説明

糸巻き装置

【課題】糸に巻き癖がつかず、しかも糸を解く作業が単に直線的に糸を引き出すだけである糸巻きを製造する糸巻き装置の提供する。
【解決手段】ケースに対して8の字状に糸を巻き付ける糸巻き装置であって、糸を供給する糸供給手段と、糸をケースに巻き付ける糸巻き付け手段200と、ケースに巻き付けられた糸の厚みを整える厚み調整手段とを有し、前記糸巻き付け手段200は、糸繰り出し部210と、ケース保持部220とから構成され、前記糸繰り出し部210と前記ケース保持部220とはそれぞれクランク機構を備え、該クランク機構により互いに直交する方向に往復運動を行うと共に、糸繰り出し部210の1往復時間とケース保持部220の1往復時間との往復時間比を2対1に設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに対して8の字状に糸を巻き付ける糸巻き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣り糸の幹糸やハリスを巻く糸巻きにおいては、円筒の両端にフランジを形成し円筒状部に幹糸を巻くものが一般的であった。
このような従来の糸巻きにおいては、糸が円筒状部に巻かれるので、巻き癖がつき易いというデメリットがある。また糸を引き出す際、フランジを手でつまんで、円筒の回りに沿って糸を解かなければならず、その作業が面倒であるという問題があった。
そのような問題を解決するものとして、例えば下記特許文献1がある。
下記特許文献1は、糸巻きに関する発明で、糸に巻き癖がつかず、しかも糸を解く作業が容易である技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3899117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、糸に巻き癖がつかず、しかも糸を解く作業が単に直線的に糸を引き出すだけであるので、容易に行えるメリットがある。
しかしながら、糸巻きを製造する糸巻き装置に関する記載や示唆が何らなされていないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、糸に巻き癖がつかず、しかも糸を解く作業が単に直線的に糸を引き出すだけである糸巻きを製造する糸巻き装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の糸巻き装置は、ケースに対して8の字状に糸を巻き付ける糸巻き装置であって、糸を供給する糸供給手段と、該糸供給手段により供給された糸をケースに巻き付ける糸巻き付け手段と、ケースに巻き付けられた糸の厚みを整える厚み調整手段とを有し、前記糸巻き付け手段は、前記糸供給手段により供給された糸をケース側へと繰り出す糸繰り出し部と、前記糸繰り出し部により繰り出された糸をケースに巻き付けるためにケースを保持するケース保持部とから構成され、前記糸繰り出し部と前記ケース保持部とはそれぞれクランク機構を備え、該クランク機構により互いに直交する方向に往復運動を行うように構成すると共に、糸繰り出し部の1往復時間とケース保持部の1往復時間との往復時間比を2対1に設定してあることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、ケースに対して8の字状に糸を巻き付ける糸巻き装置であって、糸を供給する糸供給手段と、該糸供給手段により供給された糸をケースに巻き付ける糸巻き付け手段と、ケースに巻き付けられた糸の厚みを整える厚み調整手段とを有し、前記糸巻き付け手段は、前記糸供給手段により供給された糸をケース側へと繰り出す糸繰り出し部と、前記糸繰り出し部により繰り出された糸をケースに巻き付けるためにケースを保持するケース保持部とから構成され、前記糸繰り出し部と前記ケース保持部とはそれぞれクランク機構を備え、該クランク機構により互いに直交する方向に往復運動を行うように構成すると共に、糸繰り出し部の1往復時間とケース保持部の1往復時間との往復時間比を2対1に設定してあることにより、糸供給手段より供給された糸をケースに対して、自動で且つ速やかに、確実に8の字状に巻き付けることができる。
【0008】
また本発明の糸巻き装置は、上記本発明の第1の特徴に加えて、糸繰り出し部は、糸供給手段により供給された糸をケース側へと案内する糸繰り出し子を備えた糸繰り出し枠と、該糸繰り出し枠の往復運動をガイドするためのガイド機構を備え、該ガイド機構は、ケースに巻き付ける糸が交差する位置で前記糸繰り出し枠を往復運動する方向に対して垂直方向に持ち上げるように構成してあることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、糸繰り出し部は、糸供給手段により供給された糸をケース側へと案内する糸繰り出し子を備えた糸繰り出し枠と、該糸繰り出し枠の往復運動をガイドするためのガイド機構を備え、該ガイド機構は、ケースに巻き付ける糸が交差する位置で前記糸繰り出し枠を往復運動する方向に対して垂直方向に持ち上げるように構成してあるので、糸が交差してその積層高さが高くなり易い交差位置においても、糸繰り出し子が糸の交差位置で引っ掛かるのを防止して、糸繰り出し子のスムーズな往復移動を確保することで、ケースへのスムーズな8の字状の巻き付けを達成することができる。
【0010】
また本発明の糸巻き装置は、上記本発明の第1又は第2の特徴に加えて、糸繰り出し部とケース保持部とに備えられるクランク機構は、何れか一方の動力に何れか他方が従動する動力伝達手段を介して駆動されることを第3の特徴としている。
【0011】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第1又は第2の特徴による作用効果に加えて、糸繰り出し部とケース保持部とに備えられるクランク機構は、何れか一方の動力に何れか他方が従動する動力伝達手段を介して駆動されることから、糸繰り出し部とケース保持部とを連動させて駆動させることができると共に、省エネな糸巻き装置とすることができる。
【0012】
また本発明の糸巻き装置は、上記本発明の第1〜第3の何れか1つの特徴に加えて、ケースは、1対の巻芯からなる本体部と、該本体部の両端に設けられるフランジからなるフランジ部とから構成されることを第4の特徴としている。
【0013】
上記本発明の第4の特徴によれば、上記本発明の第1〜第3の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、ケースは、1対の巻芯からなる本体部と、該本体部の両端に設けられるフランジからなるフランジ部とから構成されることから、糸巻き製造過程において巻き付けた糸の抜けを防止でき、製造効率のよい糸巻き装置とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の糸巻き装置によれば、糸に巻き癖がつかず、しかも糸を解く作業が単に直線的に糸を引き出すだけである糸巻きを、自動的に且つ大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る糸巻き装置を簡略化して示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る糸巻き装置の糸巻き付け手段を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る糸巻き装置の糸巻き付け手段を構成する糸繰り出し部を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る糸巻き装置の糸巻き付け手段を構成するケース保持部を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る糸巻き装置のケースを簡略化して示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る糸巻き装置の糸巻き付け手段を簡略化して示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る糸巻き装置の糸巻き付け手段を構成する糸繰り出し部を簡略化して示す左側面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る糸巻き装置の糸巻き付け手段と厚み調整手段とを簡略化して示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の図面を参照して、本発明に係る糸巻き装置1を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
【0017】
まず図1を参照して、本発明の糸巻き装置1は、ケース400に対して8の字状に糸10を巻き付ける糸巻き装置であり、糸供給手段100と、糸巻き付け手段200と、厚み調整手段300とから構成される。
【0018】
前記糸供給手段100は、図1に示すように、糸巻き付け手段200へ糸10を供給するためのものである。より具体的には、糸10を一定の圧力で糸巻き付け手段200へと供給する。
【0019】
次に図2を参照して、前記糸巻き付け手段200は、糸供給手段100より供給された糸10をケースに対して8の字状に巻き付ける手段であり、糸繰り出し部210と、ケース保持部220とから構成される。
【0020】
前記糸繰り出し部210は、糸供給手段100より供給された糸10をケース保持部220へと繰り出す部である。
この糸繰り出し部210は、図2に示すように、基台211と、動力軸212と、スライド台213と、糸繰り出し枠214とから構成される。
【0021】
前記基台211は、糸繰り出し部210の土台となるもので、図2、図3に示すように、平面視長方形等の平面の板状部材からなり、中央に円形の貫通孔2111を有し、上面に一対のスライドレール2112を平行に離間して設けている。またケース保持部220と対向する側面には、側面視略長方形の板状部材からなるガイド板2113を前記スライドレール2112に平行に設けている。
【0022】
前記一対のスライドレール2112は、スライド台213の左右方向の往復運動をガイドするレールである。このスライドレール2112は、図2、図3に示すように、細長い円柱形状からなる凸部2112aを有し、スライドレール2112の長手方向が基台211の長手方向と平行で、且つ一対のスライドレール2112が対向するように基台211に取り付けられている。
なお本発明の説明において、「左右方向」とは基台211の長手方向を示し、「前後方向」とは基台211の短手方向を示すものとする。
またスライドレール2112の形状は、必ずしも本実施形態のものに限るものではなく、スライド台213の左右方向の往復運動をガイドできるものであれば如何なるものであってもよい。
【0023】
前記ガイド板2113は、糸繰り出し枠214の左右方向の往復運動をガイドするためのガイド機構をなすものであり、図2、図3、図7に示すように、長手方向に伸びるガイド溝2113aを有する。このガイド溝2113aは、図7に示すように、長手方向中央部が上方に向かってなだらかに傾斜した形状をなしている。
【0024】
前記動力軸212は、糸巻き装置1の動力源となるもので、モータ等を駆動源として回転運動を行う。この動力軸212は、図2、図6に示すように、基台211の中央に配置され、上部に動力伝達部2121を有している。この動力伝達部2121は、動力軸212の回転運動を他の部材へ伝達するためのものであり、本実施形態においては、ベルト車を用いている。勿論、ベルト車に限るものではなく、動力軸212の回転運動を他の部材へ伝達することができるものであれば如何なるものであってもよい。
また動力伝達部2121の上方には、平面視円形の連結子2122aを先端に有する略棒状の連結片2122を連結させている。
【0025】
なお図1に示すように、動力伝達部2121は、基台211より下方に配置され、連結片2122は、基台211より上方に配置されている。また動力伝達部2121には動力伝達部材たるベルト2121aが掛けられている。
なおベルト2121aとしては、ゴム、鋼等、ベルト伝動に通常用いられるものであれば如何なるものであってもよい。また動力伝達部材は必ずしもベルトに限るものではなく、動力伝達部2121に合わせて適宜変更可能である。
【0026】
前記スライド台213は、基台211上を左右方向に往復運動する台である。このスライド台213は図2、図3に示すように、平面視略長方形の板状部材からなり、下面且つ長手方向両端に連結部2131を有する。この連結部2131は、スライド台213を基台211にスライド自在に連結させるためのものであり、図2、図3に示すように、凸部2112aに嵌合可能な凹部2131aを長手方向に有する。凹部2131aを凸部2112aに嵌め合わすことで、スライド台213を基台211に左右方向に往復運動可能に連結させることができる。また凹部2131aの断面形状は、図1、図2に示すように、凸部2112aの半径よりもやや大きい略円形としてある。このような構成とすることで、凸部2112aに嵌合が容易であると共に、使用時において脱着し難いものとすることができる。
【0027】
また図2に示すように、スライド台213の下面側には、ガイド板2132を有する。このガイド板2132は、動力軸212の駆動力をスライド台213に伝えると共に、連結片2122と相俟って動力軸212による円運動をスライド台213の左右方向への往復直線運動に変換するためのものである。このガイド板2132は、スライド台213の長手方向に伸びる受け溝2132aを有する板状部材で構成され、該受け溝2132aがスライドレール2112と直交する方向に配置されている。また受け溝2132aに連結片2122の連結子2122aを遊嵌させている。このような構成とすることで、スライド台213を動力軸212に連結させることができると共に、動力軸212の駆動力をスライド台213に伝えることができる。
【0028】
更にスライド台213は、ガイド板2132と直交する方向に配置されるスライドレール2112に連結されている。よって動力軸212と、スライドレール2112と、スライド台213とで、糸繰り出し部210のクランク機構を構成することができる。つまり、動力軸212の回転運動をスライド台213の左右方向の往復直線運動に変換することができる。
なお、ガイド板2132の形状は本実施形態のものに限るものではなく、動力軸212の駆動力をスライド台213に伝えると共に、スライドレール2112と合わさって動力軸212による円運動をスライド台213の左右方向への往復直線運動に変換できるものであれば如何なる形状であってもよい。
【0029】
またスライド台213の上面の先端側には、糸繰り出し枠214を連結するための連結部2133を有する。この連結部2133は、図2に示すように、厚み方向に貫通孔2133aを有する略長方形の板状部材からなり、一対の連結部2133にそれぞれ貫通孔2133aがスライド台213の短手方向に平行に設けられている。
【0030】
また図1に示すように、スライド台213には、前記連結部2133よりも更に先端側に、糸繰り出し枠214の垂直方向の運動を許容するための貫通孔2134を有する。
なお、ここで及び以下の説明において、「垂直方向」とは基台211の厚み方向を示すものとする。
【0031】
前記糸繰り出し枠214は、糸供給手段100により供給された糸10をケース400側へと繰り出すためのものである。この糸繰り出し枠214は、図2に示すように、枠板部2140と、連結部2141とから構成される。
【0032】
前記枠板部2140は、糸繰り出し枠214の骨格をなすもので、ケース保持部220へ糸10を繰り出す前方枠板部2140aと、スライド台213との連結等を担う後方枠板部2140bとで構成される。
【0033】
前記前方枠板部2140aは、図2、図3に示すように、その先端部に、それぞれ一対の糸繰り出し子AとガイドローラBとを有する。糸繰り出し子Aは、糸供給手段100により供給された糸10をケース400側へと案内するためのものであり、長手方向に貫通穴を有する細長い円柱形状をなし、後述するスライド台223と直交する方向に設置される。糸供給手段100より供給された糸10は、ガイドローラBを介して糸繰り出し子Aの貫通穴を通り、ケース保持部220へと繰り出される。
【0034】
前記後方枠板部2140bは、図2に示すように、前端で前方枠板部2140aと連結され、後端に軸受けCを有している。更に略中間部で後述する固定連結棒2141bと連結されている。
【0035】
前記連結部2141は、枠板部2140をスライド台213に連結させると共に、一対の枠板部2140を連結させ、更に糸繰り出し枠214の垂直方向の運動を担うためのものである。
この連結部2141は、図2、図3に示すように、可動連結棒2141aと、固定連結棒2141bとから構成される。
【0036】
前記可動連結棒2141aは、枠板部2140をスライド台213に連結させると共に、一対の枠板部2140を連結させ、更に糸繰り出し枠214の垂直方向の運動を許容するためのものである。この可動連結棒2141aは、図2、図3に示すように、断面が円形の棒状部材からなり、スライド台213の連結部2133の貫通穴2133aに挿通させた状態で両端を一対の後方枠板部2140bの軸受けCに嵌合させている。このような構成とすることで、糸繰り出し枠214とスライド台213とを連結させると共に、一対の枠板部2140を連結させることができる。よってスライド台213を介して糸繰り出し枠214を左右方向に往復直線運動させることができる。更に軸受けCに嵌合させることで、回転自在な可動連結棒2141aとすることができる。
【0037】
図2に示すように、前記固定連結棒2141bは、両端を後方枠板部2140bと連結させている。また固定連結棒2141bの下面にはガイド部2150を有する。このガイド部2150は、糸繰り出し枠214をガイド機構と連結させるためのものであり、図1、図2、図7に示すように、固定連結棒2141bから垂下する取付枠にピン2151を設けて、このピン2151を前記ガイド板2113のガイド溝2113aに遊嵌させて、スライド自在としている。これによって、前記連結片2122の回動に伴って連結子2122aが前記ガイド板132の受け溝2132aに連結された状態で、摺動し、スライド台213をスライド動作させる。
【0038】
よって糸繰り出し枠214の左右方向の往復運動をガイド機構をなすガイド板2113でガイドさせながら行うことができる。より具体的には、糸繰り出し枠214がガイド溝2113aに沿ってガイド板2113を一往復することで、糸繰り出し子Aがケース400を左右方向に一往復するように糸繰り出し枠214の左右方向の往復運動をガイドする。ここでガイド溝2113aは、既述したように、長手方向中央部が上方に向かってなだらかに傾斜した形状をなしている。よって糸繰り出し枠214は、図3に示すように、ガイド板2113の長手方向中央部で糸繰り出し枠214を往復運動する方向に対して垂直方向に持ち上げられるところ、回転自在な可動連結棒2141aとガイド部2150を有する固定連結棒2141bとを備えることで、糸繰り出し枠214の垂直方向への持ち上げをスムーズに行わせることができる。
【0039】
前記ケース保持部220は、糸繰り出し部210により繰り出された糸10をケース400に巻き付けるためにケース400を保持するためのものである。
このケース保持部220は、図2、図4に示すように、基台221と、動力軸222と、スライド台223とから構成される。
【0040】
前記基台221は、ケース保持部220の土台となるもので、図2、図4に示すように、平面視略コ字状の板状部材からなり、上面の左右方向両端に一対のスライドレール2211を有する。このスライドレール2211は、スライド台223の前後方向への往復運動をガイドするレールであり、図2に示すように、スライドレール2112と直交する方向に配置されると共に、一対のスライドレール2211が対向するように基台221に取り付けられている。
【0041】
前記動力軸222は、回転運動をなす動力軸であり、図2に示すように、ケース保持部220の略中央に配置されている。
また図1、図2、図6に示すように、動力軸222は、動力軸212と動力伝達手段たるベルト2121aを介して接続され、糸繰り出し部210の動力軸212の動力に従動して駆動される。
このような構成とすることで、糸繰り出し部210とケース保持部220とを容易に連動させて駆動させることができると共に、省エネな糸巻き装置1とすることができる。
【0042】
前記スライド台223は、ケース400を保持すると共に、基台221上を前後方向に往復運動する台である。このスライド台223は、図2、図4に示すように、平面視略長方形の板状部材からなり、上面にケース400を保持するケース保持台2231と、下面にスライドレール2211と連結するための連結部2232とをそれぞれ一対有する。
【0043】
前記ケース保持台2231は、ケース400を保持するための台であり、図4に示すように、凸部2231aを有する。ここでケース400は、図5に示すように、1対の巻芯からなる本体部410と本体部410の両端に平行に設けられるフランジ421、422からなるフランジ部420とから構成される。ケース400に設けられた図示しない凹部を凸部2231aと嵌め合わすことで、ケース400がケース保持台2231に保持される。
【0044】
前記連結部2232は、スライド台223をスライドレール2211に連結させるためのものであり、図2、図4に示すように、側面視略コ字状部材からなり、この連結部2232をスライドレール2211に嵌め合わすことで、スライド台223がスライドレール2211に連結される。
【0045】
また詳しく図示していないが、動力軸222と、スライドレール2211と、スライド台223とでケース保持部220のクランク機構を構成している。また既述したように、動力軸222は、動力軸212とベルト2121aを介して接続されている。このような構成とすることで、糸繰り出し部210におけるクランク機構の動力に従動する動力伝達手段を介してケース保持部220におけるクランク機構を駆動させることができる。
つまり動力軸212に従動する動力軸222の回転運動をスライド台223の前後方向の往復直線運動に変換することができ、ケース400を前後方向に往復直線運動させることができる。またスライドレール2211は、スライドレール2112と直交する方向に配置されていることから、糸繰り出し部210とケース保持部220とはそれぞれが備えるクランク機構により互いに直交する方向に往復運動を行うことができる。
【0046】
なお本実施形態においては、糸繰り出し部210におけるクランク機構の動力に従動する動力伝達手段を介してケース保持部220におけるクランク機構を駆動させる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、ケース保持部220におけるクランク機構の動力に従動する動力伝達手段を介して糸繰り出し部210におけるクランク機構を駆動させる構成としてもよい。
【0047】
特に本発明では、糸繰り出し部210における糸繰り出し枠214を左右方向に1往復させる1往復時間と、ケース保持部220に保持されるケース400を前後方向に1往復させる1往復時間との比を、2対1になるように設定している。このような構成をとることで、糸繰り出し部210における糸繰り出し枠214が左右方向に1往復する間にケース保持部220に保持されるケース400を前後方向に2往復させることができる。よってケース400に対して糸10を8の字状に巻き付けることができる。
なお8の字の形状は、糸繰り出し部210の糸繰り出し枠214の左右方向のストローク長さと、ケース保持部220のスライド台223(ケース400)の前後方向のストローク長さとを調整することで、8の字の形を細長くしたり、短くしたり、調整することができる。
【0048】
糸繰り出し枠214は、ガイド溝2113aに沿って1往復することで、糸繰り出し子Aがケース400を左右方向に1往復するようにガイド機構によってガイドされる。
そしてガイド溝2113aは長手方向中央部が上方に向かってなだらかに傾斜した形状をなしている。
更に糸繰り出し部210のスライド台213(糸繰り出し枠214、糸繰り出し子A)とケース保持部220のスライド台223(ケース400)とは、それぞれが備えるクランク機構により互いに直交する方向に往復運動を行う。
そして前記糸繰り出し部210側の左右1往復時間と前記ケース保持部220側の前後1往復時間との比を2対1とする。
以上のように機構を構成することで、糸10をケース400に8の字に巻くことが可能となると共に、ケース400に巻き付ける糸10が交差する位置においては、糸繰り出し枠214を往復運動する方向に対して垂直方向に持ち上げることができる。このため、糸10が交差する位置に巻き付ける糸10を、その他の位置に巻き付ける糸10よりも垂直方向に高い位置とすることができる。
より具体的には、図5(b)に示すように、糸10が交差する位置となるケース400の中央部で糸10を上フランジ421の上面に巻き付けることができる。よってケース400に対して糸10を巻き付ける際に糸10の張力を保持し易くすることができ、一段と確実且つ容易にケース400に糸10を巻き付けることができる。よって製造効率の良い糸巻き装置1とすることができる。
【0049】
前記厚み調整手段300は、ケース400に巻き付けられた糸10の厚みを整える手段である。この厚み調整手段300は、図1、図8に示すように、基台310と、伸縮アーム320と、押圧片330とから構成される。
【0050】
前記基台310は、厚み調整手段300の土台をなすものである。
前記伸縮アーム320は、先端に押圧片330を備え、油圧等の動力源により上下方向に伸縮するアームである。
前記押圧片330は、ケース400に巻き付けられた糸10を上方から押圧する押圧片である。より具体的には、ケース400に巻き付けられた糸10が交差する位置を上方から押圧する。
この押圧片330は、図1、図8に示すように、略サイコロ形状をなし、動力軸222を介して前後方向に往復直線運動するケース400に巻き付けられた糸10が交差する位置が押圧片330の直下に来るタイミングを、図示しないセンサーが一定の間隔で感知し、伸縮アーム320を伸ばし、糸10が交差する位置を押圧片330が押圧する。このような構成とすることで、交差位置での糸10の重なりによる厚み増大を防止し、これによって糸繰り出し子Aが糸10の交差位置で引っ掛かるのを防止して、糸繰り出し子Aのスムーズな往復移動を確保することができる。よってまた、ケース400へのスムーズな8の字状の巻き付けを達成することができる。
【0051】
前記ケース400は糸10を巻き付けるためのもので、本実施形態では一対設けられている。このケース400は、図5に示すように、1対の巻芯からなる本体部410と、該本体部の両端に平行に設けられる上フランジ421と下フランジ422とからなるフランジ部420とから構成される。このような構成とすることで、巻き付けた糸10の抜けを確実に防止でき、作業効率の良い糸巻き装置1とすることができる。
【0052】
次に本発明に係る糸巻き装置1の動作を説明する。
まずケース保持部220にケース400をセットする。この状態で糸供給手段100より巻き始めの糸10を供給する。糸供供給手段100より供給された糸10をガイドローラBを介して糸繰り出し子Aの貫通穴へ通し、ケース400の巻き始め位置にセットする。以上の工程により糸巻き装置1のスタンバイが完了する。
スタンバイが完了した後、糸巻き装置1を駆動させることで、ケース400に糸10が8の字状に巻き付けられた糸巻きが製造される。
【0053】
なお本発明における糸巻き装置を構成する糸供給手段100、糸巻き付け手段200、厚み調整手段300、ケース400の形状、大きさ、数、配置位置等は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は釣り糸の幹糸やハリスを巻く糸巻きを製造する糸巻き装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 糸巻き装置
10 糸
100 糸供給手段
200 糸巻き付け手段
210 糸繰り出し部
211 基台
212 動力軸
213 スライド台
214 糸繰り出し枠
220 ケース保持部
221 基台
222 動力軸
223 スライド台
300 厚み調整手段
310 基台
320 伸縮アーム
330 押圧片
400 ケース
410 本体部
420 フランジ部
421 上フランジ
422 下フランジ
2111 貫通孔
2112 スライドレール
2112a 凸部
2113 ガイド板
2113a ガイド溝
2121 動力伝達部
2121a ベルト
2122 連結片
2122a 連結子
2131 連結部
2131a 凹部
2132 ガイド板
2132a 受け溝
2133 連結部
2133a 貫通孔
2134 貫通孔
2140 枠板部
2140a 前方枠板部
2140b 後方枠板部
2141 連結部
2141a 可動連結棒
2141b 固定連結棒
2150 ガイド部
2151 ピン
2211 スライドレール
2231 ケース保持台
2231a 凸部
2232 連結部
A 糸繰り出し子
B ガイドローラ
C 軸受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに対して8の字状に糸を巻き付ける糸巻き装置であって、糸を供給する糸供給手段と、該糸供給手段により供給された糸をケースに巻き付ける糸巻き付け手段と、ケースに巻き付けられた糸の厚みを整える厚み調整手段とを有し、前記糸巻き付け手段は、前記糸供給手段により供給された糸をケース側へと繰り出す糸繰り出し部と、前記糸繰り出し部により繰り出された糸をケースに巻き付けるためにケースを保持するケース保持部とから構成され、前記糸繰り出し部と前記ケース保持部とはそれぞれクランク機構を備え、該クランク機構により互いに直交する方向に往復運動を行うように構成すると共に、糸繰り出し部の1往復時間とケース保持部の1往復時間との往復時間比を2対1に設定してあることを特徴とする糸巻き装置。
【請求項2】
糸繰り出し部は、糸供給手段により供給された糸をケース側へと案内する糸繰り出し子を備えた糸繰り出し枠と、該糸繰り出し枠の往復運動をガイドするためのガイド機構を備え、該ガイド機構は、ケースに巻き付ける糸が交差する位置で前記糸繰り出し枠を往復運動する方向に対して垂直方向に持ち上げるように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の糸巻き装置。
【請求項3】
糸繰り出し部とケース保持部とに備えられるクランク機構は、何れか一方の動力に何れか他方が従動する動力伝達手段を介して駆動されることを特徴とする請求項1又は2に記載の糸巻き装置。
【請求項4】
ケースは、1対の巻芯からなる本体部と、該本体部の両端に設けられるフランジからなるフランジ部とから構成されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の糸巻き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−79635(P2011−79635A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233471(P2009−233471)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(594180047)株式会社ケイエスエス (2)
【Fターム(参考)】