説明

糸端処理装置、ボビン処理装置、及び糸巻取システム

【課題】口出し装置における糸端捕捉の成功率を向上させることができる構成を提供する。
【解決手段】糸端処理装置11は、ボビン回転機構24と、吹付ノズル27と、を備える。ボビン回転機構24は、給糸ボビン15を回転させる。吹付ノズル27は、給糸ボビン15の端部に向けて、給糸ボビン15の表面に沿うように空気を噴出する。そして糸端処理装置11は、給糸ボビン15を、糸を巻き付ける方向に回転させながら、吹付ノズル27によって空気を噴出する。この構成により、吹付ノズル27からの噴出空気によってバックワインド糸22が吹き上げられて、回転するボビン管21の端部に巻き付く。このようにボビン管21の端部に糸を巻き付けておくことにより、後工程において給糸ボビン15の糸を容易に捕捉することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、糸端処理装置における糸端の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1が開示するようなボビン処理部が知られている。特許文献1に記載のボビン処理部は、給糸ボビンに巻き付けられたバックワインド糸を切断して糸端を形成する糸端処理装置を備えている。
【0003】
また特許文献1に記載のボビン処理装置は、糸端処理装置で形成されたバックワインド糸の糸端をボビン管の管体内に引き込む処理(口出し処理)を行う口出し装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−247517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
口出し装置は、糸端処理装置で形成されたバックワインド糸の糸端を吸引捕捉するように構成されている。ところが、従来の糸端処理装置においては、バックワインド糸が切断されたあとの糸端はフリーの状態となっているので、当該糸端が給糸ボビンの外周のどこにあるかわからない。従って、前記糸端を吸引捕捉するためには、給糸ボビンの外周面全体に吸引流を作用させなければならない。
【0006】
この点、特許文献1に記載されている口出し装置は、上下にスライド自在に構成された筒体を備えている。この筒体は、サクションパイプに接続されており、その内部に吸引空気流を発生させることができるように構成されているとともに、給糸ボビンの直上位置に配置されている。そして、この筒体を下降させて、当該筒体によって給糸ボビンを覆った状態で吸引流を発生させることにより、給糸ボビンの外周面全体に吸引流を作用させて、バックワインド糸の糸端を吸引捕捉するように構成されている。
【0007】
しかし、給糸ボビンの外周面全体に吸引流を作用させる構成は効率が悪いだけでなく、糸端の捕捉に失敗することも多かった。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、口出し装置における糸端捕捉の成功率を向上させることができる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸端処理装置が提供される。即ち、この糸端処理装置は、ボビン回転機構と、吹付ノズルと、を備える。前記ボビン回転機構は、給糸ボビンを回転させる。前記吹付ノズルは、前記給糸ボビンの端部に向けて、当該給糸ボビンの表面に沿うように空気を噴出する。そして前記糸端処理装置は、糸を巻き付ける方向に前記給糸ボビンを回転させながら、前記吹付ノズルから空気を噴出する。
【0011】
この構成により、吹付ノズルからの噴出空気によって給糸ボビン表面の糸端が吹き上げられて、回転するボビンの端部に巻き付く。このようにボビンの端部に糸を巻き付けておくことにより、後工程の口出し装置において給糸ボビンの糸を容易に捕捉することができる。
【0012】
上記の糸端処理装置において、前記吹付ノズルの噴出側端部には扁平部が形成されていることが好ましい。
【0013】
これにより、給糸ボビンの表面の広い範囲に空気を吹き付けることができるので、当該給糸ボビンの表面の糸を吹き上げ易くなる。
【0014】
上記の糸端処理装置において、前記吹付ノズルは管状体であり、その長手方向の途中部分に屈曲部が形成されていることが好ましい。
【0015】
このように吹付ノズルを屈曲させて形成することにより、適切な方向に向けて空気を噴出するように吹付ノズルを配置することが容易になる。
【0016】
上記の糸端処理装置において、前記扁平部の長手開口方向は、前記屈曲部の屈曲方向に直交する方向であることが好ましい。
【0017】
これにより給糸ボビンの肩部分の傾斜に沿うようにして空気を噴出することができるので、当該給糸ボビンの表面の糸を吹き上げ易くなる。
【0018】
上記の糸端処理装置において、前記吹付ノズルは、前記給糸ボビンの小径側に向けて空気を噴出することが好ましい。
【0019】
これにより、ボビン管の小径側端部に糸を巻き付けることができる。ボビン管の小径側に巻き付けられた部分の糸は、後工程でボビン管から容易に抜き取ることができる。
【0020】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成のボビン処理装置が提供される。即ち、このボビン処理装置は、上記の糸端処理装置と、上記糸端処理装置によって処理された給糸ボビンの口出しを行う口出し装置と、を備える。このボビン処理装置は、供給された給糸ボビンに対して、前記糸端処理装置及び前記口出し装置による処理を行って、糸巻取装置に順次供給する。
【0021】
このボビン処理装置は、前記の糸端処理装置によってボビンの端部に糸を巻き付けているので、口出し装置における口出し処理の確実性を向上させることができ。従って、ボビン処理装置全体の処理効率を向上させることができる。
【0022】
本発明の第3の観点によれば、上記のボビン処理装置と、前記ボビン処理装置に給糸ボビンを供給するボビン供給部と、前記ボビン処理装置によって所定の処理が施された給糸ボビンから糸を巻き取る糸巻取装置と、を備える糸巻取システムが提供される。
【0023】
上記糸端処理装置によってボビン処理装置の処理効率を向上させることができるので、糸巻取システム全体の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダシステムの概略的な平面図。
【図2】給糸ボビンに形成されたバンチ巻きを説明する図。
【図3】糸端処理装置の斜視図。
【図4】糸端処理装置の側面図。
【図5】吹付ノズルを噴出口側から見た平面図。
【図6】先端側巻付部が形成された様子を示す拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に示すのは、本実施形態に係るボビン処理装置3を備えた自動ワインダシステム(糸巻取システム)1の概略的な平面図である。
【0026】
この自動ワインダシステム1は、自動ワインダ(糸巻取装置)2と、ボビン処理装置3と、ボビン供給装置(ボビン供給部)4と、を備えている。
【0027】
自動ワインダ2は、複数の巻取ユニット5を多数並べて備えている。各巻取ユニット5は、紡績糸が巻かれた給糸ボビンから紡績糸を解舒し、巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する公知の構成である。自動ワインダ2には、各巻取ユニット5まで給糸ボビンを自動的に搬送するための供給路6が形成されている。また、自動ワインダ2には、各巻取ユニット5から排出される空ボビンを搬送するための回収路7が形成されている。
【0028】
前記供給路6及び回収路7はベルトコンベア等から構成されており、搬送トレイを搬送することができるように構成されている。図2に示すように、搬送トレイ14は、給糸ボビン15を略直立状態で載置することができるように構成されている。
【0029】
給糸ボビン15は、前工程の精紡機において生成された紡績糸を、ボビン管21の周囲に巻き付けたものである。ボビン管21には若干のテーパが形成されており、小径側の端部を先端部21a、大径側の端部を根元部21bと呼ぶことがある。精紡機においては、ボビン管21の大径側から小径端側に向けて紡績糸を巻き上げる。精紡機で生成された給糸ボビン15は、ボビン供給装置4まで運搬され、当該ボビン供給装置4に投入される。ボビン供給装置4は、投入された給糸ボビン15を、搬送トレイ14の上に一本ずつ略直立状態で載置していくように構成されている。このボビン供給装置4は、搬送トレイ14の上に給糸ボビン15を載置するためのボビンシュート9を備えている。
【0030】
ボビン処理装置3は、ボビン供給装置4と自動ワインダ2との間に配置されている。ボビン供給装置4から供給された給糸ボビン15には、バンチ巻きが形成されているので、そのままでは自動ワインダ2において糸を解舒できない。そこで、ボビン処理装置3において、ボビン供給装置4から供給された給糸ボビンに対して予め適切な処置を行うように構成されている。
【0031】
ここでバンチ巻きについて簡単に説明する。即ち、ボビン管21の大径側から小径側に向けて糸を巻き上げたままの状態の給糸ボビン15は、糸端がフリーとなっている。従って、このままの状態の給糸ボビン15では、精紡機からボビン供給装置4まで運搬するとき等に糸が出てきてしまい、給糸ボビン15同士で糸が絡まりあうといった不具合が発生し得る。そこで、図2に示すように、給糸ボビン15の糸層表面に、小径側から大径側に向けて糸を螺旋状に巻き付け、更にボビン管21の根元部21bに巻き付けるバンチ巻きを形成しておく。これにより、糸端がフリーでなくなるので、搬送中の給糸ボビン15から糸が出てきてしまうことを防止できる。なお、給糸ボビン15の糸層表面に小径側から大径側に向けて螺旋状に巻き付けられている部分の糸をバックワインド糸22、ボビン管21の根元部21bに巻き付けられている部分の糸をボトムバンチ23と称する。
【0032】
ボビン処理装置3には、搬送トレイ14を搬送する搬送路8が形成されている。この搬送路8は、ベルトコンベア等から構成されている。図1に示すように、搬送路8は、自動ワインダ2の供給路6と回収路7とを接続するように構成されている。そしてこの搬送路8の途中には、バンチ巻き解舒を行うためのバンチ解舒装置10、糸端処理を行うための糸端処理装置11、及び口出し処理を行うための口出し装置12が配置されている。
【0033】
また、ボビン処理装置3は、当該ボビン処理装置3が備える各構成を制御するための制御部を備えている。
【0034】
この自動ワインダシステムにおける搬送トレイ14の流れについて説明すると、以下のとおりである。
【0035】
ボビン処理装置3は、給糸ボビンの有無を検出するためのボビンセンサを、搬送路8の各所に備えている。また、ボビン処理装置3は、搬送トレイの有無を検出するためのトレイセンサを、搬送路8の各所に備えている。なお、以下の説明では、ボビンセンサとトレイセンサをまとめて、単に「センサ」と呼ぶ場合がある。
【0036】
例えば、空の搬送トレイ14(ボビンが載っていない搬送トレイ)がボビンシュート9の直下位置16まで到達すると、当該空の搬送トレイ14が前記センサによって検知される。この場合、制御部は、ボビンシュート9を作動させ、前記空の搬送トレイ14の上に給糸ボビン15を1つ、略直立状態で載置する。
【0037】
ボビンシュート9によって給糸ボビン15が載置された搬送トレイ14は、下流側のバンチ解舒装置10へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン15(及び搬送トレイ14)がバンチ解舒装置10の正面位置17に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、バンチ解舒装置10を動作させて、給糸ボビン15に形成されているボトムバンチ23を除去する。
【0038】
より具体的には、バンチ解舒装置10は、給糸ボビン15を回転させるためのボビン回転機構と、ボトムバンチ23を吸引する吸引機構と、吸引機構が吸引した糸を切断する切断機構と、を備えている。バンチ解舒装置10は、ボビン回転機構によって、糸が解舒される方向(解舒方向)に給糸ボビン15を回転させる。これと前後して、バンチ解舒装置10は、前記吸引機構によって、ボビン管21の根元部21b近傍に吸引空気流を発生させる。これにより、根元部21bに巻き付けられているボトムバンチ23が解舒され、吸引機構によって吸引される。バンチ解舒装置10は、吸引された糸を、前記切断機構によって切断する。以上により、給糸ボビン15に形成されたボトムバンチ23を除去することができる。
【0039】
ボトムバンチ23を除去された給糸ボビン15は、更に下流側の糸端処理装置11へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン15(及び搬送トレイ14)が糸端処理装置11の正面位置18に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、糸端処理装置11を動作させて、給糸ボビン15の糸層表面に巻き付いているバックワインド糸22を切断し、先端側巻付部を形成する(後述)。
【0040】
先端側巻付部が形成された給糸ボビン15は、更に下流側の口出し装置12へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン15(及び搬送トレイ14)が口出し装置12の正面位置19に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、口出し装置12を動作させて、糸端処理装置11で形成された先端側巻付部を上方に向けて吸引する。そして、口出し装置12は、吸引した糸をボビン管21の内側に挿入する(口出し)。このように糸端を口出ししておくことにより、巻取ユニット5において、給糸ボビン15の糸端を容易に捕捉することができ、当該巻取ユニット5における糸の巻き取りをスムーズに開始することができる。
【0041】
口出しされた給糸ボビン15(及び搬送トレイ14)は、搬送路8を更に下流へと搬送され、自動ワインダ2の供給路6へと供給される。給糸ボビン15(及び搬送トレイ14)は、供給路6を搬送され、巻取ユニット5のうち何れかに供給される。
【0042】
巻取ユニット5においては、給糸ボビン15から糸の解舒が行われ、解舒された糸がパッケージに巻き取られる。周囲の糸が全て解舒されたボビン管21(空ボビン)を乗せた搬送トレイ14は、巻取ユニット5から排出され、回収路7を介して再びボビン処理装置3の搬送路8に戻される。
【0043】
搬送路8において、ボビンシュート9の上流側には、ボビンプロー13が配置されている。ボビンプロー13は、回収路7から搬送路8に戻ってきた搬送トレイ14に載置されている空ボビンを抜き取るための装置である。空ボビンを乗せた搬送トレイ14がボビンプロー13の直下位置20に到達したことをセンサが検知した場合、制御部は、ボビンプロー13を動作させて、当該空ボビンを搬送トレイ14から抜き取る。
【0044】
次に、本実施形態の糸端処理装置11について、図3及び図4を参照して説明する。
【0045】
糸端処理装置11は、ボビン回転機構24と、サーチャー25と、押さえ部材26と、吹付ノズル27と、を備えている。なお、図中に符号8aで示すのは、搬送路8を構成する丸ベルトコンベアの丸ベルトである。循環駆動される丸ベルト8aに乗って、搬送トレイ14が搬送される。
【0046】
ボビン回転機構24は、搬送トレイ14の外周に接触可能な3つのローラを備えている。3つのローラのうち2つは従動ローラ28,28であり、1つは駆動ローラ29である。
【0047】
従動ローラ28の何れか一方又は両方は、搬送路8を搬送される搬送トレイ14の外周に対して接触又は離間する方向に移動可能に構成されている。従動ローラ28を搬送トレイ14の外周に接触させることで、図3に示すように、2つの従動ローラ28と駆動ローラ29の3点によって搬送トレイ14に接触することができるので、丸ベルト8aによって搬送される搬送トレイ14を所定の位置(具体的には糸端処理装置11の正面位置18)に停止させることができる。
【0048】
ボビン回転機構24は、給糸ボビン15を回転させる駆動源としてのステッピングモータ30を備えている。このステッピングモータ30の出力軸は、駆動ローラ29の回転軸に接続されている。駆動ローラ29及び従動ローラ28を搬送トレイ14に接触させた状態で、ステッピングモータ30によって駆動ローラ29を回転駆動することにより、搬送トレイ14を回転させることができる。これにより、搬送トレイ14に載置された給糸ボビン15を、当該給糸ボビン15の軸線まわりで回転させることができる。
【0049】
押さえ部材26は、ボビン回転機構24によって回転される給糸ボビン15のボビン管21の先端部21aに対して上側から接触し、当該給糸ボビン15を押さえるように構成されている。この押さえ部材26は、ボビン回転機構24によって回転駆動される搬送トレイ14の直上位置に配置されている。また、押さえ部材26は、上下に移動可能に構成されるとともに、ベアリングによって回転自在に支持されている。押さえ部材26の下面26aは、その中央部が上に向けて凹となっている。この下面26aによってボビン管21の先端部21aの上端面を押さえることにより、給糸ボビン15の回転中に軸ブレが発生することを防止する。
【0050】
サーチャー25は、給糸ボビン15の糸に係合する(糸を引っ掛ける)ことができるように構成されたヘラ状の係合部25aを備えている。また、係合部25aの近傍には、糸を切断するための図略のカッターが配置されている。また糸端処理装置11は、サーチャー25を移動させることができるサーチャー移動機構31を備えている。このサーチャー移動機構31は、給糸ボビン15の外周面(糸層表面)に対して接触又は離間する方向で、サーチャー25を移動させることができるように構成されている。また、サーチャー移動機構31は、給糸ボビン15の軸線と平行な方向(上下方向)で、サーチャー25を移動させることができるように構成されている。
【0051】
吹付ノズル27は管状体であり、その先端部27aには空気を噴出するための噴出口33が形成されている。一方、吹付ノズル27の基端部27bは、エアジョイント34に接続されている。このエアジョイント34は、固定ブラケット35に固定されており、エアチューブ36を介して図略の圧縮空気源に接続されている。この構成で、圧縮空気源からの圧縮空気を吹付ノズル27に供給することにより、噴出口33から空気を噴出することができる。
【0052】
この吹付ノズル27は、その噴出口33を給糸ボビン15の糸層表面に接近させて配置されている。またこの吹付ノズル27は、噴出口33から噴出される空気が、ボビン管21の先端部21aに向かうように、適切な角度を有して配置されている。吹付ノズル27をこのように配置することで、噴出口33から噴出された空気は、給糸ボビン15の糸層表面に沿うようにして、ボビン管21の先端部21aに向かって上向きに流れる。
【0053】
吹付ノズル27の噴出口33側の先端部27a(噴出側端部)には、扁平部が形成されている(即ち、先端部27aに絞りが形成されている)。図5に示すように、噴出口33の開口部の形状が扁平形状(平型形状)となっている。噴出口33を扁平形状の扁平部としたことにより、当該噴出口33から扁平状に広がるようにして空気が噴出されるので、給糸ボビン15の表面の広い範囲に空気を吹き付けることができる。なお、扁平部の開口形状(噴出口33の流路断面形状)は、図5に示すように、長孔状となっている。ただし、扁平部の開口形状はこれに限らず、例えば長方形状であっても良いし、楕円形状であっても良い。
【0054】
なお本実施形態では、吹付ノズル27の長手方向の中途部分に屈曲部27cを形成している。これにより、吹付ノズル27の基端側は、その長手方向が略水平となるように配置され、当該吹付ノズル27の先端側は、ボビン管21の先端部21aに向けて斜め上向きとなるように配置されている。屈曲部27cにおいて吹付ノズル27を屈曲させる角度を適切に設定することにより、吹付ノズル27から噴出される空気の方向を適切に設定することができる。
【0055】
なお、本実施形態において、扁平部の長手開口方向は、屈曲部27cの屈曲方向と直交する方向に設定されている。言い替えれば、吹付ノズル27は、扁平部の長手開口方向(噴出口33の流路断面形状の長手方向)と直交する平面内で、屈曲している。このように構成することで、図6に示すように、給糸ボビン15の肩の部分の傾斜面に沿うように扁平部を配置できるので、当該肩の部分の傾斜面に沿うようにして広がる空気を、吹付ノズル27から噴出することができる。
【0056】
次に、糸端処理装置11の動作について説明する。
【0057】
まず、給糸ボビン15を載せた搬送トレイ14が搬送路8を搬送されてきたことがセンサ等によって検出されると、制御部は、前記搬送トレイ14に従動ローラ28を接触させて、当該搬送トレイ14(及び給糸ボビン15)を糸端処理装置11の正面位置18に停止させる。なお前述のように、糸端処理装置11に搬送されてきた給糸ボビン15は、バンチ解舒装置10によってボトムバンチ23が除去された状態である。
【0058】
次に制御部は、押さえ部材26によって給糸ボビン15の先端部21aを押さえる。この状態で、制御部は、ステッピングモータ30によって駆動ローラ29を回転駆動し、給糸ボビン15を軸線まわりに回転させる。このとき、給糸ボビン15の回転方向は、当該給糸ボビン15に糸を巻き付ける方向(解舒方向とは逆方向)とする。なお、ここで仮に給糸ボビン15を解舒方向に回転させてしまうと、当該給糸ボビン15表面のバックワインド糸22が緩んでしまい、サーチャー25によるバックワインド糸22の捕捉及び切断(後述)を適切に行うことができない。従って、糸端処理装置11においては、バンチ解舒装置10における給糸ボビンの回転方向(解舒方向)とは反対方向に給糸ボビンを回転させる必要があるのである。
【0059】
続いて制御部は、サーチャー移動機構31によって、給糸ボビン15の糸層表面にサーチャー25を接近させる。回転する給糸ボビン15の糸層表面にサーチャー25が接近又は接触することにより、当該糸層表面に螺旋状に巻き付いているバックワインド糸22が、サーチャー25の係合部25aに係合する。即ち、バックワインド糸22を係合部25aに引っ掛けて捕捉することができる。
【0060】
この状態で、制御部は、サーチャー移動機構31によって、サーチャー25を上方に向けて移動させる。これによりサーチャー25が備えるカッターによってバックワインド糸22が切断され、糸端が形成される。
【0061】
また、サーチャー25によるバックワインド糸22の捕捉及び切断の開始と前後して、制御部は、吹付ノズル27からの圧縮空気の噴出を開始する。前述のように、吹付ノズル27から噴出される空気は、給糸ボビン15の糸層表面に沿うようにして、ボビン管21の先端部21aに向かって上向きに流れる。これにより、サーチャー25によって切断されたバックワインド糸22のボビン側の糸端が、ボビン管21の先端部21aに向けて吹き上げられる。
【0062】
また前述のように、本実施形態では噴出口33が扁平状に形成されているので、当該噴出口33から噴出される空気は扁平状に広がり、給糸ボビン15の糸層表面の広い範囲に吹き付けられる。これにより、バックワインド糸22に対して確実に空気を吹き付けることができるので、バックワインド糸22を確実に吹き上げることができる。
【0063】
ところで前述のように、給糸ボビン15の先端部21aは押さえ部材26によって押さえられている。従って、吹付ノズル27からの噴出空気によって吹き上げられた糸は、先端部21aの端面よりも上方に移動することができない。結果として、吹付ノズル27によって吹き上げられた糸は、給糸ボビン15の回転によってボビン管21の先端部21aの外周に巻き付けられ、図6に示すように先端側巻付部32が形成される。
【0064】
先端側巻付部32が形成されると、制御部は、サーチャー25及び押さえ部材26を待機位置まで復帰させるとともに、従動ローラ28を搬送トレイ14から離間させる。これにより、搬送トレイ14(及び給糸ボビン15)の搬送が再開され、当該搬送トレイ14(及び給糸ボビン15)が口出し装置12に向けて搬送される。
【0065】
口出し装置12においては、先端側巻付部32を吸引することにより給糸ボビン15の糸端を捕捉して、口出し処理を行う。
【0066】
なお、前述のように、従来のボビン処理装置が備える口出し装置では、切断されたバックワインド糸の糸端を吸引捕捉するために、給糸ボビンの糸層表面全体に吸引空気流を作用させなければならなかった。このため、吸引の効率が悪いとともに、糸端捕捉に失敗することもあった。
【0067】
この点、本実施形態の糸端処理装置11によって先端側巻付部32が形成された給糸ボビン15であれば、当該先端側巻付部32を吸引することにより確実に糸端を捕捉することができる。従って本実施形態の口出し装置12においては、先端側巻付部32の部分にのみ吸引流を発生させれば良いので、効率良く確実に糸端を捕捉することができる。なお、先端側巻付部32は、ボビン管21の小径側である先端部21aに巻き付けられているので、当該ボビン管21の軸線方向に沿って上向きに吸引することにより、ボビン管21から容易に引き抜くことができる。これにより、口出し装置12において、糸端を簡単に捕捉することができる。
【0068】
以上で説明したように、本実施形態の糸端処理装置11は、ボビン回転機構24と、吹付ノズル27と、を備える。ボビン回転機構24は、給糸ボビン15を回転させる。吹付ノズル27は、給糸ボビン15の端部に向けて、給糸ボビン15の表面に沿うように空気を噴出する。そして糸端処理装置11は、糸を巻き付ける方向に給糸ボビン15を回転させながら、吹付ノズル27によって空気を噴出する。
【0069】
この構成により、吹付ノズル27からの噴出空気によってバックワインド糸22が吹き上げられて、回転するボビン管21の端部に巻き付く。このようにボビン管21の端部に糸を巻き付けておくことにより、後工程の口出し装置12において給糸ボビン15の糸を容易に捕捉することができる。
【0070】
また本実施形態の糸端処理装置11において、吹付ノズル27の噴出口33側端部には扁平部が形成されている。
【0071】
これにより、給糸ボビン15の糸層表面の広い範囲に空気を吹き付けることができるので、当該給糸ボビン15の表面の糸を吹き上げ易くなる。
【0072】
また本実施形態の糸端処理装置11において、吹付ノズル27は管状体であり、その長手方向の途中部分に屈曲部27cが形成されている。
【0073】
このように吹付ノズル27を屈曲させて形成することにより、適切な方向に向けて空気を噴出するように吹付ノズル27を配置することが容易になる。
【0074】
また本実施形態の糸端処理装置11において、扁平部の長手開口方向は、屈曲部27cの屈曲方向に直交する方向である。
【0075】
これにより給糸ボビン15の肩部分の傾斜に沿うようにして空気を噴出することができるので、当該給糸ボビン15の表面の糸を吹き上げ易くなる。
【0076】
また本実施形態の糸端処理装置11において、吹付ノズル27は、ボビン管21の小径側である先端部21aに向けて空気を噴出している。
【0077】
これにより、ボビン管21の先端部21aに糸を巻き付けることができる。小径側に巻き付けられた部分の糸は、後工程の口出し装置12においてボビン管21から容易に抜き取ることができる。
【0078】
また本実施形態のボビン処理装置3は、上記の糸端処理装置11と、糸端処理装置11によって処理された給糸ボビン15の口出しを行う口出し装置12と、を備えている。このボビン処理装置3は、供給された給糸ボビン15に対して、糸端処理装置11及び口出し装置12による処理を行って、自動ワインダ2に順次供給する。
【0079】
このボビン処理装置3は、糸端処理装置11によってボビン管21の先端部21aに糸を巻き付けているので、口出し装置12における口出し処理の確実性を向上させることができ。従って、ボビン処理装置3全体の処理効率を向上させることができる。
【0080】
また本実施形態の自動ワインダシステム1は、前記ボビン処理装置3に給糸ボビン15を供給するボビン供給装置4と、ボビン処理装置3によって所定の処理が施された給糸ボビン15から糸を巻き取る自動ワインダ2と、を備えている。
【0081】
即ち、本実施形態の糸端処理装置11によってボビン処理装置3の処理効率を向上させることができるので、自動ワインダシステム1全体の生産性を向上させることができる。
【0082】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0083】
上記実施形態では、精紡機で生成された給糸ボビン15をボビン供給装置4まで運搬し、当該給糸ボビン15をボビン供給装置4に投入する構成として説明した。しかしこれに限らず、例えばボビン処理装置と精紡機との間を搬送路で繋ぎ、精紡機で生成された給糸ボビンがボビン処理装置に対して連続的に供給されるように構成しても良い。この場合、精紡機がボビン供給部に相当する。
【0084】
なお、上記のように精紡機から連続的に給糸ボビン15が供給される構成の場合、給糸ボビン15にバンチ巻きが形成されていない場合が考えられる。この場合、サーチャー25によってバックワインド糸22を切断するという動作は必要ない。しかしこの構成であっても、上記実施形態と同様に、給糸ボビン15を回転させながら吹付ノズル27によって空気を吹き付けることにより、ボビン管21の先端部21aの周囲に糸を巻き付けて先端側巻付部32を形成することができる。これにより、口出し装置12において、口出し処理を容易に行うことができる。このように、給糸ボビン15にバンチ巻きが形成されていない場合であっても、本発明の構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 自動ワインダシステム(糸巻取システム)
2 自動ワインダ(糸巻取装置)
3 ボビン処理装置
11 糸端処理装置
15 給糸ボビン
22 バックワインド糸
23 ボトムバンチ
24 ボビン回転機構
27 吹付ノズル
33 噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンを回転させるボビン回転機構と、
前記給糸ボビンの端部に向けて、当該給糸ボビンの表面に沿うように空気を噴出する吹付ノズルと、
を備え、
糸を巻き付ける方向に前記給糸ボビンを回転させながら、前記吹付ノズルから空気を噴出することを特徴とする糸端処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の糸端処理装置であって、
前記吹付ノズルの噴出側端部には扁平部が形成されていることを特徴とする糸端処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の糸端処理装置であって、
前記吹付ノズルは管状体であり、その長手方向の途中部分に屈曲部が形成されていることを特徴とする糸端処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の糸端処理装置であって、
前記扁平部の長手開口方向は、前記屈曲部の屈曲方向に直交する方向であることを特徴とする糸端処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の糸端処理装置であって、
前記吹付ノズルは、前記給糸ボビンの小径側に向けて空気を噴出することを特徴とする糸端処理装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸端処理装置と、
上記糸端処理装置によって処理された給糸ボビンの口出しを行う口出し装置と、
を備え、
供給された給糸ボビンに対して、前記糸端処理装置及び前記口出し装置による処理を行って、糸巻取装置に順次供給することを特徴とするボビン処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載のボビン処理装置と、
前記ボビン処理装置に給糸ボビンを供給するボビン供給部と、
前記ボビン処理装置によって所定の処理が施された給糸ボビンから糸を巻き取る糸巻取装置と、を備えることを特徴とする糸巻取システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−6674(P2013−6674A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141250(P2011−141250)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】