説明

紙填料組成物

ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を調製するための方法であって、この方法は、セルロースを含む繊維状基材を水性環境において無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙又は紙塗工の方法における使用に適した、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液の調製方法並びにこの水性懸濁液から作製される充填紙及び塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子材料、例えばアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム)又はカオリンは、多くの用途において幅広く使用されている。これらの用途には、製紙又は紙塗工に使用される鉱物含有組成物の製造が含まれる。紙製品において、このような填料は、典型的には、紙製品におけるその他のより高価な成分の一部と置き換えるために添加される。填料が、紙製品の物理的、機械的及び/又は光学的要件を変化させるために添加される場合もある。当然のことながら、添加可能な填料の量が多ければ多いほど、コスト削減の可能性は高くなる。しかしながら、添加する填料の量とそれに関連したコスト削減とは、最終的な紙製品の物理的、機械的及び光学的要件に対してバランスがとれていなくてはならない。このため、紙製品の物理的、機械的及び/又は光学的要件に悪影響を与えることなく高配合レベルで使用可能な紙用填料の開発が継続的に求められている。また、このような填料を経済的に調製する方法の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、紙製品の物理的、機械的及び/又は光学的性質を維持し又は改善さえしながら比較的高配合レベルで紙製品に取り込むことができる、紙製品用の代替の及び/又は改良された填料を提供しようとするものである。また、本発明は、このような填料を調製するための経済的な方法を提供しようとするものである。従って、発明者は驚くべきことに、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む填料を、経済的な方法で調製できること、及び紙製品の物理的、機械的及び/又は光学的性質を維持し又は改善さえしながら比較的高レベルで紙製品に配合できることを発見した。
【0004】
更に、本発明は、ミクロフィブリル化セルロースを工業規模で経済的に調製する問題に取り組もうとするものである。現在のセルロース系材料のミクロフィブリル化法では、出発原料及びミクロフィブリル化物の粘度が比較的高いことを一因として比較的大量のエネルギーを必要とし、工業規模でミクロフィブリル化セルロースを調製するための商業的に実現可能なプロセスは、これまで達成し難かった。
【0005】
第1の態様において、本発明は、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を調製するための方法を対象とし、この方法は、セルロースを含む繊維状基材を水性環境において無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化する工程を含む。
【0006】
第2の態様において、本発明は、第1の態様の方法で得られる、紙用填料又は紙塗工層としての使用に適した水性懸濁液を対象とする。
【0007】
第3の態様において、本発明は、紙用填料又は紙塗工層としての使用に適した、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を対象とする。
【0008】
第4の態様において、本発明は、第2及び第3の態様の水性懸濁液を含む製紙用組成物(papermaking composition)を対象とする。
【0009】
第5の態様において、本発明は、第4の態様の製紙用組成物から調製される紙製品を対象とする。
【0010】
第6の態様において、本発明は、第2、第3の態様の水性懸濁液及びその他の任意の添加剤を含む紙塗工用組成物を対象とする。
【0011】
第7の態様において、本発明は、第6の態様の紙塗工用組成物を塗工した紙製品(例えば、板紙)を対象とする。
【0012】
第8の態様において、本発明は紙製品を形成するプロセスを対象とし、本プロセスは、
(i)紙製品の形成に適したパルプの形態で、セルロースを含む繊維状基材を得て又は調製し、
(ii)工程(i)のパルプ、本発明の第2又は第3の態様による水性懸濁液及びその他の任意の添加剤から製紙用組成物を調製し、
(iii)その製紙用組成物から紙製品を形成することを含む。
【0013】
第9の態様において、本発明は、紙製品を形成するための総合プロセスを対象とし、本プロセスは、
(i)紙製品の形成に適したパルプの形態で、セルロースを含む繊維状基材を得て又は調製し、
(ii)本発明の第1の態様の方法に従ってそのセルロースを含む繊維状基材の一部をミクロフィブリル化することによって、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を調製し、
(iii)工程(i)のパルプ、工程(ii)で調製された水性懸濁液及びその他の任意の添加剤から製紙用組成物を調製し、
(iv)その製紙用組成物から紙製品を形成することを含む。
【0014】
第10の態様において、本発明は、本発明の第2及び第3の態様による水性懸濁液の、製紙用組成物における填料としての使用を対象とする。
【0015】
第11の態様において、本発明は、本発明の第2及び第3の態様による水性懸濁液の、紙塗工用組成物における使用を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の方法に従ってGCCと共に調製されたミクロフィブリル化セルロースのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
セルロースを含む繊維状基材
セルロースを含む繊維状基材は、木材、草類(例えば、サトウキビ、タケ)又は布くず(例えば、織物くず、綿、ヘンプ、亜麻)等のいずれの適切な原料由来のものでもよい。セルロースを含むこの繊維状基材はパルプの形態(すなわち、セルロース繊維の水中懸濁物)であってもよく、パルプは、いずれの適切な化学的処理、機械的処理又はこれらの組み合わせによって調製され得る。例えば、パルプは化学パルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、機械パルプ、再生パルプ、製紙ブローク、製紙廃棄物流(papermill waste stream)、製紙工場由来廃棄物(waste from a papermill)又はこれらの組み合わせになり得る。セルロースパルプは、当該分野においてカナダ標準ろ水度(Canadian standard freeness:CSF)としてcm3で報告される既定のろ水度にまで(例えば、バレービーター(Valley beater)内にて)叩解され得る及び/又は別の形でリファイニングされ得る(例えば、コニカル又はプレートリファイナーにおける加工)。CSFは、パルプ懸濁液がはける速度によって評価されるパルプのろ水度又は排水速度の値を意味する。例えば、セルロースパルプは、ミクロフィブリル化前に約10cm3以上のカナダ標準ろ水度を有し得る。セルロースパルプは、約700cm3以下、例えば約650cm3以下、約600cm3以下、約550cm3以下、約500cm3以下、約450cm3以下、約400cm3以下、約350cm3以下、約300cm3以下、約250cm3以下、約200cm3以下、約150cm3以下、約100cm3以下又は約50cm3以下のCSFを有し得る。次に、セルロースパルプを当該分野で周知の方法によって脱水し得る。例えば、パルプをスクリーンで濾過することによって、少なくとも約10%の固形分、例えば少なくとも約15%の固形分、少なくとも約20%の固形分、少なくとも約30%の固形分又は少なくとも約40%の固形分を含むウェットシートが得られる。パルプを、リファイニングしていない状態で、すなわち叩解又は脱水又は別の形でのリファイニングをすることなく利用してもよい。
【0018】
セルロースを含む繊維状基材を、乾燥状態で粉砕槽又はホモジナイザーに加えてもよい。例えば、乾燥したブロークを直接、粉砕槽に加えてもよい。次に、粉砕槽内の水性環境によって、パルプ形成が促進される。
【0019】
無機粒子材料
無機粒子材料は、例えばアルカリ土類金属炭酸塩若しくは硫酸塩(例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、石膏)、含水カンダイト(kandite)クレイ(例えばカオリン、ハロイサイト又はボールクレイ)、無水(焼成)カンダイトクレイ(例えばメタカオリン又は完全焼成カオリン)、タルク、マイカ、パーライト又は珪藻土、又は水酸化マグネシウム、又は三水和アルミニウム、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0020】
本発明の第1の態様による方法での使用が好ましい無機粒子材料は炭酸カルシウムである。以下、本発明を主に炭酸カルシウムについて、また炭酸カルシウムを加工及び/又は処理する態様との関連で説明する。本発明は、このような実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0021】
本発明で使用される粒子状炭酸カルシウムは、天然原料を粉砕することによって得られる。粉砕炭酸カルシウム(ground calcium carbonate:GCC)は、典型的には、鉱物原料(チョーク、大理石、石灰石等)を圧砕し、次に粉砕することによって得られ、続いて粒径分類工程を行うことによって望ましい微粉度を有する生成物を得てもよい。その他の技法(漂白、浮遊選鉱、磁力選鉱等)を利用して望ましい微粉度及び/又は色を有する生成物を得ることもできる。粒子状固形材料は自原的に(autogenously)(すなわち固形材料の粒子それ自体の磨滅によって)或いは粉砕対象である炭酸カルシウムとは異なる材料の粒子を含む粒子状粉砕媒体の存在下で粉砕され得る。これらのプロセスは、分散剤及び殺生物剤の存在下又は不在下で行ってもよく、分散剤及び殺生物剤はプロセスのいずれの段階で添加してもよい。
【0022】
沈降炭酸カルシウム(precipitated calcium carbonate:PCC)を、本発明における粒子状炭酸カルシウムの原料として使用し得る。また、沈降炭酸カルシウムは、当該分野のいずれの公知の方法によっても製造され得る。TAPPI Monograph Series No.30「Paper Coating Pigments」の34〜35頁には、製紙産業で使用する生成物の調製における使用に適した沈降炭酸カルシウムを調製するための3種類の主な商業的なプロセスが記載されているが、これらのプロセスは、本発明を実践する際にも使用することができる。これらの3種類のプロセスの全てにおいて、炭酸カルシウムの供給材料(石灰石等)はまず焼成されて生石灰にされ、次にこの生石灰は水中で消和されて水酸化カルシウム又は石灰乳にされる。第1のプロセスにおいては、この石灰乳を、二酸化炭素ガスで直接、炭酸塩化する。このプロセスには副生成物が出ないという利点があり、また炭酸カルシウム生成物の性質及び純度の制御が比較的容易である。第2のプロセスにおいては、石灰乳をソーダ灰と接触させて、複分解によって炭酸カルシウムの沈殿物と水酸化ナトリウムの溶液を得る。このプロセスを商業的に利用すれば、この水酸化ナトリウムを、実質的に完全に炭酸カルシウムから分離し得る。第3の主要商業的プロセスにおいては、石灰乳をまず塩化アンモニウムと接触させることによって塩化カルシウム溶液及びアンモニアガスを得る。次に、この塩化カルシウム溶液をソーダ灰と接触させて、複分解によって沈降炭酸カルシウム及び塩化ナトリウムの溶液を得る。結晶は、様々な形状及びサイズで生成可能であり、採用する特定の反応プロセスに左右される。PCC結晶の3種類の主要形態はアラゴナイト、菱面体晶及び偏三角面体であり、これらは全て、その混合物を含めて本発明における使用に適している。
【0023】
炭酸カルシウムの湿式粉砕は、炭酸カルシウムの水性懸濁液の調製を伴い、次に任意の適切な分散剤の存在下で粉砕を行う。炭酸カルシウムの湿式粉砕に関する更なる情報については、例えば欧州特許出願EP−A−614948号明細書(その内容は、参照により全て本明細書に組み込まれる)を参照することができる。
【0024】
状況によっては、その他の鉱物を少量添加してもよく、例えばカオリン、焼成カオリン、珪灰石、ボーキサイト、タルク又はマイカの1種以上が存在する場合もある。
【0025】
本発明の無機粒子材料を天然原料から得る場合、若干の鉱物質不純物が粉砕された材料を汚染する場合がある。例えば、天然の炭酸カルシウムは、その他の鉱物を伴って存在する場合がある。このため、一部の実施形態においては、無機粒子材料はある量の不純物を含む。しかしながら、一般に、本発明で使用の無機粒子材料が含有するその他の鉱物質不純物は約5%質量%未満、好ましくは約1質量%未満である。
【0026】
本発明の方法のミクロフィブリル化工程で使用される無機粒子材料は、好ましくは、粒子の少なくとも約10質量%が2μm未満の等価粒径(equivalent spherical diameter:e.s.d)を有する粒径分布、例えば粒子の少なくとも約20質量%、少なくとも約30質量%、少なくとも約40質量%、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%又は約100%が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布を有する。
【0027】
特に記載がない限り、無機粒子材料に関して本明細書で言及される粒径特性は、Micromeritics Instruments Corporation(Norcross、ジョージア州、米国。電話番号:+1 770 662 3620、ウェッブサイト:www.micromeritics.com)が提供するSedigraph 5100マシン(本明細書においてはMicromeritics Sedigraph 5100ユニットと称される)を使用して、水性媒体中に完全に分散させられた状態の粒子状材料の沈降による周知のやり方で測定される。このようなマシンによって測定がなされ、また当該分野においては「等価粒径(e.s.d)」と称される、所定のe.s.d値より小さいサイズを有する粒子の累積質量%がプロットされる。平均粒径d50は、粒子e.s.dのこのやり方で求められる値であり、d50値より小さい等価粒径を有する粒子が50質量%ある。
【0028】
或いは、記載がある場合、無機粒子材料に関して本明細書で言及される粒径特性は、レーザー光散乱の分野で利用される周知の慣用の方法によって測定されるものであり、Malvern Instruments Ltdが提供するMalvern Mastersizer Sマシンが使用される(又は、本質的に同じ結果が得られるその他の方法によって測定される)。レーザー光散乱法においては、粉末、懸濁液及びエマルジョン状の粒子のサイズを、ミー散乱の理論を応用したレーザービームの回折を利用して測定する。このようなマシンによって測定がなされ、また当該分野においては「等価粒径(e.s.d)」と称される、所定のe.s.d値より小さいサイズを有する粒子の累積体積%がプロットされる。平均粒径d50は、粒子e.s.dのこのやり方で求められる値であり、d50値より小さい等価粒径を有する粒子が50体積%ある。
【0029】
別の実施形態において、本発明の方法のミクロフィブリル化工程で使用される無機粒子材料は、好ましくは、Malvern Mastersizer Sマシンで測定した場合に、粒子の少なくとも約10体積%が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布、例えば粒子の少なくとも約20体積%、少なくとも約30体積%、少なくとも約40体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約80体積%、少なくとも約90体積%、少なくとも約95体積%又は約100体積%が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布を有する。
【0030】
特に記載がない限り、ミクロフィブリル化セルロース材料の粒径特性は、レーザー光散乱の分野で利用される周知の慣用の方法によって測定されるものであり、Malvern Instruments Ltdが提供するMalvern Mastersizer Sマシンが使用される(又は、本質的に同じ結果が得られるその他の方法によって測定される)。
【0031】
Malvern Mastersizer Sマシンを使用した、無機粒子材料とミクロフィブリル化セルロースとの混合物の粒径分布の解析の手順の詳細を以下に示す。
【0032】
本発明の第1の態様による方法で使用するための別の好ましい無機粒子材料はカオリンクレイである。以下、本明細書のこのセクションを主にカオリンについて、またカオリンを加工及び/又は処理する態様との関連で論じる。本発明は、このような実施形態に限定されると解釈されるべきではない。このため、一部の実施形態においては、カオリンを無加工の形態で使用する。
【0033】
本発明で使用されるカオリンクレイは、天然原料、すなわち原料天然カオリンクレイミネラル由来の加工済み材料になり得る。この加工カオリンクレイは、典型的には、少なくとも約50質量%のカオリナイトを含有し得る。例えば、最も商業的に加工が施されたカオリンクレイは、約75質量%より多いカオリナイトを含有し、また約90質量%より多く、場合によっては約95質量%を超えるカオリナイトを含有し得る。
【0034】
本発明で使用されるカオリンクレイは、当業者に周知の1種以上のその他のプロセス、例えば公知のリファイニング又は選鉱工程によって原料天然カオリンクレイミネラルから調製され得る。
【0035】
例えば、クレイミネラルは、還元漂白剤(ハイドロサルファイトナトリウム等)で漂白され得る。ハイドロサルファイトナトリウムを使用する場合、ハイドロサルファイトナトリウム漂白工程後、漂白したクレイミネラルを任意で脱水し、任意で洗浄し、任意で再度脱水してもよい。
【0036】
クレイミネラルを、例えば当該分野で周知のフロキュレーション、浮遊選鉱又は磁力選鉱法で処理することによって不純物を除去してもよい。或いは、本発明の第1の態様で使用のクレイミネラルは、固体又は水性懸濁液の形態の未処理のものであってよい。
【0037】
本発明で使用の粒子状カオリンクレイを調製するためのプロセスは、1つ以上の細分化工程(例えば、粉砕、ミル粉砕)を含んでもよい。粗カオリンを軽く細分化することによって、カオリンを適切に剥離する。細分化は、プラスチック(例えば、ナイロン)のビーズ若しくは顆粒、砂又はセラミック粉砕若しくはミル粉砕補助物を使用して行われ得る。周知の手順で粗粒カオリンをリファイニングすることによって不純物を除去し、物理的性質を改善し得る。カオリンクレイを、公知の粒径分類手順(例えば、篩過、遠心分離(又はその両方))で処理することによって、望ましいd50値又は粒径分布を有する粒子が得られる。
【0038】
ミクロフィブリル化プロセス
本発明の第1の態様において、紙用填料又は塗工層として使用するための組成物を調製する方法が提供され、この方法は、セルロースを含む繊維状基材を無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化する工程を含む。本方法の特定の実施形態において、ミクロフィブリル化工程は、ミクロフィブリル化剤として機能する無機粒子材料の存在下で行われる。
【0039】
ミクロフィブリル化とは、セルロースのミクロフィブリルを、個々の種又はミクロフィブリル化前のパルプの繊維より小さい集合体に分離又は部分的に分離するプロセスのことである。製紙における使用に適した典型的なセルロース繊維(すなわち、ミクロフィブリル化前のパルプ)には、数百又は数千の個々のセルロースミクロフィブリルから成るより大きな集合体が含まれる。セルロースをミクロフィブリル化することによって、特定の特徴及び性質(本明細書に記載の特徴及び性質を含むがこれらに限定されない)がミクロフィブリル化セルロース及びこのミクロフィブリル化セルロースを含む組成物に付与される。
【0040】
本発明の方法に従って調製された例示的なミクロフィブリル化セルロースを図1に示す。図1は、総乾燥質量に対して5.0%のパルプでGCC(Sedigraphで60質量%<粒径2μm)と共に調製されたミクロフィブリル化セルロース(80μmのd50を有する)のSEM写真である。媒体(Carbolite 16/20)体積濃度(media volume concentration:MVC)は50%であった。投入エネルギー量は繊維で表して500kWh/tであった。
【0041】
ミクロフィブリル化工程はいずれの適切な装置でも実行し得て、リファイナーを含むがこれに限定はされない。一実施形態において、ミクロフィブリル化工程は、粉砕槽において湿式粉砕条件下で行われる。別の実施形態において、ミクロフィブリル化工程は、ホモジナイザーにおいて行われる。これらの実施形態のそれぞれについては以下でより詳細に説明する。
【0042】
湿式粉砕
粉砕は、適切には慣用のやり方で行われる。粉砕は、粒子状粉砕媒体の存在下での磨砕プロセスであっても、或いは自生粉砕プロセス(すなわち、粉砕媒体の不在下でのプロセス)であってもよい。粉砕媒体とは、セルロースを含む繊維状基材と共粉砕される無機粒子材料以外の媒体のことである。
【0043】
粒子状粉砕媒体は、存在する場合、天然又は合成材料であってよい。粉砕媒体は、例えば、いずれの硬質鉱物、セラミック又は金属材料のボール、ビーズ又はペレットからなっていてもよい。このような材料には、例えばアルミナ、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム又は、カオリン質粘土を約1300〜約1800℃の範囲の温度で焼成することによって生成されるムライト高含有材料が含まれ得る。例えば、一部の実施形態においては、Carbolite(登録商標)粉砕媒体が好ましい。或いは、適切な粒径の天然の砂の粒子が使用され得る。
【0044】
一般に、本発明で使用するために選択される粉砕媒体のタイプ及び粒径は、粉砕対象である材料の供給懸濁液の性質(例えば、粒径)及び化学組成に左右され得る。好ましくは、粒子状粉砕媒体は、約0.1〜約6.0mmの範囲、より好ましくは約0.2〜約4.0mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む。粉砕媒体は、装入物の最高約70体積%の量で存在し得る。粉砕媒体は、装入物の少なくとも約10体積%、例えば装入物の少なくとも約20体積%、装入物の少なくとも約30体積%、装入物の少なくとも約40体積%、装入物の少なくとも約50体積%又は装入物の少なくとも約60体積%の量で存在し得る。
【0045】
粉砕は、1つ以上の段階において行われ得る。例えば、粗無機粒子材料は粉砕槽において既定の粒径分布にまで粉砕され得て、この後、セルロースを含む繊維状材料が添加され、粉砕は望ましいレベルのミクロフィブリル化が達成されるまで継続される。本発明の第1の態様に従って使用される粗無機粒子材料は、初期において、粒子の約20質量%未満が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布、例えば粒子の約15質量%未満又は約10質量%未満が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布を有し得る。別の実施形態において、本発明の第1の態様に従って使用される粗無機粒子材料は、初期において、Malvern Mastersizer Sマシンで測定した場合に、粒子の約20体積%未満が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布、例えば粒子の約15体積%未満又は約10体積%未満が2μm未満のe.s.dを有する粒径分布を有し得る。
【0046】
粗無機粒子材料は、粉砕媒体の不在下又は存在下で湿式又は乾式粉砕され得る。湿式粉砕段階の場合、粗無機粒子材料は、好ましくは、水性懸濁液中で粉砕媒体の存在下で粉砕される。このような懸濁液において、粗無機粒子材料は、好ましくは、懸濁液の約5〜約85質量%、より好ましくは懸濁液の約20〜約80質量%の量で存在し得る。最も好ましくは、粗無機粒子材料は、懸濁液の約30〜約75質量%の量で存在し得る。上述したように、粗無機粒子材料は、粒子の少なくとも約10質量%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布、例えば粒子の少なくとも約20質量%、少なくとも約30質量%、少なくとも約40質量%、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%又は約100質量%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布に粉砕され得る。この後、セルロースパルプを添加し、これら2種類の成分を共粉砕することによって、セルロースパルプの繊維をミクロフィブリル化する。別の実施形態において、粗無機粒子材料は、Malvern Mastersizer Sマシンで測定した場合に、粒子の少なくとも約10体積%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布、例えば粒子の少なくとも約20体積%、少なくとも約30体積%、少なくとも約40体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約80体積%、少なくとも約90体積%、少なくとも約95体積%又は約100体積%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布に粉砕される。この後、セルロースパルプを添加し、これら2種類の成分を共粉砕することによって、セルロースパルプの繊維をミクロフィブリル化する。
【0047】
一実施形態において、無機粒子材料の平均粒径(d50)は、共粉砕プロセス中に低下する。例えば、無機粒子材料のd50は、(Malvern Mastersizer Sマシンで測定した場合に)少なくとも約10%低下し得て、例えば、無機粒子材料のd50は、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%又は少なくとも約90%低下し得る。例えば、共粉砕前に2.5μmのd50を有し共粉砕後に1.5μmのd50を有する無機粒子材料は、40%の粒径の低下を経ている。実施形態において、無機粒子材料の平均粒径は、共粉砕プロセス中に大幅に低下しない。「大幅に低下しない」とは、無機粒子材料のd50の低下が約10%未満であることを意味し、例えば無機粒子材料のd50の低下は約5%未満である。
【0048】
セルロースを含む繊維状基材は、レーザー光散乱法によって測定した場合に約5〜約500μmのd50を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように、無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。セルロースを含む繊維状基材は、約400μm以下、例えば約300μm以下、約200μm以下、約150μm以下、約125μm以下、約100μm以下、約90μm以下、約80μm以下、約70μm以下、約60μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下又は約10μm以下のd50を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。
【0049】
セルロースを含む繊維状基材は、モード繊維粒径約0.1〜500μmを有するミクロフィブリル化セルロース及びモード無機粒子材料粒径0.25〜20μmが得られるように無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。セルロースを含む繊維状基材は、少なくとも約0.5μmのモード繊維粒径、例えば少なくとも約10μm、少なくとも約50μm、少なくとも約100μm、少なくとも約150μm、少なくとも約200μm、少なくとも約300μm又は少なくとも約400μmのモード繊維粒径を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。
【0050】
セルロースを含む繊維状基材は、Malvernで測定した場合に約10以上の繊維勾配(fiber steepness)を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように無機粒子材料の存在下でミクロフィブリル化され得る。繊維勾配(すなわち、繊維の粒径分布の勾配)は、以下の式:
勾配=100×(d30/d70
によって求められる。
【0051】
ミクロフィブリル化セルロースは、約100以下の繊維勾配を有し得る。ミクロフィブリル化セルロースは、約75以下、約50以下、約40以下又は約30以下の繊維勾配を有し得る。ミクロフィブリル化セルロースは、約20〜約50、約25〜約40、約25〜約35又は約30〜約40の繊維勾配を有し得る。
【0052】
粉砕は、適切には、粉砕槽、例えば回転ミル(例えば、ロッドミル、ボールミル、自生ミル)、撹拌ミル(例えば、SAM、IsaMill)、タワーミル、撹拌媒体デトライター(stirred media detritor:SMD)又は回転する平行粉砕プレート(このプレートの間に粉砕対象である供給原料を供給する)を備えた粉砕槽において行われる。
【0053】
一実施形態において、粉砕槽はタワーミルである。このタワーミルは、1つ以上の粉砕ゾーン上に静止ゾーンを備え得る。静止ゾーンは、タワーミルの内部の最上部に向かって位置する領域であり、ここでは粉砕が最小限にしか又は全く行われず、またミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料が入っている。静止ゾーンは、粉砕媒体の粒子がタワーミルの1つ以上の粉砕ゾーン内へと沈降する領域である。
【0054】
タワーミルは、1つ以上の粉砕ゾーン上に分級機を備え得る。ある実施形態において、この分級機は最上部に取り付けられ、また静止ゾーンに隣接する。分級機は液体サイクロンであってよい。
【0055】
タワーミルは、1つ以上の粉砕ゾーン上にスクリーンを備え得る。ある実施形態において、スクリーンは静止ゾーン及び/又は分級機に隣接して配置される。このスクリーンは、ミクロフィブリル化セルロースと無機粒子材料とを含む生成物である水性懸濁液から粉砕媒体を分離し、また粉砕媒体の沈降を強化するように寸法設計され得る。
【0056】
ある実施形態において、粉砕はプラグ流れ条件下で行われる。プラグ流れ条件下で、タワーを通る流れは、タワー全体を通して粉砕材料の混合が制限されるようなものである。これはタワーミルの長さに沿った異なる地点において、ミクロフィブリル化セルロースの微粉度が上昇するにつれて水性環境の粘度が変化することを意味する。このため、事実上、タワーミル内の粉砕領域は、特徴的な粘度を有する1つ以上の粉砕ゾーンを含むとみなすことが可能である。当業者なら、隣接する粉砕ゾーン間において粘度にはっきりとした境界はないことがわかる。
【0057】
ある実施形態においては、1つ以上の粉砕ゾーンの上の静止ゾーン又は分級機又はスクリーンに近接したミルの最上部で水を加えることによって、ミル内のこれらのゾーンでのミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液の粘度を低下させる。ミルにおけるこの地点で生成物であるミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を希釈することによって、静止ゾーン及び/又は分級機及び/又はスクリーンへの粉砕媒体のキャリーオーバーがより良好に防止されることが判明している。更に、タワーでの混合が制限されることからタワー下での高固形分での加工が可能になり、また最上部での希釈を、希釈水がタワーを下って1つ以上の粉砕ゾーン内に逆流するのを抑えて行うことが可能になる。ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む生成物である水性懸濁液の粘度を低下させるのに効果的ないずれの適切な量の水も添加され得る。この水は、粉砕プロセス中に連続的に又は一定の間隔で又は不定期な間隔で添加され得る。
【0058】
別の実施形態において、水は1つ以上の粉砕ゾーンに1つ以上の注水点を経由して添加され得て、この注水点はタワーミルの長さに沿って位置決めされている。或いは、各注水点は1つ以上の粉砕ゾーンに対応した位置に配置されている。有利には、タワーに沿った様々な位置での注水能によって、ミルに沿ったいずれの又は全ての位置での粉砕条件の更なる調節が可能になる。
【0059】
タワーミルは、一連のインペラローターディスクを長さに沿って備えた垂直インペラシャフト(vertical impeller shaft)を備え得る。インペラローターディスクの作動によって、ミル全体にわたって一連の個別の粉砕ゾーンが形成される。
【0060】
別の実施形態において、粉砕はスクリーン粉砕機(screened grinder)、好ましくは撹拌媒体デトライターにおいて行われる。スクリーン粉砕機は、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備え得て、例えば、この1つ以上のスクリーンは、少なくとも約300μm、少なくとも約350μm、少なくとも約400μm、少なくとも約450μm、少なくとも約500μm、少なくとも約550μm、少なくとも約600μm、少なくとも約650μm、少なくとも約700μm、少なくとも約750μm、少なくとも約800μm、少なくとも約850μm、少なくとも約900μm又は少なくとも約1000μmの公称開口サイズを有し得る。
【0061】
すぐ上の段落に記載のスクリーンサイズは、上記のタワーミル実施形態に適用可能である。
【0062】
上述したように、粉砕は、粉砕媒体の存在下で行われ得る。ある実施形態において、粉砕媒体は、約1〜約6mm、例えば約2mm、約3mm、約4mm又は約5mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む粗い媒体である。
【0063】
別の実施形態において、粉砕媒体は、少なくとも約2.5、例えば少なくとも約3、少なくとも約3.5、少なくとも約4.0、少なくとも約4.5、少なくとも約5.0、少なくとも約5.5又は少なくとも約6.0の比重を有する。
【0064】
別の実施形態において、粉砕媒体は、約1〜約6mmの範囲の平均直径を有する粒子を含み、また少なくとも約2.5の比重を有する。
【0065】
別の実施形態において、粉砕媒体は、約3mmの平均直径及び約2.7の比重を有する粒子を含む。
【0066】
上述したように、粉砕媒体は、装入物の最高約70体積%の量で存在し得る。粉砕媒体は、装入物の少なくとも約10体積%、例えば装入物の少なくとも約20体積%、装入物の少なくとも約30体積%、装入物の少なくとも約40体積%、装入物の少なくとも約50体積%又は装入物の少なくとも約60体積%の量で存在し得る。
【0067】
一実施形態において、粉砕媒体は、装入物の約50体積%の量で存在する。
【0068】
「装入物(charge)」とは、粉砕槽に供給される供給原料である組成物を意味する。装入物には、水、粉砕媒体、セルロースを含む繊維状基材、無機粒子材料及び本明細書に記載されるようなその他の任意の添加剤が含まれる。
【0069】
比較的粗い及び/又は高密度な媒体の使用には、改善された(すなわちより速い)沈降速度、静止ゾーン及び/又は分級機及び/又はスクリーンを通しての媒体のキャリーオーバーの軽減という利点がある。
【0070】
比較的粗い粉砕媒体の使用における更なる利点は、粉砕プロセス中に無機粒子材料の平均粒径(d50)が大幅に低下しないことから、粉砕システムに投入されるエネルギーが主にセルロースを含む繊維状基材のミクロフィブリル化に費やされることである。
【0071】
比較的粗いスクリーンを使用する更なる利点は、ミクロフィブリル化工程で比較的粗い又は高密度の粉砕媒体を使用可能なことである。加えて、比較的粗いスクリーン(すなわち、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有する)の使用によって、比較的高固形分の生成物の加工及び粉砕機からの取り出しが可能になり、これによって比較的高固形分の供給原料(セルロースを含む繊維状基材及び無機粒子材料を含む)を採算の取れるプロセスで加工することが可能になる。後述するように、初期固形分含有量が高い供給原料がエネルギー効率について望ましいことが判明している。更に、低固形分で(所定のエネルギーで)生成された生成物はより粗い粒径分布を有することも判明している。
【0072】
前出の「背景技術」のセクションで説明したように、本発明は、ミクロフィブリル化セルロースを経済的に工業規模で調製する問題に取り組もうとするものである。
【0073】
従って、一実施形態において、セルロースを含む繊維状基材及び無機粒子材料は、水性環境において少なくとも約4質量%の初期固形分含有量で存在し、このうちの少なくとも約2質量%がセルロースを含む繊維状基材である。初期固形分含有量は、少なくとも約10質量%、少なくとも約20質量%、少なくとも約30質量%又は少なくとも約40質量%であり得る。初期固形分含有量の少なくとも約5質量%がセルロースを含む繊維状基材であり得て、例えば初期固形分含有量の少なくとも約10質量%、少なくとも約15質量%又は少なくとも約20質量%が、セルロースを含む繊維状基材であり得る。
【0074】
別の実施形態において、粉砕は粉砕槽のカスケードにおいて行われ、その1つ以上の粉砕槽が1つ以上の粉砕ゾーンを備え得る。例えば、セルロースを含む繊維状基材及び無機粒子材料は、2つ以上の粉砕槽のカスケード、例えば3つ以上の粉砕槽のカスケード、4つ以上の粉砕槽のカスケード、5つ以上の粉砕槽のカスケード、6つ以上の粉砕槽のカスケード、7つ以上の粉砕槽のカスケード、8つ以上の粉砕槽のカスケード、9つ以上の直列の粉砕槽のカスケード又は最高10個の粉砕槽を含むカスケードにおいて粉砕され得る。粉砕槽のカスケードは、直列又は並列又は直列と並列との組み合わせで作動可能に連結され得る。カスケードを構成する粉砕槽の1つ以上からの産出物及び/又は粉砕槽の1つ以上への投入物は、1つ以上の篩過工程及び/又は1つ以上の分級工程に供され得る。
【0075】
ミクロフィブリル化プロセスに費やされる総エネルギーは、カスケードを構成する粉砕槽のそれぞれに均等に分配され得る。或いは、投入エネルギー量は、カスケードを構成する粉砕槽の一部又は全てにおいて異なり得る。
【0076】
当業者なら、1槽あたりの投入エネルギーが、各槽においてミクロフィブリル化されている繊維状基材の量、任意では各槽における粉砕速度、各槽における粉砕時間、各槽における粉砕媒体のタイプ、無機粒子材料のタイプ及び量に応じてカスケードを構成する槽間で異なり得ることがわかる。粉砕条件を、カスケードを構成する槽毎に変化させることによって、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料の両方の粒径分布を制御し得る。例えば、粉砕媒体サイズを、カスケードを構成する連続する槽間で変化させることによって、無機粒子材料の粉砕を軽減し、またセルロースを含む繊維状基材の粉砕をターゲットにし得る。
【0077】
ある実施形態において、粉砕は閉回路で行われる。別の実施形態において、粉砕は開回路で行われる。粉砕は、バッチモードで行われ得る。粉砕は、再循環バッチモードで行われ得る。
【0078】
上述したように、粉砕回路は予備粉砕工程を含み得て、この予備粉砕工程において粗無機粒子は粉砕槽において既定の粒径分布にまで粉砕され、その後、セルロースを含む繊維状材料がこの予備粉砕された無機粒子材料に加えられ、粉砕は、望ましいレベルのミクロフィブリル化が得られるまで同一又は異なる粉砕槽において継続される。
【0079】
粉砕対象である材料の懸濁液の粘度は比較的高くなり得ることから、好ましくは、適切な分散剤を粉砕前に懸濁液に添加し得る。この分散剤は、例えば水溶性縮合リン酸塩、ポリケイ酸若しくはその塩又は高分子電解質、例えば80000以下の数平均分子量を有するポリ(アクリル酸)若しくはポリ(メタクリル酸)の水溶性塩であり得る。使用される分散剤の量は一般に、乾燥無機粒子固形材料の質量に対して0.1〜2.0質量%の範囲内にある。懸濁液は、4〜100℃の範囲の温度で適切に粉砕され得る。
【0080】
ミクロフィブリル化工程中に添加され得るその他の添加剤には、カルボキシメチルセルロース、両性カルボキシメチルセルロース、酸化剤、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、TEMPO誘導体及び木材分解酵素が含まれる。
【0081】
粉砕対象である材料の懸濁液のpHは約7以上(すなわち、アルカリ性)であってよく、例えば、懸濁液のpHは約8、約9、約10又は約11であってよい。粉砕対象である材料の懸濁液のpHは約7未満(すなわち、酸性)であってよく、例えば、懸濁液のpHは約6、約5、約4又は約3であってよい。粉砕対象である材料の懸濁液のpHは、適切な量の酸又は塩基の添加によって調節され得る。適切な塩基には、アルカリ金属水酸化物、例えばNaOHが含まれる。その他の適切な塩基は炭酸ナトリウム及びアンモニアである。適切な酸には無機酸(塩酸、硫酸等)又は有機酸が含まれる。例示的な酸はオルトリン酸である。
【0082】
共粉砕対象である混合物中の無機粒子材料及びセルロースパルプの量は、無機粒子材料の乾燥質量とパルプ中の乾燥繊維の量に基づいて約99.5:0.5〜約0.5:99:5の比で変化し得て、例えば無機粒子材料の乾燥質量とパルプ中の乾燥繊維の量に基づいて約99.5:0.5〜約50:50の比である。例えば、無機粒子材料と乾燥繊維の量の比は、約99.5:0.5〜約70:30になり得る。ある実施形態において、無機粒子材料対乾燥繊維比は約80:20、例えば約85:15、約90:10、約91:9、約92:8、約93:7、約94:6、約95:5、約96:4、約97:3、約98:2又は約99:1である。好ましい実施形態において、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は約95:5である。別の好ましい実施形態において、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は約90:10である。別の好ましい実施形態において、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は約85:15である。別の好ましい実施形態において、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は約80:20である。
【0083】
望ましい水性懸濁組成物を得るための、典型的な粉砕プロセスにおける総投入エネルギー量は、典型的には、無機粒子填料の総乾燥質量に基づいて約100〜1500kWht-1であってよい。総投入エネルギー量は、約1000kWht-1未満、例えば約800kWht-1未満、約600kWht-1未満、約500kWht-1未満、約400kWht-1未満、約300kWht-1未満又は約200kWht-1未満であってよい。このため、本発明の発明者は、驚くべきことに、無機粒子材料の存在下で共粉砕すると、セルロースパルプを比較的低投入エネルギー量でミクロフィブリル化することができることを発見した。以下で明らかになるように、セルロースを含む繊維状基材における乾燥繊維1トンあたりの総投入エネルギー量は約10000kWht-1未満、例えば約9000kWht-1未満、約8000kWht-1未満、約7000kWht-1未満、約6000kWht-1未満、約5000kWht-1未満、例えば約4000kWht-1未満、約3000kWht-1未満、約2000kWht-1未満、約1500kWht-1未満、約1200kWht-1未満、約1000kWht-1未満又は約800kWht-1未満になる。総投入エネルギー量は、ミクロフィブリル化されている繊維状基材中の乾燥繊維の量、また任意で粉砕速度、粉砕時間に応じて変動する。
【0084】
均質化
セルロースを含む繊維状基材のミクロフィブリル化は、湿潤条件下で無機粒子材料の存在下、セルロースパルプと無機粒子材料との混合物に加圧し(例えば、圧力約500バールまで)、次により低い圧力のゾーンに送る方法によって行われ得る。混合物を低圧ゾーンに送る速度は十分に速く、また低圧ゾーンの圧力は、セルロース繊維のミクロフィブリル化を引き起こすに十分な低さである。例えば、狭い入口オリフィスとそれよりずっと広い出口オリフィスとを有する環状開口部に混合物を押し込むことによって圧力を低下させ得る。混合物が加速して広い容積内(すなわち、低圧ゾーン)に進入する際の急激な圧力低下によってキャビテーションが誘発され、これがミクロフィブリル化を引き起こす。ある実施形態において、セルロースを含む繊維状基材のミクロフィブリル化は、ホモジナイザーにおいて湿潤条件下、無機粒子材料の存在下で行われ得る。ホモジナイザーにおいて、セルロースパルプ/無機粒子材料混合物は加圧され(例えば、圧力約500バールまで)、狭いノズル又はオリフィスに押し込まれる。この混合物は、約100〜約1000バールの圧力、例えば300バール以上、約500バール以上、約200バール以上、約700バール以上の圧力に加圧され得る。均質化によって繊維は高せん断力にさらされることから、加圧されたセルロースパルプがノズル又はオリフィスから出る際に、キャビテーションがパルプ中のセルロース繊維のミクロフィブリル化を引き起こす。更に水を加えることによって、ホモジナイザー全体にわたって懸濁液の流動性が改善され得る。ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む得られた水性懸濁液をホモジナイザーの注入口に戻すことによって、ホモジナイザーを複数回通過させてもよい。好ましい実施形態において、無機粒子材料は天然で板状の鉱物(カオリン等)である。このため、均質化によってセルロースパルプのミクロフィブリル化が促進されるだけではなく、この板状粒子材料の剥離が促進される。
【0085】
カオリン等の板状粒子材料は、少なくとも約10、例えば少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90又は少なくとも約100の形状係数を有すると理解される。ここで言う形状係数とは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5576617号明細書に記載の電気伝導率法、装置及び式を使用して測定される、様々なサイズ及び形状の粒子群のための粒径対粒厚比の尺度である。
【0086】
カオリン等の板状無機粒子材料の懸濁液を、ホモジナイザーにおいて、セルロースを含む繊維状基材の不在下で既定の粒径分布にまで処理してよい。その後、セルロースを含む繊維状材料が無機粒子材料の水性スラリーに添加され、この混合懸濁液がホモジナイザーにおいて上述のようにして加工される。均質化プロセスは、ホモジナイザー内を1回以上通過させることを含め、望ましいレベルのミクロフィブリル化が得られるまで継続される。同様に、板状無機粒子材料を粉砕機において既定の粒径分布にまで処理し、次にセルロースを含む繊維状材料と混合し、続いてホモジナイザーにおいて加工し得る。例示的なホモジナイザーはManton Gaulin(APV)ホモジナイザーである。
【0087】
ミクロフィブリル化工程を行った後、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を篩過することによって、特定のサイズより大きい繊維及び粉砕媒体を除去し得る。例えば、懸濁液を、選択された公称開口サイズを有する篩を使用した篩過に供することによって、この篩を通過しない繊維を除去することが可能である。公称開口サイズとは、矩形の開口部の対向する辺の公称中心距離又は円形の開口部の公称直径を意味する。篩は、公称開口サイズ150μm、例えば公称開口サイズ125μm、106μm、90μm、74μm、63μm、53μm、45μm又は38μmを有するBSS篩(BS 1796に準拠)であり得る。一実施形態において、水性懸濁液は、公称開口サイズ125μmを有するBSS篩を使用して篩過される。次に、水性懸濁液は任意で脱水され得る。
【0088】
水性懸濁液
上記の方法に従って調製された本発明の水性懸濁液は、製紙又は紙塗工の方法における使用に適している。
【0089】
従って、本発明は、ミクロフィブリル化セルロース、無機粒子材料及びその他の任意の添加剤を含む、これらから成る又は本質的にこれらから成る水性懸濁液を対象とする。この水性懸濁液は、製紙又は紙塗工の方法における使用に適している。その他の任意の添加剤には、分散剤、殺生物剤、懸濁助剤、塩及びその他の添加剤、例えばでんぷん、カルボキシメチルセルロース、ポリマーが含まれ、これらは粉砕中又は粉砕後の鉱物粒子と繊維との相互作用を促進し得る。
【0090】
無機粒子材料は、粒子の少なくとも約10質量%、例えば少なくとも約20質量%、例えば少なくとも約30質量%、例えば少なくとも約40質量%、例えば少なくとも約50質量%、例えば少なくとも約60質量%、例えば少なくとも約70質量%、例えば少なくとも約80質量%、例えば少なくとも約90質量%、例えば少なくとも約95質量%又は例えば約100%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布を有し得る。
【0091】
別の実施形態において、無機粒子材料は、Malvern Mastersizer Sマシンで測定した場合に、粒子の少なくとも約10体積%、例えば少なくとも約20体積%、例えば少なくとも約30体積%、例えば少なくとも約40体積%、例えば少なくとも約50体積%、例えば少なくとも約60体積%、例えば少なくとも約70体積%、例えば少なくとも約80体積%、例えば少なくとも約90体積%、例えば少なくとも約95体積%又は例えば約100体積%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布を有し得る。
【0092】
粉砕対象である混合物中の無機粒子材料及びセルロースパルプの量は、無機粒子材料と乾燥質量パルプ中の乾燥繊維の量に基づいて約99.5:0.5〜約0.5:99:5の比で変化し得て、例えば無機粒子材料と乾燥質量パルプ中の乾燥繊維の量に基づいて約99.5:0.5〜約50:50の比である。例えば、無機粒子材料と乾燥繊維の量の比は、約99.5:0.5〜約70:30になり得る。ある実施形態において、無機粒子材料対乾燥繊維比は約80:20、例えば約85:15、約90:10、約91:9、約92:8、約93:7、約94:6、約95:5、約96:4、約97:3、約98:2又は約99:1である。好ましい実施形態において、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は約95:5である。別の好ましい実施形態において、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は約90:10である。別の好ましい実施形態において、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は約85:15である。別の好ましい実施形態において、無機粒子材料対乾燥繊維質量比は約80:20である。
【0093】
ある実施形態において、組成物は、公称開口サイズ150μm、例えば公称開口サイズ125μm、106μm、90μm、74μm、63μm、53μm、45μm又は38μmを有するBSS篩(BS 1796に準拠)を通過するには大きすぎる繊維を含まない。一実施形態において、水性懸濁液は、公称開口サイズ125μmを有するBSS篩を使用して篩過される。
【0094】
従って、粉砕又は均質化後の懸濁液を処理して選択されたサイズより大きい繊維を除去すると、粉砕又は均質化後の水性懸濁液中のミクロフィブリル化セルロースの量(すなわち、質量%)がパルプ中の乾燥繊維の量より少なくなることがわかる。このため、粉砕機又はホモジナイザーに供給されるパルプ及び無機粒子材料の相対量を、選択されたサイズより大きい繊維を除去した後の水性懸濁液に必要とされるミクロフィブリル化セルロース量に応じて調節可能である。
【0095】
ある実施形態において、無機粒子材料はアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム)である。無機粒子材料は、粉砕炭酸カルシウム(GCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)又はGCCとPCCとの混合物であり得る。別の実施形態において、無機粒子材料は天然で板状の鉱物(例えば、カオリン)である。無機粒子材料は、カオリンと炭酸カルシウムとの混合物、例えばカオリンとGCCとの混合物、カオリンとPCCとの混合物又はカオリンとGCCとPCCとの混合物であり得る。
【0096】
別の実施形態においては、水性懸濁液を処理して少なくとも一部又は実質的に全ての水を除去することによって、部分的に乾燥させた又は本質的に完全に乾燥させた生成物を生成する。例えば、水性懸濁液中の少なくとも約10体積%の水を水性懸濁液から除去し得て、例えば水性懸濁液中の少なくとも約20体積%、少なくとも約30体積%、少なくとも約40体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約80体積%、少なくとも約90体積%、少なくとも約100体積%の水を除去し得る。いずれの適切な技法を使用しても水を水性懸濁液から除去することが可能であり、例えば加圧下若しくは非加圧下での重力若しくは真空排水、蒸発、ろ過又はこれらの技法の組み合わせが含まれる。この部分的に乾燥された又は本質的に完全に乾燥された生成物は、ミクロフィブリル化セルロース、無機粒子材料及び乾燥前に水性懸濁液に添加され得るその他の任意の添加剤を含む。この部分的に乾燥された又は本質的に完全に乾燥された生成物は保管又は販売用に包装され得る。本明細書に記載されるように、この部分的に乾燥された又は本質的に完全に乾燥された生成物は任意で再水和され、製紙用組成物及びその他の紙製品に取り込まれ得る。
【0097】
紙製品及び当該紙製品の製造プロセス
ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を製紙用組成物に取り込むことが可能であり、取り込んだものを今度は紙製品の調製に使用可能である。本発明との関連で使用される用語「紙製品」とは、全ての形態の紙を意味すると理解されるべきであり、厚紙、例えば白板紙、ライナ、段ボール、板紙、コートボール紙等が含まれる。本発明に従って形成され得る様々なタイプの塗工紙又は非塗工紙があり、本、雑誌、新聞等、また事務用紙に適した紙が含まれる。紙は必要に応じてカレンダリング又はスーパーカレンダリングされる。例えば、スーパーカレンダリングされたグラビア印刷及びオフセット印刷用の雑誌用紙が、本発明の方法に従って形成され得る。軽量塗工(light weight coating:LWC)、中量塗工(medium weight coating:MWC)又は機械仕上げ顔料塗工(machine finished pigmentisation:MFP)に適した紙もまた、本発明の方法に従って形成され得る。食品包装等に適したバリア特性を有する塗工紙及び厚紙もまた、本発明の方法に従って形成され得る。
【0098】
典型的な製紙プロセスにおいて、セルロース含有パルプは、当該分野で周知のいずれの適切な化学的又は機械的処理又はこれらの組み合わせによって調製される。パルプは、木材、草類(例えば、サトウキビ、タケ)又は布くず(例えば、織物くず、綿、ヘンプ、亜麻)等のいずれの適切な原料由来でもよい。パルプを、当業者に周知のプロセスに従って漂白してもよく、本発明における使用に適したそれらのプロセスは速やかに明らかになる。漂白されたセルロースパルプは、(当該分野においてカナダ標準ろ水度(CSF)としてcm3で報告される)既定のろ水度にまで叩解、リファイニング又はその両方を施され得る。次に、適切な紙料を、漂白及び叩解したパルプから調製する。
【0099】
本発明の製紙用組成物は典型的には、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料の水性懸濁液に加えて、紙料及び当該分野で公知のその他の慣用の添加剤を含む。本発明の製紙用組成物は、製紙用組成物の総乾燥成分量に対して、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液由来の無機粒子材料を最高約50質量%含み得る。例えば、製紙用組成物は、製紙用組成物の総乾燥成分量に対して、少なくとも約2質量%、少なくとも約5質量%、少なくとも約10質量%、少なくとも約15質量%、少なくとも約20質量%、少なくとも約25質量%、少なくとも約30質量%、少なくとも約35質量%、少なくとも約40質量%、少なくとも約45質量%、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%の、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液由来の無機粒子材料を含み得る。ミクロフィブリル化セルロース材料は、約10より大きい繊維勾配、例えば約20〜約50、約25〜約40、約25〜35又は約30〜約40の繊維勾配を有し得る。製紙用組成物は、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液の乾燥質量に対して、非イオン性、カチオン性若しくはアニオン性歩留向上剤又は微粒子歩留向上系も約0.1〜2質量%の範囲の量で含有し得る。製紙用組成物は、例えば長鎖アルキルケテンダイマー、ワックスエマルジョン又はコハク酸誘導体であってよいサイズ剤も含有し得る。製紙用組成物は、染料及び/又は蛍光増白剤も含有し得る。製紙用組成物は、でんぷん、エピクロロヒドリンコポリマー等の乾燥及び湿潤強度補助剤も含み得る。
【0100】
上記の第8の態様に従って、本発明は紙製品を形成するプロセスを対象とし、このプロセスは、(i)紙製品の形成に適したパルプの形態で、セルロースを含む繊維状基材を得て又は調製し、(ii)工程(i)のパルプ、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む本発明の水性懸濁液並びにその他の任意の添加剤(例えば、歩留向上剤、上述のものといったその他の添加剤)から製紙用組成物を調製し、(iii)この製紙用組成物から紙製品を形成することを含む。上述したように、パルプ形成の工程を、セルロースを含む繊維状基材を乾燥した状態、例えば乾燥したブローク又は紙屑の形態で粉砕槽に直接加えることによって、粉砕槽又はホモジナイザー内で行い得る。そうすると、粉砕槽又はホモジナイザー内の水性環境によって、パルプ形成が促進される。
【0101】
一実施形態において、追加の填料成分(すなわち、セルロースを含む繊維状基材と共に共粉砕される無機粒子材料以外の填料成分)を、工程(ii)で調製した製紙用組成物に添加可能である。例示的な填料成分はPCC、GCC、カオリン又はこれらの混合物である。例示的なPCCは偏三角面体(scalenohedral)PCCである。ある実施形態において、製紙用組成物中の無機粒子材料対追加填料成分質量比は、約1:1〜約1:30、例えば約1:1〜約1:20、例えば約1:1〜約1:15、例えば約1:1〜約1:10、例えば約1:1〜約1:7、例えば約1:3〜約1:6、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4又は約1:5である。このような製紙用組成物から形成された紙製品は、無機粒子材料だけ(例えば、PCC)を填料として含む紙製品より高い強度を示し得る。このような製紙用組成物から形成された紙製品は、無機粒子材料とセルロースを含む繊維状基材とが別々に調製(粉砕)され、これらを混合することによって製紙用組成物を生成した場合の紙製品より高い強度を示し得る。同様に、本発明の製紙用組成物から調製された紙製品は、無機粒子材料の量が少ない紙製品に匹敵する強度を示し得る。すなわち、紙製品を、本発明による製紙用組成物から、強度を失うことなく高い填料配合量で調製することが可能である。
【0102】
製紙用組成物からの最終的な紙製品の形成における工程は慣用的なものであり、また当該分野において周知である。また一般に、形成される紙のタイプに応じて、ターゲットとする坪量を有する紙シートの形成を含む。
【0103】
本発明の方法を通じて達成可能な更なる経済的な利点は、水性懸濁液を調製するためのセルロース基材を、製紙用組成物及び最終的な紙製品を調製するために形成された同じセルロースパルプ由来のものとすることが可能な点である。このため、上記の第9の態様に従って、本発明は、紙製品を形成するための総合プロセスを対象とし、このプロセスは、(i)紙製品の形成に適したパルプの形態で、セルロースを含む繊維状基材を得て又は調製し、(ii)本発明の第1の態様に従ってこのセルロースを含む繊維状基材の一部をミクロフィブリル化することによって、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を調製し、(iii)工程(i)のパルプ、工程(ii)で調製された水性懸濁液及びその他の任意の添加剤から製紙用組成物を調製し、(iv)その製紙用組成物から紙製品を形成することを含む。
【0104】
従って、水性懸濁液を調製するためのセルロース基材は既に製紙用組成物を作製することを目的として調製済であることから、水性懸濁液を形成する工程は必ずしも、セルロースを含む繊維状基材を調製する別の工程を必要としない。
【0105】
本発明の水性懸濁液を使用して調製された紙製品は、驚くべきことに、改善された物理的性質及び機械的性質を示し、また同時に無機粒子材料を比較的高配合レベルで取り込むことを可能にすることが判明している。このため、比較的低コストで質が向上した紙を調製可能である。例えば、本発明の水性懸濁液を含む製紙用組成物から調製された紙製品は、ミクロフィブリル化セルロースを全く含有していない紙製品よりも改善された無機粒子材料填料のリテンションを示すことが判明している。本発明の水性懸濁液を含む製紙用組成物から調製された紙製品はまた、改善された破裂強度及び引張強度を示すことが判明している。更に、ミクロフィブリル化セルロースの取り込みによって、同じ量の填料を含むがミクロフィブリル化セルロースを含まない紙より空隙率が低下することが判明している。このことは、高填料配合レベルが一般に比較的高い空隙率に関連しており、印刷適性に悪影響をもたらすことから、有利である。
【0106】
紙塗工用組成物及び塗工プロセス
本発明の水性懸濁液は、更に添加剤を添加することなく塗工用組成物として使用可能である。しかしながら、任意で、少量の増粘剤(カルボキシメチルセルロース、アルカリ膨潤性アクリル性増粘剤、会合性増粘剤等)を添加し得る。
【0107】
本発明の塗工用組成物は、要望に応じて1種以上の任意の追加成分を含有し得る。このような追加成分は(存在する場合)、紙塗工用組成物のための公知の添加剤から適切に選択される。これらの任意の添加剤の一部によって、塗工用組成物における2つ以上の機能が付与され得る。公知の種類の任意の添加剤の例は以下の通りである。
【0108】
(a)1種以上の追加の顔料:本明細書に記載の組成物は、紙塗工用組成物において唯一の顔料として使用可能である。或いは、互いに組み合わせて又はその他の公知の顔料と共に使用してもよく、例えば硫酸カルシウム、サテンホワイト及びいわゆる「プラスチック顔料」が挙げられる。顔料の混合物を使用する場合、総顔料固形分は、好ましくは、塗工用組成物の乾燥成分の総質量の少なくとも約75質量%の量で組成物中に存在する。
【0109】
(b)1種以上の結合剤又は共結合剤(cobinding agent):例えば、任意でカルボキシル化され得るラテックス。スチレン/ブタジエンゴムラテックス、アクリルポリマーラテックス、ポリビニルアセテートラテックス、スチレンアクリルコポリマーラテックス、でんぷん誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール及びタンパク質が含まれる。
【0110】
(c)1種以上の架橋剤:例えば、最高約5質量%のレベル。例えば、グリオキサール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アンモニウムジルコニウムカーボネート。1種以上の乾燥又は湿潤紙むけ改善剤:例えば、最高約2質量%のレベル。例えば、メラミン樹脂、ポリエチレンエマルジョン、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリアミド、ステアリン酸カルシウム、スチレン/無水マレイン酸その他。1種以上の乾燥又は湿潤耐摩擦/摩耗性改善剤:例えば、最高約2質量%のレベル。例えば、グリオキサール系樹脂、酸化ポリエチレン、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリエチレンワックス、ステアリン酸カルシウムその他。1種以上の耐水性改善剤:例えば、最高約2質量%のレベル。例えば、酸化ポリエチレン、ケトン樹脂、アニオン性ラテックス、ポリウレタン、SMA、グリオキサール、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリアミド、グリオキサール、ステアレート及びこの機能のためのその他の市販の材料。
【0111】
(d)1種以上の保水性改善剤:例えば、最高約2質量%のレベル。例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、PVOH(ポリビニルアルコール)、でんぷん、タンパク質、ポリアクリレート、ゴム、アルギネート、ポリアクリルアミド/ベントナイト及びこのような用途のために市販されているその他の製品。
【0112】
(e)1種以上の粘度調整剤及び/又は増粘剤:例えば、最高約2質量%のレベル。例えば、アクリル酸会合性増粘剤、ポリアクリレート、エマルジョンコポリマー、ジシアナミド、トリオール、ポリオキシエチレンエーテル、尿素、硫酸化ひまし油、ポリビニルピロリドン、CMC(カルボキシメチルセルロース、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ケイ酸ナトリウム、アクリル酸コポリマー、HMC(ヒドロキシメチルセルロース)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)その他。
【0113】
(f)1種以上の滑性/カレンダリング改善剤:例えば、最高約2質量%のレベル。例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸亜鉛、ワックスエマルジョン、ワックス、アルキルケテンダイマー、グリコール。1種以上のグロスインキホールドアウト剤:例えば、最高約2質量%のレベル。例えば、酸化ポリエチレン、ポリエチレンエマルジョン、ワックス、カゼイン、グアーガム、CMC、HMC、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウムその他。
【0114】
(g)1種以上の分散剤:分散剤は、十分な量で存在する場合、粒子状無機材料の粒子に作用することによって、通常の加工要件に従って、粒子のフロキュレーション又は凝集を防止する又は望ましいレベルにまで効果的に制限することができる化学的添加剤である。分散剤は最高約1質量%のレベルで存在し得て、例えば高分子電解質、例えばポリアクリレート、ポリアクリレート種を含有するコポリマー、特にはポリアクリレート塩(例えば、ナトリウム、アルミニウム、任意で第II族との金属塩)、ヘキサメタリン酸ナトリウム、非イオン性ポリオール、ポリリン酸、縮合リン酸ナトリウム、非イオン性界面活性剤、アルカノールアミン及びこの機能のために一般に使用されるその他の試薬を含む。分散剤は、例えば、無機粒子材料の加工及び粉砕に一般的に使用される慣用の分散剤材料から選択され得る。このような分散剤は、当業者に周知である。これらは一般に、アニオン種を供給可能な水溶性の塩であり、有効量では無機粒子の表面に吸着可能であり、これによって粒子の凝集を阻害する。非溶媒和塩は、適切には、ナトリウム等のアルカリ金属カチオンを含む。場合によっては、水性懸濁液を若干アルカリ性にすることによって溶媒和を支援し得る。適切な分散剤の例には、水溶性縮合リン酸塩、例えばポリメタリン酸塩(ナトリウム塩の一般形態:(NaPO3x)、例えばメタリン酸四ナトリウム、いわゆる「ヘキサメタリン酸ナトリウム」(グラハム塩)、ポリケイ酸の水溶性塩、高分子電解質、適切には重量平均分子量約20000未満を有するアクリル酸又はメタクリル酸のホモポリマー若しくはコポリマーの塩又はアクリル酸のその他の誘導体のポリマーの塩が含まれる。ヘキサメタリン酸ナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウム(後者は、適切には約1500〜約10000の範囲の重量平均分子量を有する)が特に好ましい。
【0115】
(h)1種以上の消泡剤/脱泡剤:例えば、最高約1質量%のレベル。例えば、界面活性剤のブレンド物、トリブチルホスフェート、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル+脂肪アルコール、脂肪酸石鹸、シリコーンエマルジョン、その他のシリコーン含有組成物、鉱物油中のワックス及び無機粒子、乳化炭化水素のブレンド物並びにこの機能を果たす市販のその他の化合物。
【0116】
(i)1種以上の蛍光増白剤(optical brightening agent:OBA)及び蛍光漂白剤(fluorescent whitening agent:FWA):例えば、最高約1質量%のレベル。例えば、スチルベン誘導体。
【0117】
(j)1種以上の染料:例えば、最高約0.5質量%のレベル。
【0118】
(k)1種以上の殺生物剤/腐敗抑制剤(spoilage control agent):例えば、最高約1質量%のレベル。例えば酸化殺生物剤(例えば塩素ガス、二酸化塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、水素、過酸化物、過酢酸酸化物(peracetic oxide)、臭化アンモニウム/次亜塩素酸ナトリウム)、非酸化殺生物剤(例えばGLUT(グルタルアルデヒド、CAS No.90045−36−6)、ISO(CIT/MIT)(イソチアゾリノン、CAS No.55956−84−9&96118−96−6)、ISO(BIT/MIT)(イソチアゾリノン)、ISO(BIT)(イソチアゾリノン、CAS No.2634−33−5)、DBNPA、BNPD(ブロノポール)、NaOPP、カルバメート、チオン(ダゾメット)、EDDM−ジメタノール(O−ホルマール)、HT−トリアジン(N−ホルマール)、THPS−テトラキス(O−ホルマール)、TMAD−ジウレア(N−ホルマール)、メタボレート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、チオシアネート、有機硫黄、安息香酸ナトリウム)及びこの機能のためのその他の市販の化合物(例えば、Nalcoが販売する殺生物剤ポリマー類)。
【0119】
(l)1種以上の平滑化剤(levelling and evening aid):例えば、最高約2質量%のレベル。例えば非イオン性ポリオール、ポリエチレンエマルジョン、脂肪酸、エステル及びアルコール誘導体、アルコール/エチレン酸化物、ステアリン酸カルシウム並びにこの機能のためのその他の市販の化合物。
【0120】
(m)1種以上の耐脂性/耐油性添加剤:例えば、最高約2質量%のレベル。例えば、酸化ポリエチレン、ラテックス、SMA(スチレン/無水マレイン酸)、ポリアミド、ワックス、アルギネート、タンパク質、CMC及びHMC。
【0121】
上記のいずれの添加剤及び添加剤タイプも単独で又は互いに混合して又は望ましい場合はその他の添加剤と混合して使用し得る。
【0122】
上記の添加剤の全てについて、記載の質量%は、組成物中に存在する無機粒子材料の乾燥質量(100%)を基準としたものである。添加剤が最小量で存在する場合、この最小量は、顔料の乾燥質量に対して約0.01質量%になり得る。
【0123】
塗工プロセスは、当業者に周知の標準的な技法を使用して行われる。塗工プロセスは、塗工製品のカレンダリング又はスーパーカレンダリングも伴い得る。
【0124】
紙及びその他のシート材料の塗工方法並びにこの方法を実行するための装置については広く公表されており、周知である。そのような公知の方法及び装置を、塗工紙の調製に便利に利用し得る。例えば、そのような方法がPulp and Paper International(1994年5月)(18ページ以降)に記載されている。シートは、シート形成機上でのすなわち「オンマシン」で、或いはコーター又は塗工機上での「オフマシン」で塗工され得る。この塗工方法においては高固形分組成物の使用が望ましいが、これは後に蒸発させる水の量が少なくなるからである。しかしながら、当該分野において周知のように、固形分レベルは、高粘度及び平滑化問題が生じる程高くあるべきではない。この塗工方法は、(i)塗工用組成物を塗工対象である材料に塗布するためのアプリケーションと、(ii)正確なレベルの塗工用組成物を塗布するための計量装置とを備えた装置を使用して行われ得る。過剰量の塗工用組成物がアプリケーターに適用される場合、計量装置はアプリケーターの下流側にある。或いは、正確な量の塗工用組成物は、例えばフィルムプレスとして、計量装置によってアプリケーターに適用され得る。塗工及び計量点において、ペーパーウェブ支持体は、バッキングロールから例えば1つ又は2つのアプリケーターを経由して何もないところに及ぶ(すなわち、張力のみ)。最終的に過剰分が除去されるまで塗工層が紙と接触している時間が滞留時間(dwell time)であり、この時間は短くても長くてもよく、或いは変動し得る。
【0125】
塗工層は通常、コーティングステーションでコーティングヘッドにより追加される。望ましい質に応じて、紙のグレードは、非塗工、単層塗工、2層塗工及び3層塗工でさえある。2層以上の塗工を施す場合、最初の塗工層(プレコート)の処方は安価なものになり得て、任意で、塗工用組成物中の顔料の粒度は粗いものになる。塗工層を紙の各面に塗布するコーターは2つ又は4つのコーティングヘッドを有し、各面に塗布する塗工層の数に左右される。殆どのコーティングヘッドは、1度で片面のみの塗工を行うが、一部のロールコーター(例えば、フィルムプレス、ゲートロール、サイズプレス)は1回の通過で両面の塗工を行う。
【0126】
使用し得る公知のコーターの例には、以下に限定するものではないが、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、マルチヘッドコーター、ロールコーター、ロール又はブレードコーター、キャストコーター、ラボラトリーコーター、グラビアコーター、キスコーター、液体塗布システム、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター及び押出コーターが含まれる。
【0127】
塗工用組成物を構成する固形分に水を添加することによって、好ましくは、組成物を望ましいターゲット塗工量にまでシート上に塗工する場合に、組成物が、1〜1.5バールの圧力(すなわち、ブレード圧力)での塗工を可能にするのに適切なレオロジーを有するような固形分濃度にする。
【0128】
カレンダリングは周知のプロセスであり、紙の平滑度及び光沢が改善され、また塗工紙シートにカレンダーニップ又はローラー間を1回以上通過させることによってバルクが低下する。通常、エラストマーで被覆したロールを使用して、高固形分組成物のプレスを行う。温度を上昇させる場合もある。ニップを1回以上(例えば、最高約12回。場合によってはそれ以上)通過させ得る。
【0129】
本発明に従って調製され且つ塗工層に蛍光増白剤を含有する塗工紙製品は、ISO国際規格11475に準拠して測定した場合に、本発明に従って調製したミクロフィブリル化セルロースを含まない塗工紙製品より少なくとも2単位高い、例えば少なくとも3単位高い白色度を示し得る。本発明に従って調製された塗工紙製品は、ISO国際規格8971−4(1992)に準拠して測定された、本発明に従って調製されたミクロフィブリル化セルロースを含まない塗工紙製品より少なくとも0.5μm、例えば少なくとも約0.6μm又は少なくとも約0.7μm滑らかなパーカープリントサーフ(Parker Print Surf)平滑度を示し得る。
【0130】
粉砕可能な無機粒子材料の不在下でのミクロフィブリル化
別の態様において、本発明は、ミクロフィブリル化セルロースを含む水性懸濁液を調製する方法を対象とし、この方法は、粉砕完了後に除去される粉砕媒体の存在下での粉砕によって、セルロースを含む繊維状基材を水性環境中でミクロフィブリル化する工程を含み、この粉砕は、タワーミル又はスクリーン粉砕機で行われ、粉砕は、粉砕可能な無機粒子材料の不在下で行われる。
【0131】
粉砕可能な無機粒子材料とは、粉砕媒体の存在下で粉砕される材料である。
【0132】
粒子状粉砕媒体は、天然又は合成材料になり得る。粉砕媒体は、例えば、いずれの硬質鉱物、セラミック又は金属材料のボール、ビーズ又はペレットも含み得る。このような材料には、例えばアルミナ、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム又はカオリン質粘土を約1300〜約1800℃の範囲の温度で焼成することによって生成されるムライト高含有材料が含まれ得る。例えば、一部の実施形態においては、Carbolite(登録商標)粉砕媒体が好ましい。或いは、適切な粒径の天然の砂の粒子が使用され得る。
【0133】
一般に、本発明で使用するために選択される粉砕媒体のタイプ及び粒径は、粉砕対象である材料の供給懸濁液の性質(例えば、粒径)及び化学組成に左右され得る。好ましくは、粒子状粉砕媒体は、約0.5〜約6.0mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む。一実施形態において、粒子は、少なくとも約3mmの平均直径を有する。
【0134】
粉砕媒体は、少なくとも約2.5の比重を有する粒子を含み得る。粉砕媒体は、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5又は少なくとも約6の比重を有する粒子を含み得る。
【0135】
粉砕媒体は、装入物の最高約70体積%の量で存在し得る。粉砕媒体は、装入物の少なくとも約10体積%、例えば装入物の少なくとも約20体積%、装入物の少なくとも約30体積%、装入物の少なくとも約40体積%、装入物の少なくとも約50体積%又は装入物の少なくとも約60体積%の量で存在し得る。
【0136】
セルロースを含む繊維状基材は、レーザー光散乱法によって測定した場合に約5〜約500μmのd50を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるようにミクロフィブリル化され得る。セルロースを含む繊維状基材は、約400μm以下、例えば約300μm以下、約200μm以下、約150μm以下、約125μm以下、約100μm以下、約90μm以下、約80μm以下、約70μm以下、約60μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下又は約10μm以下のd50を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるようにミクロフィブリル化され得る。
【0137】
セルロースを含む繊維状基材は、約0.1〜500μmのモード繊維粒径を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるようにミクロフィブリル化され得る。セルロースを含む繊維状基材は、少なくとも約0.5μmのモード繊維粒径、例えば少なくとも約10μm、少なくとも約50μm、少なくとも約100μm、少なくとも約150μm、少なくとも約200μm、少なくとも約300μm又は少なくとも約400μmのモード繊維粒径を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるように存在下でミクロフィブリル化され得る。
【0138】
セルロースを含む繊維状基材は、Malvernで測定した場合に約10以上の繊維勾配を有するミクロフィブリル化セルロースが得られるようにミクロフィブリル化され得る。繊維勾配(すなわち、繊維の粒径分布の勾配)は、以下の式:
勾配=100×(d30/d70
によって求められる。
【0139】
ミクロフィブリル化セルロースは、約100以下の繊維勾配を有し得る。ミクロフィブリル化セルロースは、約75以下、約50以下、約40以下又は約30以下の繊維勾配を有し得る。ミクロフィブリル化セルロースは、約20〜約50、約25〜約40、約25〜約35又は約30〜約40の繊維勾配を有し得る。
【0140】
一実施形態において、粉砕槽はタワーミルである。このタワーミルは、1つ以上の粉砕ゾーン上に静止ゾーンを備え得る。静止ゾーンは、タワーミルの内部の最上部に向かって位置する領域であり、ここでは粉砕が最小限にしか又は全く行われず、またミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料が入っている。静止ゾーンは、粉砕媒体の粒子がタワーミルの1つ以上の粉砕ゾーン内へと沈降する領域である。
【0141】
タワーミルは、1つ以上の粉砕ゾーン上に分級機を備え得る。ある実施形態において、この分級機は最上部に取り付けられ、また静止ゾーンに隣接して配置される。分級機は液体サイクロンであってよい。
【0142】
タワーミルは、1つ以上の粉砕ゾーン上にスクリーンを備え得る。ある実施形態において、スクリーンは静止ゾーン及び/又は分級機に隣接して配置される。このスクリーンは、ミクロフィブリル化セルロースを含む生成物である水性懸濁液から粉砕媒体を分離し、また粉砕媒体の沈降を強化するように寸法設計され得る。
【0143】
ある実施形態において、粉砕はプラグ流れ条件下で行われる。プラグ流れ条件下で、タワーを通る流れは、タワー全体を通して粉砕材料の混合が制限されるようなものである。これはタワーミルの長さに沿った異なる地点において、ミクロフィブリル化セルロースの微粉度が上昇するにつれて水性環境の粘度が変化することを意味する。このため、事実上、タワーミル内の粉砕領域は、特徴的な粘度を有する1つ以上の粉砕ゾーンを含むとみなすことが可能である。当業者なら、隣接する粉砕ゾーン間において粘度にはっきりとした境界はないことがわかる。
【0144】
ある実施形態においては、1つ以上の粉砕ゾーンの上の静止ゾーン又は分級機又はスクリーンに近接したミルの最上部で水を加えることによって、ミル内のこれらのゾーンでのミクロフィブリル化セルロースを含む水性懸濁液の粘度を低下させる。ミルにおけるこの地点で生成物であるミクロフィブリル化セルロースを希釈することによって、静止ゾーン及び/又は分級機及び/又はスクリーンへの粉砕媒体のキャリーオーバーがより良好に防止されることが判明している。更に、タワーでの混合が制限されることからタワー下での高固形分での加工が可能になり、また最上部での希釈を、希釈水がタワーを下って1つ以上の粉砕ゾーン内に逆流するのを抑えて行うことが可能になる。ミクロフィブリル化セルロース含む生成物である水性懸濁液の粘度を低下させるのに効果的ないずれの適切な量の水も添加され得る。この水は、粉砕プロセス中に連続的に又は一定の間隔で又は不定期な間隔で添加され得る。
【0145】
別の実施形態において、水は1つ以上の粉砕ゾーンに1つ以上の注水点を経由して添加され得て、この注水点はタワーミルの長さに沿って位置決めされている。或いは、各注水点は1つ以上の粉砕ゾーンに対応した位置に配置されている。有利には、タワーに沿った様々な位置での注水能によって、ミルに沿ったいずれの又は全ての位置での粉砕条件の更なる調節が可能になる。
【0146】
タワーミルは、一連のインペラローターディスクを長さに沿って備えた垂直インペラシャフトを備え得る。インペラローターディスクの作動によって、ミル全体にわたって一連の個別の粉砕ゾーンが形成される。
【0147】
別の実施形態において、粉砕はスクリーン粉砕機、好ましくは撹拌媒体デトライターにおいて行われる。スクリーン粉砕機は、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備え得て、例えば、この1つ以上のスクリーンは、少なくとも約300μm、少なくとも約350μm、少なくとも約400μm、少なくとも約450μm、少なくとも約500μm、少なくとも約550μm、少なくとも約600μm、少なくとも約650μm、少なくとも約700μm、少なくとも約750μm、少なくとも約800μm、少なくとも約850μm、少なくとも約900μm又は少なくとも約1000μmの公称開口サイズを有し得る。
【0148】
すぐ上の段落に記載のスクリーンサイズは、上記のタワーミル実施形態に適用可能である。
【0149】
上述したように、粉砕は、粉砕媒体の存在下で行われる。ある実施形態において、粉砕媒体は、約1〜約6mm、例えば約2mm、約3mm、約4mm又は約5mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む粗い媒体である。
【0150】
別の実施形態において、粉砕媒体は、少なくとも約2.5、例えば少なくとも約3、少なくとも約3.5、少なくとも約4.0、少なくとも約4.5、少なくとも約5.0、少なくとも約5.5又は少なくとも約6.0の比重を有する。
【0151】
上述したように、粉砕媒体は、装入物の最高約70体積%の量で存在し得る。粉砕媒体は、装入物の少なくとも約10体積%、例えば装入物の少なくとも約20体積%、装入物の少なくとも約30体積%、装入物の少なくとも約40体積%、装入物の少なくとも約50体積%又は装入物の少なくとも約60体積%の量で存在し得る。
【0152】
一実施形態において、粉砕媒体は、装入物の約50体積%の量で存在する。
【0153】
「装入物(charge)」とは、粉砕槽に供給される供給原料である組成物を意味する。装入物には、水、粉砕媒体、セルロースを含む繊維状基材及び(本明細書に記載のもの以外の)その他の任意の添加剤が含まれる。
【0154】
比較的粗い及び/又は高密度な媒体の使用には、改善された(すなわちより速い)沈降速度、静止ゾーン及び/又は分級機及び/又はスクリーンを通しての媒体のキャリーオーバーの軽減という利点を有する。
【0155】
比較的粗いスクリーンを使用する更なる利点は、ミクロフィブリル化工程で比較的粗い又は高密度の粉砕媒体を使用可能なことである。加えて、比較的粗いスクリーン(すなわち、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有する)の使用によって、比較的高固形分の生成物の加工及び粉砕機からの取り出しが可能になり、これによって比較的高固形分の供給原料(セルロースを含む繊維状基材及び無機粒子材料を含む)を採算の取れるプロセスで加工することが可能になる。後述するように、初期固形分含有量が高い供給原料がエネルギー効率について望ましいことが判明している。更に、低固形分で(所定のエネルギーで)生成された生成物はより粗い粒径分布を有することも判明している。
【0156】
前出の「背景技術」のセクションで説明したように、本発明は、ミクロフィブリル化セルロースを経済的に工業規模で調製する問題に取り組もうとするものである。
【0157】
従って、一実施形態において、セルロースを含む繊維状基材は、水性環境において少なくとも約1質量%の初期固形分含有量で存在する。セルロースを含む繊維状基材は、水性環境において少なくとも約2質量%、例えば少なくとも約3質量%又は少なくとも約4質量%の初期固形分含有量で存在し得る。典型的には、初期固形分含有量は、約10質量%を越えない。
【0158】
別の実施形態において、粉砕は粉砕槽のカスケードにおいて行われ、その1つ以上の粉砕槽が1つ以上の粉砕ゾーンを備え得る。例えば、セルロースを含む繊維状基材は、2つ以上の粉砕槽のカスケード、例えば3つ以上の粉砕槽のカスケード、4つ以上の粉砕槽のカスケード、5つ以上の粉砕槽のカスケード、6つ以上の粉砕槽のカスケード、7つ以上の粉砕槽のカスケード、8つ以上の粉砕槽のカスケード、9つ以上の直列の粉砕槽のカスケード又は最高10個の粉砕槽を含むカスケードにおいて粉砕され得る。粉砕槽のカスケードは、直列又は並列又は直列と並列との組み合わせで作動可能に連結され得る。カスケードを構成する粉砕槽の1つ以上からの産出物及び/又は粉砕槽の1つ以上への投入物は、1つ以上の篩過工程及び/又は1つ以上の分級工程に供され得る。
【0159】
ミクロフィブリル化プロセスに費やされる総エネルギーは、カスケードを構成する粉砕槽のそれぞれに均等に分配され得る。或いは、投入エネルギー量は、カスケードを構成する粉砕槽の一部又は全てにおいて異なり得る。
【0160】
当業者は、1槽あたりの投入エネルギーが、各槽においてミクロフィブリル化されている繊維状基材の量、任意では各槽における粉砕速度、各槽における粉砕時間及び各槽における粉砕媒体のタイプに応じて、カスケードを構成する槽間で異なり得ることを理解するだろう。粉砕条件を、カスケードを構成する槽毎に変化させることによって、ミクロフィブリル化セルロースの粒径分布を制御し得る。
【0161】
ある実施形態において、粉砕は閉回路で行われる。別の実施形態において、粉砕は開回路で行われる。
【0162】
粉砕対象である材料の懸濁液の粘度は比較的高くなり得ることから、好ましくは、適切な分散剤を粉砕前に懸濁液に添加してもよい。この分散剤は、例えば水溶性縮合リン酸塩、ポリケイ酸若しくはその塩又は高分子電解質、例えば80000以下の数平均分子量を有するポリ(アクリル酸)若しくはポリ(メタクリル酸)の水溶性塩であり得る。使用される分散剤の量は一般に、乾燥無機粒子固形材料の質量に対して0.1〜2.0質量%の範囲内にある。懸濁液は、4〜100℃の範囲の温度で適切に粉砕され得る。
【0163】
ミクロフィブリル化工程中に添加され得るその他の添加剤には、カルボキシメチルセルロース、両性カルボキシメチルセルロース、酸化剤、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、TEMPO誘導体及び木材分解酵素が含まれる。
【0164】
粉砕対象である材料の懸濁液のpHは約7以上(すなわち、アルカリ性)であってよく、例えば、懸濁液のpHは約8、約9、約10又は約11であってよい。粉砕対象である材料の懸濁液のpHは約7未満(すなわち、酸性)であってよく、例えば、懸濁液のpHは約6、約5、約4又は約3であってよい。粉砕対象である材料の懸濁液のpHは、適切な量の酸又は塩基の添加によって調節され得る。適切な塩基には、アルカリ金属水酸化物、例えばNaOHが含まれる。その他の適切な塩基は炭酸ナトリウム及びアンモニアである。適切な酸には無機酸(塩酸、硫酸等)又は有機酸が含まれる。例示的な酸はオルトリン酸である。
【0165】
望ましい水性懸濁組成物を得るための、典型的な粉砕プロセスにおける総投入エネルギー量は、典型的には、無機粒子填料の総乾燥質量を約100〜1500kWht-1で有り得る。総投入エネルギー量は、約1000kWht-1未満、例えば約800kWht-1未満、約600kWht-1未満、約500kWht-1未満、約400kWht-1未満、約300kWht-1未満又は約200kWht-1未満であり得る。このため、本発明の発明者は、驚くべきことに、無機粒子材料の存在下で共粉砕すると、セルロースパルプを比較的低投入エネルギー量でミクロフィブリル化することができることを発見した。以下で明らかになるように、セルロースを含む繊維状基材における乾燥繊維1トンあたりの総投入エネルギー量は約10000kWht-1未満、例えば約9000kWht-1未満、約8000kWht-1未満、約7000kWht-1未満、約6000kWht-1未満、約5000kWht-1未満、例えば約4000kWht-1未満、約3000kWht-1未満、約2000kWht-1未満、約1500kWht-1未満、約1200kWht-1未満、約1000kWht-1未満又は約800kWht-1未満になる。総投入エネルギー量は、ミクロフィブリル化されている繊維状基材中の乾燥繊維の量、また任意で粉砕速度、粉砕時間に応じて変動する。
【0166】
ここで本発明の実施形態を、単なる例として以下の実施例を参照しながら説明する。
【実施例】
【0167】
鉱物(GCC又はカオリン)と、ミクロフィブリル化セルロースパルプ繊維の混合物の粒径分布を特徴付けるためにとる以下の手順。
【0168】
炭酸カルシウム。
3gの乾燥材料を得るのに十分な共粉砕スラリーのサンプルをビーカーに計量し、脱イオン水で60gにまで希釈し、有効成分が1.5w/v%のポリアクリル酸ナトリウムの溶液5cm3と混合する。更に、最終スラリー質量が80gになるまで脱イオン水を撹拌しながら添加する。
【0169】
カオリン
5gの乾燥材料を得るのに十分な共粉砕スラリーのサンプルをビーカーに計量し、脱イオン水で60gにまで希釈し、1.0質量%の炭酸ナトリウム及び0.5質量%のヘキサメタリン酸ナトリウムの溶液5cm3と混合する。更に、最終スラリー質量が80gになるまで脱イオン水を撹拌しながら添加する。
【0170】
次にこのスラリーを、最適レベルのオブスキュレーション(通常、10〜15%)になるまでMastersizer Sに取り付けられたサンプル調製ユニット内の水に1cm3ずつ添加する。次に、光散乱分析手順を行う。選択された計器領域は300RF:0.05〜900であり、ビーム長は2.4mmに設定された。
【0171】
炭酸カルシウム及び繊維を含有する共粉砕サンプルに関して、炭酸カルシウムの屈折率(1.596)を採用した。カオリン及び繊維の共粉砕サンプルの場合、カオリンの屈折率(1.5295)を採用した。
【0172】
粒径分布はミー理論から計算され、体積差に基づいた分布として出力された。2つのはっきりとしたピークの存在は、鉱物(より微細なピーク)及び繊維(より粗いピーク)から生じるものと解釈された。
【0173】
より微細な鉱物ピークを測定されたデータポイントにフィットさせ、分布から数学的に減じることによって繊維ピークだけにし、この繊維ピークを累積分布に変換した。同様に、繊維ピークを元の分布から数学的に減じて鉱物ピークだけにし、この鉱物ピークも累積分布に変換した。次に、これらの両方の累積曲線を使用して平均粒径(d50)及び分布の勾配(d30/d70×100)を計算した。示差曲線を使用して、鉱物及び繊維分の両方に関してのモード粒径を求めた。
【0174】
実施例1
400cm3の水及び750gの大理石粉末(Sedigraphで10質量%<2μm粒径)を粉砕槽に導入し、1.5kgのセラミック粉砕媒体(Carbolite(登録商標)16/20、CARBO Ceramics Inc.から入手可能)を添加した。この混合物を950rpmで60分間にわたって撹拌した。媒体をスラリーから分離し、少量のサンプルを取り出して粒径を確認したところ(MicromeriticsのSedigraph(登録商標)を使用)、57質量%<2μmであった。
【0175】
同じ粉砕機を実施例のそれぞれに使用した。この粉砕機は、内径14.5cmを有する円筒形粉砕槽と、円形断面及び直径1.8cmを有する垂直インペラシャフトとを備えた縦型ミルである。この軸は、X状に位置決めされた4つのインペラを備える。インペラは円形断面及び直径1.8cmを有する。インペラは、垂直シャフトの中心からインペラ先端まで測定した場合に長さ6.5cmである。
【0176】
実施例2
400cm3の水及び750gの大理石粉末(Sedigraphで11〜15質量%<2μm粒径)を粉砕槽に導入し、1.5kgのセラミック粉砕媒体(Carbolite(登録商標)16/20、CARBO Ceramics Inc.から入手可能)を添加した。この混合物を950rpmで30分間にわたって撹拌した。少量のサンプルを取り出して生成物の粒径を測定したところ(MicromeriticsのSedigraph(登録商標)を使用)、57質量%<2μmであった。バレービーターにおいてカナダ標準ろ水度(CSF)520cm3にまで叩解された漂白針葉樹パルプのアリコートをスクリーンで濾過することによって、37.5乾燥gの繊維を含有する20質量%固形分のウェットシートを得た。このシートを粉砕機に加え、ミル粉砕を950rpmで更に30分間にわたって継続した。200cm3の水を粉砕中に添加した。媒体をスラリーから分離し、38μmより大きい繊維を、メッシュ数400を有するBSS篩を使用して除去した。填料組成物の粒径を測定したところ(MicromeriticsのSedigraph(登録商標)を使用)、48質量%<2μmであった。
【0177】
実施例3
実施例2に記載の手順を繰り返した。今回は、第2ミル粉砕段階を60分間にわたって継続した。200cm3の水を粉砕中に添加した。生成物の粒径分布を測定したところ、42質量%<2μmの値が得られた。
【0178】
実施例4
実施例2に記載の手順を繰り返した。今回は、第2ミル粉砕段階を120分間にわたって継続した。650cm3の水を粉砕中に添加した。生成物の粒径分布を測定したところ、40質量%<2μmの値が得られた。
【0179】
実施例5
実施例2に記載の手順を繰り返した。今回は、第2ミル粉砕段階を260分間にわたって継続した。1270cm3の水を粉砕中に添加した。生成物の粒径分布を測定したところ、40質量%<2μmの値が得られた。
【0180】
実施例6
実施例2に記載の手順を繰り返した。今回は、第2ミル粉砕段階を380分間にわたって継続した。1380cm3の水を粉砕中に添加した。生成物の粒径分布を測定したところ、57質量%<2μmの値が得られた。
【0181】
実施例7:紙用填料としての生成物の評価
上記の実施例で調製された生成物の幾つかを、紙ハンドシート用填料として試験した。バレービーターでCSF520cm3にまで叩解された漂白化学針葉樹パルプのバッチを使用した。解繊及び濃度2%の紙料にまで希釈した後、シート形成のために繊維を0.3質量%の稠度に希釈した。填料スラリーを歩留向上剤(Ciba Percol 292、完成紙料に対して0.02質量%)と共に添加した。ハンドシートを、標準的な方法(例えば、TAPPI T205、SCAN C26:76(M5:76))で英国製ハンドシート型枠を使用して坪量80gm-2に形成した。
【0182】
填料のリテンション値を以下の表1に示す。この値は、共粉砕填料が対照填料より優れたリテンションを有することを示す。
表1.初回通過時のリテンション値
【表1】

【0183】
2つの別々のシート形成研究を行った。結果を以下の表2、3に示す。紙の性質を30質量%の配合で補間し、標準試験法(例えば、TAPPI T220、SCAN C28:76(M8:76))に準拠して測定した。
・破裂強度:Messemer Buchnelの破裂試験機。SCAN P24に準拠。
・引張強度:Testometricsの引張試験機。SCAN P16に準拠。
・ベントセン空隙率:SCAN P21、SCAN P60、BS4420及びTappi UM535に準拠してベントセンモデル5空隙率試験機を使用して測定した。
・バルク:SCAN P7に準拠して測定した見掛け密度の逆数である。
・ISO白色度:ハンドシートのISO白色度は、ISO 2470:1999Eに準拠して、No.8フィルタ(波長457nm)を取り付けたElrepho Datacolour 3300白色度測定機で測定された。
・不透明度:紙のサンプルの不透明度を、不透明度の測定に適した波長を使用してElrepho Datacolor 3300分光光度計で測定する。標準試験法はISO 2471である。まず、反射した入射光の割合の測定を、黒色の空洞上の少なくとも10枚のシートの束で行う(R無限大)。次に、このシート束を1枚のシートに置き換え、黒色のカバー上での1枚のシートのパーセント反射率の第2測定を行う(R)。次に、パーセント不透明度を式:パーセント不透明度=100xR/R無限大から計算する。
表2.
【表2】

表3.
【表3】

【0184】
実施例8
4乾燥kgのカオリン填料(Intramax(登録商標)57)を6000cm3の水中に高エネルギー混合装置を使用して分散させた。pHは4.8であった。これを更なる実験のための紙料懸濁液として使用した。粒径分布を測定したところ(MicromeriticsのSedigraph(登録商標)を使用)、57質量%<2μm及び38質量%<1μmの値が得られた。
【0185】
実施例9
2kgの上記のカオリン紙料懸濁液をManton Gaulin(APV)ホモジナイザーに圧力500バールで5回通して加工した。得られた生成物を、更なる製紙試験における対照として使用した。粒径分布を測定したところ(MicromeriticsのSedigraph(登録商標)を使用)、62質量%<2μm及び43質量%<1μmの値が得られた。
【0186】
実施例10
別の2kgの紙料カオリン懸濁液を高エネルギー混合装置に装入した。漂白針葉樹パルプの懸濁液をバレービーターでCSF520cm3まで叩解し、これを標準稠度試験機上で濾過して15%乾燥固形分のウェットシートを得た。133.5gのこのウェットパルプをカオリン懸濁液に添加し、繊維がカオリンと十分に混合されるまで撹拌することによって、乾燥カオリンに対して2.5質量%乾燥パルプのレベルを得た。また、440cm3の水を添加することによって流動性を改善した。次に、33質量%固形分のこの懸濁液を実施例9と同じ条件下でGaulinホモジナイザーに通した。生成物の粒径分布を測定したところ(MicromeriticsのSedigraph(登録商標)を使用)、62質量%<2μm及び45質量%<1μmの値が得られた。
【0187】
実施例11
実施例10に記載の手順を繰り返した。今回は、267gのウェットパルプを2kgの紙料カオリン懸濁液に添加することによって乾燥カオリンに対して5質量%乾燥パルプのレベルを得た。また、懸濁液を440cm3の水で約30質量%固形分に希釈し、懸濁液を、実施例9、10と同じ条件でホモジナイザーに通して加工した。粒径分布を測定したところ(MicromeriticsのSedigraph(登録商標)を使用)、58.5質量%<2μm及び42質量%<1μmの値が得られた。
【0188】
実施例12:紙用填料としての生成物の評価
上記の実施例で調製された生成物を、紙ハンドシート用填料として試験した。バレービーターでCSF520cm3にまで叩解された漂白化学針葉樹パルプのバッチを使用した。解繊及び濃度2%の紙料に希釈した後、シート形成のために繊維を更に0.3質量%の稠度に希釈した。填料スラリーを歩留向上剤(Ciba Percol 292、完成紙料に対して0.02質量%)と共に添加した。ハンドシートを、英国製ハンドシート型枠を使用して坪量80gm-2に形成した。
【0189】
填料のリテンション値を以下の表4に示す。この値は、共粉砕填料が対照填料より優れたリテンションを有することを示す。
表4.初回通過時のリテンション値
【表4】

【0190】
シート形成研究を行った。結果を以下の表5に示す。紙の性質を30質量%の配合で補間する。
表5.
【表5】

【0191】
実施例13
400gのリファイニングしていない漂白針葉樹クラフトパルプ(Botnia Pine RM90)を20リットルの水に6時間にわたって浸漬し、次に機械的混合装置でスラッシュ化した。次に、このようにして得られた紙料を実験室用バレービーター中に注ぎ、負荷下で28分間にわたってリファイニングすることによって、カナダ標準ろ水度(CSF)525cm3にまで叩解されたリファイニング済みパルプのサンプルが得られた。第2サンプルはスラッシュ化はするが全くリファイニングすることなく調製された。ろ水度の結果及びリファイニング時間は以下の表6に示される。
表6.リファイニング条件
【表6】

【0192】
次に、これらのパルプのそれぞれを、稠度試験機(Testing Machines Inc.)を使用して脱水することによって、13〜18質量%固形分のウェットパルプのパッドを得た。次に、以下で詳細に説明するように、これを共粉砕実験で使用した。
【0193】
e.s.dで60%<2μmの粒径(Sedigraphで測定)を有する630gの粉砕大理石のスラリーを、粉砕槽に計量した。乾燥質量は233gであった。上記の脱水段階で得られたウェットパルプを添加して、11.6g(乾燥質量)のパルプを得た。このパルプを鉱物スラリーとしっかりと混合し、次に1485gのCarbolite(登録商標)16/20媒体及び必要量の水を添加することによって、媒体体積濃度(MVC)50%及びスラリー固形分含有量35質量%が得られた。サンプルを、サンプルに2500〜5000kWh/t(乾燥繊維で表される)の投入エネルギー量が付与されるまで1000RPMで粉砕した。次に、槽を粉砕機から取り外し、媒体を、600μmの開口サイズを有するスクリーンを使用して分離した。
【0194】
パルプサンプルA(リファイニングされていない)及びB(525cm3にリファイニング済み)から調製された生成物を、フィルターペーパー破裂上昇(filter paper burst increase:FPBI)試験(下記の通り)を使用して比較した。結果を表7に示す。
表7.フィルターペーパー破裂上昇試験
【表7】

【0195】
フィルターペーパー破裂試験
この試験は、上記の実施例13に従って調製されたMFCを含有する共粉砕スラリーの繊維強化能力を予測するために開発された。
【0196】
直径15cmのフィルターペーパー(No.597、Schleicher&Schuell)を使用した。シートは、互いに0.02g内にあるように質量で選択された。1枚のシートの典型的な乾燥質量は1.4gであった。
【0197】
共粉砕鉱物及びパルプの懸濁液を、上記の実施例25〜29に記載のように調製し、固形分0.25%にまで水で希釈した。上で選択された1枚のフィルターペーパーを水で濡らし、標準稠度試験装置(TMI Testing Machines Inc.、Ronkonkoma、ニューヨーク州)のワイヤ上に置いた。150cm3、200cm3、250cm3及び300cm3の懸濁液のアリコートを、真空を印加しながらフィルターペーパーを通して慎重に濾過し、濾液が混濁している場合は、マットを再度通過させることによって有効成分の良好なリテンションを確保した。フィルターペーパー及びその保持された固形分を次に50%RH及び23℃、スチール製乾燥ディスク上で乾燥させ、プラスチック乾燥リング(Testing Machines Inc.)で分離した。
【0198】
乾燥させた紙を、Messemer Buchel自動破裂試験機を使用して破裂強度について試験した。各シートについて5回の測定を行い、平均をとった。次に、シートを100℃で1時間にわたって乾燥させ、封止して風袋差引き処理をした容器内に入れ、小数第3位まで計量した。シート質量の破裂圧力に対するプロットを構築し、そこから質量2.0gでの破裂圧力を補間した(a kPa)。フィルターペーパーそれ自体の平均破裂圧力(b kPa)も3枚の選択されたシートについて測定し、同じ温度及び湿度下で調湿された。次に、破裂圧力の上昇を以下の方程式によって計算した:
フィルターペーパーの破裂圧力上昇(FPBI)=(a−b)/b×100
【0199】
対照として、水だけをフィルターペーパーディスクに通した。これも破裂にプラス効果を及ぼしたが、MFCが存在する場合よりはるかに少なかった(表7を参照のこと)。
【0200】
上で調製されたサンプルを、Malvern Mastersizer(Malvern Instruments、英国)を使用し、その粒径について更に特徴づけした。結果をパルプ分の平均(d50)サイズについて記録する。繊維分の粒径勾配も記録した。これらのデータも表7に示す。
【0201】
パルプA及びBから調製したサンプルを更にハンドシート研究で比較した。これらの填料のためのホストパルプは、サンプルBと同様に、CSF520cm3にまで叩解された同じBotnia RM90バッチから調製された。歩留向上剤は、総完成紙料固形分に対して0.06質量%で添加されたPercol 292(Ciba)であった。ハンドシートは80gm-2で調製され、破裂強度、引張強度、バルク、ベントセン空隙率、457nmでの反射率(ISO白色度)及び不透明度について試験された。3種類の配合を得て、結果を30質量%の配合レベルに補間した(表8を参照のこと)。填料の呼称については表7を参照のこと。
【0202】
表8の結果は、共粉砕填料によって、白色度に悪影響を及ぼすことなく強度が上昇し、空隙率が低下し、また不透明度が上昇することを示し、全てが望ましい性質である。強度の上昇は、填料の配合を、標準GCC填料を使用した25質量%から共粉砕填料での33質量%への上昇を可能にするに十分なものである。
表8.ハンドシートに関する結果
【表8】

【0203】
実施例14
400gのリファイニングしていない漂白針葉樹クラフトパルプ(Botnia Pine RM90)を20リットルの水に6時間にわたって浸漬し、次に機械的混合装置でスラッシュ化した。次に、このようにして得られた紙料を実験室用バレービーター中に注ぎ、負荷下で28分間にわたってリファイニングすることによって、カナダ標準ろ水度(CSF)525cm3にまで叩解されたリファイニング済みパルプのサンプルが得られた。次に、パルプを稠度試験機(Testing Machines Inc.)を使用して脱水することによって、19.1質量%固形分のウェットパルプのパッドを得た。次に、以下で詳細に説明するように、これを共粉砕実験で使用した。
【0204】
651gのCarbital 60HS(登録商標)(固形分77.9質量%)のスラリーを粉砕ポットに計量した。次に、66.5gのウェットパルプを添加し、カーボネートと混合した。次に、1485gのCarbolite(登録商標)16/20粉砕媒体、続いて147gの水を添加することによって、媒体体積濃度50%を得た。この混合物を、10000kWh/t(繊維で表される)の投入エネルギー量が費やされるまで1000rpmで共に粉砕した。生成物を、600μmBSSスクリーンを使用して媒体から分離した。得られたスラリーの固形分含有量は59.4質量%であり、ブルックフィールド粘度(100rpm)は10000mPa.sであった。生成物の繊維含有量を450℃での灰化によって分析し、鉱物及びパルプ分のサイズをMalvern Mastersizerを使用して測定した。
【0205】
実施例15
352gのCarbital 60HS(登録商標)(固形分77.9質量%)のスラリーを粉砕ポットに計量した。次に、71.8gのウェットパルプを添加し、カーボネートと混合した。次に、1485gのCarbolite 16/20粉砕媒体、続いて296gの水を添加することによって、媒体体積濃度50%を得た。この混合物を、10000kWh/t(繊維で表される)の投入エネルギー量が費やされるまで1000rpmで共に粉砕した。生成物を、600μmBSSスクリーンを使用して媒体から分離した。得られたスラリーの固形分含有量は41.9質量%であり、ブルックフィールド100rpm粘度は5000mPa.sであった。生成物の繊維含有量を450℃での灰化によって分析し、鉱物及びパルプ分のサイズをMalvern Mastersizerを使用して測定した。
【0206】
実施例16
287gのCarbital 60HS(登録商標)(固形分77.9質量%)のスラリーを粉砕ポットに計量した。次に、87.9gのウェットパルプを添加し、カーボネートと混合した。次に、1485gのCarbolite 16/20粉砕媒体、続いて311gの水を添加することによって、媒体体積濃度50%を得た。この混合物を、10000kWh/t(繊維で表される)の投入エネルギー量が費やされるまで1000rpmで共に粉砕した。生成物を、600μmBSSスクリーンを使用して媒体から分離した。得られたスラリーの固形分含有量は36.0質量%であり、ブルックフィールド100rpm粘度は7000mPa.sであった。生成物の繊維含有量を450℃での灰化によって分析し、鉱物及びパルプ分のサイズをMalvern Mastersizerを使用して測定した。
表9.顔料の物理的性質
【表9】

【0207】
表9は、繊維を微粒子サイズに粉砕することに加え、GCCの微粉度及びpsd勾配も上昇してより微細な対照顔料(Carbital 90(登録商標)、Carbopaque 90TM)の微粉度及びpsd勾配に匹敵したことを示す。
【0208】
上記の対照及び共粉砕顔料を塗工カラーに調製し、以下の実施例に従って塗工層を研究した。
【0209】
実施例17(対照)
129gのCarbital 60HS(=100g乾燥)をビーカーに計量し、実験室用撹拌装置を使用して混合し、14gの50%スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルラテックス懸濁液(DL920、Dow Chemical)を添加することによって、炭酸カルシウム100部あたり7部(pph)のラテックスのバインダー量とした。次に、0.3乾燥gのカルボキシメチルセルロース(Finnfix 10、CP Kelco)を12%溶液として添加し、続いて0.5gの蛍光増白剤(Blankophor P、Kemira)の溶液を添加した。NaOHを使用して、pHを8.7に調節した。第2カラーを、ラテックスを9pphに増量して調製した。
【0210】
実施例18(対照)
129.7gのCarbital 90HS(=100g乾燥)をビーカーに計量し、実験室用撹拌装置を使用して混合し、16gの50%スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルラテックス懸濁液(DL920、Dow Chemical)を添加することによって、炭酸カルシウム100部あたり8部(pph)のラテックスのバインダー量とした。次に、0.3乾燥gのカルボキシメチルセルロース(Finnfix 10、CP Kelco)を12%溶液として添加し、続いて0.5gの蛍光増白剤(Blankophor P、Kemira)の溶液を添加した。NaOHを使用して、pHを8.9に調節した。第2カラーを、ラテックスを10pphに増量して調製した。
【0211】
実施例19(対照)
139gのCarbopaque 90(=100g乾燥)をビーカーに計量し、実験室用撹拌装置を使用して混合し、16gの50%スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルラテックス懸濁液(DL920、Dow Chemical)を添加することによって、炭酸カルシウム100部あたり8部(pph)のラテックスのバインダー量とした。次に、0.3乾燥gのカルボキシメチルセルロース(Finnfix 10、CP Kelco)を12%溶液として添加し、続いて0.5gの蛍光増白剤(Blankophor P、Kemira)の溶液を添加した。NaOHを使用して、pHを8.6に調節した。第2カラーを、ラテックスを10pphに増量して調製した。
【0212】
実施例20(対照)
129.7gのCarbital 90HS(=100g乾燥)をビーカーに計量し、紙塗工用の2.5gの平均粒径1000nm(製造者公表値)の市販の粉末セルロース(Arbocel MF40、J.Rettenmaier&Sohne、Holzmuhle、ドイツ)を、実験室用撹拌装置を使用して混合しながら添加した。粉末が完全に分散したら、15gの50%スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルラテックス懸濁液(DL920、Dow Chemical)を添加することによって、炭酸カルシウム100部あたり7.5部(pph)のラテックスのバインダー量とした。次に、0.3乾燥gのカルボキシメチルセルロース(Finnfix 10、CP Kelco)を12%溶液として添加し、続いて0.5gの蛍光増白剤(Blankophor P、Kemira)の溶液を添加した。NaOHを使用して、pHを8.6に調節した。
【0213】
実施例21
実施例4に従って調製された173.4gの生成物(=103g乾燥)をビーカーに計量し、実験室用撹拌装置を使用して混合し、14gの50%スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルラテックス懸濁液(DL920、Dow Chemical)を添加することによって、乾燥炭酸カルシウム100部あたり7部(pph)のラテックスのバインダー量とした。次に、0.3乾燥gのカルボキシメチルセルロース(Finnfix 10、CP Kelco)を10%溶液として添加し、続いて0.5gの蛍光増白剤(Blankophor P、Kemira)の溶液を添加した。NaOHを使用して、pHを8.8に調節した。第2カラーを、ラテックスを9pphに増量して調製した。
【0214】
実施例22
実施例15に従って調製された250.6gの生成物(=105g乾燥)をビーカーに計量し、実験室用撹拌装置を使用して混合し、14gの50%スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルラテックス懸濁液(DL920、Dow Chemical)を添加することによって、乾燥炭酸カルシウム100部あたり7部(pph)のラテックスのバインダー量とした。次に、0.3乾燥gのカルボキシメチルセルロース(Finnfix 10、CP Kelco)を10%溶液として添加し、続いて0.375gの蛍光増白剤(Blankophor P、Kemira)の溶液を添加した。NaOHを使用して、pHを8.6に調節した。第2カラーを、ラテックスを9pphに増量して調製した。
【0215】
カラーを、坪量70gm-2の機械的原紙に実験室用ウェブコーター(Dow coater)を使用してブレード計量しながら塗工した。塗工量は、最も多い塗工量が得られるまでカラーを希釈し、続いて塗工量を低減するためにブレード負荷を上昇させることによって調節された。塗工量約8gm-2〜12gm-2を有する紙のサンプルが作製された。速度は約10m分-1であった。
【0216】
次に、塗工紙のサンプルを細長い紙片に切断し、24時間にわたって50%RH及び23℃で調湿してから、Datacolor Elrepho 3300分光光度計を使用して白色度を試験した。反射率の測定を457nmで、入射光ビーム中にUV成分がある場合とない場合で行った。UVがある場合とない場合での反射率の差を、蛍光として記録する。塗工紙の平滑度を空気漏洩法でパーカープリントサーフ機器を1000kPaで使用して測定した。各値を灰化で測定された塗工量に対してプロットした。次に、結果を一般的な塗工量10gm-2に補間し、表11にした。
表10.塗工カラーの性質
【表10】

表11.10gm-2での紙の性質
【表11】

【0217】
表11の結果は、本発明によって白色度、蛍光度及び平滑度が上昇することを示す。
【0218】
実施例23
e.s.dで60%<2μmの粒径(Sedigraphで測定)を有する630gの粉砕大理石のスラリーを、粉砕槽に計量した。乾燥質量は233gであった。CSF525cm3にまで叩解されたユーカリのウェットパルプ54gを添加し(表12を参照のこと)、これは11.6g乾燥質量と同等であった。このパルプを鉱物スラリーとしっかりと混合し、次に1485gのCarbolite 16/20媒体及び16cm3の水を添加した。これは媒体体積濃度(MVC)50%及びスラリー固形分含有量35質量%に等しい。サンプルを、サンプルに2500〜5000kWh/t(乾燥繊維で表される)の投入エネルギー量が付与されるまで1000RPMで粉砕した。温度は55℃に達した。次に、槽を粉砕機から取り外し、媒体を、600μmの開口サイズを有するスクリーンを使用して分離した。
【0219】
実施例24
実施例23に記載の手順を繰り返した。今回は、CSF520cm3にまで叩解された漂白クラフト針葉樹パルプ(Botnia Pine RM90)を使用した。
【0220】
実施例25
実施例23に記載の手順を繰り返した。今回は、CSF700cm3を有する解繊サーモメカニカルパルプのサンプルを使用した。
【0221】
実施例26
実施例23に記載の手順を繰り返した。今回は、CSF520cm3にまで叩解されたアカシアパルプのサンプルを使用した。
【0222】
実施例27
実施例23に記載の手順を繰り返した。今回は、CSF520cm3にまで叩解された広葉樹(バーチ)パルプのサンプルを使用した。
【0223】
上記の実施例23〜27に従って調製した、MFCを含有する共粉砕スラリーの繊維強化能力を、上記のフィルターペーパー破裂試験を利用して測定した。結果を以下の表12に示す。
【0224】
上で調製されたサンプルを、Malvern Mastersizer(Malvern Instruments、英国)を使用し、その粒径について更に特徴づけした。結果をGCC及びパルプ分の平均(d50)サイズについて記録する。繊維分の粒径勾配も記録した。これらのデータも表12に示す。
【0225】
これらの結果は、GCCとの共粉砕に供することによって、全てのパルプタイプで強度が上昇することを示す。
表12.フィルターペーパー試験による生成物の評価
【表12】

【0226】
実施例28
400gのリファイニングしていない漂白針葉樹クラフトパルプ(Botnia Pine RM90)を20リットルの水に6時間にわたって浸漬し、次に機械的混合装置でスラッシュ化した。次に、このようにして得られた紙料を実験室用バレービーター中に注ぎ、負荷下で28分間にわたってリファイニングすることによって、カナダ標準ろ水度(CSF)525cm3にまで叩解されたリファイニング済みパルプのサンプルが得られた。
【0227】
次に、パルプを稠度試験機(Testing Machines Inc.)を使用して脱水することによって、19.1質量%固形分のウェットパルプのパッドを得た。次に、以下で詳細に説明するように、これを粉砕実験で使用した。
【0228】
実施例29
e.s.dで60%<2μmの粒径(Sedigraphで測定)を有する584gの粉砕大理石のスラリーを、粉砕槽に計量した。乾燥質量は231gであった。上記の脱水段階で得られたウェットパルプ(実施例28)を添加することによって、11.6g(乾燥質量)のパルプを得た。このパルプを鉱物スラリーとしっかりと混合し、次に1485gのCarbolite 16/20媒体及び必要量の水を添加することによって、媒体体積濃度(MVC)50%及びスラリー固形分含有量35質量%を得た。サンプルを、サンプルに2500〜5000kWh/t(乾燥繊維で表される)の投入エネルギー量が付与されるまで1000RPMで粉砕した。次に、槽を粉砕機から取り外し、媒体を、600μmの開口サイズを有するスクリーンを使用して分離した。生成物の繊維含有量を、450℃での灰化によって分析し、鉱物及びパルプ分のサイズをMalvern Mastersizerを使用して測定した(表13を参照のこと)。
【0229】
実施例30
e.s.dで60%<2μmの粒径(Sedigraphで測定)を有する176gの粉砕大理石のスラリーを、粉砕槽に計量した。乾燥質量は65gであった。上記の脱水段階で得られたウェットパルプを添加することによって、8.5g(乾燥質量)のパルプを得た。このパルプを鉱物スラリーとしっかりと混合し、次に1485gのCarbolite 16/20媒体及び必要量の水を添加することによって、媒体体積濃度(MVC)50%及びスラリー固形分含有量12.5質量%を得た。サンプルを、サンプルに3750〜5000kWh/t(乾燥繊維で表される)の投入エネルギー量が付与されるまで1000RPMで粉砕した。次に、槽を粉砕機から取り外し、媒体を、600μmの開口サイズを有するスクリーンを使用して分離した。生成物の繊維含有量を、450℃での灰化によって分析し、鉱物及びパルプ分のサイズをMalvern Mastersizerを使用して測定した(表13を参照のこと)。
表13.
【表13】

【0230】
実施例31
ハンドシートの評価
実施例29及び30で調製したサンプルをハンドシート研究で比較した。対照填料は、粉砕実験で使用されたものと同じ60%<2μm粉砕大理石であった。これらの填料のためのホストパルプを、CSF520cm3にまで叩解された同じBotnia RM90バッチから調製した。歩留向上剤は、総完成紙料固形分に対して0.06質量%で添加されたPercol 292(Ciba)であった。ハンドシートは80gm-2で調製され、破裂強度、引張強度、バルク、ベントセン空隙率、457nmでの反射率(ISO白色度)及び不透明度について試験した。3種類の配合を得て、結果(表14)を30質量%の配合レベルに補間した。
表14.ハンドシートに関する結果
【表14】

【0231】
上記の結果は、共粉砕填料によって、白色度に悪影響を及ぼすことなく強度が上昇し、空隙率が低下し、また不透明度が上昇することを示し、全てが望ましい性質である。11.7%の共粉砕繊維を含有する実施例30の填料を使用することによって、強度の上昇は、填料の配合を、標準GCC填料を使用した25質量%から40質量%への上昇を破裂強度を失うことなく可能にするに十分なものとなる。
【0232】
実施例32
321gの填料カオリン(WP、Imerys)の72質量%スラリーを粉砕ポットに計量した。次に、105.9gの無漂白北米産ウェットクラフトパインパルプ(固形分10.9質量%)を、追加の266cm3の水と共に混合した。1485gのCarbolite 16/20媒体を添加し、混合物を、乾燥鉱物+パルプで表される投入作業エネルギー量(work input)250kWh/tを使用して1000rpmで粉砕した。700μmスクリーンでの分離後の乾燥生成物の繊維含有量は、950℃での強熱によって測定したところ鉱物に対して3.9質量%であった。繊維の平均粒径(d50)は、Malvern Mastersizerを使用して83μmと推定された。
【0233】
実施例33
206gの填料カオリン(WP、Imerys)の72質量%スラリーを粉砕ポットに計量した。次に、108.7gの無漂白北米産ウェットクラフトパインパルプ(固形分10.9質量%)を、追加の326cm3の水と共に混合した。1485gのCarbolite 16/20媒体を添加し、混合物を、鉱物+パルプで表される投入作業エネルギー量400kWh/tを使用して1000rpmで粉砕した。700μmスクリーンでの分離後の乾燥生成物の繊維含有量は、6.2質量%であった。繊維の平均粒径(d50)は、Malvern Mastersizerを使用して95μmと推定された。
【0234】
この研究のためのホストパルプは、実施例32、33で使用の無漂白北米産クラフトパインパルプの同じバッチであった。これは製造業者から入手した状態のまま、必要に応じて水で希釈して使用された。歩留向上剤は、総完成紙料固形分に対して0.14質量%で添加されたPercol 292(Ciba)であった。
【0235】
ハンドシートは、ターゲット坪量160gm-2、ターゲット填料配合量5質量%で作製された。シートは2回プレスされ、加熱されたドラム乾燥機を使用して乾燥され、12時間にわたって50%RH、23℃で調湿された。WPカオリンスラリーのサンプルを対照として使用した。
【0236】
引張強度及び灰分によるクレイ含有量について、シートを試験した。結果を、以下の表15に示す。
表15.ライナに関する結果
【表15】

【0237】
上記の結果は、共粉砕カオリン填料が、無漂白クラフトパルプをベースとしたライナ完成紙料において、無処理のカオリンより著しく低い弱化作用を有することを示す。
【0238】
実施例34
400gのリファイニングしていない漂白針葉樹クラフトパルプを20リットルの水に6時間にわたって浸漬し、次に機械的混合装置でスラッシュ化した。次に、このようにして得られた紙料を実験室用バレービーター中に注ぎ、負荷下で28分間にわたってリファイニングすることによって、カナダ標準ろ水度(CSF)525cm3にまで叩解されたリファイニング済みパルプのサンプルが得られた。
【0239】
次に、パルプを稠度試験機(Testing Machines Inc.)を使用して脱水することによって、13〜18質量%固形分のウェットパルプのパッドを得た。次に、以下で詳細に説明するように、次にこれを共粉砕実験で使用した。
【0240】
実施例35
750gの乾燥英国カオリン(Intramax 60)を、540cm3の水及び1.9gのポリアクリレート分散剤の40%溶液(Accumer 9300、Rohm&Haas)と混合することによってスラリーにした。NaOHを使用してpHを7に調節し、最終固形分は57.2質量%であった。次に、スラリーを粉砕ポットに移し、上(実施例34)で調製した37.5乾燥gのウェットパルプと混合した。NaOHでpHを9に調節し、1500gのCarbolite 16/20粉砕媒体を添加した。混合物を、流動性を維持するために必要に応じて水を添加しながら60分間にわたって粉砕した。60分後、温度は55℃に達した。次に、粉砕された生成物を、開口部700μmのスクリーンを使用して媒体から分離した。投入エネルギー量は147kWh/tと測定され、最終固形分は45.8質量%、pHは9.2であった。また、乾燥生成物は、全生成物に対して4.95質量%の繊維含有量を有していた。繊維成分のモード粒径は、Malvern Mastersizerを使用して44μm(e.s.d)と測定された。
【0241】
実施例36
750乾燥gのIntramax 60を、上(実施例34)で調製したような57質量%のスラリーとして粉砕ポットに計量した。37.5乾燥gのウェットパルプを添加し、次にpHを、10%のオルトリン酸を使用して4.0に調節した。次に、1500gのCarbolite 16/20媒体を添加し、混合物を60分間にわたって粉砕し、その後、温度は54℃に達した。投入作業エネルギー量は140kWh/tであった。スラリーは前回と同様に分離され、最終固形分は42質量%であった。pHは5.3であった。生成物の繊維含有量は4.0質量%と測定された。驚くべきことに、繊維成分のモード粒径は、Malvern Mastersizerを使用して0.50μm(esd)と測定され、pH9の場合よりほぼ1桁細かい。この予期せぬ観察結果は、酸性条件下での粉砕が、アルカリ性条件下での粉砕よりはるかに効果的であることを示唆する。
【0242】
実施例37
750gの乾燥大理石粉末を400cm3の水と共に粉砕ポットに入れ、57分間にわたって投入作業エネルギー量120kWh/tで粉砕した。生成物は、58質量%のe.s.dで<2μm(Sedigraphで測定)の粒子を有すると判明した。次に、37.5乾燥gのウェットパルプ(実施例34と同様に調製)を混合し、粉砕を、更に800cm3の水を添加しながら、更に313kWh/tのエネルギーを費やして更に2時間にわたって継続した。最終温度は74℃、固形分は37.4質量%であり、700μmスクリーンでの分離後の乾燥生成物の繊維含有量は4.4質量%であった。繊維のモード粒径は、Malvern Mastersizerを使用して50μmであると推定された。
【0243】
実施例38
34%固形分のスラリーとしての750乾燥gのOptical HB(偏三角面体PCC)を37g(乾燥質量)のウェットパルプ(実施例34と同様に調製)及び200cm3の水と混合し、1500gのCarbolite 16/20媒体を添加した。混合物を1時間にわたって154kWh/tのエネルギーを使用して粉砕した。最終温度は53℃であり、媒体の分離後、スラリーは固形分含有量41質量%を有し、乾燥生成物は繊維含有量5.3質量%を有した。繊維成分のモード粒径は、Malvern Mastersizerによって100〜200μmであった。
【0244】
実施例39
新聞用紙での研究
これらの填料を、ハンドシート研究において更に比較した。これらの填料のためのホストパルプは、北欧産サーモメカニカルパルプサンプルをスラッシュ化することによって調製された。そのままのパルプがCSF50cm3を有していたことから、更なるリファイニングは行われなかった。歩留向上剤は、総完成紙料固形分に対して0.02質量%で添加されたPercol 292(Ciba)であった。ハンドシートは50gm-2で調製され、破裂強度、引張強度、バルク、ベントセン空隙率、457nmでの反射率(ISO白色度)及び不透明度について試験した。3種類の配合を得て、結果(表16を参照のこと)を10質量%の配合レベルに補間する。
【0245】
これらの結果は、共粉砕填料、特にはIntramaxとの共粉砕填料によって、対照填料より高い強度及び低い空隙率が得られることを示し、全ての性質が望ましい。白色度及び不透明度は若干低下する。Intramaxとの共粉砕では、強度の上昇は、填料の配合量を、強度を失うことなく0質量%から共粉砕填料での少なくとも8質量%にまで増量可能にするに十分なものである。充填紙の空隙率はより低くなり、また白色度及び不透明度は上昇する。
表16.ハンドシートに関する結果:新聞用紙、10質量%填料配合
【表16】

【0246】
実施例40
スーパーカレンダリングされた雑誌用紙の研究
ハンドシート研究を、新聞用紙研究の場合と同じパルプを使用して行った。タイムシートを55gm-2で作製し、填料配合量は30〜40質量%であった。配合量がより多いことから、歩留向上剤を0.07質量%(Percol 292)に増量した。ハンドシートを、破裂強度、引張強度、バルク、ベントセン空隙率、457nmでの反射率(ISO白色度)及び不透明度について試験した。3種類の配合を得て、結果(表17を参照のこと)を32質量%の配合レベルに補間する。
表17.ハンドシートに関する結果:SC雑誌用紙、32質量%填料配合
【表17】

【0247】
これらの結果は、強度の上昇、空隙率の低下並びに同様の白色度及び不透明度が共粉砕填料を使用して得られることを示す。Intramaxの場合、配合量を30質量%から少なくとも36質量%にまで、強度を失うことなく、空隙率を下げ、またより高い白色度及び不透明度でもって増量可能であった。
【0248】
実施例41
ハンドシートの研究
この研究のためのホストパルプは、2%稠度にまでスラッシュ化され且つバレービーターによってCSF520cm3にまで叩解された漂白化学クラフト針葉樹パルプのバッチであった。歩留向上剤は、総完成紙料固形分に対して0.02質量%で添加されたPercol 292(Ciba)であった。
【0249】
2組のシートを、偏三角面体沈降炭酸カルシウム(Optical HB、Imerys)を使用して25質量%(A組)及び32質量%(B組)の配合レベルで作製した。更に別のシート組(C組)を、25質量%のOptical HB+7質量%の共粉砕GCC(実施例37)の配合量で作製し、すなわち総配合量は32質量%であった。対照組(D組)は、25質量%のOptical HB+7質量%の標準GCC(60%<2μm)の配合量で作製された。最後の組(E組)は、Optical HBと共粉砕GCC(実施例37)との50/50ブレンド物を使用して作製され、総配合量は31質量%であった。
【0250】
ハンドシートは80gm-2で調製され、2回プレスされ、加熱されたドラム乾燥機を使用して乾燥され、12時間にわたって50%RH、23℃で調湿された。シートを、引張強度、バルク、ベントセン空隙率、457nmでの反射率(ISO白色度)及び不透明度について試験した。結果を以下の表16に示す。
【0251】
これらの結果は、PCCだけを使用した場合より少ない強度低下でもって、PCC充填シートの填料配合量を更に上昇させるために共粉砕GCC填料を使用可能であることを示す。より高い配合量でも、光学的性質は維持され、空隙率はバルクの深刻な低下を伴うことなく低下する。
表16.PCC注ぎ足し結果
【表18】

【0252】
実施例41
サンプルを、内径14.5cmの円筒形のバッフル無搭載粉砕槽を備えた実験室用縦型撹拌媒体ミルを使用して調製した。このミルは、直径1.8cmの円形断面軸を有する垂直インペラを備えていた。この軸は、軸の底部にX状に配置された4つのインペラアームを備えていた。インペラアームは円形断面及び直径1.8cmを有し、軸中心線からインペラ先端まで長さ6.5cmであった。
【0253】
粉砕媒体(Carbolite、Carbo Ceramics Inc.、米国)は、16/20メッシュサイズのものであり、比重2.7を有していた。
【0254】
粉砕炭酸カルシウム(GCC)(Intracarb 60、IMERYS Minerals、ベルギー)は、Sedigraphによる粒径60%<2μmを有していた。
【0255】
パルプは、CSF520cm3にまで叩解された漂白クラフト針葉樹(Botnia Pine RM90)であった。
【0256】
実験室での粉砕は、1.5kgの粉砕媒体、50%の媒体体積濃度(MVC)、総固形分の5質量%のパルプレベル、投入エネルギー量2500kWh/t(パルプ)及びインペラ速度1000rpmをベースとした。粉砕は、様々な固形分レベルのバッチモードで行われた。
【0257】
各粉砕の最後に、粉砕チャンバをミルから取り外し、中身を取り出した。次に、粉砕媒体を、ミルの外側で生成物から分離した。
【0258】
各粉砕についての条件及び得られた生成物の性質を、以下の表17に示す。B100粘度は、ブルックフィールド粘度計(Brookfield Viscometers Ltd.、Brookfield Technical Centre、Stadium Way、Harlow、Essex CM19 5GX、英国)によって100rpmで測定された粘度である。
表17.
【表19】

【0259】
これらのデータは以下のことを示す。
・最高粉砕固形分で調製されたサンプルが最高粘度、最高パルプ含有量、最微細MFCサイズ及び最高(最良)フィルターペーパー破裂上昇試験結果を有する。
・より少ない粉砕固形分で調製されたサンプルは、より低い粘度、より低いパルプ含有量、より粗いMFCサイズ及びより低いフィルターペーパー破裂上昇試験結果を有する。
・全てのサンプルが、B100粘度<200mPasが典型的である典型的なGCC生成物より高い粘度を有する。
【0260】
実施例42
標準250μmスクリーンを備えた全規模SMD(www.metso.com)において共粉砕生成物を調製する試みがなされた。粉砕媒体、GCC及びパルプは実施例41と同じだが、パルプはリファイニングされなかった。粉砕媒体装入量は5トンであった。作業条件も実施例41で採用したものと同様であり、50%MVC、パルプレベルは総固形分の5質量%、投入エネルギー量は2500kWh/t(パルプ)であった。インペラのrpmは、実験室用ミルの先端速度と同様にするため様々であった。粉砕は、連続開回路モードで行われた。
【0261】
粉砕は当初、実施例41のように35質量%総固形分で試みられた。しかしながら、これらの条件下ではいずれの生成物の調製も不可能であった。高粘度生成物はどうしてもスクリーンを通過してミルから出てこなかった。その代わりに、材料はミル内に蓄積された。粉砕固形分を20質量%未満にまで低下させることによって、ミル内の流れを許容可能なものとした。これらの条件下で得られた生成物は、より高い固形分での粉砕で見られたものと同じ改善を紙の性能において示さなかった。
【0262】
例えば、実施例41のサンプル1は、実験室バッチ粉砕(50%MVC、総固形分の5%のパルプレベル、投入エネルギー量2500kWh/t(パルプ)、インペラ速度1000rpm)において35%固形分で調製された。サンプル6、7は、標準250μmスクリーンを備えた全規模SMDにおいて同様の条件下で調製された。ただし、ミル内で流れを得るために、固形分を<20%に低下させた。

【表20】

【0263】
これらのデータは以下のことを示す。
・実験室規模及び全規模で調製されたMFCの両方が、対照より高い填料配合量を可能にした。
・しかしながら、実験室バッチ粉砕において35%固形分で調製されたMFCはより微細な繊維ピーク最大値を有し、またミル内で流れを得るために固形分を低下させなくてはならなかったSMDで調製されたサンプルより高い填料配合を可能にした。
・注:高固形分条件下ではSMDを動作させることが不可能であった。
【0264】
実施例43
サンプルを、内径87cmの円筒形の粉砕槽を備えたパイロット規模縦型撹拌媒体ミルを使用して調製した。このミルは、円形断面軸を有する垂直インペラを備えていた。この軸は、軸の底部にX状に配置された4つのインペラアームを備えていた。インペラアームは円形断面を有し、軸中心線からインペラ先端まで長さ30cmであった。
【0265】
粉砕機はバッチモードで動作させた。GCC及びパルプは、実施例41と同じであった。試験は、MVC50%及び39%固形分(パルプレベルは総固形分の5%)で行われた。粉砕機のrpmは285であった。パルプは叩解されなかった。試験は2回行われた。1回目の試験では実施例41と同様に16/20粉砕媒体を利用した。2回目の試験では同じ密度の3mmの媒体を利用した。両方の試験に関する繊維d50及びモード鉱物粒径を表Xに示す。

【表21】

【0266】
これらのデータは、繊維粉砕挙動が、より粗い媒体のものと特には低投入エネルギー量で同様であることを示す。しかしながら、鉱物の粉砕は、より粗い媒体の使用によって大幅に抑えられた。
【0267】
実施例44
これらの試験は、実施例43と同じパイロット粉砕機で行われた。GCC及びパルプは、実施例41、42と同じであった。
【0268】
サンプルは、バッチモードで以下の条件下、無叩解のパルプを使用して調製された。総固形分:10%、総固形分に対するパルプの割合:20%、MVC:50%、285rpm、3mm媒体、投入エネルギー量:3500kWh/t(パルプ)。得られたサンプル(サンプル8)は、102μmの繊維d50を有していた。
【0269】
別の試験において同じ条件を採用したが、このケースにおいては粉砕機を再循環バッチモードで250μmスクリーンを使用して構成した。生成物の粘度が高いことから流量は許容範囲外となり、生成物は得られなかった。
【0270】
更に別の試験において、サンプルは、再循環バッチモードに構成された粉砕機で調製され、1mmスクリーンが使用され、また60l/分の高流量が得られた。得られたサンプル(サンプル9)は107μmの繊維d50を有していた。
【0271】
2種類のサンプルをハンドシート評価で使用し、実施例42と同じ手順を踏んだ。結果を表Xに示す。
表X.
【表22】

【0272】
これらのデータは、より粗い媒体ひいてはより粗いスクリーンの使用によって、生成物の粘度が高いにも関わらず、商業的に実現可能な再循環バッチ(又は連続)構成での共粉砕生成物の調製が可能になることを示す。
【0273】
実施例45
試験を、パイロット規模タワーミル(Hosokawa Alpine model ANR 250)で行った。これは、円筒形のバッフル無搭載粉砕チャンバ、及びその長さ全体にわたって一連のインペラローターディスクを備えた垂直インペラシャフトを備えた縦型撹拌媒体ミルである。このミルの約2/3に粉砕媒体が充填される。運転中、供給原料は底部からミルに進入し、粉砕ゾーンを通過して静止ゾーンへと上昇し、ここで粉砕媒体は生成物から離れて沈降し始める。次に、生成物は、分級機ホイールを経由してミルの外に出る。分級機ホイールは、粉砕媒体をミル内に保持する役割を果たす。
【0274】
共粉砕生成物は、開回路連続構成において以下の条件下、無叩解のパルプを使用して調製された。総固形分:12.4質量%、総固形分に対するパルプの割合:20%、平均MVC:22%、500rpm、2〜2.5mm、比重約6の媒体、投入エネルギー量:3200kWh/t(パルプ)、ミルへの流量:1.7l/分。
【0275】
これらの条件下で動作させようとする当初の試みは不成功に終わったが、これは粉砕媒体の生成物中へのキャリーオーバーが生じたからである(1mm媒体を使用してのそれ以前の試みも、同じく媒体のキャリーオーバーにより失敗した)。
【0276】
続いて、分級機ホイールのすぐ手前で約1l/分の水が添加され、ミルから外に出る生成物の固形分が8.1質量%に低下した。これらの条件下では、全ての媒体がミル内に保持された。
【0277】
得られたサンプル(サンプル10)は、145μmの繊維d50及び89μmのモード繊維粒径を有し、サンプルは、実施例42と同じ手順でハンドシート評価において評価された。結果を表Xに示す。
表X.
【表23】

【0278】
これらのデータは、粗高密度媒体を使用し、タワーミルの分級機ホイールのすぐ手前で水を添加することによって、生成物が高粘度であっても、商業的に実現可能な構成で共粉砕物の調製が可能であることを示す。
【0279】
実施例46
サンプルを、内径14.5cmの円筒形のバッフル無搭載粉砕槽を備えた実験室用縦型撹拌媒体ミルを使用して調製する。このミルは、直径1.8cmの円形断面軸を有する垂直インペラを備える。この軸は、軸の底部にX状に配置された4つのインペラアームを備える。インペラアームは円形断面及び直径1.8cmを有し、軸中心線からインペラ先端まで長さ6.5cmである。
【0280】
粉砕媒体(Carbolite、Carbo Ceramics Inc.、米国)は、16/20メッシュサイズであり、比重2.7を有する。
【0281】
パルプは、CSF520cm3にまで叩解された漂白クラフト針葉樹(Botnia Pine RM90)である。
【0282】
実験室での粉砕は、1.5kgの粉砕媒体及び50%の媒体体積濃度(MVC)(変更の可能性あり)をベースとし、パルプレベルは最高10質量%まで稠度範囲をカバーする。最高20000kWh/t(パルプ)の投入エネルギー量を、インペラ速度1000rpmを採用して調査する。粉砕は、バッチモードで様々な固形分レベルで行われる。
【0283】
各粉砕の最後に、粉砕チャンバをミルから取り外し、中身を取り出す。粉砕媒体を、ミルの外側で生成物から分離する。
【0284】
MFC生成物を、Malvern光散乱装置を使用して粒径について、またブルックフィールド粘度計(Brookfield Viscometers Ltd.、Brookfield Technical Centre、Stadium Way、Harlow、Essex CM19 5GX、英国)を100rpmで使用してB100粘度について特徴づけし、紙の性能を、フィルターペーパー破裂上昇試験及び実施例7のハンドシート法を使用して評価する。ただし、填料は使用しない又は填料はIntracarb 60(Imerys、ベルギー)である。
【0285】
調製されたMFCによってフィルターペーパー破裂試験の結果が向上し、またハンドシートがより強靭になることが期待される。より高い稠度及びより高いエネルギーでの加工によってMFCがより微細となり、また紙強度性能に関しては最適MFCサイズがあるのではないかと予想される。最適性能は、おそらくは、高稠度で加工することによって最も効率的に得られる。
【0286】
実施例47
サンプルを、内径87cmの円筒形の粉砕槽を備えたパイロット規模縦型撹拌媒体ミルを使用して調製する。このミルは、円形断面軸を有する垂直インペラを備える。この軸は、軸の底部にX状に配置された4つのインペラアームを備える。インペラアームは円形断面を有し、軸中心線からインペラ先端まで長さ30cmである。
【0287】
粉砕機はバッチモードで動作させる。パルプは、実施例46と同じである。試験は、実施例46からの最適化された条件下で行われる。粉砕機のrpmは約285である。パルプは無叩解である。試験は2回行われる。1回目の試験では実施例46と同様に16/20粉砕媒体を利用する。2回目の試験では同じ密度の3mmの媒体を利用する。
【0288】
調製されたMFCを、実施例46の方法を使用して特徴づけ及び評価する。
【0289】
両方の粉砕媒体によって同様の粒径分布のMFCが得られ、またこれらのMFCサンプルによって、より高い強度のハンドシートの作製が可能になることが予想される。
【0290】
実施例48
試験は、実施例42で使用のものと同じパイロット粉砕機で行われる。パルプは、実施例45のものと同じである。粉砕媒体は3mmである。
【0291】
MFCサンプルは、バッチモードで実施例45からの最適化された条件下で調製される。得られたサンプルのMFC粒径分布特性が求められる。
【0292】
別の試験において同じ条件を採用するが、このケースにおいては粉砕機を再循環バッチモードで250μmスクリーンを使用して構成する。生成物の粘度が高いことから流量が許容範囲外となり、生成物は得られない可能性がある。
【0293】
更に別の試験において、サンプルは、再循環バッチモードに構成された粉砕機で調製され、1mmスクリーンが使用され、また高流量が期待される。
【0294】
調製されたMFCを、実施例45の方法を使用して特徴づけ及び評価する。
【0295】
より粗い媒体ひいてはより粗いスクリーンの使用によって、生成物の粘度が高いにも関わらず、商業的に実現可能な再循環バッチ(又は連続)構成における高稠度及び低エネルギー量での微細な粒径分布のMFCの調製が可能になることをデータは示すと期待される。
【0296】
実施例49
試験を、パイロット規模タワーミル(Hosokawa Alpine model ANR 250)で行う。これは、円筒形のバッフル無搭載粉砕チャンバ、及びその長さ全体にわたって一連のインペラローターディスクを備えた垂直インペラシャフトを備えた縦型撹拌媒体ミルである。このミルの約2/3に粉砕媒体が充填される。運転中、供給原料は底部からミルに進入し、粉砕ゾーンを通過して静止ゾーンへと上昇し、ここで粉砕媒体は生成物から離れて沈降し始める。次に、生成物は、分級機ホイールを経由してミルの外に出る。分級機ホイールは、粉砕媒体をミル内に保持する役割を果たす。
【0297】
MFCサンプルは、開回路連続構成において、実施例46からの最適化された条件下、無叩解のパルプを使用して調製される。2〜2.5mm、比重約6の粉砕媒体を使用する。2000〜15000kWht/t(パルプ)の範囲の投入エネルギー量が使用される。
【0298】
これらの条件下で動作させようとする当初の試みは不成功に終わると予測されるが、これはMFCの粘度が高いことから粉砕媒体の生成物中へのキャリーオーバーが生じるからである。
【0299】
続いて、分級機ホイールのすぐ手前で水が添加され、ミルから外に出る生成物の固形分が、媒体のキャリーオーバーが生じないレベルにまで低下する。これらの条件下では、全ての媒体がミル内に保持される。
【0300】
調製されたMFCを、実施例46の方法を使用して特徴づけ及び評価する。
【0301】
得られるサンプルは、微細な繊維粒径分布を有する。ハンドシートにおける評価は、調製されたMFCによってシートの破裂強度が上昇することを示す。
【0302】
これらのデータは、粗高密度媒体を使用し、タワーミルの分級機ホイールのすぐ手前で水を添加することによって、生成物が高粘度であっても、商業的に実現可能な構成でMFCの調製が可能であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を調製するための方法であって、
セルロースを含む繊維状基材を、無機粒子材料の存在下、水性環境においてミクロフィブリル化する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ミクロフィブリル化工程が、前記セルロースを含む繊維状基材を、前記無機粒子材料の存在下で粉砕することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無機粒子材料を、セルロースを含む繊維状基材の不在下で粉砕し、望ましい粒径を有する無機粒子材料を得る最初の工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ミクロフィブリル化工程が、ホモジナイザー又はリファイナーにおいて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(i)前記無機粒子材料を、セルロースを含む繊維状基材の不在下、前記ホモジナイザーにおいて加工する最初の工程、又は
(ii)前記無機粒子材料を、セルロースを含む繊維状基材の不在下で粉砕し、望ましい粒径分布を有する無機粒子材料を得る最初の工程、
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記セルロースを含む繊維状基材が、パルプ、例えば、化学パルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、機械パルプ、再生パルプ、ブロークパルプ、製紙廃棄物流、製紙工場由来廃棄物又はこれらの組み合わせの形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記無機粒子材料が、アルカリ土類金属炭酸塩若しくは硫酸塩、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト若しくは石膏、含水カンダイトクレイ、例えば、カオリン、ハロイサイト若しくはボールクレイ、無水(焼成)カンダイトクレイ、例えば、メタカオリン若しくは完全焼成カオリン、タルク、マイカ、パーライト、又は珪藻土、又はこれらの組み合わせである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記無機粒子材料が、アルカリ土類金属炭酸塩、例えば、炭酸カルシウムである、請求項1〜7のいずれか1項に請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記無機粒子材料がカオリンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記粉砕が、1つ以上の粉砕槽において行われる、請求項2〜3及び6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記粉砕槽がタワーミルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記タワーミルが、1つ以上の粉砕ゾーン上に静止ゾーンを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記タワーミルが、1つ以上の粉砕ゾーン上に分級機を備え、任意に、該分級機が液体サイクロンである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記タワーミルが、1つ以上の粉砕ゾーン上にスクリーンを備える、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記粉砕が、プラグ流れ条件下で行われる、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ミルの最上部において、前記静止ゾーンに近接して水を添加し、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む前記水性懸濁液の粘度を低下させる、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
水を、1つ以上の粉砕ゾーンに、前記タワーミルの長さに沿って位置決めされる1つ以上の注水点を経由して添加する、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記タワーミルが、一連のインペラローターディスクを長さ全体にわたって備えた垂直インペラシャフトを備える、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記インペラローターディスクが、粉砕中の装入物の通過を可能にする寸法の1つ以上の開口部を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記粉砕が、スクリーン粉砕機において行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記スクリーン粉砕機が、撹拌媒体デトライターである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記スクリーン粉砕機が、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備える、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記スクリーン粉砕機が、少なくとも約500μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備える、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
スクリーン粉砕機が、少なくとも約1000μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記粉砕が、粉砕媒体の存在下で行われる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
粉砕媒体が、約0.5mm〜約6mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
粒子が、少なくとも約3mmの平均直径を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記粉砕媒体が、少なくとも約2.5の比重を有する、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
粒子が、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5又は少なくとも約6の比重を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
粉砕媒体が、装入物の最高約70体積%の量で存在する、請求項25〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
粉砕媒体が、装入物の約50体積%の量で存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記セルロースを含む繊維状基材及び無機粒子材料が、水性環境において、少なくとも約4質量%の初期固形分含有量で存在し、このうちの少なくとも約2質量%がセルロースを含む繊維状基材である、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記初期固形分含有量が、少なくとも約10質量%又は少なくとも約20質量%である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記初期固形分含有量が、少なくとも約30質量%である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記初期固形分含有量が、少なくとも40質量%である、請求項34〜44に記載の方法。
【請求項36】
前記初期固形分含有量の少なくとも約5質量%が、セルロースを含む繊維状基材である、請求項32〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記初期固形分含有量の少なくとも約10質量%が、セルロースを含む繊維状基材である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記初期固形分含有量の少なくとも約15質量%が、セルロースを含む繊維状基材である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記初期固形分含有量の少なくとも約20質量%が、セルロースを含む繊維状基材である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記粉砕が、2つ以上の粉砕槽のカスケードにおいて行われる、請求項10〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記粉砕が閉回路で行われる、請求項10〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
該方法が開回路で行われる、請求項10〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
使用されるエネルギーの総量が、前記セルロースを含む繊維状基材中の乾燥繊維1トンあたり約10000kWh未満であり、例えば、前記セルロースを含む繊維状基材中の乾燥繊維1トンあたり約5000kWh未満である、請求項1〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記セルロースを含む繊維状基材が、約10〜約700cm3のカナダ標準ろ水度を有する、請求項1〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記セルロースを含む繊維状基材が、約300〜約700cm3のカナダ標準ろ水度を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記セルロースを含む繊維状基材がリファイニングされない、請求項1〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記無機粒子材料の平均粒径(d50)が大幅に低下しない、請求項1〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記水性懸濁液を処理して少なくとも水の一部を除去し、部分的に乾燥させた生成物を生成するか、又は前記水性懸濁液を処理して約100体積%の水を除去し、本質的に完全に乾燥させた生成物を生成する、請求項1〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記ミクロフィブリル化工程中の前記水性環境のpHが酸性である、請求項1〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記ミクロフィブリル化工程中の前記水性環境のpHがアルカリ性である、請求項1〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
製紙又は紙塗工の方法における使用に適した、請求項1〜51のいずれか1項に記載の方法によって得られる水性懸濁液。
【請求項52】
ミクロフィブリル化セルロース、無機粒子材料及び他の任意の添加剤から成る又は本質的に成る、製紙又は紙塗工の方法における使用に適した水性懸濁液。
【請求項53】
前記無機粒子材料が、該無機粒子材料の乾燥質量に基づいて、粒子の少なくとも約10質量%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布を有する、請求項52又は53に記載の水性懸濁液。
【請求項54】
前記無機粒子材料が、Malvern Mastersizer Sマシンで測定した場合に、該無機粒子材料の乾燥質量に基づいて、粒子の少なくとも約10体積%が2μm未満のe.s.dを有するような粒径分布を有する、請求項52又は53に記載の水性懸濁液。
【請求項55】
前記水性懸濁液が、無機粒子材料の総乾燥質量及びセルロースを含む繊維状基材の乾燥繊維含有量に基づいて、最高約50質量%のミクロフィブリル化セルロースを含む、請求項52〜55のいずれか1項に記載の水性懸濁液。
【請求項56】
前記無機粒子材料が、炭酸カルシウム、カオリン又はこれらの混合物である、請求項52〜56のいずれか1項に記載の水性懸濁液。
【請求項57】
前記炭酸カルシウムがGCC又はPCCである、請求項56に記載の水性懸濁液。
【請求項58】
前記ミクロフィブリル化セルロースが、約5μm〜約500μmのd50を有する、請求項52〜58のいずれか1項に記載の水性懸濁液。
【請求項59】
請求項52〜59のいずれか1項に記載の水性懸濁液を含む製紙用組成物。
【請求項60】
前記ミクロフィブリル化セルロースが、約20〜約50の繊維勾配を有する、請求項60に記載の製紙用組成物。
【請求項61】
請求項60又は61に記載の製紙用組成物から調製される紙製品。
【請求項62】
請求項52〜59のいずれか1項に記載の水性懸濁液及び他の任意の添加剤を含む紙塗工用組成物。
【請求項63】
請求項63に記載の紙塗工用組成物で塗工される紙製品、例えば、板紙。
【請求項64】
紙製品を製造するプロセスであって、
(i)紙製品の形成に適したパルプの形態で、セルロースを含む繊維状基材を得る又は調製する工程、
(ii)工程(i)のパルプ、請求項52〜59のいずれか1項に記載の水性懸濁液及び他の任意の添加剤から製紙用組成物を調製する工程、
(iii)前記製紙用組成物から紙製品を形成する工程
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項65】
紙製品を製造するための総合プロセスであって、
(i)紙製品の形成に適したパルプの形態で、セルロースを含む繊維状基材を得る又は調製する工程、
(ii)請求項1〜51のいずれか1項に記載の方法に従って、前記セルロースを含む繊維状基材の一部をミクロフィブリル化し、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む水性懸濁液を調製する工程、
(iii)工程(i)のパルプ、工程(ii)で調製された水性懸濁液及び他の任意の添加剤から製紙用組成物を調製する工程、
(iv)前記製紙用組成物から紙製品を形成する工程
を含むことを特徴とする総合プロセス。
【請求項67】
紙製品を、請求項30に記載の塗工用組成物であり得る紙塗工用組成物で塗工することを更に含む、請求項65に記載のプロセス又は請求項66に記載の統合プロセス。
【請求項68】
請求項49に記載の方法によって得られる、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む部分的に乾燥させた又は本質的に完全に乾燥させた生成物。
【請求項69】
請求項52〜59のいずれか1項に記載の水性懸濁液の、製紙用組成物における填料としての使用。
【請求項70】
請求項52〜59のいずれか1項に記載の水性懸濁液の、紙塗工用組成物における使用。
【請求項71】
(i)ISO国際規格11475に準拠して測定した場合に、請求項1〜51のいずれか1項に従って調製されたミクロフィブリル化セルロースを含まない塗工紙製品と比較して、少なくとも2単位高い白色度、又は
(ii)ISO国際規格8971−4(1992)に準拠して測定された、請求項1〜51のいずれか1項に従って調製されたミクロフィブリル化セルロースを含まない塗工紙製品と比較して、少なくとも0.5μm滑らかなパーカープリントサーフ平滑度、又は(i)と(ii)の組み合わせを有する、請求項64に記載の塗工紙製品。
【請求項72】
ミクロフィブリル化セルロースを含む水性懸濁液を調製するための方法であって、
粉砕完了後に除去される粉砕媒体の存在下での粉砕によって、セルロースを含む繊維状基材を水性環境中でミクロフィブリル化する工程を含み、前記粉砕を、タワーミル又はスクリーン粉砕機で行い、かつ、前記粉砕を、粉砕可能な無機粒子材料の不在下で行うことを特徴とする方法。
【請求項73】
前記粉砕をタワーミルで行う、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記タワーミルが、1つ以上の粉砕ゾーン上に静止ゾーンを備える、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記タワーミルが、1つ以上の粉砕ゾーン上に分級機を備え、任意に分級機が液体サイクロンである、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項76】
前記タワーミルが、1つ以上の粉砕ゾーン上にスクリーンを備える、請求項73〜75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記粉砕が、プラグ流れ条件下で行われる、請求項73〜76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
1つ以上の粉砕ゾーンの上の静止ゾーン又は分級機又はスクリーンに近接させて水を添加し、ミクロフィブリル化セルロース及び無機粒子材料を含む前記水性懸濁液の粘度を低下させる、請求項72〜77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
水が、1つ以上の粉砕ゾーンに、前記タワーミルの長さに沿って位置決めされている1つ以上の注水点を経由して添加される、請求項72〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記タワーミルが、一連のインペラローターディスクを長さ全体にわたって備えた垂直インペラシャフトを備える、請求項72〜79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
インペラローターディスクが、粉砕中の装入物の通過を可能にする寸法の1つ以上の開口部を有する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記粉砕が、スクリーン粉砕機において行われる、請求項72に記載の方法。
【請求項83】
前記スクリーン粉砕機が、撹拌媒体デトライターである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記スクリーン粉砕機が、少なくとも約250μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備える、請求項82又は83に記載の方法。
【請求項85】
前記スクリーン粉砕機が、少なくとも約500μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備える、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記スクリーン粉砕機が、少なくとも約1000μmの公称開口サイズを有する1つ以上のスクリーンを備える、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記粉砕媒体が、約0.5mm〜約6mmの範囲の平均直径を有する粒子を含む、請求項72〜86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
粒子が、少なくとも約3mmの平均直径を有する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記粉砕媒体が、少なくとも約2.5の比重を有する粒子を含む、請求項72〜88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
粒子が、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5又は少なくとも約6の比重を有する、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記粉砕媒体が、装入物の最高約70体積%の量で存在する、請求項72〜90のいずれかに記載の方法。
【請求項92】
前記粉砕媒体が、装入物の約50体積%の量で存在する、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記セルロースを含む繊維状基材が、水性環境において、少なくとも約5質量%の初期固形分含有量で存在する、請求項72〜92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記初期固形分含有量が、少なくとも約0.5質量%である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記初期固形分含有量が、少なくとも約1質量%である、請求項33に記載の方法。
【請求項96】
前記初期固形分含有量が、少なくとも約2質量%である、請求項34〜44に記載の方法。
【請求項97】
前記粉砕が、2つ以上の粉砕槽のカスケードにおいて行われる、請求項72〜96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記粉砕が閉回路で行われる、請求項72〜97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
該方法が開回路で行われる、請求項72〜97のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−514137(P2012−514137A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542900(P2011−542900)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000982
【国際公開番号】WO2010/131016
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(504240717)イメリーズ ミネラルズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】