説明

紙の防水加工法

【課題】 パルプ質の紙の防水性を高め、高い耐水性があり、しかも紙の硬化が弱く柔軟性がある紙に加工する。
【解決手段】 紙面1aの表裏面をインクで印刷2を施し、その後、反応性シリコーンをイソプロピルアルコールの溶剤で希釈した撥水剤と、合成樹脂・ロジン・鉱油・2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−クレゾールで溶かしたワニス(枚葉OPニス)を1:10の割合で混合した防水剤Aを塗布する。その後に上記撥水剤を紙の外周端面を塗布して、紙の全表面を防水剤、撥水剤でコーティングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷された紙を撥水剤及び防水剤でもって表面コーティングして防水性、耐久性の高い紙とする防水加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙の防水加工法は、紙面に印刷を施した後マットニスを塗布することで、防水性を高めていたが、紙面の外周端面から吸水・吸湿して紙の防水性が低いものであった。又マットニスが厚すぎると紙が硬化して折損し易く、又透明性が悪くなるものであった。
又、カチオン変性シリカ、粘土等を材料とする耐水性向上の被覆剤が、特表2004−500260号公報で知られている。
更に、板紙の表裏面に撥水剤を内添する耐水板紙が特開2005−206957号公報で知られているが、これも、紙の端面から吸水して耐久性が低く、又撥水剤のみでは表面の防水性が低いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−500260号公報
【特許文献2】特開2005−206957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、これらの従来の問題点を解消し、防水性、耐久性がきわめて高く、透明性も高く且つ紙が土ほど硬化せず柔軟性がある紙の防水加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) パルプ質の紙の表面に印刷を施した後に、シリコーンを有機溶剤で希釈した撥水剤とワニスを1:7〜13の容積割合で混合した防水剤でもって印刷した後の紙面表面にコーティングし、又紙の外周縁にシリコーンを溶剤で希釈した撥水剤を塗布し、紙の全表面を防水剤と撥水剤のコーティング層で被覆することを特徴とする紙の防水加工法
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シリコーンを有機溶剤で希釈した撥水剤をワニスに混合して防水剤とし、これを印刷した紙面の表面及び裏面をコーティングしたことで、紙の柔軟性があり且つ透明性と防水性が高い防水コーティング層を形成できた。又紙の外周端面はワニスを使わずにシリコーンを有機溶剤で希釈した撥水剤のみで塗布することで、変形し易い端面を柔軟に塗布し、紙を全面的に防水剤と撥水剤で被覆した。これによって、紙端面からの吸水・吸湿がなく耐水性が高くできた。又、紙表面はワニスが多く混入した被覆であるので防水性が高く、又撥水剤で硬度を少なくして透明性と柔軟性を出せた。
防水剤の撥水剤とワニスの比率が1:13以下とすることで、防水加工した紙の柔軟性を確保し、又1:7以上とすることで耐水性、透明性を確保し、両方のバランスが良好な実用的なものとした。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明で防水加工された紙の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で使用するシリコーンを有機溶剤で希釈した撥水剤としては、シリコーンをイソプロピルアルコール等の溶剤で希釈したものが使用できる。又、これと混合するワニスとしては植物油と合成樹脂と鉱油等を混合したものが使用できる。望ましくは、ロジンを溶剤で溶かしたものが望ましい。又上記撥水剤とワニスは1:7〜13、望ましくは1:10の容積比で混合した防水剤を紙面の表裏面に塗布・吹付け・印刷によってコーティングするのが好ましい。
又、紙の端面に塗布する撥水剤はシリコーンをイソプロピルアルコール等の溶剤で希釈したものを使用する。この撥水剤は無色透明である。
紙の外周端面への撥水剤の塗布は手作業による塗布で行うことが実用的である。
【実施例1】
【0009】
本発明の実施例について説明する。
本実施例は、撥水剤Bとして、イソプロピルアルコールの溶剤で反応性シリコーンを希釈したKS−7001製品(販売元/信越化学工業株式会社)溶液型撥水剤を使用した。
又、これと混合するワニスとして、合成樹脂・植物油(ロジン)を鉱油及び2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−クレゾールで溶かした枚葉OPニス(TKニューブライト マット OPニス/東洋インキ製造株式会社販売)を使用した。
上記撥水剤と上記枚葉OPニスとを1:10の容積比で混合した防水剤Aとしている。
【0010】
又、紙1の端面1bに手作業で塗布する撥水剤も上記防水剤Aに使用した撥水剤を使用した。
【0011】
この実施例では、まず紙面1aの表裏面をインクで印刷2を施す。その後、印刷行程途中、上記防水剤Aをローラをもって紙面の表裏面に薄くコーティングしてコーティング層3を形成する。
【0012】
防水剤Aを印刷した紙面1aにコーティングした後紙面を所定の寸法形状に切断する。切断した後、紙面の外周端面1b(切断面も含む)を、上記撥水剤Bのみの剤液を手作業で塗布する。端面コーティング層4を形成する。
【0013】
このように、印刷した紙面1aの表裏面は上記9防水剤Aによってコーティングし、又その外周端面1bは上記撥水剤Bのみで塗布してコーティング層3,4で全面被覆する。
【0014】
上記の防水加工された紙面は、ワニスと防水剤で紙面表面は光沢があって透明性が高く、防水剤中の撥水剤で硬質となるが、柔軟性が与えられ、変形に強いものとなっている。且つ防水性が高いものとなった。
又紙面の端面は柔軟性がある撥水剤のみによるコーティングとしていて、変形に耐え、しかも全面被覆したことで端面からの吸水・吸湿はなく、高い防水性、耐水性を可能とした。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の防水加工された紙としては、屋外・野外活動で使用される紙、例えばゴルフスコアカード、地図、野外観察ノート、建設図面等に使用できる。
【符号の説明】
【0016】
1 紙
1a 紙面
1b 外周端面
2 印刷
3,4 コーティング層
A 防水剤
B 撥水剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ質の紙の表面に印刷を施した後に、シリコーンを有機溶剤で希釈した撥水剤とワニスを1:7〜13の容積割合で混合した防水剤でもって印刷した後の紙面表面にコーティングし、又紙の外周縁にシリコーンを溶剤で希釈した撥水剤を塗布し、紙の全表面を防水剤と撥水剤のコーティング層で被覆することを特徴とする紙の防水加工法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−189271(P2011−189271A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57287(P2010−57287)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(304047093)
【Fターム(参考)】