糸状菌株における遺伝子の発現を排除するか又は低めるための方法
本発明は、糸状菌株における生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか又は排除するための方法に関し、ここで前記方法は、(a)前記株のゲノム中に、前記標的遺伝子の相同領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記相同コード領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列、又はその一部を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を挿入し、ここで前記第1及び第2ヌクレオチド配列がお互いに対して相補的であり、そして前記第2ヌクレオチド配列が前記第ヌクレオチド配列に対して逆の配向にあり;そして(b)前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAの生成を、前記干渉性RNAの生成の助けになる条件下で前記株を培養することにより誘発し、ここで前記干渉性RNAは、前記標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応することを含んで成る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、糸状菌株における遺伝子の発現を排除するか又は低めることに関する。
【背景技術】
【0002】
関連する技術の記載:
糸状菌株は、商業的価値の生物学的物質の生成のために広く使用される。しかしながら、生物学的物質の高められた発現及び分泌の所望する形質を有する糸状菌株は、好結果をもたらす発酵のための最も所望する特徴を必ずしも有する必要はない。生物学的物質の生成は、生物学的物質の回収及び生成を複雑にする、生物学的物質を劣化するか、又は生物学的物質と共に同時生成する、他の物質、例えば酵素の生成により達成され得る。
【0003】
それらの問題に対する1つの解決策は、所望しない物質の生成に関与する遺伝子を不活性化することである。不活性化は、当業者において良く知られている方法を用いて、遺伝子を欠失するか又は破壊することにより達成され得る。しかしながら、いくつかの場合、遺伝子の不活性化は、遺伝子の相同領域への不良な標的化のために、困難である。不活性化はまた、ランダム突然変異誘発により達成され得るが、しかしランダム突然変異は意図される標的遺伝子に対して必ずしも特異的ではなく、そして他の突然変異が宿主生物中にしばしば導入される。他の情況においては、遺伝子及びその生成物が、糸状菌株の生存のために必要とされる。複数の遺伝子が欠失又は破壊により不活性化される場合、その仕事は厄介で且つ時間の浪費である。遺伝子ファミリーの高い相同メンバーが存在する場合、すべてのメンバーの欠失又は破壊は非常に退屈で、且つ困難である。
【0004】
最近、種々の形の後成遺伝子調節が記載されている(Selker, 1997, Trends Genet. 13 : 296-301; Matzke and Matzke, 1998, Cell.Mol. Life. Sci. 54: 94-103)。それらの工程は、微小RNA(Morel 2000, Curr. 10: ; Bailis and Forsburg, 2002, Genome Bio. 3, Reviews 1035; Grewal and Moazed, 2003,Science 301 : 798-802)を通して、mRNAのレベルを調節することにより遺伝子発現に影響を及ぼす(Hammond and Baulcombe, 1996, Plant Mol. Biol. 32: 79-88; Xi-song Ke など., 2003, Current Opinion in Chemical Biology 7 : 516-523)。
【0005】
ショウジョウバエ及びカエノルハブジチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)の遺伝子研究に基づいて、後−転写遺伝子サイレンシング(植物において)としても知られてるRNA干渉(RNAi)は、分解のために相同RNAを標的化するタンパク質−RNAエフェクターヌクレアーゼ複合体のアセンブリーにより遺伝子の発現をサイレンシングすることを包含することが理解されている(Hannon, 2002, Nature 418: 244-251)。二本鎖RNA(dsRNA)の小さな干渉性RNAへのプロセッシングは、ダイサー(Dicer)として知られている酵素ファミリーにより達成される(Bernstein など 2001, Nature 409: 363)。ダイサー、すなわちdsRNAを特異的に切断するエンドヌクレアーゼのRNアーゼIII ファミリーのメンバーが、20〜25個のヌクレオチドのsiRNAへのdsRNAの消化を担当している(Elbashirなど., 2001, Nature 411: 494)。
【0006】
それらのsiRNAは、アンチセンス鎖を変性し、そして次に、RNA誘発されたサイレンシング複合体(RISC)に結合する(Elbashir など 2001, Genes and Dev. 15: 188; NyKanen など 2001, Cell 197 : 300; Hammondなど., 2001, Science 293 :1146)。十分には理解されていないが、RISCは、アンチセンスフラグメントが由来するmRNAを標的化し、続いてmRNAのエンド及びエキソヌクレアーゼ消化が、その遺伝子の発現を効果的にサイレンシングする。RNAiは、植物、線虫、昆虫及び哺乳類において示されている(Matzke and Matzke, 1998,前記 ;Kennerdell など., 2000, Nat. Biotechnol. 18: 896-8; Bosher など.,1999, Genetics 153: 1245-56; Voorhoeve and Agami, 2003, Trends Biotechnol. 21: 2-4; 及びMcCaffreyなど., 2003, Nat. Biotechnol. 21: 639-44)。
WO98/53083号は、標的遺伝子のすべて又は一部の逆方向反復配列を含んで成るサイレンシングベクターを、植物のゲノム中に挿入することにより、植物内の標的遺伝子の阻害を増強するための構造体及び方法を開示する。
【0007】
WO01/49844号は、第1コード配列に5’から3’方向に作用可能に連続されるプロモーター要素、及び標的化される生物、例えばカエノルハブジチス・エレガンス、酵母、ジクトステラム(Dictostellum)、ショウジョウバエ、マウス、植物、昆虫、ヒト細胞及び線虫における遺伝子発現を破壊するためのアンチセンス配向での第2配列を含んで成る、逆方向反復遺伝子をコードする逆方向反復遺伝子構造体を記載する。
【0008】
WO03/050288号は、標的遺伝子のすべて又は一部をコードするキメラヌクレオチド配列に作用可能に連結されるプロモーター及びトランスジーンを含んで成る組換えDNA構造体を供給し、そのDNA構造体により植物を、発現カセットがゲノム中に挿入されるよう形質転換し、そして植物におけるトランスジーンの後−転写遺伝子サイレンシングを開始することにより、植物における標的遺伝子をサイレンシングする方法を開示し、それにより、トランスジーンの後−転写遺伝子サイレンシングの開始が標的遺伝子のサイレンシングを引起す。
【0009】
糸状菌株の株開発及び改良、機能的ゲノム及び経路構築のために、1又は複数の遺伝子の発現を排除するか又は低めるための他の方法を有することが当業界において好都合である。
糸状菌株における1又は複数の遺伝子の発現を排除するか又は低めるための他の方法を提供することが、本発明の目的である。
【発明の開示】
【0010】
発明の要約:
本発明は、糸状菌株における生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか又は排除するための方法に関し、ここで前記方法は、
(a)前記糸状菌株のゲノム中に、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を挿入し、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり;そして
(b)前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAの生成を、前記干渉性RNAの生成の助けになる条件下で前記糸状菌株を培養することにより誘発し、ここで前記干渉性RNAは、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応することを含んで成る。
【0011】
本発明はまた、生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成る核酸構造体を含んで成る糸状菌株にも関し、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAが前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応する。
【0012】
本発明はさらに、
(a)興味ある生成物学的物質の生成の助けとなる条件下で糸状菌株を培養し、ここで前記糸状菌株が生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成り、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAが前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応;そして前記糸状菌株が前記興味ある生物学的物質をコードする第3ヌクレオチド配列を含んで成り;そして
(b)前記培養培地から生物学的物質を回収することを含んで成る、生物学的物質の生成方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の特定の記載:
本発明は、糸状菌株における生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか又は排除するための方法に関し、ここで前記方法は、(a)前記糸状菌株のゲノム中に、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を挿入し、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり;そして(b)前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAの生成を、前記干渉性RNAの生成の助けになる条件下で前記糸状菌株を培養することにより誘発し、ここで前記干渉性RNAは、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応することを含んで成る。
【0014】
本発明の方法は、糸状菌株の株開発及び改良、機能的ゲノム、及び経路構築のための新規機会を提供する。例えば、本発明の方法は、遺伝子操作及び経路構築による糸状菌宿主株開発のための手段として、又は種々の成功率を有する時間浪費のアプローチの遺伝子ノックアウトによる置換体として使用され得る。遺伝子は、当業界において知られている標準方法、例えば遺伝子ノックアウトによる不活性化に対して耐性であり得る。本発明の方法は、そのような遺伝子の発現を低めるか又は排除する解決策を提供する。前記方法はまた、例えば生成宿主としての生物を開発することにおいて非常に重要であり得る、特定の糸状菌株における高く発現される遺伝子を低めるか又は排除するために、特に有用であり、且つ効果的である。この能力は、本発明の方法の強さを示す。
【0015】
この方法はまた、お互い高い相同性である複数の遺伝子、特に生合成又は代謝経路における同じファミリーの遺伝子又は相同遺伝子の発現を低めるか又は排除するために有用である。前記方法はさらに、それらが生物学的物質の発現において種々の低下を引起すため操作され得るので、有用である。この変動性は、生物学的物質をコードする遺伝子の完全なノックアウトが、例えば興味ある生合成路中に供給される二次経路において、特定の糸状菌株に対して致死的である場合、特に重要である。
【0016】
本発明の方法においては、第1ヌクレオチド配列は、標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る。第2ヌクレオチド配列は、標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成り、ここで前記第1及び第2の相同性領域はお互いに対して相補的であり、そして第2の相同性領域は第1の相同性領域に対して逆配位にある。好ましい観点においては、第1及び第2ヌクレオチド配列は、構成の間、所望しない組換えに対して糸状菌株、例えばE. コリにおける第1及び第2ヌクレオチド配列を安定化するために、第3ヌクレオチド配列により分離される。二本鎖転写可能核酸構造体のヌクレオチド配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起源のもの、又はそれらのいずれかの組合せのものであり得る。
【0017】
プロモーター:
用語“プロモーター”とは、RNAポリメラーゼを結合し、生物学的物質をコードする核酸配置の正しい下流の転写開始部位に前記ポリメラーゼの転写開始を方向づけるDNA配列として、本明細書において定義される。RNAポリメラーゼは、コード領域の適切なDNA鎖に対して相補的なメッセンジャーRNAのアセンブリーを効果的に触媒する。用語、“プロモーター”はまた、mRNAへの転写の後、翻訳のための5’非コード領域(プロモーターと翻訳開始との間)、シス−作用転写制御要素、例えばエンハンサー、及び転写因子と相互作用できる他のヌクレオチド配列を含むことが理解されるであろう。プロモーター配列は、第1相同性転写可能領域に対して生来のものであるか又は外来性(異種)のものであり、そして糸状菌株に対して生来のものであるか又は外来性のものであり得る。本発明の方法においては、プロモーターは、生来のプロモーター、異種プロモーター、変異体プロモーター又はタンデムプロモーターであり得る。
【0018】
用語“変異体プロモーター”は、親プロモーターの1又は複数のヌクレオチドの置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成るヌクレオチド配列を有するプロモーターとして定義され、ここで変異体プロモーターはその対応する親プロモーターよりも高いか又は低いプロモーター活性を有する。用語、“変異体プロモーター”はまた、天然の変異体、及び当業界において良く知られている方法、例えば従来の突然変異誘発、特定部位の突然変異誘発及びDNAシャフリングを用いて得られる、インビトロ生成された変異体を包含するであろう。
【0019】
用語“ハイブリッドプロモーター”とは、コード配列に作用可能に結合される場合、mRNA中へのコード配列の転写に介在する。2又はそれ以上のプロモーターの融合体である配列を生成するために、一緒に融合される複数のプロモーターの一部として本明細書において定義される。
【0020】
用語、“タンデムプロモーター”とは、コード配列に作用可能に結合され、そしてmRNA中へのコード配列の転写に介在する複数のプロモーター配列として本発明の細胞において定義される。
【0021】
用語“作用可能に連結される”とは、プロモーター配列が2種の領域の転写を方向づけるよう、そのプロモーター配列が、標的遺伝子の相同領域に対する位置に適切に配列されている配置として、本明細書において定義される。
【0022】
本発明の方法において有用なプロモーターの例は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・アワモリグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコル・ミエヘイリパーゼ、アスペルギラス・オリザエ アルカリプロテアーゼ、アスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアセトアミダーゼ、コプリナス・シネレウス(Coprins cinereus)β−チュウブリン、フサリウム・ベネナチュムアミログルコシダーゼ(WO 00/56900号)、フサリウム・ベネナタムDaria(WO 00/56900号)、フサリウム・ベネナタムQuinn (WO 00/56900号)、フサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼ(WA96/00787号)、トリコダーマ・レセイβ−グルコシダーゼ、トリコダーマ・レセイセロビオヒドロラーゼI、トリコダーマ・レセイセロビオヒドロラーゼII、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼI、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼII、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼIII、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼIV、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼV、トリコダーマ・レセイキシラナーゼI、トリコダーマ・レセイキシラナーゼII、トリコダーマ・レセイβキシロシダーゼをコードする遺伝子から得られるプロモーター、並びにNA2-tpiプロモーター(アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ及びアスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼのための遺伝子からのプロモーターのハイブリッド)及びそれらの変異体、切断された、及びハイブリッドプロモーターを包含する。
【0023】
相同性転写可能領域:
用語“相同性転写可能領域”とは、適切な調節配列の制御下に配置される場合、生物学的物質、例えばポリペプチドに翻訳されても又はされなくても良い、RNA、例えばncRNA(非コードRNA)、tRNA(トランスファーRNA)、rRNA(リボソームRNA)、miRNA(ミクロRNA)又はmRNA(メッセンジャーRNA)に転写される、標的遺伝子又はその一部の読みとり枠に対して相同であるヌクレオチド配列として本明細書において定義される。転写可能領域の境界は一般的に、mRNAの5’末端での読取枠のすぐ上流に位置する転写開始部位、及びmRNAの3’末端での読取枠のすぐ下流に位置する転写終結ターミネーターにより決定される。相同性転写可能領域は、ゲノムDNA、cDNa、半合成、合成及び組換え核酸配列を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0024】
本発明の方法においては、標的遺伝子に対して相同の第1領域は、標的遺伝子のその対応する領域と同一であるか、又はその相同体であり得る。
【0025】
相同体と、標的遺伝子の発現の不活性化又は低下を達成するために必要とされる標的遺伝子のその対応する領域との間の同一性の程度はたぶん、標的遺伝子に依存するであろう。相同体のヌクレオチド配列が完全な標的遺伝子に対して小さいほど、配列間の同一性の程度は好ましくは、非常に高いか又は同一である。相同体のヌクレオチド配列が完全な標的遺伝子に対して大きいほど、配列間の同一性の程度はたぶん、低い。
【0026】
本発明の方法にいては、標的遺伝子の対応する領域に対する相同体のヌクレオチド配列の同一性の程度は、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも97%である。本発明に関しては、2種の核酸配列間の同一性の程度は、同一性表及び次の複数の整合パラメーター:10のギャップペナルティー及び10のギャップ長ペナルティーと共に、(DNASTAR, Inc. , Madison, WI)を用いて、Wilbur-Lipman method and Lipman, 1983, Proceedings of the National Academy of Science USA 80: 726-730)により決定される。ペアワイズ整合パラメーターは、Ktuple=3、ギャップペナルティー=3及び窓=20である。
【0027】
あるいは、種々の緊縮条件下でお互いハイブリダイズする、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域の能力はまた、標的遺伝子の発現の不活性化又は低下のために必要とされる関連性の程度の表示を提供することができる。しかしながら、相同体と標的遺伝子のその対応する領域との間のハイブリダイゼーションを達成するために、必要とされる緊縮条件が低いほど、例えば低い緊縮条件ほど、標的遺伝子の発現の不活性化又は低下はたぶん、ほとんど効果的ではないであろうことは、理解されるべきである。
【0028】
好ましい観点においては、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域は、低い緊縮条件下でハイブリダイズする。より好ましい観点においては、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域は、中位の緊縮条件下でハイブリダイズする。さらにより好ましい観点においては、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域は、中位の高い緊縮条件下でハイブリダイズする。最も好ましい観点においては、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域は、高い緊縮条件下でハイブリダイズする。さらに最も好ましい観点においては、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域は、非常に高い緊縮条件下でハイブリダイズする。
【0029】
少なくとも100個の長さのヌクレオチドのプローブに関しては、非常に低い〜非常に高い緊縮条件は、最適には12〜24時間の標準のサザンブロット方法に従っての、5×SSPE, 0.3%SDS, 200μg/ml の剪断され、そして変性されたサケ精子DNA、及び25%ホルムアミド(非常に低い及び低い緊縮に関して)、35%ホルムアミド(中位い及び中位の高い緊縮に関して)、又は50%ホルムアミド(高い及び非常に高い緊縮に関して)における42℃でのプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションとして定義される。
【0030】
少なくとも100個の長さのヌクレオチドのプローブに関しては、キャリヤー材料は最終的に、2×SSC, 0.2%SDS溶液を用いて、好ましくは少なくとも45℃(非常に低い緊縮)、より好ましくは少なくとも50℃(低い緊縮)、より好ましくは少なくとも55℃(中位の緊縮)、より好ましくは少なくとも60℃(中位の高い緊縮)、さらにより好ましくは少なくとも65℃(高い緊縮)、および最も好ましくは少なくとも70℃(非常に高い緊縮)で、それぞれ15分間、3度洗浄される。
【0031】
約15個〜約70個の長さのヌクレオチドである短いプローブに関しては、緊縮条件は、0.9MのNaCl、0.09Mのトリス−HCl, pH7.6, 6mM のEDTA, 0.5のNP-40, 1×Denhardt’s溶液、1mMのピロリン酸ナトリウム、1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、0.1mMのATP及び0.2mgの酵母RNA(ml当たり)における、Bolton and McCarthy(1962、Proceedings of the National Academy of Sciences USA 48: 1390)に従って計算されたTmよりも約5℃〜約10℃低い温度での、最適には12〜24時間の標準のサザンブロット方法に従ってのプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、及び後−ハイブリダイゼーション洗浄として定義される。
【0032】
約15個〜約70個の長さのヌクレオチドである短いプローブに関しては、キャリヤー材料は、6×SSC及び0.1%SDSにより15分間、1度、及び6×SSCを用いて、計算されたTmよりも約5℃〜約10℃低い温度でそれぞれ15分間、2度、洗浄される。
【0033】
第1の相同性領域は好ましくは、少なくとも19個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも40個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも80個のヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも100個のヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも200個のヌクレオチドから成る。第1の相同性領域はまた、遺伝子又はその相同体の完全な読取枠から成り得る。
【0034】
逆方向反復体:
二本鎖転写可能核酸構造体はまた、標的遺伝子の第2の相同体可能領域を含んで成り、ここで第1及び第2の相同性領域はお互いに対して相補的であり、そして第2の相同性領域は第1の相同性領域、すなわち第1の相同性領域の逆方向反復体に対して逆配向にある。
【0035】
好ましい観点においては、第2の相同性領域は、第1の相同性領域と100%同一であるが、しかし第1の相同性領域に対して逆配向にある。もう1つの好ましい観点においては、第2の相同性領域は第1の相同性領域の一部であり、ここで前記一部第1の相同性領域のその対応する部分と100%同一である。もう1つの好ましい観点においては、第2の相同性領域は、第1の相同性領域のその対応する部分の相同体である。もう1つの好ましい観点においては、第2の相同性領域は、第1の相同性領域のその対応する部分の相同部分である。
【0036】
相同体又は相同部分は、第1ヌクレオチド配列のその対応する配列に対して、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも97%同一である。%同一性は、本明細書に記載されるWilbur-Lipman方法に従って決定される。
【0037】
発現を低めるか又は排除するために標的化される遺伝子を同定する第2の相同性領域は、標的遺伝子のいずれかの相同転写可能部分、例えば5’−未翻訳領域、生物学的物質コード配列、又は標的遺伝子の3’−未翻訳領域であり得る。
【0038】
好ましい観点においては、第2の相同性領域は、標的遺伝子の生物学的物質コード配列、又はその一部に対応する。
【0039】
もう1つの好ましい観点においては、第2の相同性領域は、標的遺伝子の5’−未翻訳領域又はその一部に対応する。
【0040】
もう1つの好ましい観点においては、第2の相同性領域は、標的遺伝子の3’−未翻訳領域又はその一部に対応する。
【0041】
第2の相同性領域は好ましくは、少なくとも19個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも40個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも80個のヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも100個のヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも200個のヌクレオチドから成る。第2の相同性領域はまた、遺伝子又はその相同体の完全な読取枠から成る。
【0042】
第1及び第2ヌクレオチド配列間のスペンサー:
標的遺伝子の相同領域を含んで成る第1及び第2ヌクレオチド配列は、二本鎖転写可能核酸構造体における第1及び第2ヌクレオチド配列に対して、ほとんどか又はまったく相同性を有さないヌクレオチド配列である、ポリヌクレオチドリンカー又はスペンサーにより分離されても又はされなくても良い。
【0043】
好ましい観点においては、第1及び第2ヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチドリンカーにより分離される。スペンサーは好ましくは、少なくとも5個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも10個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも20個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも30個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも40個のヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも50個のヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも100個のヌクレオチドから成る。
【0044】
スペンサー又はリンカーは、所望しない標的化/組換えを最少にするために、第1又は第2ヌクレオチド配列に対する相同性を有さず、及び好ましくは、糸状菌株のゲノムにおいける配列に対する相同性をほとんどか又はまったく有さないいずれかのヌクレオチド配列であり得る。
【0045】
標的遺伝子:
標的遺伝子は、生物学的物質をコードするいずれかの遺伝子であり得る。生物学的物質は、RNA(例えば、ncRNA, rRNA, tRNA, miRNA又はmRNA)であり得る。生物学的生物は、いずれかの生物ポリマー又は代謝物であり得る。生物学的物質は、生合成又は代謝路を構成する、単一の遺伝子又は一連の遺伝子によりコードされ得るか、又は単一遺伝子の生成物又は一連の遺伝子の生成物の直接的な結果であり得る。生物学的物質は、糸状菌株に対して生来のものであるか、又は糸状菌株に対して外来性または異種であり得る。用語、“異種の生物学的物質”とは、宿主細胞に対して生来ではない生物学的物として;又は構造的修飾が生来の生物学的物質を変更するために行われている、生来の生物学的物質として本明細書において定義される。
【0046】
本発明の方法においては、生物ポリマーはいずれの生物ポリマーででもあり得る。用語、“生物ポリマー”とは、同一の、類似する、又は類似しないサブユニット(モノマー)の鎖(又はポリマー)として本明細書において定義される。生物ポリマーは、核酸、ポリアミン、ポリオール、ポリペプチド(又はポリアミド)、又はポリサッカリドであり得るが、但しそれらだけには限定されない。
【0047】
好ましい観点においては、生物ポリマーは、ポリペプチドである。ポリペプチドは、興味ある生物学的活性を有するいずれかのポリペプチドであり得る。用語、“ポリペプチド”とは、コードされる生成物の特定の長さを意味せず、そして従って、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質を包含する。用語、“ポリペプチド”はまた、コードされる生成物を形成するために組み合わされる複数のポリペプチドを包含する。ポリペプチドはまた、少なくとも2種の異なったポリペプチド(1又は複数のポリペプチドは菌類細胞に対して異種であり得る)から得られた部分的又は完全なポリペプチド配列の組合せを含んで成るハイブリッドポリペプチドを包含する。ポリペプチドはさらに、上記ポリペプチド及びハイブリッドの天然に存在する対立遺伝子及び構築された変動体を包含する。
【0048】
好ましい観点においては、ポリペプチドは、抗体、抗原、抗菌ペプチド、酵素、成長因子、ホルモン、イムノモジュレーター、神経伝達物質、受容体、受容体タンパク質、構造タンパク質及び転写因子である。
【0049】
より好ましい観点においては、ポリペプチドは、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ又はリガーゼである。最も好ましい態様においては、ポリペプチドは、α−グルコシダーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドロラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インバーターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、ウロキナーゼ又はキシラナーゼである。
【0050】
もう1つの好ましい観点においては、ポリペプチドはコラーゲン又はゼラチン、又はそのハイブリッドである。
【0051】
もう1つの好ましい観点においては、生物ポリマーは、ポリサッカリドである。ポリサッカリドは、いずれかのポリサッカリド、例えばムコポリサッカリド(例えば、ヘパリン及びヒアルロン酸)及び窒素含有ポリサッカリド(例えば、キチン)であり得るが、但しそれらだけには限定されない。より好ましい態様においては、ポリサッカリドはヒアルロン酸である。
【0052】
本発明の方法においては、代謝物はいずれの代謝物ででもあり得る。代謝物は、1又は複数の遺伝子、例えば生合成又は代謝路によりコードされ得る。用語、“代謝物”とは、一次及び二次代謝物の両者を包含する。一次代謝物は、エネルギー代謝、成長及び構造に関連する、細胞の一次又は一般代謝の生成物である。二次代謝物は、二次代謝の生成物である(R. B. Herbert, The Biosynthesis of Secondary Metabolites, Chapman and Hall, New York, 1981を参照のこと)。
【0053】
一次代謝物は、アミノ酸、脂肪酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、糖、トリグリセリド又はビタミンであり得るが、但しそれらだけには限定されない。
【0054】
二次代謝物は、アルカロイド、クマリン、フラボノイド、ポリケチド、キニン、ステロイド、ペプチド又はテルペンであり得るが、但しそれらだけには限定されない。好ましい態様においては、二次代謝物は、抗生物質、摂食阻害剤、誘引剤、殺菌剤、抗菌剤、ホルモン、殺昆虫剤又は殺鼠薬である。
【0055】
生物学的物質はまた、選択マーカーの生成物でもあり得る。選択マーカーは、1つの遺伝子であり、その生成物は、殺生物剤又はウィルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求性に対する原栄養要求性、及び同様のものを提供する。選択マーカーは、次の群から選択されるが、但しそれらだけには限定されない;amdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph (ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD (硝酸レダクターゼ)、pyrG (オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ) 及びtrpC (アントラニル酸シンターゼ)、並びにそれらの同等物。
【0056】
標的遺伝子を単離することは、本発明の実施において必要である。1つの遺伝子を単離するか又はクローン化するために使用される技法は、当業界において知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はそれらの組合せを包含する。そのようなゲノムDNAからの遺伝子のクローニングは、例えば良く知られているポリメラーゼ鎖反応(PCR)を用いることによりもたらされ得る。例えば、Innis nado., 1990, PCR Protocols : A Guide to Methods and Application, Academic Press, New Yorkを参照のこと。クローニング方法は、生物学的物質をコードする遺伝子を含んで成る所望する核酸フラグメントの切除及び単離、ベクター分子中へのフラグメントの挿入、及び糸状菌類細胞中への組換えベクターの組み込み包含することができ、ここで、核酸配列の複数コピー又はクローンが複製されるであろう。核酸配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起源のもの、又はそれらのいずれかの組合せのものであり得る。
【0057】
好ましい観点においては、標的遺伝子の発現は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる。もう1つの好ましい観点においては、標的遺伝子の発現は排除される。
【0058】
5’未翻訳領域、コード配列又は3’未翻訳領域内の逆方向反復配列の使用が所望される場合、それらの領域のいずれか1つ内の逆方向反復体により構成される遺伝子サイレンシングベクターはさらに、サイレンシングベクターに存在するコード配列に対して相同である遺伝子のサイレンシングを可能にする。従って、生物内の遺伝子の相同体のサイレンシングが所望される場合、5’未翻訳領域、コード配列又は3’未翻訳領域内の逆方向反復体を含むサイレンシングベクターの構成が、その構造体のコード配列に対して配列相同性を示す1又は複数の遺伝子の発現の排除又は低下を可能にすることができる。用語“相同性”又は“相同”とは通常、ある共通する構造体のものであり、そして活性領域の高い程度の配列類似性を示すそれらの配列を示す。
【0059】
好ましい観点においては、干渉性RNAは、標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現を低めるか又は排除するために、標的遺伝子の1又は複数の相同体のRNA転写体と相互作用する。
【0060】
より好ましい観点においては、標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる。もう1つの好ましい観点においては、標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現は排除される。
【0061】
糸状菌株:
本発明はまた、生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成る糸状菌株に関し、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記第1及び第2ヌクレオチド配列が、糸状菌株における標的遺伝子の発現をサイレンシングする標的遺伝子に相同である領域を含んで成る転写可能重複ポリヌクレオチドを形成する。
【0062】
糸状菌株は、本発明の方法において有用ないずれかの糸状菌株であり得る。“糸状菌”とは、ユーミコタ(Eumycota)及びオーミコタ(Oomycota)のすべての糸状形を包含する(Hawksworthなど., 1995, 前記により定義されるような)。糸状菌は一般的に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン及び他の複合ポリサッカリドから構成される菌子体壁により特徴づけられる。成長増殖は、菌子拡張によってであり、そして炭素代謝は絶対好気性である。対照的に、酵母、たとえばサッカロミセス・セレビシアエによる成長増殖は、単細胞葉状体の発芽によってであり、そして炭素代謝は発酵性である。
【0063】
好ましい観点においては、前記糸状菌株は、アクレモニウム、アスペルギラス、アウレオバシジウム、クリプトコーカス、フィリバシジウム、フサリウム、ヒューミコラ、マグナポリス、ムコル、ミセリオプソラ、ネオカノマスチックス、ネウロスポラ、パエシロミセス、ペニシリウム、プロミセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム又はトリコダーマ株である。
【0064】
より好ましい観点においては、糸状菌株は、アスペルギラス・アワモリ、アスペルギラス・フミガタス、アスペルギラス・ホエチダス、アスペルギラス・ジャポニカ、アスペルギラス・ニジュランス、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・オリザエ細胞である。もう1つのより好ましい観点においては、糸状菌株は、フサリウム・バクトリジオイデス、フサリウム・セレアリス、フサリウム・クロックウェレンズ 、フサリウム・クルモラム、フサリウム・グラミネアラム、フサリウム・グラミナム、フサリウム・ヘテロスポラム、フサリウム・ネグンジ、フサリウム・オキシスポラム、フサリウム・レチキュラタム、フサリウム・ロゼウム、フサリウム・サムブシウム、フサリウム・サルコクロウム、フサリウム・スポロトリキオイデス、フサリウム・スルフレウム、フサリウム・トルロサム、フサリウム・トリコセシオイデス又はフサリウム・ベネナタム細胞である。
【0065】
さらにより好ましい観点においては、糸状菌株は、ブジェルカンデラ・アヅスタ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイニナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレグレア(Ceriporiopsis careglea)、セリポリオプシス・ギルベセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パンノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リボロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・スブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・スブベルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、コプリナス・シネレウス(Coprinus cinereus)、コリオラス・ヒルスタス(Coriolus hirsutus)、ヒューミコラ・インソレンス、ヒューミコラ・ラヌギノサ、ムコル・ミエヘイ、ミセリオプソラ・サーモフィリア、ネウロスポラ・クラサ、ペニシリウム・プルプロゲナム、ファネロカエト・クリソスポリウム(Phanerocheate chrysosporium)、フィレビア・ラディアタ(Phlebia radiata)、プレウロタス・エリンギル(Pleurotus eryngil)、チエラビア・テレストリス、トラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシコロル(Trametes versicolor)、トリコダーマ・ハルジアナム、トリコダーマ・コニンギ、トリコダーマ・ロンジブラキアタム、トリコダーマ・レセイ又はトリコダーマ・ビリデ細胞である。
【0066】
最も好ましい観点においては、アスペルギラス・オリザエ株は、アスペルギラス・オリザエ株寄託番号IFO4177である。もう1つの最も好ましい観点においては、フサリウム・ベネナタム細胞は、フサリウム・グラミネアラムATCC20334として最初に寄託され、そして最近、Yoder and Christianson, 1998, Fungal Genetics and Biology 23: 62-80及びO’Donnell など., 1998, Fungal Genetics and Biology 23: 57-67 によりフサリウム・ベネナタムとして再分類されている、フサリウム・ベネナタムA3/5;及び現在知られている種名称にもかかわらず、フサリウム・ベネナタムの分類学的同等物である。もう1つの好ましい観点においては、フサリウム・ベネナタム株は、WO97/26330号に記載されるように、フサリウム・ベネナタムA3/5又はフサリウム・ベネナタムATCC20334の形態学的変異体である。もう1つの好ましい観点においては、トリコダーマ・リセイ株は、トリコダーマ・リセイATCC56765である。
【0067】
糸状菌株は、プロトプラスト形質転換、プロトプラストの形質転換、及びそれ自体知られている態様での細胞壁の再生を包含する工程により形質転換され得る。アスペルギラス及びトリコダーマ株の形質転換のための適切な方法は、ヨーロッパ特許第238023号及びYeltonなど., 1984, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81; 1470-1474に記載される。フラリウム種を形質転換するための適切な方法は、Malardierなど., 1989, Gene78: 147-156, 及びWO96/00787号により記載される。酵母は、Becker and Guarente. In Abelson, J.N. and Simon, M.I., editors, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Methods in Enzymology, Volume 194, pp 182-187, Academic Press, Inc., New York; Ito など, 1983, Journal of Bacteriology 153: 163; 及びHinnen など, 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75; 1920により記載される方法を用いて形質転換され得る。
【0068】
生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現の低下又は排除は、標的化された生物学的物質に対して特異的である。当業界において知られている方法を用いて検出され得る。それらの検出方法は、特異的抗体の使用、高性能免疫クロマトグラフィー、細管電気泳動、酵素生成物の形成、酵素基質の消出又はSDS−PAGEを包含する。例えば、酵素アッセイは、酵素の活性を検出するために使用され得る。酵素活性を決定するための方法は、多くの酵素について当業界において知られている(例えば、D. Schomburg and M. Springer(eds.), Enzyme Handbook, Springer- Verlag, New York, 1990を参照のこと)。
【0069】
生成方法:
本発明はまた、(a)興味ある生成物学的物質の生成の助けとなる条件下で糸状菌株を培養し、ここで前記糸状菌株が生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成り、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAが前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応;そして前記糸状菌株が前記興味ある生物学的物質をコードする第3ヌクレオチド配列を含んで成り;そして(b)前記培養培地から生物学的物質を回収することを含んで成る、生物学的物質の生成方法に関する。
【0070】
興味ある生物学的物質は、本明細書に記載されるような、いずれかの生物学的物質であり得る。それは、糸状菌株に対して生来のものであるか又は外来性のものである。所望しない生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現の低下又は排除は、興味あるもう1つの生物学的物質の高められた発現を導くことができる。例えば、所望しない生物学的物質は、興味ある生物学的物質を攻撃し、それにより、生成される興味ある生物学的物質の量を低めるプロテアーゼであり得る。プロテアーゼの発現を低めるか又は排除することにより、より多くの興味ある生物学的物質が発現され、そして生成されるであろう。
【0071】
又は、所望しない生物学的物質は、興味ある生物学的物質と、細胞工程、例えば転写因子又は分泌経路を共有し、それにより、生成される興味ある生物学的物質の量を低める。所望しない生物学的物質の発現を低めるか又は排除することにより、より多くの細胞工程が興味ある生物学的物質、例えば発現制限転写要素に利用でき、それにより、発現され、そして生成される興味ある生物学的物質の量が上昇する。さらに、所望しない生物学的物質は、興味ある生物学的物質を汚染し、特定の用途への興味ある物質的物質、例えば食物工程への酵素の使用を妨げる毒素であり得る。
【0072】
本発明の生成方法においては、糸状菌株は、当業界において知られている方法を用いて、興味ある生物学的物質の生来のために適切な栄養培地において培養される。例えば、前記株は、適切な培地において行われる実験用又は産業用発酵器において、振盪フラスコ培養、すなわち小規模又は大規模発酵(例えば、連続、バッチ、供給−バッチ又は固体状態酵母)により、生物学的物質の発現及び/又は単離を可能にする条件下で培養され得る。培養は、当業界において知られている方法を用いて、炭素及び窒素源、及び無機塩を含んで成る適切な栄養培地において行われる。適切な培地は、市販されているか、又は公開されている組成(例えば、American Type Culture Collectionのカタログにおける)に従って調製され得る。生物学的物質が栄養培地中に分泌される場合、物質は培地から直接的に回収され得る。生物学的物質が分泌されない場合、それは細胞溶解物から回収され得る。
【0073】
興味ある生物学的物質は、その生物学的物質に対して特異的である、当業界において知られている方法を用いて検出され得る。それらの検出方法は、特異的抗体の使用、高性能液体クリマトグラフィー、細管クロマトグラフィー、酵素生成物の形成、酵素基質の消出、又はSDS−PAGEを包含する。例えば、酵素アッセイは、酵素の活性を決定するために使用され得る。酵素活性を決定するための方法は、多くの酵素ついて当業界において知られている(例えば、D. Schomburg and M. Salzmann (eds. ), Enzyme Handbook, Springer-Verlag, New York, 1990を参照のこと)。
【0074】
得られる興味ある生物学的物質は、当業界において知られている方法により単離され得る。例えば、興味あるポリペプチドは、従来の方法、例えば遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿により、培養培地から単離され得る。次に、単離されたポリペプチドは、さらに当業界において知られている種々の方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動方法(例えば、分離用等電点電気泳動(IEF))、示差溶解性(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出(但し、それらだけには限定されない)により精製され得る(例えば、Protein Purification, J. -C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)。興味ある代謝物は、例えば抽出、沈殿、示差溶解性、又は当業界において知られているいずれか方法により、培養培地から単離され得る。単離された代謝物は、その代謝物のために適切な方法を用いて、さらに精製され得る。
【0075】
ヌクレオチド配列:
興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列は、いずれかの原核生物、真核生物、又は他の源から得られる。本発明のためには、一定の源に関して、用語、“〜から得られる”とは、本明細書において使用される場合、生物学的物質が、前記源により、又は前記源からの遺伝子が挿入されている細胞により生成されることを意味するであろう。
【0076】
興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列を単離するか又はクローン化するために使用される技法は、当業界において知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はそれらの組合せを包含する。そのようなゲノムDNAからのヌクレオチド配列のクローニングは、例えば良く知られているポリメラーゼ鎖反応(PCR)を用いることによりもたらされ得る。例えば、Innis nado., 1990, PCR Protocols : A Guide to Methods and Application, Academic Press, New Yorkを参照のこと。クローニング方法は、生物学的物質をコードするヌクレオチド配列を含んで成る所望する核酸フラグメントの切除及び単離、ベクター分子中へのフラグメントの挿入、及び変異体菌類細胞中への組換えベクターの組み込み包含することができ、ここで、核酸配列の複数コピー又はクローンが複製されるであろう。核酸配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起源のもの、又はそれらのいずれかの組合せのものであり得る。
【0077】
核酸構造体:
興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列は、糸状菌株における核酸構造体に含まれる。核酸構造体は、少なくとも1つのプロモーターに作用可能に連結される、興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列、及び制御配列と適合する条件下で糸状菌株におけるヌクレオチド配列の発現を方向づける1又は複数の制御配列を含んで成る。発現は、興味ある生物学的物質の生成に包含されるいずれかの段階、例えば転写、後−転写修飾、翻訳、後−翻訳修飾、及び分泌(但し、それらだけには限定されない)を包含することが理解されるであろう。
【0078】
“核酸構造体”とは、本明細書においては、天然に存在する遺伝子から単離され、又は他方では、天然に存在しない態様で組み合わされ、そして並置される、核酸のセグメントを含むように修飾されている、一本鎖又は二本鎖核酸分子として定義される。用語“核酸構造体”とは、核酸構造体が1つのコード配列、及び前記コード配列の発現のために必要とされるすべての制御配列を含む場合、用語“発現カセット”と同じ意味である。
【0079】
興味ある生物学的物質をコードする単離されたヌクレオチド配列は、生物学的物質の発現を提供するために種々の手段で操作され得る。ベクター中へのその挿入の前、ヌクレオチド配列の操作は、発現ベクターに依存して、所望されるか又は必要とされる。組換えDNA方法を用いてヌクレオチド配列を修飾するための技法は、当業界において良く知られている。
【0080】
ヌクレオチド配列は、1又は複数の生来の制御配列を含んで成ることができるか、又は1又は複数の生来の配列が、宿主細胞におけるコード配列の発現を改良するためのヌクレオチド配列に、1又は複数の制御配列により置換され得る。
【0081】
用語“制御配列”とは、興味ある生物学的物質の発現のために必要であるか、又はそのために好都合であるすべての成分を包含するよう定義される。個々の制御配列は、生物学的物質をコードするヌクレオチド配列に対して生来であっても又は外来性であっても良い。そのような制御配列は、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターを包含するが、但しそれらだけには限定されない。最少で、制御配列は、プロモーター、及び転写及び翻訳停止シグナルを包含する。制御配列は、興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列のコード領域と制御配列との連結を促進する特定の制限部位を導入するためにリンカーを提供され得る。
【0082】
制御配列はまた、適切な転写ターミネーター配列、すなわち転写を終結するために宿主細胞により認識される配列でもあり得る。ターミネーター配列は、生物学的物質をコードする核酸配列の3’側末端に作用可能に連結される。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのターミネーターが本発明において使用され得る。
【0083】
糸状菌宿主細胞のための好ましいターミネーターは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、アスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼ及びフサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼについての遺伝子から得られる。
【0084】
制御配列はまた、適切なリーダー配列、すなわち糸状菌株による翻訳のために重要であるmRNAの非翻訳領域でもあり得る。リーダー配列は、生物学的物質をコードする核酸配列の5’末端に作用可能に連結される。選択の糸状菌株において機能的であるいずれかのリーダー配列が、本発明において使用され得る。
【0085】
糸状菌宿主細胞のための好ましいリーダーは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランストリオースリン酸イソメラーゼ、フサリウム・ベネナタムトリプシン、及びフサリウム・ベネナタムグルコアミラーゼについての遺伝子から得られる。
【0086】
制御配列はまた、ポリアデニル化配列、すなわち核酸配列の3’末端に作用可能に連結され、そして転写される場合、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するためにシグナルとして宿主細胞により認識される配列でもあり得る。選択の糸状菌株において機能的であるいずれかのポリアデニル化配列が,本発明において使用される。
【0087】
糸状菌宿主細胞のための好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギキラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、フサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼ及びアスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼについての遺伝子から得られる。
【0088】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に連結されるアミノ酸配列をコードし、そしてそのコードされたポリペプチドを細胞の分泌路中に方向づけるシグナルペプチドコード領域でもあり得る。核酸配列のコード配列の5’側末端は、本来、分泌されたポロペプチドをコードするコード領域のセグメントと翻訳読み取り枠を整合して、天然において連結されるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。他方では、コード配列の5’側末端は、そのコード配列に対して外来性であるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。
【0089】
そのコード配列が天然において、シグナルペプチドコード領域を含まない外来性シグナルペプチドコード領域が必要とされる。他方では、外来性シグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドの増強された分泌を得るために、天然のシグナルペプチドコード領域を単純に置換することができる。しかしながら、選択の菌類宿主細胞の分泌路中に発現されたポリペプチドを方向づけるいずれかのシグナルペプチドコード領域が、本発明に使用され得る。
【0090】
糸状菌株のための効果的なシグナルペプチドコード領域は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガー中性アミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイアスペラギン酸プロテイナーゼ、ヒューミコラ・インソレンスセルラーゼ及びヒューミコラ・ラヌギノサリパーゼについての遺伝子から得られたシグナルペプチドコート領域である。
【0091】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端で位置するアミノ酸配列をコードするプロペプチドコード領域であり得る。得られるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又は多くの場合、チモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般的に不活性であり、そしてプロポリペプチドからプロペプチドの触媒又は自己触媒分解により成熟した活性ポリペプチドに転換され得る。プロペプチドコード領域は、サッカロミセス・セレビシアエα−因子、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ遺伝子、及びミセリオプソラ・サーモフィリア ラッカーゼについての遺伝子から得られる(WO95/33836号)。
【0092】
シグナルペプチド及びプロペプチド領域の両者がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合、そのプロペプチド領域は、ポリペプチドのアミノ末端の次に位置し、そしてシグナルペプチド領域は、プロペプチド領域のアミノ末端の次に位置する。
【0093】
糸状菌株の増殖に関して、ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することがまた所望される。調節システムの例は、調節化合物の存在を包含する、化学的又は物理的刺激に応答して、遺伝子の発現の開始又は停止を引き起こすそれらのシステムである。糸状菌においては、TAKAα−アミラーゼプロモーター、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼプロモーター、アスペルギラス・オリザエグルコアミラーゼプロモーター、及びフサリウム・ベネナタムグルコアミラーゼプロモーターが、調節配列として使用さえ得る。調節配列の他の列は、遺伝子増幅を可能にするそれらの配列である。真核システムにおいては、それらはメトトレキセートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、及び重金属と共に増幅されるメタロチオネイン遺伝子を包含する。それらの場合、生物学的物質をコードするヌクレオチド配列が、調節配列により作用可能に連結される。
【0094】
発現ベクター:
興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列は、プロモーター、生物学的物質をコードするヌクレオチド配列、及び転写及び翻訳終結シグナルを含んで成る組換えベクターに含まれ得る。上記の種々の核酸及び制御配列は、1又は複数の便利な制限部位で生物学的物質をコードする核酸配列の挿入又は置換を可能にするためにそれらの部位を含むことができる組換え発現ベクターを生成するために一緒に連結され得る。他方では、ヌクレオチド配列は、前記ヌクレオチド配列、又はプロモータ及び/又は配列を含んで成る核酸構造体を、発現のための適切なベクター中に挿入することによって発現され得る。発現ベクターを創造する場合、そのコード配列はベクターに位置し、その結果、コード配列はプロモーター及び発現のための1又は複数の適切な制御配列により作用可能に連結される。
【0095】
組換え発現ベクターは、組換えDNA方法に便利にゆだねられ得、そして核酸配列の発現をもたらすことができるいずれかのベクター(たとえば、プラスミド又はウィルス)であり得る。ベクターの選択は典型的には、ベクターが導入される予定である宿主細胞とベクターとの適合性に依存するであろう。ベクターは、線状又は閉環された環状プラスミドであり得る。
【0096】
ベクターは自律的に複製するベクター、すなわち染色体存在物として存在するベクター(その複製は染色体複製には無関係である)、たとえばプラスミド、染色体外要素、ミニクロモソーム又は人工染色体であり得る。ベクターは自己複製を確かめるためのいずれかの手段を含むことができる。他方では、ベクターは、糸状菌細胞中に導入される場合、ゲノム中に組み込まれ、そしてそれが組み込まれている染色体と一緒に複製されるベクターであり得る。さらに、宿主細胞のゲノム中に導入される全DNA又はトランスポゾンを一緒に含む、単一のベクター又はプラスミド、又は複数のベクター又はプラスミドが使用され得る。
【0097】
ベクターは好ましくは、形質転換された細胞の容易な選択を可能にする1又は複数の選択マーカーを含む。選択マーカーは、1つの遺伝子であり、その生成物は、殺生物剤又はウィルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求性に対する原栄養要求性、及び同様のものを提供する。
【0098】
糸状菌株に使用するための選択マーカーは、次の群から選択されるが、但しそれらだけには限定されない;amdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph (ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD (硝酸レダクターゼ)、pyrG (オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ) 及びtrpC (アントラニル酸シンターゼ)、並びにそれらの同等物。アスペルギラス・ニジュランス又はアスペルギラス・オリザエのamdS及びpyrG遺伝子及びストレプトミセス・ヒグロスコピカスのbar遺伝子が、アスペルギラス細胞への使用のために好ましい。bar、amdS、pyrG又はhygB遺伝子が、フサリウム細胞への使用のために好ましい。
【0099】
ベクターは好ましくは、宿主細胞ゲノム中へのベクターの安定した組み込み、又は細胞のゲノムに無関係に細胞におけるベクターの自律的複製を可能にする要素を含む。
【0100】
糸状菌株のゲノム中への組み込みのためには、ベクターは、相同又は非相同組換えによるゲノム中へのベクターの安定した組み込みのためのベクター中のポリペプチド、又はいずれか他の要素をコードするヌクレオチド配列に依存する。他方では、ベクターは、宿主細胞のゲノム中への相同組換えによる組み込みを方向づけるための追加の核酸配列を含むことができる。その追加の核酸配列は、染色体における正確な位置での宿主細胞ゲノム中へのベクターの組み込みを可能にする。
【0101】
正確な位置での組み込みの可能性を高めるために、組み込み要素は好ましくは、相同組換えの可能性を高めるために対応する標的配列と高い相同性を示す十分な数の核酸、たとえば100〜10,000個の塩基対、好ましくは400〜10,000個の塩基対、及び最も好ましくは800〜10,000個の塩基対を含むべきである。組み込み要素は、宿主細胞のゲノムにおける標的配合と相同であるいずれかの配列であり得る。さらに、組み込み要素は、非コード又はコード核酸配列であり得る。他方では、ベクターは非相同組換えにより宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得る。
【0102】
自律複製のためには、ベクターはさらに、問題の宿主細胞においてのベクターの自律的な複製を可能にする複製の起点を含んで成る。糸状菌細胞において有用なプラスミド複製開始部位の例は、AMA1及びAMS1である(Gems など., 1991, Gene 98: 61-67; Cullen など., 1987, Nucleic Acids Research 15: 9163-9175; WO 00/24883号)。AMA1遺伝子の単離、及び前記遺伝子を含んで成るプラスミド又はベクターの構成は、WO00/24883号に開示される方法に従って行われ得る。複製の起点は、宿主細胞においてその機能を感温性にする突然変異を有する起点である(例えば、Ehrlich, 1978, Procedings of the National Academy of Sciences USA 75: 1433を参照のこと)。
【0103】
興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列の1以上のコピーが、遺伝子生成物の生成を高めるために糸状菌株中に挿入され得る。ヌクレオチド配列のコピー数の上昇は、宿主細胞ゲノム中に配列の少なくとも1つの追加のコピーを組み込むことによって、又はヌクレオチド配列と共に増幅可能な選択マーカー遺伝子を含むことによって得られ、ここで細胞は選択マーカー遺伝子の増幅されたコピーを含み、そしてそれにより、核酸配列の追加のコピーが、適切な選択剤の存在下で前記細胞を培養することによって選択され得る。
【0104】
本発明の組換え発現ベクターを構成するために上記要素を連結するために使用される方法は、当業者に良く知られている(例えば、Sambrookなど., 1989, 前記を参照のこと)。
【0105】
本発明はさらに次の例により記載されるが、但しそれらは本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0106】
培地及び緩衝溶液:
COVE選択プレートは、1L当たり、342.3g のスクロース、 20 ml のCOVE 塩溶液、 10 mM のアセトアミド、 15 mMの CsCl2、 及び 25 又は 30 g のNoble寒天から構成された。
COVE2プレートは、1L当たり、30 g のスクロース、 20 mlの COVE塩溶液、 10 mM のアセトアミド、及び 25 g 又は 30gの Noble寒天から構成された。
COVE塩溶液は、1l当たり、26gのKCl、26gのMgSO4・7H2O, 76gのKH2PO4及び50mlのCOVE微量金属から構成された。
COVE微量金属溶液は、1l当たり、0.04gのNaB4O7・10H2O, 0.4gのCuSO4・5H2O, 1.2gのFeSO4・7H2O, 0.7g又は1gのMnSO4・H2O,0.8gのNa2MoO2・2H2O及び10gのZnSO4・7H2Oから構成された。
【0107】
COVE上部アガロースは、1L当たり342.3gのスクロース、20mlのCOVE塩溶液、10mMのアセトアミド及び10gの低溶融アガロースから構成された。
セルラーゼ−誘発培地は、1L当たり20gのArbocel−天然セルロース繊維(J. Rettenmaier USA LP)、10gのトウモロコシ浸漬固形物(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、1.45gの(NH4)2SO4、2.08gのKH2PO4、0.28gのCaCl2、0.42gのMgSO4・7H2O、0.42mlのトリコダーマ・レセイ微量金属溶液、及び2滴のプルロン酸から構成された。そのpHは、オートクレーブ処理の前、10NのNaOHにより6.0に調節された。
【0108】
トリコダーマ・レセイ微量金属溶液は、1L当たり216gのFeCl3・6H2O、58gのZnSO4・7H2O、27gのMnSO4・H2O、10gのCuSO4・5H2O、2.4gのH3BO3及び336gのクエン酸から構成された。
YP培地は、1L当たり10gの酵母抽出物及び20gのBactoペプトンから構成された。
YPG培地は、1L当たり4g の酵母抽出物、1gのK2HPO4、0.5gのMgSO4及び15.0gのグルコース(pH 6.0)から構成された。
【0109】
PEG緩衝液は、1L当たり、フィルター殺菌された、500gのPEG 4000、10 mMのCaCl2 及び 10 mM のトリス-HCl pH 7.5から構成された。
STCは、1L当たり、フィルター殺菌された、0.8 M又は1 M のソルビトール、 10 mM又は 25 mMのCaCl2 及び 10 mM 又は 25 mMの トリス-HCl pH 7.5 又は pH 8から構成された。
STPCは、STC中、40%PEG4000から構成された。
【0110】
M400 培地(pH 6) は、1L当たり、50 g のマルトデキストリン、 2 gのMgS04・7H20, 2 g のKH2PO4、 4 g のクエン酸、 8 gの酵母抽出物、 2 gのウレア、0.5 gのCaCl2 、及び0.5 mlのAMG微量金属溶液から成った。
AMG微量金属溶液は、1L当たり、6.8 g のZnS04・7H20、 2.5 g の CuSO4・5H2O, 0.24 g のNiC12・6H20、 13.9 gのFeS04・7H20, 13.5 g のMnSO4 ・H20及び3 g のクエン酸から成った。
【0111】
最少培地プレートは、1L当たり6 gのNaN03、 0.52gのKCl、1.52 g のKH2PO4、 1 ml の COVE 微量金属、 1 のグルコース、 500 mgのMgSO4・7H2O、342.3 のスクロース、 及び 20gの Noble寒天(pH 6.5)から構成された。
MLCは、1L当たり、40 gのグルコース、 50 gの大豆粉末 及び 4 g のクエン酸, pH 5.0から構成された。
【0112】
MU−1は、1L当たり260 gのマルトデキストリン(MD-11)、 5gの KH2PO4、 3 g のMgSO4・7H2O、 6 gのK2SO4、 5mlの of AMG 微量金属溶液、 及び2 gのウレア, pH 4.5から構成された。
CM−1寒天プレート(pH6.5)は、1L当たり0.25gの NaCl、 0.5gのMgSO4・7H2O 、1.9 gのK2HPO4、3.6 g のKH2PO4、 0.1 ml の微量金属溶液、 30 gのBacto寒天(Difco)、pH 6.5、 11 ml の10% ウレア、及び 67 mlの30% マルトースから構成された。
【0113】
微量金属溶液(100X)は、1L当たり22 gのZnS04・7H20、11 g のH3BO3、 5 gのMnCl2・4H2O、5gのFeSO4・7H2O、1.6 gのCoCl2・5H2O、1.6 の(NH4) 6Mo7O24、及び 50gのNa4EDTAから構成された。
PDAプレートは、1L当たり39gのジャガイモデキストロース寒天(Difco)から構成された。
【0114】
例1:pAILo1発現ベクターの構成:
発現ベクターpAILo1を、アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ及びアスペルギラス・オリザエリン酸トリオースイソメラーゼについての遺伝子からのプロモーターのハイブリッド(NA2−tpiプロモーター)、アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼターミネーター配列(AMGターミネーター)、及びアスペルギラス・ニジュランスアセトアミラーゼ遺伝子(amdS)を含んで成るpBANe6(アメリカ特許第6,461,837号)を修飾することにより構成した。
【0115】
pBANe6の修飾を、まず、特定部位の突然変異誘発によりamdS選択マーカーから位置2051, 2722及び3397での3個のNcoI制限部位を除去することにより行った。すべての変化は、amdS遺伝子生物の実際のタンパク質配列を未変化にする“サイレント”であるよう企画された。それらの3個の部位の除去を、GeneEditor Site-Directed Mutagenesis Kit (Promega, Madison, WI)により、その製造業者に従って、次のプライマー(下線のヌクレオチドは変更された塩基を表す)を用いて、同時に行った:
AMDS3NcoMut (2050): 5'-GTGCCCCATGATACGCCTCCGG -3' (配列番号1)
AMDS2NcoMut (2721): 5'-GAGTCGTATTTCCAAGGCTCCTGACC-3' (配列番号2)
AMDS1NcoMut (3396): 5'-GGAGGCCATGAAGTGGACCAACGG-3' (配列番号3)。
【0116】
次に、すべての3種の予測される配列変化を含んで成るプラスミドを、QuickChange Mutagenesis Kit (Stratagene, La Jolla, CA)を用いて、特定部位の突然変異誘発にゆだね、位置1643でAMGターミネーターの末端でNcoI制限部位を除去した。次のプライマー(下線のヌクレオチドは変更された塩基を表す)を、突然変異誘発のために使用した:
AMGターミネーターを突然変異誘発するための上方プライマー:
5'-CACCGTGAAAGCCATGCTCTTTCCTTCGTGTAGAAGACCAGACAG-3' (配列番号4);
AMGターミネーター配列を突然変異誘発するための下方プライマー:
5'-CTGGTCTTCTACACGAAGGAAAGAGCATGGCTTTCACGGTGTCTG-3' (配列番号5)。
【0117】
pBANe6の修飾における最後の段階は、pAILo1を生成するために、QuickChange Mutagenesis Kit及び次のプライマー(下線のヌクレオチドは変更された塩基を表す)を用いて、ポリリンカーの開始での新規NcoI制限部位の付加であった:
NA2-tpiプロモーターを突然変異誘発するための上方プライマー:
5'-CTATATACACAACTGGATTTACCATGGGCCCGCGGCCGCAGATC-3' (配列番号6);
NA2-tpiプロモーターを突然変異するための下方プロモーター:
5'-GATCTGCGGCCGCGGGCCCATGGTAAATCCAGTTGTGTATATAG-3' (配列番号7)。
【0118】
例2:pMJ04発現ベクターの構成:
発現ベクターpMJ04を、まず、下記に示されるプライマー993429(アンチセンス)及び993428(センス)を用いて、トリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNAからのトリコダーマ・レセイCeI7Aセロブロヒドロラーゼ1遺伝子(cbh1)ターミネーターをPCR増幅することにより構成した。アンチセンスプライマーを、5’−末端でPacI部位、及びセンスプライマーの5’−末端でSpeI部位を有するよう構築した。トリコダーマ・レセイRutC30(ATCC 56765; Montenecourt and Eveleigh,1979, Adv.Chem.Ser.181 : 289-301)を、トリコダーマ・レセイQm6A(ATCC 13631; Mandels and Reese, 1957、J. Bacteriol. 73: 269-278)から誘導した。
【0119】
プライマー993429(アンチセンス):
5'-AACGTTAATTAAGGAATCGTTTTGTGTTT-3'(配列番号8):
プライマー993428(センス):
5'-AGTACTAGTAGCTCCGTGGCGAAAGCCTG-3'(配列番号9)。
【0120】
増幅反応(50μl)は、1X Reaction Buffer (New England Biolabs, Beverly, MA)、0,3mMのdNTP、100ngのトリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNA(DNeasy Plant Maxi Kit, QIAGEN Inc., Valencia, CAを用いて単離された)、0.3μMのプライマー993429、0.3μMのプライマー993428及び2単位のVentポリメラーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)から構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333 (Hamburg, Germany)においてインキュベートした:94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、40mMのトリス塩基−20mMの酢酸ナトリウム−1mMのニナトリウムEDTA(TAE)緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで229bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN Inc., Valencia, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0121】
得られるPCRフラグメントを、PacI及びSpeIにより消化し、そして同じ制限酵素により消化されたpAILo1中に、Rapid Ligation Kit (Roche, Indianapolis, IN)を用いて連結し、pMJ04(図2)を生成した。
【0122】
例3:pMJ06発現ベクターの構成:
発現ベクターpMJ06を、まず、下記に示されるプライマー993696(アンチセンス)及び993695(センス)を用いて、トリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNAからのトリコダーマ・レセイCeI7Aセロブロヒドロラーゼ1遺伝子(cbh1)プロモーターをPCR増幅することにより構成した。アンチセンスプライマーを、センスプライマーの5’−末端でSacI部位、及びアンチセンスプライマーの5’−末端でNcoI部位を有するよう構築した。
【0123】
プライマー993695(センス):
5'- ACTAGTCGACCGAATGTAGGATTGTT -3'(配列番号10):
プライマー993696(アンチセンス):
5'- TGACCATGGTGCGCAGTCC -3'(配列番号11)。
【0124】
増幅反応(50μl)は、1X Reaction Buffer、0,3mMのdNTP、100ngのトリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNA(DNeasy Plant Maxi Kitを用いて単離された)、0.3μMのプライマー993696、0.3μMのプライマー993695及び2単位のVentポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333 (Hamburg, Germany)においてインキュベートした:94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で60秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで988bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0125】
得られるPCRフラグメントを、NcoI及びSalIにより消化し、そして同じ制限酵素により消化されたpMJ04中に、Rapid Ligation Kitを用いて連結し、pMJ06(図3)を生成した。
【0126】
例4:pMJ09発現ベクターの構成:
発現ベクターpMJ09を、まず、下記に示されるプライマー993843(アンチセンス)及び993844(センス)を用いて、トリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNAからのトリコダーマ・レセイCeI7Aセロブロヒドロラーゼ1遺伝子(cbh1)プロモーターをPCR増幅することにより構成した。アンチセンスプライマーを、5’−末端でPacI及びSpeI部位、及びセンスプライマーの5’−末端でPvuI部位を有するよう構築した。
【0127】
プライマー993844(センス):
5'-CGATCGTCTCCCTATGGGTCATTACC-3'(配列番号12):
プライマー993843(アンチセンス):
5'- ACTAGTTAATTAAGCTCCGTGGCGAAAG-3'(配列番号13)。
【0128】
増幅反応(50μl)は、1X Reaction Buffer、0,3mMのdNTP、100ngのトリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNA(DNeasy Plant Maxi Kitを用いて単離された)、0.3μMのプライマー993844、0.3μMのプライマー993843及び2単位のVentポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333 (Hamburg, Germany)においてインキュベートした:94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で60秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで473bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0129】
得られるPCRフラグメントを、PuvI及びSpeIにより消化し、そしてPacI及びSpeIにより消化されたpMJ06中に、Rapid Ligation Kitを用いて連結し、pMJ09(図4)を生成した。
【0130】
例5:発酵及び菌糸体組織:
トリコダーマ・レセイRutC30を、Mandels and Weber, 1969, Adv. Chem. Ser. 95: 391-413により記載されるようなセルラーゼ誘発標準条件下で増殖した。菌糸体サンプルを、Whatman紙を通しての濾過により収穫し、そして液体窒素においてすばやく凍結した。サンプルを、それらがRNA抽出のために破壊されるまで、-80℃で貯蔵した。
【0131】
例6:発現される配列標識(EST)cDNAライブラリー構成:
全細胞RNAを、例5に記載される菌糸体サンプルから、Timberlake and Barnard(1981, Cell 26 : 29-37)の方法に従って抽出し、そしてRNAサンプルを、1%ホルムアルデヒド−アガロースゲルからのブロットの後、ノザンハイブリダイゼーションにより分析した(Davis など.、1986, Basic Methods in Molecular Biology, Science Publishing Co. , Inc. , New York)。ポリアデニル化されたmRNA画分を、全RNAから、mRNA Separator KitTM (Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って単離した。
【0132】
二本鎖cDNAを、約5μgのポリ(A)+mRNAを用いて、Gubler and Hoffman (1983, Gene 25:263-296)の方法に従って合成し、但しNotI-(dT)18プライマー(Pharmacia Biotech, Inc. , Piscataway, NJ)を用いて、第1鎖合成を開始した。cDNAを、ヤエナリヌクレアーゼ(Boehringer Mannheim Corporation, Indianapolis, IN)により処理し、そして末端を、T4DNAポリメラーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)によりブラント化した。次に、BamHI/EcoRIアダプターを、cDNAのブラント末端に連結した。NotIによる消化の後、cDNAを、TAE緩衝液を用いて、0.7%アガロースゲル電気泳動によりサイズ選択し(約0.7〜4.7kb)、そしてNotI+BamHIにより切断され、そしてウシ腸アルカリホスファターゼ(Boehringer Mannheim Corporation, Indianapolis, IN)により脱リン酸化されたpYES2(Invitrogen, Carlsbad, CA)により連結した。
【0133】
連結混合物を用いて、コンピテントE. コリTOP10細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、その製造業者の説明書に従って形質転換した。形質転換体を、50μg/mlの最終濃度でのアンピシリンにより補充された2YT寒天プレート(Miller, 1992, A Short Course in Bacterial Genetics. A Laboratoru Manual and Handbook for Escherichia coli and Related Bacteria ,Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York)上で選択した。
【0134】
例7:cDNAクローンの鋳型調製及びヌクレオチド配列決定:
例6に記載されるcDNAライブラリーから、約7000個の形質転換体コロニーを、1ml当たり50μgのアンピシリンにより補充された2YTブイヨン100μlを含む96−ウェルマイクロタイタープレート中に、2YTプレートから直接的に採取した。プレートを、200rpmで振盪しながら、37℃で一晩インキュベートした。インキュベーションの後、100μlの無菌50%グリセロールを、個々のウェルに添加した。形質転換体を、個々のウェルにおいて50μgのアンピシリンにより補充された、1mlのMagnificent BrothTM(MacConnell Research, San Diego, CA)を含む二次深皿96−ウェルマイクロタイタープレート(Advanced Genetic Technologies Corporation, Gaithersburg, MD)上で複製した。
【0135】
一次マイクロタイタープレートを、-80℃で凍結貯蔵した。二次深皿プレートを、回転振盪器上で激しく撹拌しながら(300rpm)、37℃で一晩インキュベートした。こぼれ及び汚染を防ぐために、及び十分な通気を可能にするために、個々の二次培養物プレートを、ポリプロピレンパッド(Advanced Genetic Technologies Corporation, Gaithersburg, MD)及びプラスチック製マイクロタイタープレート蓋により被覆した。
【0136】
DNAを、個々のウェルから、Utterback など (1995, Genome Sci. Technol. 1:1-8)により改良されたようなAdvanced Genetic Technologies Corporation (Gaithersburg, MD)の96−ウェルMiniprepキットプロトコールを用いて単離した。単一−通過DNA配列決定を、色素−ターミネーター化学(Giesecke など 1992, Journal of Virology Methods 38: 47-60)及び下記T7配列決定プライマーを用いて、Perkin-Elmer Applied Biosystems Model 377 XL Automated DNA Sequencer (Perkin-Elmer/Applied Biosystems, Inc. , Foster City, CA)により行った:
T7プライマー:5'-TAATACGACTCACTATAGGG-3'(配列番号14)。
【0137】
例8:cDNAクローンのDNA配列データの分析:
ヌクレオチド配列データを、性質及びベクター配列について詳細に調べ、そしてDNA配列の末端での不明瞭な塩基部分を整え、そしてすべての配列を、PHRED/PHRAP ソフトウェアー (University of Washington, Seattle, WA)の助けにより、お互い比較した。得られるコンチグ及びシングルトンを、6種の枠で翻訳し、そしてBLOSUM62マトリックスを用いて、改良されたSmith-Watermanアルゴリズムにより、GeneMatcherTMソフトウェアー(Pasadena Inc. , Pasadena, CA)を用いて、公的に入手できるタンパク質データベースに対して調査した。
【0138】
例9:ファミリー6セロビオヒドロラーゼII(CeI6A)をコードするcDNAクローンの同定:
ファミリー6セロビオヒドロラーゼ(CeI6A)をコードする推定上のcDNAクローンを公的に入手できるデータベース、例えばSwissprot, Genpept及びPIRに寄託されているタンパク質配列に、アセンブリーされたESTの推定されるアミノ酸配列を比較することにより同定した。1つのクローン、すなわちトリコダーマ・レセイEST TrO749を、配列番号15に示されるような1413bpの読取枠、及び配列番号16に示されるような推定されるアミノ酸配列を含む、1747bpのpYES2挿入体を表すヌクレオチド配列分析のために選択した。トリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼIIを含むプラスミドを、pTr0749を命名した。
【0139】
例10:pSMai148発現ベクターの構成:
発現ベクターpSMai148を、トリコダーマ・レセイCeI6AセロヒドロラーゼII遺伝子が誘導され、そしてトリコダーマ・レセイRutC30株におけるトリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子の発現のサイレンシングのために意図される二本鎖−RNA(ds-RNA)の転写のために構成した。プラスミドpSMai148を、下記に示されるプライマー994991(アンチセンス)及び994990(センス)を用いて、pTr0749からの210bpのトリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼIIコード領域をPCR増幅することにより生成した。アンチセンスプライマーを、5’−末端でEcoRI部位、及びセンスプライマーの5’末端でNcoI部位を有するよう構築した:
【0140】
プライマー994991(アンチセンス):
5'-GGAATTCTAGTTCTTATATTTGGCGACGCCACCATCT-3'(配列番号17);
プライマー994990(センス):
5'-CATGCCATGGAAAGGTTCCCTCTTTTATGTGGCTAG-3'(配列番号18)。
【0141】
増幅反応(50μl)は、1×ThermoPol反応緩衝液、0.3mMのdNTP, 10ngのpTr0749, 0.3μMのプライマー994990, 0.3μMのプライマー994991、及び2.5単位のTaqポリメラーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)から構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで227bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0142】
別のPCRを、下記に示されるプライマー994993(アンチセンス)及び994992(センス)を用いて、pTr0749からのトリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼIIコード領域の337bpフラグメントを増幅するために実施した。アンチセンスプライマーを、5’−末端でEcoRI部位、及びセンスプライマーの5’末端でPacI部位を有するよう構築した:
プライマー994993(アンチセンス):
5'-GGAATTCTGACTGAGCATTGGCACACTTTGGAGTAC-3'(配列番号19);
プライマー994992(センス):
5'-CCTTAATTAAAAAGGTTCCCTCTTTTATGTGGCTAG-3'(配列番号20)。
【0143】
増幅反応(50μl)は、1×ThermoPol反応緩衝液、0.3mMのdNTP, 10ngのpTr0749、0.3μMのプライマー994992, 0.3μMのプライマー994993、及び2.5単位のTaqポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで354bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0144】
得られるトリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼII PCRフラグメントを、PacI及びEcoRIにより消化し、そしてNcoI及びEcoRI消化されたトリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼII PCRフラグメント(第1のPCRからの)の下流に逆方向の配向で連結した。末端−末端反復体(図5)を、T4 DNAリガーゼ(Roche, Indianapolis, IN)を用いて、その製造業者のプロトコールンに従って、PacI及びNcoI消化されたpMJ09ベクター中に連結し、pSMal148(図6)を生成した。
【0145】
例11:Cel6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子の逆方向反復体フラグメントを有する発現構造体によるトリコダーマ・レセイの形質転換:
二本鎖RNA−介在性(ds-RNA)干渉がトリコダーマ・レセイに存在することを示すために、Cel6AセロビオヒドロラーゼII配列の自己−相補的ヘヤーピンRNAを発現するpSMai148発現ベクターを用いて、トリコダーマ・レセイRutC30プロトプラストを形質転換した。対照として、pMJ09プラスミド(“空のベクター”)(図4)、すなわちpSMai148の親ベクターがまた包含された。両構造体は、単独の窒素源としてのアセトアミド上での増殖のための選択を提供するamdS遺伝子を含み、そしてpSMai148プラスミドにおけるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII配列を、強いセルロース−誘発性トリコダーマ・レセイCel7AセロビオヒドロラーゼIプロモーターの制御下に配置した。
【0146】
プロトプラスト調製及び形質転換を、Penttilaなど.,1987, Gene 61: 155-164による改良されたプロトコールを用いて行った。手短には、トリコダーマ・レセイRutC30を、2%(w/v)のグルコース及び10mMのウリジンにより補充されたYP培地25mlにおいて、27℃で17時間、軽い撹拌(90rpm)下で培養した。菌糸体を、Millipore Vacuum Driven Disposable Filtration System (Millipore, Bedford, MA)を用いて濾過により集め、そして脱イオン水により2度及び1.2Mのソルビトールにより2度、洗浄した。
【0147】
プロトプラストを、1ml当たり15mgのGlucanex(商標)200 G (Novozymes Switzerland AG, Neumatt, Switzerland)及び1ml当たり0.36単位のキチナーゼ(Sigma Chemical Co. , St. Louis, MO)を含む1.2Mのソルビトール20mlに、洗浄された菌糸体を、軽く振盪(90rpm)しながら34℃で15〜25分間、懸濁することにより生成した。プロトプラストを、400×gで7分間、遠心分離することにより集め、そして1.2Mの冷ソルビトールにより2度、洗浄した。プロトプラストを、血球計を用いて計数し、そしてSTC1ml当たり1×108個のプロトプラストの最終濃度に再懸濁した。過剰のプロトプラストを、Cryo 1℃Freezing Container (Nalgene Rochester, NY)において、-80℃で貯蔵した。
【0148】
約7μgのPmeI消化された発現プラスミド(pSMai148又はpMJ09)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、そして軽く混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、混合し、そして室温で30分間インキュベートした。次に、STC(3ml)を添加し、混合し、そしてCOVEプレートにプレートした。そのプレートを28℃で5〜7日間インキュベートした。形質転換体を、COVE2プレート上で継代培養し、そして28℃で増殖した。
【0149】
例12:SDS−ポリアクリルアミドゲルによるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIタンパク質の検出:
トリコダーマ・レセイCel6AセロピオヒドロラーゼII逆方向反復体フラグメントを有する20の形質転換体(SMA148−01〜SMA148〜20)、及び“空のベクター”を含む10の形質転換体(MJ09−01及びMJ09−10)を、ランダムに選択し、そしてpH6.0での25mlのセルラーゼ−誘発性培地を含む125mlの反らせ板付振盪フラスコにおいて培養し、形質転換体の胞子により接種し、そして28℃及び200rpmで7日間インキュベートした。トリコダーマ・レセイRutC30を対照として使用した。培養物ブイヨンサンプルを、接種後7日間で除去し、15,700×gで5分間、微小遠心分離機において遠心分離し、そして上清液を新しい管に移した。
【0150】
トリコダーマ・レセイCelaセロビオヒドロラーゼIIサイレンシングの程度を、SDS−PAGEゲル上で全ブイヨンを分析することによりタンパク質レベルを最初に評価した。SDS−PAGEを、CriterionTM Cell (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)と共にCriterionTM トリス−HClゲル(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて行った。5μlの7日目サンプルを、2倍濃度のLaemmli Sample Buffer (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)に懸濁し、そして5%β−メルカプトエタノールの存在下で3分間、煮沸した。すべてのサンプルを、ポリアクリルアミドゲル上に負荷し、そして1×トリス/グリシン/SDS実施緩衝液(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)における電気泳動にゆだねた。得られるゲルを、Bio-SafeTM Coomassie Stain (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)により染色した。
【0151】
SDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向反復体フラグメント(SMA148〜SMA148−20)を担持するトリコダーマ・レセイRutC30形質転換体の大部分が、“空のベクター”(pMJ09−01〜pMJ09−10)を有する形質転換に比較して、有意に低い量のトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIタンパク質を生成したことを示した。1つの形質転換体(形質転換体14)は、タンパク質の完全な欠失を示した。
【0152】
種々の程度のSDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIタンパク質低下を示す6個のSMA148形質転換体(形質転換体1, 2, 11, 12, 13, 14)、及び2個の“空のベクター”形質転換体(MJ09−03及びMJ09−04)を、さらなる分析のために選択した。2回の単一を、それらの形質転換体に対して行い、純粋な株を得た。それらの単一単離された形質転換体を、25mlのセルラーゼ−誘発培地(pH5.0)において28℃で増殖した。さらに、宿主株(トリコダーマ・レセイRutC30)、及びトリコダーマ・レセイCel6A遺伝子が相同組換えによりノックアウトされている正の対照株(トリコダーマ・レセイSaMe02)をまた、同じ条件下で培養した。上清液及び菌糸体の両者を、接種の3日後、それらのサンプルの個々から集め、そして前記のようなSDS−PAGE分析にゆだねた。
【0153】
SDS−PAGEは、単一−胞子単離がさらに、たぶん、胞子精製の結果として、よりホモ接合になる形質転換体のために、SDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIのレベルを低めたことを示した。
【0154】
例13:ノザンブロットによるSDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの検出:
ノザンハイブリダイゼーションを、株におけるSDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向反復体フラグメント(pSMai148)の組込みがSDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの量の低下をもたらすかどうかを決定するために行った。全RNAを、例11において得られる、凍結された菌糸体から、FenozolTM(Active Motif, Carlsbad, CA)を用いて、及びその製造業者によりわずかに改良されたプロトコールに従って、抽出した。
【0155】
手短には、凍結された菌糸体を、少数のドライアイスチップと共に電気コーヒーグラインダーにおいて細かな粉末に粉砕した。粉砕された菌糸体を、20mlのFonozolTMと共に混合し、かき混ぜ、そして50℃の水浴において15分間インキュベートし、この後、5mlのクロロホルム(Sigma, St. Louis, MO)を添加し、かき混ぜ、そして室温で10分間、放置した。次に、そのサンプルを、700×gで室温で20分間、遠心分離し、そして水性相を新しい管に移し、そして等体積のフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコールを添加した。サンプルをかき混ぜ、そして700×gで10分間、遠心分離し、そして上部水性層を、等体積のクロロホルムに添加した。
【0156】
サンプルをさらに、700×gで10分間、遠心分離し、そして水性層を、3Mの酢酸ナトリウム(pH5.2)0.5ml及び6.25mlのイソプロパノールを含む管に移した。サンプルを混合し、室温で15分間インキュベートし、そして13400×gで30分間、遠心分離し、RNAを回収した。RNAを、70%エタノールにより洗浄し、遠心分離し、乾燥し、そしてDEPC−水に再懸濁した。抽出されたRNAの量及び質を、RNA 6000 Nano Kit Technologies, Wilmington, DE)と共に、Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies, Wilmington, DE)上で、その製造業者のプロトコールに従って評価した。
【0157】
単離された全RNAを、1%アガロース/ホルムアルデヒドゲル上での4〜6時間の電気泳動により分別し、そしてTurboblotter(Schleicher & Schuell BioScience, Keene, NH)を用いて、Nytran SuperCharge membrane (Schleicher & Schuell BioScience, Keene, NH)上に14〜16時間、その製造業者の推薦に従ってブロットした。膜を、下記に示されるプライマー996118(アンチセンス)及び996117(センス)を用いて、PCRの間、ジゴキシゲニン−11−dUTPの組込みにより合成された、505bpのジゴキシゲニン−ラベルされたトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIプローブによりハイブリダイズした:
【0158】
プライマー996118(アンチセンス):
5'-AAATCGTGGCGCACTGCTGT-3'(配列番号21);
プライマー996117(センス):
5'-TGAGTGCATCAACTACGCCG-3'(配列番号22)。
【0159】
増幅反応(50μl)は、1×ThermoPol Reaction Buffer, 5μlのPCR DIGラベリングミックス(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)、10ngのpTr0749, 0.3μMのプライマー996118、0.3μMのプライマ996117及び2.5単位のTaqポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333におけるインキュベートした:94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。5μlのPCR生成物を、TAE緩衝液を用いて1.5%アガロースゲル上でサイズ選択し、臭化エチジウムにより染色し、そしてUVトランスイルミネーター下で可視化した。ジゴキシゲニンの組込みを、分子質量の上昇により示した。
【0160】
ハイブリダイゼーションを、EIG Easy Hyb緩衝液(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)において50℃で15〜17時間、行った。次に、膜を、2×SSC+0.1%SDSにおいて室温で5分間、高い緊縮条件下で洗浄し、続いて0.1×SSC+0.1%SDSにおいて、それぞれ50℃で15分間、2回洗浄した。プローブ−標的物ハイブリッドを、化学ルミネッセントアッセイ(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)により、その製造業者の説明書に従って検出した。
【0161】
膜を、50%ホルムアミド/5%SDS/50mMのトリス−HCl(pH7.5)において80℃で2時間、剥離し、そして前と正確に同じ条件を用いて調製されたトリコダーマ・レセイアクチン1遺伝子(Accession Number X75421) (Matheucciなど., 1995, Gene 161: 103-106)をコードする407bpのジゴキシゲニン−ラベルされたプローブにより再プローブした。4.07bpのアクチン1遺伝子プローブを、下記に示されるプライマー996120(アンチセンス)及び996119(センス)を用いて、PCRの間、ジゴキシゲニン−11−dUTPの組込みにより合成した。
【0162】
プライマー996120(アンチセンス):
5'-GTCAACACGACGAATGGCGT-3' (配列番号23)
プライマー996119(センス):
5'-TGATCGGTATGGGTCAGAAGG-3' (配列番号24)
【0163】
増幅反応(50μl)は、1×ThermoPol Reaction Buffer, 5μlのPCR DIGラベリングミックス(Roche, Indianapolis, IN)、100ngのトリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNA(DNeasy Plant Maxi Kitを用いて単離された), 0.3μMのプライマー996119、0.3μMのプライマ996120及び2.5単位のTaqポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333におけるインキュベートした:94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。
【0164】
5μlのPCR生成物を、TAE緩衝液を用いて1.5%アガロースゲル上でサイズ選択し、臭化エチジウムにより染色し、そしてUVトランスイルミネーター下で可視化した。ジゴキシゲニンの組込みを、分子質量の上昇により示した。
【0165】
ノザンは、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向反復体配列を有した形質転換体が、“空のベクター”(負の対照)を受けた形質転換体及び宿主株(トリコダーマ・レセイRutC30)に比較して、実質的に低いトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII転写体を生成したことを示した。この結果は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAが検出され得ないが、但しアクチン1遺伝子転写体(アクチン1が同等のRNA負荷のための対照として使用された)は明らかに存在する形質転換体11及び14において特に注目される。トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAにおける明らかな100%抑制は、それらの形質転換体におけるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIタンパク質において100%低下に強く相互関係し、このことは、トリコダーマにおけるRNA干渉が翻訳のために利用できる標的mRNAの量の低下に起因することを示唆する。
【0166】
例14:同時逆転写−PCRによるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの検出:
異なった形質転換体におけるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの相対的発現レベルを、同時逆転写−PCR(RT−PCR)により定量化した。全RNAを、RT−PCR反応のための鋳型として作用するように記載されるような個々の形質転換体から抽出した。トリコダーマ・レセイアクチン1遺伝子を、内部対照として使用した。プライマーを、Primer Express software (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて企画した。プライマー列挙が好ましい等級に従って生成した後、対を、その3’末端で最後の5個の塩基において2個以下のG+Cを有する第1組のプライマーを選択することにより選択した。次のプライマーを使用した:
【0167】
トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII前方向プライマー(996006):
5'-CTGGTCCAACGCCTTCTTCAT- 3'(配列番号25)
トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向プライマー(996007):
5'-GGAACGTAGTGAGGCTCGCTAA- 3'(配列番号26)
トリコダーマ・レセイアクチン前方向プライマー(996121):
5'-CATGGCTGGTCGTGATCTTACC- 3'(配列番号27)
トリコダーマ・レセイアクチン逆方向プライマー(996122):
5'-CCTTGATGTCACGGACGATTTC- 3'(配列番号28)。
【0168】
RT−PCRアッセイを、ABI Prism(商標)7700 System (Applied Biosystems, Foster City, CA)及びSYBR(商標)Green PCR マスターミックス (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて行った。個々の反応混合物は、12.5μlのSYBR(商標)Green PCR マスターミックス、6単位のSuperscriptII (Invitrogen, Carisbad, CA)、0.83μMの前方向プライマー、0.83μMの逆方向プライマー及び種々の濃度のRNA鋳型を、25μlの合計体積で含んだ。逆転写を50℃で30分間、行い、続いてSuperscriptIIの不活性化及びAmpliTaq(商標)の活性化を95℃で10分間、行った。
【0169】
40のPCRサイクルを、次の条件下で行った:95℃で15秒の変性、続いて60℃で1分のアニーリング及び拡張、個々のサンプルを三重反復して調製した。SuperscriptIIを有さない負の対照は、特異性を評価するために試験されるあらゆるプレート上で作用した。さらに、SYBR(商標)Greenは二本鎖DNAに非特異的に結合するので、PCR増幅生成物のアリコートを、TAE緩衝液を用いて2.0%アガロースゲル上で電気泳動し、非特異的増幅の不在を確認した。
【0170】
ABI PRISM 7700 Sequence Detection Systemから得られるデータを、ABIユーザーBulletin#2(Applied Biosystems, Foster City, CA)に記載される”Standard Curve Method for Relative Quantitative”を用いて分析した。この方法においては、処理されたサンプルの発現の量を、未処理の対照サンプルに対して計算した。処理されたサンプルの量を、標準曲線から決定し、そして未処理の対照サンプルの量により割り算した。従って、未処理のアンプルを、1×サンプルとして命名し、そしてすべての他の量を、未処理のサンプルに対するn−倍差異として表された。次に、処理されたサンプル量を、内因性対照アクチン1に対して標準化し、個々の反応に添加する全RNAの量の差異を説明した。
【0171】
図7は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの相対的発現レベルが、ノザンハイブリダイゼーションデータと強く相互作用する“空のベクター対照”に比較して、形質転換体14及び負の対照株(SaMe02)において最低であったことを示す。
【0172】
例15:抑制減法ハイブリダイゼーション(SSH)を用いてのトリコダーマ・レセイからの減法され、そして標準化されたcDNAライブラリーの構成:
トリコダーマ・レセイ株RutC30を、基本CelluclastTM培地及び発酵条件を用いて、2LのApplikonライブラリー発酵器において増殖した。炭素源は、グルコース、セルロース、又は前処理され、そして洗浄されたトウモロコシストーバを包含した。すべては、1L当たり52gのグルコースに等しい炭素に基づいて負荷された。発酵方法は、28℃の温度、pH4.5及び約120時間の増殖時間を用いた。
【0173】
炭素源の他に、すべての発酵は、1L当たり次の培地成分を含んだ:5gのグルコース、10gのトウモロコシ浸漬固形物、2.08gのCaCl2、3.87gの(NH4)2SO4, 2.8gのKH2PO4、1.63gのMgSO4・7H2O、0.75mlの微量金属及び1.8mlのプルロン酸。微量金属溶液は、1L当たり、216gのFeCl3・6H2O、58gのZnSO4・7H2O、27gのMnSO4・H2O、10gのCuSO4・5H2O、2.4gのH3BO3及び336gのクエン酸から構成された。菌糸体のサンプルを、接種後、1,2,3,4及び5で収穫し、そしてMiraclothTM(Calbiochem, La Jolla, CA)を通しての濾過により培養培地から、すばやく分離し、液体窒素において凍結し、そして−80℃で貯蔵した。
【0174】
全細胞RNAを、グルコース、セルロース又は前処理されたトウモロコシストーバ上で増殖された、凍結細胞(例1)から、Timberlake and Barnard, 1981, 前記の方法のわずかに改良された方法を用いて単離した。RNA抽出緩衝液を、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸(80mlのDEPC−処理された水中、1.6g)の溶液に、p−アミノサリチル酸(DEPC−処理された水中、9.6g)の新しく調製された溶液を添加することにより調製した。この混合物を、40mlの5×RNB溶液(1Mのトリス−HCl、pH8.5, 1.25MのNaCl、0.25MのEGTA)に撹拌しながら添加した。
【0175】
凍結菌糸体を、電気コーヒーグラインダーにおいて、少数のドライアイスチップと共に細かな粉末に粉砕した。粉砕された菌糸体を、氷上での20mlのRNA抽出緩衝液に直接的に注ぎ、そして等体積のTE−飽和フェノールを添加した。激しい撹拌の後、サンプルを2500rpmで10分間、遠心分離し(H1000Bローターを備えたSorvall RT7遠心分離器)、相を分離した。水性相を、10mlのフェノール及び10mlのクロロホルム−イソアミルアルコール(24:1)を含む新規管に移し、同時に追加の5mlの抽出緩衝液を、フェノール相に添加した。後者の混合物を、68℃で5分間インキュベートし、ポリソーム及び界面材料に閉じ込められるRNAを生成した。
【0176】
インキュベーションに続いて、管を、2500rpmで10分間、遠心分離し(H1000Bローターを備えたSorvall RT7遠心分離機)、そして水性相を、第1の抽出から得られた水性相と組合した。この混合物を、界面でのタンパク質がもはや存在しなくなるまで、フェノール−クロロホルムによる反復された抽出にゆだねた(通常、5又は6度)。RNAを、0.3Mの酢酸ナトリウム(pH5.2)及び50%イソプロパノールによる沈殿に続いて、遠心分離(12,000×gで30分)により回収した。実験室−規模の発酵器において生成される約1〜2gの凍結された菌糸体から成る個々のサンプルから、0.4〜1.8mgの全細胞RNAを得た。
【0177】
セルロース及びPCS上で増殖された培養物からのRNAの質を、ホルムアルデヒド−アガロースゲル電気泳動、続いてトリコダーマ・レセスcbh1特異的プローブによるノザンブロット及びハイブリダイゼーション(Thomas, 1980, Peoc. Nat. Acad. Sci. USA 77: 5201-5205)により評価した。cbH1プローブフラグメントを、EMBLデータベース(入手番号E00389)から入手できる公開されたヌクレオチド配列情報に基づいて標準のPCR方法により増幅した。
【0178】
プローブを、ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)によりラベルし、そしてNorth2South Direct HRP Labeling and Detection Kit (Pierce, Rockford, IL)において提供される緩衝液及びプロトコールを用いて55℃でハイブリダイズした。ブロットを、2×SSC及び0.1%SDSにおいて、55℃でそれぞれ5分間、3度洗浄し、続いて2×SSC(SDSなし)において、それぞれ5分間、さらに3度洗浄した。X−線フィルムへのブロットの暴露に続いて、個々のレーンにおける実質的にすべてのハイブリダイゼーションシグナルが、18SリボソームRNAバンドのわずかに上の位置に移動する1.8kbのcbh1 mRNA種に含まれたことは明白であった。オートラジオグラム又は臭化エチジウム染色されたゲルのいずれか上での有意なmRNA分解の証拠は存在しなかった。
【0179】
ポリアデニル化された(ポリA+)mRNA画分を、OligotexTM mRNA単離キットを用いて、その製造業者の説明書(QIAGEN, Valencia, CA)に従って精製した。それらのサンプルの個々からのポリA+ mRNAの収量は、2μg〜25μgであった。続いて、mRNA画分の個々を、トリコダーマ・レセイγ−アクチン及びcbh1遺伝子に由来するHRP−ラベルされたプローブを用いて、ノザンブロットハイブリダイゼーションにより分析した。γ−アクチンプローブフラグメントを、標準のPCR方法及び次の遺伝子−特異的プライマーにより増幅した:
【0180】
5'-CCAGACATGACAATGTTGCCGTAG- 3'(配列番号29)
5'-TTTCGCTCTTCCTCACGCCATTG- 3'(配列番号30)。
【0181】
予測されるように、ハイブリダイゼーションシグナルは、個々のレーンにおけるγ−アクチン及びcbh1 mRNA(それぞれ、約1.2kb及び1.8kb)に対応するバンドに位置し、このことは、mRNAサンプルが高い品質のものであり、そしてcDNA合成のために適切であることを示唆する。
【0182】
Diatchenkoなど., 1996、前記により記載される抑制減法ハイブリダイゼーション(SSH)方法を用いて、セルロース−及びPCS−誘発された配列のために富化されたトリコダーマ・レセイRutC30からのcDNAプールを生成し、そして標準化し、まれな転写体の回収を助けた。下記表1は、それらの実験のために使用されるドライバー及びテスターcDNAの組合せを列挙する。
【0183】
【表1】
【0184】
表1におけるSSH反応からの得られるcDNAプールを用いて、セルロース−及びPCS−誘発された配列の減法ライブラリーを生成した。cDNAの合成のために、個々の時点(1〜5日)に由来する400ngのポリA+ mRNAを、合計2μgの鋳型のために組合した。cDNAの合成及び減法を、PCR-SelectTMキット(Clontech, Palo Alto, CA)を用いて行った。前記方法は、Diatchenkoなど., 1996, 前記により概略されるような抑制減法ハイブリダイゼーション(SSH)の方法に基づかれる。最初にmRNAを、グルコース、セルロース及びPCS上で増殖されたトリコダーマ・レセイRutC30の3種の別々の発酵から、PCR-SelectTMキット(Clontech, Palo Alto, CA)により供給される試薬を用いて、二本鎖cDNAに転換した。
【0185】
特別に発現されたcDNAは、“テスター”cDNAプール(すなわち、セルロース又はトウモロコシストーバ上で増殖された細胞からの)及び“ドライバー”cDNAの両者において存在したが、しかし“ドライバー”プールにおいては、より低いレベルで存在した(表1)。それらのcDNAプールの両者を、4個の塩基対パリンドロームを認識し、そしてブラント末端フラグメント(GT/AC)を生成する制限酵素RsaIにより消化した。次に、テスターcDNAプールを、2種のサンプルに分け、そして2種の異なったアダプターオリゴヌクレオチド(Clontech PCR-SelectTMキットにより供給される)により連結し、テスターcDNAの2種の集団をもたらした。アダプターは、個々のアダプターの長い鎖のみがcDNAの5’末端に共有結合されるよう、5’−リン酸基を用いないで企画した。
【0186】
Clontech PCR−SelectTMキットにおいて特定される条件を用いての2種のハイブリダイゼーションの第1において、過剰のドライバーcDNAを、テスターcDNAの個々の部分に付加した。その混合物を、95℃に加熱することにより変性し、次にアニーリングした。4タイプの分子を、このアニーリングにより生成した(a, b, c及びd分子として命名された)。タイプa分子は、ハイブリダイゼーションの二次動力学は、選択的にbタイプ分子を形成するプールにおけるより多くの分子に関して早いので、等濃度の高−及び低−発生cDNAを包含した。
【0187】
同時に、タイプa分子は、通常の非標的物cDNAがドライバーによりタイプc分子を形成したので、特別に発現された(例えば、セルロース−又はPCS−誘発された)配列のために有意に富化された。第2のハイブリダイゼーションにおいては、一次ハイブリダイズされた生成物の2種のプールを、個々のテスターサンプルからのタイプa分子が結合し、そして新規のタイプeハイブリッドを形成するよう、組合した。それらは、個々の末端で異なったアダプター分子を有する、二本鎖テスター分子であった。新たに変性されたドライバーcDNAをまた付加し、特別に発現された配列のためにe分子のプールをさらに富化した。
【0188】
SSH方法の最終段階においては、特別に発現されたcDNAを、PCR(PCR−SelectTMキットにおいて特定される条件)により選択的に増幅した。2種の異なったプライマーアニーリング部位を有するタイプe分子のみを、指数的に増幅した。
【0189】
品質調査として、約360のランダムに採取されたコロニーからのcDNAクローンを、Amersham TempliPhiキットを用いてローリングサークル増幅により精製し、そしてDNA配列決定により分析した(反応1から70、反応2から96、及び反応3から192)。Transcript AssemblerTMソフトウェアー(Paracel, Inc. , Pasadena, CA)を用いての配列のクラスター化は、個々のプールが高い%の非冗長性のクローンを含んだ(反応1に関して76%、反応2に関して90%及び反応3に関して67%)ことを示した。
【0190】
さらに、コンチグ(同じcDNAのオーバーラップする配列)は、平均わずか2つの配列を含んだこの分析において同定した。集合的に、それらの観察は、ライブラリーの効果的標準化がSSH反応の間、達成され、その対応するcDNAライブラリーにおいて低レベルの冗長性を生成したことを示した。それらの特別に発現された配列が、最終減法のcDNAプールにおいて非常に富化され、そしてハイブリダイゼーションプローブとして又は減法ライブラリーを創造するために有用であった。
【0191】
SSH方法により生成された、減法され、そして標準化されたcDNA画分を、pCRII−TOPO(Invitrogen, Carlsbad, CA)により連結し、そしてその連結混合物を用いて、エレクトロコンピテントE. コリTOP10細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)を形質転換した。形質転換体を、250μg/mlのX−Gal(IPTGを含まない)及び100μg/mlの最終濃度でのアンピシリンを含むLB寒天プレート(Miller, H. 1992. A short course in bacterial genetics. A laboratory manual and handbook for Escherichia coli and related bacteria. Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY)上で選択した。
【0192】
SSH cDNAライブラリーにおける減法及び標準化の効率を評価するために、次の2種のアプローチを用いた:コロニーハイブリダイゼーション及び個々のSSHライブラリーからのランダムクローンの配列決定。コロニーハイブリダイゼーションのための方法は、Birren など., 1998, Genome Analysis, A Laboratory Manual, Vol.2, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NYに詳細に記載されている。コロニー−ハイブリダイゼーション分析は、個々の減法された[PCS−グルコース(SG)、セルロース−グルコース(CG)、PCS−セルロース(SC)]及び減法されていない(セルロース、PCS)cDNAライブラリーからの約700の独立したコロニー、並びにDIG−ラベルされたcbh1プローブ(多くの転写体)、及びγ−アクチンプローブ、すなわちハウスキーピング遺伝子を表す適度に多くの転写体を包含した(表2)。
【0193】
【表2】
【0194】
cbh1は減法されていないセルロース及びPCSライブラリーにおいてかなり多いが(それぞれ、3.3%及び3.6%)、減法されたSG及びCGライブラリーは、ほとんど10倍低いcbh1クローンを含み、このことは、多くの転写体が都合良く標準化されたことを示唆した。SCライブラリーのコロニー−ハイブリダイゼーションは、非常に低い発生率のcbh1を示し(わずか0.1%のcbh1クローン)、このことは、高いレベルのcbh1を発現する細胞集団によりSSHを行う場合、この多くの転写体の効果的な減法を示唆する。
【0195】
約360のランダムに採取されたコロニーからのcDNAクローンを、ローリングサークル増幅(RCA) (Dean など., 2001, Genome Res. 11: 1095-1099)により精製し、そしてDNA配列決定により分析した(反応1から70、反応2から96、及び反応3から192)。Transcript AssemblerTMソフトウェアー(Paracel, Inc. , Pasadena, CA)を用いての配列のクラスター化は、個々のプールが高い%の非冗長性のクローンを含んだ(反応1に関して76%、反応2に関して90%及び反応3に関して67%)ことを示した。さらに、コンチグ(同じcDNAのオーバーラップする配列)は、平均わずか2つの配列を含んだこの分析において同定した。集合的に、それらの観察は、ライブラリーの効果的標準化がSSH反応の間、達成され、その対応するcDNAライブラリーにおいて低レベルの冗長性を生成したことを示した。
【0196】
例16:DNAマクロアレイの加工及び使用:
合計3,608個の白色及び薄青色のコロニーを、例15に記載される減法され、そして標準化されたcDNAライブラリーから採取した。それらを、96−ウェルプレートにおいて、1L当たり100μgのアンビシリンにより補充されたLB培地において一晩、増殖し、そして-80℃で凍結した。凍結された細胞からのプラスミドDNAのローリングサークル増幅(Dean など.,2001, Genome Res. 11 : 1095-1099)を、Amersham (Arlington Heights, IL)からのTempiPhiTM試薬を用いて行った。
【0197】
それらの反応の高処理プロセッシングを、Beckman Blomek(商標)Fx ロボット(Beckman Counlter, Inc., Fullerton, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って行った。次に、増幅され、そして希釈されたゲノムクローンを、Eisen and Brown, 1999, Methods Enzymol. 303: 179-205により記載される装置及び方法を用いて、ポリ−L−リシン被覆されたガラス顕微鏡スライド上に、384−ウェルプレートからスポットした。
【0198】
例17:遺伝子サイレンシングベクターを含むトリコダーマ・レセイ株の分析:
いくつかのトリコダーマ・レセイ株のRNAプロフィールを、下記表3に示されるようにして比較した。蛍光プローブを、第1鎖cDNA(全RNAは、Active Motif, Carlsbad, CAから市販されているFenozol試薬を用いて調製された)中にアミノアリル−dUTPを組込む、全RNAの逆転写により調製した。続いて、アミノ−cDNA生成物を、Cy3又はCy5単機能的反応性色素のいずれかへの直接的なカップリングによりラベルし(Amersham, Arlington Heights, IL)、そして前記のようにして精製した(Berka など., 2003, Proc. Nat. Acad. Sci. USA100: 5682-5687)。
【0199】
Cy3及びCy5ラベルされたプローブを組合し、精製し、そして真空下で乾燥し、15.5μlの水に再懸濁し、そして次のものと組合した:3.6μlの20×SSC、2.5μlの250mMのHEPES(pH7.0)、1.8μlのポリーdA(500μg/ml)及び0.54μlの10%SDS。ハイブリダイゼーションの前、溶液を、0.22μmのフィルターにより濾過し、95℃に2分間、加熱し、そして室温に冷却した。プローブを、カバーガラス下のマイクロアレイに適用し、湿潤されたチャンバーに配置し、そして63℃で一晩(15〜16時間)インキュベートした。走査の前、アレイを、0.03%SDSと共に1×SSC、0.2×SSC及び0.05×SSCにおいて連続的に洗浄し、そして約100×gで2分間、遠心分離し、過剰の液体を除去した。
【0200】
マイクロアレイスライドを、Axon 4000B scanner (Molecular Devices Corp., Sunnyvale,CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って映像化した。マイクロアレイスポットについての蛍光強度値を測定し、そして個々のスポットについてのCy5:Cy3(650nm:532nm)強度の比を、バックグラウンド減法に続いて計算した。強度比が1〜2倍以上に変化するそれらのスポットは、特別に発現されていると思われた。
【0201】
【表3】
【0202】
実験1及び3において、それらの蛍光強度比において2倍の変化の基準を満足する合計72のスポットを同定し、そして従って、特別に発現された配列として分離した。DNA配列分析は、63/72(88%)がcbh2−特異的転写体に対応することを示した。残る9個のスポットは、未知又は仮説の遺伝子配列に対応した。それらは、cbh2に密着に関連するヌクレオチド配列を含むことができ、そして保存されたモジュール、例えばセルロース結合ドメインをコードできることが可能であった。
【0203】
予測されることに対比して、遺伝子サイレンシングベクターを有する株におけるcbh2−mRNAレベルは対照株におけるその対応するmRNAレベルに比較して、高められると思われた。この観察は、遺伝子サイレンシングされた転写体自体がアレイのcbh2標的物にハイブリダイズする事実に影響を及ぼし、それにより、chb2−特異的mRNAレベルが遺伝子サイレンシング株において高められた思い違いを付与する。それにもかかわらず、トリコダーマ・レセイにおける遺伝子サイレンシングの効果は、影響されるcbh2以外の少数の(存在するなら)転写体/遺伝子が存在することにおいて非常に特異的であると思われた。
【0204】
実験2においては、マイクロアレイ上の配列は特別に発現されたとは思われず、このことは、cbh2−特異的RNA配列が対照株に匹敵できるレベルでcbh2−欠失された株により生成されたことを示唆する。しかしながら、これはたぶん、トリコダーマ・レセイSaMe02における欠失/破壊現象がcbh2のための完全なコード領域を除去しなかった事実に影響を及ぼしたことが注目されるべきである。従って、マイクロアレイ上でcbh2標的物にハイブリダイズした、切断された転写体を株が製造することが可能であった。
【0205】
例18:小規模発酵の間のRNAi:
2L発酵を、cbh2 mRNAについてほとんど100%の低下を示した、転写体11及び14に対して、例5に記載のようにして実施し、遺伝子サイレンシングが小規模発酵を通して都合良く維持されるかどうかを決定した。発酵をまた、宿主株トリコダーマ・レセイRutC30、及びcbh2遺伝子が相同組換えによりノックアウトされている正の対照株トリコダーマ・レセイSaMe02に対して行った。セロビオヒドロラーゼIIタンパク質のレベルを、例12に記載のようにして、SDS−PAGE分析により測定した。
【0206】
セロビオヒドロラーゼIIタンパク質のレベルは、宿主トリコダーマ・レセイRutC30に比較して、形質転換体11及び14、及びトリコダーマ・レセイSaMe02において実質的に低められた。
【0207】
例19:ノザンブロットハイブリダイゼーションによるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIの小さな干渉性RNAの検出:
ノザン分析を、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII−特異的な小さな干渉性RNA(siRNA)の存在又は不在について、形質転換体1, 2, 11, 12, 13及び14を試験するために行った。例13に使用された同じ全RNAを、この実験のために使用した。単離された全RNA(25μg)を、1部のTBE−ウレアサンプル緩衝液(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)と共に混合し、65℃で15分間、加熱し、そして1×TBE緩衝液中、CriterionTM 細胞(Bio- Rad Laboratories, Hercules, CA)によるCriterionTM 15%ポリアクリルアミド−7Mウレアゲル(Bio- Rad Laboratories, Hercules, CA)上での電気泳動により分別した。
【0208】
次に、RNAを、Zeta−Probe(商標)GTブロット膜(Bio- Rad Laboratories, Hercules, CA)に、CriterionTM Blotter(Bio- Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて、0.5×TBEトランスファー緩衝液(Bio- Rad Laboratories, Hercules, CA)において50Vで1時間、電気ブロットした。トランスファーの後、RNAを、Stratalinker 1800 UV Crosslinker (Stratagene, La Jolla, CA)中、前記膜上に、Auto−Crosslink設定を用いて固定した。
【0209】
前記膜を、DIG RNAラベリングキット(Roche, Indianapolis, IN)を用いて、その製造業者により提供されるプロトコールに従って、ジゴキシゲニン−11−dUTPの存在下で、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII鋳型DNAにより合成された、363bpのジゴキシゲニン−ラベルされたトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII一本鎖RNAプローブによりハイブリダイズした。鋳型DNAを、下記に示されるプライマー998305(センス)及び998306(アンチセンス)を用いて、pTr0749からの完全な二本鎖RNA配列を表す、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIコード領域の363bpのフラグメントをPCR増幅することにより生成した。センスプライマーを、5’−末端でXbaI部位及びアンチセンスプライマーの5’−末端でHindIII 部位を有するよう構築した:
【0210】
プライマー998305(センス):
5'-CTAGTCTAGAGTCGCAAAGGTTCCC-3'(配列番号31)
プライマー998306(アンチセンス):
5'-GGGGGAAGCTTTGACTGAGCATT-3'(配列番号32)。
【0211】
増幅反応(50μl)は、1X ThermoPol Reaction Buffer、0,3mMのdNTP、10ngのpTr0749、0.3μMのプライマー998305、0.3μMのプライマー998306及び2.5単位のTaqtポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで383bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。得られるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII PCRフラグメントを、XbaI及びHindIII により消化し、そしてXbaI及びHindIII 消化されたpSPt19ベクター(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)中に、T4 DNAリガーゼを用いて、その製造業者のプロトコールに従って連結し、pSMai163(図8)を生成した。
【0212】
ハイブリダイゼーションを、EIG Easy Hyb緩衝液(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)において42℃で15〜17時間、行った。次に、膜を、2×SSC+0.1%SDSにおいて室温で5分間、高い緊縮条件下で洗浄し、続いて0.1×SSC+0.1%SDSにおいて、それぞれ42℃で15分間、2回洗浄した。プローブ−標的物ハイブリッドを、化学ルミネッセントアッセイ(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)により、その製造業者の説明書に従って検出した。
【0213】
ノザンブロット分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向反復体フラグメントを発現する形質転換体が約21bpの小さな干渉性トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII RNAを生成することを示した(図9)。同じRNAは、ベクター対照を含む形質転換体、すなわちトリコダーマ・レセイRutC30又はトリコダーマ・レセイSaMe02(トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子が相同組換えによりノックアウトされている)においては検出されなかった。それらの結果は、トリコダーマ・レセイにおけるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子発現の二本鎖RNA−介在性調節が、RNA干渉に包含される機構のために予測されるサイズ範囲の小さなRNAの生成を包含したことを示した。
【0214】
例20:サイレンシングされたトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII形質転換体の長期安定性:
サイレンシングされたトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII形質転換体の安定性を評価するために、種々の程度のトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIタンパク質低下を示す6個の形質転換体(#1, 2, 11, 12, 13及び14)からの胞子、宿主株トリコダーマ・レセイRutC30、及び正の対照株トリコダーマ・レセイSame02を、pH6.0でセルラーゼ−誘発培地において、誘発条件下で増殖した。接種の7日後、500μlの菌糸体を、新しいセルラーゼ誘発性培地を含む振盪フラスコのための接種物として使用した。この菌糸体の継代を、合計5回、行った。個々の形質転換体についての個々の回の継代からの上清液を集め、そして例12に記載されるように、SDS−PAGEにより分析した。図10が示すように、サイレンシングは、すべての形質転換体について、5世代を通して維持された。
【0215】
例21:pAILo2発現ベクターの構成:
pAILo2(例1)のamdS遺伝子を、アスペルギラス・ニジュランスpyrG遺伝子により交換した。プラスミドpBANe10(図10)を、選択マーカーとしてのpyrG遺伝子のための源として使用した。pBAHe10の配列の分析は、pyrGマーカーがNsiI制限フラグメント内に含まれ、そしてNcoI又はPacI制限部位を含まないことを示した。amdSはまた、NsiI制限部位を端に有するので、選択マーカーを交換するための方法は、NsiI制限フラグメントの単純な交換であった。
【0216】
pAILoI及びpBANe10からのプラスミドDNAを、NsiIにより消化し、そして生成物をアガロースゲル電気泳動により精製した。pyrG遺伝子を含むpBANe10からのNsiIフラグメントを、pAILo1の主鎖に連結し、amdS遺伝子を含む元のNsiI DNAフラグメントを置換した。組換えクローンを、それらが正しい挿入体及びまた、その配向を有することを決定するために、制限消化により分析した。反対の方向に転写されるpyrG遺伝子を有するクローンを選択した。新規プラスミドを、pAILo2(図12)と命名した。
【0217】
例22:pHB506の構成:
2種のフラグメント、すなわち184bpの逆方向反復体(IR)から構成される1つのフラグメント、及び逆方向反復体−リンカー(IR−L)と命名される106リンカー領域と共に反対の方向に184bpの配列を含む290bpからの構成される他のフラグメントを、アスペルギラス・ニガーJaL203−10のアミログルコシダーゼ遺伝子のエキソン4からPCR増幅した(アスペルギラス・ニガーNN049453は、1960年代、土壌から単離されたスペルギラス・ニガーC40 から本来生成された株であり、このアミログルコシダーゼ活性は突然変異誘発により増強された。アスペルギラス・ニガー株JaL303は、アスペルギラス・ニガーNN049453における常在性トリペプチジルアミノペプチダーゼ遺伝子の中断を引起すために特定部位の遺伝子破壊により構成された。アスペルギラス・ニガーJaL303−10は、5−FOAを含む寒天上で自発的に単離されるJaL303のpyrG-変異体株である。)
【0218】
鋳型として200ngのゲノムDNAを用いる場合、下記プライマーを使用した。センスプライマーを、5’−末端でNcoI部位、及びアンチセンスプライマーの5’−末端でNotI部位を有するよう構築した:
プライマー997491(センス):
5'-GGGGCCATGGTCCTGGTGTGATTCTCAGGCACCCGAAATTCTCTGC-3'(配列番号33);
プライマー997492(アンチセンス):
5'-GGGGGCGGCCGCAGCAGGGCTGGAAGGTGGAGTCGTCGCATG-3'(配列番号34)。
【0219】
400μlのアスペルギラス・ニガーJaL303−10胞子を、そらせ板付の振盪フラスコにおける50mlのYP培地において、34℃及び150rpmで18時間、増殖した。次に、ゲノムDNAを、DNeasy Plant Miniキット(QIAGEN Inc., Valencia, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って、菌糸体から抽出した。
【0220】
増幅反応(50μl)は、1X Pfx Reaction Buffer(Invitrogen, Carlsbad, CA)、100ngのアスペルギラス・ニガーJaL303−10ゲノムDNA、0.3μMのセンスプライマー、0.3μMのアンチセンスプライマー及び2.5単位のPfxポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)から構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで184bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0221】
逆の配向での逆方向反復体及びリンカー配列の増幅のために、センスプライマーを、5’末端でPacI部位及びアンチセンスプライマーの5’末端でNotI部位を有する構築した:
プライマー997493(センス):
5'-GGGGTTAATTAATCCTGGTGTGATTCTCAGGCACCCGAAATTCTC-3'(配列番号35);
プライマー997494(アンチセンス):
5'-GGGGGCGGCCGCTACCGACCCACCGCAACAGCCTCGCTGTCA-3'(配列番号36)。
【0222】
増幅反応(40μl)を、上記のようにして行った。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで290bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
次に、290bpの得られるPCRフラグメントを、pTOPO Blunt (Invitogen Carlsbad, CA)中に、その製造業者の説明書に従って挿入し、pTOPO−IR−Lを生成した。
【0223】
プラスミドpTOPO−IR−Lを、PacI及びNotIにより消化し、上記のように1.0%アガロースゲル電気泳動及びQIAquick Gel Extractionキットを用いて精製し、そしてpAILo2のその対応する制限部位中に挿入し、pAILo2IR-Lをもたらした。この184bpのフラグメントを、pTOPO−IRの消化の後、単離し、そしてNcoI/NotI消化されたpAILo2IR−L中に挿入し、pHB506(図13)をもたらした。
【0224】
例23:pHB506によるアスペルギラス・ニガーJaL303−10の形質転換:
アスペルギラス・ニガーJaL303−10のプロトプラストを、例11に記載される、改良されたプロトコールを用いて、調製した。プロトプラストを、血球計を用いて計数し、そしてSTC1ml当たり1×107個のプロトプラストの最終濃度に再懸濁した。過剰のプロトプラストを、Cryo 1℃凍結容器(Nalgene, Rochester, NY)において−80℃で貯蔵した。
【0225】
pHB506及びpAILo2(対照としての)によるアスペルギラス・ニガーJaL303−10プロトプラストの形質転換を、次の修飾を伴って、例11に記載のようにして行った。約7μgのpHB506又はpAILo2を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、そして軽く混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、混合し、そして室温で30分間インキュベートした。次に、STC(3ml)を添加し、混合し、そして最少培地プレート上にプレートした。そのプレートを、34℃で5〜7日間インキュベートした。
【0226】
約70の形質転換体を得た。80の形質転換体からの胞子を、最少培地プレート上に画線培養し、そして34℃で6日間インキュベートし、一次形質転換体を得た。
【0227】
次に、一次形質転換体、及びpAILo2により形質転換されたアスペルギラス・ニガーJaL303−10を、プレートアッセイに提供し、基質としてマルトースを用いて、グルコアミラーゼ活性を測定した。グルコースの開放を、紫色を形成する、カップリングされたグルコースオキシダーゼ/ホースラディシュペルオキシダーゼ/ABTS(2, 2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アッセイを用いて決定した。すべての試薬は、Sigma Chemical Company, St. Louis, MOからであった。20%の希ガスを含むM400培地を、オートクレーブし、5℃に冷却し、この時点で、50mlの20%マルトース(無菌濾過された)、3mlの2.65%(w/v)ABTS原液、及び2mlのHRP原液(0.1Mの酢酸ナトリウム(pH5.0)1ml当たり100Uのホースラディシュペルオキシダーゼ)を添加した。
【0228】
2mlの培地を、12ウェル細胞培養物プレートの個々のウェルに添加した。プレートを、箔により包装するか、又は耐光性ボックスに配置し、そして4℃で貯蔵した。接種用ループを用いて、アッセイウェルに個々の一次形質転換体の胞子をトランスファーした。プレートを箔により包装し、そして34℃で1〜2日間インキュベートした。次に、グルコースオキシダーゼ溶液(0.1Mの酢酸ナトリウム(pH5.0)1ml当たり1.5Uのグルコースオキシダーゼ)を、プレート上に噴霧し、次に箔により包装し、そして34℃で1〜2時間インキュベートした。グルコアミラーゼ活性を、コロニー性ハロの色の強さにより示されるABTSの酸化により決定した。
【0229】
インキュベーションの後、その結果は、個々の形質転換体の色の強さが紫の色調で変化し、そしてpAILo2により形質転換されたアスペルギラス・ニガーJal303-10の色の強さが最も濃く、そしていくつかの形質転換体はほとんどかまったくグルコアミラーゼ活性を示さなかったことを示した。
【0230】
例24:形質転換体の振盪フラスコ分析:
例23に記載される比色スクリーンに基づいて、8個の形質転換体コロニーからの胞子を、最少培地プレート上に画線培養した。比色プレートアッセイに基づいて、ほとんどか又はまったくグルコアミラーゼ活性を示さない4個の形質転換体及び種々のアミログルコシダーゼ活性を生成する4個のランダムに選択された形質転換体を、振盪フラスコにおける増殖のために選択した。上記形質転換体、及びWO04/090155号に記載のようにして調製された、グルコアミラーゼ及び中性アミラーゼ欠失を有するアスペルギラス・ニガーHowB112, アスペルギラス・ニガーJaL303−10、及びpAILo2により形質転換されたアスペルギラス・ニガーJal303−10を、M400培地を含む振盪フラスコにおいて増殖した。
【0231】
25mlのM4000培地を含む振盪フラスコ(125ml、そらせ板付)を、最少培地プレート上で増殖された個々のアスペルギラス・ニガー形質転換体の胞子及び上記対照により接種し、そして34℃及び200rpmで3日間インキュベートした。培養物ブイヨンサンプルを、接種の3日後、除去し、そして15,700×gで5分間、微小遠心分離機により遠心分離した。上清液を、新規管に移し、そしてSDS−PAGE分析まで、4℃で貯蔵した。
【0232】
SDS−PAGEを、CriterionTM Cellと共にCriterionTM トリス−HClゲルを用いて行った。5μlの3日目のサンプルを、2倍濃縮のLaemmliサンプル緩衝液(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)に懸濁し、そして5%β−メルカプトエタノールの存在下で3分間、煮沸した。サンプルを、SDS−PAGEゲル上に負荷し、そして1× トリス/グリシン/SDS緩衝液(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)中、電気泳動にゆだねた。得られるゲルを、Bio−SafeTM クーマシー染色(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)により染色した。
【0233】
SES−PAGE結果(図14)は、2種のタンパク質の存在、すなわち、前駆体であるかも知れないが、約125kDaでの有力なバンド、及びプロセッシングされた酵素であることが知られている75kDaでのより拡散したバンドの存在を示した。それらの両タンパク質バンドは、pAILo2により形質転換されたアスペルギラス・ニガーJal303−10に存在した。対照的に、グルコアミラーゼ遺伝子欠失の株アスペルギラス・ニガーHoyvB112は、いずれのバンドも欠失した。選択された形質転換体は、より少ない量のそれらの2種のタンパク質を生成した。ランダムに採取された株を表す形質転換体1−4は、種々の量のグルコアミラーゼを生成したが、ところがプレートスクリーンにおいて測定されるようにグルコアミラーゼを欠いている形質転換体5−8は、検出できるグルコアミラーゼを生成しなかった。それらの結果は、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼの発現がRNAIの結果として抑制されたことを示唆した。
【0234】
例25:pHUda512発現ベクターの構成:
発現ベクターpHUda512を、アスペルギラス・ニガーNN049735のアミログルコシダーゼ遺伝子由来の二本鎖RNAの転写のために構成した。アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ遺伝子のcDNA配列、及びアスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ遺伝子のcDNAクローンの生成は、WO00/004136号に記載されている。鋳型としてのアスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ遺伝子のcDNAクローンとのPCR反応を、下記に示されるように、BglII、KpnI及びXhoI部位を導入するためにプライマーHU704、及びBamHI部位を導入するためにプライマーHU705を用いて、ExpandTM PCRシステム8Roche Diagnostics, Japan)により行った:
【0235】
HU704:
5'-TTTAGATCTCTCGAGGTACCAAATGTGATTTCCAAGCGCGCG-3'(配列番号37)
HU705:
5'-TTTGGATCCAAGAGATCGACGAGGGTCTTG-3'(配列番号38)。
【0236】
増幅反応(50μl)は、1×緩衝液(Roche Diagnostics, Japan)中、1ngの鋳型DNA、250MのdNTP, 250nMのプライマーHU704, 250nMのプライマーHU705, 0.1UのTaqポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたDNA Engine PTC-200 (MJ-Research, Japan) においてインキュベートした:94℃で2分(1サイクル);92℃で1分、55℃で1分(30サイクル)及び72℃で1分(1サイクル):72℃で10分(1サイクル);及び4℃での維持。
【0237】
反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで213bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN Inc., Valencia, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0238】
213bpの増幅されたDNAフラグメントを、BglII及びBamHIにより消化し、そしてBamHIにより消化されたpMT2188(WO03/089648号)中に連結した。その連結混合物により、選択マーカーとしてサッカロミセス・セレビシアエURA3遺伝子を用いて、E. コリDB6507(ATCC35673)を形質転換した。増幅されたプラスミドを、QIAprep(商標)Spin Miniprep キット (QIAGEN Inc. , Valencia, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って回収した。
【0239】
プラスミドpMT2188は、アスペルギラス・ニジュランストリオースリン酸イソメラーゼ非翻訳リーダー配列に融合されるアスペルギラス・ニガー中性アミラーゼIIプロモーター(Na2/tpiプロモーター)及びアスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼターミネーター(AMGターミネーター)に基づく発現カセット、単独の窒素源としてのアセトアミド上で増殖できるアスペルギラス・ニジュランスからの選択マーカーamdS、及びpyrF欠失性E. コリ株DB6507の増殖を可能にするサッカロミセス・セレビシアエからのURA3マーカーを含んだ。
【0240】
別のPCRを、下記に示されるように、BglII、KpnI及びXhoI部位を導入するためにプライマーHU704、及びBamHI部位を導入するためにプライマーHU706を用いて、ExpandTM PCRシステムにより、鋳型としてのアスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ遺伝子のcDNAクローンにより行った:
HU704:
5’-TTTAGATCTCTCGAGGTACCAAATGTGATTTCCAAGCGCGCG-3’(配列番号39)
HU706:
5’-TTTGGATCCTAGGCAGTCTCATCGACATTG-3’(配列番号40)。
【0241】
増幅反応(50μl)は、1×緩衝液(Roche Diagnostics, Japan)中、1ngの鋳型DNA、250MのdNTP, 250nMのプライマーHU704, 250nMのプライマーHU706, 0.1UのTaqポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたDNA Engine PTC-200においてインキュベートした:94℃で2分(1サイクル);92℃で1分、55℃で1分(30サイクル)及び72℃で1分(1サイクル):72℃で10分(1サイクル);及び4℃での維持。
【0242】
反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで366bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN Inc., Valencia, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
366bpの増幅されたDNAフラグメントを、XhoI及びBamHIにより消化し、そしてBamHIお呼びXhoIにより消化されたpHUda 508中に連結した。その連結混合物により、E.コリDB6507(ATCC35673)を形質転換し、アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼコード領域由来の213bpの逆方向反復体を含む発現プラスミドpHuda512を生成した。増幅されたプラスミドを、QIAprep(商標)Spin Miniprep キットを用いて、その製造業者の説明書に従って回収した。
【0243】
例26:アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ遺伝子由来の二本鎖RNAの発現:
アスペルギラス・ニガー株NN049735は、アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ、及びアスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼとアスペルギラス・カワチ酸安定性α−アミラーゼ由来の炭化水素−結合モジュールとの間のハイブリッド酵素の両者を生成する。
【0244】
アスペルギラス・ニガーNN049735を、100mlの非選択性YPG培地において、回転シューカー上で120rpmで振盪しながら、32℃で16時間、培養した。細胞を濾過により集め、0.6MのKClにより洗浄し、そして600μl/mlの最終濃度でβ−グルカナーゼ(GLUCANEXTM, Novozymes A/S, Bagsvaerd, Denmark)を含む0.6MのKCl 20mlに再懸濁した。その懸濁液を、プロトプラストが形成されるまで、32℃及び80rpmでインキュベートし、そして次にSTC緩衝液により2度、洗浄した。
【0245】
プロトプラストを、血球計により計数し、そして再懸濁し、そしてSTC:STPC:DMSOの8:2:0.1溶液において、2.5×107個のプロトプラスト/mlの最終濃度に調節した。約3μgのpHUda512を、100μlのプロトプラスト懸濁液に添加し、軽く混合し、そして氷上で20分間インキュベートした。1mのAPTCを添加し、そしてプロトプラスト懸濁液を37℃で30分間インキュベートした。50℃のCOVE上部アガロール10mlの添加の後、反応をCOVE寒天プレート上に注ぎ、そしてプレートを32℃でインキュベートした。5日後、形質転換体を、COVE培地から選択した。
【0246】
8個のランダムに選択された形質転換体を、100mlのMLC培地に接種し、そして30℃で2日間、培養した。10mlのMLC培地を、100mlのMU−1倍値に接種し、そして30℃で7日間、培養した。上清液を、3,000×gでの10分間の遠心分離により得た。
【0247】
上清液サンプル中のグルコアミラーゼ活性を、生成するグルコースとのグルコースデヒドロゲナーゼ及びムタロターゼ反応によるNADH生成における上昇として決定され、そして340nmでの吸光度を測定した。100mMの酢酸ナトリウム(pH4.3)緩衝液に溶解された酵素サンプル6μlを、100mMの酢酸ナトリウム(pH4.3)緩衝液中、23.2mMのマルトース31μlと共に混合し、そして37℃で5分間インキュベートした。次に、313μlの着色試薬(1L当たり430Uのグルコースデヒドロゲナーゼ、1L当たり9Uのムタロターゼ、0.21mMのNAD及び0.12Mのリン酸(pH7.6)緩衝液中、0.15MのNaCl)を、反応混合物に添加し、そして37℃で5分間インキュベートした。活性を、分光計上で340nmで測定した。6μlの蒸留水を、対照として、酵素サンプルの代わりに使用した。
【0248】
グルコアミラーゼ活性を、NoVozymes A/S, Bagsvaerd, Denmarkから得られる酵素標準に対して決定されたアミログルコシダーゼ単位(AGU)で測定した。1AGUは、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH4.3)緩衝液中、23.2mMのマルトースにおいて37℃で1分当たり1μモルのマルトースを加水分解する酵素の量として定義される。
【0249】
酸安定性α−アミラーゼ活性を、590nmで測定されるスター4−ヨウ素複合体の青の減少として上清液サンプルにおいて決定された。2mMのクエン酸(pH2.5)緩衝液中、51.4mMの塩化カルシウムに溶解された酵素サンプル25μlを、100mMのクエン酸ナトリウム(pH2.5)緩衝液1L当たり0.6gの可溶性スターチ(Merck 1253, Germany)及び12gの酢酸ナトリウムの溶液135μlと共に混合し、そして37℃で325秒間インキュベートした。325秒後、90μlのヨウ素溶液(1l当たり1.2gのヨウ化カルシウム及び0.12gのヨウ素)を、反応混合物に添加し、そして37℃で25秒間インキュベートした。活性を、分光計上で590nmで測定した。25μlの蒸留水を、対照として、酵素サンプルの代わりに使用した。
【0250】
酸安定性α−アミラーゼ活性を、NoVozymes A/S, Bagsvaerd, Denmarkから得られる酵素標準に対して決定されたAFAU(酸菌類α−アミラーゼ単位)で測定した。1FAUは、上記条件下で1時間当たり5.260mgのスターチ乾燥物質を分解する酵素の量として定義される。
【0251】
表4は、1.0に標準化された、宿主株アスペルギラス・ニガーNN049735の活性に対する、選択された形質転換体のアミログルコシダーゼ活性及び酸安定性α−アミラーゼ活性を示す。結果は、宿主株アスペルギラス・ニガーNN049735に対して同時に比較して、アミログルコシダーゼ活性の低下及び酸安定性α−アミラーゼの上昇を示した。
【0252】
【表4】
【0253】
SDS−PAGE分析を、e−PAGELゲルE−T 7.5L (ATTO Gorporation, Japan) を用いて行った。10μlの7日目のサンプルを、2倍濃度のサンプル緩衝液(1%SDS、1%β−メルカプトエタノール、1mg/mlのブロモフェノールブルー、10%グリセロール、及び50mMのトリス−HCl、pH6.8)に懸濁し、そして5分間、煮沸した。サンプルを、e−PAGELゲル上に負荷し、そして1×トリス/グリシン/SDS緩衝液(25mMのトリス−HCl、0.1%、SDS、192mMのグリシン)において20mAで90分間、電気泳動にゆだねた。得られるゲル(図16)を、染色溶液(1g/Lのクーマシーブリリアントブルー、10%酢酸、30%メタノール)により30分間、染色し、そして次に、バンドが見えるまで、脱色溶液(10%酢酸、30%メタノール)により脱色した。
【0254】
それぞれ、アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ、及びアスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ融合タンパク質間の融合酵素に対応する約100kDa及び70kDaでの有力なバンドが、アスペルギラス・ニガーNN049735に存在した。対照的に、選択された形質転換体は、低い量のアスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼバンド及び高い量のアスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ融合タンパク質バンドを生成した。
【0255】
例27:形態学的変異体についてのスクリーニング:
WO98/11203号(例5)に記載される“e”プール及び“b”プールを、CM−1寒天上にプレートし、そして34℃で4日間インキュベートすることにより、変更された形態学を有するコロニーについてスクリーンした。プール内の変更されたプレート形態学を有するコロニーを、単一のコロニー単離のために、新しいCM-1寒天プレートに移し、そして34℃で5日間インキュベートした。プレート上の個々の形態学的変異体を、単一コロニーからCM-1プレート及びPDAプレートの中心に移し、そして34℃で6〜8日間インキュベートし、その後、形態学、すなわち直径及び外観を評価した。合計218個の形態学的変異体を、COVE2プレートに移し、そして34℃で1〜2週間インキュベートし、胞子を生成した。白色の胞子を生成する変異体を同定し、そしてアスペルギラス・オリザエP2-5.1と命名した。
【0256】
例28.形態学的変異体アスペルギラス・オリザエP2-5.1からのプラスミドDNA及びフランキングDNAの開放及び特徴化:
プラスミドDNA及びゲノムフランキング遺伝子座を、WO98/11203号(例9)に記載される方法(但し、制限エンドヌクレアーゼが使用された)を用いて、変異体アスペルギラス・オリザエP2-5.1から単離した。変異体アスペルギラス・オリザエP2-5.1からのBglII開放の遺伝子座を含むE. コリHB101形質転換体を単離した。
【0257】
組込み現象のいずれかの側上に535及び750bpの領域を含むアスペルギラス・オリザエP2-5.1開放の遺伝子座を、M13逆方向(−48)及びM13前方向(−20)プライマー(New England Biolabs, Beverly, MA)、及び配列決定されるDNAに対してユニークなプライマーを用いて、色素−ターミネーター化学(Giesecke など.,1992, Journal of Virol. Methods 38: 47-60)と共にプライマーウォーキング技法を用いて、両鎖に対して、Applied Biosystems Model 373A Automated DNA配列決定器(Applied Biosystems, Inc. , Foster City, CA)により配列決定した。開放されたwA遺伝子の1つの側面を表す400bpの核酸配列(配列番号41)を、逆方向反復体の構成の鋳型として選択した。
【0258】
その核酸配列は、組み込み現象がアスペルギラス・フミガタスwA遺伝子(受託番号Y17317)の相同のための読取枠内に存在したことを示唆した。74%の核酸相同性が見出され、そして開放された遺伝子座の400bpフラグメントの推定されるアミノ酸配列(配列番号42)が、アスペルギラス・フミガタスwA遺伝子の推定されるアミノ酸配列に比較される場合、71%の同一性を共有した。wA遺伝子は、野生型胞子における緑色の色素の合成に関与するポリペプチドシンターゼをコードする。この遺伝子の変異体は、色素を欠失し、そして白色を出現する胞子を生成する。アスペルギラス・ニジュランスにおけるwA遺伝子の破壊は、アスペルギラス・オリザエP2-5.1の観察される表現型である、胞子の色を白色に変えることが知られている(Mayorga and Timerlak, 1992, Mol. Gen. Genet. 235: 205-212)。
【0259】
例29:pDeMi01の構成:
アスペルギラス・オリザエwA遺伝子由来のdsRNAを発現するために、wA遺伝子の読取枠内からの175個の塩基対の逆方向反復体の半分のすべてを、NotI制限部位を有するセンス鎖プライマー、及び下記に示される5’NheI制限部位を有するアンチセンスプライマーを用いて、PCR増幅した:
センス:
5'-GGGGGCGGCCGCAGCACTTCGATTGCATTAGTCAAAA-3'(配列番号43)
アンチセンス:
5'-GGGGGCTAGCAGAACGAACGCAGGTTTTAT-3'(配列番号44)。
【0260】
増幅反応(50μl)は、1X Pfx Reaction Buffer、100ngのアスペルギラス・オリザエP2-5.1ゲノムDNA(DNeasy Plant Maxi Kitを用いて単離された)、0.3 mM のdNTP 、0.3μMのセンスプライマー、0.3μMのアンチセンスプライマー及び2.5単位のPfxポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、58℃で60秒、及び72℃で1分(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで175bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0261】
103個の塩基対スペーサーを含む逆方向反復体の他の半分を、上記センスプライマー、及びプライマーの5’末端でNheI制限部位を有する下記アンチセンスプライマーを用いて増幅した:
アンチセンス:
5'-GGGGGCTAGCGGGTAGCCCGACGGCCACAAAGG-3'(配列番号45)。
【0262】
増幅反応(50μl)は、1X Pfx Reaction Buffer、0.3 mM のdNTP 、100ngのアスペルギラス・オリザエP2-5.1ゲノムDNA、0.3μMのセンスプライマー、0.3μMのアンチセンスプライマー及び2.5単位のPfxポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、58℃で45秒、及び72℃で1分(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで273bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0263】
2種のPCR生成物を、NheIにより消化した。273bpの反復体+スペーサー及び175bpの反復体を混合し、そして製造業者により特定される条件を用いてT4 DNAリガーゼにより連結した。その連結生成物を、1.5%アガロースゲル上で分解した。逆方向反復体に対応する448bpのフラグメントを、Qiaex II DNA Purification Kit (QIAGEN Inc. , Valencia, CA)を用いてゲル単離し、続いてNotI消化を行った。逆方向反復体の転写を駆動するために、NotI部位の直接上流にNA2-tpiプロモーターを含むプラスミドpBANe6(アメリカ特許第6,461,837号)を使用した。プラスミドをNotIにより消化し、そしてエビアルカリホスファターゼ(Roche, Indianapolis, IN)を用いて脱リン酸化した。脱リン酸化された線状プラスミド及び448bpの逆方向反復体フラグメントを混合し、そして14℃で16時間、T4 DNAリガーゼを用いて連結した。2μlの連結混合物を用いて、コンピテントE. コリSURE細胞(Stratagene, La Jolla, CA)を、その製造業者の説明書に従って形質転換した。
【0264】
いくつかの形質転換体からのプラスミドDNAを回収し、NotIにより消化し、そして上記のようにして、1.5%アガロースゲル上で分解した。約500bpの単一のフラグメントを含む形質転換体が、175bpの反復フラグメント及び103bpのスペーサーにより分離される、逆配位での175bpのフラグメントから成ることが、DNA配列分析により確められた。単離されたプラスミドの1つを、pDeMi0(図17)と命名した。
【0265】
例30:アスペルギラス・オリザエの形質転換及び形質転換体の分析:
5μgのpDeMi01又はpBANe6を用いて、選択のためにアセトアミド上での増殖を用いて、アスペルギラス・オリザエ株Jal 250 (WO98/11203号)から調製されたプロトプラストを形質転換した。アセトアミド上での増殖は、pDeMi01上に存在するamdS遺伝子の発現を必要とする。形質転換を、WO98/11203号(例2)に記載のようにして行った。34℃での30分間のインキュベーションの後、プロトプラスト/DNAミックスを、STCにより3mlにし、そして10mMのウリジンにより補充されたCOVEプレート上に広げた。次に、プレートを、34℃で6日間インキュベートした。
【0266】
約50の形質転換体を、pDeMi01又はpBANe6を用いて得た。すべてのpBANe6形質転換体は、野生型アスペルギラス・オリザエの暗緑色の胞子特性を有した。対照的に、pDeMi01形質転換体は、淡黄色〜暗緑色の範囲の色を生成した。その結果は、逆方向反復体が、転写される場合、dsRNA誘発性遺伝子特異的RNAiを形成することを示唆した。胞子色の変動は、たぶんプラスミドの染色体組込み部位のために、逆方向反復体の示差的転写の結果であろう。
【0267】
pDeMl01を用いて得られた8個一時形質転換体及び、pBANe6により得られた1つの形質転換体を、10mMのウリジンにより補充されたCOVE2プレート上に画線培養した。pBANe6に由来するすべてのコロニーは、均等に暗緑色であった。対照的に、pDeMi01形質転換体から得られたコロニーは、胞子色において種々であった。続く胞子精製は、胞子色の均等性を生成した。pDeMi01又はpBANe8により形質転換されたプレートからの胞子を、水に懸濁し、スライド上に置き、そして光顕微鏡により観察した。対照pBANe8株からの胞子は緑色のままであり、ところがpDeMi01形質転換体からの胞子は透明であり、RNA干渉による不活性化の予測される結果が存在した。
【0268】
本明細書に記載される発明は、本明細書に開示される特許の態様により範囲を限定されるものではない。何故ならば、それらの態様は本発明のいくつかの観点を例示するものである。いずれかの同等の態様が本発明の範囲内で意図される。実際、本明細書に示され、そして記載されるそれらの修飾の他に、本発明の種々の修飾は、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。そのような修飾はまた本発明の範囲内にある。
種々の文献が本明細書に引用されており、それらの開示は引用により本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】図1は、pAILo1の制限地図を示す。
【図2】図2は、pMJ04の制限地図を示す。
【図3】図3は、pMJ06の制限地図を示す。
【図4】図4は、pMJ09の制限地図を示す。
【図5】図5は、トリコダーマ・レセイCel6A逆方向反復体フラグメントの制限地図を示す。
【0270】
【図6】図6は、pSMai148の制限地図を示す。
【図7】図7は、振盪フラスコにおける形質転換体14、正の対照株(トリコダーマ・レセイSaMe02)及び“空のベクター対照”におけるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの相対的発現レベルを示す。
【図8】図8は、pSMai163の制限地図を示す。
【0271】
【図9】図9は、ノザン分析による低い干渉性トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIRNAの検出を示す。全RNA(25μg)を、15%ポリアクリルアミド−7Mウレアゲル上で電気泳動し、ナイロン膜に移し、そしてDIG−ラベルされたトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIRNAプローブによりプローブした。トリコダーマ・レセイSaMe02は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子が相同組換えによりノックアウトされている正の対照株であった。トリコダーマ・レセイRutC30は、宿主株であった。対照28S−rRNA及び18s−rRNAを示す、臭化エチジウム染色されたゲルは、等しい負荷を示した。
【0272】
【図10】図10は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向転写体フラグメントを発現するトリコダーマ・レセイRutC30の7日目の振盪フラスコサンプル(#1, 2, 11, 12, 13及び14)のSDS−PAGE分析を示す。トリコダーマ・レセイSaMe01は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子が相同組換えによりノックアウトされている正の対照株であった。トリコダーマ・レセイRutC30は、宿主株であった。接種後7日で、500μlの菌糸体を、セルラーゼ−誘発性培地に新しい物を含む振盪フラスコのための接種物として使用した。この菌糸体の継代培養を、合計5回、行った。
【0273】
【図11】図1は、pBANelOの制限地図を示す。
【図12】図2は、pAILo2の制限地図を示す。
【図13】図3は、pHB506の制限地図を示す。
【図14】図14は、pHB506を含む選択されたアスペルギラス・ニガー形質転換体(形質転換体1−8)、グルコアミラーゼ遺伝子欠失株アスペルギラス・ニガーHowB112、アスペルギラス・ニガーJaL303-10、及びpAIL02(空のベクター)により形質転換されたアスペルギラス・ニガーJaL303-10の7日目の振盪フラスコサンプルのSDS−PAGE分析を示す。形質転換体1−4は、実施可能量のグルコアミラーゼを生成し、ところが形質転換体5−8は検出できるグルコアミラーゼを生成しなかった。
【0274】
【図15】図15は、pHUda512の制限地図を示す。
【図16】図16は、pHUda512を含む選択されたアスペルギラス・ニガー形質転換体(レーン1−8)及びアスペルギラス・ニガーNN049735(レーン9)の7日目の振盪フラスコサンプルのSDS-PAGE分析を示す。
【図17】図17は、pDeMi01の制限地図を示す。
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、糸状菌株における遺伝子の発現を排除するか又は低めることに関する。
【背景技術】
【0002】
関連する技術の記載:
糸状菌株は、商業的価値の生物学的物質の生成のために広く使用される。しかしながら、生物学的物質の高められた発現及び分泌の所望する形質を有する糸状菌株は、好結果をもたらす発酵のための最も所望する特徴を必ずしも有する必要はない。生物学的物質の生成は、生物学的物質の回収及び生成を複雑にする、生物学的物質を劣化するか、又は生物学的物質と共に同時生成する、他の物質、例えば酵素の生成により達成され得る。
【0003】
それらの問題に対する1つの解決策は、所望しない物質の生成に関与する遺伝子を不活性化することである。不活性化は、当業者において良く知られている方法を用いて、遺伝子を欠失するか又は破壊することにより達成され得る。しかしながら、いくつかの場合、遺伝子の不活性化は、遺伝子の相同領域への不良な標的化のために、困難である。不活性化はまた、ランダム突然変異誘発により達成され得るが、しかしランダム突然変異は意図される標的遺伝子に対して必ずしも特異的ではなく、そして他の突然変異が宿主生物中にしばしば導入される。他の情況においては、遺伝子及びその生成物が、糸状菌株の生存のために必要とされる。複数の遺伝子が欠失又は破壊により不活性化される場合、その仕事は厄介で且つ時間の浪費である。遺伝子ファミリーの高い相同メンバーが存在する場合、すべてのメンバーの欠失又は破壊は非常に退屈で、且つ困難である。
【0004】
最近、種々の形の後成遺伝子調節が記載されている(Selker, 1997, Trends Genet. 13 : 296-301; Matzke and Matzke, 1998, Cell.Mol. Life. Sci. 54: 94-103)。それらの工程は、微小RNA(Morel 2000, Curr. 10: ; Bailis and Forsburg, 2002, Genome Bio. 3, Reviews 1035; Grewal and Moazed, 2003,Science 301 : 798-802)を通して、mRNAのレベルを調節することにより遺伝子発現に影響を及ぼす(Hammond and Baulcombe, 1996, Plant Mol. Biol. 32: 79-88; Xi-song Ke など., 2003, Current Opinion in Chemical Biology 7 : 516-523)。
【0005】
ショウジョウバエ及びカエノルハブジチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)の遺伝子研究に基づいて、後−転写遺伝子サイレンシング(植物において)としても知られてるRNA干渉(RNAi)は、分解のために相同RNAを標的化するタンパク質−RNAエフェクターヌクレアーゼ複合体のアセンブリーにより遺伝子の発現をサイレンシングすることを包含することが理解されている(Hannon, 2002, Nature 418: 244-251)。二本鎖RNA(dsRNA)の小さな干渉性RNAへのプロセッシングは、ダイサー(Dicer)として知られている酵素ファミリーにより達成される(Bernstein など 2001, Nature 409: 363)。ダイサー、すなわちdsRNAを特異的に切断するエンドヌクレアーゼのRNアーゼIII ファミリーのメンバーが、20〜25個のヌクレオチドのsiRNAへのdsRNAの消化を担当している(Elbashirなど., 2001, Nature 411: 494)。
【0006】
それらのsiRNAは、アンチセンス鎖を変性し、そして次に、RNA誘発されたサイレンシング複合体(RISC)に結合する(Elbashir など 2001, Genes and Dev. 15: 188; NyKanen など 2001, Cell 197 : 300; Hammondなど., 2001, Science 293 :1146)。十分には理解されていないが、RISCは、アンチセンスフラグメントが由来するmRNAを標的化し、続いてmRNAのエンド及びエキソヌクレアーゼ消化が、その遺伝子の発現を効果的にサイレンシングする。RNAiは、植物、線虫、昆虫及び哺乳類において示されている(Matzke and Matzke, 1998,前記 ;Kennerdell など., 2000, Nat. Biotechnol. 18: 896-8; Bosher など.,1999, Genetics 153: 1245-56; Voorhoeve and Agami, 2003, Trends Biotechnol. 21: 2-4; 及びMcCaffreyなど., 2003, Nat. Biotechnol. 21: 639-44)。
WO98/53083号は、標的遺伝子のすべて又は一部の逆方向反復配列を含んで成るサイレンシングベクターを、植物のゲノム中に挿入することにより、植物内の標的遺伝子の阻害を増強するための構造体及び方法を開示する。
【0007】
WO01/49844号は、第1コード配列に5’から3’方向に作用可能に連続されるプロモーター要素、及び標的化される生物、例えばカエノルハブジチス・エレガンス、酵母、ジクトステラム(Dictostellum)、ショウジョウバエ、マウス、植物、昆虫、ヒト細胞及び線虫における遺伝子発現を破壊するためのアンチセンス配向での第2配列を含んで成る、逆方向反復遺伝子をコードする逆方向反復遺伝子構造体を記載する。
【0008】
WO03/050288号は、標的遺伝子のすべて又は一部をコードするキメラヌクレオチド配列に作用可能に連結されるプロモーター及びトランスジーンを含んで成る組換えDNA構造体を供給し、そのDNA構造体により植物を、発現カセットがゲノム中に挿入されるよう形質転換し、そして植物におけるトランスジーンの後−転写遺伝子サイレンシングを開始することにより、植物における標的遺伝子をサイレンシングする方法を開示し、それにより、トランスジーンの後−転写遺伝子サイレンシングの開始が標的遺伝子のサイレンシングを引起す。
【0009】
糸状菌株の株開発及び改良、機能的ゲノム及び経路構築のために、1又は複数の遺伝子の発現を排除するか又は低めるための他の方法を有することが当業界において好都合である。
糸状菌株における1又は複数の遺伝子の発現を排除するか又は低めるための他の方法を提供することが、本発明の目的である。
【発明の開示】
【0010】
発明の要約:
本発明は、糸状菌株における生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか又は排除するための方法に関し、ここで前記方法は、
(a)前記糸状菌株のゲノム中に、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を挿入し、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり;そして
(b)前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAの生成を、前記干渉性RNAの生成の助けになる条件下で前記糸状菌株を培養することにより誘発し、ここで前記干渉性RNAは、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応することを含んで成る。
【0011】
本発明はまた、生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成る核酸構造体を含んで成る糸状菌株にも関し、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAが前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応する。
【0012】
本発明はさらに、
(a)興味ある生成物学的物質の生成の助けとなる条件下で糸状菌株を培養し、ここで前記糸状菌株が生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成り、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAが前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応;そして前記糸状菌株が前記興味ある生物学的物質をコードする第3ヌクレオチド配列を含んで成り;そして
(b)前記培養培地から生物学的物質を回収することを含んで成る、生物学的物質の生成方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の特定の記載:
本発明は、糸状菌株における生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか又は排除するための方法に関し、ここで前記方法は、(a)前記糸状菌株のゲノム中に、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を挿入し、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり;そして(b)前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAの生成を、前記干渉性RNAの生成の助けになる条件下で前記糸状菌株を培養することにより誘発し、ここで前記干渉性RNAは、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応することを含んで成る。
【0014】
本発明の方法は、糸状菌株の株開発及び改良、機能的ゲノム、及び経路構築のための新規機会を提供する。例えば、本発明の方法は、遺伝子操作及び経路構築による糸状菌宿主株開発のための手段として、又は種々の成功率を有する時間浪費のアプローチの遺伝子ノックアウトによる置換体として使用され得る。遺伝子は、当業界において知られている標準方法、例えば遺伝子ノックアウトによる不活性化に対して耐性であり得る。本発明の方法は、そのような遺伝子の発現を低めるか又は排除する解決策を提供する。前記方法はまた、例えば生成宿主としての生物を開発することにおいて非常に重要であり得る、特定の糸状菌株における高く発現される遺伝子を低めるか又は排除するために、特に有用であり、且つ効果的である。この能力は、本発明の方法の強さを示す。
【0015】
この方法はまた、お互い高い相同性である複数の遺伝子、特に生合成又は代謝経路における同じファミリーの遺伝子又は相同遺伝子の発現を低めるか又は排除するために有用である。前記方法はさらに、それらが生物学的物質の発現において種々の低下を引起すため操作され得るので、有用である。この変動性は、生物学的物質をコードする遺伝子の完全なノックアウトが、例えば興味ある生合成路中に供給される二次経路において、特定の糸状菌株に対して致死的である場合、特に重要である。
【0016】
本発明の方法においては、第1ヌクレオチド配列は、標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る。第2ヌクレオチド配列は、標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成り、ここで前記第1及び第2の相同性領域はお互いに対して相補的であり、そして第2の相同性領域は第1の相同性領域に対して逆配位にある。好ましい観点においては、第1及び第2ヌクレオチド配列は、構成の間、所望しない組換えに対して糸状菌株、例えばE. コリにおける第1及び第2ヌクレオチド配列を安定化するために、第3ヌクレオチド配列により分離される。二本鎖転写可能核酸構造体のヌクレオチド配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起源のもの、又はそれらのいずれかの組合せのものであり得る。
【0017】
プロモーター:
用語“プロモーター”とは、RNAポリメラーゼを結合し、生物学的物質をコードする核酸配置の正しい下流の転写開始部位に前記ポリメラーゼの転写開始を方向づけるDNA配列として、本明細書において定義される。RNAポリメラーゼは、コード領域の適切なDNA鎖に対して相補的なメッセンジャーRNAのアセンブリーを効果的に触媒する。用語、“プロモーター”はまた、mRNAへの転写の後、翻訳のための5’非コード領域(プロモーターと翻訳開始との間)、シス−作用転写制御要素、例えばエンハンサー、及び転写因子と相互作用できる他のヌクレオチド配列を含むことが理解されるであろう。プロモーター配列は、第1相同性転写可能領域に対して生来のものであるか又は外来性(異種)のものであり、そして糸状菌株に対して生来のものであるか又は外来性のものであり得る。本発明の方法においては、プロモーターは、生来のプロモーター、異種プロモーター、変異体プロモーター又はタンデムプロモーターであり得る。
【0018】
用語“変異体プロモーター”は、親プロモーターの1又は複数のヌクレオチドの置換、欠失、及び/又は挿入を含んで成るヌクレオチド配列を有するプロモーターとして定義され、ここで変異体プロモーターはその対応する親プロモーターよりも高いか又は低いプロモーター活性を有する。用語、“変異体プロモーター”はまた、天然の変異体、及び当業界において良く知られている方法、例えば従来の突然変異誘発、特定部位の突然変異誘発及びDNAシャフリングを用いて得られる、インビトロ生成された変異体を包含するであろう。
【0019】
用語“ハイブリッドプロモーター”とは、コード配列に作用可能に結合される場合、mRNA中へのコード配列の転写に介在する。2又はそれ以上のプロモーターの融合体である配列を生成するために、一緒に融合される複数のプロモーターの一部として本明細書において定義される。
【0020】
用語、“タンデムプロモーター”とは、コード配列に作用可能に結合され、そしてmRNA中へのコード配列の転写に介在する複数のプロモーター配列として本発明の細胞において定義される。
【0021】
用語“作用可能に連結される”とは、プロモーター配列が2種の領域の転写を方向づけるよう、そのプロモーター配列が、標的遺伝子の相同領域に対する位置に適切に配列されている配置として、本明細書において定義される。
【0022】
本発明の方法において有用なプロモーターの例は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・アワモリグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコル・ミエヘイリパーゼ、アスペルギラス・オリザエ アルカリプロテアーゼ、アスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアセトアミダーゼ、コプリナス・シネレウス(Coprins cinereus)β−チュウブリン、フサリウム・ベネナチュムアミログルコシダーゼ(WO 00/56900号)、フサリウム・ベネナタムDaria(WO 00/56900号)、フサリウム・ベネナタムQuinn (WO 00/56900号)、フサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼ(WA96/00787号)、トリコダーマ・レセイβ−グルコシダーゼ、トリコダーマ・レセイセロビオヒドロラーゼI、トリコダーマ・レセイセロビオヒドロラーゼII、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼI、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼII、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼIII、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼIV、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼV、トリコダーマ・レセイキシラナーゼI、トリコダーマ・レセイキシラナーゼII、トリコダーマ・レセイβキシロシダーゼをコードする遺伝子から得られるプロモーター、並びにNA2-tpiプロモーター(アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ及びアスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼのための遺伝子からのプロモーターのハイブリッド)及びそれらの変異体、切断された、及びハイブリッドプロモーターを包含する。
【0023】
相同性転写可能領域:
用語“相同性転写可能領域”とは、適切な調節配列の制御下に配置される場合、生物学的物質、例えばポリペプチドに翻訳されても又はされなくても良い、RNA、例えばncRNA(非コードRNA)、tRNA(トランスファーRNA)、rRNA(リボソームRNA)、miRNA(ミクロRNA)又はmRNA(メッセンジャーRNA)に転写される、標的遺伝子又はその一部の読みとり枠に対して相同であるヌクレオチド配列として本明細書において定義される。転写可能領域の境界は一般的に、mRNAの5’末端での読取枠のすぐ上流に位置する転写開始部位、及びmRNAの3’末端での読取枠のすぐ下流に位置する転写終結ターミネーターにより決定される。相同性転写可能領域は、ゲノムDNA、cDNa、半合成、合成及び組換え核酸配列を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0024】
本発明の方法においては、標的遺伝子に対して相同の第1領域は、標的遺伝子のその対応する領域と同一であるか、又はその相同体であり得る。
【0025】
相同体と、標的遺伝子の発現の不活性化又は低下を達成するために必要とされる標的遺伝子のその対応する領域との間の同一性の程度はたぶん、標的遺伝子に依存するであろう。相同体のヌクレオチド配列が完全な標的遺伝子に対して小さいほど、配列間の同一性の程度は好ましくは、非常に高いか又は同一である。相同体のヌクレオチド配列が完全な標的遺伝子に対して大きいほど、配列間の同一性の程度はたぶん、低い。
【0026】
本発明の方法にいては、標的遺伝子の対応する領域に対する相同体のヌクレオチド配列の同一性の程度は、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも97%である。本発明に関しては、2種の核酸配列間の同一性の程度は、同一性表及び次の複数の整合パラメーター:10のギャップペナルティー及び10のギャップ長ペナルティーと共に、(DNASTAR, Inc. , Madison, WI)を用いて、Wilbur-Lipman method and Lipman, 1983, Proceedings of the National Academy of Science USA 80: 726-730)により決定される。ペアワイズ整合パラメーターは、Ktuple=3、ギャップペナルティー=3及び窓=20である。
【0027】
あるいは、種々の緊縮条件下でお互いハイブリダイズする、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域の能力はまた、標的遺伝子の発現の不活性化又は低下のために必要とされる関連性の程度の表示を提供することができる。しかしながら、相同体と標的遺伝子のその対応する領域との間のハイブリダイゼーションを達成するために、必要とされる緊縮条件が低いほど、例えば低い緊縮条件ほど、標的遺伝子の発現の不活性化又は低下はたぶん、ほとんど効果的ではないであろうことは、理解されるべきである。
【0028】
好ましい観点においては、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域は、低い緊縮条件下でハイブリダイズする。より好ましい観点においては、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域は、中位の緊縮条件下でハイブリダイズする。さらにより好ましい観点においては、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域は、中位の高い緊縮条件下でハイブリダイズする。最も好ましい観点においては、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域は、高い緊縮条件下でハイブリダイズする。さらに最も好ましい観点においては、相同体及び標的遺伝子のその対応する領域は、非常に高い緊縮条件下でハイブリダイズする。
【0029】
少なくとも100個の長さのヌクレオチドのプローブに関しては、非常に低い〜非常に高い緊縮条件は、最適には12〜24時間の標準のサザンブロット方法に従っての、5×SSPE, 0.3%SDS, 200μg/ml の剪断され、そして変性されたサケ精子DNA、及び25%ホルムアミド(非常に低い及び低い緊縮に関して)、35%ホルムアミド(中位い及び中位の高い緊縮に関して)、又は50%ホルムアミド(高い及び非常に高い緊縮に関して)における42℃でのプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションとして定義される。
【0030】
少なくとも100個の長さのヌクレオチドのプローブに関しては、キャリヤー材料は最終的に、2×SSC, 0.2%SDS溶液を用いて、好ましくは少なくとも45℃(非常に低い緊縮)、より好ましくは少なくとも50℃(低い緊縮)、より好ましくは少なくとも55℃(中位の緊縮)、より好ましくは少なくとも60℃(中位の高い緊縮)、さらにより好ましくは少なくとも65℃(高い緊縮)、および最も好ましくは少なくとも70℃(非常に高い緊縮)で、それぞれ15分間、3度洗浄される。
【0031】
約15個〜約70個の長さのヌクレオチドである短いプローブに関しては、緊縮条件は、0.9MのNaCl、0.09Mのトリス−HCl, pH7.6, 6mM のEDTA, 0.5のNP-40, 1×Denhardt’s溶液、1mMのピロリン酸ナトリウム、1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、0.1mMのATP及び0.2mgの酵母RNA(ml当たり)における、Bolton and McCarthy(1962、Proceedings of the National Academy of Sciences USA 48: 1390)に従って計算されたTmよりも約5℃〜約10℃低い温度での、最適には12〜24時間の標準のサザンブロット方法に従ってのプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、及び後−ハイブリダイゼーション洗浄として定義される。
【0032】
約15個〜約70個の長さのヌクレオチドである短いプローブに関しては、キャリヤー材料は、6×SSC及び0.1%SDSにより15分間、1度、及び6×SSCを用いて、計算されたTmよりも約5℃〜約10℃低い温度でそれぞれ15分間、2度、洗浄される。
【0033】
第1の相同性領域は好ましくは、少なくとも19個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも40個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも80個のヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも100個のヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも200個のヌクレオチドから成る。第1の相同性領域はまた、遺伝子又はその相同体の完全な読取枠から成り得る。
【0034】
逆方向反復体:
二本鎖転写可能核酸構造体はまた、標的遺伝子の第2の相同体可能領域を含んで成り、ここで第1及び第2の相同性領域はお互いに対して相補的であり、そして第2の相同性領域は第1の相同性領域、すなわち第1の相同性領域の逆方向反復体に対して逆配向にある。
【0035】
好ましい観点においては、第2の相同性領域は、第1の相同性領域と100%同一であるが、しかし第1の相同性領域に対して逆配向にある。もう1つの好ましい観点においては、第2の相同性領域は第1の相同性領域の一部であり、ここで前記一部第1の相同性領域のその対応する部分と100%同一である。もう1つの好ましい観点においては、第2の相同性領域は、第1の相同性領域のその対応する部分の相同体である。もう1つの好ましい観点においては、第2の相同性領域は、第1の相同性領域のその対応する部分の相同部分である。
【0036】
相同体又は相同部分は、第1ヌクレオチド配列のその対応する配列に対して、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも97%同一である。%同一性は、本明細書に記載されるWilbur-Lipman方法に従って決定される。
【0037】
発現を低めるか又は排除するために標的化される遺伝子を同定する第2の相同性領域は、標的遺伝子のいずれかの相同転写可能部分、例えば5’−未翻訳領域、生物学的物質コード配列、又は標的遺伝子の3’−未翻訳領域であり得る。
【0038】
好ましい観点においては、第2の相同性領域は、標的遺伝子の生物学的物質コード配列、又はその一部に対応する。
【0039】
もう1つの好ましい観点においては、第2の相同性領域は、標的遺伝子の5’−未翻訳領域又はその一部に対応する。
【0040】
もう1つの好ましい観点においては、第2の相同性領域は、標的遺伝子の3’−未翻訳領域又はその一部に対応する。
【0041】
第2の相同性領域は好ましくは、少なくとも19個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも40個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも80個のヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも100個のヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも200個のヌクレオチドから成る。第2の相同性領域はまた、遺伝子又はその相同体の完全な読取枠から成る。
【0042】
第1及び第2ヌクレオチド配列間のスペンサー:
標的遺伝子の相同領域を含んで成る第1及び第2ヌクレオチド配列は、二本鎖転写可能核酸構造体における第1及び第2ヌクレオチド配列に対して、ほとんどか又はまったく相同性を有さないヌクレオチド配列である、ポリヌクレオチドリンカー又はスペンサーにより分離されても又はされなくても良い。
【0043】
好ましい観点においては、第1及び第2ヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチドリンカーにより分離される。スペンサーは好ましくは、少なくとも5個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも10個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも20個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも30個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも40個のヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも50個のヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも100個のヌクレオチドから成る。
【0044】
スペンサー又はリンカーは、所望しない標的化/組換えを最少にするために、第1又は第2ヌクレオチド配列に対する相同性を有さず、及び好ましくは、糸状菌株のゲノムにおいける配列に対する相同性をほとんどか又はまったく有さないいずれかのヌクレオチド配列であり得る。
【0045】
標的遺伝子:
標的遺伝子は、生物学的物質をコードするいずれかの遺伝子であり得る。生物学的物質は、RNA(例えば、ncRNA, rRNA, tRNA, miRNA又はmRNA)であり得る。生物学的生物は、いずれかの生物ポリマー又は代謝物であり得る。生物学的物質は、生合成又は代謝路を構成する、単一の遺伝子又は一連の遺伝子によりコードされ得るか、又は単一遺伝子の生成物又は一連の遺伝子の生成物の直接的な結果であり得る。生物学的物質は、糸状菌株に対して生来のものであるか、又は糸状菌株に対して外来性または異種であり得る。用語、“異種の生物学的物質”とは、宿主細胞に対して生来ではない生物学的物として;又は構造的修飾が生来の生物学的物質を変更するために行われている、生来の生物学的物質として本明細書において定義される。
【0046】
本発明の方法においては、生物ポリマーはいずれの生物ポリマーででもあり得る。用語、“生物ポリマー”とは、同一の、類似する、又は類似しないサブユニット(モノマー)の鎖(又はポリマー)として本明細書において定義される。生物ポリマーは、核酸、ポリアミン、ポリオール、ポリペプチド(又はポリアミド)、又はポリサッカリドであり得るが、但しそれらだけには限定されない。
【0047】
好ましい観点においては、生物ポリマーは、ポリペプチドである。ポリペプチドは、興味ある生物学的活性を有するいずれかのポリペプチドであり得る。用語、“ポリペプチド”とは、コードされる生成物の特定の長さを意味せず、そして従って、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質を包含する。用語、“ポリペプチド”はまた、コードされる生成物を形成するために組み合わされる複数のポリペプチドを包含する。ポリペプチドはまた、少なくとも2種の異なったポリペプチド(1又は複数のポリペプチドは菌類細胞に対して異種であり得る)から得られた部分的又は完全なポリペプチド配列の組合せを含んで成るハイブリッドポリペプチドを包含する。ポリペプチドはさらに、上記ポリペプチド及びハイブリッドの天然に存在する対立遺伝子及び構築された変動体を包含する。
【0048】
好ましい観点においては、ポリペプチドは、抗体、抗原、抗菌ペプチド、酵素、成長因子、ホルモン、イムノモジュレーター、神経伝達物質、受容体、受容体タンパク質、構造タンパク質及び転写因子である。
【0049】
より好ましい観点においては、ポリペプチドは、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ又はリガーゼである。最も好ましい態様においては、ポリペプチドは、α−グルコシダーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドロラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、インバーターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、ウロキナーゼ又はキシラナーゼである。
【0050】
もう1つの好ましい観点においては、ポリペプチドはコラーゲン又はゼラチン、又はそのハイブリッドである。
【0051】
もう1つの好ましい観点においては、生物ポリマーは、ポリサッカリドである。ポリサッカリドは、いずれかのポリサッカリド、例えばムコポリサッカリド(例えば、ヘパリン及びヒアルロン酸)及び窒素含有ポリサッカリド(例えば、キチン)であり得るが、但しそれらだけには限定されない。より好ましい態様においては、ポリサッカリドはヒアルロン酸である。
【0052】
本発明の方法においては、代謝物はいずれの代謝物ででもあり得る。代謝物は、1又は複数の遺伝子、例えば生合成又は代謝路によりコードされ得る。用語、“代謝物”とは、一次及び二次代謝物の両者を包含する。一次代謝物は、エネルギー代謝、成長及び構造に関連する、細胞の一次又は一般代謝の生成物である。二次代謝物は、二次代謝の生成物である(R. B. Herbert, The Biosynthesis of Secondary Metabolites, Chapman and Hall, New York, 1981を参照のこと)。
【0053】
一次代謝物は、アミノ酸、脂肪酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、糖、トリグリセリド又はビタミンであり得るが、但しそれらだけには限定されない。
【0054】
二次代謝物は、アルカロイド、クマリン、フラボノイド、ポリケチド、キニン、ステロイド、ペプチド又はテルペンであり得るが、但しそれらだけには限定されない。好ましい態様においては、二次代謝物は、抗生物質、摂食阻害剤、誘引剤、殺菌剤、抗菌剤、ホルモン、殺昆虫剤又は殺鼠薬である。
【0055】
生物学的物質はまた、選択マーカーの生成物でもあり得る。選択マーカーは、1つの遺伝子であり、その生成物は、殺生物剤又はウィルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求性に対する原栄養要求性、及び同様のものを提供する。選択マーカーは、次の群から選択されるが、但しそれらだけには限定されない;amdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph (ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD (硝酸レダクターゼ)、pyrG (オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ) 及びtrpC (アントラニル酸シンターゼ)、並びにそれらの同等物。
【0056】
標的遺伝子を単離することは、本発明の実施において必要である。1つの遺伝子を単離するか又はクローン化するために使用される技法は、当業界において知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はそれらの組合せを包含する。そのようなゲノムDNAからの遺伝子のクローニングは、例えば良く知られているポリメラーゼ鎖反応(PCR)を用いることによりもたらされ得る。例えば、Innis nado., 1990, PCR Protocols : A Guide to Methods and Application, Academic Press, New Yorkを参照のこと。クローニング方法は、生物学的物質をコードする遺伝子を含んで成る所望する核酸フラグメントの切除及び単離、ベクター分子中へのフラグメントの挿入、及び糸状菌類細胞中への組換えベクターの組み込み包含することができ、ここで、核酸配列の複数コピー又はクローンが複製されるであろう。核酸配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起源のもの、又はそれらのいずれかの組合せのものであり得る。
【0057】
好ましい観点においては、標的遺伝子の発現は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる。もう1つの好ましい観点においては、標的遺伝子の発現は排除される。
【0058】
5’未翻訳領域、コード配列又は3’未翻訳領域内の逆方向反復配列の使用が所望される場合、それらの領域のいずれか1つ内の逆方向反復体により構成される遺伝子サイレンシングベクターはさらに、サイレンシングベクターに存在するコード配列に対して相同である遺伝子のサイレンシングを可能にする。従って、生物内の遺伝子の相同体のサイレンシングが所望される場合、5’未翻訳領域、コード配列又は3’未翻訳領域内の逆方向反復体を含むサイレンシングベクターの構成が、その構造体のコード配列に対して配列相同性を示す1又は複数の遺伝子の発現の排除又は低下を可能にすることができる。用語“相同性”又は“相同”とは通常、ある共通する構造体のものであり、そして活性領域の高い程度の配列類似性を示すそれらの配列を示す。
【0059】
好ましい観点においては、干渉性RNAは、標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現を低めるか又は排除するために、標的遺伝子の1又は複数の相同体のRNA転写体と相互作用する。
【0060】
より好ましい観点においては、標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる。もう1つの好ましい観点においては、標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現は排除される。
【0061】
糸状菌株:
本発明はまた、生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成る糸状菌株に関し、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記第1及び第2ヌクレオチド配列が、糸状菌株における標的遺伝子の発現をサイレンシングする標的遺伝子に相同である領域を含んで成る転写可能重複ポリヌクレオチドを形成する。
【0062】
糸状菌株は、本発明の方法において有用ないずれかの糸状菌株であり得る。“糸状菌”とは、ユーミコタ(Eumycota)及びオーミコタ(Oomycota)のすべての糸状形を包含する(Hawksworthなど., 1995, 前記により定義されるような)。糸状菌は一般的に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン及び他の複合ポリサッカリドから構成される菌子体壁により特徴づけられる。成長増殖は、菌子拡張によってであり、そして炭素代謝は絶対好気性である。対照的に、酵母、たとえばサッカロミセス・セレビシアエによる成長増殖は、単細胞葉状体の発芽によってであり、そして炭素代謝は発酵性である。
【0063】
好ましい観点においては、前記糸状菌株は、アクレモニウム、アスペルギラス、アウレオバシジウム、クリプトコーカス、フィリバシジウム、フサリウム、ヒューミコラ、マグナポリス、ムコル、ミセリオプソラ、ネオカノマスチックス、ネウロスポラ、パエシロミセス、ペニシリウム、プロミセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム又はトリコダーマ株である。
【0064】
より好ましい観点においては、糸状菌株は、アスペルギラス・アワモリ、アスペルギラス・フミガタス、アスペルギラス・ホエチダス、アスペルギラス・ジャポニカ、アスペルギラス・ニジュランス、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・オリザエ細胞である。もう1つのより好ましい観点においては、糸状菌株は、フサリウム・バクトリジオイデス、フサリウム・セレアリス、フサリウム・クロックウェレンズ 、フサリウム・クルモラム、フサリウム・グラミネアラム、フサリウム・グラミナム、フサリウム・ヘテロスポラム、フサリウム・ネグンジ、フサリウム・オキシスポラム、フサリウム・レチキュラタム、フサリウム・ロゼウム、フサリウム・サムブシウム、フサリウム・サルコクロウム、フサリウム・スポロトリキオイデス、フサリウム・スルフレウム、フサリウム・トルロサム、フサリウム・トリコセシオイデス又はフサリウム・ベネナタム細胞である。
【0065】
さらにより好ましい観点においては、糸状菌株は、ブジェルカンデラ・アヅスタ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイニナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレグレア(Ceriporiopsis careglea)、セリポリオプシス・ギルベセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パンノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リボロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・スブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・スブベルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、コプリナス・シネレウス(Coprinus cinereus)、コリオラス・ヒルスタス(Coriolus hirsutus)、ヒューミコラ・インソレンス、ヒューミコラ・ラヌギノサ、ムコル・ミエヘイ、ミセリオプソラ・サーモフィリア、ネウロスポラ・クラサ、ペニシリウム・プルプロゲナム、ファネロカエト・クリソスポリウム(Phanerocheate chrysosporium)、フィレビア・ラディアタ(Phlebia radiata)、プレウロタス・エリンギル(Pleurotus eryngil)、チエラビア・テレストリス、トラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシコロル(Trametes versicolor)、トリコダーマ・ハルジアナム、トリコダーマ・コニンギ、トリコダーマ・ロンジブラキアタム、トリコダーマ・レセイ又はトリコダーマ・ビリデ細胞である。
【0066】
最も好ましい観点においては、アスペルギラス・オリザエ株は、アスペルギラス・オリザエ株寄託番号IFO4177である。もう1つの最も好ましい観点においては、フサリウム・ベネナタム細胞は、フサリウム・グラミネアラムATCC20334として最初に寄託され、そして最近、Yoder and Christianson, 1998, Fungal Genetics and Biology 23: 62-80及びO’Donnell など., 1998, Fungal Genetics and Biology 23: 57-67 によりフサリウム・ベネナタムとして再分類されている、フサリウム・ベネナタムA3/5;及び現在知られている種名称にもかかわらず、フサリウム・ベネナタムの分類学的同等物である。もう1つの好ましい観点においては、フサリウム・ベネナタム株は、WO97/26330号に記載されるように、フサリウム・ベネナタムA3/5又はフサリウム・ベネナタムATCC20334の形態学的変異体である。もう1つの好ましい観点においては、トリコダーマ・リセイ株は、トリコダーマ・リセイATCC56765である。
【0067】
糸状菌株は、プロトプラスト形質転換、プロトプラストの形質転換、及びそれ自体知られている態様での細胞壁の再生を包含する工程により形質転換され得る。アスペルギラス及びトリコダーマ株の形質転換のための適切な方法は、ヨーロッパ特許第238023号及びYeltonなど., 1984, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 81; 1470-1474に記載される。フラリウム種を形質転換するための適切な方法は、Malardierなど., 1989, Gene78: 147-156, 及びWO96/00787号により記載される。酵母は、Becker and Guarente. In Abelson, J.N. and Simon, M.I., editors, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Methods in Enzymology, Volume 194, pp 182-187, Academic Press, Inc., New York; Ito など, 1983, Journal of Bacteriology 153: 163; 及びHinnen など, 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75; 1920により記載される方法を用いて形質転換され得る。
【0068】
生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現の低下又は排除は、標的化された生物学的物質に対して特異的である。当業界において知られている方法を用いて検出され得る。それらの検出方法は、特異的抗体の使用、高性能免疫クロマトグラフィー、細管電気泳動、酵素生成物の形成、酵素基質の消出又はSDS−PAGEを包含する。例えば、酵素アッセイは、酵素の活性を検出するために使用され得る。酵素活性を決定するための方法は、多くの酵素について当業界において知られている(例えば、D. Schomburg and M. Springer(eds.), Enzyme Handbook, Springer- Verlag, New York, 1990を参照のこと)。
【0069】
生成方法:
本発明はまた、(a)興味ある生成物学的物質の生成の助けとなる条件下で糸状菌株を培養し、ここで前記糸状菌株が生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成り、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAが前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応;そして前記糸状菌株が前記興味ある生物学的物質をコードする第3ヌクレオチド配列を含んで成り;そして(b)前記培養培地から生物学的物質を回収することを含んで成る、生物学的物質の生成方法に関する。
【0070】
興味ある生物学的物質は、本明細書に記載されるような、いずれかの生物学的物質であり得る。それは、糸状菌株に対して生来のものであるか又は外来性のものである。所望しない生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現の低下又は排除は、興味あるもう1つの生物学的物質の高められた発現を導くことができる。例えば、所望しない生物学的物質は、興味ある生物学的物質を攻撃し、それにより、生成される興味ある生物学的物質の量を低めるプロテアーゼであり得る。プロテアーゼの発現を低めるか又は排除することにより、より多くの興味ある生物学的物質が発現され、そして生成されるであろう。
【0071】
又は、所望しない生物学的物質は、興味ある生物学的物質と、細胞工程、例えば転写因子又は分泌経路を共有し、それにより、生成される興味ある生物学的物質の量を低める。所望しない生物学的物質の発現を低めるか又は排除することにより、より多くの細胞工程が興味ある生物学的物質、例えば発現制限転写要素に利用でき、それにより、発現され、そして生成される興味ある生物学的物質の量が上昇する。さらに、所望しない生物学的物質は、興味ある生物学的物質を汚染し、特定の用途への興味ある物質的物質、例えば食物工程への酵素の使用を妨げる毒素であり得る。
【0072】
本発明の生成方法においては、糸状菌株は、当業界において知られている方法を用いて、興味ある生物学的物質の生来のために適切な栄養培地において培養される。例えば、前記株は、適切な培地において行われる実験用又は産業用発酵器において、振盪フラスコ培養、すなわち小規模又は大規模発酵(例えば、連続、バッチ、供給−バッチ又は固体状態酵母)により、生物学的物質の発現及び/又は単離を可能にする条件下で培養され得る。培養は、当業界において知られている方法を用いて、炭素及び窒素源、及び無機塩を含んで成る適切な栄養培地において行われる。適切な培地は、市販されているか、又は公開されている組成(例えば、American Type Culture Collectionのカタログにおける)に従って調製され得る。生物学的物質が栄養培地中に分泌される場合、物質は培地から直接的に回収され得る。生物学的物質が分泌されない場合、それは細胞溶解物から回収され得る。
【0073】
興味ある生物学的物質は、その生物学的物質に対して特異的である、当業界において知られている方法を用いて検出され得る。それらの検出方法は、特異的抗体の使用、高性能液体クリマトグラフィー、細管クロマトグラフィー、酵素生成物の形成、酵素基質の消出、又はSDS−PAGEを包含する。例えば、酵素アッセイは、酵素の活性を決定するために使用され得る。酵素活性を決定するための方法は、多くの酵素ついて当業界において知られている(例えば、D. Schomburg and M. Salzmann (eds. ), Enzyme Handbook, Springer-Verlag, New York, 1990を参照のこと)。
【0074】
得られる興味ある生物学的物質は、当業界において知られている方法により単離され得る。例えば、興味あるポリペプチドは、従来の方法、例えば遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿により、培養培地から単離され得る。次に、単離されたポリペプチドは、さらに当業界において知られている種々の方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動方法(例えば、分離用等電点電気泳動(IEF))、示差溶解性(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出(但し、それらだけには限定されない)により精製され得る(例えば、Protein Purification, J. -C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)。興味ある代謝物は、例えば抽出、沈殿、示差溶解性、又は当業界において知られているいずれか方法により、培養培地から単離され得る。単離された代謝物は、その代謝物のために適切な方法を用いて、さらに精製され得る。
【0075】
ヌクレオチド配列:
興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列は、いずれかの原核生物、真核生物、又は他の源から得られる。本発明のためには、一定の源に関して、用語、“〜から得られる”とは、本明細書において使用される場合、生物学的物質が、前記源により、又は前記源からの遺伝子が挿入されている細胞により生成されることを意味するであろう。
【0076】
興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列を単離するか又はクローン化するために使用される技法は、当業界において知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はそれらの組合せを包含する。そのようなゲノムDNAからのヌクレオチド配列のクローニングは、例えば良く知られているポリメラーゼ鎖反応(PCR)を用いることによりもたらされ得る。例えば、Innis nado., 1990, PCR Protocols : A Guide to Methods and Application, Academic Press, New Yorkを参照のこと。クローニング方法は、生物学的物質をコードするヌクレオチド配列を含んで成る所望する核酸フラグメントの切除及び単離、ベクター分子中へのフラグメントの挿入、及び変異体菌類細胞中への組換えベクターの組み込み包含することができ、ここで、核酸配列の複数コピー又はクローンが複製されるであろう。核酸配列は、ゲノム、cDNA, RNA, 半合成、合成起源のもの、又はそれらのいずれかの組合せのものであり得る。
【0077】
核酸構造体:
興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列は、糸状菌株における核酸構造体に含まれる。核酸構造体は、少なくとも1つのプロモーターに作用可能に連結される、興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列、及び制御配列と適合する条件下で糸状菌株におけるヌクレオチド配列の発現を方向づける1又は複数の制御配列を含んで成る。発現は、興味ある生物学的物質の生成に包含されるいずれかの段階、例えば転写、後−転写修飾、翻訳、後−翻訳修飾、及び分泌(但し、それらだけには限定されない)を包含することが理解されるであろう。
【0078】
“核酸構造体”とは、本明細書においては、天然に存在する遺伝子から単離され、又は他方では、天然に存在しない態様で組み合わされ、そして並置される、核酸のセグメントを含むように修飾されている、一本鎖又は二本鎖核酸分子として定義される。用語“核酸構造体”とは、核酸構造体が1つのコード配列、及び前記コード配列の発現のために必要とされるすべての制御配列を含む場合、用語“発現カセット”と同じ意味である。
【0079】
興味ある生物学的物質をコードする単離されたヌクレオチド配列は、生物学的物質の発現を提供するために種々の手段で操作され得る。ベクター中へのその挿入の前、ヌクレオチド配列の操作は、発現ベクターに依存して、所望されるか又は必要とされる。組換えDNA方法を用いてヌクレオチド配列を修飾するための技法は、当業界において良く知られている。
【0080】
ヌクレオチド配列は、1又は複数の生来の制御配列を含んで成ることができるか、又は1又は複数の生来の配列が、宿主細胞におけるコード配列の発現を改良するためのヌクレオチド配列に、1又は複数の制御配列により置換され得る。
【0081】
用語“制御配列”とは、興味ある生物学的物質の発現のために必要であるか、又はそのために好都合であるすべての成分を包含するよう定義される。個々の制御配列は、生物学的物質をコードするヌクレオチド配列に対して生来であっても又は外来性であっても良い。そのような制御配列は、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターを包含するが、但しそれらだけには限定されない。最少で、制御配列は、プロモーター、及び転写及び翻訳停止シグナルを包含する。制御配列は、興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列のコード領域と制御配列との連結を促進する特定の制限部位を導入するためにリンカーを提供され得る。
【0082】
制御配列はまた、適切な転写ターミネーター配列、すなわち転写を終結するために宿主細胞により認識される配列でもあり得る。ターミネーター配列は、生物学的物質をコードする核酸配列の3’側末端に作用可能に連結される。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのターミネーターが本発明において使用され得る。
【0083】
糸状菌宿主細胞のための好ましいターミネーターは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、アスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼ及びフサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼについての遺伝子から得られる。
【0084】
制御配列はまた、適切なリーダー配列、すなわち糸状菌株による翻訳のために重要であるmRNAの非翻訳領域でもあり得る。リーダー配列は、生物学的物質をコードする核酸配列の5’末端に作用可能に連結される。選択の糸状菌株において機能的であるいずれかのリーダー配列が、本発明において使用され得る。
【0085】
糸状菌宿主細胞のための好ましいリーダーは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランストリオースリン酸イソメラーゼ、フサリウム・ベネナタムトリプシン、及びフサリウム・ベネナタムグルコアミラーゼについての遺伝子から得られる。
【0086】
制御配列はまた、ポリアデニル化配列、すなわち核酸配列の3’末端に作用可能に連結され、そして転写される場合、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するためにシグナルとして宿主細胞により認識される配列でもあり得る。選択の糸状菌株において機能的であるいずれかのポリアデニル化配列が,本発明において使用される。
【0087】
糸状菌宿主細胞のための好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギキラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、フサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼ及びアスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼについての遺伝子から得られる。
【0088】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に連結されるアミノ酸配列をコードし、そしてそのコードされたポリペプチドを細胞の分泌路中に方向づけるシグナルペプチドコード領域でもあり得る。核酸配列のコード配列の5’側末端は、本来、分泌されたポロペプチドをコードするコード領域のセグメントと翻訳読み取り枠を整合して、天然において連結されるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。他方では、コード配列の5’側末端は、そのコード配列に対して外来性であるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。
【0089】
そのコード配列が天然において、シグナルペプチドコード領域を含まない外来性シグナルペプチドコード領域が必要とされる。他方では、外来性シグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドの増強された分泌を得るために、天然のシグナルペプチドコード領域を単純に置換することができる。しかしながら、選択の菌類宿主細胞の分泌路中に発現されたポリペプチドを方向づけるいずれかのシグナルペプチドコード領域が、本発明に使用され得る。
【0090】
糸状菌株のための効果的なシグナルペプチドコード領域は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガー中性アミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイアスペラギン酸プロテイナーゼ、ヒューミコラ・インソレンスセルラーゼ及びヒューミコラ・ラヌギノサリパーゼについての遺伝子から得られたシグナルペプチドコート領域である。
【0091】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端で位置するアミノ酸配列をコードするプロペプチドコード領域であり得る。得られるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又は多くの場合、チモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般的に不活性であり、そしてプロポリペプチドからプロペプチドの触媒又は自己触媒分解により成熟した活性ポリペプチドに転換され得る。プロペプチドコード領域は、サッカロミセス・セレビシアエα−因子、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ遺伝子、及びミセリオプソラ・サーモフィリア ラッカーゼについての遺伝子から得られる(WO95/33836号)。
【0092】
シグナルペプチド及びプロペプチド領域の両者がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合、そのプロペプチド領域は、ポリペプチドのアミノ末端の次に位置し、そしてシグナルペプチド領域は、プロペプチド領域のアミノ末端の次に位置する。
【0093】
糸状菌株の増殖に関して、ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することがまた所望される。調節システムの例は、調節化合物の存在を包含する、化学的又は物理的刺激に応答して、遺伝子の発現の開始又は停止を引き起こすそれらのシステムである。糸状菌においては、TAKAα−アミラーゼプロモーター、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼプロモーター、アスペルギラス・オリザエグルコアミラーゼプロモーター、及びフサリウム・ベネナタムグルコアミラーゼプロモーターが、調節配列として使用さえ得る。調節配列の他の列は、遺伝子増幅を可能にするそれらの配列である。真核システムにおいては、それらはメトトレキセートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、及び重金属と共に増幅されるメタロチオネイン遺伝子を包含する。それらの場合、生物学的物質をコードするヌクレオチド配列が、調節配列により作用可能に連結される。
【0094】
発現ベクター:
興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列は、プロモーター、生物学的物質をコードするヌクレオチド配列、及び転写及び翻訳終結シグナルを含んで成る組換えベクターに含まれ得る。上記の種々の核酸及び制御配列は、1又は複数の便利な制限部位で生物学的物質をコードする核酸配列の挿入又は置換を可能にするためにそれらの部位を含むことができる組換え発現ベクターを生成するために一緒に連結され得る。他方では、ヌクレオチド配列は、前記ヌクレオチド配列、又はプロモータ及び/又は配列を含んで成る核酸構造体を、発現のための適切なベクター中に挿入することによって発現され得る。発現ベクターを創造する場合、そのコード配列はベクターに位置し、その結果、コード配列はプロモーター及び発現のための1又は複数の適切な制御配列により作用可能に連結される。
【0095】
組換え発現ベクターは、組換えDNA方法に便利にゆだねられ得、そして核酸配列の発現をもたらすことができるいずれかのベクター(たとえば、プラスミド又はウィルス)であり得る。ベクターの選択は典型的には、ベクターが導入される予定である宿主細胞とベクターとの適合性に依存するであろう。ベクターは、線状又は閉環された環状プラスミドであり得る。
【0096】
ベクターは自律的に複製するベクター、すなわち染色体存在物として存在するベクター(その複製は染色体複製には無関係である)、たとえばプラスミド、染色体外要素、ミニクロモソーム又は人工染色体であり得る。ベクターは自己複製を確かめるためのいずれかの手段を含むことができる。他方では、ベクターは、糸状菌細胞中に導入される場合、ゲノム中に組み込まれ、そしてそれが組み込まれている染色体と一緒に複製されるベクターであり得る。さらに、宿主細胞のゲノム中に導入される全DNA又はトランスポゾンを一緒に含む、単一のベクター又はプラスミド、又は複数のベクター又はプラスミドが使用され得る。
【0097】
ベクターは好ましくは、形質転換された細胞の容易な選択を可能にする1又は複数の選択マーカーを含む。選択マーカーは、1つの遺伝子であり、その生成物は、殺生物剤又はウィルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求性に対する原栄養要求性、及び同様のものを提供する。
【0098】
糸状菌株に使用するための選択マーカーは、次の群から選択されるが、但しそれらだけには限定されない;amdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph (ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD (硝酸レダクターゼ)、pyrG (オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ) 及びtrpC (アントラニル酸シンターゼ)、並びにそれらの同等物。アスペルギラス・ニジュランス又はアスペルギラス・オリザエのamdS及びpyrG遺伝子及びストレプトミセス・ヒグロスコピカスのbar遺伝子が、アスペルギラス細胞への使用のために好ましい。bar、amdS、pyrG又はhygB遺伝子が、フサリウム細胞への使用のために好ましい。
【0099】
ベクターは好ましくは、宿主細胞ゲノム中へのベクターの安定した組み込み、又は細胞のゲノムに無関係に細胞におけるベクターの自律的複製を可能にする要素を含む。
【0100】
糸状菌株のゲノム中への組み込みのためには、ベクターは、相同又は非相同組換えによるゲノム中へのベクターの安定した組み込みのためのベクター中のポリペプチド、又はいずれか他の要素をコードするヌクレオチド配列に依存する。他方では、ベクターは、宿主細胞のゲノム中への相同組換えによる組み込みを方向づけるための追加の核酸配列を含むことができる。その追加の核酸配列は、染色体における正確な位置での宿主細胞ゲノム中へのベクターの組み込みを可能にする。
【0101】
正確な位置での組み込みの可能性を高めるために、組み込み要素は好ましくは、相同組換えの可能性を高めるために対応する標的配列と高い相同性を示す十分な数の核酸、たとえば100〜10,000個の塩基対、好ましくは400〜10,000個の塩基対、及び最も好ましくは800〜10,000個の塩基対を含むべきである。組み込み要素は、宿主細胞のゲノムにおける標的配合と相同であるいずれかの配列であり得る。さらに、組み込み要素は、非コード又はコード核酸配列であり得る。他方では、ベクターは非相同組換えにより宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得る。
【0102】
自律複製のためには、ベクターはさらに、問題の宿主細胞においてのベクターの自律的な複製を可能にする複製の起点を含んで成る。糸状菌細胞において有用なプラスミド複製開始部位の例は、AMA1及びAMS1である(Gems など., 1991, Gene 98: 61-67; Cullen など., 1987, Nucleic Acids Research 15: 9163-9175; WO 00/24883号)。AMA1遺伝子の単離、及び前記遺伝子を含んで成るプラスミド又はベクターの構成は、WO00/24883号に開示される方法に従って行われ得る。複製の起点は、宿主細胞においてその機能を感温性にする突然変異を有する起点である(例えば、Ehrlich, 1978, Procedings of the National Academy of Sciences USA 75: 1433を参照のこと)。
【0103】
興味ある生物学的物質をコードするヌクレオチド配列の1以上のコピーが、遺伝子生成物の生成を高めるために糸状菌株中に挿入され得る。ヌクレオチド配列のコピー数の上昇は、宿主細胞ゲノム中に配列の少なくとも1つの追加のコピーを組み込むことによって、又はヌクレオチド配列と共に増幅可能な選択マーカー遺伝子を含むことによって得られ、ここで細胞は選択マーカー遺伝子の増幅されたコピーを含み、そしてそれにより、核酸配列の追加のコピーが、適切な選択剤の存在下で前記細胞を培養することによって選択され得る。
【0104】
本発明の組換え発現ベクターを構成するために上記要素を連結するために使用される方法は、当業者に良く知られている(例えば、Sambrookなど., 1989, 前記を参照のこと)。
【0105】
本発明はさらに次の例により記載されるが、但しそれらは本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0106】
培地及び緩衝溶液:
COVE選択プレートは、1L当たり、342.3g のスクロース、 20 ml のCOVE 塩溶液、 10 mM のアセトアミド、 15 mMの CsCl2、 及び 25 又は 30 g のNoble寒天から構成された。
COVE2プレートは、1L当たり、30 g のスクロース、 20 mlの COVE塩溶液、 10 mM のアセトアミド、及び 25 g 又は 30gの Noble寒天から構成された。
COVE塩溶液は、1l当たり、26gのKCl、26gのMgSO4・7H2O, 76gのKH2PO4及び50mlのCOVE微量金属から構成された。
COVE微量金属溶液は、1l当たり、0.04gのNaB4O7・10H2O, 0.4gのCuSO4・5H2O, 1.2gのFeSO4・7H2O, 0.7g又は1gのMnSO4・H2O,0.8gのNa2MoO2・2H2O及び10gのZnSO4・7H2Oから構成された。
【0107】
COVE上部アガロースは、1L当たり342.3gのスクロース、20mlのCOVE塩溶液、10mMのアセトアミド及び10gの低溶融アガロースから構成された。
セルラーゼ−誘発培地は、1L当たり20gのArbocel−天然セルロース繊維(J. Rettenmaier USA LP)、10gのトウモロコシ浸漬固形物(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、1.45gの(NH4)2SO4、2.08gのKH2PO4、0.28gのCaCl2、0.42gのMgSO4・7H2O、0.42mlのトリコダーマ・レセイ微量金属溶液、及び2滴のプルロン酸から構成された。そのpHは、オートクレーブ処理の前、10NのNaOHにより6.0に調節された。
【0108】
トリコダーマ・レセイ微量金属溶液は、1L当たり216gのFeCl3・6H2O、58gのZnSO4・7H2O、27gのMnSO4・H2O、10gのCuSO4・5H2O、2.4gのH3BO3及び336gのクエン酸から構成された。
YP培地は、1L当たり10gの酵母抽出物及び20gのBactoペプトンから構成された。
YPG培地は、1L当たり4g の酵母抽出物、1gのK2HPO4、0.5gのMgSO4及び15.0gのグルコース(pH 6.0)から構成された。
【0109】
PEG緩衝液は、1L当たり、フィルター殺菌された、500gのPEG 4000、10 mMのCaCl2 及び 10 mM のトリス-HCl pH 7.5から構成された。
STCは、1L当たり、フィルター殺菌された、0.8 M又は1 M のソルビトール、 10 mM又は 25 mMのCaCl2 及び 10 mM 又は 25 mMの トリス-HCl pH 7.5 又は pH 8から構成された。
STPCは、STC中、40%PEG4000から構成された。
【0110】
M400 培地(pH 6) は、1L当たり、50 g のマルトデキストリン、 2 gのMgS04・7H20, 2 g のKH2PO4、 4 g のクエン酸、 8 gの酵母抽出物、 2 gのウレア、0.5 gのCaCl2 、及び0.5 mlのAMG微量金属溶液から成った。
AMG微量金属溶液は、1L当たり、6.8 g のZnS04・7H20、 2.5 g の CuSO4・5H2O, 0.24 g のNiC12・6H20、 13.9 gのFeS04・7H20, 13.5 g のMnSO4 ・H20及び3 g のクエン酸から成った。
【0111】
最少培地プレートは、1L当たり6 gのNaN03、 0.52gのKCl、1.52 g のKH2PO4、 1 ml の COVE 微量金属、 1 のグルコース、 500 mgのMgSO4・7H2O、342.3 のスクロース、 及び 20gの Noble寒天(pH 6.5)から構成された。
MLCは、1L当たり、40 gのグルコース、 50 gの大豆粉末 及び 4 g のクエン酸, pH 5.0から構成された。
【0112】
MU−1は、1L当たり260 gのマルトデキストリン(MD-11)、 5gの KH2PO4、 3 g のMgSO4・7H2O、 6 gのK2SO4、 5mlの of AMG 微量金属溶液、 及び2 gのウレア, pH 4.5から構成された。
CM−1寒天プレート(pH6.5)は、1L当たり0.25gの NaCl、 0.5gのMgSO4・7H2O 、1.9 gのK2HPO4、3.6 g のKH2PO4、 0.1 ml の微量金属溶液、 30 gのBacto寒天(Difco)、pH 6.5、 11 ml の10% ウレア、及び 67 mlの30% マルトースから構成された。
【0113】
微量金属溶液(100X)は、1L当たり22 gのZnS04・7H20、11 g のH3BO3、 5 gのMnCl2・4H2O、5gのFeSO4・7H2O、1.6 gのCoCl2・5H2O、1.6 の(NH4) 6Mo7O24、及び 50gのNa4EDTAから構成された。
PDAプレートは、1L当たり39gのジャガイモデキストロース寒天(Difco)から構成された。
【0114】
例1:pAILo1発現ベクターの構成:
発現ベクターpAILo1を、アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ及びアスペルギラス・オリザエリン酸トリオースイソメラーゼについての遺伝子からのプロモーターのハイブリッド(NA2−tpiプロモーター)、アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼターミネーター配列(AMGターミネーター)、及びアスペルギラス・ニジュランスアセトアミラーゼ遺伝子(amdS)を含んで成るpBANe6(アメリカ特許第6,461,837号)を修飾することにより構成した。
【0115】
pBANe6の修飾を、まず、特定部位の突然変異誘発によりamdS選択マーカーから位置2051, 2722及び3397での3個のNcoI制限部位を除去することにより行った。すべての変化は、amdS遺伝子生物の実際のタンパク質配列を未変化にする“サイレント”であるよう企画された。それらの3個の部位の除去を、GeneEditor Site-Directed Mutagenesis Kit (Promega, Madison, WI)により、その製造業者に従って、次のプライマー(下線のヌクレオチドは変更された塩基を表す)を用いて、同時に行った:
AMDS3NcoMut (2050): 5'-GTGCCCCATGATACGCCTCCGG -3' (配列番号1)
AMDS2NcoMut (2721): 5'-GAGTCGTATTTCCAAGGCTCCTGACC-3' (配列番号2)
AMDS1NcoMut (3396): 5'-GGAGGCCATGAAGTGGACCAACGG-3' (配列番号3)。
【0116】
次に、すべての3種の予測される配列変化を含んで成るプラスミドを、QuickChange Mutagenesis Kit (Stratagene, La Jolla, CA)を用いて、特定部位の突然変異誘発にゆだね、位置1643でAMGターミネーターの末端でNcoI制限部位を除去した。次のプライマー(下線のヌクレオチドは変更された塩基を表す)を、突然変異誘発のために使用した:
AMGターミネーターを突然変異誘発するための上方プライマー:
5'-CACCGTGAAAGCCATGCTCTTTCCTTCGTGTAGAAGACCAGACAG-3' (配列番号4);
AMGターミネーター配列を突然変異誘発するための下方プライマー:
5'-CTGGTCTTCTACACGAAGGAAAGAGCATGGCTTTCACGGTGTCTG-3' (配列番号5)。
【0117】
pBANe6の修飾における最後の段階は、pAILo1を生成するために、QuickChange Mutagenesis Kit及び次のプライマー(下線のヌクレオチドは変更された塩基を表す)を用いて、ポリリンカーの開始での新規NcoI制限部位の付加であった:
NA2-tpiプロモーターを突然変異誘発するための上方プライマー:
5'-CTATATACACAACTGGATTTACCATGGGCCCGCGGCCGCAGATC-3' (配列番号6);
NA2-tpiプロモーターを突然変異するための下方プロモーター:
5'-GATCTGCGGCCGCGGGCCCATGGTAAATCCAGTTGTGTATATAG-3' (配列番号7)。
【0118】
例2:pMJ04発現ベクターの構成:
発現ベクターpMJ04を、まず、下記に示されるプライマー993429(アンチセンス)及び993428(センス)を用いて、トリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNAからのトリコダーマ・レセイCeI7Aセロブロヒドロラーゼ1遺伝子(cbh1)ターミネーターをPCR増幅することにより構成した。アンチセンスプライマーを、5’−末端でPacI部位、及びセンスプライマーの5’−末端でSpeI部位を有するよう構築した。トリコダーマ・レセイRutC30(ATCC 56765; Montenecourt and Eveleigh,1979, Adv.Chem.Ser.181 : 289-301)を、トリコダーマ・レセイQm6A(ATCC 13631; Mandels and Reese, 1957、J. Bacteriol. 73: 269-278)から誘導した。
【0119】
プライマー993429(アンチセンス):
5'-AACGTTAATTAAGGAATCGTTTTGTGTTT-3'(配列番号8):
プライマー993428(センス):
5'-AGTACTAGTAGCTCCGTGGCGAAAGCCTG-3'(配列番号9)。
【0120】
増幅反応(50μl)は、1X Reaction Buffer (New England Biolabs, Beverly, MA)、0,3mMのdNTP、100ngのトリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNA(DNeasy Plant Maxi Kit, QIAGEN Inc., Valencia, CAを用いて単離された)、0.3μMのプライマー993429、0.3μMのプライマー993428及び2単位のVentポリメラーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)から構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333 (Hamburg, Germany)においてインキュベートした:94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、40mMのトリス塩基−20mMの酢酸ナトリウム−1mMのニナトリウムEDTA(TAE)緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで229bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN Inc., Valencia, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0121】
得られるPCRフラグメントを、PacI及びSpeIにより消化し、そして同じ制限酵素により消化されたpAILo1中に、Rapid Ligation Kit (Roche, Indianapolis, IN)を用いて連結し、pMJ04(図2)を生成した。
【0122】
例3:pMJ06発現ベクターの構成:
発現ベクターpMJ06を、まず、下記に示されるプライマー993696(アンチセンス)及び993695(センス)を用いて、トリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNAからのトリコダーマ・レセイCeI7Aセロブロヒドロラーゼ1遺伝子(cbh1)プロモーターをPCR増幅することにより構成した。アンチセンスプライマーを、センスプライマーの5’−末端でSacI部位、及びアンチセンスプライマーの5’−末端でNcoI部位を有するよう構築した。
【0123】
プライマー993695(センス):
5'- ACTAGTCGACCGAATGTAGGATTGTT -3'(配列番号10):
プライマー993696(アンチセンス):
5'- TGACCATGGTGCGCAGTCC -3'(配列番号11)。
【0124】
増幅反応(50μl)は、1X Reaction Buffer、0,3mMのdNTP、100ngのトリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNA(DNeasy Plant Maxi Kitを用いて単離された)、0.3μMのプライマー993696、0.3μMのプライマー993695及び2単位のVentポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333 (Hamburg, Germany)においてインキュベートした:94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で60秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで988bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0125】
得られるPCRフラグメントを、NcoI及びSalIにより消化し、そして同じ制限酵素により消化されたpMJ04中に、Rapid Ligation Kitを用いて連結し、pMJ06(図3)を生成した。
【0126】
例4:pMJ09発現ベクターの構成:
発現ベクターpMJ09を、まず、下記に示されるプライマー993843(アンチセンス)及び993844(センス)を用いて、トリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNAからのトリコダーマ・レセイCeI7Aセロブロヒドロラーゼ1遺伝子(cbh1)プロモーターをPCR増幅することにより構成した。アンチセンスプライマーを、5’−末端でPacI及びSpeI部位、及びセンスプライマーの5’−末端でPvuI部位を有するよう構築した。
【0127】
プライマー993844(センス):
5'-CGATCGTCTCCCTATGGGTCATTACC-3'(配列番号12):
プライマー993843(アンチセンス):
5'- ACTAGTTAATTAAGCTCCGTGGCGAAAG-3'(配列番号13)。
【0128】
増幅反応(50μl)は、1X Reaction Buffer、0,3mMのdNTP、100ngのトリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNA(DNeasy Plant Maxi Kitを用いて単離された)、0.3μMのプライマー993844、0.3μMのプライマー993843及び2単位のVentポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333 (Hamburg, Germany)においてインキュベートした:94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で60秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで473bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0129】
得られるPCRフラグメントを、PuvI及びSpeIにより消化し、そしてPacI及びSpeIにより消化されたpMJ06中に、Rapid Ligation Kitを用いて連結し、pMJ09(図4)を生成した。
【0130】
例5:発酵及び菌糸体組織:
トリコダーマ・レセイRutC30を、Mandels and Weber, 1969, Adv. Chem. Ser. 95: 391-413により記載されるようなセルラーゼ誘発標準条件下で増殖した。菌糸体サンプルを、Whatman紙を通しての濾過により収穫し、そして液体窒素においてすばやく凍結した。サンプルを、それらがRNA抽出のために破壊されるまで、-80℃で貯蔵した。
【0131】
例6:発現される配列標識(EST)cDNAライブラリー構成:
全細胞RNAを、例5に記載される菌糸体サンプルから、Timberlake and Barnard(1981, Cell 26 : 29-37)の方法に従って抽出し、そしてRNAサンプルを、1%ホルムアルデヒド−アガロースゲルからのブロットの後、ノザンハイブリダイゼーションにより分析した(Davis など.、1986, Basic Methods in Molecular Biology, Science Publishing Co. , Inc. , New York)。ポリアデニル化されたmRNA画分を、全RNAから、mRNA Separator KitTM (Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って単離した。
【0132】
二本鎖cDNAを、約5μgのポリ(A)+mRNAを用いて、Gubler and Hoffman (1983, Gene 25:263-296)の方法に従って合成し、但しNotI-(dT)18プライマー(Pharmacia Biotech, Inc. , Piscataway, NJ)を用いて、第1鎖合成を開始した。cDNAを、ヤエナリヌクレアーゼ(Boehringer Mannheim Corporation, Indianapolis, IN)により処理し、そして末端を、T4DNAポリメラーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)によりブラント化した。次に、BamHI/EcoRIアダプターを、cDNAのブラント末端に連結した。NotIによる消化の後、cDNAを、TAE緩衝液を用いて、0.7%アガロースゲル電気泳動によりサイズ選択し(約0.7〜4.7kb)、そしてNotI+BamHIにより切断され、そしてウシ腸アルカリホスファターゼ(Boehringer Mannheim Corporation, Indianapolis, IN)により脱リン酸化されたpYES2(Invitrogen, Carlsbad, CA)により連結した。
【0133】
連結混合物を用いて、コンピテントE. コリTOP10細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、その製造業者の説明書に従って形質転換した。形質転換体を、50μg/mlの最終濃度でのアンピシリンにより補充された2YT寒天プレート(Miller, 1992, A Short Course in Bacterial Genetics. A Laboratoru Manual and Handbook for Escherichia coli and Related Bacteria ,Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York)上で選択した。
【0134】
例7:cDNAクローンの鋳型調製及びヌクレオチド配列決定:
例6に記載されるcDNAライブラリーから、約7000個の形質転換体コロニーを、1ml当たり50μgのアンピシリンにより補充された2YTブイヨン100μlを含む96−ウェルマイクロタイタープレート中に、2YTプレートから直接的に採取した。プレートを、200rpmで振盪しながら、37℃で一晩インキュベートした。インキュベーションの後、100μlの無菌50%グリセロールを、個々のウェルに添加した。形質転換体を、個々のウェルにおいて50μgのアンピシリンにより補充された、1mlのMagnificent BrothTM(MacConnell Research, San Diego, CA)を含む二次深皿96−ウェルマイクロタイタープレート(Advanced Genetic Technologies Corporation, Gaithersburg, MD)上で複製した。
【0135】
一次マイクロタイタープレートを、-80℃で凍結貯蔵した。二次深皿プレートを、回転振盪器上で激しく撹拌しながら(300rpm)、37℃で一晩インキュベートした。こぼれ及び汚染を防ぐために、及び十分な通気を可能にするために、個々の二次培養物プレートを、ポリプロピレンパッド(Advanced Genetic Technologies Corporation, Gaithersburg, MD)及びプラスチック製マイクロタイタープレート蓋により被覆した。
【0136】
DNAを、個々のウェルから、Utterback など (1995, Genome Sci. Technol. 1:1-8)により改良されたようなAdvanced Genetic Technologies Corporation (Gaithersburg, MD)の96−ウェルMiniprepキットプロトコールを用いて単離した。単一−通過DNA配列決定を、色素−ターミネーター化学(Giesecke など 1992, Journal of Virology Methods 38: 47-60)及び下記T7配列決定プライマーを用いて、Perkin-Elmer Applied Biosystems Model 377 XL Automated DNA Sequencer (Perkin-Elmer/Applied Biosystems, Inc. , Foster City, CA)により行った:
T7プライマー:5'-TAATACGACTCACTATAGGG-3'(配列番号14)。
【0137】
例8:cDNAクローンのDNA配列データの分析:
ヌクレオチド配列データを、性質及びベクター配列について詳細に調べ、そしてDNA配列の末端での不明瞭な塩基部分を整え、そしてすべての配列を、PHRED/PHRAP ソフトウェアー (University of Washington, Seattle, WA)の助けにより、お互い比較した。得られるコンチグ及びシングルトンを、6種の枠で翻訳し、そしてBLOSUM62マトリックスを用いて、改良されたSmith-Watermanアルゴリズムにより、GeneMatcherTMソフトウェアー(Pasadena Inc. , Pasadena, CA)を用いて、公的に入手できるタンパク質データベースに対して調査した。
【0138】
例9:ファミリー6セロビオヒドロラーゼII(CeI6A)をコードするcDNAクローンの同定:
ファミリー6セロビオヒドロラーゼ(CeI6A)をコードする推定上のcDNAクローンを公的に入手できるデータベース、例えばSwissprot, Genpept及びPIRに寄託されているタンパク質配列に、アセンブリーされたESTの推定されるアミノ酸配列を比較することにより同定した。1つのクローン、すなわちトリコダーマ・レセイEST TrO749を、配列番号15に示されるような1413bpの読取枠、及び配列番号16に示されるような推定されるアミノ酸配列を含む、1747bpのpYES2挿入体を表すヌクレオチド配列分析のために選択した。トリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼIIを含むプラスミドを、pTr0749を命名した。
【0139】
例10:pSMai148発現ベクターの構成:
発現ベクターpSMai148を、トリコダーマ・レセイCeI6AセロヒドロラーゼII遺伝子が誘導され、そしてトリコダーマ・レセイRutC30株におけるトリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子の発現のサイレンシングのために意図される二本鎖−RNA(ds-RNA)の転写のために構成した。プラスミドpSMai148を、下記に示されるプライマー994991(アンチセンス)及び994990(センス)を用いて、pTr0749からの210bpのトリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼIIコード領域をPCR増幅することにより生成した。アンチセンスプライマーを、5’−末端でEcoRI部位、及びセンスプライマーの5’末端でNcoI部位を有するよう構築した:
【0140】
プライマー994991(アンチセンス):
5'-GGAATTCTAGTTCTTATATTTGGCGACGCCACCATCT-3'(配列番号17);
プライマー994990(センス):
5'-CATGCCATGGAAAGGTTCCCTCTTTTATGTGGCTAG-3'(配列番号18)。
【0141】
増幅反応(50μl)は、1×ThermoPol反応緩衝液、0.3mMのdNTP, 10ngのpTr0749, 0.3μMのプライマー994990, 0.3μMのプライマー994991、及び2.5単位のTaqポリメラーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)から構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで227bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0142】
別のPCRを、下記に示されるプライマー994993(アンチセンス)及び994992(センス)を用いて、pTr0749からのトリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼIIコード領域の337bpフラグメントを増幅するために実施した。アンチセンスプライマーを、5’−末端でEcoRI部位、及びセンスプライマーの5’末端でPacI部位を有するよう構築した:
プライマー994993(アンチセンス):
5'-GGAATTCTGACTGAGCATTGGCACACTTTGGAGTAC-3'(配列番号19);
プライマー994992(センス):
5'-CCTTAATTAAAAAGGTTCCCTCTTTTATGTGGCTAG-3'(配列番号20)。
【0143】
増幅反応(50μl)は、1×ThermoPol反応緩衝液、0.3mMのdNTP, 10ngのpTr0749、0.3μMのプライマー994992, 0.3μMのプライマー994993、及び2.5単位のTaqポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで354bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0144】
得られるトリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼII PCRフラグメントを、PacI及びEcoRIにより消化し、そしてNcoI及びEcoRI消化されたトリコダーマ・レセイCeI6AセロビオヒドロラーゼII PCRフラグメント(第1のPCRからの)の下流に逆方向の配向で連結した。末端−末端反復体(図5)を、T4 DNAリガーゼ(Roche, Indianapolis, IN)を用いて、その製造業者のプロトコールンに従って、PacI及びNcoI消化されたpMJ09ベクター中に連結し、pSMal148(図6)を生成した。
【0145】
例11:Cel6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子の逆方向反復体フラグメントを有する発現構造体によるトリコダーマ・レセイの形質転換:
二本鎖RNA−介在性(ds-RNA)干渉がトリコダーマ・レセイに存在することを示すために、Cel6AセロビオヒドロラーゼII配列の自己−相補的ヘヤーピンRNAを発現するpSMai148発現ベクターを用いて、トリコダーマ・レセイRutC30プロトプラストを形質転換した。対照として、pMJ09プラスミド(“空のベクター”)(図4)、すなわちpSMai148の親ベクターがまた包含された。両構造体は、単独の窒素源としてのアセトアミド上での増殖のための選択を提供するamdS遺伝子を含み、そしてpSMai148プラスミドにおけるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII配列を、強いセルロース−誘発性トリコダーマ・レセイCel7AセロビオヒドロラーゼIプロモーターの制御下に配置した。
【0146】
プロトプラスト調製及び形質転換を、Penttilaなど.,1987, Gene 61: 155-164による改良されたプロトコールを用いて行った。手短には、トリコダーマ・レセイRutC30を、2%(w/v)のグルコース及び10mMのウリジンにより補充されたYP培地25mlにおいて、27℃で17時間、軽い撹拌(90rpm)下で培養した。菌糸体を、Millipore Vacuum Driven Disposable Filtration System (Millipore, Bedford, MA)を用いて濾過により集め、そして脱イオン水により2度及び1.2Mのソルビトールにより2度、洗浄した。
【0147】
プロトプラストを、1ml当たり15mgのGlucanex(商標)200 G (Novozymes Switzerland AG, Neumatt, Switzerland)及び1ml当たり0.36単位のキチナーゼ(Sigma Chemical Co. , St. Louis, MO)を含む1.2Mのソルビトール20mlに、洗浄された菌糸体を、軽く振盪(90rpm)しながら34℃で15〜25分間、懸濁することにより生成した。プロトプラストを、400×gで7分間、遠心分離することにより集め、そして1.2Mの冷ソルビトールにより2度、洗浄した。プロトプラストを、血球計を用いて計数し、そしてSTC1ml当たり1×108個のプロトプラストの最終濃度に再懸濁した。過剰のプロトプラストを、Cryo 1℃Freezing Container (Nalgene Rochester, NY)において、-80℃で貯蔵した。
【0148】
約7μgのPmeI消化された発現プラスミド(pSMai148又はpMJ09)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、そして軽く混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、混合し、そして室温で30分間インキュベートした。次に、STC(3ml)を添加し、混合し、そしてCOVEプレートにプレートした。そのプレートを28℃で5〜7日間インキュベートした。形質転換体を、COVE2プレート上で継代培養し、そして28℃で増殖した。
【0149】
例12:SDS−ポリアクリルアミドゲルによるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIタンパク質の検出:
トリコダーマ・レセイCel6AセロピオヒドロラーゼII逆方向反復体フラグメントを有する20の形質転換体(SMA148−01〜SMA148〜20)、及び“空のベクター”を含む10の形質転換体(MJ09−01及びMJ09−10)を、ランダムに選択し、そしてpH6.0での25mlのセルラーゼ−誘発性培地を含む125mlの反らせ板付振盪フラスコにおいて培養し、形質転換体の胞子により接種し、そして28℃及び200rpmで7日間インキュベートした。トリコダーマ・レセイRutC30を対照として使用した。培養物ブイヨンサンプルを、接種後7日間で除去し、15,700×gで5分間、微小遠心分離機において遠心分離し、そして上清液を新しい管に移した。
【0150】
トリコダーマ・レセイCelaセロビオヒドロラーゼIIサイレンシングの程度を、SDS−PAGEゲル上で全ブイヨンを分析することによりタンパク質レベルを最初に評価した。SDS−PAGEを、CriterionTM Cell (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)と共にCriterionTM トリス−HClゲル(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて行った。5μlの7日目サンプルを、2倍濃度のLaemmli Sample Buffer (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)に懸濁し、そして5%β−メルカプトエタノールの存在下で3分間、煮沸した。すべてのサンプルを、ポリアクリルアミドゲル上に負荷し、そして1×トリス/グリシン/SDS実施緩衝液(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)における電気泳動にゆだねた。得られるゲルを、Bio-SafeTM Coomassie Stain (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)により染色した。
【0151】
SDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向反復体フラグメント(SMA148〜SMA148−20)を担持するトリコダーマ・レセイRutC30形質転換体の大部分が、“空のベクター”(pMJ09−01〜pMJ09−10)を有する形質転換に比較して、有意に低い量のトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIタンパク質を生成したことを示した。1つの形質転換体(形質転換体14)は、タンパク質の完全な欠失を示した。
【0152】
種々の程度のSDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIタンパク質低下を示す6個のSMA148形質転換体(形質転換体1, 2, 11, 12, 13, 14)、及び2個の“空のベクター”形質転換体(MJ09−03及びMJ09−04)を、さらなる分析のために選択した。2回の単一を、それらの形質転換体に対して行い、純粋な株を得た。それらの単一単離された形質転換体を、25mlのセルラーゼ−誘発培地(pH5.0)において28℃で増殖した。さらに、宿主株(トリコダーマ・レセイRutC30)、及びトリコダーマ・レセイCel6A遺伝子が相同組換えによりノックアウトされている正の対照株(トリコダーマ・レセイSaMe02)をまた、同じ条件下で培養した。上清液及び菌糸体の両者を、接種の3日後、それらのサンプルの個々から集め、そして前記のようなSDS−PAGE分析にゆだねた。
【0153】
SDS−PAGEは、単一−胞子単離がさらに、たぶん、胞子精製の結果として、よりホモ接合になる形質転換体のために、SDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIのレベルを低めたことを示した。
【0154】
例13:ノザンブロットによるSDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの検出:
ノザンハイブリダイゼーションを、株におけるSDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向反復体フラグメント(pSMai148)の組込みがSDS−PAGE分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの量の低下をもたらすかどうかを決定するために行った。全RNAを、例11において得られる、凍結された菌糸体から、FenozolTM(Active Motif, Carlsbad, CA)を用いて、及びその製造業者によりわずかに改良されたプロトコールに従って、抽出した。
【0155】
手短には、凍結された菌糸体を、少数のドライアイスチップと共に電気コーヒーグラインダーにおいて細かな粉末に粉砕した。粉砕された菌糸体を、20mlのFonozolTMと共に混合し、かき混ぜ、そして50℃の水浴において15分間インキュベートし、この後、5mlのクロロホルム(Sigma, St. Louis, MO)を添加し、かき混ぜ、そして室温で10分間、放置した。次に、そのサンプルを、700×gで室温で20分間、遠心分離し、そして水性相を新しい管に移し、そして等体積のフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコールを添加した。サンプルをかき混ぜ、そして700×gで10分間、遠心分離し、そして上部水性層を、等体積のクロロホルムに添加した。
【0156】
サンプルをさらに、700×gで10分間、遠心分離し、そして水性層を、3Mの酢酸ナトリウム(pH5.2)0.5ml及び6.25mlのイソプロパノールを含む管に移した。サンプルを混合し、室温で15分間インキュベートし、そして13400×gで30分間、遠心分離し、RNAを回収した。RNAを、70%エタノールにより洗浄し、遠心分離し、乾燥し、そしてDEPC−水に再懸濁した。抽出されたRNAの量及び質を、RNA 6000 Nano Kit Technologies, Wilmington, DE)と共に、Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies, Wilmington, DE)上で、その製造業者のプロトコールに従って評価した。
【0157】
単離された全RNAを、1%アガロース/ホルムアルデヒドゲル上での4〜6時間の電気泳動により分別し、そしてTurboblotter(Schleicher & Schuell BioScience, Keene, NH)を用いて、Nytran SuperCharge membrane (Schleicher & Schuell BioScience, Keene, NH)上に14〜16時間、その製造業者の推薦に従ってブロットした。膜を、下記に示されるプライマー996118(アンチセンス)及び996117(センス)を用いて、PCRの間、ジゴキシゲニン−11−dUTPの組込みにより合成された、505bpのジゴキシゲニン−ラベルされたトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIプローブによりハイブリダイズした:
【0158】
プライマー996118(アンチセンス):
5'-AAATCGTGGCGCACTGCTGT-3'(配列番号21);
プライマー996117(センス):
5'-TGAGTGCATCAACTACGCCG-3'(配列番号22)。
【0159】
増幅反応(50μl)は、1×ThermoPol Reaction Buffer, 5μlのPCR DIGラベリングミックス(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)、10ngのpTr0749, 0.3μMのプライマー996118、0.3μMのプライマ996117及び2.5単位のTaqポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333におけるインキュベートした:94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。5μlのPCR生成物を、TAE緩衝液を用いて1.5%アガロースゲル上でサイズ選択し、臭化エチジウムにより染色し、そしてUVトランスイルミネーター下で可視化した。ジゴキシゲニンの組込みを、分子質量の上昇により示した。
【0160】
ハイブリダイゼーションを、EIG Easy Hyb緩衝液(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)において50℃で15〜17時間、行った。次に、膜を、2×SSC+0.1%SDSにおいて室温で5分間、高い緊縮条件下で洗浄し、続いて0.1×SSC+0.1%SDSにおいて、それぞれ50℃で15分間、2回洗浄した。プローブ−標的物ハイブリッドを、化学ルミネッセントアッセイ(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)により、その製造業者の説明書に従って検出した。
【0161】
膜を、50%ホルムアミド/5%SDS/50mMのトリス−HCl(pH7.5)において80℃で2時間、剥離し、そして前と正確に同じ条件を用いて調製されたトリコダーマ・レセイアクチン1遺伝子(Accession Number X75421) (Matheucciなど., 1995, Gene 161: 103-106)をコードする407bpのジゴキシゲニン−ラベルされたプローブにより再プローブした。4.07bpのアクチン1遺伝子プローブを、下記に示されるプライマー996120(アンチセンス)及び996119(センス)を用いて、PCRの間、ジゴキシゲニン−11−dUTPの組込みにより合成した。
【0162】
プライマー996120(アンチセンス):
5'-GTCAACACGACGAATGGCGT-3' (配列番号23)
プライマー996119(センス):
5'-TGATCGGTATGGGTCAGAAGG-3' (配列番号24)
【0163】
増幅反応(50μl)は、1×ThermoPol Reaction Buffer, 5μlのPCR DIGラベリングミックス(Roche, Indianapolis, IN)、100ngのトリコダーマ・レセイRutC30ゲノムDNA(DNeasy Plant Maxi Kitを用いて単離された), 0.3μMのプライマー996119、0.3μMのプライマ996120及び2.5単位のTaqポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333におけるインキュベートした:94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。
【0164】
5μlのPCR生成物を、TAE緩衝液を用いて1.5%アガロースゲル上でサイズ選択し、臭化エチジウムにより染色し、そしてUVトランスイルミネーター下で可視化した。ジゴキシゲニンの組込みを、分子質量の上昇により示した。
【0165】
ノザンは、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向反復体配列を有した形質転換体が、“空のベクター”(負の対照)を受けた形質転換体及び宿主株(トリコダーマ・レセイRutC30)に比較して、実質的に低いトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII転写体を生成したことを示した。この結果は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAが検出され得ないが、但しアクチン1遺伝子転写体(アクチン1が同等のRNA負荷のための対照として使用された)は明らかに存在する形質転換体11及び14において特に注目される。トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAにおける明らかな100%抑制は、それらの形質転換体におけるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIタンパク質において100%低下に強く相互関係し、このことは、トリコダーマにおけるRNA干渉が翻訳のために利用できる標的mRNAの量の低下に起因することを示唆する。
【0166】
例14:同時逆転写−PCRによるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの検出:
異なった形質転換体におけるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの相対的発現レベルを、同時逆転写−PCR(RT−PCR)により定量化した。全RNAを、RT−PCR反応のための鋳型として作用するように記載されるような個々の形質転換体から抽出した。トリコダーマ・レセイアクチン1遺伝子を、内部対照として使用した。プライマーを、Primer Express software (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて企画した。プライマー列挙が好ましい等級に従って生成した後、対を、その3’末端で最後の5個の塩基において2個以下のG+Cを有する第1組のプライマーを選択することにより選択した。次のプライマーを使用した:
【0167】
トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII前方向プライマー(996006):
5'-CTGGTCCAACGCCTTCTTCAT- 3'(配列番号25)
トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向プライマー(996007):
5'-GGAACGTAGTGAGGCTCGCTAA- 3'(配列番号26)
トリコダーマ・レセイアクチン前方向プライマー(996121):
5'-CATGGCTGGTCGTGATCTTACC- 3'(配列番号27)
トリコダーマ・レセイアクチン逆方向プライマー(996122):
5'-CCTTGATGTCACGGACGATTTC- 3'(配列番号28)。
【0168】
RT−PCRアッセイを、ABI Prism(商標)7700 System (Applied Biosystems, Foster City, CA)及びSYBR(商標)Green PCR マスターミックス (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて行った。個々の反応混合物は、12.5μlのSYBR(商標)Green PCR マスターミックス、6単位のSuperscriptII (Invitrogen, Carisbad, CA)、0.83μMの前方向プライマー、0.83μMの逆方向プライマー及び種々の濃度のRNA鋳型を、25μlの合計体積で含んだ。逆転写を50℃で30分間、行い、続いてSuperscriptIIの不活性化及びAmpliTaq(商標)の活性化を95℃で10分間、行った。
【0169】
40のPCRサイクルを、次の条件下で行った:95℃で15秒の変性、続いて60℃で1分のアニーリング及び拡張、個々のサンプルを三重反復して調製した。SuperscriptIIを有さない負の対照は、特異性を評価するために試験されるあらゆるプレート上で作用した。さらに、SYBR(商標)Greenは二本鎖DNAに非特異的に結合するので、PCR増幅生成物のアリコートを、TAE緩衝液を用いて2.0%アガロースゲル上で電気泳動し、非特異的増幅の不在を確認した。
【0170】
ABI PRISM 7700 Sequence Detection Systemから得られるデータを、ABIユーザーBulletin#2(Applied Biosystems, Foster City, CA)に記載される”Standard Curve Method for Relative Quantitative”を用いて分析した。この方法においては、処理されたサンプルの発現の量を、未処理の対照サンプルに対して計算した。処理されたサンプルの量を、標準曲線から決定し、そして未処理の対照サンプルの量により割り算した。従って、未処理のアンプルを、1×サンプルとして命名し、そしてすべての他の量を、未処理のサンプルに対するn−倍差異として表された。次に、処理されたサンプル量を、内因性対照アクチン1に対して標準化し、個々の反応に添加する全RNAの量の差異を説明した。
【0171】
図7は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの相対的発現レベルが、ノザンハイブリダイゼーションデータと強く相互作用する“空のベクター対照”に比較して、形質転換体14及び負の対照株(SaMe02)において最低であったことを示す。
【0172】
例15:抑制減法ハイブリダイゼーション(SSH)を用いてのトリコダーマ・レセイからの減法され、そして標準化されたcDNAライブラリーの構成:
トリコダーマ・レセイ株RutC30を、基本CelluclastTM培地及び発酵条件を用いて、2LのApplikonライブラリー発酵器において増殖した。炭素源は、グルコース、セルロース、又は前処理され、そして洗浄されたトウモロコシストーバを包含した。すべては、1L当たり52gのグルコースに等しい炭素に基づいて負荷された。発酵方法は、28℃の温度、pH4.5及び約120時間の増殖時間を用いた。
【0173】
炭素源の他に、すべての発酵は、1L当たり次の培地成分を含んだ:5gのグルコース、10gのトウモロコシ浸漬固形物、2.08gのCaCl2、3.87gの(NH4)2SO4, 2.8gのKH2PO4、1.63gのMgSO4・7H2O、0.75mlの微量金属及び1.8mlのプルロン酸。微量金属溶液は、1L当たり、216gのFeCl3・6H2O、58gのZnSO4・7H2O、27gのMnSO4・H2O、10gのCuSO4・5H2O、2.4gのH3BO3及び336gのクエン酸から構成された。菌糸体のサンプルを、接種後、1,2,3,4及び5で収穫し、そしてMiraclothTM(Calbiochem, La Jolla, CA)を通しての濾過により培養培地から、すばやく分離し、液体窒素において凍結し、そして−80℃で貯蔵した。
【0174】
全細胞RNAを、グルコース、セルロース又は前処理されたトウモロコシストーバ上で増殖された、凍結細胞(例1)から、Timberlake and Barnard, 1981, 前記の方法のわずかに改良された方法を用いて単離した。RNA抽出緩衝液を、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸(80mlのDEPC−処理された水中、1.6g)の溶液に、p−アミノサリチル酸(DEPC−処理された水中、9.6g)の新しく調製された溶液を添加することにより調製した。この混合物を、40mlの5×RNB溶液(1Mのトリス−HCl、pH8.5, 1.25MのNaCl、0.25MのEGTA)に撹拌しながら添加した。
【0175】
凍結菌糸体を、電気コーヒーグラインダーにおいて、少数のドライアイスチップと共に細かな粉末に粉砕した。粉砕された菌糸体を、氷上での20mlのRNA抽出緩衝液に直接的に注ぎ、そして等体積のTE−飽和フェノールを添加した。激しい撹拌の後、サンプルを2500rpmで10分間、遠心分離し(H1000Bローターを備えたSorvall RT7遠心分離器)、相を分離した。水性相を、10mlのフェノール及び10mlのクロロホルム−イソアミルアルコール(24:1)を含む新規管に移し、同時に追加の5mlの抽出緩衝液を、フェノール相に添加した。後者の混合物を、68℃で5分間インキュベートし、ポリソーム及び界面材料に閉じ込められるRNAを生成した。
【0176】
インキュベーションに続いて、管を、2500rpmで10分間、遠心分離し(H1000Bローターを備えたSorvall RT7遠心分離機)、そして水性相を、第1の抽出から得られた水性相と組合した。この混合物を、界面でのタンパク質がもはや存在しなくなるまで、フェノール−クロロホルムによる反復された抽出にゆだねた(通常、5又は6度)。RNAを、0.3Mの酢酸ナトリウム(pH5.2)及び50%イソプロパノールによる沈殿に続いて、遠心分離(12,000×gで30分)により回収した。実験室−規模の発酵器において生成される約1〜2gの凍結された菌糸体から成る個々のサンプルから、0.4〜1.8mgの全細胞RNAを得た。
【0177】
セルロース及びPCS上で増殖された培養物からのRNAの質を、ホルムアルデヒド−アガロースゲル電気泳動、続いてトリコダーマ・レセスcbh1特異的プローブによるノザンブロット及びハイブリダイゼーション(Thomas, 1980, Peoc. Nat. Acad. Sci. USA 77: 5201-5205)により評価した。cbH1プローブフラグメントを、EMBLデータベース(入手番号E00389)から入手できる公開されたヌクレオチド配列情報に基づいて標準のPCR方法により増幅した。
【0178】
プローブを、ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)によりラベルし、そしてNorth2South Direct HRP Labeling and Detection Kit (Pierce, Rockford, IL)において提供される緩衝液及びプロトコールを用いて55℃でハイブリダイズした。ブロットを、2×SSC及び0.1%SDSにおいて、55℃でそれぞれ5分間、3度洗浄し、続いて2×SSC(SDSなし)において、それぞれ5分間、さらに3度洗浄した。X−線フィルムへのブロットの暴露に続いて、個々のレーンにおける実質的にすべてのハイブリダイゼーションシグナルが、18SリボソームRNAバンドのわずかに上の位置に移動する1.8kbのcbh1 mRNA種に含まれたことは明白であった。オートラジオグラム又は臭化エチジウム染色されたゲルのいずれか上での有意なmRNA分解の証拠は存在しなかった。
【0179】
ポリアデニル化された(ポリA+)mRNA画分を、OligotexTM mRNA単離キットを用いて、その製造業者の説明書(QIAGEN, Valencia, CA)に従って精製した。それらのサンプルの個々からのポリA+ mRNAの収量は、2μg〜25μgであった。続いて、mRNA画分の個々を、トリコダーマ・レセイγ−アクチン及びcbh1遺伝子に由来するHRP−ラベルされたプローブを用いて、ノザンブロットハイブリダイゼーションにより分析した。γ−アクチンプローブフラグメントを、標準のPCR方法及び次の遺伝子−特異的プライマーにより増幅した:
【0180】
5'-CCAGACATGACAATGTTGCCGTAG- 3'(配列番号29)
5'-TTTCGCTCTTCCTCACGCCATTG- 3'(配列番号30)。
【0181】
予測されるように、ハイブリダイゼーションシグナルは、個々のレーンにおけるγ−アクチン及びcbh1 mRNA(それぞれ、約1.2kb及び1.8kb)に対応するバンドに位置し、このことは、mRNAサンプルが高い品質のものであり、そしてcDNA合成のために適切であることを示唆する。
【0182】
Diatchenkoなど., 1996、前記により記載される抑制減法ハイブリダイゼーション(SSH)方法を用いて、セルロース−及びPCS−誘発された配列のために富化されたトリコダーマ・レセイRutC30からのcDNAプールを生成し、そして標準化し、まれな転写体の回収を助けた。下記表1は、それらの実験のために使用されるドライバー及びテスターcDNAの組合せを列挙する。
【0183】
【表1】
【0184】
表1におけるSSH反応からの得られるcDNAプールを用いて、セルロース−及びPCS−誘発された配列の減法ライブラリーを生成した。cDNAの合成のために、個々の時点(1〜5日)に由来する400ngのポリA+ mRNAを、合計2μgの鋳型のために組合した。cDNAの合成及び減法を、PCR-SelectTMキット(Clontech, Palo Alto, CA)を用いて行った。前記方法は、Diatchenkoなど., 1996, 前記により概略されるような抑制減法ハイブリダイゼーション(SSH)の方法に基づかれる。最初にmRNAを、グルコース、セルロース及びPCS上で増殖されたトリコダーマ・レセイRutC30の3種の別々の発酵から、PCR-SelectTMキット(Clontech, Palo Alto, CA)により供給される試薬を用いて、二本鎖cDNAに転換した。
【0185】
特別に発現されたcDNAは、“テスター”cDNAプール(すなわち、セルロース又はトウモロコシストーバ上で増殖された細胞からの)及び“ドライバー”cDNAの両者において存在したが、しかし“ドライバー”プールにおいては、より低いレベルで存在した(表1)。それらのcDNAプールの両者を、4個の塩基対パリンドロームを認識し、そしてブラント末端フラグメント(GT/AC)を生成する制限酵素RsaIにより消化した。次に、テスターcDNAプールを、2種のサンプルに分け、そして2種の異なったアダプターオリゴヌクレオチド(Clontech PCR-SelectTMキットにより供給される)により連結し、テスターcDNAの2種の集団をもたらした。アダプターは、個々のアダプターの長い鎖のみがcDNAの5’末端に共有結合されるよう、5’−リン酸基を用いないで企画した。
【0186】
Clontech PCR−SelectTMキットにおいて特定される条件を用いての2種のハイブリダイゼーションの第1において、過剰のドライバーcDNAを、テスターcDNAの個々の部分に付加した。その混合物を、95℃に加熱することにより変性し、次にアニーリングした。4タイプの分子を、このアニーリングにより生成した(a, b, c及びd分子として命名された)。タイプa分子は、ハイブリダイゼーションの二次動力学は、選択的にbタイプ分子を形成するプールにおけるより多くの分子に関して早いので、等濃度の高−及び低−発生cDNAを包含した。
【0187】
同時に、タイプa分子は、通常の非標的物cDNAがドライバーによりタイプc分子を形成したので、特別に発現された(例えば、セルロース−又はPCS−誘発された)配列のために有意に富化された。第2のハイブリダイゼーションにおいては、一次ハイブリダイズされた生成物の2種のプールを、個々のテスターサンプルからのタイプa分子が結合し、そして新規のタイプeハイブリッドを形成するよう、組合した。それらは、個々の末端で異なったアダプター分子を有する、二本鎖テスター分子であった。新たに変性されたドライバーcDNAをまた付加し、特別に発現された配列のためにe分子のプールをさらに富化した。
【0188】
SSH方法の最終段階においては、特別に発現されたcDNAを、PCR(PCR−SelectTMキットにおいて特定される条件)により選択的に増幅した。2種の異なったプライマーアニーリング部位を有するタイプe分子のみを、指数的に増幅した。
【0189】
品質調査として、約360のランダムに採取されたコロニーからのcDNAクローンを、Amersham TempliPhiキットを用いてローリングサークル増幅により精製し、そしてDNA配列決定により分析した(反応1から70、反応2から96、及び反応3から192)。Transcript AssemblerTMソフトウェアー(Paracel, Inc. , Pasadena, CA)を用いての配列のクラスター化は、個々のプールが高い%の非冗長性のクローンを含んだ(反応1に関して76%、反応2に関して90%及び反応3に関して67%)ことを示した。
【0190】
さらに、コンチグ(同じcDNAのオーバーラップする配列)は、平均わずか2つの配列を含んだこの分析において同定した。集合的に、それらの観察は、ライブラリーの効果的標準化がSSH反応の間、達成され、その対応するcDNAライブラリーにおいて低レベルの冗長性を生成したことを示した。それらの特別に発現された配列が、最終減法のcDNAプールにおいて非常に富化され、そしてハイブリダイゼーションプローブとして又は減法ライブラリーを創造するために有用であった。
【0191】
SSH方法により生成された、減法され、そして標準化されたcDNA画分を、pCRII−TOPO(Invitrogen, Carlsbad, CA)により連結し、そしてその連結混合物を用いて、エレクトロコンピテントE. コリTOP10細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)を形質転換した。形質転換体を、250μg/mlのX−Gal(IPTGを含まない)及び100μg/mlの最終濃度でのアンピシリンを含むLB寒天プレート(Miller, H. 1992. A short course in bacterial genetics. A laboratory manual and handbook for Escherichia coli and related bacteria. Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY)上で選択した。
【0192】
SSH cDNAライブラリーにおける減法及び標準化の効率を評価するために、次の2種のアプローチを用いた:コロニーハイブリダイゼーション及び個々のSSHライブラリーからのランダムクローンの配列決定。コロニーハイブリダイゼーションのための方法は、Birren など., 1998, Genome Analysis, A Laboratory Manual, Vol.2, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NYに詳細に記載されている。コロニー−ハイブリダイゼーション分析は、個々の減法された[PCS−グルコース(SG)、セルロース−グルコース(CG)、PCS−セルロース(SC)]及び減法されていない(セルロース、PCS)cDNAライブラリーからの約700の独立したコロニー、並びにDIG−ラベルされたcbh1プローブ(多くの転写体)、及びγ−アクチンプローブ、すなわちハウスキーピング遺伝子を表す適度に多くの転写体を包含した(表2)。
【0193】
【表2】
【0194】
cbh1は減法されていないセルロース及びPCSライブラリーにおいてかなり多いが(それぞれ、3.3%及び3.6%)、減法されたSG及びCGライブラリーは、ほとんど10倍低いcbh1クローンを含み、このことは、多くの転写体が都合良く標準化されたことを示唆した。SCライブラリーのコロニー−ハイブリダイゼーションは、非常に低い発生率のcbh1を示し(わずか0.1%のcbh1クローン)、このことは、高いレベルのcbh1を発現する細胞集団によりSSHを行う場合、この多くの転写体の効果的な減法を示唆する。
【0195】
約360のランダムに採取されたコロニーからのcDNAクローンを、ローリングサークル増幅(RCA) (Dean など., 2001, Genome Res. 11: 1095-1099)により精製し、そしてDNA配列決定により分析した(反応1から70、反応2から96、及び反応3から192)。Transcript AssemblerTMソフトウェアー(Paracel, Inc. , Pasadena, CA)を用いての配列のクラスター化は、個々のプールが高い%の非冗長性のクローンを含んだ(反応1に関して76%、反応2に関して90%及び反応3に関して67%)ことを示した。さらに、コンチグ(同じcDNAのオーバーラップする配列)は、平均わずか2つの配列を含んだこの分析において同定した。集合的に、それらの観察は、ライブラリーの効果的標準化がSSH反応の間、達成され、その対応するcDNAライブラリーにおいて低レベルの冗長性を生成したことを示した。
【0196】
例16:DNAマクロアレイの加工及び使用:
合計3,608個の白色及び薄青色のコロニーを、例15に記載される減法され、そして標準化されたcDNAライブラリーから採取した。それらを、96−ウェルプレートにおいて、1L当たり100μgのアンビシリンにより補充されたLB培地において一晩、増殖し、そして-80℃で凍結した。凍結された細胞からのプラスミドDNAのローリングサークル増幅(Dean など.,2001, Genome Res. 11 : 1095-1099)を、Amersham (Arlington Heights, IL)からのTempiPhiTM試薬を用いて行った。
【0197】
それらの反応の高処理プロセッシングを、Beckman Blomek(商標)Fx ロボット(Beckman Counlter, Inc., Fullerton, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って行った。次に、増幅され、そして希釈されたゲノムクローンを、Eisen and Brown, 1999, Methods Enzymol. 303: 179-205により記載される装置及び方法を用いて、ポリ−L−リシン被覆されたガラス顕微鏡スライド上に、384−ウェルプレートからスポットした。
【0198】
例17:遺伝子サイレンシングベクターを含むトリコダーマ・レセイ株の分析:
いくつかのトリコダーマ・レセイ株のRNAプロフィールを、下記表3に示されるようにして比較した。蛍光プローブを、第1鎖cDNA(全RNAは、Active Motif, Carlsbad, CAから市販されているFenozol試薬を用いて調製された)中にアミノアリル−dUTPを組込む、全RNAの逆転写により調製した。続いて、アミノ−cDNA生成物を、Cy3又はCy5単機能的反応性色素のいずれかへの直接的なカップリングによりラベルし(Amersham, Arlington Heights, IL)、そして前記のようにして精製した(Berka など., 2003, Proc. Nat. Acad. Sci. USA100: 5682-5687)。
【0199】
Cy3及びCy5ラベルされたプローブを組合し、精製し、そして真空下で乾燥し、15.5μlの水に再懸濁し、そして次のものと組合した:3.6μlの20×SSC、2.5μlの250mMのHEPES(pH7.0)、1.8μlのポリーdA(500μg/ml)及び0.54μlの10%SDS。ハイブリダイゼーションの前、溶液を、0.22μmのフィルターにより濾過し、95℃に2分間、加熱し、そして室温に冷却した。プローブを、カバーガラス下のマイクロアレイに適用し、湿潤されたチャンバーに配置し、そして63℃で一晩(15〜16時間)インキュベートした。走査の前、アレイを、0.03%SDSと共に1×SSC、0.2×SSC及び0.05×SSCにおいて連続的に洗浄し、そして約100×gで2分間、遠心分離し、過剰の液体を除去した。
【0200】
マイクロアレイスライドを、Axon 4000B scanner (Molecular Devices Corp., Sunnyvale,CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って映像化した。マイクロアレイスポットについての蛍光強度値を測定し、そして個々のスポットについてのCy5:Cy3(650nm:532nm)強度の比を、バックグラウンド減法に続いて計算した。強度比が1〜2倍以上に変化するそれらのスポットは、特別に発現されていると思われた。
【0201】
【表3】
【0202】
実験1及び3において、それらの蛍光強度比において2倍の変化の基準を満足する合計72のスポットを同定し、そして従って、特別に発現された配列として分離した。DNA配列分析は、63/72(88%)がcbh2−特異的転写体に対応することを示した。残る9個のスポットは、未知又は仮説の遺伝子配列に対応した。それらは、cbh2に密着に関連するヌクレオチド配列を含むことができ、そして保存されたモジュール、例えばセルロース結合ドメインをコードできることが可能であった。
【0203】
予測されることに対比して、遺伝子サイレンシングベクターを有する株におけるcbh2−mRNAレベルは対照株におけるその対応するmRNAレベルに比較して、高められると思われた。この観察は、遺伝子サイレンシングされた転写体自体がアレイのcbh2標的物にハイブリダイズする事実に影響を及ぼし、それにより、chb2−特異的mRNAレベルが遺伝子サイレンシング株において高められた思い違いを付与する。それにもかかわらず、トリコダーマ・レセイにおける遺伝子サイレンシングの効果は、影響されるcbh2以外の少数の(存在するなら)転写体/遺伝子が存在することにおいて非常に特異的であると思われた。
【0204】
実験2においては、マイクロアレイ上の配列は特別に発現されたとは思われず、このことは、cbh2−特異的RNA配列が対照株に匹敵できるレベルでcbh2−欠失された株により生成されたことを示唆する。しかしながら、これはたぶん、トリコダーマ・レセイSaMe02における欠失/破壊現象がcbh2のための完全なコード領域を除去しなかった事実に影響を及ぼしたことが注目されるべきである。従って、マイクロアレイ上でcbh2標的物にハイブリダイズした、切断された転写体を株が製造することが可能であった。
【0205】
例18:小規模発酵の間のRNAi:
2L発酵を、cbh2 mRNAについてほとんど100%の低下を示した、転写体11及び14に対して、例5に記載のようにして実施し、遺伝子サイレンシングが小規模発酵を通して都合良く維持されるかどうかを決定した。発酵をまた、宿主株トリコダーマ・レセイRutC30、及びcbh2遺伝子が相同組換えによりノックアウトされている正の対照株トリコダーマ・レセイSaMe02に対して行った。セロビオヒドロラーゼIIタンパク質のレベルを、例12に記載のようにして、SDS−PAGE分析により測定した。
【0206】
セロビオヒドロラーゼIIタンパク質のレベルは、宿主トリコダーマ・レセイRutC30に比較して、形質転換体11及び14、及びトリコダーマ・レセイSaMe02において実質的に低められた。
【0207】
例19:ノザンブロットハイブリダイゼーションによるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIの小さな干渉性RNAの検出:
ノザン分析を、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII−特異的な小さな干渉性RNA(siRNA)の存在又は不在について、形質転換体1, 2, 11, 12, 13及び14を試験するために行った。例13に使用された同じ全RNAを、この実験のために使用した。単離された全RNA(25μg)を、1部のTBE−ウレアサンプル緩衝液(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)と共に混合し、65℃で15分間、加熱し、そして1×TBE緩衝液中、CriterionTM 細胞(Bio- Rad Laboratories, Hercules, CA)によるCriterionTM 15%ポリアクリルアミド−7Mウレアゲル(Bio- Rad Laboratories, Hercules, CA)上での電気泳動により分別した。
【0208】
次に、RNAを、Zeta−Probe(商標)GTブロット膜(Bio- Rad Laboratories, Hercules, CA)に、CriterionTM Blotter(Bio- Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて、0.5×TBEトランスファー緩衝液(Bio- Rad Laboratories, Hercules, CA)において50Vで1時間、電気ブロットした。トランスファーの後、RNAを、Stratalinker 1800 UV Crosslinker (Stratagene, La Jolla, CA)中、前記膜上に、Auto−Crosslink設定を用いて固定した。
【0209】
前記膜を、DIG RNAラベリングキット(Roche, Indianapolis, IN)を用いて、その製造業者により提供されるプロトコールに従って、ジゴキシゲニン−11−dUTPの存在下で、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII鋳型DNAにより合成された、363bpのジゴキシゲニン−ラベルされたトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII一本鎖RNAプローブによりハイブリダイズした。鋳型DNAを、下記に示されるプライマー998305(センス)及び998306(アンチセンス)を用いて、pTr0749からの完全な二本鎖RNA配列を表す、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIコード領域の363bpのフラグメントをPCR増幅することにより生成した。センスプライマーを、5’−末端でXbaI部位及びアンチセンスプライマーの5’−末端でHindIII 部位を有するよう構築した:
【0210】
プライマー998305(センス):
5'-CTAGTCTAGAGTCGCAAAGGTTCCC-3'(配列番号31)
プライマー998306(アンチセンス):
5'-GGGGGAAGCTTTGACTGAGCATT-3'(配列番号32)。
【0211】
増幅反応(50μl)は、1X ThermoPol Reaction Buffer、0,3mMのdNTP、10ngのpTr0749、0.3μMのプライマー998305、0.3μMのプライマー998306及び2.5単位のTaqtポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで383bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。得られるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII PCRフラグメントを、XbaI及びHindIII により消化し、そしてXbaI及びHindIII 消化されたpSPt19ベクター(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)中に、T4 DNAリガーゼを用いて、その製造業者のプロトコールに従って連結し、pSMai163(図8)を生成した。
【0212】
ハイブリダイゼーションを、EIG Easy Hyb緩衝液(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)において42℃で15〜17時間、行った。次に、膜を、2×SSC+0.1%SDSにおいて室温で5分間、高い緊縮条件下で洗浄し、続いて0.1×SSC+0.1%SDSにおいて、それぞれ42℃で15分間、2回洗浄した。プローブ−標的物ハイブリッドを、化学ルミネッセントアッセイ(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN, USA)により、その製造業者の説明書に従って検出した。
【0213】
ノザンブロット分析は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向反復体フラグメントを発現する形質転換体が約21bpの小さな干渉性トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII RNAを生成することを示した(図9)。同じRNAは、ベクター対照を含む形質転換体、すなわちトリコダーマ・レセイRutC30又はトリコダーマ・レセイSaMe02(トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子が相同組換えによりノックアウトされている)においては検出されなかった。それらの結果は、トリコダーマ・レセイにおけるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子発現の二本鎖RNA−介在性調節が、RNA干渉に包含される機構のために予測されるサイズ範囲の小さなRNAの生成を包含したことを示した。
【0214】
例20:サイレンシングされたトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII形質転換体の長期安定性:
サイレンシングされたトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII形質転換体の安定性を評価するために、種々の程度のトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIタンパク質低下を示す6個の形質転換体(#1, 2, 11, 12, 13及び14)からの胞子、宿主株トリコダーマ・レセイRutC30、及び正の対照株トリコダーマ・レセイSame02を、pH6.0でセルラーゼ−誘発培地において、誘発条件下で増殖した。接種の7日後、500μlの菌糸体を、新しいセルラーゼ誘発性培地を含む振盪フラスコのための接種物として使用した。この菌糸体の継代を、合計5回、行った。個々の形質転換体についての個々の回の継代からの上清液を集め、そして例12に記載されるように、SDS−PAGEにより分析した。図10が示すように、サイレンシングは、すべての形質転換体について、5世代を通して維持された。
【0215】
例21:pAILo2発現ベクターの構成:
pAILo2(例1)のamdS遺伝子を、アスペルギラス・ニジュランスpyrG遺伝子により交換した。プラスミドpBANe10(図10)を、選択マーカーとしてのpyrG遺伝子のための源として使用した。pBAHe10の配列の分析は、pyrGマーカーがNsiI制限フラグメント内に含まれ、そしてNcoI又はPacI制限部位を含まないことを示した。amdSはまた、NsiI制限部位を端に有するので、選択マーカーを交換するための方法は、NsiI制限フラグメントの単純な交換であった。
【0216】
pAILoI及びpBANe10からのプラスミドDNAを、NsiIにより消化し、そして生成物をアガロースゲル電気泳動により精製した。pyrG遺伝子を含むpBANe10からのNsiIフラグメントを、pAILo1の主鎖に連結し、amdS遺伝子を含む元のNsiI DNAフラグメントを置換した。組換えクローンを、それらが正しい挿入体及びまた、その配向を有することを決定するために、制限消化により分析した。反対の方向に転写されるpyrG遺伝子を有するクローンを選択した。新規プラスミドを、pAILo2(図12)と命名した。
【0217】
例22:pHB506の構成:
2種のフラグメント、すなわち184bpの逆方向反復体(IR)から構成される1つのフラグメント、及び逆方向反復体−リンカー(IR−L)と命名される106リンカー領域と共に反対の方向に184bpの配列を含む290bpからの構成される他のフラグメントを、アスペルギラス・ニガーJaL203−10のアミログルコシダーゼ遺伝子のエキソン4からPCR増幅した(アスペルギラス・ニガーNN049453は、1960年代、土壌から単離されたスペルギラス・ニガーC40 から本来生成された株であり、このアミログルコシダーゼ活性は突然変異誘発により増強された。アスペルギラス・ニガー株JaL303は、アスペルギラス・ニガーNN049453における常在性トリペプチジルアミノペプチダーゼ遺伝子の中断を引起すために特定部位の遺伝子破壊により構成された。アスペルギラス・ニガーJaL303−10は、5−FOAを含む寒天上で自発的に単離されるJaL303のpyrG-変異体株である。)
【0218】
鋳型として200ngのゲノムDNAを用いる場合、下記プライマーを使用した。センスプライマーを、5’−末端でNcoI部位、及びアンチセンスプライマーの5’−末端でNotI部位を有するよう構築した:
プライマー997491(センス):
5'-GGGGCCATGGTCCTGGTGTGATTCTCAGGCACCCGAAATTCTCTGC-3'(配列番号33);
プライマー997492(アンチセンス):
5'-GGGGGCGGCCGCAGCAGGGCTGGAAGGTGGAGTCGTCGCATG-3'(配列番号34)。
【0219】
400μlのアスペルギラス・ニガーJaL303−10胞子を、そらせ板付の振盪フラスコにおける50mlのYP培地において、34℃及び150rpmで18時間、増殖した。次に、ゲノムDNAを、DNeasy Plant Miniキット(QIAGEN Inc., Valencia, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って、菌糸体から抽出した。
【0220】
増幅反応(50μl)は、1X Pfx Reaction Buffer(Invitrogen, Carlsbad, CA)、100ngのアスペルギラス・ニガーJaL303−10ゲノムDNA、0.3μMのセンスプライマー、0.3μMのアンチセンスプライマー及び2.5単位のPfxポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)から構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで184bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0221】
逆の配向での逆方向反復体及びリンカー配列の増幅のために、センスプライマーを、5’末端でPacI部位及びアンチセンスプライマーの5’末端でNotI部位を有する構築した:
プライマー997493(センス):
5'-GGGGTTAATTAATCCTGGTGTGATTCTCAGGCACCCGAAATTCTC-3'(配列番号35);
プライマー997494(アンチセンス):
5'-GGGGGCGGCCGCTACCGACCCACCGCAACAGCCTCGCTGTCA-3'(配列番号36)。
【0222】
増幅反応(40μl)を、上記のようにして行った。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで290bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
次に、290bpの得られるPCRフラグメントを、pTOPO Blunt (Invitogen Carlsbad, CA)中に、その製造業者の説明書に従って挿入し、pTOPO−IR−Lを生成した。
【0223】
プラスミドpTOPO−IR−Lを、PacI及びNotIにより消化し、上記のように1.0%アガロースゲル電気泳動及びQIAquick Gel Extractionキットを用いて精製し、そしてpAILo2のその対応する制限部位中に挿入し、pAILo2IR-Lをもたらした。この184bpのフラグメントを、pTOPO−IRの消化の後、単離し、そしてNcoI/NotI消化されたpAILo2IR−L中に挿入し、pHB506(図13)をもたらした。
【0224】
例23:pHB506によるアスペルギラス・ニガーJaL303−10の形質転換:
アスペルギラス・ニガーJaL303−10のプロトプラストを、例11に記載される、改良されたプロトコールを用いて、調製した。プロトプラストを、血球計を用いて計数し、そしてSTC1ml当たり1×107個のプロトプラストの最終濃度に再懸濁した。過剰のプロトプラストを、Cryo 1℃凍結容器(Nalgene, Rochester, NY)において−80℃で貯蔵した。
【0225】
pHB506及びpAILo2(対照としての)によるアスペルギラス・ニガーJaL303−10プロトプラストの形質転換を、次の修飾を伴って、例11に記載のようにして行った。約7μgのpHB506又はpAILo2を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、そして軽く混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、混合し、そして室温で30分間インキュベートした。次に、STC(3ml)を添加し、混合し、そして最少培地プレート上にプレートした。そのプレートを、34℃で5〜7日間インキュベートした。
【0226】
約70の形質転換体を得た。80の形質転換体からの胞子を、最少培地プレート上に画線培養し、そして34℃で6日間インキュベートし、一次形質転換体を得た。
【0227】
次に、一次形質転換体、及びpAILo2により形質転換されたアスペルギラス・ニガーJaL303−10を、プレートアッセイに提供し、基質としてマルトースを用いて、グルコアミラーゼ活性を測定した。グルコースの開放を、紫色を形成する、カップリングされたグルコースオキシダーゼ/ホースラディシュペルオキシダーゼ/ABTS(2, 2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アッセイを用いて決定した。すべての試薬は、Sigma Chemical Company, St. Louis, MOからであった。20%の希ガスを含むM400培地を、オートクレーブし、5℃に冷却し、この時点で、50mlの20%マルトース(無菌濾過された)、3mlの2.65%(w/v)ABTS原液、及び2mlのHRP原液(0.1Mの酢酸ナトリウム(pH5.0)1ml当たり100Uのホースラディシュペルオキシダーゼ)を添加した。
【0228】
2mlの培地を、12ウェル細胞培養物プレートの個々のウェルに添加した。プレートを、箔により包装するか、又は耐光性ボックスに配置し、そして4℃で貯蔵した。接種用ループを用いて、アッセイウェルに個々の一次形質転換体の胞子をトランスファーした。プレートを箔により包装し、そして34℃で1〜2日間インキュベートした。次に、グルコースオキシダーゼ溶液(0.1Mの酢酸ナトリウム(pH5.0)1ml当たり1.5Uのグルコースオキシダーゼ)を、プレート上に噴霧し、次に箔により包装し、そして34℃で1〜2時間インキュベートした。グルコアミラーゼ活性を、コロニー性ハロの色の強さにより示されるABTSの酸化により決定した。
【0229】
インキュベーションの後、その結果は、個々の形質転換体の色の強さが紫の色調で変化し、そしてpAILo2により形質転換されたアスペルギラス・ニガーJal303-10の色の強さが最も濃く、そしていくつかの形質転換体はほとんどかまったくグルコアミラーゼ活性を示さなかったことを示した。
【0230】
例24:形質転換体の振盪フラスコ分析:
例23に記載される比色スクリーンに基づいて、8個の形質転換体コロニーからの胞子を、最少培地プレート上に画線培養した。比色プレートアッセイに基づいて、ほとんどか又はまったくグルコアミラーゼ活性を示さない4個の形質転換体及び種々のアミログルコシダーゼ活性を生成する4個のランダムに選択された形質転換体を、振盪フラスコにおける増殖のために選択した。上記形質転換体、及びWO04/090155号に記載のようにして調製された、グルコアミラーゼ及び中性アミラーゼ欠失を有するアスペルギラス・ニガーHowB112, アスペルギラス・ニガーJaL303−10、及びpAILo2により形質転換されたアスペルギラス・ニガーJal303−10を、M400培地を含む振盪フラスコにおいて増殖した。
【0231】
25mlのM4000培地を含む振盪フラスコ(125ml、そらせ板付)を、最少培地プレート上で増殖された個々のアスペルギラス・ニガー形質転換体の胞子及び上記対照により接種し、そして34℃及び200rpmで3日間インキュベートした。培養物ブイヨンサンプルを、接種の3日後、除去し、そして15,700×gで5分間、微小遠心分離機により遠心分離した。上清液を、新規管に移し、そしてSDS−PAGE分析まで、4℃で貯蔵した。
【0232】
SDS−PAGEを、CriterionTM Cellと共にCriterionTM トリス−HClゲルを用いて行った。5μlの3日目のサンプルを、2倍濃縮のLaemmliサンプル緩衝液(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)に懸濁し、そして5%β−メルカプトエタノールの存在下で3分間、煮沸した。サンプルを、SDS−PAGEゲル上に負荷し、そして1× トリス/グリシン/SDS緩衝液(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)中、電気泳動にゆだねた。得られるゲルを、Bio−SafeTM クーマシー染色(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)により染色した。
【0233】
SES−PAGE結果(図14)は、2種のタンパク質の存在、すなわち、前駆体であるかも知れないが、約125kDaでの有力なバンド、及びプロセッシングされた酵素であることが知られている75kDaでのより拡散したバンドの存在を示した。それらの両タンパク質バンドは、pAILo2により形質転換されたアスペルギラス・ニガーJal303−10に存在した。対照的に、グルコアミラーゼ遺伝子欠失の株アスペルギラス・ニガーHoyvB112は、いずれのバンドも欠失した。選択された形質転換体は、より少ない量のそれらの2種のタンパク質を生成した。ランダムに採取された株を表す形質転換体1−4は、種々の量のグルコアミラーゼを生成したが、ところがプレートスクリーンにおいて測定されるようにグルコアミラーゼを欠いている形質転換体5−8は、検出できるグルコアミラーゼを生成しなかった。それらの結果は、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼの発現がRNAIの結果として抑制されたことを示唆した。
【0234】
例25:pHUda512発現ベクターの構成:
発現ベクターpHUda512を、アスペルギラス・ニガーNN049735のアミログルコシダーゼ遺伝子由来の二本鎖RNAの転写のために構成した。アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ遺伝子のcDNA配列、及びアスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ遺伝子のcDNAクローンの生成は、WO00/004136号に記載されている。鋳型としてのアスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ遺伝子のcDNAクローンとのPCR反応を、下記に示されるように、BglII、KpnI及びXhoI部位を導入するためにプライマーHU704、及びBamHI部位を導入するためにプライマーHU705を用いて、ExpandTM PCRシステム8Roche Diagnostics, Japan)により行った:
【0235】
HU704:
5'-TTTAGATCTCTCGAGGTACCAAATGTGATTTCCAAGCGCGCG-3'(配列番号37)
HU705:
5'-TTTGGATCCAAGAGATCGACGAGGGTCTTG-3'(配列番号38)。
【0236】
増幅反応(50μl)は、1×緩衝液(Roche Diagnostics, Japan)中、1ngの鋳型DNA、250MのdNTP, 250nMのプライマーHU704, 250nMのプライマーHU705, 0.1UのTaqポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたDNA Engine PTC-200 (MJ-Research, Japan) においてインキュベートした:94℃で2分(1サイクル);92℃で1分、55℃で1分(30サイクル)及び72℃で1分(1サイクル):72℃で10分(1サイクル);及び4℃での維持。
【0237】
反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで213bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN Inc., Valencia, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0238】
213bpの増幅されたDNAフラグメントを、BglII及びBamHIにより消化し、そしてBamHIにより消化されたpMT2188(WO03/089648号)中に連結した。その連結混合物により、選択マーカーとしてサッカロミセス・セレビシアエURA3遺伝子を用いて、E. コリDB6507(ATCC35673)を形質転換した。増幅されたプラスミドを、QIAprep(商標)Spin Miniprep キット (QIAGEN Inc. , Valencia, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って回収した。
【0239】
プラスミドpMT2188は、アスペルギラス・ニジュランストリオースリン酸イソメラーゼ非翻訳リーダー配列に融合されるアスペルギラス・ニガー中性アミラーゼIIプロモーター(Na2/tpiプロモーター)及びアスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼターミネーター(AMGターミネーター)に基づく発現カセット、単独の窒素源としてのアセトアミド上で増殖できるアスペルギラス・ニジュランスからの選択マーカーamdS、及びpyrF欠失性E. コリ株DB6507の増殖を可能にするサッカロミセス・セレビシアエからのURA3マーカーを含んだ。
【0240】
別のPCRを、下記に示されるように、BglII、KpnI及びXhoI部位を導入するためにプライマーHU704、及びBamHI部位を導入するためにプライマーHU706を用いて、ExpandTM PCRシステムにより、鋳型としてのアスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ遺伝子のcDNAクローンにより行った:
HU704:
5’-TTTAGATCTCTCGAGGTACCAAATGTGATTTCCAAGCGCGCG-3’(配列番号39)
HU706:
5’-TTTGGATCCTAGGCAGTCTCATCGACATTG-3’(配列番号40)。
【0241】
増幅反応(50μl)は、1×緩衝液(Roche Diagnostics, Japan)中、1ngの鋳型DNA、250MのdNTP, 250nMのプライマーHU704, 250nMのプライマーHU706, 0.1UのTaqポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたDNA Engine PTC-200においてインキュベートした:94℃で2分(1サイクル);92℃で1分、55℃で1分(30サイクル)及び72℃で1分(1サイクル):72℃で10分(1サイクル);及び4℃での維持。
【0242】
反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで366bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN Inc., Valencia, CA)を用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
366bpの増幅されたDNAフラグメントを、XhoI及びBamHIにより消化し、そしてBamHIお呼びXhoIにより消化されたpHUda 508中に連結した。その連結混合物により、E.コリDB6507(ATCC35673)を形質転換し、アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼコード領域由来の213bpの逆方向反復体を含む発現プラスミドpHuda512を生成した。増幅されたプラスミドを、QIAprep(商標)Spin Miniprep キットを用いて、その製造業者の説明書に従って回収した。
【0243】
例26:アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ遺伝子由来の二本鎖RNAの発現:
アスペルギラス・ニガー株NN049735は、アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ、及びアスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼとアスペルギラス・カワチ酸安定性α−アミラーゼ由来の炭化水素−結合モジュールとの間のハイブリッド酵素の両者を生成する。
【0244】
アスペルギラス・ニガーNN049735を、100mlの非選択性YPG培地において、回転シューカー上で120rpmで振盪しながら、32℃で16時間、培養した。細胞を濾過により集め、0.6MのKClにより洗浄し、そして600μl/mlの最終濃度でβ−グルカナーゼ(GLUCANEXTM, Novozymes A/S, Bagsvaerd, Denmark)を含む0.6MのKCl 20mlに再懸濁した。その懸濁液を、プロトプラストが形成されるまで、32℃及び80rpmでインキュベートし、そして次にSTC緩衝液により2度、洗浄した。
【0245】
プロトプラストを、血球計により計数し、そして再懸濁し、そしてSTC:STPC:DMSOの8:2:0.1溶液において、2.5×107個のプロトプラスト/mlの最終濃度に調節した。約3μgのpHUda512を、100μlのプロトプラスト懸濁液に添加し、軽く混合し、そして氷上で20分間インキュベートした。1mのAPTCを添加し、そしてプロトプラスト懸濁液を37℃で30分間インキュベートした。50℃のCOVE上部アガロール10mlの添加の後、反応をCOVE寒天プレート上に注ぎ、そしてプレートを32℃でインキュベートした。5日後、形質転換体を、COVE培地から選択した。
【0246】
8個のランダムに選択された形質転換体を、100mlのMLC培地に接種し、そして30℃で2日間、培養した。10mlのMLC培地を、100mlのMU−1倍値に接種し、そして30℃で7日間、培養した。上清液を、3,000×gでの10分間の遠心分離により得た。
【0247】
上清液サンプル中のグルコアミラーゼ活性を、生成するグルコースとのグルコースデヒドロゲナーゼ及びムタロターゼ反応によるNADH生成における上昇として決定され、そして340nmでの吸光度を測定した。100mMの酢酸ナトリウム(pH4.3)緩衝液に溶解された酵素サンプル6μlを、100mMの酢酸ナトリウム(pH4.3)緩衝液中、23.2mMのマルトース31μlと共に混合し、そして37℃で5分間インキュベートした。次に、313μlの着色試薬(1L当たり430Uのグルコースデヒドロゲナーゼ、1L当たり9Uのムタロターゼ、0.21mMのNAD及び0.12Mのリン酸(pH7.6)緩衝液中、0.15MのNaCl)を、反応混合物に添加し、そして37℃で5分間インキュベートした。活性を、分光計上で340nmで測定した。6μlの蒸留水を、対照として、酵素サンプルの代わりに使用した。
【0248】
グルコアミラーゼ活性を、NoVozymes A/S, Bagsvaerd, Denmarkから得られる酵素標準に対して決定されたアミログルコシダーゼ単位(AGU)で測定した。1AGUは、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH4.3)緩衝液中、23.2mMのマルトースにおいて37℃で1分当たり1μモルのマルトースを加水分解する酵素の量として定義される。
【0249】
酸安定性α−アミラーゼ活性を、590nmで測定されるスター4−ヨウ素複合体の青の減少として上清液サンプルにおいて決定された。2mMのクエン酸(pH2.5)緩衝液中、51.4mMの塩化カルシウムに溶解された酵素サンプル25μlを、100mMのクエン酸ナトリウム(pH2.5)緩衝液1L当たり0.6gの可溶性スターチ(Merck 1253, Germany)及び12gの酢酸ナトリウムの溶液135μlと共に混合し、そして37℃で325秒間インキュベートした。325秒後、90μlのヨウ素溶液(1l当たり1.2gのヨウ化カルシウム及び0.12gのヨウ素)を、反応混合物に添加し、そして37℃で25秒間インキュベートした。活性を、分光計上で590nmで測定した。25μlの蒸留水を、対照として、酵素サンプルの代わりに使用した。
【0250】
酸安定性α−アミラーゼ活性を、NoVozymes A/S, Bagsvaerd, Denmarkから得られる酵素標準に対して決定されたAFAU(酸菌類α−アミラーゼ単位)で測定した。1FAUは、上記条件下で1時間当たり5.260mgのスターチ乾燥物質を分解する酵素の量として定義される。
【0251】
表4は、1.0に標準化された、宿主株アスペルギラス・ニガーNN049735の活性に対する、選択された形質転換体のアミログルコシダーゼ活性及び酸安定性α−アミラーゼ活性を示す。結果は、宿主株アスペルギラス・ニガーNN049735に対して同時に比較して、アミログルコシダーゼ活性の低下及び酸安定性α−アミラーゼの上昇を示した。
【0252】
【表4】
【0253】
SDS−PAGE分析を、e−PAGELゲルE−T 7.5L (ATTO Gorporation, Japan) を用いて行った。10μlの7日目のサンプルを、2倍濃度のサンプル緩衝液(1%SDS、1%β−メルカプトエタノール、1mg/mlのブロモフェノールブルー、10%グリセロール、及び50mMのトリス−HCl、pH6.8)に懸濁し、そして5分間、煮沸した。サンプルを、e−PAGELゲル上に負荷し、そして1×トリス/グリシン/SDS緩衝液(25mMのトリス−HCl、0.1%、SDS、192mMのグリシン)において20mAで90分間、電気泳動にゆだねた。得られるゲル(図16)を、染色溶液(1g/Lのクーマシーブリリアントブルー、10%酢酸、30%メタノール)により30分間、染色し、そして次に、バンドが見えるまで、脱色溶液(10%酢酸、30%メタノール)により脱色した。
【0254】
それぞれ、アスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼ、及びアスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ融合タンパク質間の融合酵素に対応する約100kDa及び70kDaでの有力なバンドが、アスペルギラス・ニガーNN049735に存在した。対照的に、選択された形質転換体は、低い量のアスペルギラス・ニガーアミログルコシダーゼバンド及び高い量のアスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ融合タンパク質バンドを生成した。
【0255】
例27:形態学的変異体についてのスクリーニング:
WO98/11203号(例5)に記載される“e”プール及び“b”プールを、CM−1寒天上にプレートし、そして34℃で4日間インキュベートすることにより、変更された形態学を有するコロニーについてスクリーンした。プール内の変更されたプレート形態学を有するコロニーを、単一のコロニー単離のために、新しいCM-1寒天プレートに移し、そして34℃で5日間インキュベートした。プレート上の個々の形態学的変異体を、単一コロニーからCM-1プレート及びPDAプレートの中心に移し、そして34℃で6〜8日間インキュベートし、その後、形態学、すなわち直径及び外観を評価した。合計218個の形態学的変異体を、COVE2プレートに移し、そして34℃で1〜2週間インキュベートし、胞子を生成した。白色の胞子を生成する変異体を同定し、そしてアスペルギラス・オリザエP2-5.1と命名した。
【0256】
例28.形態学的変異体アスペルギラス・オリザエP2-5.1からのプラスミドDNA及びフランキングDNAの開放及び特徴化:
プラスミドDNA及びゲノムフランキング遺伝子座を、WO98/11203号(例9)に記載される方法(但し、制限エンドヌクレアーゼが使用された)を用いて、変異体アスペルギラス・オリザエP2-5.1から単離した。変異体アスペルギラス・オリザエP2-5.1からのBglII開放の遺伝子座を含むE. コリHB101形質転換体を単離した。
【0257】
組込み現象のいずれかの側上に535及び750bpの領域を含むアスペルギラス・オリザエP2-5.1開放の遺伝子座を、M13逆方向(−48)及びM13前方向(−20)プライマー(New England Biolabs, Beverly, MA)、及び配列決定されるDNAに対してユニークなプライマーを用いて、色素−ターミネーター化学(Giesecke など.,1992, Journal of Virol. Methods 38: 47-60)と共にプライマーウォーキング技法を用いて、両鎖に対して、Applied Biosystems Model 373A Automated DNA配列決定器(Applied Biosystems, Inc. , Foster City, CA)により配列決定した。開放されたwA遺伝子の1つの側面を表す400bpの核酸配列(配列番号41)を、逆方向反復体の構成の鋳型として選択した。
【0258】
その核酸配列は、組み込み現象がアスペルギラス・フミガタスwA遺伝子(受託番号Y17317)の相同のための読取枠内に存在したことを示唆した。74%の核酸相同性が見出され、そして開放された遺伝子座の400bpフラグメントの推定されるアミノ酸配列(配列番号42)が、アスペルギラス・フミガタスwA遺伝子の推定されるアミノ酸配列に比較される場合、71%の同一性を共有した。wA遺伝子は、野生型胞子における緑色の色素の合成に関与するポリペプチドシンターゼをコードする。この遺伝子の変異体は、色素を欠失し、そして白色を出現する胞子を生成する。アスペルギラス・ニジュランスにおけるwA遺伝子の破壊は、アスペルギラス・オリザエP2-5.1の観察される表現型である、胞子の色を白色に変えることが知られている(Mayorga and Timerlak, 1992, Mol. Gen. Genet. 235: 205-212)。
【0259】
例29:pDeMi01の構成:
アスペルギラス・オリザエwA遺伝子由来のdsRNAを発現するために、wA遺伝子の読取枠内からの175個の塩基対の逆方向反復体の半分のすべてを、NotI制限部位を有するセンス鎖プライマー、及び下記に示される5’NheI制限部位を有するアンチセンスプライマーを用いて、PCR増幅した:
センス:
5'-GGGGGCGGCCGCAGCACTTCGATTGCATTAGTCAAAA-3'(配列番号43)
アンチセンス:
5'-GGGGGCTAGCAGAACGAACGCAGGTTTTAT-3'(配列番号44)。
【0260】
増幅反応(50μl)は、1X Pfx Reaction Buffer、100ngのアスペルギラス・オリザエP2-5.1ゲノムDNA(DNeasy Plant Maxi Kitを用いて単離された)、0.3 mM のdNTP 、0.3μMのセンスプライマー、0.3μMのアンチセンスプライマー及び2.5単位のPfxポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、58℃で60秒、及び72℃で1分(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで175bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0261】
103個の塩基対スペーサーを含む逆方向反復体の他の半分を、上記センスプライマー、及びプライマーの5’末端でNheI制限部位を有する下記アンチセンスプライマーを用いて増幅した:
アンチセンス:
5'-GGGGGCTAGCGGGTAGCCCGACGGCCACAAAGG-3'(配列番号45)。
【0262】
増幅反応(50μl)は、1X Pfx Reaction Buffer、0.3 mM のdNTP 、100ngのアスペルギラス・オリザエP2-5.1ゲノムDNA、0.3μMのセンスプライマー、0.3μMのアンチセンスプライマー及び2.5単位のPfxポリメラーゼから構成された。反応を、次の通りにプログラムされたEppendorf Mastercycler 5333においてインキュベートした:94℃で30秒、58℃で45秒、及び72℃で1分(15分の最終拡張)(それぞれ30サイクル)。反応生成物を、TAE緩衝液を用いて、1.0%アガロースゲル上で単離し、ここで273bpの生成物のバンドをゲルから切除し、そしてQIAquick Gel Extraction Kitを用いて、その製造業者の説明書に従って精製した。
【0263】
2種のPCR生成物を、NheIにより消化した。273bpの反復体+スペーサー及び175bpの反復体を混合し、そして製造業者により特定される条件を用いてT4 DNAリガーゼにより連結した。その連結生成物を、1.5%アガロースゲル上で分解した。逆方向反復体に対応する448bpのフラグメントを、Qiaex II DNA Purification Kit (QIAGEN Inc. , Valencia, CA)を用いてゲル単離し、続いてNotI消化を行った。逆方向反復体の転写を駆動するために、NotI部位の直接上流にNA2-tpiプロモーターを含むプラスミドpBANe6(アメリカ特許第6,461,837号)を使用した。プラスミドをNotIにより消化し、そしてエビアルカリホスファターゼ(Roche, Indianapolis, IN)を用いて脱リン酸化した。脱リン酸化された線状プラスミド及び448bpの逆方向反復体フラグメントを混合し、そして14℃で16時間、T4 DNAリガーゼを用いて連結した。2μlの連結混合物を用いて、コンピテントE. コリSURE細胞(Stratagene, La Jolla, CA)を、その製造業者の説明書に従って形質転換した。
【0264】
いくつかの形質転換体からのプラスミドDNAを回収し、NotIにより消化し、そして上記のようにして、1.5%アガロースゲル上で分解した。約500bpの単一のフラグメントを含む形質転換体が、175bpの反復フラグメント及び103bpのスペーサーにより分離される、逆配位での175bpのフラグメントから成ることが、DNA配列分析により確められた。単離されたプラスミドの1つを、pDeMi0(図17)と命名した。
【0265】
例30:アスペルギラス・オリザエの形質転換及び形質転換体の分析:
5μgのpDeMi01又はpBANe6を用いて、選択のためにアセトアミド上での増殖を用いて、アスペルギラス・オリザエ株Jal 250 (WO98/11203号)から調製されたプロトプラストを形質転換した。アセトアミド上での増殖は、pDeMi01上に存在するamdS遺伝子の発現を必要とする。形質転換を、WO98/11203号(例2)に記載のようにして行った。34℃での30分間のインキュベーションの後、プロトプラスト/DNAミックスを、STCにより3mlにし、そして10mMのウリジンにより補充されたCOVEプレート上に広げた。次に、プレートを、34℃で6日間インキュベートした。
【0266】
約50の形質転換体を、pDeMi01又はpBANe6を用いて得た。すべてのpBANe6形質転換体は、野生型アスペルギラス・オリザエの暗緑色の胞子特性を有した。対照的に、pDeMi01形質転換体は、淡黄色〜暗緑色の範囲の色を生成した。その結果は、逆方向反復体が、転写される場合、dsRNA誘発性遺伝子特異的RNAiを形成することを示唆した。胞子色の変動は、たぶんプラスミドの染色体組込み部位のために、逆方向反復体の示差的転写の結果であろう。
【0267】
pDeMl01を用いて得られた8個一時形質転換体及び、pBANe6により得られた1つの形質転換体を、10mMのウリジンにより補充されたCOVE2プレート上に画線培養した。pBANe6に由来するすべてのコロニーは、均等に暗緑色であった。対照的に、pDeMi01形質転換体から得られたコロニーは、胞子色において種々であった。続く胞子精製は、胞子色の均等性を生成した。pDeMi01又はpBANe8により形質転換されたプレートからの胞子を、水に懸濁し、スライド上に置き、そして光顕微鏡により観察した。対照pBANe8株からの胞子は緑色のままであり、ところがpDeMi01形質転換体からの胞子は透明であり、RNA干渉による不活性化の予測される結果が存在した。
【0268】
本明細書に記載される発明は、本明細書に開示される特許の態様により範囲を限定されるものではない。何故ならば、それらの態様は本発明のいくつかの観点を例示するものである。いずれかの同等の態様が本発明の範囲内で意図される。実際、本明細書に示され、そして記載されるそれらの修飾の他に、本発明の種々の修飾は、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。そのような修飾はまた本発明の範囲内にある。
種々の文献が本明細書に引用されており、それらの開示は引用により本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】図1は、pAILo1の制限地図を示す。
【図2】図2は、pMJ04の制限地図を示す。
【図3】図3は、pMJ06の制限地図を示す。
【図4】図4は、pMJ09の制限地図を示す。
【図5】図5は、トリコダーマ・レセイCel6A逆方向反復体フラグメントの制限地図を示す。
【0270】
【図6】図6は、pSMai148の制限地図を示す。
【図7】図7は、振盪フラスコにおける形質転換体14、正の対照株(トリコダーマ・レセイSaMe02)及び“空のベクター対照”におけるトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII mRNAの相対的発現レベルを示す。
【図8】図8は、pSMai163の制限地図を示す。
【0271】
【図9】図9は、ノザン分析による低い干渉性トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIRNAの検出を示す。全RNA(25μg)を、15%ポリアクリルアミド−7Mウレアゲル上で電気泳動し、ナイロン膜に移し、そしてDIG−ラベルされたトリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼIIRNAプローブによりプローブした。トリコダーマ・レセイSaMe02は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子が相同組換えによりノックアウトされている正の対照株であった。トリコダーマ・レセイRutC30は、宿主株であった。対照28S−rRNA及び18s−rRNAを示す、臭化エチジウム染色されたゲルは、等しい負荷を示した。
【0272】
【図10】図10は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII逆方向転写体フラグメントを発現するトリコダーマ・レセイRutC30の7日目の振盪フラスコサンプル(#1, 2, 11, 12, 13及び14)のSDS−PAGE分析を示す。トリコダーマ・レセイSaMe01は、トリコダーマ・レセイCel6AセロビオヒドロラーゼII遺伝子が相同組換えによりノックアウトされている正の対照株であった。トリコダーマ・レセイRutC30は、宿主株であった。接種後7日で、500μlの菌糸体を、セルラーゼ−誘発性培地に新しい物を含む振盪フラスコのための接種物として使用した。この菌糸体の継代培養を、合計5回、行った。
【0273】
【図11】図1は、pBANelOの制限地図を示す。
【図12】図2は、pAILo2の制限地図を示す。
【図13】図3は、pHB506の制限地図を示す。
【図14】図14は、pHB506を含む選択されたアスペルギラス・ニガー形質転換体(形質転換体1−8)、グルコアミラーゼ遺伝子欠失株アスペルギラス・ニガーHowB112、アスペルギラス・ニガーJaL303-10、及びpAIL02(空のベクター)により形質転換されたアスペルギラス・ニガーJaL303-10の7日目の振盪フラスコサンプルのSDS−PAGE分析を示す。形質転換体1−4は、実施可能量のグルコアミラーゼを生成し、ところが形質転換体5−8は検出できるグルコアミラーゼを生成しなかった。
【0274】
【図15】図15は、pHUda512の制限地図を示す。
【図16】図16は、pHUda512を含む選択されたアスペルギラス・ニガー形質転換体(レーン1−8)及びアスペルギラス・ニガーNN049735(レーン9)の7日目の振盪フラスコサンプルのSDS-PAGE分析を示す。
【図17】図17は、pDeMi01の制限地図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸状菌株における生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか又は排除するための方法であって、
(a)前記糸状菌株のゲノム中に、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相性同転写可能領域に作用可能に連結されたプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を挿入し、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり;そして
(b)前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAの生成を、前記干渉性RNAの生成の助けになる条件下で前記糸状菌株を培養することにより誘発し、ここで前記干渉性RNAは、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応する、ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記第1の相同性領域が、前記標的遺伝子の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2の相同性領域が、前記第1の相同性領域の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成り、前記少なくとも19個のヌクレオチドが前記第1の相同性領域のその対応する領域に対して逆の順序である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2ヌクレオチド配列が、第3ヌクレオチド配列により分離される請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第3ヌクレオチド配列が、少なくとも5個のヌクレオチドを含んで成る請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記糸状菌株が、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギラス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、クリプトコーカス(Cryptococcus)、フィリバシジウム(Filibasidium)、フサリウム(Fusarium)、ヒューミコラ(Humicola)、マグナポリス(Magnaporthe)、ムコル(Mucor)、ミセリオプソラ(Myceliophthora)、ネオカノマスチックス(Neocallimastix)、ネウロスポラ(Neurospora)、パエシロミセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、プロミセス(Piromyces)、シゾフィラム(Schizophyllum)、タラロミセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)又はトリコダーマ(Trichoderma)株である請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記標的遺伝子の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記標的遺伝子の発現が排除される請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記干渉性RNAが、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現を低めるか又は排除するために、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体のRNA転写体と相互作用する請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同性の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現が排除される請求項1記載の方法。
【請求項12】
生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成り、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAが前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応することを特徴とする糸状菌株。
【請求項13】
前記第1の相同性領域が、前記標的遺伝子の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成る請求項12記載の糸状菌株。
【請求項14】
前記第2の相同性領域が、前記第1の相同性領域の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成り、前記少なくとも19個のヌクレオチドが前記第1の相同性領域のその対応する領域に対して逆の順序である請求項12記載の糸状菌株。
【請求項15】
前記第1及び第2ヌクレオチド配列が、第3ヌクレオチド配列により分離される請求項12記載の糸状菌株。
【請求項16】
前記第3ヌクレオチド配列が、少なくとも5個のヌクレオチドを含んで成る請求項15記載の糸状菌株。
【請求項17】
前記糸状菌株が、アクレモニウム、アスペルギラス、アウレオバシジウム、クリプトコーカス、フィリバシジウム、フサリウム、ヒューミコラ、マグナポリス、ムコル、ミセリオプソラ、ネオカノマスチックス、ネウロスポラ、パエシロミセス、ペニシリウム、プロミセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム又はトリコダーマ株である請求項12記載の糸状菌株。
【請求項18】
前記標的遺伝子の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項12記載の糸状菌株。
【請求項19】
前記標的遺伝子の発現が排除される請求項12記載の糸状菌株。
【請求項20】
前記干渉性RNAが、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現を低めるか又は排除するために、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体のRNA転写体と相互作用する請求項12記載の糸状菌株。
【請求項21】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同性の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項20記載の糸状菌株。
【請求項22】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現が排除される請求項12記載の糸状菌株。
【請求項23】
生物学的物質の生成方法であって、
(a)興味ある生成物学的物質の生成の助けとなる条件下で糸状菌株を培養し、ここで前記糸状菌株が生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成り、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAが前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応;そして前記糸状菌株が前記興味ある生物学的物質をコードする第3ヌクレオチド配列を含んで成り;そして
(b)前記培養培地から生物学的物質を回収する、ことを含んで成る方法。
【請求項24】
前記第1の相同性領域が、前記標的遺伝子の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成る請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記第2の相同性領域が、前記第1の相同性領域の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成り、前記少なくとも19個のヌクレオチドが前記第1の相同性領域のその対応する領域に対して逆の順序である請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記第1及び第2ヌクレオチド配列が、第4ヌクレオチド配列により分離される請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記第4ヌクレオチド配列が、少なくとも5個のヌクレオチドを含んで成る請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記糸状菌株が、アクレモニウム、アスペルギラス、アウレオバシジウム、クリプトコーカス、フィリバシジウム、フサリウム、ヒューミコラ、マグナポリス、ムコル、ミセリオプソラ、ネオカノマスチックス、ネウロスポラ、パエシロミセス、ペニシリウム、プロミセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム又はトリコダーマ株である請求項23記載の方法。
【請求項29】
前記標的遺伝子の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記標的遺伝子の発現が排除される請求項23記載の方法。
【請求項31】
前記干渉性RNAが、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現を低めるか又は排除するために、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体のRNA転写体と相互作用する請求項23記載の方法。
【請求項32】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同性の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現が排除される請求項32記載の方法。
【請求項1】
糸状菌株における生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか又は排除するための方法であって、
(a)前記糸状菌株のゲノム中に、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相性同転写可能領域に作用可能に連結されたプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を挿入し、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり;そして
(b)前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAの生成を、前記干渉性RNAの生成の助けになる条件下で前記糸状菌株を培養することにより誘発し、ここで前記干渉性RNAは、前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応する、ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記第1の相同性領域が、前記標的遺伝子の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2の相同性領域が、前記第1の相同性領域の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成り、前記少なくとも19個のヌクレオチドが前記第1の相同性領域のその対応する領域に対して逆の順序である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2ヌクレオチド配列が、第3ヌクレオチド配列により分離される請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第3ヌクレオチド配列が、少なくとも5個のヌクレオチドを含んで成る請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記糸状菌株が、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギラス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、クリプトコーカス(Cryptococcus)、フィリバシジウム(Filibasidium)、フサリウム(Fusarium)、ヒューミコラ(Humicola)、マグナポリス(Magnaporthe)、ムコル(Mucor)、ミセリオプソラ(Myceliophthora)、ネオカノマスチックス(Neocallimastix)、ネウロスポラ(Neurospora)、パエシロミセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、プロミセス(Piromyces)、シゾフィラム(Schizophyllum)、タラロミセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)又はトリコダーマ(Trichoderma)株である請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記標的遺伝子の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記標的遺伝子の発現が排除される請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記干渉性RNAが、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現を低めるか又は排除するために、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体のRNA転写体と相互作用する請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同性の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現が排除される請求項1記載の方法。
【請求項12】
生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成り、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAが前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応することを特徴とする糸状菌株。
【請求項13】
前記第1の相同性領域が、前記標的遺伝子の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成る請求項12記載の糸状菌株。
【請求項14】
前記第2の相同性領域が、前記第1の相同性領域の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成り、前記少なくとも19個のヌクレオチドが前記第1の相同性領域のその対応する領域に対して逆の順序である請求項12記載の糸状菌株。
【請求項15】
前記第1及び第2ヌクレオチド配列が、第3ヌクレオチド配列により分離される請求項12記載の糸状菌株。
【請求項16】
前記第3ヌクレオチド配列が、少なくとも5個のヌクレオチドを含んで成る請求項15記載の糸状菌株。
【請求項17】
前記糸状菌株が、アクレモニウム、アスペルギラス、アウレオバシジウム、クリプトコーカス、フィリバシジウム、フサリウム、ヒューミコラ、マグナポリス、ムコル、ミセリオプソラ、ネオカノマスチックス、ネウロスポラ、パエシロミセス、ペニシリウム、プロミセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム又はトリコダーマ株である請求項12記載の糸状菌株。
【請求項18】
前記標的遺伝子の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項12記載の糸状菌株。
【請求項19】
前記標的遺伝子の発現が排除される請求項12記載の糸状菌株。
【請求項20】
前記干渉性RNAが、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現を低めるか又は排除するために、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体のRNA転写体と相互作用する請求項12記載の糸状菌株。
【請求項21】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同性の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項20記載の糸状菌株。
【請求項22】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現が排除される請求項12記載の糸状菌株。
【請求項23】
生物学的物質の生成方法であって、
(a)興味ある生成物学的物質の生成の助けとなる条件下で糸状菌株を培養し、ここで前記糸状菌株が生物学的物質をコードする標的遺伝子の第1の相同性転写可能領域に作用可能に連結されるプロモーターを含んで成る第1ヌクレオチド配列、及び前記標的遺伝子の第2の相同性転写可能領域を含んで成る第2ヌクレオチド配列を含んで成る二本鎖転写可能核酸構造体を含んで成り、ここで前記第1及び第2の相同性領域がお互いに対して相補的であり、そして前記第2の相同性領域が前記第1の相同性領域に対して逆の配向にあり、前記二本鎖転写可能核酸構造体によりコードされる干渉性RNAが前記生物学的物質をコードする標的遺伝子の発現を低めるか、又は排除するために、前記標的遺伝子のRNA転写体と相互反応;そして前記糸状菌株が前記興味ある生物学的物質をコードする第3ヌクレオチド配列を含んで成り;そして
(b)前記培養培地から生物学的物質を回収する、ことを含んで成る方法。
【請求項24】
前記第1の相同性領域が、前記標的遺伝子の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成る請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記第2の相同性領域が、前記第1の相同性領域の少なくとも19個のヌクレオチドを含んで成り、前記少なくとも19個のヌクレオチドが前記第1の相同性領域のその対応する領域に対して逆の順序である請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記第1及び第2ヌクレオチド配列が、第4ヌクレオチド配列により分離される請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記第4ヌクレオチド配列が、少なくとも5個のヌクレオチドを含んで成る請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記糸状菌株が、アクレモニウム、アスペルギラス、アウレオバシジウム、クリプトコーカス、フィリバシジウム、フサリウム、ヒューミコラ、マグナポリス、ムコル、ミセリオプソラ、ネオカノマスチックス、ネウロスポラ、パエシロミセス、ペニシリウム、プロミセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム又はトリコダーマ株である請求項23記載の方法。
【請求項29】
前記標的遺伝子の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記標的遺伝子の発現が排除される請求項23記載の方法。
【請求項31】
前記干渉性RNAが、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現を低めるか又は排除するために、前記標的遺伝子の1又は複数の相同体のRNA転写体と相互作用する請求項23記載の方法。
【請求項32】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同性の発現が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%低められる請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記標的遺伝子の1又は複数の相同体の発現が排除される請求項32記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−513632(P2007−513632A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544043(P2006−544043)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/041510
【国際公開番号】WO2005/056772
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(500175602)ノボザイムス,インコーポレイティド (26)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/041510
【国際公開番号】WO2005/056772
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(500175602)ノボザイムス,インコーポレイティド (26)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】
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