説明

紙ごみ処理方法

【課題】被処理物を紙ごみのみとして、効率よく生物化学的処理を行うことができる紙ごみの処理方法を提供する。
【解決手段】メタン発酵液4の入った密閉構造の処理槽7に、作用電極9、対電極10及び参照電極11を備えた定電位設定装置12を設け、メタン発酵液に紙ごみを添加し、参照電極を用いて、作用電極の電位を水の電気分解が生じることなく還元反応が生じ得る電位に制御することにより、微生物の増殖を促進し、紙ごみのみで効率的に分解処理するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙ごみ処理方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、紙ごみを生物学的に分解するのに好適な紙ごみ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙ごみは、分別・破砕等の物理的手段と脱インク処理等を含む化学的手段とにより再生処理される一方で、廃棄されて焼却処理されているものも大量に存在している。また、最近では、紙ごみを生物学的に分解(消化)処理する手法も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、紙ごみを生ごみとともに被処理物として嫌気性消化処理する方法が提案されている。具体的には、可溶性水素発酵処理とメタン発酵処理の組み合わせで嫌気性消化処理を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−255537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、紙ごみを処理しているとは言え、生ごみ100質量部(含水率約80%)に対して、紙ごみを30質量部以下、好ましくは20質量部以下とする必要があり、紙ごみが多すぎると発酵原料が固形状となって消化処理があまり進まないことが記載されている(特許文献1の段落[0013]参照)。したがって、特許文献1に記載の方法では、十分な量の紙ごみを処理できるとは言えず、紙ごみの生物学的な分解処理方法としては現実的なものとは言えなかった。
【0006】
また、特許文献1に記載された方法では、紙ごみを処理するために生ごみが必要となることから、紙ごみの処理を行う現場に生ごみを運搬したり保管したりするためのコスト等が発生し、紙ごみ処理の総コストを増大させてしまうことが懸念されていた。また、現場に生ごみがあると、その悪臭が漂うことから、その対策を講じる必要もあった。
【0007】
さらに、特許文献1に記載された方法では、二つの異なる生物処理槽が必要となることから、装置構成が複雑化すると共に、それぞれの槽を好適な条件に管理するためのコストや手間がかかるという問題があった。また、二つの異なる生物処理槽を設置するためのコストや設置スペースの確保を必要とすることも問題であった。
【0008】
本発明は、被処理物を紙ごみのみとしても生物学的分解処理を十分に進行させることができる方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、二つの異なる生物処理槽を必要とすることなく、一つの生物処理槽のみで紙ごみを分解処理することのできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため、本願発明者等が鋭意研究を行った結果、電極を接触させたメタン発酵液に紙ごみを添加し、この電極の電位をある一定の範囲に制御することによって、紙ごみを極めて効率よく分解できることを知見し、本願発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、請求項1に記載の紙ごみ処理方法は、電極を接触させたメタン発酵液に紙ごみを添加し、電極の電位を水の電気分解が生じることなく前記電極にて還元反応が生じ得る電位に制御し、紙ごみを分解処理するようにしている。
【0012】
ここで、請求項2に記載したように、請求項1に記載の紙ごみ処理方法において、メタン発酵液に接触させた電極を作用電極とし、作用電極と対電極と参照電極とを定電位設定装置に結線し、メタン発酵液と電解液をイオン交換膜を介して接触させ、メタン発酵液に作用電極と共に参照電極を接触させ、電解液に対電極を接触させ、作用電極の電位を3電極方式で制御することが好ましい。
【0013】
また、請求項3に記載したように、請求項1に記載の紙ごみ処理方法において、メタン発酵液に接触させた電極を作用電極とし、作用電極と対電極と参照電極とを定電位設定装置に結線し、メタン発酵液と対電極をイオン交換膜を介して接触させ、メタン発酵液に作用電極と共に参照電極を接触させ、作用電極の電位を3電極方式で制御することが好ましい。
【0014】
ここで、請求項2または3に記載の紙ごみ処理方法においては、請求項4に記載したように、作用電極の電位は、銀・塩化銀電極電位基準で−0.6V〜−0.9Vに制御することが好ましく、請求項5に記載したように−0.6V〜−0.8Vに制御することがより好ましい。
【0015】
次に、本発明のメタンガス回収方法は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の紙ごみ処理方法の実施に伴って生成されるメタンガスを回収するようにしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の紙ごみ処理方法によれば、被処理物を紙ごみのみとしても生物学的分解処理を十分に進行させることができる。したがって、従来のように紙ごみを生ごみと共に処理せずとも紙ごみのみで効率よく生物学的分解処理を行うことができるので、生ごみの運搬や保管に関する手間やコストの問題、悪臭対策に関する問題を解消することができる。
【0017】
また、本発明の紙ごみ処理方法によれば、メタン発酵液に電極を接触させ、電極の電位を一定範囲に制御すれば、被処理物を紙ごみのみとしても生物学的分解処理を十分に進行させることができる。したがって、従来のように二つの異なる生物処理槽を必要とすることなく、一つの生物処理槽のみで紙ごみを分解処理することができ、紙ごみを分解処理するための装置構成を複雑化することがない。また、二つの異なる生物処理槽を好適な条件に管理するためのコストや手間を省くことができる。さらには、二つの異なる生物処理槽を設置するためのコストや設置スペースも必要としないという利点もある。
【0018】
本発明のメタンガス回収方法によれば、本発明の紙ごみ処理方法により紙ごみが有機性基質として利用された結果として生じるメタンガスを回収することができる。したがって、紙ごみの分解処理を行いながらも、それにより生じるメタンガスの有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】各種設定電位におけるSS除去効率を示す図である。
【図2】各種設定電位におけるメタンガス生成量(累積)の経時変化を示す図である。
【図3】各種設定電位における発酵液の揮発性脂肪酸濃度の経時変化を示す図である。
【図4】各種設定電位における発酵液中の菌数の経時変化を示す図である。
【図5】T−RFLP法により各種設定電位における発酵液中の細菌叢を解析した結果を示す図である。
【図6】T−RFLP法により各種設定電位における発酵液中の古細菌叢を解析した結果を示す図である。
【図7】第一の実施形態Aにかかる処理装置の一例を示す断面図である。
【図8】第一の実施形態Bにかかる処理装置の一例を示す断面図である。
【図9】第一の実施形態Cにかかる処理装置の一例を示す断面図である。
【図10】第一の実施形態Dにかかる処理装置の一例を示す断面図である。
【図11】第二の実施形態にかかる処理装置の一例を示す断面図である。
【図12】実施例において使用した処理装置を示す図である。
【図13】本発明の処理方法を実施するための処理装置の他の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本発明の紙ごみ処理方法は、電極を接触させたメタン発酵液に紙ごみを添加し、電極の電位を水の電気分解が生じることなく電極にて還元反応が生じ得る電位に制御し、紙ごみを分解処理するようにしている。
【0022】
本発明の紙ごみ処理方法は、例えば図7〜図11に示す処理装置により実施される。以下、本発明の第一の実施形態を図7〜図10に基づいて説明し、本発明の第二の実施形態を図11に基づいて説明する。
【0023】
<第一の実施形態>
第一の実施形態にかかる紙ごみ処理方法は、作用電極を接触させたメタン発酵液に紙ごみを添加し、作用電極と対電極と参照電極とを定電位設定装置に結線し、メタン発酵液と電解液をイオン交換膜を介して接触させ、メタン発酵液に作用電極と共に参照電極を接触させ、電解液に対電極を接触させ、作用電極の電位を3電極方式で制御するようにしている。
【0024】
第一の実施形態にかかる紙ごみ処理方法は、例えば図7〜図10に示す処理装置1により実施される。即ち、図7〜図10に示す処理装置1は、イオン交換膜6によって仕切られた二つの槽のうちの一方の槽を処理槽7とし、他方の槽を対電極槽8とし、処理槽7にはメタン発酵液4が収容されると共に作用電極9と参照電極11が浸され、対電極槽8には電解液4aが収容されると共に対電極10が浸され、作用電極9と対電極10は定電位設定装置12に結線され、作用電極9の電位を3電極方式で制御するようにしている。
【0025】
このように、3電極方式で作用電極9の電位を制御することで、作用電極9の電位を厳密に設定電位に制御することができる。詳細には、定電位設定装置(ポテンシオスタット)12により、作用電極9と参照電極11との間の電位差を測定し、この電位差が設定電位に達するように作用電極9と対電極10との間に電流を流し、基準となる参照電極11には一切電流が流れないようにしている。尚、3電極方式による電位制御については、例えば、電気化学測定法(上)、技報動出版株式会社、第1版15刷、2004年6月発行の6〜9ページにその詳細が記載されている。
【0026】
また、図7〜図10に示す処理装置1では、処理槽7内のメタン発酵液4の液面よりも上部の空間(ヘッドスペース)に滞留するメタンガスを含むバイオガスを処理槽7の外(処理装置1の外)へ導くガス排出管15aを備え、このガス排出管15aをバルブ15bにより開閉可能としたガス回収手段15により、処理槽7内のバイオガスを回収するようにしている。但し、バイオガスの回収方法は、この方法に限定されない。例えば、ガス回収手段15を備えることなく、処理槽7の上部に開口部を設けて合成ゴム等(例えばシリコーンゴム)の弾性材料でこの開口部を塞ぎ、開口部を塞ぐ弾性材料に注射器の注射針を刺してヘッドスペースからバイオガスを回収するようにしてもよい。合成ゴム等の弾性材料は、注射針を引き抜くと孔が塞がる。したがって、バイオガスの回収を行わないときには、注射針を引き抜いておいても、処理槽7からバイオガスが漏れ出すことがない。
【0027】
さらに、図7〜図10に示す処理装置1では、処理槽7内のメタン発酵液4の液面よりも下部に、処理槽7内のメタン発酵液4を処理槽7の外に導くメタン発酵液排出管16aを備え、このメタン発酵液排出管16aをバルブ16bにより開閉可能としたメタン発酵液採取手段16により、処理槽7内からメタン発酵液4を採取するようにしている。但し、メタン発酵液4の採取方法は、この方法に限定されるものではない。例えば、メタン発酵液採取手段16を備えることなく、処理槽7に開口部を設けて合成ゴム等の弾性材料で塞ぎ、注射器の注射針を刺してメタン発酵液4を採取するようにしてもよい。または両端が開口された管の一端の注射器に接続し、他端をメタン発酵液4に浸けて、管を介してメタン発酵液4を採取するようにしてもよい。これらの場合にも、処理槽7からバイオガスが漏れ出すことはない。
【0028】
また、ガス回収手段15やメタン発酵液採取手段16とは別に、メタン発酵液4に物質を添加・供給する手段を設けるようにしてもよい。具体的には、処理槽7の外部からメタン発酵液4に物質を添加・供給することのできる開閉可能な物質導入管を備えるようにしてもよい。この場合には、メタン発酵液に栄養源、中和剤、メタン発酵汚泥等の物質を必要に応じて添加することができる。勿論、紙ごみをこの導入管から供給することもできる。また、環境を嫌気性に維持するためにガスを供給することもできる。但し、メタン発酵液4に物質を添加・供給する手段は必ずしも備える必要はなく、ガス回収手段15やメタン発酵液採取手段16をメタン発酵液4に物質を添加・供給する手段として併用するようにしてもよい。また、上記のように注射器の注射針を弾性材料に差し込んでメタン発酵液4に物質を添加・供給するようにしてもよい。
【0029】
以下、図7に示す処理装置を用いた場合を第一の実施形態Aとして説明し、図8に示す処理装置を用いた場合を第一の実施形態Bとして説明し、図9に示す処理装置を用いた場合を第一の実施形態Cとして説明し、図10に示す処理装置を用いた場合を第一の実施形態Dとして説明する。
【0030】
(第一の実施形態A)
図7に示す処理装置1は、密閉構造の容器20を処理槽7とし、容器20に収容可能な密閉構造の小容器21を対電極槽8とし、小容器21は少なくとも一部にイオン交換膜6を備えると共にガス(対電極10から発生するガス)を容器20の外に排出するガス排出管22を備えるものとしている。尚、図7に示す処理装置1では、対電極10と定電位設定装置12を結線する配線は、ガス排出管22の中を通過させているが、必ずしもこの構成には限定されず、配線をガス排出管22を通さずに定電位設定装置12と結線するようにしてもよい。
【0031】
したがって、図7に示す処理装置1によれば、処理槽7からバイオガスが漏洩することがない。また、対電極槽8から発生するガスが処理槽7に漏れ出すことがないので、バイオガスに対電極槽8から発生したガスが混入してバイオガスのメタン濃度を低下させたり、対電極槽8から発生したガスがメタン発酵液4に溶け込んでメタン発酵に関与する微生物群の生育や機能に悪影響を及ぼすこともない。さらに、処理槽7を密閉構造としているので、処理槽7を嫌気環境に制御し易い利点もある。
【0032】
また、容器20に小容器21を収容することで、容器20に収容されているメタン発酵液4に小容器21が浸され、小容器21の少なくとも一部に備えられているイオン交換膜6はメタン発酵液4と接触する。換言すれば、メタン発酵液4はイオン交換膜6を介して電解液4aと接触する。
【0033】
処理槽7としての密閉構造の容器20は、対電極槽8としての密閉構造の小容器21を収容可能な大きさの容器であり、形状は特に限定されない。容器の材質としては、例えば、ガラス、プラスチック、絶縁処理を施した金属、コンクリート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、ガス不透過性の膜材をヒートシール等により袋状に形成した容器を処理槽7として用いるようにしてもよい。
【0034】
対電極槽8としての密閉構造の小容器21は、処理槽7としての容器20に収容可能な大きさの容器であり、少なくとも一部にイオン交換膜6を備えるものとしている。ここで、小容器21はその全体をイオン交換膜6で形成した袋状の容器としてもよいが、袋状の容器の片面だけをイオン交換膜6で構成したり、一つの面のさらに一部分をイオン交換膜6のみで構成するようにしてもよい。部分的にイオン交換膜6を用いる場合には、その他の部分は容器20と同様の上記材質で構成してもよいし、イオン交換膜6以外の膜材、例えばガス不透過性の膜材により構成し、小容器21からのガス(対電極槽8から発生するガス)が容器20の内部に漏洩しないようにしてもよい。
【0035】
処理槽7に収容されるメタン発酵液4は、メタン発酵処理が行われている一般的なメタン発酵槽中のメタン発酵液や、メタン発酵槽から採取した汚泥を水で希釈して調製したもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
紙ごみは、処理槽7に添加される。本発明において処理の対象となる紙ごみは、例えば、オフィスや印刷工場、家庭等から排出される廃棄紙がシュレッダーにより裁断された紙ごみ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、紙ごみは、裁断・粉砕してから、例えば1mm〜2mm程度に裁断・粉砕してから添加することが好適である。この場合には、紙ごみとメタン発酵液との接触面積が増加して紙ごみを分解させ易くなる。尚、本発明では、紙ごみがメタン発酵の有機性基質となるので、他の有機性基質をメタン発酵液4に添加せずとも、紙ごみの分解処理が起こる。但し、このことは、紙ごみ以外の他の有機性基質の添加を否定するものではない。つまり、本発明では、紙ごみを主成分とする範囲で紙ごみ以外も被処理物として分解処理を行うようにしても構わない。
【0037】
対電極槽8に収容される電解液4aは、例えば、ナトリウムイオンやカリウムイオン等を含むものとすればよい。尚、通常、メタン発酵液4にもナトリウムイオンやカリウムイオン等が含まれていることから、電解液4aとしてメタン発酵液4を用いることも可能である。
【0038】
作用電極9及び対電極10としては、例えば炭素板等の導電性材料を適宜使用することができる。対電極10では、作用電極9における酸化還元反応に対して電子の授受を補完する反応が進行する。
【0039】
処理槽7の温度(メタン発酵液4の温度)は、4℃〜100℃未満とすればよいが、好適には40℃〜70℃、より好適には50℃〜60℃、さらに好適には55℃である。
【0040】
本実施形態では、作用電極9の電位を水の電気分解が生じることなく作用電極9にて還元反応が生じ得る電位に制御しながら紙ごみ分解処理を行う。具体的には、作用電極9において還元反応を生じさせるために、作用電極9の電位を、作用電極9への電位無印加時のメタン発酵液4の溶液電位(酸化還元電位)よりもマイナス側に大きな電位で且つ水の電気分解が生じる電位よりも絶対値基準で小さい電位に制御する。即ち、電位無印加時の作用電極9と参照電極11の間の電位差が、作用電極9への電位無印加時のメタン発酵液4の溶液電位に相当するので、その値よりもマイナス側に大きな電位を作用電極9に印加することで、作用電極9において還元反応を進行させることができる。そして、この条件を満たす電位で且つ水の電気分解が生じる電位よりも絶対値基準で小さい電位に制御することで、水の電気分解により消費されるプロトンによってpHの変動が生じることなく、本発明の効果が確実に奏される。より具体的には、銀・塩化銀電極電位基準では、作用電極9への電位無印加時は、メタン発酵液4の溶液電位は−0.5V程度であり、水の電気分解は作用電極9の電位が−0.9Vよりもマイナス側に大きくなると生じ易くなるので、−0.5V超(−0.5Vよりもマイナス側に大きな電位)〜−0.9V、好ましくは−0.6V〜−0.9V、より好ましくは−0.6V〜−0.8V、さらに好ましくは−0.8Vである。
【0041】
作用電極9の電位を上記範囲に設定すると、作用電極9から電子が放出されてこの電子がメタン発酵液4中の微生物群に直接的あるいは間接的に供給され、水素資化性メタン菌であるメタノサーモバクター(Methanothermobactor)属の微生物の増殖が促進される。そして、水素資化性メタン菌の増殖が促進されると、紙ごみの分解により生じる最終生成物たる水素の消費が促進されることになり、その結果として紙ごみの分解反応が促進されることとなる。また、水素資化性メタン菌の増殖が促進されれば、当然に水素を原料とするメタン生成反応が促進される。したがって、紙ごみの分解速度さらにはメタンガス生成速度を、電位制御を行うことなく単にメタン発酵液に紙ごみを添加した場合よりも大幅に向上させることができる。
【0042】
また、本願発明者等の実験によれば、作用電極9の電位を上記範囲に設定することで、メタン発酵液中の細菌群集を多様化させながら増殖させることができることが確かめられたことから、このことが紙ごみの分解速度の向上さらにはメタンガス生成速度の向上に何らかの形で寄与していることも考えられる。
【0043】
さらには、作用電極9の電位を上記範囲に設定することで、メタン発酵液4中の微生物コミュニティーの安定化が起こり、このことが紙ごみの分解速度の向上さらにはメタンガス生成速度の向上に何らかの形で寄与していることも考えられる。
【0044】
本発明の効果は、イオン交換膜6を備えることで得られ易くなる。即ち、イオン交換膜6を備えることで、メタン発酵液4に存在する微生物を対電極槽8に移動(拡散)させることなく、処理槽7側に留めることができる。したがって、対電極10の酸化反応に伴う微生物からの電子の引き抜きを防ぎながら、作用電極9から微生物へ電子を供給することができるので、本発明の効果をより得られ易くなる。
【0045】
また、イオン交換膜6を備えることで、作用電極9の電位を制御したときに、メタン発酵液4と電解液4aとの間でのイオン電流の流れが許容されるので、メタン発酵液4の電荷バランスを維持しながら、作用電極9の電位を制御し続けることができる。
【0046】
さらに、酸化還元物質3をメタン発酵液4に添加することで、メタン発酵液4の溶液電位の制御性を高めて、メタン発酵液4の溶液電位を作用電極9の電位に近づけ易くなる。そして、イオン交換膜6を備えることで、メタン発酵液4に含まれている酸化還元物質3の電解液4aへの透過を防ぐことができる。例えば、イオン交換膜6として、一価の陽イオンのみを透過する膜であるナフィオン膜を用いることで、酸化還元物質3が鉄イオンである場合に、二価の鉄イオンや三価の鉄イオンはイオン交換膜6を透過しないことから、酸化還元物質を電解液4aに透過させることなく、メタン発酵液4中に留まらせることができる。したがって、作用電極9の電位を制御すると、それに応じてメタン発酵液4中の酸化還元物質3の酸化体と還元体の濃度比が変化し、作用電極9の電位によるメタン発酵液4の溶液電位の追随性が向上する。
【0047】
酸化還元物質3としては、メタン発酵液4に浸されている作用電極9と可逆的に酸化還元反応を生じ得る物質であり、且つメタン発酵液4に生息している微生物に対して毒性を呈しない物質を用いることができる。例えば、上記のように、土壌成分として一般的な鉄イオンが挙げられる。ここで、鉄イオンをメタン発酵液中で安定に存在させるためには、鉄イオンをキレート剤に配位させてメタン発酵液中に添加することが好ましい。キレート剤としては、鉄イオンを配位しうるものであれば任意のキレート剤を用いることができるが、例えばジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、テトラエチレントリアミン(TET)、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、クエン酸、シュウ酸、クラウンエーテル、ニトリロテトラ酢酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、ペニシラミン、ペンテテートカルシウム三ナトリウム、ペンテト酸、スクシメルおよびエデト酸トリエンチンを挙げることができる。また、鉄イオン以外にも、フェロシアン化カリウム、アントラキノンジスルホン酸ナトリウムなどのキノン化合物、メチルビオロゲンを用いることができる。これらの物質も酸化還元反応により、酸化体と還元体に可逆的に変化する。特に、キノン化合物は土壌成分の一つとして知られている物質であり、好ましい。つまり、土壌そのものをメタン発酵液に添加することで、土壌に含まれている酸化還元物質3によりメタン発酵液の酸化還元電位が制御できる場合がある。但し、酸化還元物質3は上記した物質に限定されるものではない。
【0048】
尚、メタン発酵液4には、通常、酸化還元物質が含まれていることから、上記の酸化還元物質を随意に添加せずともよい。特に、本発明では、少なくとも作用電極9の近傍のメタン発酵液4の溶液電位を制御できれば、作用電極9から微生物への電子の供給が生じて本発明の効果が得られるので、酸化還元物質3の添加は必須ではない。
【0049】
(第一の実施形態B)
【0050】
図8に示す処理装置1は、上方が開放されている容器23をイオン交換膜6で仕切ることにより開放された二つの槽が形成され、処理槽7としての一方の槽の上方開放部がガス不透過膜またはガス不透過部材24により塞がれているものとしている。つまり、図8に示す処理装置1は、対電極槽8から発生するガスを処理槽7に漏れ出さないようにする構成以外は、図7と同一の構成としている。したがって、図7に示す処理装置を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0051】
ガス不透過膜またはガス不透過部材24としては、各種分野で一般に用いられているものを適宜用いることができる。例えば、ガス不透過部材としては、ガラス、プラスチック、絶縁処理を施した金属、コンクリート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、ガス不透過膜としては、例えばイオン交換膜6を用いることができるがこれに限定されるものではない。
【0052】
尚、対電極槽8については、開放したままでもよいが、処理槽7と同様に密閉構造とし、対電極槽8において発生するガスを対電極槽8の外に排出するガス排出管を備えるようにしてもよい。この場合には、対電極槽8から発生するガスを所望の位置から排出させることができるので、これを回収し、場合によっては再利用することが可能となる。
【0053】
(第一の実施形態C)
図9に示す処理装置1は、収容される液体の液面よりも下部に開口部を備える二つの容器25aと25bがイオン交換膜6を介して開口部で連結されてU字型の容器25が形成され、一方の容器25aを密閉構造として処理槽7とし、他方の容器25bを開放して対電極槽8としている。この場合、メタン発酵液4と電解液4aがイオン交換膜6を介して接触すると共に、処理槽7のメタン発酵液4の液面よりも上部の空間と対電極槽8の電解液4aの液面よりも上部の空間とが容器25自体のU字型構造によって隔てて配置される。そして、一方の容器25aが密閉構造とされていることから、対電極槽8から発生するガスが処理槽7に侵入するのを防ぎながら、処理槽7から発生するバイオガスが処理槽7から漏洩するのを防ぐことができる。したがって、図7に示す処理装置を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0054】
尚、図9に示す処理装置1における他方の容器25bの開放とは、例えば他方の容器25bの端部を完全に開放した場合は勿論のこと、一方の容器25aと同様に密閉構造としつつ、対電極槽8において発生するガスを対電極槽8の外に排出するガス排出管を備える場合も含むことを意味している。ガス排出管を備える場合には、対電極槽8から発生するガスを所望の位置から排出させることができるので、これを回収して再利用し易くなる。
【0055】
(第一の実施形態D)
図10に示す処理装置1は、収容される液体の液面よりも下部に開口部を備える二つの容器26aと26bがイオン交換膜6を介して開口部で連結されてH字型の容器26が形成され、一方の容器26aを密閉構造として処理槽7とし、他方の容器26bを開放して対電極槽8としている。この場合にも、メタン発酵液4と電解液4aがイオン交換膜6を介して接触すると共に、処理槽7のメタン発酵液4の液面よりも上部の空間と対電極槽8の電解液4aの液面よりも上部の空間とが容器26自体のH字型構造によって隔てて配置される。そして、H字型容器26の一方の容器26aが密閉構造とされていることから、処理槽7は密閉構造となる。したがって、対電極槽8から発生するガスが処理槽7に侵入するのを防ぎながら、処理槽7から発生するバイオガスが処理槽7から漏洩するのを防ぐことができる。したがって、図7に示す処理装置を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0056】
尚、本実施形態における他方の容器26bの開放とは、容器26を完全に開放した場合は勿論のこと、一方の容器26aと同様に密閉構造としつつ、対電極槽8において発生するガスを対電極槽8の外に排出するガス排出管を備える場合も含むことを意味している。ガス排出管を備える場合には、対電極槽8から発生するガスを所望の位置から排出させることができるので、これを回収して再利用し易くなる。
【0057】
<第二の実施形態>
第二の実施形態にかかる紙ごみ処理方法は、作用電極を接触させたメタン発酵液に紙ごみを添加し、作用電極と対電極と参照電極とを定電位設定装置に結線し、メタン発酵液と対電極をイオン交換膜を介して接触させ、メタン発酵液に作用電極と共に参照電極を接触させ、作用電極の電位を3電極方式で制御するようにしている。つまり、第一の実施形態における紙ごみ処理方法とは、電解液を用いることなく対電極を直接イオン交換膜に接触させている点のみが異なっている。
【0058】
しかしながら、第一の実施形態のように電解液4aを用いずとも、作用電極9と対電極10との間でイオン交換膜6を介してイオン電流は流れる。また、メタン発酵液4中の微生物を対電極10側に移動(拡散)させることなく、処理槽7に留める効果も得られる。さらには、メタン発酵液4中の酸化還元物質3を対電極10側に透過させない効果も得られる。したがって、第二の実施形態にかかる紙ごみ処理方法によれば、第一の実施形態と同様の電位制御条件で、同様の効果を得ることが可能である。
【0059】
第二の実施形態にかかる紙ごみ処理方法は、例えば図11に示す処理装置により実施される。図11に示す処理装置1は、イオン交換膜6を少なくとも一部に備える密閉構造の容器5内に作用電極9と参照電極11が配置され、容器5の外側に対電極10が配置され、容器5にメタン発酵液4が収容されると共に作用電極9と参照電極11がメタン発酵液4に浸され、容器4のイオン交換膜6は容器5にメタン発酵液4が収容されたときに少なくともその一部がイオン交換膜6と接触しうる位置に備えられ、イオン交換膜6のメタン発酵液4の接触面とは反対側の面の少なくとも一部に対電極10が接触して配置されているものとしている。図11に示す処理装置1では、容器5のメタン発酵液4の液面よりも下部に開口部5aが設けられ、開口部5aがイオン交換膜6で塞がれ、容器5の外側のイオン交換膜6の表面の少なくとも一部に対電極10が接触して配置されているものとしている。つまり、図11に示す処理装置1では、容器5全体が処理槽7として機能することとなる。
【0060】
したがって、図11に示す処理装置1によれば、容器5からバイオガスが漏洩することがない。また、対電極10から発生するガスが容器5内に漏れ出すことがないので、バイオガスに対電極10から発生したガスが混入してバイオガスのメタン濃度を低下させたり、対電極10から発生したガスがメタン発酵液4に溶け込んでメタン発酵に関与する微生物群の生育や機能に悪影響を及ぼすこともない。さらに、容器5を密閉構造としているので、容器5内を嫌気環境に制御し易い利点もある。
【0061】
尚、図11に示す処理装置1では、第一の実施形態と同様に、ガス回収手段15、メタン発酵液採取手段16を備えるようにしているが、上記の通り、ガス回収方法、メタン発酵液採取方法は、これらの手段を利用したものには限定されない。また、第一の実施形態と同様、メタン発酵液4に物質を添加・供給する手段を設けるようにしてもよい。
【0062】
以下、図11に示す処理装置1の詳細について説明する。但し、以下に説明する以外の構成については、第一の実施形態と実質的に同一であり、説明は省略する。
【0063】
容器5は、イオン交換膜6を少なくとも一部に備える密閉構造としている。容器5の材質としては、例えば、ガラス、プラスチック、絶縁処理を施した金属、コンクリート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。尚、図11では、密閉構造の容器5のメタン発酵液4の液面よりも下部に設けられた開口部5aをイオン交換膜6により塞ぐようにしているが、容器5の形態や構造は特に限定されない。例えば容器5全体をイオン交換膜6で形成した袋状の容器としてもよいし、袋状の容器の片面だけをイオン交換膜6で構成してもよいし、一つの面のさらに一部分をイオン交換膜6のみで構成するようにしてもよい。部分的にイオン交換膜6を用いる場合には、その他の部分はガラス等の上記材質で構成してもよいし、イオン交換膜6以外の膜材、例えばメタン発酵液4とメタン発酵液4中の成分(微生物を含む)の双方を透過させることがない膜材により構成してもよい。要は、容器5に収容されるメタン発酵液4が容器5の少なくとも一部を構成するイオン交換膜6と接触しうる構造の容器とすればよい。
【0064】
対電極10は、イオン交換膜6のメタン発酵液4との接触面とは反対側の面の少なくとも一部に接触させるようにしている。本実施形態において、対電極10は板状の炭素電極としているが、対電極10の形状と材質はこれに限定されるものではなく、要は、イオン交換膜6との接触が可能な形状であり、且つ作用電極9における酸化還元反応に対して電子の授受を補完する反応を進行させることが可能な材質、つまり、作用電極9において還元反応が生じる際に酸化反応を進行させることが可能な材質の電極とすればよい。また、本実施形態では、対電極10の面積をイオン交換膜6の面積よりも大きなものとしてイオン交換膜6全体を対電極10で完全に覆うようにし、イオン交換膜6と対電極10とを接触させるようにしているが、イオン交換膜6のメタン発酵液4との接触面とは反対側の面の少なくとも一部に対電極10を接触させれば、イオン交換膜6を介してメタン発酵液4から対電極10にイオンが伝達するので、必ずしもイオン交換膜6全体を対電極10で完全に覆うようにしてイオン交換膜6と対電極10とを接触させずともよい。但し、イオン交換膜6全体を対電極10で完全に覆うことで、対電極10をイオン交換膜6の保護材としても機能させることができると共に、メタン発酵液4からのイオンの伝達面が増大する結果として、メタン発酵液4の電位制御性を高めることができる利点があり、好適である。イオン交換膜6全体を対電極10で完全に覆う方法としては、例えば、容器5の開口部5aの周囲に接着剤を塗布して対電極10を接着することにより、開口部5aを塞ぐイオン交換膜6全体と対電極10とを接触させるようにしてもよいし、容器5の開口部5aの周囲に接着剤を塗布して対電極10の表面の少なくとも一部に塗布形成されたイオン交換膜6を接着することにより、開口部5aをイオン交換膜6で塞ぎつつ、開口部5aを塞ぐイオン交換膜6全体と対電極10とを接触させるようにしてもよい。イオン交換膜6を塗布形成するための薬剤としては、例えばナフィオン分散液が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、対電極10の表面にナフィオン分散液を塗布し、ナフィオン分散液が乾燥する前にイオン交換膜6を貼り付けるようにしてもよい。この場合には、イオン交換膜6の対電極10の表面への接着性と接触性とを十分なものとすることができる。
【0065】
ここで、対電極10は多孔質体とすることが好適である。この場合には、イオン交換膜6と対電極10との接触面で発生したガスを接触面とは反対側の面に通過させやすくなる。尚、対電極10を多孔質体とし、ナフィオン分散液を用いてイオン交換膜6を貼り付けることで、ナフィオン分散液の多孔質体の孔への侵入によりイオン交換膜6と対電極10との接触面積を増大させて電気化学反応をより進行させやすくすることができ、好適である。
【0066】
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0067】
例えば、上述の実施形態では、作用電極9を一つしか配置していなかったが、これを複数本配置するようにしてもよい。この場合、作用電極9とメタン発酵液4との接触面積が増加するので、メタン発酵液4中の微生物に電子がより多く供給されやすくなり、紙ごみの分解速度を向上させ、さらにはメタン生成速度を向上させることができる。
【0068】
また、上述の実施形態では、イオン交換膜6を備えた処理装置により本発明の紙ごみ処理方法を実施するようにしていたが、イオン交換膜6を備えていない処理装置により本発明の紙ごみ処理方法を実施できる場合もある。即ち、メタン発酵液4に作用電極9と対電極10の双方を接触させると共に、作用電極9と対電極10との間隔を十分にとることで、対電極10による電子の引き抜きを防ぎながら紙ごみの処理を行うことができる場合もある。
【0069】
また、本発明の紙ごみ処理方法を実施するための処理装置は、例えば図13に示すように、メタン発酵液4と電解質4aをイオン交換膜6ではなく、イオンや微生物を一切透過させることのない不透過部材40で隔て、あるいは処理槽7と対電極槽8を別の容器で形成し、塩橋41(寒天等にKCl等の飽和電解質溶液を入れたもの)を介してメタン発酵液4と電解質4aを接触(液絡)させるようにしてもよい。この場合にも、メタン発酵液4中の微生物の対電極槽8への移動を防ぐことができるので、対電極10からの電子の引き抜きを防ぐことができ、しかも、塩橋によってイオン電流の流れが許容される。また、メタン発酵液4に含まれる酸化還元物質3についても対電極槽8に透過しないので、メタン発酵液4の溶液電位の制御性も確保される。
【実施例】
【0070】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。尚、以降の説明における設定電位は、銀・塩化銀電極電位を基準とする値である。
【0071】
(実施例1)
1.実験装置及び実験方法
本実施例において使用した実験装置の断面図を図12に示す。250mL容の2つのガラスバイアル瓶(Duran製)のうちの一方を処理槽26aとし、他方を対電極槽26bとし、下部開口部において陽イオン交換膜(ナフィオン117、デュポン製)6を介して2つのバイアル瓶を接続し、H字型の容器26とした。また、処理槽26aには排出部16と供給部15を設けた。処理槽26aには蓋をし、蓋の上面にシリコーンゴム栓を設けて、配線や電極を処理槽26aの外から内に貫通させた際の密閉性を確保した。また、蓋の上面のシリコーンゴム栓に管33を通し、処理槽26aの発酵液4の液面の上部の空間(ヘッドスペース)のガスを管33の一端から排出して、管33の他端に接続された袋34にメタンガスを含むバイオガスを回収するようにした。
【0072】
対電極槽26bには、電解液4aを収容すると共に対電極10(2.5cm×7.5cm×0.3cmの板状炭素電極)を収容して電解液4aに浸した。対電極槽26bも蓋をし、蓋の上面にはシリコーンゴム栓を設けて、シリコーンゴム栓にガス排出管22を貫通させた。そして、対電極10と定電位設定装置12を結線するための配線31をガス排出管22に通した。ガス排出管22は両端が開口されており、一端を対電極槽26bの内部に、他端を対電極槽26bの外側に配置するようにして、対電極槽26bで発生するガスが対電極槽26bの外側に排出されるようにした。
【0073】
処理槽26aには、メタン発酵液4を収容すると共に作用電極9(2.5cm×7.5cm×0.3cmの板状炭素電極)を収容してメタン発酵液4に浸した。作用電極9から定電位設定装置12への配線はシリコーンゴム栓を通して処理槽26aの外側に引き出した。参照電極11(銀・塩化銀電極、HS−205C、東亜ディーケーケー社製)は処理槽26aの外側からシリコーンゴム栓に差し込んで、発酵液4と接触させた。作用電極9と対電極10と参照電極11とを3電極式の定電位設定装置(ポテンシオスタット、PS−08P、東方技研製)12に結線して、作用電極9の電位を制御した。
【0074】
メタン発酵液4は、以下の組成の溶液250mLに対し、一般的なメタン発酵槽から採取したメタン発酵汚泥を2mL添加して調製した。但し、メタン発酵汚泥は、実験開始直前に処理槽26aを窒素ガスで満たして嫌気雰囲気としてから添加した。濾紙はアドバンテック製、Type 5Aを使用した。酵母エキスは和光純薬工業株式会社製のものを使用し、DSMZミディアム131微量元素溶液(以下、微量元素溶液と呼ぶ)及びDSMZミディアム141ビタミン溶液(以下、ビタミン溶液と呼ぶ)はDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen)製のものを使用した。
[溶液の組成]
濾紙 :10g/L
KHPO :0.8g/L
HPO :1.6g/L
NHCl :1g/L
NaHCO :2g/L
MgCl・6HO: 0.1g/L
CaCl・2HO: 0.2g/L
NaCl: 0.8g/L
酵母エキス: 1g/L
微量元素溶液: 10mL/L
ビタミン溶液: 10mL/L
【0075】
また、メタン発酵液4には、2,6−アントラキノンジスルホン酸(2,6-anthraquinone disulfonate :AQDS)を0.2mMとなるように添加した。
【0076】
さらに、メタン発酵液4には、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7.2に調整した。
【0077】
電解液4aは、100mMのNaCl水溶液とし、これを対電極槽26bに250mL収容した。
【0078】
処理槽26aの運転方式はバッチ培養式とした。即ち、実験中に有機性基質として新たに濾紙を添加することなく、メタン発酵液4をそのまま1週間培養し続けた。運転温度(メタン発酵液温度)は55℃に維持した。
【0079】
作用電極9の設定電位は、+0.3V、0.0V、−0.3V、−0.6V、−0.8V、Control(電位制御無し)とした。尚、Control(電位制御無し)の場合には、参照電極11と作用電極9の間の電位差は、−0.5V程度であり、電位制御を行っていないときのメタン発酵液4の溶液電位(酸化還元電位)は−0.5V程度であることが確認された。そして、作用電極9の設定電位を、+0.3V、0.0V、−0.3Vとした場合には、作用電極9で酸化反応が生じていることが確認された。これに対し、作用電極9の設定電位を−0.6V、−0.8Vとした場合には、作用電極9で還元反応が生じていることが確認された。
【0080】
2.分析方法
(1)化学成分分析
SS(浮遊固形分量)の分析は、JIS K 0102−14.1(ヤマト製、装置名DN63)により実施した。尚、メタン発酵液4の初期SSは添加した濾紙の量に該当する10g/Lである。
【0081】
S−TOC(可溶性全有機炭素)の分析は、TOCアナライザー(東レ製、TNC−6000)により実施した。
【0082】
VFA(揮発性脂肪酸)の分析は、液体クロマトグラフィー(GLサイエンス製、GL-7400)により実施した。
【0083】
バイオガス生成量を水上置換法により測定し、ガスクロマトグラフィー(GLサイエンス製、GC390B)によりバイオガスの組成分析(メタンガスと二酸化炭素)を行った。
【0084】
濾紙の炭素含有率は、CHNS/Oアナライザー(パーキンエルマー製、2400II)により測定した。
【0085】
(2)生物学的分析
実験開始から72時間、定期的にメタン発酵液4を処理槽26aから抜き取り、発酵液4の細胞数を光学顕微鏡によりカウントした。
【0086】
また、メタン発酵液4に含まれる微生物群の16S rRNA遺伝子のコピー数をリアルタイムPCRを用いて定量分析した。具体的には、メタン発酵液4を遠心分離処理して微生物群を沈降させ、トリス−EDTA緩衝液 (pH8.0、100mM トリスHCl、40mM EDTA)に懸濁した。DNAはドデシル硫酸ナトリウム及びフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール溶液(25:24:1 v/v)の存在下、微生物群から繰り返しビーズを衝突させて抽出し、次いで、抽出DNAをQIAamp DNAミクロキット(キアゲン社製)で精製した。これを、TaqMan リアルタイムPCRに供して微生物群の16S rRNA遺伝子のコピー数を定量分析した。プライマー/プローブセットは以下の通りとした。そして、原核生物に関する定量分析結果にメタン菌に関する定量分析結果を加算して、メタン発酵液4に存在していた微生物群全体の16S rRNA遺伝子のコピー数を求めた。尚、実験に使用したプライマー/プローブセットは、以下の論文に記載されているものである(Takai, K., K. Horikoshi (2000). "Rapid detection and quatification of members of archaeal community by quantitative PCR using fluorogenic probes." Appl. Environ. Microbiol. 66(11): 5066-5072.、Sawayama, S., Tsukahara K, Yagishita T (2006). "Phylogenetic description of immobilized methanogenic community using real-time PCR in a fixed-bed anaerobic digester." Bioresour. Technol. 97(1): 69-76.)。
・原核生物用プライマー/プローブセット:
Uni340F/Uni806R/Uni516F
・メタン菌用プライマー/プローブセットセット:
S-P-MArch-0348-S-a-17/S-D-Arch-0786-A-a-20/S-P-MArch-0515-S-a-25
【0087】
また、末端断片長多型解析(T−RFLP)により、全菌のうち古細菌を除く細菌の群集構造と、全菌のうち細菌を除く古細菌の群集構造とを解析した。具体的には、細菌のフォーワードプライマーとして5’末端で6-FAMでラベルされたBa27fを用い、リバースプライマーとしてBa907を用い、古細菌のフォーワードプライマーとしてAr109fを用い、リバースプライマーとして5’末端で6-FAMでラベルされたAr912rtを用いて、50μLの反応混合物中でPCRを行い、PCR単位複製配列物を得た。PCR単位複製配列物はWizard SV Gel and PCR Clean-Up System (プロメガ社製)で精製した後、細菌の制限酵素としてMspI(New England BioLabs社製)を用い、古細菌の制限酵素としてTaqI(New England BioLabs社製)を用いて消化した。この精製消化物の内部サイズ標準としてDNAサイズ標準GeneScan-500 ROX Size Standard (Applied Biosystems社製)を用いた。3130xl Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)により、末端断片長多型解析を実行した。尚2%未満の成分については、データから取り除いた。
【0088】
さらに、細菌を除く古細菌について、クローン解析を行った。具体的には、T−RFLPと同様の条件でPCRを行い、PCR産物を精製してpGEM−T Easy ベクター(プロメガ社製)にライゲートさせた。プラスミドはEscherichia coli JM109細胞に組み込み、そのクローンをランダムに選択して、BigDye Terminator cycle sequencing chemistryを用いたABI 3130xl sequencer(アプライドバイオシステムズ)によりシーケンシングを行った。
【0089】
3.実験結果
(1)各種設定電位におけるSS除去効率
設定電位を+0.3V、0.0V、−0.3V、−0.6V、−0.8V、Control(電位制御無し)とした場合におけるSS除去効率(実験開始から一週間経過後)を図1に示す。設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、電位制御を行っていないcontrolに比べて、SS除去効率を向上できることが明らかとなった。一方、設定電位を+0.3V及び−0.3Vとした場合には、電位制御を行っていないcontrolと同程度のSS除去効率となり、設定電位を+0.0Vとした場合には、電位制御を行っていないcontrolよりもSS除去効率が低下した。この結果から、設定電位を−0.6及び−0.8Vとすることで、SS除去効率を向上できることが明らかとなった。即ち、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、紙ごみの分解効率を向上できることが明らかとなった。
【0090】
(2)各種設定電位におけるメタンガス生成量の経時変化
設定電位を+0.3V、0.0V、−0.3V、−0.6V、−0.8V、Control(電位制御無し)とした場合におけるメタンガス生成量(累積メタンガス生成量)の経時変化を図2に示す。設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、電位制御を行っていないcontrolに比べて、メタンガス生成量が増加した。これに対し、設定電位を+0.3V、+0.0V及び−0.3Vとすることで、電位制御を行っていないcontrolに比べて、メタンガス生成量が低下した。この結果から、設定電位を−0.6及び−0.8Vとすることで、紙ごみからのメタンガス生成速度を向上できることが明らかとなった。
【0091】
(3)各種設定電位におけるVFA濃度の経時変化
設定電位を+0.3V、0.0V、−0.3V、−0.6V、−0.8V、Control(電位制御無し)とした場合におけるVFA(揮発性脂肪酸:酢酸、プロピオン酸及び酪酸等)の濃度の経時変化を図3に示す。設定電位を0.0Vとした場合には、電位制御を行っていないcontrolよりもVFA濃度が低下したが、それ以外の電位条件ではVFA濃度が高まる傾向が見られ、−0.6Vと−0.8Vの場合にVFA濃度が最も高まった。このことから、−0.6Vと−0.8Vとすることで、紙ごみを分解してVFAに変換し易くできることが明らかとなった。
【0092】
(4)実験開始3日目の化学成分分析結果
これまでの結果をより詳細に検討するために実験開始3日目におけるSS除去率とS−TOCを詳細に分析した。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
尚、表1における炭素回収率(%)は以下の式により計算した。初期炭素は4571mg/Lであった。また、式中の「0.42」は、濾紙中の炭素含有率である。
炭素回収率(%)=(メタン+二酸化炭素+S−TOC+0.42SS)/(初期炭素)
【0095】
この結果から、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、電位制御を行わない場合と比較して、大幅にSS除去率が向上すると共に、S−TOCも大幅に向上することが明らかとなった。このことから、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、電位制御を行わない場合と比較して、紙ごみの分解速度を大幅に向上することができていることが明らかとなった。
【0096】
(5)化学分析結果のまとめ
設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、電位制御を行わない場合と比較して、紙ごみの分解速度を向上させることができ、さらにはメタンガス生成速度を大幅に向上できることが明らかとなった。そして、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとする条件は、作用電極において、還元反応を生じさせることができる電位であることから、作用電極の設定電位を、作用電極において還元反応が生じる電位に制御することで、本発明の効果を得られることが明らかとなった。
【0097】
(6)各種設定電位における微生物数の経時変化
設定電位を−0.6V及び−0.8Vとした場合の微生物数(原核生物の細胞数およびコピー数)の経時変化を図4に示す。図4中、左縦軸は光学顕微鏡観察によりカウントした原核生物の細胞数を示し、右縦軸は定量PCRにより評価した16S rRNA遺伝子の1mL当たりの原核生物のコピー数を示している。実験開始から24時間経過した後は、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとした場合と、電位制御を行っていないcontrolの場合とで、徐々に差が出始め、実験開始から2日後(48時間後)には、設定電位を−0.6Vとした場合には電位制御を行っていないcontrolの場合の1.5倍程度、設定電位を−0.8Vとした場合には電位制御を行っていないcontrolの場合の2倍程度の微生物数となることが確認された。この結果から、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、電位制御を行っていないcontrolの場合よりも微生物数を増加させることができ、微生物数の増加量を高める上では、設定電位を−0.8Vとすることがより好適であることが明らかとなった。
【0098】
さらに、実験開始から2日目のメタン発酵液について、メタン菌のコピー数を定量PCRにより評価した結果を表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
表2に示される結果から、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとした場合には電位制御を行わない場合の5倍程度のメタン菌を検出できたことから、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、メタン菌を増殖させる効果が得られることが明らかとなった。また、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとした場合には電位制御を行わない場合に比べてメタン菌の割合が増加した。
【0101】
(7)T−RFLP解析結果
実験開始から2日目のメタン発酵液について、末端断片長多型解析(T−RFLP)により、全菌のうち、古細菌を除く細菌の群集構造を比較した。結果を図5に示す。設定電位を−0.6V及び−0.8Vとした場合には、電位を制御しない場合と比較して、ほぼ同様の傾向で細菌群集が多様化することが明らかとなった。この結果から、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、メタン発酵液中の細菌群集を多様化させると共に、その数を増加させて、紙ごみの分解速度及びメタンガス生成速度の向上に何らかの影響を及ぼしていることが推定された。
【0102】
次に、実験開始から2日目のメタン発酵液について、末端断片長多型解析(T−RFLP)により、全菌のうち、細菌を除く古細菌の群集構造を比較した。結果を図6に示す。設定電位を−0.6V及び−0.8Vとした場合には、電位を制御しない場合と比較して、92bpの占有割合が大幅に増加することが確認された。
【0103】
そこで、92bpに該当する古細菌について、クローン解析を行った結果、92bpに該当する微生物が、Methanothermobactor thermautotrophicusあるいはその近縁種であることが明らかとなった。Methanothermobactor属の微生物は、水素資化性メタン生成菌であることから、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、メタン生成菌のうち、水素資化性メタン生成菌をメタン発酵液中において優占的に増殖できることが明らかとなった。この結果から、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、水素資化性メタン生成菌を優占的に増殖させて、紙ごみの分解速度及びメタンガス生成速度を向上できることが明らかとなった。
【0104】
(8)生物分析結果のまとめ
設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、電位制御を行わない場合と比較して、メタン発酵液中の菌数を大幅に増殖させることができると共に、水素資化性メタン生成菌であるMethanothermobactor属の微生物の増殖を促進できることが明らかとなった。したがって、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとした場合に得られた紙ごみの分解速度向上効果とメタンガス生成速度の向上効果は、水素資化性メタン生成菌の増殖に起因するものであることが示唆された。また、設定電位を−0.6V及び−0.8Vとすることで、細菌を増殖できると共に多様化できることが明らかとなったことから、このことも紙ごみの分解速度向上効果とメタンガス生成速度の向上効果に何らかの形で寄与している可能性が示唆された。
【0105】
(9)まとめ
以上の結果から、作用電極の設定電位を作用電極において還元反応が生じる電位、換言すれば、作用電極がカソードとして機能する電位に制御することで、紙ごみの分解速度とメタンガス生成速度を、電位を制御せずに単にメタン発酵液に紙ごみを添加した場合と比較して大幅に向上できることが明らかとなった。具体的には、作用電極の電位を制御していないとき(電位無印加時)のメタン発酵液の電位よりもマイナス側に大きくすれば、作用電極で還元反応を生じさせてカソードとして機能させることができる。そして、水の電気分解は、一般に作用電極に−0.9Vよりもマイナス側に大きな電位を印加すると生じ易くなることから、絶対値基準で−0.9Vよりも小さい電位とすることが好ましい。
【0106】
したがって、具体的には、作用電極の電位を制御していないとき(電位無印加時)のメタン発酵液の電位は、一般的には−0.5V程度であることから、作用電極の電位を、−0.5V超(−0.5Vよりもマイナス側に大きな電位)〜−0.9Vとすればよく、−0.6V〜−0.9Vとすることが好ましく、−0.6V〜−0.8Vとすることがより好ましく、−0.8Vとすることがさらに好ましいことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0107】
4 メタン発酵液
4a 電解液
6 イオン交換膜
9 作用電極
10 対電極
11 参照電極
12 定電位設定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を接触させたメタン発酵液に紙ごみを添加し、前記電極の電位を水の電気分解が生じることなく前記電極にて還元反応が生じ得る電位に制御し、前記紙ごみを分解処理することを特徴とする紙ごみ処理方法。
【請求項2】
前記電極を作用電極とし、
前記作用電極と対電極と参照電極とを定電位設定装置に結線し、
前記メタン発酵液と電解液をイオン交換膜を介して接触させ、
前記メタン発酵液に前記作用電極と前記参照電極とを接触させ、
前記電解液に前記対電極を接触させ、
前記作用電極の電位を3電極方式で制御する請求項1に記載の紙ごみ処理方法。
【請求項3】
前記電極を作用電極とし、
前記作用電極と対電極と参照電極とを定電位設定装置に結線し、
前記メタン発酵液と前記対電極をイオン交換膜を介して接触させ、
前記メタン発酵液に前記作用電極と前記参照電極とを接触させ、
前記作用電極の電位を3電極方式で制御する請求項1に記載の紙ごみ処理方法。
【請求項4】
前記作用電極の電位を銀・塩化銀電極電位基準で−0.6V〜−0.9Vに制御する請求項2または3に記載の紙ごみ処理方法。
【請求項5】
前記作用電極の電位を銀・塩化銀電極電位基準で−0.6V〜−0.8Vに制御する請求項2または3に記載の紙ごみ処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の紙ごみ処理方法の実施に伴って生成されるメタンガスを回収することを特徴とするメタンガス回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−161360(P2011−161360A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26402(P2010−26402)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】