説明

紙カートン

【課題】トップオープン型の紙カートンであって、一度に全量を取り出す場合と一部を残して必要な分だけを取り出す場合との使い分けができる紙カートンを提供する。
【解決手段】天面パネル14から延設したフラップパネルを前面パネルと貼着し、内容物を収納後、前面パネル及び後面パネル13にそれぞれ連設する各折込みフラップと天面パネル及び底面パネルにそれぞれ連設する各サイドパネル17,17とを貼着することにより箱状に組み立てられ、天面パネル及びフラップパネルには連続する複数の切れ刃からなる開封用の2筋の破断線が設けられ、フラップパネルの端部にはその2筋の破断線により開封部を形成し得るように摘み部を形成してなる紙カートンにおいて、後面パネル13に天面パネル14の2筋の破断線L2 にそれぞれ連続して2筋の破断線L3 ,L4 を底面パネルとのコーナーに至るまで設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙製からなるカートンの技術分野に属し、詳しくは、直方体形状の板紙製容器であって、各種生活用品等の物品を収納して販売する際に好適に用いられる紙カートンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の紙カートンとして、天面パネルを大きく開封して中身を取り出すトップオープン型の紙カートンが知られている。その中でも代表的なものとしては、天面パネルから延設したフラップパネルを前面パネルと貼着し、内容物を収納した後、折込みフラップとサイドパネルを貼着することにより形成される紙カートンであって、開封時には、フラップパネルの一部からなる摘み部を引っ張り、破断線に沿ってフラップパネルと天面パネルを破断することにより2筋の破断線に囲まれた開閉部分を摘み上げ、天面パネルの中央部を大きく開放して内容物を取り出すように、また、一旦開けた開閉部分は、リクローズするにあたって摘み部分を前面パネルの切込みに差し込んで閉じることにより、自然に開閉部分が開くことを防ぐように構成されたものが広く利用されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−193926号公報
【特許文献2】特開平11−310226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したトップオープン型の紙カートンは、フラップパネルの一部からなる摘み部を引っ張り上げることで、天面パネルの2筋の破断線に沿って開閉部分を形成し、天面パネルの中央部を大きく開放して内容物を取り出すようになっている。しかしながら、天面パネルの2筋の破断線は左右の辺より内側に形成されており、開閉部分はその両サイドに天面パネルの一部を残した状態で形成される。このため、小さな薬局でその都度必要な分だけ取り出すという場合は、両サイドに天面パネルの残った部分が在っても大して問題にはならないが、大きな薬局で中の個包装の袋を一気に移し替えるような場合には、この天面パネルの残った部分が邪魔になって容易に取り出すことができない。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、天面パネルを開封して中身を取り出すトップオープン型の紙カートンであって、一度に全量を取り出す場合と一部を残して必要な分だけを取り出す場合との使い分けができる紙カートンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の紙カートンは、天面パネルから延設したフラップパネルを前面パネルと貼着し、内容物を収納後、前面パネル及び後面パネルにそれぞれ連設する各折込みフラップと天面パネル及び底面パネルにそれぞれ連設する各サイドパネルとを貼着することにより箱状に組み立てられ、天面パネル及びフラップパネルには連続する複数の切れ刃からなる開封用の2筋の破断線が設けられ、フラップパネルの端部にはその2筋の破断線により開封部を形成し得るように摘み部を形成してなる紙カートンにおいて、後面パネルに天面パネルの2筋の破断線にそれぞれ連続して2筋の破断線を底面パネルとのコーナーに至るまで設けたことを特徴としている。
【0007】
そして、上記構成の紙カートンにおいて、後面パネルの破断線を上半の2筋の破断線と下半の2筋の破断線とで構成し、上半の2筋の破断線は、天面パネルから底面パネルに向かって狭まる向きで後面パネルの中程に至るまで形成し、下半の2筋の破断線は、上半の2筋の破断線にそれぞれ屈曲状態で連続してそれぞれコーナーに向かって広がる方向で形成することが好ましく、さらには、上半の2筋の破断線と下半の2筋の破断線の屈曲点同士を結ぶようにして後面パネルの中程を横断する位置に折曲げ用の折線を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙カートンは、後面パネルに天面パネルの2筋の破断線にそれぞれ連続して2筋の破断線を底面パネルとのコーナーに至るまで設けたので、一部を残して必要な分だけ取り出す時には、天面パネルの2筋の破断線を破断して上部に取出し口を形成し、そこから取り出すことにより、リクローズもできる状態で使用することができ、一度に全量を取り出す時には、後面パネルの2筋の破断線を底面パネルのところまで破断して容易に取り出せることから、一度に全量を取り出す場合と一部を残して必要な分だけを取り出す場合との使い分けができる。
【0009】
そして、後面パネルの破断線を上半の2筋の破断線と下半の2筋の破断線とで構成し、上半の2筋の破断線は、天面パネルから底面パネルに向かって狭まる向きで後面パネルの中程に至るまで形成し、下半の2筋の破断線は、上半の2筋の破断線にそれぞれ屈曲状態で連続してそれぞれコーナーに向かって広がる方向で形成することにより、使用者が後面パネルを一気に開封しきることがなく、途中まで開封する場合と全体を開封する場合を選択することができるので、内容物の取出しの用途に合わせて開封することができる。
【0010】
さらに、上半の2筋の破断線と下半の2筋の破断線の屈曲点同士を結ぶようにして後面パネルの中程を横断する位置に折曲げ用の折線を形成することにより、後面パネルを途中まで開封する操作を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明に係る紙カートンの一例を示す斜視図、図2は図1の紙カートンを背後から見た状態で示す斜視図、図3は図1,2に示す紙カートンを組み立てるブランクの展開図である。
【0013】
図3に示すブランクは、紙器用の板紙を打ち抜いて形成されたもので、図示のように、折線a,b,c,dを介して前面パネル11、底面パネル12、後面パネル13、天面パネル14、フラップパネル15が順次連設されている。そして、前面パネル11の左右辺には折線e,fを介してそれぞれ折込みフラップ16が連設され、底面パネル12の左右辺には折線g,hを介してそれぞれ底面側のサイドパネル17が連設され、後面パネル13の左右辺には折線i,jを介してそれぞれ折込みフラップ18が連設され、天面パネル14の左右辺には折線k,lを介してそれぞれ天面側のサイドパネル19が連設されている。
【0014】
フラップパネル15には、先端縁の中央に摘み片15aが形成され、その摘み片15aの根元両側から末広がり状に延びる開封用の2筋の破断線L1 が形成されており、天面パネル14にはフラップパネル15の2筋の破断線L1 にそれぞれ連続して同じく開封用の2筋の破断線L2 が前面パネル側から後面パネル側に向かって狭まる向きで後面パネル13に至るまで形成されている。
【0015】
これらの破断線L1 ,L2 は連続する複数の切れ刃からなり、フラップパネル15における2筋の破断線L1 は、開封時に広がるように進んで破断されるため、図示のように、破断進行方向で見て後側が内向きに折れ曲がった形状の切れ刃が連続しており、天面パネル14における2筋の破断線L2 は、開封時に狭まるように進んで破断されるため、破断進行方向で見て後側が外向きに曲がった形状の切れ刃が連続している。
【0016】
また、後面パネル13には、天面パネル14の2筋の破断線L2 にそれぞれ連続して2筋の破断線L3 が破断線L2 より僅かに内側に狭まる向きで当該パネルの中程に至るまで形成されており、その2筋の破断線L3 にそれぞれ屈曲状態で連続するようにして2筋の破断線L4 がそれぞれコーナーに向かって広がる方向で形成されている。そして、破断線L3 と破断線L4 の屈曲点を結ぶようにして後面パネル13の中程を横断する折線mが形成されている。この折線mは折曲げ用であり、押罫でもミシン目でも構わない。
【0017】
これらの破断線L3 ,L4 も連続する複数の切れ刃からなり、天面パネル側にある上半の2筋の破断線L3 は、狭まるように進んで破断されるため、図示のように、破断進行方向で見て後側が外向きに曲がった形状の切れ刃が連続しており、底面パネル側にある下半の2筋の破断線L4 は、広がるように進んで破断されるため、破断進行方向で見て後側が内向きに曲がった形状の切れ刃が連続している。
【0018】
フラップパネル15の摘み片15aは、根元で折曲げ可能で、その根元の中程に半円状の切れ線αが突出形成されている。そして、前面パネル11には、フラップパネル15の摘み片15aに対応する位置に「山」状のスリット11aが設けられており、摘み片15aが根元で折れ曲がった時に切れ線αにより形成される凸部がスリット11aに係止できるようになっている。
【0019】
また、折込みフラップ16,18の表面、底面側のサイドパネル17の表面には、接着剤による接着を良くするため、図示の如く複数の半切れ罫線が設けられている。
【0020】
図3のブランクは、フラップパネル15の裏側を前面パネル11の表側に貼り合わせたサック貼り状態で折り畳まれる。この時、開封部分を除いた部分、すなわち破断線L1 より外側で且つ摘み片15aを除いた領域で糊付けする。そして、この折り畳んだブランクから紙カートンを組み立てるには、まず、折り畳んだブランクを角筒状に起こした後、一方の端面側で、折込みフラップ16,18をそれぞれ内側に折り曲げてから、底面側端面パネル17と上面側端面パネル19を順次折り曲げて貼り合わせる。次いで、他方の端面側から内容物を投入してから、他方の端面側も同様に閉じる。このようにして図1,2に示す紙カートンが作製される。
【0021】
この紙カートンを開封するに際しては、フラップパネル15の摘み片15aを引っ張ることでフラップパネル15の2筋の破断線L1 を破断し、そのまま引っ張ることで天面パネル14の2筋の破断線L2 をそれぞれ破断線L1 に連続して破断し、図4に示すように、上部に取出し口を形成する。そして、その取出し口から内容物を取り出す。なお、図4〜6では内容物を省略して図示している。
【0022】
この開封時において、フラップパネル15では、破断線L1 が広がるようにテーパーが付いているが、各切れ刃は破断進行方向で見て後側が内向きに曲がっているので、紙の剥離を起こすことなく破断することができる。そして、天面パネル14では、破断線L2 が狭まるようにテーパーが付いており、しかも各切れ刃は破断進行方向で見て後側が外向きに曲がっているので、紙の剥離を起こすことなく破断することができ、破断した後の開口部の縁には小さな切欠が連続して発生するものの、紙の千切れた部分は破断線の誘導基準となる線の外側の奥まった部分に残っており、破断線の基準線となる部分がガードになることから、内容物を取り出そうと手を差し込んだ際に開口の縁に当たっても直接手が引っ掛かるようなことはない。
【0023】
このように開封した後、開けた部分を元に戻し、摘み片15aの根元にある半円状の切れ線αにより形成される凸部を前面パネル11のスリット11aに差し込んで係止することにより、蓋をすることができる。
【0024】
また、この紙カートンは、図4に示す開封状態から、摘み片15a或いはフラップパネル15の開封部分を把持して後側に引っ張ることで後面パネル13の2筋の破断線L3 をそれぞれ破断線L2 に連続して折線mのところまで破断することができ、このように後面パネル13の上半を開けることにより、図5に示す如く、箱の形態を保ちながら、広く開封して内容物の取出しを容易にすることができる。したがって、内容物を小出しするような場合には、この図5に示す状態まで開封することにより、図4に示す開封状態の場合よりも取り出しやすくなる。
【0025】
後面パネル13における2筋の破断線L3 はそれぞれ屈曲状態で破断線4 と連続している。したがって、摘み片15a或いはフラップパネル15の開封部分を把持して後側に引っ張ってこの2筋の破断線L3 を破断しても、それに続く破断線L4 は屈曲点のところで向きが大きく変わるため、破断線L4 の手前で破断が止まり、破断された後面パネル13の上半部分は折線mのところで外側に折り曲げることができる。
【0026】
この後面パネル13における上半の破断線L3 は、天面パネル14の破断線L2 と同様、内側に狭まる向きでテーパーが付いており、しかも各切れ刃は破断進行方向で見て後側が外向きに曲がっているので、紙の剥離を起こすことなく破断することができ、破断した後の端縁には小さな切欠が連続してできるだけで、紙が突き出て残るようなことはないので、内容物の取出し時にこの後面パネル13の開けた部分の端縁に手が当たっても引っ掛かることはない。
【0027】
さらに、この紙カートンは、図5に示す開封状態から、後面パネル13の残った下半部分を後側に引っ張ることで後面パネル13の2筋の破断線L4 をそれぞれ破断線L3 に連続してコーナーのところまで破断することができ、このように後面パネル13の下半部分を開けることにより、図6に示す如く、さらに大きく開封することができる。したがって、内容物を全量取り出す時には、この図6に示す状態まで開封することで、簡単に取り出すことができる。
【0028】
この後面パネル13における下半の破断線L4 は、外側に広がる向きでテーパーが付いており、各切れ刃は破断進行方向で見て後側が内向きに曲がっているので、紙の剥離を起こすことなく破断することができる。ただ、上半の破断線L3 と違って端縁には鋸刃状に紙が突き出て残るが、内容物を取り出す時にはこの部分に手が当たることは殆どない。
【0029】
本発明の紙カートンは、医療用の薬の小袋をメインとして、各種の医療用品を複数個並べた状態で収納する用途が好適であるが、その他のものを収納する用途であっても構わない。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による紙カートンは、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る紙カートンの一例を示す斜視図である。
【図2】図1の紙カートンを背後から見た状態で示す斜視図である。
【図3】図1,2に示す紙カートンを組み立てるブランクの展開図である。
【図4】図1の紙カートンを開封した状態で示す斜視図である。
【図5】図4に示す状態からさらに開いた状態で示す斜視図である。
【図6】図5に示す状態からさらに開いた状態で示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
11 前面パネル
11a スリット
12 底面パネル
13 後面パネル
14 天面パネル
15 フラップパネル
15a 摘み片
16 折込みフラップ
17 サイドパネル
18 折込みフラップ
19 サイドパネル
1 〜L4 破断線
a〜m 折線
α 切れ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面パネルから延設したフラップパネルを前面パネルと貼着し、内容物を収納後、前面パネル及び後面パネルにそれぞれ連設する各折込みフラップと天面パネル及び底面パネルにそれぞれ連設する各サイドパネルとを貼着することにより箱状に組み立てられ、天面パネル及びフラップパネルには連続する複数の切れ刃からなる開封用の2筋の破断線が設けられ、フラップパネルの端部にはその2筋の破断線により開封部を形成し得るように摘み部を形成してなる紙カートンにおいて、後面パネルに天面パネルの2筋の破断線にそれぞれ連続して2筋の破断線を底面パネルとのコーナーに至るまで設けたことを特徴とする紙カートン。
【請求項2】
後面パネルの破断線を上半の2筋の破断線と下半の2筋の破断線とで構成し、上半の2筋の破断線は、天面パネルから底面パネルに向かって狭まる向きで後面パネルの中程に至るまで形成し、下半の2筋の破断線は、上半の2筋の破断線にそれぞれ屈曲状態で連続してそれぞれコーナーに向かって広がる方向で形成したことを特徴とする請求項1に記載の紙カートン。
【請求項3】
上半の2筋の破断線と下半の2筋の破断線の屈曲点同士を結ぶようにして後面パネルの中程を横断する位置に折曲げ用の折線を形成したことを特徴とする請求項2に記載の紙カートン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−290749(P2008−290749A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138501(P2007−138501)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】