説明

純粋なトリエタノールアミン(TEOA)の製造法

トリエタノールアミン(TEOA)およびジエタノールアミン(DEOA)を含有するエタノールアミン混合物を連続的に蒸留により分離し、この場合蒸留塔(DEOA塔)中でDEOAは、留去され、TEOAを含有する、生じる塔底部流は、後接続された塔(TEOA塔)に供給され、この後接続された塔(TEOA塔)中で純粋なTEOAは、側面取出し流として取り出されることによって、純粋なTEOAを製造する方法であって、この場合DEOA塔の塔底部中でのエタノールアミン混合物の滞留時間は、20分未満であることを特徴とする、純粋なTEOAを製造する上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエタノールアミン(DEOA)およびTEOAを含有するエタノールアミン混合物を連続的に蒸留により分離することによって純粋なTEOAを製造する方法に関し、この場合蒸留塔(DEOA塔)中でDEOAは、留去され、TEOAを含有する、生じる塔底部流は、後接続された塔(TEOA塔)に供給され、この後接続された塔(TEOA塔)中で純粋なTEOAは、側面排出流として取り出される。
【0002】
一般に、アンモニア水と酸化エチレンとを反応させ、モノエタノールアミン(MEOA)およびジエタノールアミン(DEOA)を留去することによって取得されたTEOA粗製生成物を分別蒸留した後に得られた、最初に無色の純粋なTEOA(色価:DIN−ISO 6271によるAPHA約0〜20(=ヘイズ))が約4〜6週間後に、閉鎖された容器中でも光の遮断下に徐々に淡ピンク色に変色する可能性があり、および最終的に特に光の下に放置した場合には直ちに黄色ないし褐色に変色する可能性があることは、公知である。この効果は、よりいっそう高い温度の作用によって促進される(例えば、G.G.Smimova et.al.,J.of Applied Chemistry of the USSR 61,第1508〜1509」(1988)およびChemical & Engineering News 1996,Sept.16,第42頁,中央の欄参照)。
【0003】
Chemical & Engoneering News 1996,Sept.16,第42頁の記載によれば、高められた温度でTEOA1モルは、エタノールアミン1モルとアセトアルデヒド2モルとを分解する。アセトアルデヒドは、クロトンアルデヒドに縮合し、このクロトンアルデヒドは、再びエタノールアミンでシッフ塩基を形成する。この不飽和のシッフ塩基は、1,4−重合でTEOA中の有色の生成物を生じる。
【0004】
純粋なTEOAの色品質を評価するために、TEOAのAPHA色価(DIN−ISO 6271による)が貯蔵時間に依存して測定される、時間の掛かる貯蔵試験と共に、いわゆる酸中和試験は、有効であることが実証された。
【0005】
この酸中和試験は、新たに製造されたTEOAの貯蔵中の色安定性を数分間で評価することを可能にする。
【0006】
この試験は、特開昭62−019558号公報(Derwent Abstract No.87−067647/10)および特開昭62−005939号公報(Derwent Abstract No.87−047397/07)中に記載されており、それによれば、TEOAは、酢酸、クエン酸、硫酸、塩酸または燐酸で処理(中和)され、その後に吸収帯の吸光度が420nmおよび530nmで測定される。この試験の実施中、TEOAの外見上のピンク色の変色が全く起こらず、吸光度に対する測定値が十分に小さいままである場合には、TEOAは、貯蔵中、色安定性であり、即ち数ヶ月の期間に亘って無色のままである。
【0007】
前記の刊行物には、純粋で無色ないし僅かに変色したTEOAを製造するための種々の方法が記載されている。
【0008】
欧州特許出願公開第4015号明細書(BASF AG社)には、僅かな変色を有するエタノールアミンが、亜燐酸または次亜燐酸の添加によってエタノールアミンの製造中および/または蒸留による後処理中に得られることが記載されている。
【0009】
欧州特許出願公開第36152号明細書および欧州特許出願公開第4015号明細書(双方ともBASF AG社)には、アルカノールアミンの製造方法において使用される材料が方法生成物の色品質に影響を及ぼすことが説明されており、ニッケル不含またはニッケル貧有の鋼が推奨されている。
【0010】
米国特許第3819710号明細書には、粗製エタノールアミンを選択された触媒の存在下で水素化することによって、エタノールアミンの色品質を改善する方法が開示されている。しかし、この方法は、工業的に費用が掛かり、数ヶ月間に亘って無色のままであるTEOA製品を生じない。
【0011】
米国特許第3207790号明細書には、アルカリ金属の硼化水素の添加によってアルカノールアミンの色品質を改善する方法が記載されている。
【0012】
米国特許第3742059号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第2225015号明細書には、硼酸のアルカノールアミンエステルまたはアルカリ金属/アルカリ土類金属硼酸塩の添加によってアルカノールアミンの色品質を改善することが記載されている。
【0013】
しかし、TEOAを安定化するための助剤の存在は、TEOAの数多くの重要な使用範囲において望ましいものではない。
【0014】
新たに蒸留されたTEOAへの少量のエチレンオキシドの事後の添加は、米国特許第4673762号明細書の記載によれば、同様に脱色および色の安定化を生じる。しかし、この方法は、毒性の理由から懸念されると思われる。
【0015】
英国特許第1062730号明細書Aには、珪酸塩またはアルミン酸塩の存在下での純粋蒸留によってエタノールアミンを精製する方法が記載されている。
【0016】
特開昭62−019558号公報(Derwent Abstract No.87−067647/10)には、粗製TEOAを無機酸化物で170〜250℃で処理し、引続き酸素の不在下で蒸留することによって品質的に良好なTEOAを製造することについて報告されている。
【0017】
特開昭62−005939号公報(Derwent Abstract No.87−047397/07)の記載によれば、粗製TEOAが空気の遮断下で1〜10時間170〜250℃に加熱され、次に真空中で蒸留される場合には、同様の結果が達成される。
【0018】
ソ連特許第326178号明細書(Derwent Abstract No.63384T−AE)には、無水モノエタノールアミン(MEOA)またはジエタノールアミン(DEOA)、またはこれら双方の物質の混合物とエチレンオキシドとを50℃未満の温度で注意深く反応させることによって、良好な色品質を有するTEOAを製造することが記載されている。
【0019】
ソ連特許第228693号明細書(Chem.Abstr.70,77305f(1969))および英国特許第1092449号明細書の記載によれば、アンモニアとエチレンオキシドとを35℃以下で反応させ、得られたエタノールアミン混合物を空気の遮断下に蒸留する場合に、同様の結果が達成される。
【0020】
エチレンオキシドとの反応が低い温度で行われるような方法は、長い滞留時間およびそれに関連した低い空時収量のために経済的な視点から不利である。
【0021】
WO 2001/53250A1(BP Chemicals Ltd.)は、(i)モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンを含む反応混合物の形成を可能にする条件下でアンモニアとエチレンオキシドとを連続的に接触させることによってTEOAを合成する工程、(ii)反応されなかったアンモニアを反応混合物から連続的に分離する工程、および(iii)工程(ii)から生じる混合物からTEOAを連続的に分離する工程を含む、TEOAを製造するための連続的方法に関し、この場合この方法は、最後の工程でモノエタノールアミンおよび若干のジエタノールアミンが工程(ii)から生じる混合物から分離され、TEOAおよび少なくとも1つの第2のジアルカノールアミン0.5〜50質量%を含有するアルカノールアミンの特殊な混合物が製造されるかまたは単離され、TEOAがアルカノールアミンの特殊な混合物の連続的な蒸留によって99.2質量%以上の純度で分離されかつ単離されることによって特徴付けられている。
【0022】
WO 2005/035481A2(BASF AG)には、トリエタノールアミンを蒸留により分離することが記載されており、この場合物質混合物は、2工程で蒸留される。第1の工程で低沸点留分と高沸点留分は、取り出され、遠心分離され、第2の工程で99.4質量%超のトリエタノールアミン含量および0.2質量%未満のジエタノールアミン含量を有する中程度の沸点留分が蒸留される。物質混合物は、特に第1の塔内およびこれに接続された第2の塔内で蒸留されるか、または分離壁塔内で蒸留される。
【0023】
本発明は、公知技術水準の欠点を克服することにより、殊にアンモニアとエチレンオキシドとの反応によって得られた物質混合物からトリエタノールアミンを分離することによって、トリエタノールアミンを製造するための改善された方法を提供するという課題を基礎とするものであった。TEOAに関連して、殊に貯蔵中の高い純度および色品質、即ち変色の減少および/または色安定性の改善が達成されるはずである。その上、製造方法は、特に簡単で経済的であるはずである。
【0024】
それに応じて、TEOAおよびジエタノールアミン(DEOA)を含有するエタノールアミン混合物を連続的に蒸留により分離し、その際蒸留塔(DEOA塔)中でDEOAは、留去され、TEOAを含有する、生じる塔底部流は、後接続された塔(TEOA塔)に供給され、この後接続された塔内で純粋なTEOAが側面排出流として取り出されることにより、純粋なトリエタノールアミン(TEOA)を製造する方法であって、DEOA塔の塔底部中でのエタノールアミン混合物の滞留時間が20分未満であることによって特徴付けられる、純粋なトリエタノールアミン(TEOA)を製造する前記方法が見い出された。
【0025】
本発明によれば、殊に貯蔵の際にトリエタノールアミンの色品質、即ち変色の減少および/または色安定性の改善は、塔底部中でのジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンを含有するエタノールアミン混合物の滞留時間が前記混合物からのジエタノールアミンの分離中に減少されることによってプラスの影響を及ぼされうることが確認された。
【0026】
本発明は、有利に次のように得られる物質混合物を使用する。最初に、例えば欧州特許出願公開第673920号明細書(BASF AG)の記載によれば、アンモニア水とエチレンオキシドとを液相中で高められた圧力および高められた温度で適当な反応器中で反応させることによって、主成分のモノエタノールアミン(MEOA)、ジエタノールアミン(DEOA)およびトリエタノールアミン(TEOA)を含有するエタノールアミン混合物が製造される。
【0027】
この場合、反応温度は、殊に110〜180℃、有利に120〜150℃であり、圧力は、殊に50〜150バール(5〜15MPa)、有利に75〜120バール(7.5〜12MPa)である。アンモニアとエチレンオキシドとのモル比は、殊に1:1〜100:1、有利に3:1〜50:1、特に有利に4:1〜15:1であり、アンモニアは、特に60〜99.99質量%、有利に70〜95質量%の水溶液として使用される。使用されるエチレンオキシドは、全体量として、それぞれ1〜99質量%、有利に5〜95質量%、例えば10〜70質量%の1回または2〜10回、有利に2〜6回の部分量(それぞれEO全体量に対して)で添加されることができる。
【0028】
1超:1のアンモニア対エチレンオキシドのモル比で作業する場合には、得られた生成物混合物から引続き自体公知の方法で過剰のアンモニアは、水の一部分と一緒に高められた圧力(即ち、1バール超(絶対))で留去され、その後に残りの水は、特に常圧またはそれ未満で留去される。本質的には、MEOA、DEOAおよびTEOAを含有する、有利に0.3質量%未満、特に有利に0.1質量%未満の含水量を有する粗製生成物が残留する。
【0029】
引続き、モノエタノールアミン(MEOA)をMEOA塔内で1バール未満の絶対圧力で蒸留により分離した後、DEOA、TEOAおよび微少量の副成分、例えば(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−ジ−(2−ヒドロキシエチル)−アミン、(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−(2−ヒドロキシエチル)−アミンおよびN,N’−ジ−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジンからなる粗製生成物が残留する。典型的な粗製混合物は、例えばDEOA50〜80質量%およびTEOA20〜50質量%を含有する。
【0030】
MEOA塔の塔底部中でのエタノールアミン混合物の滞留時間は、有利に35分未満、例えば3〜30分の範囲内、有利に15分未満、例えば2〜10分の範囲内、特に有利に7分未満、例えば1〜5分の範囲内である。この場合、MEDA塔の塔底部中での滞留時間の定義には、DEOA塔の塔底部中での滞留時間の下記した定義と同様のことが言える。MEOA塔は、還流比が殊に0〜0.9、特に0.1〜0.4の範囲内で生じるように調節される。
【0031】
この粗製生成物の組成は、元来使用された、アンモニア対エチレンオキシドのモル比に応じて変動することができる。
【0032】
一般に、主にDEOAおよびTEOAを含有する、得られたエタノールアミン混合物は、直接に分別蒸留に掛けられ、この場合には、順次に純粋なDEOAおよびTEOAが得られる。
【0033】
しかし、他の選択可能な方法が可能であり、この場合主にDEOAおよびTEOAを含有する、有利に0.3質量%未満、殊に0.1質量%未満の含水量および有利に0.1質量%未満、殊に0.01質量%未満のアンモニア含量を有する粗製生成物は、粗製生成物中の窒素に結合した水素1グラム原子当たりエチレンオキシド(EO)0.6〜1.2モル、有利に0.8〜1.1モルと、110〜180℃、有利に120℃〜180℃の温度で液相中で反応される。この反応は、殊に英国特許第1453762号明細書中の記載と同様に行なわれる。好ましくは、反応は、管状反応器中で多工程で行なわれ、この場合には、例えば第1の反応工程で特に125〜165℃の温度で使用されたエチレンオキシド50〜80質量%が反応され、第2の反応工程で特に150〜180℃の温度で使用されたエチレンオキシドの残りの量が反応され、第3の反応工程中で反応は、120〜150℃の温度で完全に実施される。
【0034】
本発明による方法で使用される、DEOAおよびTEOAを含有する、有利に主にDEOAおよびTEOAを含有するエタノールアミン混合物は、特に有利に次のようにDEOAおよびTEOAの含量を有する:
DEOA:50〜80質量%、殊に60〜75質量%、
TEOA:20〜50質量%、殊に25〜40質量%。
【0035】
DEOAおよびTEOAを含有するエタノールアミン混合物は、本発明により連続的に蒸留により分離される。このためには、通常の蒸留装置が適している。このような装置は、当業者には公知である。
【0036】
主要量のDEOAを混合物から分離するために、DEOA塔が使用される。DEOA残分を含有する生じる混合物からTEOAを分離するために、後接続されたTEOA塔が使用される。好ましくは、トレイの形で実施される、少なくとも1つの横方向の区間または長手方向の区間、分離壁、規則充填体または不規則な充填体を有する蒸留塔は、例えばWO 2005/035481A2(BASF AG社)の記載と同様に使用されてよい。
【0037】
最初にジエタノールアミンがトリエタノールアミンと分離される、いわゆるDEOA塔は、有利に170℃〜200℃の範囲内の塔底部中での温度で運転される。この場合、選択された絶対圧は、有利に10ミリバール〜20ミリバールの範囲内の値で変動する。蒸留塔に対する圧力の記載は、本明細書中で常に、塔頂部での絶対圧に関連する。
【0038】
前記塔は、還流比が殊に0〜0.6、特に0.25〜0.4の範囲内で生じるように調節される。
【0039】
"還流比"の定義:塔内に返送されかつ留出物として取り出される、蒸留塔の塔頂部での凝縮物の質量比。
【0040】
DEOAおよびTEOAを含有するエタノールアミン混合物は、特に側面で、特に中央の塔領域内での側面でDEOA塔内に供給される。
【0041】
本発明によれば、MEOA塔の塔底部中でのエタノールアミン混合物の滞留時間は、20分未満、例えば1〜18分の範囲内、有利に15分未満、例えば2〜13分の範囲内、特に有利に12分未満、例えば3〜11分の範囲内である。
【0042】
DEOA塔の塔底部中での滞留時間は、塔底循環路内での塔底部、管路およびポンプの実際の液体容量と蒸発器/熱交換器中での滞留量とが加算され、この塔底循環路から取り出される容積流によって除される場合に計算される時間を意味するものと理解される。これに関連して、図1は、さらに説明するために使用される。
【0043】
ジエタノールアミンは、DEOA塔から特に側面排出流として単離され、および有利に99.3質量%の純度を有する。
【0044】
後接続されたTEOA塔に案内されているDEOA塔の塔底部は、特にDEOAを15〜33質量%の範囲内で、TEOAを65〜83質量%の範囲内で、および他の副成分を0.1〜2質量%の範囲内で含有する。
【0045】
トリエタノールアミンが単離されるTEOA塔は、有利に170℃〜200℃の範囲内の塔底部中での温度で運転される。この場合、選択された絶対圧は、有利に1ミリバール〜10ミリバールの値で変動する。前記塔は、還流比が殊に0〜0.6、特に0.1〜0.4の範囲内で生じるように調節される。DEOAおよびTEOAを含有する分離すべきエタノールアミン混合物は、特に側面で、特に中央の塔領域内での側面でTEOA塔内に供給される。
【0046】
低沸点留分を含有する、ジエタノールアミン(60〜100質量%、特に70〜95質量%)とトリエタノールアミン(0〜40質量%、特に5〜30質量%)との混合物は、塔頂部で分離され、場合によってはDEOA塔内に返送される。
【0047】
高沸点留分は、トリエタノールアミン(50〜100質量%、特に80〜98質量%、TEOA)と副成分とからなり、塔頂部から取り出され、および排出される。
【0048】
99.3質量%以上、特に99.4質量%以上のトリエタノールアミン含量を有する残留する中程度の沸点留分は、有利にTEOA塔の中央部で側面排出流として単離される。
【0049】
エタノール物質混合物の温度感受性のために、TEOA塔が、僅かな壁温度ならびに小さな液体容量を有する蒸発器と共に運転されることは、好ましい。総じて、落下型薄膜蒸発器を使用することは、特に好ましいことが証明された。この場合、塔底部および蒸発器底部は、TEOA塔の塔底部での高沸点留分の滞留時間が10〜180分間、有利に30〜150分間の範囲内であるように構成されている。この滞留時間の場合に、中程度の沸点留分の分離の最適化および望ましくない副生成物の形成の回避が達成される。この場合、TEOA塔の塔底部中での滞留時間の定義には、DEOA塔の塔底部中での滞留時間の下記した定義と同様のことが言える。
【0050】
1つの好ましい実施態様において、TEOA塔内で側面取出し口で得られるTEOAは、後精製および/または色品質の改善のために、殊にWO 2005/035481A2(BASF AG社)の記載と同様に、さらに後接続された塔内で蒸留され、そこで塔頂部を介して分離される。後接続された塔の塔底部中で生じる高沸点物は、有利にTEOA塔の中央領域内に返送される。後接続された塔内での還流比は、有利に0.2〜0.7の範囲内にある。特に、TEOA塔および後接続された塔は、同じかまたはほぼ同じ温度プロフィールで運転される。
【0051】
更に、好ましい実施態様において、TEOA塔は、殊にWO 2005/035481A2(BASF AG社)の記載と同様に、分離壁塔である。分離壁塔は、原理的に2つの熱的に結合された蒸留塔を装置的に簡易化することにある。この分離塔は、一般に垂直方向に配置された、供給位置の上方および下方に延在する分離壁を含み、この分離壁は、塔を供給部分と取出し部分とに分割する。分離壁塔は、不規則な充填体堆積物または規則充填体を含む充填塔として、または棚段塔として構成されていてよい。物質混合物は、分離壁の中央領域内で塔内に導入される。第1の蒸留工程は、塔の供給部分で実施され、塔頂部での低沸点留分および塔底部での高沸点留分の取出し後に残留する中程度の沸点留分は、塔の取出し部分で蒸留され、この場合純粋なトリエタノールアミン(TEOA)は、側面取出し口を介して分離壁の中央領域内(導入位置に対して)で取り出され、第2の蒸留工程で生じる高沸点物は、同様に塔底部で排出される。
【0052】
他の実施態様において、複数のDEOA塔およびTEOA塔(それぞれ、例えば2または3個)を運転することができ、および任意に接続することができる。DEOA塔からの排出は、直接にTEOA塔内に直接に接続することができるか、または最初に中間貯蔵されてもよい。
【0053】
本発明による方法は、TEOAを特に99.3質量%以上、さらに特に99.4質量%以上、殊に99.5質量%以上ないし99.8質量%の純度で提供する。
【0054】
本発明により得られたTEOAのAPHA色価は、特に100以下、さらに特に90以下であり、および殊に30〜80の範囲内にある。
【0055】
殊に、欧州特許出願公開第4015号明細書および欧州特許出願公開第1132371号明細書の記載と同様に、亜燐酸または次亜燐酸、またはこれらの酸の誘導体(例えば、塩、例えばナトリウム塩)の作用量が、エタノールアミン合成前または合成中にエチレンオキシドおよびアンモニアからおよび/または得られたエタノールアミン混合物の蒸留による分離の経過中に添加される場合には、特に良好な色品質において、特に20以下のAPHA色価および高い色安定性を有するTEOAが得られる。特に、この添加は、TEOA純粋蒸留の前方で初めてTEOA塔内で行なわれる。添加剤がエチレンオキシドとアンモニアとの反応後にこの反応により得られたエタノールアミンの蒸留において添加される場合には、添加された量は、有利に当該塔への供給においてエタノールアミンの総和(MEOA、DEOA、TEOA)に対して0.005〜2質量%の範囲内である。
【0056】
このように本発明により得られたTEOAのAPHA色価は、特に20以下、さらに特に15以下であり、および殊に1〜10の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】全容積(塔底液面(1)を考慮に入れての塔底部+管路(2)+ポンプ(3)+塔底循環路内の熱交換器(4))/塔底排出流(5)により定義される塔内での滞留時間を説明するための略図。
【実施例】
【0058】
APHA色価は、DIN−ISO 6271に従って測定される。
【0059】
実施例1a
主成分のモノエタノールアミン(MEOA)、ジエタノールアミン(DEOA)およびトリエタノールアミン(TEOA)を含有するエタノールアミン混合物を、アンモニア水とエチレンオキシドとの反応によって液相中で高められた圧力および高められた温度で適当な反応器中で製造した。得られたエタノールアミン混合物を、NH3、水およびMEOAの分離後にDEOA塔内に導入し、DEOAを単離した。DEOA塔への供給流は、MEOA1.6質量%、DEOA70.2質量%およびTEOA28.2質量%を含有していた。DEOA塔を14ミリバールの絶対圧力および135℃の塔頂温度および189℃の塔底温度で運転し、この場合還流比は、0.33であった。
【0060】
DEOA塔の塔底部中での混合物の滞留時間を18分に調節した。
【0061】
塔頂生成物として、99.5質量%の純度を有するDEOAを得た。
【0062】
その後に、塔頂生成物(DEOA23質量%、TEOA76質量%、副成分1質量%)をTEOA塔内に導入し、このTEOA塔を1.3ミリバールの絶対圧力および71℃の塔頂温度および185℃の塔底温度で運転した。還流比は、0.22であった。
【0063】
TEOA塔の供給流に亜燐酸(塔の供給流に対して0.12質量%)を混入した。TEOA塔の塔頂生成物をDEOA塔内に返送した。側面排出流をさらに後接続された塔内に導入した。後接続された塔の頭頂部で99.52質量%の純度および20のAPHA色価を有するTEOAを単離した。
【0064】
実施例1b
上記の記載と同様の条件下ではあるが、しかし、7分間のDEOA塔の塔底部中での混合物の減少された滞留時間で、99.62質量%の純度および6のAPHA色価を有するTEOAを得た。
【0065】
滞留時間をそれぞれ上記の記載と同様に算出した。本実施例は、DEOA塔内での塔底混合物の滞留時間の減少、ひいては種々のエタノールアミンの分離中のTEOAの熱負荷量の減少によって、トリエタノールアミンの色品質、殊に色価に対してプラスの影響が達成されることを示す。DEOA塔の塔底部中での滞留時間が殊に20分未満、特に有利に12分未満に減少される場合には、明らかに僅かに着色されたトリエタノールアミンが得られる。
【0066】
実施例2
以下の実施例は、塔底部中での高められた滞留時間によって起こるような、DEOA塔の塔底部からのエタノールアミン混合物の長い熱負荷が価値のある生成物の損失および色価の明らかな上昇をまねくことを説明するものである。それによって、後続する塔内でのTEOAの精製は、明らかに困難になる。
【0067】
DEOA塔の塔底生成物を分析した:DEOA17.0質量%、TEOA81.4質量%、副成分1.6質量%、色価(APHA)17.この混合物を窒素の下で190℃で1時間加熱した。副成分の割合は、4.0質量%に上昇し、色価(APHA)は、120に増大した。
【0068】
実施例3
WO 2005/035481Aに記載の側面取出し口を備えた塔を有するTEOA塔に、下記にリストアップした、DEOAとTEOAと副成分とからなる混合物(供給流1および2)を供給した。この供給流は、DEOA蒸留の塔底生成物であり、この塔底生成物は、異なる滞留時間でDEOA塔の塔底部中で得られた。滞留時間をそれぞれ上記の記載と同様に算出した。
【0069】
供給流1:約180℃で塔の塔底部中での滞留時間30分超および70分未満でDEOA蒸留により得られた、DEOA24質量%、TEOA72質量%、副成分4質量%。
【0070】
供給流2:塔底温度175〜180℃で塔の塔底部中での滞留時間5〜10分でDEOA蒸留により得られた、DEOA17質量%、TEOA79質量%、副成分4質量%。
【0071】
TEOA塔を、塔頂圧力4ミリバール(絶対圧)、塔底温度195℃、塔頂温度160℃および0.1の塔の頭頂部での還流比(この場合だけ還流比は、次のように定義される:返送量(リットル)/全体の塔頂排出量(リットル))で亜燐酸0.05質量%(塔への供給流に対して)の供給下に運転した。TEOAを後接続された塔(側面取出し口を備えた塔)の塔頂部中で単離した。
【0072】
供給量1で、98.7質量%の純度および17の色価(APHA)を有するTEOAを得た。
【0073】
供給量2で、99.4質量%の純度および3の色価(APHA)を有するTEOAを得た。
【0074】
本実施例は、DEOA塔の塔底部中での長い滞留時間が次のTEOA蒸留に不利な影響を及ぼし、よりいっそう僅かな純度およびよりいっそう劣悪な色価を有するTEOA品質をまねくことを示す。
【符号の説明】
【0075】
1 塔底液面、 2 管路、 3 ポンプ、 4 塔底循環路内の熱交換器、 5 塔底排出流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリエタノールアミン(TEOA)およびジエタノールアミン(DEOA)を含有するエタノールアミン混合物を連続的に蒸留により分離し、この場合蒸留塔(DEOA塔)中でDEOAは、留去され、TEOAを含有する、生じる塔底部流は、後接続された塔(TEOA塔)に供給され、この後接続された塔(TEOA塔)中で純粋なTEOAは、側面排出流として取り出されることによって、純粋なTEOAを製造する方法において、DEOA塔の塔底部中でのエタノールアミン混合物の滞留時間は、20分未満であることを特徴とする、純粋なTEOAを製造する上記方法。
【請求項2】
DEOA塔の塔底部中でのエタノールアミン混合物の滞留時間は、15分未満である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
DEOA塔の塔底部中でのエタノールアミン混合物の滞留時間は、3分ないし12分未満の範囲内である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
DEOA塔内のDEOAを側面排出流として取り出す、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
DEOAを99.3質量%以上の純度で取り出す、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
TEOA塔のTEOAを99.3質量%以上の純度で取り出す、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
TEOA塔の頭頂部からDEOA60質量%以上およびTEOA40質量%以下を含有する生成物流を取り出す、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
TEOA塔の頭頂部から取り出された生成物流をDEOA塔内に返送する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
TEOA塔内で側面排出流中に得られたTEOAをさらに後接続された塔内で蒸留し、この後接続された塔で塔頂部を介して分離する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
TEOA塔は、分離壁塔である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
TEOAおよびDEOAを含有する、分離すべきエタノールアミン混合物を、液相中でのアンモニアとエチレンオキシドとの先の反応およびNH3、水およびモノエタノールアミン(MEOA)の引続く分離によって得た、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
分離すべきエタノールアミン混合物に亜燐酸または次亜燐酸、またはこれらの酸の誘導体の作用量を添加する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
20以下のAPHA色価を有するTEOAを製造するための請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−512826(P2012−512826A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541348(P2011−541348)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066839
【国際公開番号】WO2010/069856
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】