説明

紙及び板紙の製造

【課題】粘土鉱物を用いた紙の歩留まり向上システムであって、紙の光学的性質を損なわない製紙方法を提供する。
【解決手段】水性セルロース懸濁液を形成することと、セルロース懸濁液に保持系を加えることと、懸濁液をスクリーン上で水切りしてシートを形成することと、シートを乾燥させることとを含む、紙又は板紙の製造方法において,保持系が、少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土を含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性セルロース懸濁液を形成することと、セルロース懸濁液に保持系を加えることと、懸濁液をスクリーン上で水切りしてシートを形成することと、シートを乾燥させることとを含み、保持系が膨潤性粘土を含む方法による紙又は板紙の製造に関する。このタイプの製紙法は文献に十分に記録されており、たとえば、保持系の一部としてベントナイト(すなわちアニオン性膨潤性粘土)の使用を含むHydrocol(登録商標)法を含む。このような方法は、たとえばEP−A−235893、US−A−4913775及びEP−A−707673に記載されている。
【0002】
EP−A−235893は、せん断段階の前に水溶性の実質的に直鎖状のカチオン性ポリマーを製紙原料に加えたのち、そのせん断段階の後でベントナイトを導入することによって再凝集させる方法を提供している。この方法は、高められた水切りならびに良好な成形及び保持を提供する。Ciba Specialty ChemicalsによってHydrocol(登録商標)の下で市販化されているこの方法は、10年を超える間、成功を収めている。
【0003】
一般に、保持系の一部として膨潤性粘土を使用する製紙系は、水切り率及び保持における有意な改善を提供することがわかっている。一般に、膨潤性粘土は、ベントナイト、セピオライト及びアタパルジャイトなどを含む。ベントナイトは、モンモリロナイト、サポナイト、アルマアルゴサイト、ノントロナイト及びヘクトライトのような粘土種を含む、スメクタイト群として知られる大まかな分類の粘土を含む。多くの場合、膨潤性粘土を含む保持系は、たとえばコロイドシリカ及びポリケイ酸を使用する他の微粒子系とで比較しても大きく改善された水切り及び保持を提供する。
【0004】
しかし、粘土ベースの保持系の他ならぬ欠点は、それから製造される紙が光学性質の減退をこうむる傾向にあるということである。ベントナイトが使用される場合には製紙工程で光学増白剤(OBA)を含めることで紙の白色度(brightness)を改善することができるが、多くの場合、その改善は些細な程度であり、大部分の高質紙、たとえばTAPPI白色度値が92を超える、好ましくは96〜99以上である高白色度紙には不十分である。したがって、これらの高白色度紙を提供するためには、膨潤性粘土ベースの保持系は通常、不適当であるとみなされ、したがって避けられる。
【0005】
WO−A−98/23815は、光学増白剤をアニオン性の架橋凝固剤、たとえばベントナイトのスラリーと合わせたのち、これを製紙原料に配合することによって、この問題を解消しようと試みた。この方法を使用して紙の白色度における有意な改善が達成されたが、白色度、特にベース白色度をさらに高める必要がなおもあるということがわかった。
【0006】
一般に、粘土ベースの保持系を使用して適度な白色度の紙を提供するには、高濃度の光学増白剤(OBA)を使用することが必要であろう。しかし、我々は、高度に充填される製紙法では、高濃度の光学増白剤の存在がフィラー保持に対して悪影響を及ぼしうるということを見出した。
【0007】
光学増白剤の有効性を改善するための種々の試みがなされてきたが、今日まで、膨潤性粘土ベースの保持系とで使用することができる有効な光学増白剤をだれも開発していない。
【0008】
したがって、膨潤性粘土(たとえばベントナイト)ベースの保持系を使用する場合に紙又は板紙の白色度を改善する方法が今でも要望されている。特に、たとえば膨潤性粘土ベースの保持系を使用するときに見られるような高いフィラー及び繊維保持ならびに速やかな水切りの利点と、特に光学増白剤を低減させた濃度で使用しながらも高い全体的白色度を紙に提供することとを併せ持つ製紙方法を提供することが要望されている。
【0009】
加えて、充填紙に高度な白色度を提供し、フィラー保持を改善することが要望されている。
【0010】
このように、本発明により、水性セルロース懸濁液を形成することと、セルロース懸濁液に保持系を加えることと、懸濁液をスクリーン上で水切りしてシートを形成することと、シートを乾燥させることとを含む、紙又は板紙の製造方法であって、保持系が、少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土を含む方法を提供する。
【0011】
このように、少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土を使用することにより、紙の全体的白色度を改善することができるということが見出された。膨潤性粘土は、少なくとも70のTAPPI白色度を示すという条件で、たとえばベントナイト、セピオライト及びアタパルジャイトなどであることができる。ベントナイトは、モンモリロナイト、サポナイト、アルマアルゴサイト、ノントロナイト及びヘクトライトのような粘土種を含む、スメクタイト群として知られる大まかな分類の粘土を含む。好ましくは、膨潤性粘土はベントナイトである。
【0012】
TAPPI白色度試験は、たとえばパルプ、紙及び板紙の白色度を測定するための標準試験法であるが、ベントナイトのような膨潤性粘土にも適用することができる。この方法の具体的な詳細は、たとえば「パルプ、紙及び板紙の白色度(457nmでの指向性反射)」(Brightness of pulp, paper and paperboard(directional reflectance at 457nm)と題する、1992年のTAPPI公表の標準試験法T452 on-92に記載されている。
【0013】
また、低い又は無視しうる濃度の遷移金属不純物を含有する膨潤性粘土、たとえばベントナイトは、少なくとも70のTAPPI白色度値を示す傾向にある。我々は、特に、白色度の高いベントナイトが、たとえば酸化鉄又は他の鉄化合物であるかもしれない遷移金属不純物を1%未満で含有する傾向を示すということを見出した。逆に、我々は1重量%を有意に超える遷移金属を含有するベントナイトが70よりも有意に低い白色度値を有するということを見出した。これは特に、10%までの遷移金属不純物を含有するベントナイトに関して、特にその不純物が酸化鉄又は他の鉄化合物を含む場合にあてはまる。
【0014】
膨潤性粘土は、少なくとも70のTAPPI白色度値を示す、かなり多数の市販の粘土であってもよい。膨潤性粘土は、たとえば、米ジョージア州のWaverly plantによって製造される、遷移金属化合物1%未満を含み、81のTAPPI白色度値を示すナトリウムベントナイトであってもよい。
【0015】
本発明のすべての態様にしたがって、さらに、水性セルロース懸濁液を形成することと、セルロース懸濁液に保持系を加えることと、懸濁液をスクリーン上で水切りしてシートを形成することと、シートを乾燥させることとを含む、紙又は板紙の製造方法であって、保持系が、1種以上の遷移金属化合物1重量%未満を含有する膨潤性粘土を含む方法を提供する。
【0016】
本発明の両方の態様によると、膨潤性粘土は、他の保持助剤と組み合わせて多成分保持系の一部として使用することができる。したがって、一つの好ましい系では、ポリマー保持助剤をさらに含む製紙系を提供する。ポリマー保持系は、膨潤性粘土と同時にセルロース懸濁液に加えることもできるが、好ましくは、ポリマー保持助剤及び膨潤性粘土を順々に加える。本発明の好ましい実施態様では、ポリマー保持助剤は、膨潤性粘土の前にセルロース懸濁液に加える。より好ましい方法では、ポリマー保持助剤をセルロース懸濁液に加え、それにより、セルロース懸濁液を凝集させ、任意に、凝集した懸濁液を、ポンピング段階、混合段階及び清浄段階から選択される一以上のせん断段階に通すことによって、懸濁液をせん断し、その後にセルロース懸濁液を再凝集させるために膨潤性粘土を加える。たとえば、このようなせん断段階は、ファンポンプ及び遠心分離スクリーンを含むが、懸濁液のせん断が起こる、プロセス中のいかなる他の段階であってもよい。
【0017】
せん断工程は、望ましくは、凝集塊を分解するような方法で凝集した懸濁液に作用する。凝集系の成分すべてをせん断段階の前に加えてもよいが、好ましくは、少なくとも凝集系の最後の成分を、プロセス中の、シートを形成するための水切りの前の実質的なせん断が加わらないポイントでセルロース懸濁液に加える。したがって、凝集系の少なくとも一つの成分がセルロース懸濁液に加えられ、次いで凝集した懸濁液が、凝集塊を機械的に分解させる機械的せん断に付され、その後で、凝集系の少なくとも一つの成分が加えられて懸濁液を再凝集させたのち、水切りすることが好ましい。
【0018】
ポリマー保持助剤は、いかなる適切な天然又は合成ポリマーから誘導することもできる。望ましくは、少なくとも1dl/gの固有粘度を有する水溶性天然ポリマー及び水溶性合成ポリマーから選択することができる。ポリマー保持助剤は、たとえば、カチオン性デンプン、両性デンプン、アニオン性デンプン及び非イオン性デンプンから選択される水溶性デンプンであってもよい。しかし、好ましくは、ポリマー保持助剤は合成のものであり、イオン性である高分子量ポリマーを含む。より好ましくは、1種以上のエチレン性不飽和モノマーから形成され、少なくとも4dl/gの固有粘度を有する水溶性カチオン性合成ポリマーである。
【0019】
水溶性の合成ポリマーは、水溶性のエチレン性不飽和モノマーから形成することができる。「水溶性」とは、モノマーが少なくとも5g/100ccの水への溶解度を有することをいう。ポリマーがイオン性である場合、ポリマーは、少なくとも一つの水溶性イオン性モノマーから形成される。水溶性ポリマーは、非イオン性であることもでき、たとえば、一つ以上の非イオン性モノマー、たとえばアクリルアミド、メタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート又はN−ビニルピロリドンから形成することができる。水溶性のアニオン性ポリマーは、たとえばアクリル酸、メタクリル酸又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸から選択される少なくとも一つのアニオン性モノマーから形成することができる。望ましくは、水溶性ポリマー保持助剤は、水溶性のエチレン性不飽和カチオン性モノマー、又はモノマーの少なくとも一つがカチオン性又は潜在的にカチオン性であるモノマーブレンドから、形成することができるカチオン性ポリマーである。カチオン性モノマーは、好ましくは、ジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、酸付加塩又は第四級アンモニウム塩(ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのいずれかの塩)から選択される。カチオン性モノマーは、単独で重合させることもできるし、水溶性の非イオン性、カチオン性又はアニオン性モノマーとで共重合させることもできる。好ましくは、このようなポリマーは、少なくとも3dl/g、たとえば16又は18dl/g、ただし通常は7又は8〜14又は15dl/gの範囲の固有粘度を有する。特に好ましいカチオン性ポリマーは、ジメチルアミノエチルアクリレート又はメタクリレートの塩化メチル第四級アンモニウム塩のコポリマーを含む。
【0020】
水溶性のカチオン性ポリマーはまた、たとえば少量の分岐剤をたとえば20重量ppmまで配合することにより、わずかに分岐した構造を有することもできる。一般に、分岐剤は、分岐鎖状のアニオン性ポリマーを調製するのに適するものとして本明細書で定義される分岐剤のいずれをも含む。このような分岐鎖状ポリマーはまた、連鎖移動剤をモノマーミックスに含めることによって調製することができる。連鎖移動は、少なくとも2重量ppmの量で含めることができ、200重量ppmまでの量で含めることができる。一般に、連鎖移動剤の量は10〜50重量ppmの範囲である。連鎖移動剤は、適切な化学物質、たとえば次亜リン酸ナトリウム、2−メルカプトエタノール、リンゴ酸又はチオグリコール酸であることができる。連鎖移動剤を含む分岐鎖状ポリマーは、連鎖移動剤の量が、製造されるポリマーが水溶性になることを保証するのに十分である条件で、比較的高濃度の分岐剤、たとえば100又は200重量ppmまでの分岐剤を使用して調製することができる。一般に、分岐鎖状カチオン性水溶性ポリマーは、少なくとも一つのカチオン性モノマー、少なくとも10モルppmの連鎖移動剤及び20モルppm未満の分岐剤を含む水溶性モノマーブレンドから形成することができる。好ましくは、分岐鎖状の水溶性カチオン性ポリマーは、0.005Hzで0.7を超えるtanδの流動学的振動値を示す(本明細書に記す方法によって決定)。一般に、分岐鎖状のカチオン性ポリマーは、少なくとも3dl/gの固有粘度を有する。一般に、ポリマーは、4又は5〜18又は19dl/gの範囲の固有粘度を有することができる。好ましいポリマーは、7又は8〜約12又は13dl/gの固有粘度を有する。
【0021】
ポリマー保持助剤はまた、アニオン性基及びカチオン性基の両方を含むという点で、両性ポリマーであってもよい。たとえば、両性ポリマーは、少なくとも一つのカチオン性モノマー及び少なくとも一つのアニオン性モノマーならびに任意に非イオン性モノマーから形成することができる。たとえば、両性ポリマーは、前述のアニオン性、カチオン性及び任意に非イオン性のモノマーのいずれからでも誘導することができる。
【0022】
水溶性ポリマー保持助剤はまた、あらゆる好都合な方法によって、たとえば溶液重合、油中水型懸濁重合又は油中水型乳化重合によって調製することもできる。溶液重合は水性ポリマーゲルを生じさせ、これを裁断し、乾燥させ、粉砕すると粉末状生成物を得ることができる。ポリマーは、懸濁重合によってビーズとして製造することもできるし、たとえばEP−A−150933、EP−A−102760又はEP−A−126528によって定義されている方法にしたがって、油中水型乳化重合によって油中水型エマルション又は分散系として製造することもできる。
【0023】
好ましい製紙法では、我々は、ポリマー保持助剤の前にカチオン性ポリマーがセルロース懸濁液に加えられる方法を提供する。一つの方法では、ポリマー保持助剤の前に加えられるカチオン性ポリマーは低分子量カチオン性凝固剤である。好ましくは、カチオン性ポリマーは、ポリDADMAC、ポリイミン、ポリアミン及びジシアンジアミドポリマーからなる群より選択される。
【0024】
製紙法はまた、光学増白剤を含むことができる。光学増白剤は、セルロース懸濁液に直接含めることもできるし、あるいはまた、保持系の成分、たとえば膨潤性粘土又はポリマー保持助剤とともに含めることもできる。
【0025】
光学増白剤は、形成された紙シートの表面にコーティングカラーとして適用することができる。たとえば、コーティングカラー組成物は、1種以上のフィラー又は顔料、蛍光増白剤(FWA)、結合剤、レオロジー改質剤及び任意に他の薬剤を含む。フィラー又は顔料は通常、白色の無機粒子状物質であり、たとえば、炭酸カルシウム、好ましくは沈降炭酸カルシウム又は重質炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン及びタルクからなる群より選択することができる。通常、フィラー又は顔料の量は、コーティングカラー組成物に基づいて少なくとも75重量%、多くの場合に少なくとも85重量%である。
【0026】
光学増白剤(OBA)とも知られる蛍光増白剤(FWA)は、光反射の質、ひいてはコーティングされたシートの白色度を高める。結合剤が、顔料をコーティングされた紙又は板紙に固着させるために存在し、通常は、水性ラテックスの形態の接着性ポリマー材料である。通常、コーティングカラー組成物のレオロジーは、特定の用途に適するように調節される。
【0027】
本発明では、光学増白剤(OBA)又は蛍光増白剤(FWA)は、光のスペクトルの紫外線部分から光を取り込み、それを可視スペクトルで放出する蛍光能力を有するいかなる化学薬品であってもよい。好ましくは、蛍光増白剤は、GB−A−2026566及びGB−A−2026054に記載されているようなスチルベン蛍光増白剤又はEP−A−624687に記載されているようなビススチルベン蛍光増白剤である。蛍光増白剤は、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体及びテトラアミノビススチルベンジスルホン酸及び誘導体、テトラアミノビススチルベンテトラスルホン酸及び誘導体、ならびにテトラアミノビススチルベンヘキサスルホン酸及び誘導体を含む。好ましくは、蛍光増白剤は、通常は少なくとも30重量%、たとえば約60重量%の濃縮水性スラリーの形態で提供される。
【0028】
本発明のさらなる実施態様は、本発明の方法によって得ることができる紙及び板紙に関する。
【0029】
本発明のさらなる実施態様は、少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土及びポリマー保持助剤を含む組成物に関する。この膨潤性粘土及び保持助剤の性質は上記のとおりである。
【0030】
この組成物の好ましい実施態様は、膨潤性粘土がベントナイトである組成物に関する。
【0031】
本発明のさらなる実施態様は、少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土の、紙又は板紙の製造のための使用に関する。
【0032】
本発明のもう一つの実施態様は、紙又は板紙の製造のための上記組成物の使用に関する。
【0033】
本発明のもう一つの実施態様は、少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土を含む紙又は板紙に関する。
【0034】
本発明の好ましい実施態様は、ポリマー保持助剤をさらに含む、上記紙又は板紙に関する。
【0035】
本発明のもう一つの実施態様は、少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土を含む保持系を含むセルロース懸濁液に関する。
【0036】
その好ましい実施態様は、ポリマー保持助剤をさらに含むセルロース懸濁液に関する。
【0037】
以下の例が本発明を説明する。
【0038】
例1
硬木37.5重量%、軟木37.5重量%及び沈降炭酸カルシウム25重量%を含む原料を0.78重量%の稠度(固形分)に調製した。原料の500mlアリコートに、アクリルアミドとジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル第四級アンモニウム塩との(重量比75/25)11.0dl/gを超える固有粘度のコポリマーの溶液を1トンあたり0.75ポンド(375ppm)で各アリコートに加え、10秒間混合した。Waverly plant(米ジョージア州)によって供給され、81の白色度を有するベントナイトAを1トンあたり4ポンド(2000ppm)の用量でアリコートに加えた。1000rpmで10秒間せん断を加えたのち、原料をハンドシート型に注加した。原料のアリコートごとにハンドシートを3個1組で調製し、白色度、蛍光及び不透明度を計測した。シートごとに2回の読みの平均を出した。光学試験が完了したところでシート灰分を測定した。
【0039】
例2〜4
56の白色度を示す米国テキサス産の市販ベントナイトであるベントナイトB、33の白色度を示す英国産の市販ベントナイトであるベントナイトC、及びポリシリカミクロゲルParticol(登録商標)BX(WO−A−98/30753の例1にしたがって調製)を1トンあたり1ポンド(500ppm)の用量で使用して、例1を繰り返した。
【0040】
例5〜20
アクリルアミドコポリマーの添加の前に光学増白剤(OBA)Tinopal(登録商標)PT Liquid Newを、入手ままの状態で1トンあたり10、20、30、40及び60ポンド(それぞれ5,000ppm、10,000ppm、15,000ppm、20,000ppm及び30,000ppm)で各アリコートに添加し、10分間ゆっくりと攪拌したのち、1,000rpmで10秒間混合したことを除き、例1〜4を繰り返した。
【0041】
例1〜20の結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
全体白色度
表1は、各OBA濃度で製造したハンドシートの全体白色度を示す。シートの白色度は、Tinopal(登録商標)PT Liquid Newの添加量の増大とともに増大する。このように、より高いシート白色度を有するベントナイトを使用することによってシート白色度が改善されるということが明らかに見てとれる。また、ベントナイトをAを使用する場合、より低い白色度のベントナイトの場合に比べて少ないOBAしか要らないということが見てとれる。98ポイントの白色度をベントナイトAで達成するためには、1トンあたり20ポンドのOBAしか要らないが、同じ白色度をベントナイトB及びCで達成するためには、1あたりそれぞれ40及び60ポンドのOBAが必要である。
【0044】
蛍光
試験したベントナイトの間で蛍光の有意な差は見られない。これは、OBAによるシートへの影響が各場合で類似しており、したがってシートの全体白色度がベントナイト白色度に基づいて変化しているということを示す(表1から演繹)。ポリシリカミクロゲルParticol BXで処理されたシートからわずかに高めの蛍光値が得られる。
【0045】
ベース白色度
表1はまた、シートのベース白色度、すなわち、OBAによって高められていない白色度を示す。図は、試験した各微粒子に関して、OBA用量の増大とともにベース白色度が低下するということを示す。これは、Tinopal用量とともにアニオン度が上昇するための、保持の低下に起因する。この実験では、共通のベントナイト添加量での白色度の差を調査するため、第一パス保持を一定に維持しなかった。保持の低下がシートのPCC含量を低下させ、それがシートのベース白色度に影響する。
【0046】
しかし、ベースシート白色度は、ベントナイト白色度がシート白色度に影響するということを示す。表1はまた、ベントナイトCシートが、ベントナイトAよりも低い、ベントナイトBよりも低い白色度を有するということを示す。ベントナイトAの使用は、Particol BXに類似した白色度を提供する。
【0047】
不透明度
ベースシート白色度に関して述べたように、OBA用量が増すにつれ、アニオン度の増大より、PCC含量は減少する。この灰分保持の低下は、シートの不透明度及び白色度に影響を及ぼす。また、表1から、OBA用量の増大とともに不透明度が低下するということが明かである。微粒子の間で不透明度の有意な差は見られない。
【0048】
シート灰分
実験で調製したシートごとにシート灰分を計測した。表1は、OBA用量の増大とともにシート灰分が減少するということを示す。これは、持続的な保持助剤用量でより高いTinopal濃度からの保持、ベースシート白色度及び不透明度の低下を立証する。図はまた、ベントナイトAにより、他のベントナイト又はParticol BXの場合よりも多くの灰分がシート中に保持されるということを示す。
【0049】
このように、結論として、少なくとも70の白色度値を有するベントナイトを使用することが、より低い白色度値の他のベントナイトを使用して形成された紙シートの白色度を改善するということがわかる。
【0050】
さらには、より低い白色度のベントナイトを使用する場合、同様なシート白色度を達成するためにより高濃度のOBAが必要であるということが容易にわかる。
【0051】
少なくとも70の白色度値のベントナイトを使用すると、同等な全体白色度及びより高い灰分保持を達成することができる。これは、同等な白色度のシートの場合で、少なくとも70の白色度値のベントナイトを使用して、より高いフィラー保持を達成することができることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性セルロース懸濁液を形成することと、前記セルロース懸濁液に保持系を加えることと、前記懸濁液をスクリーン上で水切りしてシートを形成することと、前記シートを乾燥させることとを含む、紙又は板紙の製造方法であって、
前記保持系が、少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土を含む方法。
【請求項2】
前記膨潤性粘土がベントナイトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記保持系がポリマー保持助剤をさらに含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
紙又は板紙のための光学増白剤を前記セルロース懸濁液に加える、請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
前記紙又は板紙がフィラーを含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記フィラーが、沈降炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン及びタルクからなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記保持系が、1種以上の遷移金属化合物1重量%未満を含有する膨潤性粘土を含む、請求項1〜6記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7にしたがって得ることができる紙及び板紙。
【請求項9】
少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土及びポリマー保持助剤を含む組成物。
【請求項10】
前記膨潤性粘土がベントナイトである、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
紙又は板紙の製造のための、少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土の使用。
【請求項12】
紙又は板紙の製造のための、請求項9記載の組成物の使用。
【請求項13】
少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土を含む紙又は板紙。
【請求項14】
ポリマー保持助剤をさらに含む、請求項13記載の紙又は板紙。
【請求項15】
少なくとも70のTAPPI白色度を有する膨潤性粘土を含む保持系を含むセルロース懸濁液。
【請求項16】
ポリマー保持助剤をさらに含む、請求項15記載のセルロース懸濁液。

【公開番号】特開2009−1958(P2009−1958A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−215021(P2008−215021)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願2003−507355(P2003−507355)の分割
【原出願日】平成14年6月18日(2002.6.18)
【特許番号】特許第4197735号(P4197735)
【特許公報発行日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(592006855)チバ スペシャルティ ケミカルズ ウォーター トリートメント リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Water Treatments Limited
【Fターム(参考)】