説明

糸継ぎ装置に配置された糸供給器の旋回ストロークを較正するための方法ならびに該方法を実施するための糸継ぎ装置

【課題】通常の巻取りプロセス中に時々必要となる糸継ぎ過程において、所定の作業位置へ旋回導入された糸供給器が所望の作業位置に実際にも正確に位置決めされることを比較的容易に確保することのできる方法を提供する。
【解決手段】糸供給器30を、その旋回ストロークを較正するために、センサにより設定されたゼロ位置Iから、糸供給器30の正規の旋回ストローク外に配置されたストッパ18,20に当接するまで旋回させ、旋回過程の間、ステップモータ36により実施された作業ステップの回数をカウントして、作業ステップの基準値として設定された回数と比較し、該比較により、補正ファクタを形成し、後続の、糸継ぎ過程の途中で正規の巻取り運転中に必要となる旋回過程において、該旋回過程の際に前記補正ファクタを考慮することにより、規定可能な作業位置における当該糸供給器30の正確な位置決めを保証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の糸継ぎ装置に配置された、ステップモータによって駆動可能な糸供給器(Fadenzubringer)の旋回ストロークを較正するための方法であって、該方法は、糸供給器がゼロ位置から規定可能な作業位置へ旋回して、このときに準備された糸端部を、予め規定された長さで糸継ぎ装置の糸継ぎ通路内に位置決めするようにステップモータが制御可能である方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、このような方法を実施するための糸継ぎ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
角柱(プリズム)状の糸継ぎヘッド(Spleissprisma)に設けられた糸継ぎ通路内に2つの糸端部を位置決めするための糸供給器を備えた糸継ぎ装置は、繊維工業において、特に自動綾巻きワインダと関連して、久しく以前より知られており、多数の特許文献において詳しく説明されている。
【0004】
このような糸継ぎ装置を用いて、2つの糸端部をニューマチック式(空気力式)に交絡させて、結び目なしの結合部を形成することができ、この場合、両糸端部は、理想事例ではこの結合部がほぼ糸と同じ強度を有し、かつほとんど糸と同じ外観を有するように交絡させられる。このことは、自動綾巻きワインダの作業部もしくは糸巻返し部において巻取りプロセス中に糸切れまたは規定されたクリアラ切断が生じた場合に、このときに発生した糸端部が、特別なニューマチック式の装置によって、有利にはグリッパ管とサクションノズルとによってまず糸継ぎ装置の範囲へ連れ戻されることを意味する。サクションノズルはこの場合、綾巻きパッケージから「上糸」を連れ戻し、この上糸を糸継ぎ装置の角柱状の糸継ぎヘッドに設けられた糸継ぎ通路内に挿入する。
【0005】
巻取り位置に位置決めされた給糸ボビンからの「下糸」は、相応して、負圧をかけられるようになっているグリッパ管によって角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路内に挿入される。糸継ぎ通路内への挿入時に、糸はさらに、糸継ぎ通路の上下に配置された糸クランプ装置および糸切断装置内へ手繰り込まれる。
【0006】
次いで、糸は糸切断装置によって所定の長さに切断されて、保持・解撚管内で後続の糸継ぎ過程のために準備される。このことは、糸端部は保持・解撚管内でまずその糸撚りを十分に除去されてから、糸供給器によって糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路内へ、両糸端部が該糸継ぎ通路内で相並んで位置するように引き戻され、こうしてこの糸継ぎ通路内でニューマチック式に交絡され得るようになることを意味する。
【0007】
たとえばシュラーフホルスト社(Firma Schlafhorst)のハンドブック「AUTOCONER System 238」の第1.5.9頁〜第1.5.9(4)頁および第1.5.12頁および第1.5.14頁に記載されているように、この公知の、それ自体有利であると立証されている糸継ぎ装置では、種々の機能エレメントの駆動が、いわゆるカムディスク駆動装置を介して行われる。すなわち、糸継ぎ装置の駆動装置ハウジング内には、カムディスクユニットが支承されており、このカムディスクユニットは、たとえば差込みカップリングを介して、巻取り部固有の駆動装置に接続されている。個々のカムディスク自体は、相応するレバーリンク機構を介して糸継ぎ装置の機能エレメントに結合されている。
【0008】
糸継ぎ装置と関連して、当業者には、ニューマチック式に形成された糸結合部の強度および外観にとっては以下に挙げる点が決定的となることも知られている。
【0009】
保持・解撚管内での糸端部の整然とした準備ならびに糸継ぎ通路内での糸端部の十分な交絡の他に、とりわけ角柱状の糸継ぎヘッドに設けられた糸継ぎ通路内での両糸端部の重なり長さが極めて重要となる。
【0010】
自動綾巻きワインダにおいては一般に、たとえば糸番手および/または糸材料に関して互いに大きく異なる特性を持った糸が加工されるので、糸ロット交換時では、整然とした状態の糸継ぎ部を得るために重要となるパラメータもそれぞれ新しい糸に正確に適合されると有利である。
【0011】
保持・解撚管内での糸端部のニューマチック式の準備および糸継ぎ通路内での糸端部の交絡の度合いは、相応する電磁式のニューマチック弁の開放時間により比較的簡単に調節され得ると共に、ロット交換時には、たとえば繊維機械の中央制御ユニットを介して問題なく遠隔制御されて変更され得る。
【0012】
それに対して、糸継ぎ通路内に位置決めしたい両糸端部の重なり長さの変更は、より困難であり、たいていの公知の糸継ぎ装置ではその都度、手によるマニュアル式の干渉を必要とする。このことは、ロット交換時に1台の自動綾巻きワインダの多数の作業部もしくは糸巻返し部のそれぞれにおいて、各糸継ぎ装置の糸供給器のためのストッパが個々に手によって新たに位置調整されなければならないことを意味する。
【0013】
糸供給器ストッパのこのようなマニュアル式の調節は面倒でかつ時間がかかるので、過去においては既に、糸供給器の旋回ストロークの遠隔制御式の調節を可能にし、ひいては糸継ぎ通路内で継ぎ合わせたい糸端部の重なり長さの遠隔制御式の調節を可能にする糸継ぎ装置が開発されている。
【0014】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19921855号明細書には、たとえば繊維機械の中央制御ユニットから糸供給器の旋回ストロークを調節することが可能となる糸継ぎ装置が記載されている。この公知の糸継ぎ装置は駆動装置ハウジングを有しており、この駆動装置ハウジングは溝付ドラムを備えている。溝付ドラムは、互いに異なって形成された複数の溝軌道を有している。溝付ドラムは可逆式のステップモータにより駆動される。このステップモータは制御線路を介して巻取り機の中央制御ユニットに接続されている。個々の溝軌道に沿って制御カムが走行する。これらの制御カムは相応するリンク機構を介して糸継ぎ装置の機能エレメントを操作する。極めて手間をかけて形成されたこれらの溝軌道のうちの1つを介して、たとえば糸供給器が制御可能となる。糸供給器のための溝軌道は、部分的に段状に延びていて、特殊なレバーリンク機構と相まって、糸供給器の旋回ストロークの規定された調節を可能にする。
【0015】
しかし、上記ドイツ連邦共和国特許出願公開第19921855号明細書に記載の糸継ぎ装置の構造は極めて複雑であり、そしてとりわけその比較的手間のかかる溝付ドラムに基づき、製造に大きなコストがかかってしまう。
【0016】
所定の長さに切断されかつ準備された糸端部が、予め設定可能な長さで糸継ぎ装置の糸継ぎ通路内に位置決めされるように自動綾巻きワインダの中央制御装置を介して制御可能となる糸供給器を備えた糸継ぎ装置は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10224080号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10224081号明細書またはドイツ連邦共和国特許出願公開第102006006390号明細書に基づいても公知である。
【0017】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10224080号明細書には、たとえば糸供給器が、規定された通りに制御可能となる別個の駆動装置を有している糸継ぎ装置が記載されている。すなわち、そのゼロ位置において機械的に調節可能なストッパに当接する糸供給器が、自動綾巻きワインダの中央制御装置を介して調節可能となる旋回ストロークを有するステップモータによって、予め設定可能な作業位置へ旋回され得る。
【0018】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10224081号明細書にも、比較可能な糸継ぎ装置が記載されている。この公知の糸継ぎ装置では、糸供給器の作業位置が、調節可能なストッパによって設定可能である。糸供給器のための、ステップモータによって規定されて調節可能となるストッパは、糸継ぎ装置の分配器ハウジングの範囲に据え付けられていて、この場合、ストッパの角度位置により糸供給器の旋回ストロークが設定され、ひいては糸継ぎ通路内の糸端部の重なり長さも設定され得る。
【0019】
しかし、前で説明した糸継ぎ装置において不都合となるのは、その機械的なストッパである。巻取りプロセスの間、糸供給器は各糸継ぎ過程のたびに作動させられなければならず、ひいてはゼロ位置への進入時(ドイツ連邦共和国特許出願公開第10224080号明細書)または作業位置への進入時(ドイツ連邦共和国特許出願公開第10224081号明細書)には常に比較的硬く、対応するストッパに衝突するので、これらの装置では時間の経過と共に糸供給器もしくはその支承装置における損傷をほとんど回避することができない。
【0020】
それゆえに、過去においては、回転角度センサによって糸継ぎ装置の機能エレメントの位置決めを監視し、ひいては糸供給器の旋回ストロークを監視することも既に提案されている。
【0021】
このように構成された糸継ぎ装置は、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第102006006390号明細書に記載されている。このような回転角度センサの使用により、たとえ糸供給器およびその支承部における機械的な損傷を十分に回避することができるとしても、このような糸継ぎ装置は実際には、特にその比較的高い製造コストに基づき普及し得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19921855号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10224080号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10224081号明細書
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006006390号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上に挙げた公知先行技術に鑑み、本発明の根底を成す課題は、通常の巻取りプロセス中に時々必要となる糸継ぎ過程において、所定の作業位置へ旋回導入された糸供給器が所望の作業位置に実際にも正確に位置決めされることを比較的容易に確保することのできる方法を提供することである。
【0024】
さらに本発明の課題は、本発明による方法を実施することを可能にする糸継ぎ装置を提供することである。
【0025】
この場合、特に巻取りプロセスの途中で糸継ぎ過程が必要となった場合に糸供給器の位置決め時にいかなる機械的なストッパの使用も不要にされることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この課題を解決するために本発明の方法では、糸供給器を、その旋回ストロークを較正するために、センサにより設定されたそのゼロ位置から、糸供給器の正規の旋回ストローク外に配置されたストッパに当接するまで旋回させ、旋回過程の間、ステップモータにより実施された作業ステップの回数をカウントして、作業ステップの基準値として設定された回数と比較し、該比較により、補正ファクタを形成し、後続の、糸継ぎ過程の途中で正規の巻取り運転中に必要となる旋回過程において、該旋回過程の際に前記補正ファクタを考慮することにより、規定可能な作業位置における当該糸供給器の正確な位置決めを保証するようにした。
【0027】
さらに上記課題を解決するために本発明の糸継ぎ装置の構成では、糸供給器が、ステップモータによって移動可能であり、糸供給器をそのゼロ位置に位置決めするためにホールセンサが設けられており、該ホールセンサならびにステップモータが、作業部コンピュータの評価装置に接続されており、糸供給器の正規の旋回ストローク外に、規定された位置でストッパが配置されているようにした。
【0028】
本発明による方法の有利な実施態様は請求項2〜8に記載されている。
【0029】
本発明による糸継ぎ装置の有利な実施態様は請求項10〜14に記載されている。
【発明の効果】
【0030】
本発明による方法には特に、巻取りプロセスの開始前に、ひいては糸継ぎ過程の開始前に、糸継ぎ装置に配置された糸供給器の旋回ストロークの正確な較正が遠隔制御されて実現され得るので、その結果、引き続き行われる巻取りプロセスの間、糸継ぎ過程において糸供給器の正確な位置決めが保証されるという利点がある。
【0031】
すなわち、巻取りプロセスの開始前に、糸供給器が、その旋回ストロークの実際値を求めるために、もしくは補正ファクタを規定するために、センサにより設定されたゼロ位置から糸供給器の正規の旋回ストローク外に配置されたストッパにまで旋回させられたときにのみ、ストッパとの機械的な接触が生じる。後続の巻取り運転において必要となる糸継ぎ過程において、糸供給器の旋回ストロークの実際値と基準値との間の比較により求められた補正ファクタ(たとえば実際値と基準値との差)を考慮して(前記差を加算するか減算するかして)その都度、糸供給器が位置決めされるが、この糸継ぎ過程の間、糸供給器は完全に無接触に作動する。すなわち、糸供給器は通常の糸継ぎ運転の間、そのゼロ位置においても作業位置においても、いかなる機械的なストッパにも接しない。
【0032】
請求項2に記載されているように、本発明の有利な実施態様では、糸供給器の旋回ストロークの較正がオペレータによってマニュアル式に開始させられる。較正のこのようなマニュアル式の開始には、特に次のような利点がある。すなわち、オペレータは、当該糸継ぎ装置の糸継ぎ結果が規定の規準以下であると思われたときには、いつでも問題なく干渉することができる。
【0033】
糸供給器の較正過程をマニュアル式に開始させる代わりに、請求項3に記載されているように、較正過程を機械固有の制御装置により自動的に開始させることもできる。このような場合には、機械固有の制御装置が、糸供給器の旋回ストロークの較正を、請求項4に記載されているように、規定可能な時間インターバルで自動的に開始させるか、または請求項5に記載されているように、それぞれ糸継ぎ過程の設定可能な回数の後にその都度自動的に開始させる。両事例において、糸継ぎ結果が規定可能なレベルに保持されることが保証されている。
【0034】
請求項6に記載の有利な実施形態では、糸継ぎ結果に欠陥がある場合にも、機械固有の制御装置が、直ちに自動的に糸供給器の旋回ストロークの較正を開始させるようになっている。すなわち、機械固有の制御装置により、糸継ぎ結果が高いレベルに維持されることが自動的に確保される。
【0035】
請求項7および請求項8に記載されている有利な実施態様では、糸供給器が較正過程の途中で相前後して複数回、それぞれ種々異なる作業ステップ回数を用いて、ゼロ位置から所定のストッパに当接するまで旋回させられる。糸供給器をストッパに正確に位置決めするために必要となる作業ステップ回数は正確に知られていないので、糸供給器はまず、少しだけ過剰増大された作業ステップ回数で旋回させられ、その結果、糸供給器はストッパへの当接後に再び少しだけ跳ね戻る。この、ストッパに対して少しだけ間隔を置いた位置から、糸供給器は引き続き再びそのゼロ位置へ戻し旋回させられる。糸供給器の戻し旋回時には、糸供給器をその都度の位置から再びセンサにより設定されたゼロ位置へ戻すために必要となるステップモータの作業ステップの回数がカウントされる。すなわち、糸供給器を再びそのゼロ位置に位置決めするためにステップモータによって実施される作業ステップ回数から、糸供給器の予想旋回ストロークが推量される。予想旋回ストロークは、後続の糸供給器の旋回過程の際に、たとえば作業ステップ回数を減少させることによって考慮される。
【0036】
前で説明した方法により、糸供給器のセンサにより設定されたゼロ位置と、ストッパへの正確な当接との間の糸供給器の正確な実際旋回ストロークを比較的簡単に求めることができるだけでなく、比較的迅速にかつ信頼性良く求めることもできる。
【0037】
ステップモータの使用には、次のような利点がある。すなわち、導入された電流パルスの回数によりステップモータを簡単に正確な角度で制御することができ、したがって大きな付加的な制御手間が必要とならない。さらに、大量生産製品として市販されているこのようなステップモータは比較的廉価であり、そして大きな信頼性および長い寿命の点ですぐれている。
【0038】
請求項9に記載されているように、本発明の糸継ぎ装置の構成では、糸継ぎ装置が、糸供給器を旋回させるためのステップモータと、糸供給器をそのゼロ位置にセンサにより位置決めするためのホールセンサとを有しており、このホールセンサは糸供給器に配置された永久磁石に対応している。ステップモータもホールセンサも、評価装置を有する作業部コンピュータに接続されている。
【0039】
さらに、このような糸継ぎ装置は、糸供給器の正規の旋回ストローク外に、規定された位置で配置されているストッパを有している。このようなストッパは本発明による較正方法を問題なく使用することを可能にする。すなわち、このように装備された糸継ぎ装置を用いると、糸供給器のセンサにより設定可能なゼロ位置と所定のストッパとの間の糸供給器のその都度の実際旋回ストロークの正確な検出が簡単に可能となり、ひいては補正ファクタの形成が簡単に可能となる。
【0040】
糸供給器の正規の旋回ストローク外に配置されたこのようなストッパは、請求項10に記載されているように、当該糸継ぎ装置の分配器ハウジング内に固定に組み込まれたストッパとして形成されているか、または請求項11に記載されているように、必要に応じて一次的に当該糸継ぎ装置に位置決めすることのできる、取外し可能なストッパゲージにより形成される。両実施形態は、それぞれそれ自体互いに異なる利点を有する極めて有利な構成を成している。すなわち、両ストッパ形態により、糸継ぎ装置の糸供給器の旋回ストロークの正確な較正が簡単に可能となる。
【0041】
請求項10に記載されているように分配器ハウジング内に固定に組み込まれているストッパにより、たとえばストッパを保管しておき、必要に応じて準備しなければならないことを簡単に回避することができる。さらに、このような固定のストッパにより、ストッパが常に規定通りに位置決めされていることがいつでも保証されている。
【0042】
それに対して、請求項11に記載されているストッパゲージには、あとから使用することができるという利点がある。すなわち、このストッパゲージは、糸継ぎ装置が固定のストッパを有していないような繊維機械においても使用可能となる。したがって、このようなストッパゲージを用いると、旧式の自動綾巻きワインダをも、糸継ぎ装置の糸供給器の旋回ストロークを較正するための本発明による方法が使用され得るように、あとから改良することができる。
【0043】
請求項12に記載されている有利な実施態様では、各糸巻返し部もしくは各作業部に、マニュアル式に手動切換可能な操作装置が設けられており、該操作装置によって必要に応じて糸供給器の旋回ストロークの較正をオペレータによって開始させることができる。すなわち、この操作装置はオペレータに、必要に応じて直ちに干渉することを可能にする。
【0044】
しかし、糸継ぎ装置には、請求項13に記載されているように、機械固有の制御装置が装備されていてもよい。この制御装置は、たとえば予め規定可能な時間間隔で、または予め規定可能な糸継ぎ過程回数後に、糸供給器の旋回ストロークの較正を自動的に開始させる。このことは、このような機械固有の制御装置により、糸継ぎ部が、予め設定可能なレベルを下回らないことが自動的に配慮される。
【0045】
当然ながら、請求項14に記載されているように、糸巻返し部もしくは作業部は、その糸供給器が機械固有の制御装置によって自動的に較正されるけれども、付加的に、マニュアル式に手動切換可能な装置を備えていてもよい。このように装備された作業部では、糸継ぎ装置を必要に応じて常に迅速にかつ問題なく補正することができる。すなわち、このような作業部では、許容され得ない糸継ぎ部が形成されることを比較的容易に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による方法により糸供給器の旋回ストロークが較正可能となる糸継ぎ装置を備えた自動綾巻きワインダの作業部を示す側面図である。
【図2】センサにより所定のゼロ位置に位置決め可能でありかつステップモータによって、予め設定可能な作業位置もしくはストッパ位置へ旋回可能となる糸供給器を備えた糸継ぎ装置の平面図である。
【図3】糸供給器の旋回ストローク外に配置された、糸継ぎ装置の分配器ハウジング内に固定に組み込まれたストッパを備えた糸継ぎ装置の斜視図である。
【図4】必要に応じて一次的に糸継ぎ装置に位置決め可能となる、取外し可能なストッパゲージを備えた糸継ぎ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0048】
図1には、自動綾巻きワインダ1の実施形態が示されている。図1には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部もしくは糸巻返し部が、全体を符号2で示されている。このような自動綾巻きワインダ1はそのアウトエンド(図示しない)の間に同一形式の多数の作業部2を有している。これらの作業部2では、有利にはリング精紡機において生産された複数の精紡コップ9が巻き返されて、大体積の綾巻きパッケージ15を形成する。綾巻きパッケージ15はその完成後に、自動式に作動するサービスユニット(同じく図示しない)によって、機械長さの綾巻きパッケージ搬送装置21へ引き渡される。
【0049】
このような自動綾巻きワインダ1はさらに、しばしばロジスティック装置、たとえばボビン・巻き管搬送システム3の形のロジスティック装置を備えている。図1には、このボビン・巻き管搬送システム3のうちコップ供給区間4、可逆式に駆動可能な貯え区間5、作業部2に通じた横方向搬送区間6ならびに巻き管戻し区間7しか図示されていない。
【0050】
このボビン・巻き管搬送システム3では、搬送ディスク8に鉛直方向に向けられて位置決めされた状態で精紡コップ9もしくは空管が循環する。ボビン・巻き管搬送システム3を介して提供された精紡コップ9は、それぞれ横方向搬送区間6の範囲で作業部2に位置している繰出し位置ASにおいて、大体積の綾巻きパッケージ15を形成するために巻き返される。
【0051】
このような自動綾巻きワインダ1は一般にさらに中央制御ユニット49を装備している。この中央制御ユニット49は、たとえば機械バス50を介して個々の作業部2の作業部コンピュータ29に接続されている。中央制御ユニット49および/または作業部コンピュータ29によって、作業部2の種々の装置を規定された通りに制御することができる。
【0052】
個々の作業部2は、自体公知であるように、たとえば作業部2の整然とした運転を可能にする種々の装置を有している。
【0053】
このような作業部2は、たとえば巻取り装置24を備えている。この巻取り装置24は旋回可能に支承されたパッケージフレーム28を有している。このパッケージフレーム28には、自由に回転可能に綾巻きパッケージ15が保持されている。この綾巻きパッケージ15は巻取りプロセスの間、図1の実施形態に図示されているように、その表面が溝付ドラム14に載置されている。溝付ドラム14は摩擦結合により綾巻きパッケージ15を連行し、さらに綾巻きパッケージ15に巻き取られる糸の整然とした綾振りを生ぜしめる。このような作業部2はさらに、それぞれ旋回軸線16を中心にして制限された範囲で旋回可能に支承された、上糸31をハンドリングするための負圧負荷可能な、つまり負圧をかけられるようになっているサクションノズル12と、旋回軸線26を中心にして制限された範囲で旋回可能に支承された、下糸32をハンドリングするための負圧負荷可能な、つまり負圧をかけられるようになっているグリッパ管25とを備えている。さらに、このような作業部2はそれぞれニューマチック式(空気力式)の糸継ぎ装置10を有している。この糸継ぎ装置10は作業部2の通常の糸走路に関して少しだけ後方にずらされて配置されている。
【0054】
さらに、作業部2はそれぞれ、図1に図示されているように、オペレータによりマニュアル式に手動切換可能な操作装置61を備えていてよい。この操作装置61を介して、必要に応じて、糸供給器30の旋回ストロークの較正を開始することができる。
【0055】
このような糸継ぎ装置10は、特に図2もしくは図3および図4につき判るように、とりわけそれぞれ角柱状の糸継ぎヘッド17を有している。この角柱状の糸継ぎヘッド17はニューマチック式に負荷可能な糸継ぎ通路23を備えており、この場合、糸継ぎ通路23は糸継ぎ装置10に設けられた分配器ハウジング13に固定されている。
【0056】
さらに、このような糸継ぎ装置10は旋回可能に支承された糸寄せ器もしくは糸供給器30と、旋回可能に支承されたカバーエレメント11とを有している。分配器ハウジング13内には、さらに保持・解撚管34が嵌め込まれている。これらの保持・解撚管34は規定された通りに圧縮空気で負荷されるようになっており、すなわち保持・解撚管34には規定された通りに圧縮空気が供給されるようになっている。保持・解撚管34は必要に応じて、糸継ぎの前に上糸および下糸の糸端部から十分に糸撚りが取り除かれるようにするために働く。
【0057】
このような糸継ぎ装置10の範囲には、さらに上側および下側の糸クランプ・切断装置(図示しない)が配置されている。
【0058】
図2に示した実施形態では、糸継ぎ装置10が、スプライサハウジング35内に配置された電動モータ式の個別駆動装置を有している。この個別駆動装置は有利にはステップモータ36として形成されていて、複数の信号線路54を介して作業部コンピュータ29に接続されている。図面から判るように、ステップモータ36のモータシャフトには駆動ピニオン37が配置されており、この駆動ピニオン37は、制御セグメント39に設けられた外側歯列38と噛み合っている。制御セグメント39は支承軸40に、制限された範囲で回転可能に支承されていて、固定手段41を介してレバー機構42に接続されている。このレバー機構42はやはり支承軸40に配置されている。レバー機構42は第1のレバー43を有しており、この第1のレバー43には、接続軸44を介して、糸クランプ・切断装置を操作するための結合部材45が枢着されている。レバー機構42はさらに第2のレバー46を有しており、この第2のレバー46は結合部材48を介してカバーエレメント11に結合されている。
【0059】
両レバー43,46の間には、ばねエレメント47が接続されており、このばねエレメント47は、制御セグメント39の旋回時に第1のレバー43を介して第2のレバー46を摩擦結合式に連行する。
【0060】
ばねエレメント47はこの場合一方では、角柱状の糸継ぎヘッド17へカバーエレメント11が早期に装着されると同時に制御セグメント39がさらに旋回させられることに基づき、糸継ぎ装置10に損傷が生じ得ることを阻止し、他方では糸クランプ・切断装置の相応する構成と相まって制御セグメント39の大きな旋回ストロークを可能にする。制御セグメント39はその周面51の範囲に第2の枢着手段、有利にはボールジョイント接続部52の形の第2の枢着手段を有しており、このボールジョイント接続部52には、糸供給器30の制御リンク機構53が接続されている。
【0061】
図2、図3および図4に図示されているように、本発明による方法を実施するための糸継ぎ装置10は、この糸継ぎ装置10のスプライサハウジング35の範囲にホールセンサ56を有している。このホールセンサ56は信号線路55を介して作業部コンピュータ29に接続されている。ホールセンサ56は、糸供給器30の後側の延長部19に配置された永久磁石57に対応する。
【0062】
すなわち、作業部コンピュータ29は、ホールセンサ56の相応する信号に関連して、糸供給器30が常に、センサにより規定されたゼロ位置Iに位置決めされるようにステップモータ36を制御することができる。しかし、糸供給器30のゼロ位置Iは、たとえばホールセンサ56の取付け位置および/または永久磁石57の配置に関連して、糸継ぎ装置毎に少しだけ互いに異なっている場合がある。糸供給器30の各ゼロ位置Iから糸供給器30を、角柱状の糸継ぎヘッド17の範囲における規定可能な位置へ旋回させることができる。
【0063】
巻取り過程の開始前に、糸供給器30はその旋回ストロークを本発明により較正するために、正規の旋回ストローク外に配置されたストッパ18,20へ当接するまで旋回させられる。
【0064】
有利な実施形態では、糸供給器30が順次に複数回、それぞれ旋回ストロークの補正下に、糸供給器30の正規の旋回ストローク外に配置されたストッパ18,20へ当接するまで旋回させられ、このときに順次に、ゼロ位置とストッパとの間の旋回ストロークの適正な長さが求められる。次いで、作業部コンピュータ29に組み込まれた評価装置により、旋回ストロークの求められた長さと、既知の基準値とから補正ファクタKF(たとえば旋回ストロークの求められた長さと既知の基準値との差)が算出される。この補正ファクタKFはあとで、所定の作業位置に糸供給器30を正確に位置決めするために使用される。すなわち、標準の巻取りプロセス中でのあとからの糸継ぎ過程において、糸供給器30はそれぞれ無接触に正確な作業位置に位置決めされる。次いで、この規定可能な作業位置において、各糸継ぎ過程のために規定された両糸端部も、常に角柱状の糸継ぎヘッド17の糸継ぎ通路23内に、正確に規定された重なり合いを持って位置決めされる。
【符号の説明】
【0065】
1 自動綾巻きワインダ
2 作業部
3 ボビン・巻き管搬送システム
4 コップ供給区間
5 貯え区間
6 横方向搬送区間
7 巻き管戻し区間
8 搬送ディスク
9 精紡コップ
10 糸継ぎ装置
11 カバーエレメント
12 サクションノズル
13 分配器ハウジング
14 溝付ドラム
15 綾巻きパッケージ
16 旋回軸線
17 糸継ぎヘッド
18 ストッパ
19 延長部
20 ストッパ
21 綾巻きパッケージ搬送装置
23 糸継ぎ通路
24 巻取り装置
25 グリッパ管
26 旋回軸線
28 パッケージフレーム
29 作業部コンピュータ
30 糸供給器
31 上糸
32 下糸
34 保持・解撚管
35 スプライサハウジング
36 ステップモータ
37 駆動ピニオン
38 外側歯列
39 制御セグメント
40 支承軸
41 固定手段
42 レバー機構
43 第1のレバー
44 接続軸
45 結合部材
46 第2のレバー
47 ばねエレメント
48 結合部材
49 中央制御ユニット
50 機械バス
51 周面
52 ボールジョイント接続部
53 制御リンク機構
54 信号線路
55 信号線路
56 ホールセンサ
57 永久磁石
61 操作装置
AS 繰出し位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の糸継ぎ装置に配置された、ステップモータによって駆動可能な糸供給器の旋回ストロークを調節するための方法であって、該方法は、糸供給器がゼロ位置から規定可能な作業位置へ旋回して、このときに準備された糸端部を、予め規定された長さで糸継ぎ装置の糸継ぎ通路内に位置決めするようにステップモータが制御可能である方法において、
糸供給器(30)を、その旋回ストロークを較正するために、センサにより設定されたそのゼロ位置(I)から、糸供給器(30)の正規の旋回ストローク外に配置されたストッパ(18,20)に当接するまで旋回させ、
旋回過程の間、ステップモータ(36)により実施された作業ステップの回数をカウントして、作業ステップの基準値として設定された回数と比較し、
該比較により、補正ファクタ(KF)を形成し、
後続の、糸継ぎ過程の途中で正規の巻取り運転中に必要となる旋回過程において、該旋回過程の際に前記補正ファクタ(KF)を考慮することにより、規定可能な作業位置における当該糸供給器(30)の正確な位置決めを保証する、
ことを特徴とする、糸継ぎ装置に配置された糸供給器の旋回ストロークを調節するための方法。
【請求項2】
糸供給器(30)の旋回ストロークの較正を、オペレータによってマニュアル式に開始させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
糸供給器(30)の旋回ストロークの較正を、機械固有の制御装置(29,49)によって開始させる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
糸供給器(30)の旋回ストロークの較正を、機械固有の制御装置(29,49)によって、設定可能な時間インターバルで自動的に開始させる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
糸供給器(30)の旋回ストロークの較正を、機械固有の制御装置(29,49)によって、糸継ぎ過程の設定可能な回数の後にその都度自動的に開始させる、請求項3記載の方法。
【請求項6】
欠陥のある糸継ぎ結果が検知されると、糸供給器(30)の旋回ストロークの較正が、機械固有の制御装置(29,49)によって開始可能である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
糸供給器(30)を較正の途中で相前後して複数回、それぞれ種々異なる作業ステップ回数を用いて、ゼロ位置(I)からストッパ(18,20)に当接するまで旋回させる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
糸供給器(30)をストッパ(18,20)への当接後にその都度ゼロ位置(I)へ戻し旋回させ、この場合、このために必要となるステップモータ(36)の作業ステップの回数をカウントし、ストッパ(18,20)への糸供給器(30)の次の当接時に考慮する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法を実施するための糸継ぎ装置において、糸供給器(30)が、ステップモータ(36)によって移動可能であり、糸供給器(30)をそのゼロ位置(I)に位置決めするためにホールセンサ(56)が設けられており、該ホールセンサ(56)ならびにステップモータ(36)が、作業部コンピュータ(29)の評価装置に接続されており、糸供給器(30)の正規の旋回ストローク外に、規定された位置でストッパ(18,20)が配置されていることを特徴とする糸継ぎ装置。
【請求項10】
糸供給器(30)の正規の旋回ストローク外に配置されたストッパが、当該糸継ぎ装置(10)の分配器ハウジング(13)内に固定に組み込まれたストッパ(18)である、請求項9記載の糸継ぎ装置。
【請求項11】
糸供給器(30)の正規の旋回ストローク外に配置されたストッパが、取外し可能なストッパゲージ(20)により形成され、該ストッパゲージ(20)が、一次的に糸継ぎ装置(10)に位置決め可能である、請求項9記載の糸継ぎ装置。
【請求項12】
各作業部(2)に、マニュアル式に手動切換可能な操作装置(61)が設けられており、該操作装置(61)によって糸供給器(30)の旋回ストロークの較正が開始されるようになっている、請求項9記載の糸継ぎ装置。
【請求項13】
機械固有の制御装置(29,49)が設けられており、該制御装置(29,49)によって糸供給器(30)の旋回ストロークの較正が自動的に開始される、請求項9記載の糸継ぎ装置。
【請求項14】
糸供給器(30)の旋回ストロークの較正をマニュアル式に開始させるための操作装置(61)も、糸供給器(30)の旋回ストロークの較正を自動的に開始させるための機械固有の制御装置(29,49)も設けられている、請求項9記載の糸継ぎ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−144372(P2012−144372A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3271(P2012−3271)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】