説明

糸状菌におけるヒトH鎖抗体の発現

本発明は、a)修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンをコードする組換え構造体により糸状菌宿主細胞を形質転換し、ここで前記修飾が前記L鎖との接触に関与する前記H鎖タンパク質の領域に1又は複数の突然変異を含んで成り;b)前記修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンの発現を促進する条件下で前記糸状菌宿主細胞を培養し;そしてc)前記修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンを回収する段階を含んで成る、いずれのL鎖も欠いているヒトH鎖免疫グロブリンが発現される、機能的ヒト免疫グロブリンの生成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、糸状菌におけるヒト免疫グロブリンH鎖タンパク質及びそのフラグメントの発現に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
過去数10年間、治療のためへの抗体の使用が焦点とされて来た。同時に、抗体の生成が、多くの焦点とされて来た。今日、困難であり、且つ費用がかかる治療抗体の発現は、哺乳類細胞において生じる。多くの試みが、微生物において抗体を発現するために行われてきた。なぜならば、それらは大きな発現能力を有し、そして取り扱うのに容易であるからである。
【0003】
しかしながら、それらの生物における抗体の発現は、特に抗体は2種のタンパク質(H及びL鎖)から成るので、困難であることが判明している。細菌、カメリダエ(Camelidae)ファミリーが、H鎖タンパク質からのみ成る抗体型を発現することが発見された。それにもかかわらず、このタイプの抗体は、通常の抗体と同じ程度の親和性を有することができる。これは、H鎖上の可変ドメインが大きいからである。それらの抗体のいくつかは酵母又はマウスにおいて発現されえることが判明した。例えば、WO94/25591号を参照のこと。
【0004】
カメリダエファミリーのH鎖タンパク質はヒトH鎖のタンパク質に対して相同である。但し、可変領域の1つがいくぶん大きい。
哺乳類発現システムにおけるヒト抗体の効果的な発現の問題を解決するために、本発明者は、ヒト抗体の発現が修飾されたH鎖のみを含んで成る機能的抗体をもたらすことが可能である他の適切な生物を捜して来た。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約:
驚くべきことには、本発明者は、糸状菌、例えばアスペルギラス(Aspergillus)におけるヒト抗体のH鎖のみの発現により、機能的ヒト抗体又はヒト抗体のフラグメントを得ることが可能であることを発見した。さらに、機能的な修飾されたヒトH鎖抗体又はヒトH鎖タンパク質のフラグメントが糸状菌、例えばアスペルギラスにおいて効果的に発現され得、そしてヒトH鎖タンパク質の低い溶解性の問題が、通常、L鎖と接触して存在する領域に適切な突然変異を導入することにより解決され得る。
【0006】
本発明は、a)修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンをコードする組換え構造体により糸状菌宿主細胞を形質転換し、ここで前記修飾が前記L鎖との接触に関与する前記H鎖タンパク質の領域に1又は複数の突然変異を含んで成り;b)前記修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンの発現を促進する条件下で前記糸状菌宿主細胞を培養し;そしてc)前記修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンを回収する段階を含んで成る、いずれのL鎖も欠いているヒトH鎖免疫グロブリンが発現される、機能的ヒト免疫グロブリンの生成方法に関する。
【0007】
定義:
本発明の詳細な態様の論議の前、本発明の主要観点に関連する特定用語の定義が提供される。
機能的免疫グロブリン:用語“機能的免疫グロブリン”とは、H鎖タンパク質又はその一部を単に含んで成るにもかかわらず、標的抗原に結合でき、そして/又は免疫系を活性化できる点でのその官能性を保存している免疫グロブリンとして定義される。
【0008】
修飾された免疫グロブリン:用語“修飾された免疫グロブリン”とは、1又は複数のアミノ酸が置換されているか、欠失されているか、又は付加/挿入されている免疫グロブリンとして定義される。特に、前記修飾は、通常のヒト免疫グロブリンにおいて、H鎖とL鎖との間の接触に関与するアミノ酸を含んで成り、この接触は免疫グロブリンの溶解性に影響を及ぼすと思われる。もう1つの態様においては、修飾は、通常のヒト免疫グロブリンにおいて、H鎖と抗原との間の接触に関与するアミノ酸を含んで成り、この修飾は免疫グロブリンの特異性に影響を及ぼす。
【0009】
機能的同等物:用語“機能的に同等の残基”とは、問題の免疫グロブリンのH鎖とL鎖との間の接触に関与するアミノ酸残基として定義される。
突然変異:用語“突然変異”とは、置換、欠失又は挿入とに定義される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の特定の記載:
H鎖タンパク質のみが発現され、そして抗体が機能的に活性のままである、糸状菌における修飾されたヒト抗体の効果的生成方法を提供することが本発明の目的である。
本発明の1つの態様においては、H鎖タンパク質の可変領域である、修飾されたヒトH鎖免疫グロブリン又はそのフラグメントは、適切な発現ベクターに、修飾された免疫グロブリンをコードするDNA配列を挿入し、そして糸状菌宿主細胞に前記組換えベクターを導入することにより生成される。次に、前記糸状菌宿主細胞が、ヒト免疫グロブリンH鎖の発現を促進する条件下で培養される。続いて、得られるヒト免疫グロブリンが、当業界において良く知られている方法を適用して、回収され、そして精製され得る。
【0011】
1つの特定の態様においては、ヒトH鎖免疫グロブリン又は修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンは、少なくとも可変領域、及びFc受容体により認識されるFc−領域を含んで成る。
さらなる態様においては、ヒトH鎖免疫グロブリン又は修飾されたヒト免疫グロブリンは、少なくとも可変領域を含んで成る。
さらなる態様においては、可変領域は、配列番号1に示されるペプチド配列を含んで成る。
さらなる態様においては、可変領域は、配列番号1に示されるペプチド配列から成る。
【0012】
修飾されたヒトH鎖免疫グロブリン中に導入される修飾は、L鎖との接触に関与するH鎖タンパク質の領域に突然変異を含んで成る。
1つの特定の態様においては、前記修飾は、修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンの上昇する溶解性をもたらす(Reichmann (1996) Journal of molecular Biology v. 259 p. 957-969)。
従って、さらなる態様においては、ヒト免疫グロブリンの完全なH鎖可変ドメイン、又は少なくとも可変領域、又は少なくとも可変領域及びFc−領域を含んで成るそのフラグメントの修飾は、L鎖との接触に関与するヒトH鎖免疫グロブリンの領域に突然変異を含んで成る。
【0013】
可変領域におけるH鎖とL鎖との間の上記に言及される接触に関与する可能な残基は、ヒト免疫グロブリンのH鎖可変ドメイン、Herceptin(WO01/15730A1号に開示される)を用いて、下記及び実施例に例示され、そして配列番号1に示されるペプチド配列の次の位置を包含する:V37, Q39, G44, L45, W47, Y95 及び W109。
ヒト免疫グロブリンのH鎖可変ドメイン、すなわちHerceptin(配列番号1)は次の通りである:evqlvesggglvqpggslrlscaasgftftdytmdwvrqapgkglewvadvnpnsggsiynqrfkgrftlsvdrskntlylqmnslraedtavyycarnlgpsfyfdywgqgtlvtvss。
【0014】
配列番号1に示されるペプチド配列は、ヒト免疫グロブリンのH鎖可変ドメイン、すなわちHerceptinから成るが、しかし他のヒトH鎖可変ドメインにおいては、前記接触に関与する残基は、その残基が機能的同等物である限り、異なった位置を有することができる。
本発明のさらなる態様においては、本発明の修飾は、前記L鎖との接触に関与するH鎖タンパク質の領域に突然変異を含んで成り、前記突然変異が配列番号1における残基V37, Q39, G44, L45, W47, Y95 及び W109のいずれかにおける突然変異、前記配列がヒト免疫グロブリンのH鎖可変ドメイン、すなわちHerceptinを表し、又は他のヒトH鎖免疫グロブリンにおける機能的に同等の残基における突然変異を含んで成る。
【0015】
上記に言及される位置は、デフォルト設定又はFastaP(バージョン3.3t08, W.R. Pearson & , D. J. Lipman PNAS (1988) 85:2444-2448)を用いて、当業界において知られているコンピュータープログラム、例えばBlastP (BLASTP 2.1. 2 (参照: Altschul, Stephen F. , Thomas L. Madden,Alejandro A. Schaffer, Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J. Lipman(1997),"Gapped BLAST and PSI-BLAST : a new generation of protein database searchprograms", Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)による相同性調査及び一列整列により、他のH鎖可変ドメインにおいて同定され得る。
【0016】
デフォルト設定は、下記に示される通りであった:
すべての主張の列挙:
-p プログラム名称[String]
-d データベース[String]
デフォルト=nr
-i 質問ファイル[File In]
デフォルト=stdin
-e 期待値(E)[Real]
デフォルト=10.0
-m 調査選択の整列
【0017】
0=対様式、
1=質問−固定された、同一性を示す、
2=質問−固定された、同一性を示さない、
3=フラット質問−固定された、同一性を示す。
4=フラット質問−固定された、同一性を示さない、
5=質問−固定された、同一性及びブラント末端を示さない、
6=フラット質問−固定された、同一性及びブラント末端を示さない、
7=XML Blast出力[Integer]
【0018】
デフォルト=0
-0 ブラント報告出力ファイル[File Out]任意
デフォルト=stdout
-F 質問配列の濾過(Blastnを伴ってのDUST、他と共にSEG)[String]
デフォルト=T
-G ギャップを開くための犠牲(ゼロは、デフォルト挙動性を示す)[Integer]
デフォルト=0
-E ギャップを拡張するための犠牲(ゼロは、デフォルト挙動性を示す)[Integer]
デフォルト=0
-X ギャップを付けられた一列整列についての低下値(ビットでの)(ゼロはデフォルト挙動性を示す)[Integer]
【0019】
デフォルト=0
-I デフラインでのGIを示す[T/F]
デフォルト=F
-q ヌクレオチドミスマッチについてのペナルティー(blastnのみ)[Integer]
デフォルト=−3
-r ヌクレオチドマッチについての価値(blastnのみ)[Integer]
デフォルト=1
-v (V)についての1つのラインの記載を示すためのデータベース配列の数[Integer]
デフォルト=500
-b (B)についての一列整列を示すためのデータベース配列の数[Integer]
デフォルト=250
-f ヒットを拡張するための限界、ゼロである場合、デフォルト[Integer]
【0020】
デフォルト=0
-g ギャップを付けられた一列整列の実施(tblastxにより入手できない)[T/F]
デフォルト=T
-Q 使用のための質問遺伝子コード[Integer]
デフォルト=1
-D DB遺伝子コード(tblast[nx]のみについての)[Integer]
デフォルト=1
-a 使用するプロセッサーの数[Integer]
デフォルト=1
-O SeqAlignファイル[File Out]任意
-J 質問デフラインであると思われる[T/F]
【0021】
デフォルト=F
-M マトリックス[String]
デフォルト=BLOSUM62
-W ワードサイズ、ゼロである場合、デフォルト[Integer]
デフォルト=0
-z データベースの効果的長さ(実際のサイズについてゼロと使用する)[Real]
デフォルト=0
-K 維持するための領域からの最良のヒットの数(デフォルト脱離、使用される場合、100の値が推薦される)[Integer]
【0022】
デフォルト=0
-P 複数のヒット 1−通過について0、単一のヒット 1−通過について1,2−通過について2[Integer]
デフォルト=0
-Y 調査空間の効果的な長さ(実際のサイズについてゼロを使用する)[Real]
デフォルト=0
-S データベースに対する調査のための質問群(blast [nx] 及びtblastxについての)、3は両者であり、1は上部であり、2は底部である[Integer]
デフォルト=3
-T HTML出力[T/F]を生成する
【0023】
デフォルト=F
-I GIのリストに対するデータベースの制限的調査[String]任意
-U FASTA配列の小文字フィルターリングの使用[T/F]任意
デフォルト=F
-y ビットでのブラスト拡張についての低下(X)(0.0はデフォルト挙動性を示す)[Real]
デフォルト=0.0
-Z 最終のギャップを付けられた一列整列についての低下値(X)(ビットでの)[Integer]
デフォルト=0
配列番号1に関して、上記に与えられる位置は、野生型残基である。
【0024】
さらにもう1つの態様においては、修飾は、抗原に対する特異性及び結合親和性を高めるアミノ酸を含んで成る。そのような修飾は、通常のヒト免疫グロブリンにおいて、H鎖と抗原との間の接触に関与するアミノ酸を含んで成る。前記アミノ酸は、ヒト免疫グロブリンのH鎖可変ドメイン、すなわちHercepthを表す、配列番号1における位置27-35, 50-57及び99-108, 又は他のヒトH鎖免疫グロブリンにおける機能的に同等の位置に含まれる残基を含んで成る。それらの修飾は、標準のファージ表示技法(Wandersee NJ ; Siilah NM ; Watkins NA ; Scott JP ; Ouwehand WH ; Hillery CA Blood,Vol. 9 1 Part I) pp. 484a(2001) Azzazy HME ;Highsmith Jr WE Clinical Biochemistry, Vol. 35(6) pp. 425-445 (2002), (165 refs. ))により同定され得、それにより、特異性及び結合親和性から試験され得る。
【0025】
従って、さらなる態様においては、本発明は、修飾が前記抗原との接触に関与するヒト可変H鎖免疫グロブリンの領域に突然変異を含んで成り、前記突然変異がヒト免疫グロブリンのH鎖可変ドメイン、すなわちHerceptinを表す配列番号1における位置27−35、50−57及び99−108に含まれる残基のいずれかにおける突然変異、又は他のヒトH鎖免疫グロブリンにおける機能的に同等の残基における突然変異を含んで成る、本発明の方法に関する。
【0026】
核酸構造体:
本発明はまた、適切な宿主細胞におけるコード配列の発現を、制御配列と適合できる条件下で指図する、1又は複数の制御配列に作用可能に結合される本発明のヌクレオチド配列を含んで成る核酸構造体に関する。
本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、ポリペプチドの発現を提供するために種々の手段で操作され得る。ベクター中へのヌクレオチド配列の挿入の前、そのヌクレオチド配列の操作は、発現ベクターに依存して、所望されるか又は必要とされ得る。組換えDNA方法を用いてヌクレオチド配列を修飾するための技法は、当業界において良く知られている。
【0027】
制御配列は、適切なプロモーター配列、すなわちヌクレオチド配列の発現のために宿主細胞により認識されるヌクレオチド配列であり得る。プロモーター配列は、ポリペプチドの発現を仲介する転写制御配列を含む。プロモーターは、宿主細胞において転写活性を示すいずれかのヌクレオチド配列、たとえば変異体の、切断された、及びハイブリッドのプロモーターであり得、そして宿主細胞に対して相同であるか又は異種である細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られる。
【0028】
糸状菌宿主細胞における本発明の核酸構造体の転写を指令するための適切なプロモーターの例は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・アワモリグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコル・ミエヘイリパーゼ、アスペルギラス・オリザエ アルカリプロテアーゼ、アスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアセトアミダーゼ、及びフサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼ(WO96/00787号)をコードする遺伝子から得られるプロモーター、並びにアスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ及びアスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼをコードする遺伝子からのプロモーターのハイブリッド、及びそれらの変異体の切断され、及びハイブリッドのプロモーターである。
【0029】
糸状菌宿主細胞のための好ましいターミネーターは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、アスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼ及びフサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼについての遺伝子から得られる。
制御配列はまた、適切なリーダー配列、すなわち宿主細胞による翻訳のために重要であるmRNAの非翻訳領域でもあり得る。リーダー配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5’末端に作用可能に連結される。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのリーダー配列が、本発明において使用され得る。
【0030】
糸状菌宿主細胞のための好ましいリーダーは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランストリオースリン酸イソメラーゼについての遺伝子から得られる。
制御配列はまた、ポリアデニル化配列、すなわちヌクレオチド配列の3’末端に操作可能に連結され、そして転写される場合、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するためにシグナルとして宿主細胞により認識される配列でもあり得る。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのポリアデニル化配列が,本発明において使用される。
【0031】
糸状菌宿主細胞のための好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギキラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、フサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼ及びアスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼについての遺伝子から得られる。
【0032】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に連結されるアミノ酸配列をコードし、そしてそのコードされたポリペプチドを細胞の分泌路中に方向づけるシグナルペプチドコード領域でもあり得る。ヌクレオチド配列のコード配列の5’側末端は、本来、分泌されたポロペプチドをコードするコード領域のセグメントと翻訳読み取り枠を整合して、天然において連結されるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。他方では、コード配列の5’側末端は、そのコード配列に対して外来性であるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。そのコード配列が天然において、シグナルペプチドコード領域を含まない外来性シグナルペプチドコード領域が必要とされる。他方では、外来性シグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドの増強された分泌を得るために、天然のシグナルペプチドコード領域を単純に置換することができる。しかしながら、分泌路中に発現されたポリペプチドを方向づけるいずれかのシグナルペプチドコード領域が、本発明に使用され得る。
【0033】
糸状菌宿主細胞のための効果的なシグナルペプチドコード領域は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガー中性アミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイアスペラギン酸プロテイナーゼ、ヒューミコラ・インソレンスセルラーゼ及びヒューミコラ・ラヌギノサリパーゼについての遺伝子から得られたシグナルペプチドコート領域である。
【0034】
宿主細胞の増殖に関して、ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することがまた所望される。調節システムの例は、調節化合物の存在を包含する、化学的又は物理的刺激に応答して、遺伝子の発現の開始又は停止を引き起こすそれらのシステムである。原核生物系における調節システムは、lac, tac及びtrpオペレーターシステムお包含する。酵母においては、ADH2システム又はGAL1システムが使用され得る。
【0035】
糸状菌においては、TAKAα−アミラーゼプロモーター、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼプロモーター及びアスペルギラス・オリザエグルコアミラーゼプロモーターが、調節配列として使用さえ得る。調節配列の他の列は、遺伝子増幅を可能にするそれらの配列である。真核システムにおいては、それらはメトトレキセートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、及び重金属と共に増幅されるメタロチオネイン遺伝子を包含する。それらの場合、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、調節配列により作用可能に連結される。
【0036】
発現ベクター:
本発明はまた、本発明の核酸構造体を含んで成る組換え発現ベクターにも関する。上記の種々のヌクレオチド及び制御配列は、1又は複数の便利な制限部位でポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の挿入又は置換を可能にするためにそれらの部位を含むことができる組換え発現ベクターを生成するために一緒に連結され得る。他方では、本発明のヌクレオチド配列は、前記配列又は前記配列を含んで成る核酸構造体を、発現のための適切なベクター中に挿入することによって発現され得る。発現ベクターを創造する場合、そのコード配列はベクターに位置し、その結果、コード配列は発現のための適切な制御配列により作用可能に連結される。
【0037】
組換え発現ベクターは、組換えDNA方法に便利にゆだねられ得、そしてヌクレオチド配列の発現をもたらすことができるいずれかのベクター(たとえば、プラスミド又はウィルス)であり得る。ベクターの選択は典型的には、ベクターが導入される予定である宿主細胞とベクターとの適合性に依存するであろう。ベクターは、線状又は閉環された環状プラスミドであり得る。
ベクターは自律的に複製するベクター、すなわち染色体存在物として存在するベクター(その複製は染色体複製には無関係である)、たとえばプラスミド、染色体外要素、ミニクロモソーム又は人工染色体であり得る。
【0038】
ベクターは自己複製を確かめるためのいずれかの手段を含むことができる。他方では、ベクターは、糸状菌細胞中に導入される場合、ゲノム中に組み込まれ、そしてそれが組み込まれている染色体と一緒に複製されるベクターであり得る。さらに、宿主細胞のゲノム中に導入される全DNA又はトランスポゾンを一緒に含む、単一のベクター又はプラスミド、又は複数のベクター又はプラスミドが使用され得る。
本発明のベクターは好ましくは、形質転換された細胞の容易な選択を可能にする1又は複数の選択マーカーを含む。選択マーカーは、1つの遺伝子であり、その生成物は、殺生物剤又はウィルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求性に対する原栄養要求性、及び同様のものを提供する。
【0039】
糸状菌宿主細胞に使用するための選択マーカーは、次の群から選択されるが、但しそれらだけには限定されない:amdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB (ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD (硝酸レダクターゼ)、pyrG (オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ) 及びtrpC (アントラニル酸シンターゼ)、並びにそれらの同等物。
【0040】
アスペルギラス・ニジュランス又はアスペルギラス・オリザエのamdS及びpyrG遺伝子及びストレプトミセス・ヒグロスコピカスのbar遺伝子が、アスペルギラス細胞への使用のために好ましい。
本発明のベクターは好ましくは、宿主細胞ゲノム中へのベクターの安定した組み込み、又は細胞のゲノムに無関係に細胞におけるベクターの自律的複製を可能にする要素を含む。
【0041】
宿主細胞のゲノム中への組み込みのためには、ベクターは、相同又は非相同組換えによるゲノム中へのベクターの安定した組み込みのためのベクター中のポリペプチド、又はいずれか他の要素をコードするヌクレオチド配列に依存する。他方では、ベクターは、宿主細胞のゲノム中への相同組換えによる組み込みを方向づけるための追加のヌクレオチド配列を含むことができる。その追加のヌクレオチド配列は、染色体における正確な位置での宿主細胞ゲノム中へのベクターの組み込みを可能にする。正確な位置での組み込みの可能性を高めるために、組み込み要素は好ましくは、相同組換えの可能性を高めるために対応する標的配列と高い相同性を示す十分な数のヌクレオチド、たとえば100〜1,500個の塩基対、好ましくは400〜1,500個の塩基対、及び最も好ましくは800〜1,500個の塩基対を含むべきである。組み込み要素は、宿主細胞のゲノムにおける標的配合と相同であるいずれかの配列であり得る。さらに、組み込み要素は、非コード又はコードヌクレオチド配列であり得る。他方では、ベクターは非相同組換えにより宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得る。
【0042】
宿主細胞:
本発明はまた、ポリペプチドの組換え生成において都合良く使用される、本発明の核酸配列を含んで成る組換え宿主にも関する。本発明のヌクレオチド配列を含んで成るベクターは、そのベクターが染色体組み込み体として、又は前記のような自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、宿主細胞中に導入される。
【0043】
好ましい態様においては、宿主細胞は菌類細胞である“菌類”とは、本明細書において使用される場合、門アスコミコタ(Ascomycota)、バシジオミコタ(Basidiomycota)、キトリジオミコタ(Chytridiomycota)及びヅイゴミコタ(Zygomycota)(Hawksworth など., Ainsworth and Bisby’s Dictionary of the Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKにより定義される)、及びオーミコタ(Oomycota)(Hawksworth など., 1995, 前記、171ページに引用される)、並びに栄養胞子菌(Hawksworh など., 1995, 前記)を包含する。
【0044】
もう1つのより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は糸状菌細胞である。“糸状菌”とは、ユーミコタ(Eumycota)及びオーミコタ(Oomycota)のすべての糸状形を包含する(Hawksworthなど., 1995, 前記により定義されるような)。糸状菌は一般的に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン及び他の複合多糖類から構成される菌子体壁により特徴づけられる。成長増殖は、菌子拡張によってであり、そして炭素代謝は絶対好気性である。対照的に、酵母、たとえばサッカロミセス・セレビシアエによる成長増殖は、単細胞葉状体の発芽によってであり、そして炭素代謝は発酵性である。
【0045】
さらにより好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギラス(Aspergillus)、フサリウム(Fusarium)、ヒューミコラ(Humicola)、ムコル(Mucor)、ミセリオプソラ(Myceliophthora)、ネウロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicilium)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)又はトリコダーマ(Trichoderma)の種の細胞であるが、但しそれらだけには限定されない。
【0046】
最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、アスペルギラス・アワモリ、アスペルギラス・ホエチダス、アスペルギラス・ジャポニカ、アスペルギラス・ニジュランス、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・オリザエ細胞である。もう1つの最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、フサリウム・バクトリジオイデス、フサリウム・クロックウェレンズ 、フサリウム・セレアリス、フサリウム・クルモラム、フサリウム・グラミネアラム、フサリウム・グラミナム、フサリウム・ヘテロスポラム、フサリウム・ネグンジ、フサリウム・オキシスポラム、フサリウム・レチキュラタム、フサリウム・ロゼウム、フサリウム・サムブシウム、フサリウム・サルコクロウム、フサリウム・ソラニ、フサリウム・スポロトリキオイデス、フサリウム・スルフレウム、フサリウム・トルロサム、フサリウム・トリコセシオイデス又はフサリウム・ベネナタム細胞である。
【0047】
さらに最も好ましい態様においては、糸状菌親細胞は、フサリウム・ベネナタム(Nirenberg sp. nov.)細胞である。さらに最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、ヒューミコラ・インソレンス、ヒューミコラ・ラヌギノサ、ムコル・ミエヘイ、ミセリオプソラ・サーモフィリア、ネウロスポラ・クラサ、ペニシリウム・プルプロゲナム、チエラビア・テレストリス、トリコダーマ・ハルジアナム、トリコダーマ・コニンギ、トリコダーマ・ロンジブラキアタム、トリコダーマ・レセイ又はトリコダーマ・ビリデ細胞である。
【0048】
菌類細胞は、プロトプラスト形質転換、プロトプラストの形質転換、及びそれ自体知られている態様での細胞壁の再生を包含する工程により形質転換され得る。アスペルギラス宿主細胞の形質転換のための適切な方法は、ヨーロッパ特許第238023号及びYeltonなど., 1984, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81; 1470-1474に記載される。フラリウム種を形質転換するための適切な方法は、Malardierなど., 1989, Gene 78: 147-156, 及びWO96/00787号により記載される。酵母は、Becker and Guarente. In Abelson, J.N. and Simon, M.I., editors, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Methods in Enzymology, Volume 194, pp 182-187, Academic Press, Inc., New York; Ito など, 1983, Journal of Bacteriology 153: 163; 及びHinnen など, 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75; 1920により記載される方法を用いて形質転換され得る。
【0049】
生成方法:
本発明はまた、(a)ポリペプチドを生成できる菌株を培養し;そして(b)ポリペプチドを回収することを含んで成る、本発明のポリペプチドを生成するための方法にも関する。好ましくは、前記菌株は、アスペルギラス属の株、及び好ましくは、アスペルギラス・オリザエ及びアスペルギラス・ニガーである。
本発明はまた、(a)ポリペプチドの生成を助ける条件下で宿主細胞を培養し;そして(b)ポリペプチドを回収することを含んで成る、本発明のポリペプチドを生成するための方法にも関する。
【0050】
本発明の生成方法においては、細胞は、当業界において知られている方法を用いて、ポリペプチドの生成のために適切な栄養培地において培養される。例えば、細胞は、ポリペプチドの発現及び/又は単離を可能にする、適切な培地において、及び条件下で行われる実験室用又は産業用発酵器において、振盪フラスコ培養、小規模又は大規模発酵(連続、バッチ、供給バッチ、又は団体状態発酵を包含する)により培養され得る。培養は、炭素及び窒素源及び無機塩を含んで成る適切な栄養培地において、当業界において知られている方法を用いて行われる。適切な培地は、市販されているか、又は公開されている組成(例えば、American Type Culture Collection のカタログにおける)に従って調製され得る。ポリペプチドが栄養培地に分泌される場合、ポリペプチドは培地から直接的に回収され得る。ポリペプチドが分泌されない場合、それは細胞溶解物から回収され得る。
【0051】
ポリペプチドは、そのポリペプチドに対して特異的である、当業界において知られている方法を用いて検出され得る。それらの検出方法は、特定の抗体、酵素生成物の形成、又は酵素基質の消出の使用を包含する。例えば、酵素アッセイは、本明細書に記載されるようなポリペプチドの活性を決定するために使用され得る。
得られるポリペプチドは、当業界において知られている方法により回収され得る。例えば、ポリペプチドは、従来の方法、例えば遠心分離、濾過、抽出、噴霧−乾燥、蒸発又は沈殿(但し、それらだけには限定されない)により、栄養培地から回収され得る。
【0052】
本発明のポリペプチドは、当業界において知られている種々の方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動方法(例えば、分離用等電点電気泳動)、示差溶解性(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS−PAGE又は抽出(但し、それらだけには限定されない)により精製され得る(例えば、Protein Purification, J.C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publlishers, New York, 1989を参照のこと)。
【0053】
用途:
本発明に従って生成される抗体の治療製剤は、当業界において知られているようにして配合され得る。
前記製剤は、処理される特定の指標のために必要な1つ以上の活性化合物を含むことができる。例えば、もう1つのタイプの抗体を提供することが所望され、そして/又は組成物は細胞毒性剤、サイトカイン又は成長阻害剤を含んで成る。
【0054】
インビボ投与のために使用される製剤は、無菌であるべきである。これは、例えば無菌濾過膜を通しての濾過により容易に達成され得る。
もう1つの用途の抗体は、抗体及び酵素の結合部分から成るキメラタンパク質である。この手段で、2つの結合性質(1つは酵素であり、そして他は抗体である)を有する触媒性生分子が企画され得る。これは、卓越した活性を有する酵素をもたらすことができる。
【実施例】
【0055】
例1:アスペルギラス株JaL355の構成
BECh2は、特許WO98/12300号(JaL228を記載する)にさらに言及するWO00/39322号に記載される。
pJaL173は、WO98/12300号に記載される。
pJaL335は、WO98/12300号に記載される。
A. オリザエ株BECh2におけるアルカリプロテアーゼ遺伝子に存在する欠陥pyrG遺伝子を除去するために、次のことを行った:
【0056】
pyrG A. オリザエ株、ToC1418の単離:
A. オリザエ株BECh2を、5−フルオロ−オロチン酸(FOA)に対する耐性についてスクリーンし、自発的pyrG変異体を同定した。1つの株ToC1418を、pyrG-であるとして同定した。ToC1418はウリジン依存性であり、従ってそれを、野生型pyrG遺伝子により形質転換し、そしてウリジンの不在下で増殖する能力により、形質転換体を選択した。
【0057】
pyrG+ A. オリザエ株、JaL352の構成:
アルカリプロテアーゼ遺伝子に存在する欠陥pyrG遺伝子における突然変異を、配列決定により決定した。A. オリザエ株BECh2からの染色体DNAを、下記プライマー104025及び104026を用いて、PCRにより調製した:
104025 (配列番号 2):5'-CCTGAATTCACGCGCGCCAACATGTCTTCCAAGTC, 及び
104026 (配列番号3):5'-GTTCTCGAGCTACTTATTGCGCACCAACACG。
欠陥pyrG遺伝子のコード領域を含む、933bpのフラグメントを増幅した。
【0058】
933bpのフラグメントを精製し、そして次のプライマーにより配列決定した:
プライマー104025, プライマー104026,
プライマー104027 (配列番号4):5'-ACCATGGCGGCACTCTGC,
プライマー104028 (配列番号5): 5'-GAGCCGTAGGGGAAGTCC,
プライマー108089 (配列番号6):5'- CTTCAGACTGAACCTCGCC, 及び
プライマー108091 (配列番号7): 5'-GACTCGGTCCGTACATTGCC。
【0059】
配列決定は、特別な塩基GがpyrG-コード領域における位置514(pyrG遺伝子の開始コドンにおけるAから数えての)で挿入され、それによりフレームシフト突然変異が創造されることを示す。
【0060】
アルカリプロテアーゼに存在する欠陥pyrG遺伝子から野生型pyrG遺伝子を製造するために、A. オリザエpyrG-株ToC1418を、標準の方法を用いて、150pモルのオリゴヌクレオチド5'-CCTACGGCTCCGAGAGAGGCCTTTTGATCCTTGCGGAG-3'(配列番号8)により形質転換した。オリゴヌクレオチドは、その5’末端で都合良くリン酸化され得る。オリゴヌクレオチドは、pyrG読取枠を回復するが、しかし同時に、サイレンス突然変異が導入され、それによりStuI制限エンドヌクレアーゼ部位が創造される。次に、形質転換体を、ウリジンの不在下で増殖するそれらの能力により選択した。再単離の後、染色体DNAを、8個の形質転換体から調製した。変化を確めるために、785bpのフラグメントを、次のプライマー135944(配列番号9):5'-GAGTTAGTAGTTGGACATCC、及びプライマー108089(興味ある領域を包含する)を用いて、PCRにより増幅した。785bpのフラグメントを、精製し、そしてプライマー108089及び135944により配列決定した。予測される変化を有する1つの株を、JaL352と命名した。
【0061】
pyrG- A. オリザエ株JaL355の単離:
アルカリプロテアーゼ遺伝子に存在するpyrG遺伝子を除去するために、JaL352を、標準の方法により、A. オリザエアルカリプロテアーゼ遺伝子の5’及び3’フランキング配列を有する、pJaL173の5.6kbのBamHIフラグメントにより形質転換した。プロトプラストを、非選択性プレート上で再生し、そして胞子を集めた。約109個の胞子を、FOAに対する耐性についてスクリーンし、pyrG変異体を同定した。再単離の後、染色体DNAを、14のFOA耐性形質転換体から調製した。
【0062】
染色体DNAをBalIにより消化し、そしてA. オリザエアルカリプロテアーゼ遺伝子の5’及び3’フランキング配列の一部を含む、pJaL173からの1kbの32P-ラベルされたDNA BalIフラグメントをプローブとして用いて、サザンブロットにより分析した。興味ある株を、4.8kbのBalIバンドの消出及び1kbのBalIバンドの出現により同定した。A. オリザエpyrG遺伝子を含むpJaL335からの3.5kbの32P−ラベルされたDNA HindIII フラグメントによる同じフィルターのプローブは、興味ある株における4.8kbのBalIバンドの消出をもたらす。それらの形質転換体に起因する1つの株を、JaL355と命名した。
【0063】
例2:発現のために使用されるプラスミドの構成
発現プラスミド上の興味ある遺伝子の発現を改良するために、pyrG遺伝子により例示される、選択のために使用される遺伝子マーカーの発現を低めることが所望される。低められた発現を有する、選択遺伝子を含んで成る発現プラスミドを有する宿主細胞を、通常の選択的圧力下で培養することにより、高められたプラスミドコピー数を有する宿主細胞についての選択がもたらされ、従って生存のために必要な選択遺伝子の合計の発現レベルが達成される。しかしながら、より高いプラスミドコピー数はまた、興味ある遺伝子の高められた発現をもたらす。
【0064】
選択遺伝子の発現レベルを低める1つの手段は、不良に転写されたプロモーターを用いることにより、又はmRNAの機能的半減期を低めることにより、mRNAレベルを低めることである。これを行うための1つの手段は、コザック−領域(Kozak M Gene, Vol. 234 (2) pp. 187-208 (1999) )を突然変異誘発することである。これは、翻訳の開始のために重要である、開始コドン(ATG)のすぐ上流の領域である。
プラスミドpENI2155は、pyrG遺伝子の上流の不良なコザック領域を含んで成り、そして次の通りにして構成される:
【0065】
鋳型としてのプラスミドpENI1861(その構成は下記に記載される)及びPWOポリメラーゼ(製造者により推薦されるような条件)を用いて、2種のPCR−反応を、1つのPCR−反応においてプライマー141200J1及び270999J9及びもう1つのPCR−反応においてプライマー141200J2及び290999J8を用いて行った:
141200J1(配列番号10):5'-ATCGGTTTTATGTCTTCCAAGTCGCAATTG
141200J2(配列番号11):5'-CTTGGAAGACATAAAACCGATGGAGGGGTAGCG
290999J8(配列番号12):5'-TCTGTGAGGCCTATGGATCTCAGAAC
290999J9(配列番号13):5'-GATGCTGCATGCACAACTGCACCTCAG。
【0066】
PCRフラグメントを、QIAGENTM回転カラムを用いて、1%アガロースゲルから精製した。第2のPCR−反応を、プライマー270999J8及び270999J9と共に、鋳型としての2種のフラグメントを用いて行った。この反応からのPCR−フラグメントを、記載のようにして、1%アガロースゲルから精製し;前記フラグメント及びベクターpENI1849(発現レポーターとして遺伝子を含む)を、制限酵素StuI及びSphIにより切断し、得られるフラグメントを、従来の方法を用いて、1%アガロースゲルから精製した。
【0067】
精製されたフラグメントを連結し、そしてE. コリ株DH10Bを形質転換した。1つの形質転換体からのプラスミドDNAを単離し、そして配列決定し、次の突然変異誘発されたコザック領域の導入を確認した:GGTTTTATG(野生型よりもむしろ:GCCAACATG)。このプラスミドをpENI2155として表示した。
アスペルギラス細胞を、プラスミドpENI1849(対照の野生型プラスミド)及びpENI2155(pyrG遺伝子の上流の突然変異誘発されたコザック領域)により形成転換した。約1μgのpENI1849及びpENI2155を用いて、A. オリザエJaL355を形質転換した(JaL355は、pgrG遺伝子が、WO98/01470号に記載のようにして、不活性化されているA.オリザエA1560の誘導体である;WO00/24883号に記載のような形質転換プロトコール)。形質転換体を、37℃で4日間インキュベートした。
【0068】
pENI2155形質転換からの24個の形質転換体及びpENI1849からの12個の形質転換体を、1×Vogel培地及び2%マルトースを含む96ウェルマイクロタイタープレートに接種した(Methods in Enzymology, Vol.17, p.84)。34℃での4日間の増殖の後、培養ブイヨンを基質としてpnp-バレレートを用いて、リパーゼ活性についてアッセイした。
【0069】
個々のウェルからの10μlのアリコートの培地を、0.018%のp−ニトロフェニルバレレート、0.1%のTritonXTM-100, 10mMのCaCl2、50mMのトリス(pH7.5)のリパーゼ基質200μlを含むマイクロタイターウェルに添加した。リパーゼ活性を、動力学的マイクロプレートリーダー(Molecular Device Corp., Sunnyvale CA)により、標準の酵素学的プロトコール(例えば、Enzyme Kinetics,Paul C. Engel, ed. , 1981, Chapman and Hall Ltd.)を用いて、5分間隔で分光光度的にアッセイした。手短には、生成物形成を、基質ターンオーバーの初期速度の間、測定し、そして5分間、15秒ごとに、405nmでの吸光度から計算された曲線の傾斜として定義する。任意のリパーゼ活性単位を、最高のリパーゼ活性を示す形質転換体に対して標準化した。30の形質転換体のそのようなグループに関して、平均値及び標準偏差を計算した。任意の単位が得られる場合、平均リパーゼ活性及び相対的標準の偏差は下記の通りであった:
【0070】
1849の形質転換体:65±14
2155の形質転換体:120±22
明らかに、突然変異誘発されたコザック領域が選択遺伝子pyrGの前に導入されている、2155の形質転換体に、ほぼ2倍のリパーゼ発現が存在する。
【0071】
プラスミドpENI1861を、発現プラスミドに人工アスペルギラスプロモーターの状態、及びクローニングのための多くのユニーク制限部位を有するよう製造した。PCRフラグメント(約620bp)を、鋳型としてのプラスミドpMT2188(pMT2188の構成は下記に記載される)、及び次のプライマーを用いて製造した:
051199J1(配列番号14):
5'-CCTCTAGATCTCGAGCTCGGTCACCGGTGGCCTCCGCGGCCGCTGGATCCCCAGTTGTG
1298TAKA (配列番号15):
5'-GCAAGCGCGCGCAATACATGGTGTTTTGATCAT。
【0072】
フラグメントを、BssHII及びBaglIIにより切断し、そしてBassHII及びBglIIにより切断されたpENI1849中にクローン化した。クローニングを、配列決定により確証した。
プラスミドpENI1849を、pyrG発現のための必須配列にpyrG遺伝子を切断し、プラスミドのサイズを低め、従って形質転換頻度を改良するために製造した。PCRフラグメント(約1800bp)を、鋳型としてのpENI1299(WO00/24883号、図2及び例1に記載される)、及び次のプライマーを用いて製造した:270999J8 (配列番号12), 及び270999J9 (配列番号13)。
【0073】
PCR−フラグメントを、制限酵素StuI及びSphIにより切断し、そしてStuI及びSphIによりまた切断されているpENI1298(WO00/24883号、図1及び例1に記載される)中にクローン化し;クローニングを配列決定により確証した。
【0074】
プラスミドpMT2188は、アスペルギラス・ニジュランストリオースリン酸イソメラーゼ非翻訳リーダー配列に融合されるアスペルギラス・ニガー中性アミラーゼIIプロモーター(Pna/tpi)、及びA. ニガーアミログリコシダーゼターミネーター(Tamg)に基づかれる発現カセットから成る、アスペルギラス発現プラスミドpCaHj483(WO98/00529号に記載される)に基づかれた。単一の窒素原としてのアセトアミド上で増殖できるA. ニジュランスからのアスペルギラス選択マーカーamdSがまた、pGaHj483上に存在する。それらの要素を、E. コリベクターpUC19(New Wngland Biolabs)中にクローン化した。pUC19のE. コリにおける選択を可能にするアンビシリン耐性マーカーを、E. コリにおいてpyrF突然変異を補足することができるサッカロミセス・セレビシアエのURA3マーカーにより置換し、その置換は次の手段で行われた:
複製のpUC19起点を、次のプライマーにより、pCaHj48からPCR増幅した:
142779(配列番号16): 5'-TTGAATTGAAAATAGATTGATTTAAAACTTC
142780 (配列番号17): 5'-TTGCATGCGTAATCATGGTCATAGC。
【0075】
プライマー142780は、PCRフラグメントにBbuI部位を導入する。ExpandTM PCRシステム (Roche Molecular Biohcemicals, Basel, Switserland)を、これについての製造業者の説明書に従っての増幅、及び続くPCR増幅のために使用した。
URA3遺伝子を、下記プライマーを用いて、一般的S. セレビシアエクローニングベクターpYES2(Invitrogen corporation,Carlsbad,Ca, USA)から増幅した:
140288 (配列番号18): 5'-TTGAATTCATGGGTAATAACTGATAT
142778 (配列番号19):5'-AAATCAATCTATTTTCAATTCAATTCATCATT。
【0076】
プライマー140288は、PCRフラグメントにEcoRI部位を導入する。2種のPCRフラグメントを、混合し、そしてオーバーラップ方法(Horton など (1989) Gene, 77,61-68)により、スプライシングにプライマー142780及び140288を用いて増幅することにより融合した。
得られるフラグメントを、EcoRI及びBbuIにより消化し、そして同じ酵素により消化されたpCaHj483の最大フラグメントに連結した。その連結混合物を用いて、Mandel and Higa(Mandel, M. and A. Higa (1970) J. Mol. Biol. 45,154)の方法によりコンピテントにされたpyrF- E. コリ株DB6507(ATCC35673)を形質転換した。形質転換体を、1g/lのカザミノ酸、500μg/lのチアミン及び10mg/lのカナマイシンにより補充された固体M9培地(Sambrook et. al (1989) Molecular cloning, a laboratory manual, 2. edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press)上で選択した。
【0077】
選択された形質転換体からのプラスミドを、pCaHj527として命名した。pCaHj527上に存在するPna2/tpiプロモーターを、単純なPCRアプローチにより特定部位の突然変異誘発にゆだねた。ヌクレオチド134−144を、下記突然変異誘発プライマー141223を用いて、GTACTAAAACCからCCGTTAAATTTに変更した。ヌクレオチド423−436を、下記突然変異誘発プライマー141222を用いて、ATGCAATTTAAACTからCGGCAATTTAACGGに変更した。得られるプラスミドを、pMT2188と命名した。
141223(配列番号20):5'-GGATGCTGTTGACTCCGGAAATTTAACGGTTTGGTCTTGCATCCC
141222 (配列番号21) :5'- GGTATTGTCCTGCAGACGGCAATTTAACGGCTTCTGCGAATCGC。
【0078】
OMPデカルボキシラーゼの活性及び安定性の低下:
プラスミドからの興味ある遺伝子の発現を改良するためには、例1にすでに言及されたように、選択遺伝子(例えば、pyrG遺伝子)によりコードされるタンパク質の安定性及び/又は活性を低めることが所望される。
【0079】
選択遺伝子によりコードされるタンパク質の安定性を低める1つの手段は、“degron”型をタンパク質に付加することである(Dohmen R. J. , Wu P. , Varshavsky A. , (1994) Science vol263 p.1273-1276)。もう1つの手段は、相同タンパク質に対する一列配列に基づいて、又はタンパク質のモデル−構造(入手できる場合)に基づいて、構造的に重要な保存されたアミノ酸残基を同定することである。次に、それらのアミノ酸が、酵素の安定性及び/又は活性を低めるために突然変異誘発され得る。
【0080】
タンパク質一列整列を、次のデータベース入力に対するタンパク質配列:swissprot_dcop_aspng(プラスミドpENI2155上のpyrG遺伝子によりコードされるOMPデカルボキシラーゼ)により製造した:Swissprot_dcop_aspor, geneseqp_r05224, geneseqp_y99702, tremblnew_aag34761, swissprot_dcop_phybl, remtermbl_aab01165, remtembl_aab16845,及びsptrembl_q9uvz5。
一列整列を、プログラムClustalW (Thompson, J. D. , Higgins, D. G. and Gibson, T. J. (1994)CLUSTAL W : improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, positions-specific gap penalties and weight matrix choice. Nucleic Acids Research, 22: 4673-4680)を用いて行った。
【0081】
それらの一列整列、及び関連するバチルス・サブチリスOMPデカボキシラーゼの構造(Appleby t. , Kinsland C. , Begley T. P., Ealick S. E.. (2000), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol 97 p. 2005-2010)に基づいて、次の保存された残基を、潜在的に構造的に重要であるものとして、及び突然変異のための適切な標的物として同定した:P50, F91, F96, N101, T102, G128, G222, D223, G239。次の多くの突然変異誘発プライマーを構成し、そしてT4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs)を用いてリン酸化した:
【0082】
P50-260301j1(配列番号22):5’-ACAGGACTCGGTNCGTACATTGCCGTG
F91-260301j2(配列番号23):5’-AATTTCCTCATCTNCGAAGATCGCAAG
F96-260301j3(配列番号24):5’-GAAGATCGCAAGTNCATCGATATCGGA
N101, T102-260301j4(配列番号25):5’-ATCGATATCGGANACANCGTCCAAAAGCAG
G128-260301j5(配列番号26):5’-AGTATTCTGCCCGNTGAGGGTATCGTC
G222, D223-260301j6(配列番号27):5’-CTCTCCTCGAAGGNTNACAAGCTGGGACAG
G239-260301j7(配列番号28):5’-GCTGTTGGACGCGNTGCCGACTTTATT
【0083】
7回の個々のPCR/連結反応を、鋳型としてのpENI2155を用いて行い(Sawano A., Miyawaki A. (2000) Nucleic Acid Research vol 28 e78により記載されるようにして)、そして7種のライブラリーの個々からのDNA1μlを用いて、E. コリ株DH110Bを形質転換した。約1000個のE. コリクローンを、個々のライブラリーから得た。DNA調製物を個々のライブラリーから製造し、そしてDNAを一緒にプールした(pBIB16として命名された)。
アスペルギラス株MT2425(選択プレート上で増殖される場合、小さな形質転換体−クローンを付与するpyrG-株)を、1μgのpBIB16 DNA、及び10μgのニシン精子DNA(キャリヤーDNA)/1μgのプロトプラストにより、標準の方法を用いて形質転換した。
【0084】
形質転換されたプロトプラストを、選択プレート(2%マルトース(小さな形態及びリパーゼ発現を誘発する)、10mMのNaNO3、1.2Mのソルビトール、2%の寒天及び標準の塩溶液)上に広げた。
5日間の増殖の後、オーバーレイ(0.004%のブリリアントグリーン、2.5%オリーブ油、1%寒天、50mMのトリス(pH7.5)(ミキサー(Ultrat horaxTM Type T25B, IKA Labortechnic, Germany)により1分間、処理された)を含む)を、アスペルギラス形質転換体クローン上に注いだ。プレート室温で一晩インキュベートした。
【0085】
オリーブ油に対して最も高い活性を有する20のクローンを、96ウェルマイクロタイタープレート上の200μlのYPMに接種した。34℃で4日間の増殖の後、培養ブイヨンを、上記のようにして、pnp−バレレートを用いて、リパーゼ活性についてアッセイした。
リパーゼアッセイにおいて最高の活性を付与する6個の形質転換体を、5mlのYPMに接種した。DNAを単離し、そしてE. コリ株DH10Bを形質転換し、従ってプラスミドを救援した(また、WO00/24883号に記載されるようにして)。下記2種の変異体を同定した:
1)F96S;プラスミドをpENI2343として表示した、及び
2)T102N;プラスミドをpENI2344として表示した。
【0086】
約2μgの個々のプラスミドpENI2155, pENI2343 及びpENI2344により、標準の方法を用いて、JaI355として示されるアスペルギラス・オリザエpyrG-変異体、及びMbin115として示されるアスペルギラス・ニガーpyrG-変異体を形質転換した。
形質転換されたプロトプラストを、選択プレート(2%マルトース、10mMのNaNO3、1.2Mのソルビトール、2%寒天、塩溶液)上に広げた。4日間の増殖の後、非常に不良な胞子形成がpENI2343 JaI355形質転換体に関して見られ、そして形質転換体は、pENI2343により形質転換されたMBIN115に関して見られなかった。
【0087】
個々のプラスミド形質転換の6個の独立した形質転換体を、96−ウェルマイクロタイタープレート上の200μlの1×Vogel, 2%マルトース中に接種した。34℃での4日間の増殖の後、その培養ブイヨンを、リパーゼ活性についてアッセイした。その結果は、相対的標準偏差を伴って、相対的リパーゼ単位として下記表に示され、そして独立したクローンの活性の平均が存在する。
【0088】
【表1】

【0089】
pENI2343形質転換からのリパーゼの発現は、非常に不良であり(他の形質転換体の1/10以下)、ウェルにおける菌類バイオマスに非常に高く匹敵した。pENI2155形質転換体とpENI2344形質転換体とを比較する場合、リパーゼ発現レベルの約1.5倍の上昇が、JaI355形質転換体に関して見出され、そして約11倍の上昇が、MbIn115形質転換体に見出される。
従って、pyrGT102N突然変異は、たぶん、選択遺伝子pyrGによりコードされる不安定な低活性OMPデカルボキシラーゼのために選択される、高められたプラスミドコピー数のために、リパーゼ発現の上昇を導く。
プラスミド安定性を評価するために、スクリーンを設定し、安定してエピソーム複製されたプラスミド(pyrG選択遺伝子を含んで成る)を含む胞子の百分率を評価した。
【0090】
2種のDNAライブラリーを構成した。第1のライブラリーを、選択遺伝子として野生型pyrG遺伝子を含んで成るプラスミド中にクローン化し、そして第2のライブラリーを、突然変異誘発されたコザック領域及びT102N突然変異を含んで成る、突然変異誘発されたpyrG遺伝子を含んで成るプラスミド中にクローン化した。
胞子懸濁液を、個々のライブラリーから製造し、そしてプレート(2%マルトース、10mNのNaNO3、1.2Mのソルビトール、2%寒天、塩、20mMのウリジンを含むか、又は含まない)上にプレートした。プレートを37℃で3日間、増殖した。結果は、下記表に示される。
【0091】
【表2】

【0092】
明らかに、胞子のより大きな画分は、突然変異誘発された(コザック/T102N)pyrG遺伝子を用いる場合、プラスミドを含む。
【0093】
pENI2151の構成
pENI1902及びpENI1861をHindIII により切断し、そしてpENI1902をアルカリホスファターゼにより処理した。
pENI1861からの2408bpのフラグメントを、1%ゲルから精製し、そして1%ゲルから精製されたpENI1902ベクターに連結し、従ってpENI2151を創造した。
pENI2207(pyrGの不良なコザック領域の上流を有する)の構成
pENI2151及びpENI2155をStuI及びSphIにより切断した。
pENI2155からの2004bpのフラグメントを、1%ゲルから精製し、切断pENI2151を連結し、さらに1%ゲルから精製し、従ってpENI2207を創造した。
【0094】
pENI2229(リンカーに追加の制限部位を有する)の構成
PCRを、鋳型としてのpENI2151と共に、下記オリゴヌクレオチド2120201J1及び1298−TAKAを用いて行った。
1298−TAKA(配列番号15):
5'-GCAAGCGCGCGCAATACATGGTGTTTTGATCAT
2120201J1(配列番号29):
5'-GCCTCTAGATCTCCCGGGCGCGCCGGCACATGTACCAGGTCTTAAGCTCGAGCTCGGTCACCGGTGGCC。
PCRフラグメント(650bp)及びpEI2207を、BasHII及びBglIIにより切断した。ベクター及びPCRフラグメントを、1%ゲルから精製し、そして連結し、pENI2229を創造した。
【0095】
不良なコザック及び損なわれたpyrG遺伝子を有するpENI2376の構成
プラスミドpENI2344を、SphI及びStuIにより切断し、そしてpyrG遺伝子を含むDNAフラグメント(2004bp)を、1%アガロースゲルから単離した。プラスミドpENI2229を、SphI及びStuIにより切断し、そしてベクターフラグメントを、1%アガロースゲルから単離した。pENI2229からのベクターフラグメント、及びpENI2344からのpyrG含有フラグメントを連結し、従ってpENI2376を創造した。
【0096】
pENI2516の構成
プラスミドpENI2376をHindIII により切断し、そして6472bpの主要ベクターフラグメントを連結し、従ってpENI2516を創造した。
【0097】
例3
Herceptinは、乳癌を治癒するために使用されるヒト抗体である。これは非常に高価な生成物であり、そしてそれは、非常に高い発現能力を有する糸状菌において類似する生成物を生成するためにより安価である。
HerceptinのヒトH鎖フラグメントのアミノ酸配列に基づいて、アスペルギラスにおいて高く発現された遺伝子について見いだされるのと同じコドン使用法を有する遺伝子を構成した。
図1に示されるようなプライマーを、HerceptinのH鎖可変ドメインをコードする遺伝子が合成されるような手段で、上記PNA配列から企画した。プライマーの相対的位置は、図1に示される。
【0098】
pENI2716の構成
下記プライマー230402j3 (10pモル), 230402j4 (2pモル), 230402j7 (10pモル) 及び230402j8 (2 pモル)を、合計20μlで混合し、そしてPCR反応(94℃で5分、25サイクルの(94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で1分)、72℃で2分)を、TGO−ポリメラーゼ及び緩衝液(Roche)を用いて行った:
【0099】
230402j3 (配列番号30):
5'-ACCTTCACCGACTACACGATGGACTGGGTCCGGCAGGCGCCGGGCAAGGGCCTGGAGTG
230402j4 (配列番号31):
5'-CCGGGCAAGGGCCTGGAGTGGGTCGCGGACGTGAACCCGAACTCCGGCGGGTCGATCTACAACCAGCGCT
230402j7 (配列番号32):
5'-AGACGGCGGTGTCCTCCGCCCGGAGGGAGTTCATCTGCAGGTACAGCGTGTTCTTCGACC
230402j8 (配列番号33):
5'-GTACAGCGTGTTCTTCGACCGGTCGACCGAGAGCGTGAACCGGCCCTTGAAGCGCTGGTTGTAGATCGAC。
【0100】
生成されたPCRフラグメント(図1を参照のこと)を、pCR4TOPOブラントベクター中にクローン化し(Invitrogen, 製造業者により推薦されるように)、そしてTOP10E. コリ細胞を形質転換した。DNA−調製物を、E. コリ形質転換体から製造し、そして配列決定した。HercepthのH鎖可変ドメインのフラグメントをコードする正しい配列を有するプラスミドを、pENI2716と命名した。
【0101】
pENI2769の構成
下記230402J1 (10pモル), 230402j2 (2pモル), 230402j5 (10pモル) 及び230402j6 (2pモル) 、及び前記プラスミドpENI2716を、合計20μlで混合し、そしてPCR反応(94℃で5分、25サイクルの(94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で1分)、72℃で2分)を、TGO−ポリメラーゼ及び緩衝液(Roche)を用いて行った:
【0102】
230402J1 (配列番号34):
5'-GAGGTCCAGCTCGTCGAGTCCGGCGGCGGCCTCGTGCAGCCGGGGGGCTCGCTGCGGCTC
230402j2 (配列番号35):
5'-CGGGGGGCTCGCTGCGGCTCTCCTGCGCCGCGTCGGGCTTCACCTTCACCGACTACACGA
230402j5 (配列番号36):
5'-ATCGAGCCGCGGCTACGAGGAGACGGTGACCAGGGTGCCCTGGCCCCAGTAGTCGAAGTAGAACGACGGGCC
230402j6 (配列番号37):
5'-TCGAAGTAGAACGACGGGCCGAGGTTCCGGGCGCAGTAGTAGACGGCGGTGTCCTCCGCC。
【0103】
生成されたPCRフラグメント(図1を参照のこと)を、pCR4TOPOブラントベクター中にクローン化し(Invitrogen, 製造業者により推薦されるように)、そしてTOP10E. コリ細胞を形質転換した。DNA−調製物を、E. コリ形質転換体から製造し、そして配列決定した。Hercepthの十分なH鎖可変ドメインのフラグメントをコードする正しい配列を有するプラスミドを、pENI2769と命名した。
【0104】
例4:HerceptinのH鎖可変ドメインの発現のための発現プラスミドpENI-Herceptin 1及びpENI-Herceptin 2の構成
鋳型(pENI2769)と共に、プライマー、及び230402j1及び230402j5を用いて、PCR反応(94℃で5分、25サイクルの(94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で1分)、72℃で2分)を、TGO−ポリメラーゼ及び緩衝液(Roche)を用いて行った。得られるPCRフラグメントは、HerceptinのH鎖可変ドメインをコードする。
【0105】
メリピラス・キザンテウス セルロース結合ドメインのPCR
DSMに寄託された株(DSM9971)から単離されたプラスミドと共に下記プライマー090103j1及び230402J9を用いて、PCR反応(94℃で5分、25サイクルの(94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で1分)、72℃で2分)を、TGO−ポリメラーゼ及び緩衝液(Roche)を用いて行った。DSM9971は、発現プラスミドpYES2.0(Invitrogen)においてクローン化されたエンドグルカナーゼを含んで成る酵母サッカロミセス・セレビシアエである。メリピラス・ギガンテウスセルロース結合ドメインはまた、前記プラスミドに含まれる。前記酵母は、the Deutshe Sammlung von Mikroorganismen undZellkulturen GmbH. , MascheroderWeg 1 b, D-38124 Braunschweig Federal Republic of Germany,(DSM)に、特許手順のための微生物の寄託の国際認識に基づいてブダペスト条件に従って寄託されている。
【0106】
寄託日:1995年11月5日
寄託番号:NN49008
DSM名称:サッカロミセス・セレビシアエDSM No.9971
【0107】
得られるPCRフラグメントは、TAKA−プロモーター、及びアスペルギラスにおいて発現されるメリピラス・ギガンテウスセルラーゼ結合ドメインを含む。
230402J9 (配列番号38): 5'-GACTCGACGAGCTGGACCTCCGAGCCAGGGCACGCGGACGG
090103j1 (配列番号39):5'-GTAGACGGATCCACCATGAAGGCGATCCTCTCTCTCGC。
【0108】
090103j1/230402j9 及び230402j1/230402j5により生成されるPCRフラグメントを混合し、そして新しいPCR反応(94℃で5分、25サイクルの(94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で1分)、72℃で2分)を、プライマー090103j1及び230402j5と共に、TGO−ポリメラーゼ及び緩衝液(Roche)を用いて行った。得られるPCRフラグメントは、HerceptinのH鎖可変ドメインの良好な発現を確保するために、HerceptinのH鎖可変ドメインに融合される、良好に発現されたメリピラス・ギガンテウスセルロース結合ドメインをコードする。
得られるPCRフラグメントを、BamHI及びSacIIにより切断し、そしてアスペルギラスライブラリーにおける発現のためにBamHI及びSacIIにより切断された発現ベクターpENI2376中にクローン化し、pENI-Herceptin 1を創造した。
【0109】
得られるPCRフラグメントを、BamHI及びSacIIにより切断し、そしてアスペルギラスにおける発現のためにBamHI及びSacIIにより切断された発現ベクターpENI2516中にクローン化し、pENI-Herceptin 2を創造した。
pENI-herceptin2を用いて、例2に言及されるようにして、アスペルギラス株JaL355を形質転換した。20のアスペルギラス形質転換体を、96ウェルマイクロタイタープレート中、200μlのYPMに接種した。34℃での4日間の増殖の後、20μlの培養ブイヨンを16%SDS−PAGEにゆだねた。
herceptinのH鎖可変ドメインを発現する形質転換体を、16%SDS−PAGE上でバンドとして同定した。
【0110】
例5:pENI-herceptin2からのHerceptinのH鎖可変ドメインを発現するアスペルギラス形質転換体の発酵
Herceptinの最良の発現を有するアスペルギラス形質転換体を、100mlのG2−gly(酵母抽出物18g/l、87%グリセロール24g/l、Pluronic PE-6100 0.1ml/l)を含む振盪フラスコに接種し、そして275rpmで振盪しながら、30℃で一晩、増殖した。次の日、2mlの培養物を用いて、100mlのMDU−2B(マルトース45g/l、硫酸マグネシウム1g/l、塩化ナトリウム1g/l、硫酸カリウム2g/l、酵母抽出物7g/l、微量金属(KU6)0.5ml/l、Pluronic PE6100 0.1ml/l)+1%ウレアを含む振盪フラスコを接種した。10個のフラスコを接種し、そして275rpmで振盪しながら30℃で72時間、増殖した。微量金属:ZnCl2 6.8g/l, CuSO4. 5H20 2.5g/l, NiCl2.6H2O 0.24 g/l, FeS04. 7H20 13.9 g/l, MnSO4. H2O 8.45 g/l, シトレートC6H8O7・H20 3 g/l。
【0111】
例6:HerceptinのH鎖可変ドメインの上流にサーモミセス・ラウギノサリパーゼシグナルヘプチドをコードする配列を有する発現ベクターpENI-herceptin3の構成、及びA.オリザエの形質転換
鋳型(pENI2769)と共に下記プライマー081102J5及び211102j1を用いて、PCR反応(94℃で5分、25サイクルの(94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で1分)、72℃で2分)を、TGO−ポリメラーゼ及び緩衝液(Roche)を用いて行った。得られるPCRフラグメントは、herceptinのH鎖可変ドメインをコードする。
081102J5 (配列番号40) :5'- GCCTTGGCTAGCCCTATTCGTCGAGAGGTCCAGCTCGTCGAGTCC
211102j1(配列番号41) : 5'-CACGAGCTCGAGCCGCGGCTACGAGGA。
【0112】
生成されたPCRフラグメント及びプラスミドpENI1163(WO99/42566号)をNheI及びXhoIにより切断した。PCRフラグメント及びベクタープラスミド(pENI1163)を、1.5%アガロースゲルから精製し、連結し、そしてE. コリ株DH10Bを形質転換した。得られるプラスミドpENI-herceptin3を用いて、アスペルギラス株Bech2(上記参照のこと)を形質転換し、そして上記のようにして、herceptinのH鎖可変ドメインの発現についてスクリーンした。
【0113】
例7:HerceptinのH鎖可変ドメインの上流のサーモミセス・ラヌギノサリパーゼシグナルペプチド及び下流のリパーゼコード遺伝子をコードする配列を有する発現ベクターpENI-herceptin4の構成
鋳型(pENI2769)と共に下記プライマー081102J5及び030103j1を用いて、PCR反応(94℃で5分、25サイクルの(94℃で30秒、50℃で30秒、72℃で1分)、72℃で2分)を、TGO−ポリメラーゼ及び緩衝液(Roche)を用いて行った。得られるPCRフラグメントは、herceptinのH鎖可変ドメインをコードする。
081102J5 (配列番号42) :5'- GCCTTGGCTAGCCCTATTCGTCGAGAGGTCCAGCTCGTCGAGTCC
030103j1 (配列番号43) : 5'- GTCAGCGCTAGCCGAGGAGACGGTGACCAGGGTGCC。
【0114】
生成されたPCRフラグメント及びプラスミドpENI1163(WO99/42566号)をNheIにより切断した。PCRフラグメント及びベクタープラスミド(pENI1163)を、1.5%アガロースゲルから精製し、連結し、そしてE. コリ株DH10Bを形質転換した。得られるプラスミドpENI-herceptin4を配列決定し、そして、アスペルギラス株Bech2(上記参照のこと)を形質転換し、そしてリパーゼ活性についてアッセイすることにより、herceptinのH鎖可変ドメインの発現についてスクリーンしたWO 00/24883 A1号を参照のこと)。
【0115】
例8:アスペルギラスにおけるライブラリースクリーニングのためのpENI-herceptin5の構成
鋳型(pENI-herceptin4)と共に、プライマー1298−taka(上記参照のこと)及び下記991213j5を用いて、25サイクルの(94℃での30秒、50℃での30秒、72℃での1分)を、TGO−ポリメラーゼ及び緩衝液(Roche)を用いて行った。得られるPCRフラグメントは、リパーゼ遺伝子と共に、翻訳融合体の上流にクローン化されたherceptinのH鎖可変ドメインをコードする。
991213j5(配列番号44) :
5'- CCTCTSGATCTCGAGCTCGGTCACCGGTGGCCTCCGCGGCCGCTGCGCCAGGTGTCAGTCACCCTC。
【0116】
生成されたPCRフラグメント及びプラスミドpENI2376(WO99/42566号)をBamHI 及び SaclIにより切断した。PCRフラグメント及びベクタープラスミド(pENI2376)を、1.5%アガロースゲルから精製し、連結し、そしてE. コリ株DH10Bを形質転換した。得られるプラスミドpENI-herceptin5を配列決定し、そして、アスペルギラス株jal355(上記参照のこと)を形質転換し、そしてリパーゼ活性についてアッセイすることにより、herceptinのH鎖可変ドメインの発現についてスクリーンしたWO 00/24883 A1号を参照のこと)。
【0117】
例9:pENI-herceptin5から発現されるH鎖可変ドメインの高められた溶解性及び生成についてのスクリーニング
H鎖可変ドメインの発現及び溶解性を改良するためには、H鎖とL鎖との間の接触に関与するアミノ酸残基を突然変異誘発することは明白である。潜在的にいずれかのアミノ酸変更は、全体のタンパク質構成をいずれかに変えることにより、そのようにすることができる。アミノ酸残基は好ましくは、親水性残基、例えばK, R, H, D, E, G, N, Q, C, S, T 又は Yに突然変異誘発されるべきである。突然変異誘発されるべき位置は好ましくは次の通りである:V37, Q39,G44,L45,W47,Y95 及びW109。
【0118】
発現及び溶解性を高めるために、次のスクリーンを行った。次のリン酸化されたプライマーを企画し、ここでXは天然に存在するアミノ酸を示し、そしてアミノ酸位置は配列番号1を言及する。
301202j1 V37X, Q39X(配列番号45):5'- ACGATGGACTGGNNSCGGNNSGCGCCGGGCAAG
301202j2 G44X, L45X, W47X(配列番号46):5'- GCGCCGGGCAAGNNSNNSGAGNNSGTCGCGGACGTG
301202j3 Y95X (配列番号47):5'- ACCGCGGTCTACNNSTGCGCCCGGAAC
301202j4 W109X(配列番号48):5'- ACTTCGACTACNNSGGCCAGGGCACC
7887(配列番号49):5'- GAATGACTTGGTTGAGTACTCACCAGTCAC
(従って、アンピシリン耐性遺伝子に見出され、そしてScaI部位への切断のために使用されるMlu I部位を変える)。
【0119】
ライブラリーを、製造業者の説明書(Stratagene)に従って使用され得る市販のキット、すなわちChcmeleon二本鎖特定部位の突然変異誘発キットと共に、鋳型としてのプラスミドpENI-herceptin5, 選択オリゴヌクレオチドとしての突然変異オリゴヌクレオチド301202j1, 301202j2, 301202j3, 301202j4 及び オリゴヌクレオチド7887を用いて、E. コリにおいて製造した。
得られるE. コリライブラリーを用いて、アスペルギラス株Jal355を形質転換した(WO00/24883A1号に言及されるようにして)。
【0120】
JaL355を、WO98/01470号に記載されるようにして、標準の方法を用いて、ライブラリーにより形質転換した。次に、細胞を、37℃でCoveプレート上で培養した。
形質転換体は、104〜105/μgDNAの形質転換頻度で、3日間のインキュベーションの後、出現した。
5000個の独立した形質転換体を、個々のウェルに、1×Vogel、2%マルトースの最少培地(例えば、Methods in Enzymology, Vol. 17p. 84)40μlを含む384−ウェルマイクロタイター皿に接種した。
【0121】
34℃での3日間のインキュベーションの後、マイクロタイター皿における培養物からの培地を、リパーゼ活性についてアッセイした。個々のウェルからの培地の5μlアリコートを、0.018%のp−ニトロフェニルブチレート、0.1%Triton X-100, 10mMのCaCl2、50mMのトリス(pH7.5)のリパーゼ基質40μlを含むマイクロタイタープレートに添加した。活性を、標準の酵素学的プロトコール(例えば、Enzyme Kinetics, Paul C. Engel, ed. , 1981, Chapman and Hall Ltd.)により、運動学的マイクロプレートリーダー(Victor 2, Wallac)により、5分間にわたって15秒間隔で分光光学的にアッセイした。
【0122】
手短には、生成物形成を、基質ターンオーバーの初期速度の間、測定し、そして5分間、15秒ごとに405nmでの吸光度から計算された曲線の傾斜として定義する。最高レベルのリパーゼを発現する50の株を単離した。高められたリパーゼ発現は、H鎖可変ドメインの高められた発現及び溶解性の指標として取られた。さらに、それらの50の株からの培地を、SDS−PAGEにより分析し、最良の発現を同定した。
【0123】
例10:pENI-herceptin1から発現されるH鎖可変ドメインの高められた溶解性及び生成についてのスクリーニング
H鎖可変ドメインの発現及び溶解性を改良するためには、H鎖とL鎖との間の接触に関与するアミノ酸残基を突然変異誘発することは明白である。潜在的にいずれかのアミノ酸変更は、全体のタンパク質構成をいずれかに変えることにより、そのようにすることができる。アミノ酸残基は好ましくは、親水性残基、例えばK, R, H, D, E, G, N, Q, C, S, T 又は Yに突然変異誘発されるべきである。突然変異誘発されるべき位置は好ましくは次の通りである:V37, Q39,G44,L45,W47,Y95 及びW109。
【0124】
発現及び溶解性を高めるために、次のスクリーンを行った。次のリン酸化されたプライマーを企画した(上記例9におけるのと同じ):
301202j1 V37X, Q39X(配列番号45):5'- ACGATGGACTGGNNSCGGNNSGCGCCGGGCAAG
301202j2 G44X, L45X, W47X(配列番号46):5'- GCGCCGGGCAAGNNSNNSGAGNNSGTCGCGGACGTG
301202j3 Y95X (配列番号47):5'- ACCGCGGTCTACNNSTGCGCCCGGAAC
301202j4 W109X(配列番号48):5'- ACTTCGACTACNNSGGCCAGGGCACC
7887(配列番号49):5'- GAATGACTTGGTTGAGTACTCACCAGTCAC
(従って、アンピシリン耐性遺伝子に見出され、そしてScaI部位への切断のために使用されるMlu I部位を変える)。
【0125】
ライブラリーを、製造業者の説明書(Stratagene)に従って使用され得る市販のキット、すなわちChcmeleon二本鎖特定部位の突然変異誘発キットと共に、鋳型としてのプラスミドpENI-herceptin1, 選択オリゴヌクレオチドとしての突然変異プライマー301202j1, 301202j2, 301202j3, 301202j4 及びプライマー7887を用いて、E. コリにおいて製造した。
得られるE. コリライブラリーを用いて、アスペルギラス株Jal355を形質転換した(WO00/24883A1号に言及されるようにして)。
得られる形質転換体を、WO01/98484A1号に言及されるようにしてスクリーンした。
【0126】
例11:pENI3318の構成
pENI2155及びpHerceptin4の両者を、BamHI及びSgrAIにより切断した。pENI2155のベクターフラグメント及びpHerceptin4の1300bpフラグメントを、アガロースゲルから単離し、そして連結し、従ってpENI3318を創造した。
【0127】
例12:pENI3318から発現されるH鎖可変ドメインの高められた溶解性及び生成についてのスクリーニング
H鎖可変ドメインの発現及び溶解性を改良するために、H鎖とL鎖との間の接触に関与するアミノ酸残基を突然変異誘発した。潜在的にいずれかのアミノ酸変更は、全体のタンパク質構成をいずれかに変えることにより、そのようにすることができる。アミノ酸残基は好ましくは、親水性残基、例えばK, R, H, D, E, G, N, Q, C, S, T 又は Yに突然変異誘発されるべきである。突然変異誘発されるべき位置は好ましくは次の通りである:V37, Q39,G44,L45,W47,Y95 及びW109。
【0128】
発現及び溶解性を高めるために、次のスクリーンを行った。次のリン酸化されたプライマーを企画し、ここでXは天然に存在するアミノ酸を示し、そしてアミノ酸位置は配列番号1を言及する。
301202j1 V37X, Q39X(配列番号45):5'- ACGATGGACTGGNNSCGGNNSGCGCCGGGCAAG
301202j2 G44X, L45X, W47X(配列番号46):5'- GCGCCGGGCAAGNNSNNSGAGNNSGTCGCGGACGTG
301202j3 Y95X (配列番号47):5'- ACCGCGGTCTACNNSTGCGCCCGGAAC
301202j4 W109X(配列番号48):5'- ACTTCGACTACNNSGGCCAGGGCACC
19670(配列番号50):5'- CCCCATCCTTTAACTATAGCG
060302J1(配列番号51):5'- AGAGCTTAAAGTATGTCCCTTG。
【0129】
PCRを、製造業者により推薦されるようにしてPhusion (Finnzymes)により、鋳型としてのpENI3318, 及び突然変異オリゴヌクレオチド301202j1, 301202j2, 301202j3, 301202j4 及びオリゴヌクレオチド19670を用いて行った。
フラグメント(900bp〜1100bp)を、アガロースゲルから単離した。精製されたフラグメント及び鋳型としてのpENI3318, 並びにオリゴヌクレオチド060302j1を用いて、新規PCRを、Phusionにより行った。得られるPCRフラグメントを、BamHI及びSgrAIにより切断し、そして同じ酵素により切断されたpENI2155に連結した。
【0130】
連結物を用いて、XL10-goldを電気形質転換し、4500のE. コリクローンを得、そしてベクター単独の対照連結に基づいては得られなかった。
得られるE. コリライブラリーを用いて、アスペルギラス株Jal355を形質転換した(WO00/24883A1号に言及されるようにして)。
JaL355を、WO98/01470号に記載されるようにして、標準の方法を用いて、ライブラリーにより形質転換した。次に、細胞を、37℃でCoveプレート上で培養した。
【0131】
形質転換体は、104〜105/μgDNAの形質転換頻度で、3日間のインキュベーションの後、出現した。
400個の独立した形質転換体を、個々のウェルに、200μlのYPMを含む96−ウェルマイクロタイター皿に接種した。親プラスミドpENI3318により形質転換されたアスペルギラスを、対照として三重反復して接種した。
【0132】
34℃での3日間のインキュベーションの後、マイクロタイター皿における培養物からの培地を、リパーゼ活性についてアッセイした。個々のウェルからの培地の5μlアリコートを、0.018%のp−ニトロフェニルブチレート、0.1%Triton X-100, 10mMのCaCl2、50mMのトリス(pH7.5)のリパーゼ基質200μlを含むマイクロタイタープレートに添加した。活性を、標準の酵素学的プロトコール(例えば、Enzyme Kinetics, Paul C. Engel, ed. , 1981, Chapman and Hall Ltd.)により、運動学的マイクロプレートリーダーにより、5分間にわたって15秒間隔で分光光学的にアッセイした。
【0133】
手短には、生成物形成を、基質ターンオーバーの初期速度の間、測定し、そして5分間、15秒ごとに405nmでの吸光度から計算された曲線の傾斜として定義する。最高レベルのリパーゼを発現する34の株を単離した。リパーゼ発現は、pENI3318アスペルギラス形質転換体からは見出されなかった。高められたリパーゼ発現が、H鎖可変ドメインの高められた発現及び溶解性の指標として取られた。プラスミドを、個々の形質転換体から単離し、そして突然変異を同定した。
【0134】
例13:pENI3318から発現されるH鎖可変ドメインの高められた溶解性及び生成についてのスクリーニング
H鎖可変ドメインの発現及び溶解性を改良するためには、H鎖とL鎖との間の接触に関与するアミノ酸残基を突然変異誘発することは明白である。潜在的にいずれかのアミノ酸変更は、全体のタンパク質構成をいずれかに変えることにより、そのようにすることができる。アミノ酸残基は好ましくは、親水性残基、例えばK, R, H, D, E, G, N, Q, C, S, T 又は Yに突然変異誘発されるべきである。突然変異誘発されるべき位置は好ましくは次の通りである:V37, Q39,G44,L45,W47,Y95 及びW109。
【0135】
発現及び溶解性を高めるために、次のスクリーンを行った。次のリン酸化されたプライマーを企画し、ここでXは天然に存在するアミノ酸を示し、そしてアミノ酸位置は配列番号1を言及する。
301202j1 V37X, Q39X(配列番号45):5'- ACGATGGACTGGNNSCGGNNSGCGCCGGGCAAG
301202j2 G44X, L45X, W47X(配列番号46):5'- GCGCCGGGCAAGNNSNNSGAGNNSGTCGCGGACGTG
301202j3 Y95X (配列番号47):5'- ACCGCGGTCTACNNSTGCGCCCGGAAC
301202j4 W109X(配列番号48):5'- ACTTCGACTACNNSGGCCAGGGCACC
7887(配列番号49):5'- GAATGACTTGGTTGAGTACTCACCAGTCAC
(従って、アンピシリン耐性遺伝子に見出され、そしてScaI部位への切断のために使用されるMlu I部位を変える)。
【0136】
ライブラリーを、下記方法を用いて、鋳型としてのプラスミドpENI3318,突然変異オリゴヌクレオチド301202j1, 301202j2, 301202j3, 301202j4 及び オリゴヌクレオチド7887を用いて、E. コリにおいて製造した。
得られるE. コリライブラリーを用いて、アスペルギラス株Jal355を形質転換した(WO00/24883A1号に言及されるようにして)。
JaL355を、WO98/01470号に記載されるようにして、標準の方法を用いて、ライブラリーにより形質転換した。次に、細胞を、37℃でCoveプレート上で培養した。
【0137】
形質転換体は、104〜105/μgDNAの形質転換頻度で、3日間のインキュベーションの後、出現した。
40個の独立した形質転換体を、個々のウェルに、200μlのYPMを含む96−ウェルマイクロタイター皿に接種した。親プラスミドpENI3318により形質転換されたアスペルギラスを、対照として三重反復して接種した。
【0138】
34℃での3日間のインキュベーションの後、マイクロタイター皿における培養物からの培地を、リパーゼ活性についてアッセイした。個々のウェルからの培地の5μlアリコートを、0.018%のp−ニトロフェニルブチレート、0.1%Triton X-100, 10mMのCaCl2、50mMのトリス(pH7.5)のリパーゼ基質200μlを含むマイクロタイタープレートに添加した。活性を、標準の酵素学的プロトコール(例えば、Enzyme Kinetics, Paul C. Engel, ed. , 1981, Chapman and Hall Ltd.)により、運動学的マイクロプレートリーダーにより、5分間にわたって15秒間隔で分光光学的にアッセイした。
【0139】
手短には、生成物形成を、基質ターンオーバーの初期速度の間、測定し、そして5分間、15秒ごとに405nmでの吸光度から計算された曲線の傾斜として定義する。最高レベルのリパーゼを発現する8個の株を単離した。高められたリパーゼ発現が、H鎖可変ドメインの高められた発現及び溶解性の指標として取られた。リパーゼ発現は、pENI3318アスペルギラス形質転換体からは見出されなかった。SDS-PAGEを行い、そして改良された発現を確めた。プラスミドを、個々の形質転換体から単離し、そして突然変異を同定した。次の変異体を見出した−すべて、野生型よりも高い量で生成された:
【0140】
V37S, D, G
Q39C, W, S
L45G
W47G, R, L
Y95L, F
W109K。
【0141】
Proof開始ポリメラーゼ(Qiagen, 202205)及びTaq熱安定性リガーゼ(Biolabs 208L)を用いての突然変異誘発方法:5μlのリガーゼ緩衝液及び5μlのProof開始緩衝液を混合する。10μlのdNTP(2.5mM)、2.5μlのリガーゼ及び2.5μlのProof開始ポリメラーゼを添加する。その2.5μlを、個々のPCR反応管(氷上の)に移す。100ngの鋳型DNAを添加する。20pモルの個々のプライマーを添加する。無菌水により充填し、10μlの合計にした。
【0142】
PCR反応を一晩、行う:98℃で1分、30サイクルの(96℃で1分、50℃で1分、65℃で15分)。PCR反応に1μlのDpn1を添加し、そして軽く混合する。37℃で2時間インキュベートする。DH10b(化学的にコンピテント)を形質転換する。200μlのLBを添加し、そしてエペンドーフ管において37℃で1時間、増殖する。LB+AMP上にプレートし、そして37℃でインキュベートする。クローンのDNA調製物を製造する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれのL鎖も欠いているヒトH鎖免疫グロブリンが発現される、機能的ヒト免疫グロブリンの生成方法であって、a)修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンをコードする組換え構造体により糸状菌宿主細胞を形質転換し、ここで前記修飾が前記L鎖との接触に関与する前記H鎖タンパク質の領域に1又は複数の突然変異を含んで成り;b)前記修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンの発現を促進する条件下で前記糸状菌宿主細胞を培養し;そしてc)前記修飾されたヒトH鎖免疫グロブリンを回収する段階を含んで成る方法。
【請求項2】
前記糸状菌宿主が、アスペルギラス(Aspergillus)宿主である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ヒトH鎖免疫グロブリンが、少なくとも可変領域、及びFc受容体により認識されるFc−領域を含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ヒトH鎖免疫グロブリンが少なくとも可変領域を含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記修飾が前記L鎖との接触に関与するH鎖タンパク質の領域に突然変異を含んで成り、前記突然変異が配列番号1における残基V37, Q39, G44, L45, W47, Y95 及び W109のいずれかにおける突然変異、前記配列がヒト免疫グロブリンのH鎖可変ドメイン、すなわちHerceptinを表し、又は他のヒトH鎖免疫グロブリンにおける機能的に同等の残基における突然変異を含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記修飾がさらに、前記抗原との接触に関与するH鎖免疫グロブリンの領域に突然変異を含んで成る請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記修飾が前記抗原との接触に関与するヒト可変H鎖免疫グロブリンの領域に突然変異を含んで成り、前記突然変異がヒト免疫グロブリンのH鎖可変ドメイン、すなわちHerceptinを表す配列番号1における位置27−35、50−57及び99−108に含まれる残基のいずれかにおける突然変異、又は他のヒトH鎖免疫グロブリンにおける機能的に同等の残基における突然変異を含んで成る請求項6記載の方法。

【公表番号】特表2007−506405(P2007−506405A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501521(P2006−501521)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000086
【国際公開番号】WO2004/069872
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】