説明

紐生地の乾式熱平プレスによる転写プリント方法

【課題】 複数本の細い紐で構成する紐生地の表面をプリントする方法の提供。
【解決手段】 紐生地は複数本の細い紐3,3・・・で構成する紐生地部1の前後に帯生地部2,2を有し、該紐生地をテーブル6上に載置して紐生地部1の各紐3,3・・・のタルミや捩れなどを無くして整え、そして紐生地の上には染料を用いて図形や模様など印刷した転写紙7をセットし、上方から加熱した鉄板8を降下して所定の時間プレスし、転写紙7に形成した図形や模様などが昇華して紐生地に付着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紐のれん、紐カーテン、紐スクリーン、又は紐間仕切り等を構成する紐生地を乾式熱平プレスによって転写プリントする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
織物生地や編物生地の表面に図形、模様、記号など、色々な柄をプリントすることが行われている。その手段として、近年ではインクジェットプリンターが使用され、これら模様や図形などはパソコンにて画像を形成し、またデジカメにて撮った写真をパソコンに取り込み、これをインクジェットプリンターへ送ってプリントしている。従って、パソコンの画面に形成される模様や図形などであれば、生地にプリントすることが出来る。
【0003】
従って、コンピューターの普及に伴いインクジェットプリンターがオフィスだけでなく家庭で、紙、フイルム、布等に印字するために広く利用されている。インクジェット記録方法には、ピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式等がある。これらのインクジェット記録方法により画像をプリントする際、インクの吐出安定性、色相、得られる画像の堅牢性(耐候性、耐水性)、画質の良さなど、要求される課題は多い。
【0004】
ところで、紙面にプリントする際に使用されるインクは顔料である為に、インクジェットプリンターにてプリントされた状態で鮮明な色彩のカラーとなるが、生地の場合には顔料だけでなく染料も使われる。このように、一般的な紙面や生地面であればインクジェットプリンターにて手軽にプリントすることは可能であり、その他にもハンドプリント、スクリーンプリント、ロータリープリントなどの方法も知られている。
【0005】
しかし、本発明が対象とする紐生地であれば該生地が連続しておらず、すなわち、複数本の紐が一定間隔で配列して構成されているが、各紐の位置関係にバラツキが発生する為に、従来の方法でプリントすることは出来ない。
特開2001−240112号に係る「芯線入り結束紐の製造方法および印刷方法」は、小ロット多品種少量生産に適し、迅速かつ効率良く行うことのできる芯線入り結束紐の製造方法である。
【0006】
すなわち、この芯線入り結束紐の製造方法は、芯線入り結束紐に文字等を印刷する際、弾性素材からなる転写ロールを使用し、二枚のフイルム間に配置して貼り合わされた芯線入り結束紐素材を送りながら、その表面に文字等の印刷を行うものである。
【特許文献1】特開2001−240112号に係る「芯線入り結束紐の製造方法および印刷方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、紐に印刷を施す方法は知られているが非常に面倒であり、この方法でコスト高と成ってしまう。又、本発明が対象とする紐には芯線はなく安定性が悪い。そこで、本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、2枚のフイルムで挟まなくても、細くて柔軟な各紐が位置ズレしないで、正しくプリントすることが出来る乾式熱平プレスによる転写プリント方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が対象とするプリントは紐生地である。すなわち、複数本の柔軟な紐が等間隔で編織された生地であり、縦方向には連続しているが横方向には連続していない。ここで、個々の具体的な紐形態は限定しないが、少なくともプリントされるに必要な平坦面を形成している。すなわち、円形断面の紐でない為に、プリントに先立って平坦面を一様に揃えることが必要となる。
【0009】
ところで、該紐生地は複数本の紐で構成した紐生地部の長手方向前後に、帯生地部を有し、該帯生地部は横方向に連続した生地で構成している。帯生地部の長さは短いが、前後の両帯生地部の間に紐生地部を有している為に、帯生地部付近での個々の紐間隔は一定している。そこで、両帯生地部を引っ張るならば、個々の紐に張力が作用して、その間隔は一定となる。そして、この状態で、紐生地の表面をなぞるように定規をスライドさせるならば、捩じれが解消される。
【0010】
しかし、本発明では紐生地の各紐を揃える具体的な方法は限定しないことにする。このように、各紐が整然と揃ったところで、転写紙を上に置き、熱板を降下させ、加熱しながらプレスする。転写紙には図形、模様、記号など、プリントされる柄が表示され、加熱しながらプレスすることで、転写紙の柄は紐生地面にプリントされる。個々の紐表面にプリントされた図形や模様は、紐生地全体として捉えるならば、転写紙の柄と同じになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプリント方法は紐生地の表面に図形や模様などを正しく転写することが出来、複数本の細い紐で構成した生地面に所望の柄が形成される。このプリント方法は、両帯生地部の間に形成される紐生地部の個々の紐が整然と整えられた状態で転写紙を置き、加熱状態でプレスすることで転写紙に印刷されている染料が昇華して各紐表面に付着する。従って、紐生地には転写紙に形成した図形や模様などが正しくプリントされる。
【実施例】
【0012】
図1は本発明のプリント対象となる紐生地1を示す概略図であり、該紐生地は同図に示すように、紐生地部1と帯生地部2とで構成し、これら紐生地部1と帯生地部2とが交互に編製された生地である。該紐生地の幅寸法は一定で、長さは連続し、本発明ではこの紐生地部1に、又は紐生地部1と帯生地部2とに図形や模様などの柄をプリントする方法である。
【0013】
帯生地部2は隙間のない一般的な編生地であるが、紐生地部1は複数本の紐3,3・・・が配列し、各紐3,3・・・の間には隙間4,4・・・を形成している。すなわち、各紐3,3・・・は所定の隙間4,4・・・を残して互いに平行に配列し、その両端は上記帯生地部2,2と連結している。この紐生地はジャガードレース編みされたものあるが、編製の方法に関しての説明は省略する。すなわち、本発明は、ジャガードレース編みされた紐生地表面に図形や模様などをプリントする技術に関するものであって、編製技術は対象としない。
【0014】
ところで、紐生地部1の紐3は図2に示しているように、一定幅Mで一定厚さTを有し、表面5は平坦面と成っている。又、幅は一定でなくても多少の凹凸形状とする場合もある。すなわち、両縁はストレートでなく、波打った形状としてもよい。
【0015】
本発明では、該紐生地の表面に図形や模様などをプリントする訳で、該プリントに際して各紐3,3・・・がストレートに延び、しかも捩じれていないことが必要である。以下に具体的なプリント方法の各工程を説明する。
(1)テーブル(台)に載置する。
紐生地を所定のテーブル上に載置する。テーブル面は平坦で、しかも紐生地を上方からプレスするに適したものと成っている。
(2)各紐の整え。
紐生地をテーブルに載置しただけでは、複数本の紐3,3・・・がズレたり、捩じれたり、曲がったりしている。そして、各紐3,3・・・間の隙間4,4・・・のバラツキもある。これを整えることが必要である。
各紐3,3・・・を揃える具体的な方法は色々あり、限定するものではないが、紐生地は帯生地部2,2・・・を有している為に、この帯生地部2,2・・・を利用する。すなわち、該帯生地部2,2・・・を紐生地部1,1・・・の間に編製している。
【0016】
例えば、両帯生地部2,2を互いに外方向へ引くならば、各紐3,3・・・には一定の張力Pが作用し、ダブつきはなくなる。そして、各紐3,3・・・間の隙間4,4・・・は一定となる。しかし、紐3,3・・・の捩じれは残っている場合があり、平坦な定規で表面を均すならば、該捩じれは解消される。紐3は図2に示しているように、細い帯状を成している為に、捩じれているならば、一部盛り上がった部分が存在する為に、定規で均すことで該捩れは取れる。
(3)転写紙のセット。
転写紙7には所定の図形や模様などが染料を用いて描かれている。この転写紙7を紐生地の紐生地部1にセットする。また、帯生地部2に跨ってセットする場合もある。図3はテーブル6に載置した紐生地の上に転写紙7をセットした場合である。
(4)熱プレス。
図4に示すように、転写紙7がセットされた状態で鉄板8が降下し、所定の時間加熱状態でプレスする。従って、転写紙7に染料を使って印刷されている図形や模様などは昇華して紐生地部1に付着し、該紐生地部1の表面が該図形や模様でプリントされる。
【0017】
プリントされるのは各紐3,3・・・の表面5,5・・・であるが、複数の紐3,3・・・で構成される紐生地部1の表面は、転写紙7に描かれていた図形や模様が正しくプリントされて同じ図形や模様が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】紐生地の具体例。
【図2】紐生地を構成する1本の紐。
【図3】本発明に係るプリント方法の1工程で、テーブルに載置した紐生地の上に転写紙をセットした場合。
【図4】転写紙を加熱した鉄板でプレスしている状態。
【符号の説明】
【0019】
1 紐生地部
2 帯生地部
3 紐
4 隙間
5 表面
6 テーブル
7 転写紙
8 鉄板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の細い紐で構成する紐生地の表面をプリントする方法において、紐生地は複数本の細い紐で構成する紐生地部の前後に帯生地部を有し、該紐生地をテーブル上に載置して紐生地部の各紐のタルミや捩れなどを無くして整え、そして紐生地の上には染料を用いて図形や模様など印刷した転写紙をセットし、上方から加熱した鉄板を降下して所定の時間プレスし、転写紙に形成した図形や模様などが昇華して紐生地に付着させることを特徴とする紐生地の乾式熱平プレスによる転写プリント方法。
【請求項2】
テーブルに載置した紐生地の両帯生地部を反対方向へ引っ張って、紐生地部の各紐に一定の張力を付勢した状態で、鉄板を降下してプレスした請求項1記載の紐生地の乾式熱平プレスによる転写プリント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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