
前記連結部材がL字形に形成され、
前記回転軸に、前記連結部材の一片の上端部が固定されて、前記連結部材の一片に第2糸挿通孔が貫通形成され、
上方から前記第1糸挿通孔に挿通された前記糸を前記第2糸挿通孔に案内する第1案内ローラと、前記第2糸挿通孔に挿通された前記糸を前記ノズルの中空部に上方から案内する第2案内ローラとが前記連結部材に設けられている請求項5記載の糸巻き掛け装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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