説明

系統切替手順計画方法、系統切替手順計画システム、プログラム、および記録媒体

【課題】効率よく供給信頼度の高い停電作業計画における系統切替手順計画を立てることができるようにする。
【解決手段】コンピュータが、電力系統における電力設備のそれぞれの状態を示す常時系統をメモリに記憶し、電力設備を特定する情報に対応付けて、電力系統の供給信頼度を算出するための信頼度情報をメモリに記憶し、停電作業の対象となる電力設備である停電対象設備の指定を受け付け、電力系統において停電対象設備が停電状態となる系統候補を生成し、系統候補のそれぞれについて、系統候補における前記電力設備の状態と、信頼度情報とに基づいて供給信頼度を算出し、供給信頼度に基づいて作業系統を決定することで停電作業計画を作成し、常時系統から作業系統、作業系統から作業系統、作業系統から常時系統に移行するための操作中系統を基に操作票を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、系統切替手順計画方法、系統切替手順計画システム、プログラム、および記録媒体に関し、とくに、効率よく供給信頼度の高い停電作業計画における系統切替手順計画を立てるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、わが国における電力の需要量は増加の一途を辿っている。電力需要量の増加に伴い、発電機や変圧器、送電線等の電力設備の増強が行われ、電力系統の規模は非常に複雑なものとなってきている。一方、経済のグローバル化に伴い国際競争が激化していく中で、電力料金は欧米並の低廉化が求められており、電力市場においては規制緩和等により競争原理が導入され始めている。そしてこのような時代背景の中で、電力会社等は電力設備のスリム化を促進し、最小限の設備で最大のサービスを提供することが求められるようになってきている。
【特許文献1】特開平8−322149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように社会的な要請に応えなければならない一方で、電力会社等は電力の安定供給のために、電力設備の増設、改良、修繕、点検などの業務を遂行していかねばならない。ここでこれらの業務の遂行に際しては、電力設備の機能を停止させる作業(以下、停電作業という。)が必要となるが、この停電作業に際しては、系統切換、発雷時期や重負荷時期における制約、同調作業による作業停止期間の減少等の諸事情を加味し、可能な限り停電作業による需要者等への影響を抑えるように作業計画(以下、停電作業計画という。)を立てる必要がある。
【0004】
しかしながら、停電作業計画に際しては膨大な電力設備と制約を取り扱わねばならず、そのためには多大な労力と広い知識・経験等が要求される。従って電力系統を維持する電力会社等においては、効率よく供給信頼度の高い停電作業計画を立てることができるような停電作業計画に有効なシステムが必要とされている。また、停電作業計画において実際に作業を行うためには、電力設備を通停電していく系統切替作業が必要となるが、系統切替作業の手順の計画は、従来停電作業計画とは別々に行われており非効率であった。
【0005】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたもので、効率よく供給信頼度の高い停電作業計画における系統切替手順計画を立てることが可能な系統切替手順計画方法、系統切替手順計画システム、プログラム、および記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための、本発明のうち請求項1に記載の発明は、複数の電力設備により構成される電力系統の停電作業計画における系統切替手順計画に用いられる方法であって、CPUとメモリとを有するコンピュータが、前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる常時系統を前記メモリに記憶し、前記電力設備を特定する情報に対応付けて、前記電力系統の供給信頼度を算出するための信頼度情報を前記メモリに記憶し、停電作業の対象となる電力設備である停電対象設備の指定を受け付け、前記電力系統において前記停電対象設備が停電状態となる、前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる作業系統候補を生成し、前記作業系統候補のそれぞれについて、前記作業系統候補における前記電力設備の状態と、前記作業系統候補における前記電力設備に対応する前記信頼度情報とに基づいて、前記供給信頼度を算出し、算出した前記供給信頼度に基づいて、前記作業系統候補の一つである作業系統を決定し、前記作業系統と異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における、通電状態となっている前記電力設備の数である通電設備数と、前記常時系統における前記通電設備数との差が所定範囲内であるものを選択し、前記算出した前記供給信頼度に基づいて、前記選択した前記作業系統候補のうちの一つを操作中系統として決定することとする。
【0007】
前記電力設備には、例えば、発電機等の電力供給源、送電線や変圧器等の中継施設、等が含まれる。前記電力系統とは、例えば、前記電力設備が接続されて構成される電力供給のためのシステムをいう。電力設備の状態には、例えば、通電状態と停電状態の二つの状態がある。したがって、電力系統における各電力設備の状態の組合せの数は2b[b:電力設備の数(例えば、送電線の数+変圧器の数)]となる。前記停電作業とは、電力設備を停電状態にして行う作業のことである。停電作業は、電力設備の運用を一時的に制約するものである。一般に運用する電力設備の数が減れば冗長度が低下し、その結果、電力供給の信頼度(供給信頼度)も低下する。本発明では、供給信頼度に基づいて、停電作業計画として採用すべき電力系統の状態(以下、作業系統という。)を決定する。停電作業計画は、停電対象設備が停止している電力系統を選択する問題として捉えることができる。
【0008】
また、実際の作業では、通常の運用状態における電力系統の状態(以下、常時系統という。)から作業系統に至るまで、所定数ずつ電力設備を通停電していく。常時系統から作業系統に至るまでの電力系統の各状態を操作中系統という。本発明では、操作中系統の決定も、供給信頼度に基づいて行われる。したがって、本発明によれば、停電作業計画から系統切替手順計画は、全て供給信頼度に基づく系統構成に基づいて決定することができる。
【0009】
この停電作業計画システムは、例えば、コンピュータ上でプログラムを実行することによって実現される。この場合、前記入力手段は、例えば、キーボードやマウスなどのデータ入力のためのインタフェースである。また、前記入力手段は外部の装置からデータを受信するためのLAN等の通信インタフェースであってもよい。この発明によれば、効率よく供給信頼度の高い停電作業計画における系統切替計画を立てることができる。
一般に、停電作業計画において構成可能な全ての作業系統候補を生成すると計算量が膨大となるが、作業系統は常時系統周辺に存在することが調査により明らかにされており、常時系統周辺の作業系統のみを前記作業系統候補として生成するようにすることで、最適化の精度を低下させることなく計算量を減らすことができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記常時系統と、前記操作中系統と、前記作業系統とを出力装置に出力することとする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記電力系統が前記常時系統から前記作業系統に至るまでの複数の前記操作中系統を前記メモリに記憶することとする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記複数の操作中系統の一つの指定を受け付け、指定された前記操作中系統を出力装置に出力することとする。この場合、系統切替手順計画における任意の時点での系統を容易に参照することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記電力設備のうち、前記常時系統と前記作業系統との間で状態が変化している前記電力設備である差分設備を前記メモリに記憶し、前記作業系統と異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における前記通電設備数と、前記常時系統における前記通電設備数との差が所定範囲内であり、前記作業系統候補における前記差分設備の状態と、前記操作中系統における前記差分設備の状態とが変化しているものを選択することとする。この場合、前記差分設備の状態が変化している系統候補のみから操作中系統を決定することで、計算量を減らすことができる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記作業系統と異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における前記通電設備数が、前記常時系統における前記通電設備数から1減算した数になっているものである選択作業系統候補を選択し、前記選択作業系統候補がない場合は、前記作業系統とは異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における前記通電設備数が、前記常時系統における前記通電設備数に1加算した数になっているものを選択することとする。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記電力系統を運用する上での制約を示す運用制約情報を前記メモリに記憶し、前記供給信頼度と前記運用制約情報とに基づいて、前記作業系統を決定することとする。
【0016】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記電力系統における前記電力設備の通停電を行う上での制約を示す操作制約情報を前記メモリに記憶し、前記供給信頼度と前記操作制約情報とに基づいて、前記操作中系統を決定することとする。前記操作制約としては、例えば、ある電力系統の状態と、他の電力系統の状態との相差角の範囲がある。例えば、現在系統と操作中系統との相差角が所定の角度(例えば15°)を超える場合には、その電力設備の状態を変化させる操作はできないという制約が課されることがある。
【0017】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記供給信頼度が最も高い前記作業系統候補を前記操作中系統として決定することとする。
【0018】
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記作業系統候補のうち、前記常時系統と前記作業系統候補との相差角が所定の範囲内である前記作業系統候補の一つを、前記供給信頼度に基づいて前記操作中系統として決定することとする。
【0019】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記常時系統と前記作業系統後方との相差角の前記所定の範囲を特定する相差角範囲情報の入力を受け付け、受け付け他前記相差角範囲情報を前記メモリに記憶することとする。
【0020】
また、請求項12に記載の発明は、請求項9に記載の系統切替手順計画方法であって、前記コンピュータは、前記作業系統候補のうち、前記常時系統と前記作業系統候補との相差角が所定の範囲内である前記作業系統候補の一つを、前記供給信頼度と前記相差角とに基づいて前記操作中系統として決定することとする。
【0021】
また、請求項13に記載の発明は、請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、前記電力系統を構成する前記電力設備には、発電機、送電線、変圧器の少なくともいずれかが含まれることとする。
【0022】
また、請求項14に記載の発明は、複数の電力設備により構成される電力系統の系統切替手順計画に用いられるシステムであって、CPUとメモリと、前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる常時系統を記憶する常時系統記憶部と、前記電力設備を特定する情報に対応付けて、前記電力系統の供給信頼度を算出するための信頼度情報を記憶する信頼度情報記憶部と、停電作業の対象となる電力設備である停電対象設備の指定を受け付ける停電対象設備入力部と、前記電力系統において前記停電対象設備が停電状態となる、前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる作業系統候補を生成する作業系統候補生成部と、前記作業系統候補のそれぞれについて、前記作業系統候補における前記電力設備の状態と、前記作業系統候補における前記電力設備に対応する前記信頼度情報とに基づいて、前記供給信頼度を算出する供給信頼度算出部と、算出した前記供給信頼度に基づいて、前記作業系統候補の一つである作業系統を決定する作業系統決定部と、前記作業系統と異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における、通電状態となっている前記電力設備の数である通電設備数と、前記常時系統における前記通電設備数との差が所定範囲内であるものを選択する操作中系統候補選択部と、前記算出した前記供給信頼度に基づいて、前記選択した前記作業系統候補のうちの一つを操作中系統として決定する操作中系統決定部と、を備えることとする。
【0023】
また、請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の系統切替手順計画システムであって、前記常時系統と、前記操作中系統と、前記作業系統とを出力装置に出力する操作票出力部を備えることとする。
【0024】
また、請求項16に記載の発明は、請求項14に記載の系統切替手順計画システムであって、前記電力系統における前記電力設備の通停電を行う上での制約を示す操作制約情報を記憶する操作制約情報記憶部を備え、前記操作中系統決定部は、前記供給信頼度と前記操作制約情報とに基づいて、前記操作中系統を決定することとする。
【0025】
また、請求項17に記載の発明は、複数の電力設備により構成される電力系統の系統切替手順計画に用いられるプログラムであって、CPUとメモリとを有するコンピュータに、前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる常時系統を前記メモリに記憶するステップと、前記電力設備を特定する情報に対応付けて、前記電力系統の供給信頼度を算出するための信頼度情報を前記メモリに記憶するステップと、停電作業の対象となる電力設備である停電対象設備の指定を受け付けるステップと、前記電力系統において前記停電対象設備が停電状態となる、前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる作業系統候補を生成するステップと、前記作業系統候補のそれぞれについて、前記作業系統候補における前記電力設備の状態と、前記作業系統候補における前記電力設備に対応する前記信頼度情報とに基づいて、前記供給信頼度を算出するステップと、算出した前記供給信頼度に基づいて、前記作業系統候補の一つである作業系統を決定するステップと、前記作業系統と異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における、通電状態となっている前記電力設備の数である通電設備数と、前記常時系統における前記通電設備数との差が所定範囲内であるものを選択するステップと、前記算出した前記供給信頼度に基づいて、前記選択した前記作業系統候補のうちの一つを操作中系統として決定するステップと、を実行させるようにする。
【0026】
また、請求項18に記載の発明は、請求項17に記載のプログラムであって、前記コンピュータに、前記常時系統と、前記操作中系統と、前記作業系統とを出力装置に出力するステップを、さらに実行させるようにする。
【0027】
また、請求項19に記載の発明は、請求項17に記載のプログラムであって、前記コンピュータに、前記電力系統における前記電力設備の通停電を行う上での制約を示す操作制約情報を前記メモリに記憶するステップをさらに実行させ、前記操作中系統の決定は、前記供給信頼度と前記操作制約情報とに基づいて行うこととする。
【0028】
また、請求項20に記載の発明は、請求項17乃至19のいずれかに記載のプログラムを記録した記録媒体である。
【0029】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明の実施の形態の欄および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、効率よく供給信頼度の高い停電作業計画における系統切替手順計画を立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
===システムの概要===
系統切替手順計画システムは、作業計画期間内で供給信頼度が最大化されるように供給信頼度の高い停電作業計画における系統切替手順計画に用いられる。ここで供給信頼度とは、電力の安定性を示す指標であり、例えば、停電作業により電力設備の機能が停止されると電力系統の冗長性が低下し、これにより供給信頼度は低下することになる。供給信頼度の指標としては、需要家側での停電回数や停電時間などがある。また、供給者側での供給信頼度の指標としては、電源部門での供給予備率や電力不足確率、送配電部門でのアデカシーやセキュリティなどがある。アデカシーとは、電力系統を構成する電力設備の運用制約を考慮に入れ、電力系統に異常を生じることなく電力を供給することができる電力系統の能力の尺度であり、静的な供給信頼度である。これらの指標は、電力設備ごとに、あるいは電力系統全体の値(総和や平均)として評価される。
【0032】
本実施形態にかかる系統切替手順計画システムでは、供給信頼度を定量化するために、供給信頼度の指標として、N−2供給支障電力、N−2過負荷電力、N−2余裕電力量等、を用いている。ここで電力系統の構成要素の一つが事故等で機能を停止した場合がN−1であり、電力設備の二つが機能を停止した場合がN−2である。一般にN−1を想定した設備構成の考え方は、N−1基準と呼ばれている。N−2基準は、さらに厳しい事故等を想定したものである。N−2基準はN−1に比べてより高レベルの信頼度が要求される場合に採用される基準である。一般的な電力設備は、N−1基準に従って作成されている。本実施例ではN−2基準を原則としている。但し、後述するように、N−2基準だけでは必ずしも採用すべき作業系統候補の優先順位を完全に順序づけることができない場合もありうる。そこでそのような場合には、より高次の基準であるN−3基準、N−4基準、・・・・・等を適宜採用する。
【0033】
N−2基準のうち上述したN−2供給支障電力は、電力系統を構成している電力設備のうち二つの電力設備が事故等により機能を停止している場合における供給支障電力である。供給支障電力には、負荷への電力供給が完全に遮断されているものと、電力供給が完全に遮断されているわけではないが負荷に必要とされる電力よりも減少しているものと、が含まれる。本実施例では、N−2供給支障電力として、二つの電力設備が機能を停止している全ての電力系統のバリエーションについての各負荷の供給支障電力の総和、もしくは、前記総和を前記バリエーション数で除した平均値を採用している。供給支障電力が少ないほど、供給信頼度は高くなる。
【0034】
N−2基準のうち上述したN−2過負荷量は、電力系統を構成している電力設備のうち二つの電力設備が事故等により機能を停止している場合において、機能を停止していない他の電力設備に定格容量を超えて流れている過負荷の電力量である。本実施例では、N−2供給支障電力と同様に、二つの電力設備が機能を停止している全ての電力系統のバリエーションについての各電力設備のN−2過負荷量の総和、もしくは、前記総和を前記バリエーション数で除した平均値を採用している。過負荷量が小さいほど、供給信頼度は高くなる。
【0035】
N−2基準のうち上述したN−2余裕電力量は、電力系統を構成している電力設備のうち二つの電力設備が事故等により機能を停止している場合において、機能を停止していない他の電力設備における、電力の定格容量とその電力設備における送電量の差である。N−2余裕電力量が大きいほど、供給信頼度は高くなる。
【0036】
なお、供給信頼度は、上述したものに限ることなく、他の電力の安定性を示す指標を適宜採用することができる。
【0037】
===情報処理装置===
図1は本実施形態に係る系統切替手順計画システムを実現する情報処理装置200である。CPU201は、情報処理装置200の全体の制御を司るもので、記憶手段としてのメモリ202や記憶装置208に格納されたプログラム202cを実行することにより系統切替手順計画システムの機能やデータベースの機能等を実現する。記録媒体読取装置204は、記録媒体207に記録されているプログラムやデータを読み取るための装置である。読み取られたプログラムやデータは、メモリ202や記憶装置208に格納される。従って、例えば記録媒体207に記録された系統切替手順計画システムの機能を実現するためのプログラム202cを、記録媒体読取装置204を用いて上記記録媒体207から読み取って、メモリ202や記憶装置208に格納するようにすることができる。例えば、上述のデータベースに記憶されるデータは、メモリ202や記憶装置208に格納される。記録媒体207としてはフレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM/RAM、DVD−RAM/RAM、半導体メモリ等を用いることができる。
【0038】
記録媒体読取装置204は、情報処理装置200に内蔵されている形態とすることもできるし、外付されている形態とすることもできる。記憶装置208は、例えばハードディスク装置やフレキシブルディスク装置、半導体記憶装置等である。入力装置205はオペレータ等による情報処理装置200へのデータ入力等のために用いられる。入力装置205としては例えばキーボードやマウス等が用いられる。出力装置206は情報を外部に出力するための装置である。出力装置206としては例えばディスプレイやプリンタ等が用いられる。通信インタフェース203は、情報処理装置200をLAN等の外部ネットワークに接続するためのインタフェースである。情報処理装置200は、通信インタフェース203を介して他のコンピュータ等の外部装置との間で通信を行うことができる。
【0039】
===作業系統の決定処理===
系統切替手順計画システムは、上述の情報処理装置200上で動作するプログラムにより提供される。情報処理装置200では、各種のデータを記憶するためのデータベースが動作している。このデータベースには、系統切替手順計画の対象となる電力系統の構成や電力系統を構成している各電力設備に係る、例えば、消費電力、定格電力、送電容量、電力損失などの情報(上述の供給信頼度を算出するための情報である。以下、信頼度情報という。)が記憶されている。また、このデータベースには、以下に説明する処理で用いられる各種のデータが適宜記憶される。
【0040】
図2に系統切替手順計画システムにより実行される処理の流れを説明するフローチャートを示している。この処理には、1.作業系統候補生成処理(I)、2.系統運用制約判断処理(II)、3.系統構成組合せ処理(III)、の三つの処理が含まれている。以下、これらの各処理について詳述する。
【0041】
===1.作業系統候補生成処理(I)===
作業系統候補生成処理(I)では、当該処理に後続する処理において用いられる、電力系統における各電力設備の状態(以下、作業系統という。)の候補(以下、作業系統候補という。)を生成する。生成された作業系統候補は、情報処理装置200のデータベースに記憶される。作業系統候補生成処理(I)には、縮約系統生成処理(S311)、詳細系統生成処理(S312)、停電作業設備の組合せ処理(S313)、候補生成処理(S314)、などの処理が含まれる。
【0042】
縮約系統生成処理(S311)では、停電作業要求を満たす状態(以下、縮約系統という。)を生成する。電力系統の状態の数は、各電力設備が通電および停電の2つの状態を取り得るため、単純に計算すると2[b:電力設備の数(例えば、送電線の数+変圧器の数)]という莫大な数となる。そこで本実施形態においては、処理の対象とする電力系統の状態の数を絞り込むために、二つの制約を課すこととしている。そのうちの一つは、同一の電力設備が冗長な構成を有している場合にこれを一つの電力設備として扱うようにすること(以下、縮約という)である。例えば、同じ電気所(発電所・変電所等)間が複数回線の送電線で構成される場合には、これら複数回線を一つの電力設備として扱うようにする。また同じ電力設備(母線)間が複数の変圧器で構成される場合には、これら複数の変圧器を一つの電力設備として扱うようにする。このような制約を課すことにより、最適化の精度を殆ど低下させることなく計算量を減らすことができる。
【0043】
二つめの制約は、採用する作業系統候補を、常時系統における停電設備の数を増減させた常時系統に近似する構成(周辺)に絞ることである。常時系統とは通常の運用状態における電力系統の状態である。例えば、常時系統における停電設備数が2である場合には、停電設備数が1あるいは3などの場合が常時系統周辺である。停電作業のための系統は、常時系統に近い(周辺)作業系統であるという結果が調査で得られており経験的にも納得できるものであることから、このようにサンプルとして採用する系統を常時系統周辺に制約することにより、最適化の精度を低下させることなく計算量を減らすことができる。図3に電力系統の状態の一例を示している。図3が常時系統である場合において、例えば、図4に示す状態は常時系統周辺である。なお、常時系統周辺に制約した場合の系統数は、例えば、次式により求められる。

M=1,2,・・・,MM,N=1,2,・・・,MN
【0044】
なお、上式において、MMは常時停電状態にある電力設備の中から同時に通電状態とする最大数、MNは常時通電状態にある電力設備の中から同時に停電状態とする最大数、offは常時停電状態にある電力設備の数、onは常時通電状態にある電力設備の数、mは常時停電状態にある電力設備から同時に通電状態とする数、nは常時通電状態の電力設備から同時に停電状態とする数である。常時系統周辺の範囲は、上式におけるMMやMNの値を変えることにより任意に設定することができる。常時系統周辺の範囲は、最適化の精度を低下させることなく計算量を減らすことができる範囲に設定される。
【0045】
詳細系統生成処理(S312)では、上記縮約系統生成処理(S311)で得られた縮約系統について、縮約をもとに戻した状態(以下、詳細系統という。)を生成する。生成された詳細系統はデータベースに記憶される。
【0046】
停電作業設備の組合せ処理(S313)では、停電作業が要求される電力設備の組合せを生成し、データベースに記憶する。ここで同時に複数の停電作業(以下、同調作業という。)が行なわれると供給信頼度を低下させてしまうので、組合せの生成は同調作業となる組合せができるだけ少なくなるように行われる。例えば、組合せは同調作業数が計画期間内に要求された電力設備を停止するのに必要な最小数となるように生成される。この場合に組合せの数は次式から求められる。

なお、上式において、wは同調作業の数、MWは同調作業の最大数、MBは全作業設備数である。
【0047】
候補生成処理(S314)では、詳細系統生成処理(S312)で得られた詳細系統に、停電作業設備の組合せ処理(S313)で得られた組合せを重ね合わせることにより作業系統の候補を生成し、データベースに記憶する。図4および図5に電力系統の一例を示す。図4は、詳細系統生成処理(S312)で得られた詳細系統であり、図5は、図4の詳細系統に、停電作業設備の組合せ処理(S313)で得られた停電作業が要求される電力設備の組合せの一つを重ねて生成した作業系統候補である。なお、この例では、停電作業の対象となる電力設備(以下、停電作業設備という)は送電線gである。
【0048】
===2.系統運用制約判断処理(II)===
系統運用制約判断処理(II)には、系統損失電力計算処理(S315)および作業系統候補に対するN−M系統作成処理(S316)、N−M系統に対し運用制約を満たすかどうかの判断処理(S317)が含まれる。
【0049】
系統損失電力計算処理(S315)では、上述の作業系統候補生成処理(S314)で生成された各作業系統候補について、系統損失電力を計算する。ここで系統損失電力とは、電力設備において生じる損失の総和である。作業系統候補に対するN−M系統作成処理(S316)では、N−M基準についての作業系統候補を作成する。なお、Mの初期値は「0」である。N−M系統に対し運用制約を満たすかどうかの判断処理(S317)では、作業系統候補に対するN−M系統作成処理(S316)で作成されてデータベースに記憶されている作業系統候補について、系統を運用する上での制約(以下、運用制約という。)を満たすかどうかの判断を行い、実際に運用可能な作業系統候補を抽出する。なお、運用制約は、運用箇所によって異なるため、様々なバリエーションに変更される性質のものである。そこで、本実施例の系統切替手順計画システムにおいては、制約を満たすかどうかの判断を行う処理を、判断される制約ごとに分割している。このように処理を分割していることで、運用制約の様々なバリエーションに迅速かつ柔軟に対応させることができる。また、制約を満たすかどうかの判断の結果をデータベースに設けた共通のテーブルに管理するようにしている。これにより判断結果について集約的な把握と管理が可能となる。
【0050】
上記共通のテーブルには、例えば、運用違反に対する違反の有無や、後述するN−M供給支障電力、N−M余裕電力量、送電損失電力等が記憶される。なお、運用制約を満たすかどうかの判断のにおいて、一つでも運用違反を有する作業系統候補は運用可能な候補とはなり得ない。そこで、運用違反の判断において違反が確認された場合には、以後の他の制約についての判断処理の対象から除外するようにして処理効率を向上させている。
【0051】
なお、運用制約の判断は、例えば、潮流計算を用いて行われる。潮流計算手法としては処理が高速に行われるものが望ましく、例えば、OSPF(Optimal Switching Power Flow:例えば、R.Bacher,H.Glavitsch:" Network Topology Optimization with Security Constraints " IEEE Trans.PS, Vol.PWRS-1,No.4,103-111(1986)を参照)を用いる。
【0052】
===3.系統構成組合せ処理(III)===
系統構成組合せ処理(III)では、上述の系統運用制約判断処理(II)により抽出された作業系統候補に対して、諸条件を課すことにより順位付けを行い、供給信頼度の高い電力系統の状態を抽出する。系統構成組合せ処理(III)は、N−M供給支障電力計算処理(S318)、N−M過負荷量計算処理(S319)、N−M余裕電力量計算処理(S320)、バランス断面ごとの繰り返し計算処理(S321)、ソート処理(S322)、作業系統候補を完全に順序づけることができたかどうかの判断処理(S323)、停電作業要求を満たす系統構成の選択処理(S324)、所要日数が計画期間内であるかどうかを判断する処理(S325)〜(S326)、計画期間内の供給信頼度の高い停電作業計画の作成処理(S327)等の処理が含まれる。
【0053】
N−M供給支障電力計算処理(S318)では、上述の系統運用制約判断処理(II)により抽出された各作業系統候補についてのN−M供給支障電力を計算する。計算されたN−M供給支障電力は、各作業系統候補に対応させてデータベースに記憶される。
【0054】
N−M過負荷量計算処理(S319)では、上述の系統運用制約判断処理(II)により抽出された各作業系統候補についてのN−M過負荷量を計算する。計算されたN−M過負荷量は、各作業系統候補に対応させてデータベースに記憶される。
【0055】
N−M余裕電力量計算処理(S320)では、上述の系統運用制約判断処理(II)により抽出された各作業系統候補についてのN−M余裕電力量を計算する。計算されたN−M余裕電力量は、各作業系統候補に対応させてデータベースに記憶される。
【0056】
バランス断面ごとの繰り返し計算処理(S321)では、電力設備の負荷の状態の異なる複数のバランス断面について、(S316)〜(S320)までの処理を繰り返し実行する。ここで電力系統の供給信頼度は、例えば、発電機の状態(起動・停止)や電力系統を構成している電力設備の負荷などの電力設備の状態によって変化する。なお、バランス断面とは、実際に採取された、もしくは、シミュレーションされた、ある時点における発電と負荷の状態である。繰り返し実行される(S316)〜(S320)の処理結果は、バランス断面ごとにデータベースに記憶される。N−M供給支障電力や系統損失電力の値は、バランス断面に応じて変化する。従って、このようにバランス断面ごとにN−M供給支障電力や系統損失電力を求めることにより、最適化が特定のバランス断面に依存して行われるのを防ぐことができる。
【0057】
ソート処理(S322)では、上述の系統運用制約判断処理(II)により抽出された作業系統候補を、N−M供給支障電力を第1のソートキーとしてN−M供給支障電力の昇順となるようにソート(整列)する。このソートは、全てのバランス断面から得られた作業系統候補を対象として行われる。そして、N−M供給支障電力が同じ作業系統候補が存在する場合には、そのような作業系統候補の関係では、N−M過負荷量を第2ソートキーとしてN−M過負荷量の昇順となるように作業系統候補がソートされる。さらに、N−M過負荷量が同じ作業系統候補が存在する場合には、そのような作業系統候補の関係では、N−M余裕電力量を第3のソートキーとしてN−M余裕電力量の降順となるように作業系統候補がソートされる。さらに、N−M余裕電力量が同じ作業系統候補が存在する場合には、そのような作業系統候補の関係では、系統損失電力を第4のソートキーとして系統損失電力の昇順となるように作業系統候補がソートされる。
【0058】
以上の処理では、異なるバランス断面に所属する同じ作業系統候補が存在することがありうるが、作業系統候補が同じであってもバランス断面ごとに需要量が異なるため、N−M供給支障電力に差が生じることになる。つまり、同じ作業系統候補であってもN−M供給支障電力の差によってソート順が変わってくることになり、これにより優先して選出する作業系統候補を決定することができる。以上の方法によれば、複数のバランス断面を考慮して作業系統候補が決定され、これにより作業すべき日程が決定され、単一のバランス断面を用いる場合に比べてより供給信頼度の高い作業計画を立てることができる。
【0059】
なお、以上に示したソート処理(S322)では、N−M供給支障電力、N−M過負荷量、N−M余裕電力量、系統損失電力の順にソートしているが、この順序(ソートキーの優先順位)は、例えば、どの値を重視するかに応じてユーザ等が任意に変更することができる。この変更は、例えば、GUI(Graphical User Interface)やCLI(Command Line Interface)を使ったインタフェースによって行うことができる。また、N−M過負荷量が指定された値以上となる状態を作業系統候補としないように処理させることもできる。
【0060】
作業系統候補を完全に順序づけることができたかどうかの判断処理(S323)では、(S322)におけるソート処理で完全に作業系統候補を順序づけることができたかどうかを判断している。ここで作業系統候補を完全に順序づけることができていない場合には、Mの値を1つ増やして(S316)以降の処理を再び実行する。このように作業系統候補を完全に順序づけることができない場合に、M(M=3,4,5・・・・・)個の電力設備が機能を停止している場合を想定した基準(これらを例えば、N−3基準、N−4基準、・・・・・という)について、(S316)以降の処理を繰り返し行うことにより、最終的に作業系統候補を完全に順序づけることができることになる。
【0061】
停電作業要求を満たす系統構成の選択処理(S324)では、停電作業の要求が満たされるまで上述のようにしてソートされている作業系統候補の中から供給信頼度の高い作業系統候補から優先的に選択していく。そしてこのようにして選択される作業系統候補を実施した場合における所要日数を計算し、所要日数が設定されている計画期間を上回る場合には(S325:YES)、既に採用されている作業系統候補に代えて、選択されていない作業系統候補から最も供給信頼度の高い同調作業可能な作業系統候補を採用し(S326)、所要日数が計画期間内となるように調節する。
【0062】
そして、計画期間内の供給信頼度の高い停電作業計画の作成処理(S327)では、以上のようにして得られた作業系統候補と上記バランス断面とに基づいて日程を決定し、停止させる電力設備から作業を決めて計画期間内の供給信頼度の高い停電作業計画を作成する。なお、上記のようにして、図4に示した電力系統において線路gを停電設備とした場合に作業系統を決定すると、図6に示すような作業系統となる。
【0063】
以上に説明したように、本発明の系統切替手順計画システムによれば、運用制約の範囲内でかつ計画期間内で電力系統の供給信頼度を最大化する作業系統を決定することができる。すなわち、本発明の系統切替手順計画システムは、電力系統の運用者のみならず顧客に対する利益をも最大化するように作業系統を決定することができる。
【0064】
===系統切替手順計画作成処理===
上記のようにして作業系統が決定されると、次に、常時系統から作業系統に移行するための手順を示す情報(以下、操作票という。)の出力処理が行われる。常時系統から作業系統への電力系統の状態の移行は、電力設備を1つずつ通停電していくことにより行われる。図7は停電作業計画における電力系統の状態遷移の例を示す図である。図7の例において、常時系統41から作業系統42に電力系統の状態を移行させる場合、電力系統の制御操作を行う運用者は、常時系統41から電力設備を一つずつ通停電して電力系統の状態を変化させていく。常時系統から作業系統に移行する間の状態が操作中系統43である。本実施形態の系統切替手順計画システムでは、後述するように、電力系統の供給信頼度が高くなるように操作中系統が定められる。停電計画システムからは常時系統、操作中系統、および作業系統を基に操作票を作成(出力)する。電力系統の制御操作を行う運用者は、操作票に基づいて電力系統の制御操作を行う。図8に、操作票の出力処理の流れを示す図である。
【0065】
情報処理装置200は、常時系統と作業系統との間で状態が変化する電力設備(以下、差分設備という。)をデータベースに記憶する(S411)。図9に常時系統と作業系統とのそれぞれにおける各電力設備の状態の例を示す。図9の例では、各電力設備毎に、通電状態の場合には「1」、停電状態の場合には「0」が示されており、常時系統と作業系統との間で状態が変化しているのは、電力設備c、d、e、およびgである(図中丸で示す部分)。
【0066】
情報処理装置200は、まず常時系統を現在系統としてデータベースに記憶する(S412)。次に情報処理装置200は、作業系統候補のうち、通電状態となっている電力設備の数(以下、通電設備数という。)が、現在系統における通電設備数から「1」減算した数であり、差分設備の状態が現在系統における差分設備の状態と異なるものを抽出する(S413)。図9の例において常時系統が現在系統である場合、上記差分設備の状態が変化して通電設備数が1減ることから、電力設備cまたはgの状態が停電状態(0)になる作業系統候補を選択することになる。
【0067】
情報処理装置200は、抽出した作業系統候補(以下、操作中系統候補という。)を供給信頼度の高い順に一つずつ操作中系統として選択し(S414)、選択した操作中系統に対して、現在系統から操作中系統に電力設備の状態を変化させることに関する制約(以下、操作制約という。)を満たすかどうかの判断を行う(S415)。本実施形態では、操作制約として、現在系統と操作中系統との相差角の範囲が15°以内であることを採用している。操作中系統が操作制約を満たす場合には(S415:YES)、後述の(S419)に進む。
【0068】
上記の操作中系統候補のいずれも操作制約を満たさないとき、情報処理装置200は、作業系統候補のうち、作業系統候補における通電設備数が、現在系統における通電設備数に「1」加算した数であり、差分設備の状態が現在系統における差分設備の状態と異なるものを抽出する(S416)。図9の例において常時系統が現在系統である場合には、電力設備dまたはeの状態が通電状態(1)になる作業系統候補を選択することになる。
【0069】
情報処理装置200は、抽出した操作中系統候補を、供給信頼度の高い順に一つずつ操作中系統として選択し(S417)、選択した操作中系統に対して、上記(S415)と同様に操作制約を満たすかどうかの判断を行う(S418)。操作中系統が操作制約を満たすか(S418:YES)、または上記(S415)において操作中系統が操作制約を満たす場合(S415:YES)、情報処理装置200は、操作中系統を現在系統としてデータベースに記憶する(S419)。現在系統と作業系統とが一致した場合(S420:YES)、情報処理装置200は、常時系統と、データベースに登録された操作中系統の履歴と、作業系統とを出力装置206に出力し(S421)、処理を終了する。現在系統と常時系統とが同じでない場合(S421:NO)は、操作中系統の履歴をデータベースに登録し(S422)、(S413)に進む。
【0070】
一方、上記の操作中系統候補のいずれも操作制約を満たさないときには、操作制約を満たす手順を示すことができない旨のメッセージを表示するなどの、エラー処理を行い(S423)、処理を終了する。
【0071】
上記のようにして、電力系統の状態が常時系統から操作中系統を経て作業系統なるまでの各状態が出力される。これにより、どの電力設備を通停電していくのかを示すことが可能となり、操作票が作成されることになる。したがって、作成された操作票に基づいて、自動的又は半自動的に電力設備の通停電を行うことが可能となる。すなわち、停電作業計画から系統切替手順計画まで一連の流れとして処理が可能となる。
【0072】
なお、上記図9の(S414)において、操作中系統候補の供給信頼度が高く相差角が小さいものから順に一つずつ操作中系統を選択するようにしてもよい。この場合には、操作制約を満たす可能性が高いものから順に操作制約を満たすかどうかを判断していくことになるので、操作中系統候補が操作制約を満たさなかった場合には、他の操作中系統候補が操作制約を満たすかどうかを判断することなく(S416)に進むようにすることができる。
【0073】
図10は常時系統から作業系統への遷移を示す図である。図10の例では、1回目の操作で常時系統から電力設備cを停電状態に変更し(S501)、2回目の操作で電力設備gを停電状態にし(S502)、3回目の操作で電力設備eを通電状態にし(S503)、4回目の操作で電力設備dを通電状態にする(S504)という手順を示している。このように常時系統から作業系統に至るまでの電力系統の状態の遷移を基に各電力設備を通停電させる手順を定めることにより、常時系統から作業系統に移行するための操作票を容易かつ確実に作成することができる。操作票が作成されることにより、電力系統の制御操作を行う運用者は、操作中系統の各段階において、通停電を行う対象となる電力設備を容易かつ確実に把握することができる。また、運用者は出力された操作票の各状態に合わせるように電力設備の通停電を行うことにより、容易に電力系統の系統操作を遂行することができる。したがって、操作のミスを防止することができる。
【0074】
また、本実施形態の系統切替手順計画システムでは、系統候補のうち、最も供給信頼度の高いものが操作中系統として選択される。つまり、電力系統の状態遷移において、最も供給信頼度が高くなるように、電力設備を通停電する系統操作を行うことのできる操作票が出力される。したがって、供給信頼度を高く保ちながら、電力系統の状態を遷移させることが可能となり、電力供給サービスの質を高めることができる。
【0075】
また、本実施形態の系統切替手順計画システムでは、作業系統を決定する上で作成した作業系統候補を用いて、常時系統から作業系統に電力系統の状態を遷移させる操作手順を出力する。したがって、情報処理装置200は、常時系統から作業系統に電力系統の状態を遷移させる系統操作の手順を示す場合に、操作中系統の候補となる状態を再度生成する必要がない。よって、情報処理装置200の処理負荷を抑えることができる。
【0076】
また、常時系統から作業系統に電力系統の状態を遷移させる際、どの電力設備を通停電するのかを選択していく選択肢も莫大な数となるが、本実施形態の系統切替手順計画システムでは、差分設備の状態が変化しており、供給信頼度が最も高い選択肢を選ぶこととしているため、その膨大な選択肢の全てを検討する必要がなく、容易に供給信頼度の高いものを選択することができる。
【0077】
なお、上述の系統切替手順計画の作成処理において、(S417)では、抽出した作業系統候補から供給信頼度の高い順に一つずつ操作中系統を選択するようにしたが、現在系統との間の相差角が小さい順に一つずつ操作中系統を選択するようにしてもよい。
【0078】
また、エラー処理(S423)の後、処理を終了せず、他の作業系統候補を操作中系統として選択するように(S414)や(S417)に進むようにしてもよい。また、図2に示す作業系統の決定処理に戻り、他の作業系統を決定するようにしてもよい。
【0079】
なお、以上の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態による系統切替手順計画システムを実現する情報処理装置を示す図である。
【図2】本発明の系統切替手順計画システムにより実行される作業系統の決定処理の流れを説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態による電力系統の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による電力系統の一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による電力系統の一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による電力系統の一例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による系統切替手順計画における電力系統の状態遷移の例を示す図である。
【図8】本発明の系統切替手順計画システムにより実行される、操作票を出力する処理の流れを説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態による常時系統と作業系統とのそれぞれにおける各電力設備の状態の例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態による、常時系統から作業系統への遷移を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
160 情報処理装置
161 CPU
162 メモリ
162c プログラム
165 入力装置
166 出力装置
167 記録媒体
168 記憶装置
S311 縮約系統生成処理
S312 詳細系統生成処理
S313 停電作業設備の組合せ処理
S314 候補生成処理
S315 運用制約を満たすかどうかの判断処理
S316 系統損失電力計算処理
S317 N−2供給支障電力計算処理
S318 N−2過負荷量計算処理
S319 N−2余裕電力量計算処理
S320 バランス断面ごとの繰り返し計算処理
S321 ソート処理
S322 停電作業要求を満たす系統構成の選択処理
S327 計画期間内の供給信頼度の高い停電作業計画の作成処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力設備により構成される電力系統の停電作業計画における系統切替手順計画に用いられる方法であって、
CPUとメモリとを有するコンピュータが、
前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる常時系統を前記メモリに記憶し、
前記電力設備を特定する情報に対応付けて、前記電力系統の供給信頼度を算出するための信頼度情報を前記メモリに記憶し、
停電作業の対象となる電力設備である停電対象設備の指定を受け付け、
前記電力系統において前記停電対象設備が停電状態となる、前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる作業系統候補を生成し、
前記作業系統候補のそれぞれについて、前記作業系統候補における前記電力設備の状態と、前記作業系統候補における前記電力設備に対応する前記信頼度情報とに基づいて、前記供給信頼度を算出し、
算出した前記供給信頼度に基づいて、前記作業系統候補の一つである作業系統を決定し、
前記作業系統と異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における、通電状態となっている前記電力設備の数である通電設備数と、前記常時系統における前記通電設備数との差が所定範囲内であるものを選択し、
前記算出した前記供給信頼度に基づいて、前記選択した前記作業系統候補のうちの一つを操作中系統として決定すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項2】
請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、前記常時系統と、前記操作中系統と、前記作業系統とを出力装置に出力すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項3】
請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、前記電力系統が前記常時系統から前記作業系統に至るまでの複数の前記操作中系統を前記メモリに記憶すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項4】
請求項3に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、前記複数の操作中系統の一つの指定を受け付け、指定された前記操作中系統を出力装置に出力すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項5】
請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、
前記電力設備のうち、前記常時系統と前記作業系統との間で状態が変化している前記電力設備である差分設備を前記メモリに記憶し、
前記作業系統と異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における前記通電設備数と、前記常時系統における前記通電設備数との差が所定範囲内であり、前記作業系統候補における前記差分設備の状態と、前記操作中系統における前記差分設備の状態とが変化しているものを選択すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項6】
請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、
前記作業系統と異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における前記通電設備数が、前記常時系統における前記通電設備数から1減算した数になっているものである選択作業系統候補を選択し、
前記選択作業系統候補がない場合は、前記作業系統とは異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における前記通電設備数が、前記常時系統における前記通電設備数に1加算した数になっているものを選択すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項7】
請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、
前記電力系統を運用する上での制約を示す運用制約情報を前記メモリに記憶し、
前記供給信頼度と前記運用制約情報とに基づいて、前記作業系統を決定すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項8】
請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、
前記電力系統における前記電力設備の通停電を行う上での制約を示す操作制約情報を前記メモリに記憶し、
前記供給信頼度と前記操作制約情報とに基づいて、前記操作中系統を決定すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、前記供給信頼度が最も高い前記作業系統候補を前記操作中系統として決定すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項10】
請求項9に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、
前記作業系統候補のうち、前記常時系統と前記作業系統候補との相差角が所定の範囲内である前記作業系統候補の一つを、前記供給信頼度に基づいて前記操作中系統として決定すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項11】
請求項10に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、
前記常時系統と前記作業系統後方との相差角の前記所定の範囲を特定する相差角範囲情報の入力を受け付け、
受け付け他前記相差角範囲情報を前記メモリに記憶すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項12】
請求項9に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記コンピュータは、
前記作業系統候補のうち、前記常時系統と前記作業系統候補との相差角が所定の範囲内である前記作業系統候補の一つを、前記供給信頼度と前記相差角とに基づいて前記操作中系統として決定すること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項13】
請求項1に記載の系統切替手順計画方法であって、
前記電力系統を構成する前記電力設備には、発電機、送電線、変圧器の少なくともいずれかが含まれること、
を特徴とする系統切替手順計画方法。
【請求項14】
複数の電力設備により構成される電力系統の系統切替手順計画に用いられるシステムであって、
CPUとメモリと、
前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる常時系統を記憶する常時系統記憶部と、
前記電力設備を特定する情報に対応付けて、前記電力系統の供給信頼度を算出するための信頼度情報を記憶する信頼度情報記憶部と、
停電作業の対象となる電力設備である停電対象設備の指定を受け付ける停電対象設備入力部と、
前記電力系統において前記停電対象設備が停電状態となる、前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる作業系統候補を生成する作業系統候補生成部と、
前記作業系統候補のそれぞれについて、前記作業系統候補における前記電力設備の状態と、前記作業系統候補における前記電力設備に対応する前記信頼度情報とに基づいて、前記供給信頼度を算出する供給信頼度算出部と、
算出した前記供給信頼度に基づいて、前記作業系統候補の一つである作業系統を決定する作業系統決定部と、
前記作業系統と異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における、通電状態となっている前記電力設備の数である通電設備数と、前記常時系統における前記通電設備数との差が所定範囲内であるものを選択する操作中系統候補選択部と、
前記算出した前記供給信頼度に基づいて、前記選択した前記作業系統候補のうちの一つを操作中系統として決定する操作中系統決定部と、
を備えることを特徴とする系統切替手順計画システム。
【請求項15】
請求項14に記載の系統切替手順計画システムであって、
前記常時系統と、前記操作中系統と、前記作業系統とを出力装置に出力する操作票出力部を備えること、
を特徴とする系統切替手順計画システム。
【請求項16】
請求項14に記載の系統切替手順計画システムであって、
前記電力系統における前記電力設備の通停電を行う上での制約を示す操作制約情報を記憶する操作制約情報記憶部を備え、
前記操作中系統決定部は、前記供給信頼度と前記操作制約情報とに基づいて、前記操作中系統を決定すること、
を特徴とする系統切替手順計画システム。
【請求項17】
複数の電力設備により構成される電力系統の系統切替手順計画に用いられるプログラムであって、
CPUとメモリとを有するコンピュータに、
前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる常時系統を前記メモリに記憶するステップと、
前記電力設備を特定する情報に対応付けて、前記電力系統の供給信頼度を算出するための信頼度情報を前記メモリに記憶するステップと、
停電作業の対象となる電力設備である停電対象設備の指定を受け付けるステップと、
前記電力系統において前記停電対象設備が停電状態となる、前記電力系統における前記電力設備のそれぞれの状態の組合せからなる作業系統候補を生成するステップと、
前記作業系統候補のそれぞれについて、前記作業系統候補における前記電力設備の状態と、前記作業系統候補における前記電力設備に対応する前記信頼度情報とに基づいて、前記供給信頼度を算出するステップと、
算出した前記供給信頼度に基づいて、前記作業系統候補の一つである作業系統を決定するステップと、
前記作業系統と異なる前記作業系統候補のうち、前記作業系統候補における、通電状態となっている前記電力設備の数である通電設備数と、前記常時系統における前記通電設備数との差が所定範囲内であるものを選択するステップと、
前記算出した前記供給信頼度に基づいて、前記選択した前記作業系統候補のうちの一つを操作中系統として決定するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のプログラムであって、
前記コンピュータに、前記常時系統と、前記操作中系統と、前記作業系統とを出力装置に出力するステップを、
さらに実行させるためのプログラム。
【請求項19】
請求項17に記載のプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記電力系統における前記電力設備の通停電を行う上での制約を示す操作制約情報を前記メモリに記憶するステップをさらに実行させ、
前記操作中系統の決定は、前記供給信頼度と前記操作制約情報とに基づいて行うこと、
を特徴とするプログラム。
【請求項20】
請求項17乃至19のいずれかに記載のプログラムを記録した記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−254666(P2006−254666A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71265(P2005−71265)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】