説明

純水器

【課題】イオン交換樹脂を用いて水中の不純物イオンを除去する純水器において、イオン交換樹脂を有効に活用することができる純水器を得ること。
【解決手段】イオン交換樹脂35を充填する樹脂筒(容器)21に対して、コーン状部材(配水部)27を樹脂筒21の上部中央に設け、コーン状部材27から配水される水が、容器内に均一な密度で配水されるようにし、さらに容器内の水を集水する集水部を容器の下部中央に設けるとともに集水配管上部に空気抜穴を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワイヤ放電加工機に具備され、イオン交換樹脂を用いて水中の不純物イオンを除去する純水器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電加工とは、電極と被加工物との間に短い周期で繰り返されるアーク放電によって被加工物の一部を除去する機械加工の方法である。主として、機械加工技術では加工できない硬い金属を加工する場合に用いられる。この放電加工技術を使用すれば、極めて硬い鋼鉄やエキゾチックメタル(例えばチタン、炭化物)に複雑な輪郭を形成することができる。しかしながら、電極と被加工物間の放電により除去加工するという特性上、被加工物が電気を通す材質(導体)でなければ加工できない。放電加工面は溶解、再凝固を繰り返すため脆化する傾向がある。放電加工の電極は、被加工物に接触しないが非常に近い位置となるように被加工物の表面に沿って動かされる。そして、スパークが被加工物の表面の一部を溶かして蒸発させることにより、被加工物の表面に無数の微小凹部を形成する。溶けたり蒸発したりして被加工物から除去された粒子は、電極と被加工物との間に満たされた誘電体の液体(加工液)によって洗い流される。
【0003】
放電加工技術は、型彫り放電加工とワイヤ放電加工に大別されるが、本発明は、ワイヤ放電加工に関するものである。ワイヤ放電加工は、金属(主として真鍮)の細いワイヤを被加工物に近づけるように送って行う。ワイヤはボビンから一定の速度で供給され、上下のガイドで保持される。ワイヤ放電加工では加工液として、水或いは油が使用されるが本発明は、加工液に水を使用するものに関するものである。
【0004】
加工液に水を使用する場合の加工液の循環系統において、水質を一定の条件(電気伝導率)に維持するために、イオン交換樹脂を用いて加工液(以降、単に水と言う)中の不純物イオンを除去することが行われる。このイオン交換樹脂は一定期間以上使用して飽和すると能力が無くなる。そのため、例えば塩酸及び苛性ソーダにて再生賦活させて再度使用する等の管理が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−135128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、飽和したイオン交換樹脂は、上記のように再生薬品により再生し再利用されているが、例えば使用樹脂量が少なく、少量のイオン交換樹脂ために再生設備を設置するのが、コスト高となってしまう場合、予め再生済みのイオン交換樹脂を通水用の容器(樹脂筒)に充填して用い、イオン交換樹脂が飽和した後は樹脂筒内部のイオン交換樹脂を再生したものに交換するという方式を採用することが一般的になってきた。
【0007】
このような通水用の容器を用いることにより、同量のイオン交換樹脂を充填しても、通水効率を上げ、充填しているイオン交換樹脂をより効率的に使用することにより交換間隔を延長させることができる。交換間隔を延長させることができれば、運転管理が容易となるとともに、水質維持のためのコストを低減することが可能となる。
【0008】
一方、従来の純水器においては、イオン交換樹脂を充填する容器に対して入口管が中心軸から偏心した位置に設けられる場合があった。このような場合、水が容器内に均一に配水されず、容器内で水の片流れ現象が発生する。この片流れ現象が発生すると、水が行き渡らない箇所が発生するので、通水効率が下がりイオン交換率が低減する。このような状態においては、イオン交換樹脂が有効に活用されず寿命も延びないので改善が求められていた。
【0009】
また、一般に純水器においては、容器内に空気が残留することがあるが、残留した空気は、通水開始とともに容器内に溜まる水によって上部に追いやられ容器内の上部に溜まって空気溜りを形成する。従来の純水器は、この空気溜りの空気を容器外部に逃がす構造を備えてなかった。そして、空気溜りが所定以上に大きくなった場合、容器内に水が行き渡らない箇所が発生するとともに、容器内に充填されたイオン交換樹脂が空気溜りに晒されて水を良好に通過させなくなる。このような状態においては、上記入口管が中心軸から偏心した位置にある場合と同様に、イオン交換樹脂が有効に活用されず寿命も延びないので改善が求められていた。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、水を容器内に均一に配水して容器内での水の片流れ現象を抑制するとともに空気溜まりの拡大を抑制し、これにより水が行き渡らない箇所を無くしてイオン交換率を向上させ、イオン交換樹脂を有効に活用することができる純水器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の純水器は、イオン交換樹脂を充填する容器に対して、配水部を容器の上部中央に設け、配水部から配水される水が、容器内に均一な密度で配水されるようにし、さらに容器内の水を集水する集水部を容器の下部中央に設けている。
【0012】
さらに本発明の純水器は、容器上部に形成される空気溜りの空気を逃がすために、集水配管上部に空気抜穴を設けている。集水配管上部に空気抜穴を設けることで空気溜りの空気が空気抜穴から集水配管及び出口管を経由して容易に外部に押し出される。これにより、万一容器内に空気溜りが発生してもこの空気抜穴から空気が速やかに排出されるようにしている。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、配水部を容器の上部中央に設け、配水部から配水される水が、容器内に均一な密度で配水されるようにし、さらに容器内の水を集水する集水部を容器の下部中央に設けているので、水が容器内に均一に配水されて容器内での水の片流れ現象が抑制され、また集水配管上部の空気抜穴によって空気溜まりの拡大が抑制され、これにより水が行き渡らない箇所を無くしてイオン交換率を向上させるので、イオン交換樹脂を有効に活用することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる純水器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
実施の形態
図1は、ワイヤ放電加工機の加工液供給装置の水の循環系統図である。図2は、本発明にかかる純水器の縦断面図である。図3は、コーン状部材(配水部)の詳細を示す側面図である。図4は、集水配管の下端部に設けられた集水部の詳細を示す側面図である。図5は、集水部に設けられた集水口の断面形状を示す図4のA−A線に沿う矢視断面図である。図6は、比較して示す従来の純水器の縦断面図である。なお、図2及び図6において、矢印は水の移動を表している。
【0016】
図1において、ワイヤ放電加工機の加工液供給装置は、本発明にかかる純水器20を含む循環系統となっている。図示しないワイヤ放電加工機は、加工槽51内の水を使って放電加工を行う。加工槽51にて使用された水は、加工槽51より汚液槽53へ重力により移送される。汚液槽53に貯留された水はポンプ41にて加圧されフィルタ31にて微粒子を除去された後、清液槽55に移送される。清液槽55の水は、清液槽55に付属した純水器20により循環処理され水質を維持する。循環処理する際の処理量及び水質条件はワイヤ放電加工機の仕様により異なるが、本実施の形態では、一例として以下の通りである。
【0017】
水量:17.6l/min
水質:7〜14μS/cm at25℃(電気伝導率)
【0018】
水質維持に使用するイオン交換樹脂は、強塩基性アニオン(陰イオン)交換樹脂と強酸性カチオン(陽イオン)交換樹脂とを適当な割合で混合したものを混床にして使用する。その樹脂量は、対象とするワイヤ放電加工機の仕様により異なってくるが、一例として、本実施の形態の純水器においては、以下の通りである。
【0019】
カチオン交換樹脂:9l
アニオン交換樹脂:9l
合計 :18l
【0020】
カチオン交換樹脂9lとアニオン交換樹脂:9lを混合することで、交換容量が0.5mg当量/mlの能力を持つ湿潤混合樹脂とすることができる。充填される樹脂量は、樹脂寿命により決定されるが、上記樹脂量における寿命は、従来、約4ヶ月程度である。なお、この寿命を延長するために、充填樹脂量を多くする場合もある。例えば、30L程度の樹脂を使用する場合もある。
【0021】
[純水器の構造]
図2において、純水器20は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を混合して成るイオン交換樹脂35を充填する円筒状の樹脂筒(容器)21と、樹脂筒21の上部中央に設けられた出入口配管ヘッド22と、出入口配管ヘッド22から樹脂筒21の中心軸に沿って延びる集水配管23を有している。樹脂筒21は、例えばステンレスにて作製されている。大型のもの(30l)では、FRPが使われることもある。
【0022】
イオン交換樹脂35は、樹脂筒21のほぼ全体に充填される。イオン交換樹脂35の一つ一つ(イオン交換樹脂粒)は、直径0.5〜1mmの球状をしており、その表面にイオンを吸着する。全表面にイオンを吸着してしまうとイオン交換能力がなくなり寿命となる。
【0023】
[出入口配管ヘッド]
出入口配管ヘッド22は、樹脂筒21の上部で入口管11や出口管12が接続する連結部25と、この連結部25の下部に設けられて樹脂筒21の内部側に臨み入口管11から流入した水を樹脂筒21内に均一な密度で散水(配水)するコーン状部材(配水部)27とを有している。集水配管23は、コーン状部材27を同軸に貫通するように延びている。すなわち、コーン状部材27は、集水配管23の周囲に環状の室を形成している。この環状の室には入口管11が連通している。そして、この環状の室のテーパ状の外周壁には、水を樹脂筒21内に均一な密度で散水するスリット状の散水口が形成されている。スリット状の散水口は、コーン状部材27の軸線方向に延びる極細の長穴で水を均一にシャワー状に散水するのに効果的に働く、出入口配管ヘッド22と集水配管23とは、1つの組立体とされ、集水配管23がコーン状部材27を貫通するように作製されている。
【0024】
[コーン状部材(配水部)]
図3にコーン状部材27の詳細を示す、コーン状部材27は、例えばプラスチック等の樹脂にて作製され概略中空の円錐台形状を成している。そして、コーン状部材27は、外周部が2段に分かれたテーパ面と成っており、この2段に分かれたテーパ面には、それぞれスリット状の散水口27a、27bが形成されている。散水口27a、27bは、上下方向に延び全周にわたって等間隔に全面的に形成されている。また、円錐台形状の大径部に取付フランジ部27cが設けられている。このフランジ部27cには、周囲にネジ山が切られており、コーン状部材27は、この取付フランジ部27cのネジ山により、出入口配管ヘッド22にねじ込まれて締結され、小径部側を樹脂筒21の内方に向けて配設される(図2)。
【0025】
[集水配管及び集水部]
図4に示すように、集水配管23は塩化ビニール等のパイプ状の材料で作製され、先端(下端)は先端キャップ23aにて塞がれている。集水部29は、樹脂筒21の中心軸に沿って延びる集水配管23の下端部に水平方向にスリット状の集水口29aが複数形成されることにより構成されている。図5に示すように、スリット状の集水口29aは、集水配管23の両側面に対向するように形成されている。集水口29aは、散水口27a、27bと同じように、薄い円板状の切歯による切削加工、或いは薄い円板状のヤスリによる研削加工により形成されている。なお、散水口27a、27b及び集水口29aは、必ずしもスリット状の長穴でなくともよく、均一な散水と均一な集水が可能であれば、例えば、多数の小穴等であってもよい。
【0026】
また、集水配管23の上部には空気抜穴60が開けられている。空気抜穴60の位置は集水配管23の上部で、集水配管23がコーン状部材27に対して同軸状に貫通する部分の直下である。空気抜穴60の径は、イオン交換樹脂粒が詰まったり流失したりすることのないように、イオン交換樹脂粒の粒径0.5〜1mmより小さいことが好ましい。加えて、空気抜穴60の総開口面積が、集水口29aの総スリット面積に比べて十分小さくなるようにして水に対する排出抵抗を十分大きくすることで空気のみが空気抜穴60から排出されるように設定する。本実施の形態では、空気抜穴60として、直径0.3mmの円形穴を円周方向に等間隔に4個設けている。この4個の空気抜穴60は、集水配管23の上端から120mmの高さ(コーン状部材27の最下端から10mm下方)の位置に形成されている。本実施の形態では空気抜穴60を円形穴としているが、空気抜穴60は円形なものに限られるものではなく、同じ程度の開口面積を有するものであれば任意の形状でよい。例えば上記集水口29aと類似な形状でもよく、その場合、幅0.254mm長さ1mmのスリット状の長穴形状となる。
【0027】
[散水口及び集水口の形状]
コーン状部材27及び散水口27a、27bの各部の寸法は、図3に示す通りである。また、集水部29及び集水口29aの各部の寸法は、図4及び図5に示す通りである。発明者等は、実験により、散水口及び集水口の形状を概略図に示すものとすることにより、最適な散水と集水ができることを確認した。すなわち、イオン交換樹脂35を18L〜30L充填する樹脂筒21において、散水口のスリット幅を0.2〜0.4mm、スリット長を17〜19mm、スリット数を70〜90本とし、集水口のスリット幅を0.2〜0.3mm、スリット長を12〜14mm、スリット数を20〜30本とすることにより、最適な散水と集水ができることを確認した。
【0028】
なお、本実施の形態の集水配管23は、配水部を構成するコーン状部材27を同軸状に貫通した後、外部に延びているが、集水配管23の配置はこれに限るものではない。すなわち、コーン状部材27及び集水部29が、樹脂筒21の中心軸上に存在すれば本願の目的はほぼ達成することができ、水は樹脂筒21内に均一に散水される。しかしながら、本実施の形態のように集水配管23を樹脂筒21の中心軸上に配置し、さらにコーン状部材27を同軸状に貫通させることで、水の流れに与える抵抗を最小に止めることができ、最も効率を良くすることができる。
【0029】
[動作]
このような構成の純水器20においては、純水器20内への通水が開始するとコーン状部材27の散水口27a,27bから樹脂筒21内に散水された水が樹脂筒21の底部から徐々に満たされていく。このとき樹脂筒21内に残留していた空気は押し上げられて樹脂筒21の上部に溜まり空気溜りを形成する。さらにイオン交換樹脂用のポンプ45によって入口管11から注入された水は空気溜りの空気を加圧する。逃げ場を失った空気は集水配管23に開けられた空気抜穴60から集水配管23内に押し出され、集水された水とともに出口管12を経由して樹脂筒21の外に排出される。これにより、樹脂筒21上部の空気溜りは消滅し、樹脂筒21内部に充填されたイオン交換樹脂は、空気溜りに晒されることなく良好に水が行き渡るようになる。純水器20の使用開始初期に樹脂筒21内に空気が残っていた場合だけでなく、使用中において入口管11から水とともに空気が侵入してしまった場合であっても、上記と同様に純水器20外に空気が速やかに排出されるので空気溜りが形成されることなく、樹脂筒21内のイオン交換樹脂35は空気に晒されることがなくイオン交換樹脂35に水が行き渡らなくなるといったこともなくなる。
【0030】
また、このような構成の純水器20においては、イオン交換用のポンプ45によって、出入口配管ヘッド22より純水器20内に水が流入され、ポンプ45の圧力によりコーン状部材27からシャワー状に散水される。このとき、コーン状部材27が樹脂筒21の上部中央に設けられ、散水口は円錐状部に上下方向に延びるスリット状の穴として、コーン状部材27に全周にわたって形成されているので、水は樹脂筒21内に均一に配水されて樹脂筒21内に水の片流れ現象は発生しない。
【0031】
樹脂筒21内に均一に配水された水は、ポンプ45による樹脂筒21内の圧力と自重により樹脂筒21内を下降する。その過程にてイオン交換樹脂35の粒と水とが接触してイオン交換が行われる。イオン交換樹脂35と接触した水は、カチオン交換樹脂にNa+イオン等のカチオンが吸着される。また、水中のアニオンはアニオン交換樹脂の反応基と置換され、アニオンはOH-イオンに変わる。そして、カチオン交換樹脂から供給されたH+とアニオン交換樹脂から供給されたOH-とにより、H2Oが生成される。こうして、大部分の荷電性不純物は除去される。不純物イオンを除去された水は、ポンプ45による樹脂筒21内の圧力により集水部29から吸い込まれて(に押し出されて)出口管12から吐出する。
【0032】
[従来の純水器]
図6は上記のように本実施の形態と比較して示す従来の純水器の縦断面図である。図6において、従来の純水器120においては、水の噴き出しノズル127、及び集水配管123並びに集水配管123の先端に設けられた集水部29が、樹脂筒21の中心軸から離れた位置に設けられていた。そのため、片流れ現象が発生し、図中Dに示す領域のような水が行き渡らない箇所が発生してイオン交換率が低減していた。
【0033】
また、従来の純水器120においては、樹脂筒21内に残留した空気は、樹脂筒21内に溜まる水によって上部に追いやられ樹脂筒21の上部に溜まって図中Fに示す空気溜りを形成する。従来の純水器120は、この空気溜りFの空気を積極的に外部に逃がす構造を備えてなかった。そして、空気溜りFが所定以上に大きくなると、樹脂筒21内に水が行き渡らない箇所が発生するとともに、樹脂筒21内に充填されたイオン交換樹脂が空気溜りに晒されて水を良好に通過させなくなる。
【0034】
[寿命比較データ]
発明者等は、図6に示す従来の純水器120と本実施の形態の純水器20のイオン交換樹脂の寿命の比較をするためにモニター試験を行い、寿命比較データを採取した。表1は、その寿命比較データである。表2は、表1における使用加工条件を示す表である。すべて18lの同型の純水器を用い、加工条件と加工時間を変えて試験を行った。
【0035】
【表1】

【表2】

【0036】
表1に示す通り、図6に示す従来の純水器120に比べ、本実施の形態の純水器20のイオン交換樹脂寿命が平均で30%以上延長している。すなわち、本実施の形態の純水器20は、従来の純水器120に比べより効率的にイオン交換樹脂を活用することができる構造であり、純水器としての機能向上が立証された。
【0037】
[空気抜穴の影響]
本実施の形態の純水器20は、上記のように空気抜穴60を有することもその特徴とする。空気抜穴60は主に樹脂筒21内の残留空気を排出するが、源水を排出してしまう場合がある。すなわち、コーン状部材27の散水口27a,27bから散水された源水の一部がイオン交換樹脂35を通過することなく直接空気抜穴60から排出されてしまう場合がある。源水が直接空気抜穴60から排出されると純水器20の能力は落ちる可能性がある。そのため、発明者等は、この空気抜穴60の有無が純水器20に与える影響について実験を行い確認した。
【0038】
図7は空気抜穴有無の影響を確認する実験を行った回路構成図である。図7に示すように出口管12に電気伝導度センサ63をセッティングし、第1槽61の源水をポンプ45でくみ上げ純水器20に通水した後第2槽62に排出するようにして、純水器20から排出された水の電気伝導度を検出した。そしてこの実験を空気抜穴60無しの場合と空気抜穴60有りの場合とで行い比較した。図8はその結果を示すグラフである。図8において、縦軸は排出された水の電気伝導度(水質)[μS/cm]を示し、横軸は純水器20への通水時間[時間]を示す。
【0039】
上記回路にて、純水器20に電気伝導度134μS/cmの原水を入口管11から通水したところ、出口管12の出口水の電気伝導度は、通水直後(0〜8時間)において、空気抜穴無しの場合が0.06〜0.09μS/cm、空気抜穴有りの場合が0.1〜0.2μS/cmであり、空気抜穴60有無の影響は純水器20の使用上ほとんど無視できる程度のものであることが確認できた。一方、同実験にて、純水器20のイオン交換寿命を出口管12の出口の水の電気伝導度が14μS/cmに達する通水経過時間として比較した結果、空気抜穴無しの場合が約15時間で寿命に達するのに対し、空気抜穴有りの場合は約18時間で寿命に達し、空気抜穴60を設けることにより純水器20の寿命が延長することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかる純水器は、例えばワイヤ放電加工機の加工液供給装置に用いられて有用であり、特に、清液槽の水を循環処理して水質を維持する加工液供給装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ワイヤ放電加工機の加工液供給装置の水の循環系統図である。
【図2】本発明にかかる純水器の縦断面図である。
【図3】コーン状部材(配水部)の詳細を示す側面図である。
【図4】集水配管の下端部に設けられた集水部の詳細を示す側面図である。
【図5】集水部に設けられた集水口の断面形状を示す図4のA−A線に沿う矢視断面図である。
【図6】本実施の形態と比較して示す従来の純水器の縦断面図である。
【図7】空気抜穴有無の影響を確認する実験の回路構成図である。
【図8】空気抜穴有無の影響を確認する実験結果を示すグラフの図である。
【符号の説明】
【0042】
11 入口管
12 出口管
20 純水器
21 樹脂筒(容器)
23 集水配管
23a 先端キャップ
25 連結部
27 コーン状部材(配水部)
27a,27b スリット(排水口)
27c 取付フランジ部
29 集水部
29a スリット(集水口)
31 フィルタ
35 イオン交換樹脂
41,43,45 ポンプ
51 加工槽
53 汚液槽
55 清液槽
60 空気抜穴
61 第1槽
62 第2槽
63 電気伝導度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂を用いて水中の不純物イオンを除去する純水器において、
水を流入する入口管と、
水を流出する出口管と、
カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を混合したイオン交換樹脂を充填する容器と、
前記容器の上部中央に設けられ前記入口管が接続され前記入口管から流入する水を前記容器内に均一な密度で配水する配水部と、
前記容器の下部中央に設けられ前記出口管が接続され前記容器内の水を集水して前記出口管に流出する集水部と、
を備えたことを特徴とする純水器。
【請求項2】
前記配水部は、小径側を前記容器の内方に向ける円錐状部を有し、当該円錐状部に上下方向に延びるスリット状の散水口が全周にわたって形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の純水器。
【請求項3】
上部を前記配水部の前記円錐状部に同軸状に貫通させ、前記出口管に接続され、前記容器の中心軸に沿って前記容器内の下部まで延びる集水配管を備え、
前記集水部は、前記集水配管の下端部に設けられ、前記集水配管の下端部に水平方向に複数形成されたスリット状の集水口を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の純水器。
【請求項4】
前記集水配管上部の前記円錐状部近傍の壁面に、短辺または最小径がイオン交換樹脂粒径より小さい空気抜穴を少なくとも1個設けた
ことを特徴とする請求項3に記載の純水器。
【請求項5】
前記容器は、前記イオン交換樹脂を充填し、
前記散水口のスリット幅が0.2〜0.4mm、スリット長が17〜19mm、スリット数が70〜90本であり、
前記集水口のスリット幅が0.2〜0.3mm、スリット長が12〜14mm、スリット数が20〜30本である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の純水器。
【請求項6】
前記イオン交換樹脂は、交換容量が0.5mg当量/mlの能力を持つ湿潤混合樹脂である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の純水器。
【請求項7】
前記不純物イオンは、ワイヤ放電加工の際に生じるものである
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の純水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−99648(P2010−99648A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3950(P2009−3950)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(500035649)菱電工機エンジニアリング株式会社 (3)
【出願人】(509055426)オルガノ中部株式会社 (1)
【Fターム(参考)】