説明

紙容器用印字装置

【課題】紙容器に印字をする際の印字の交換作業性を向上する紙容器用印字装置を提供する。
【解決手段】印字装置の印字ロール24は円筒状の本体部22の周りに一対の版胴部23が装着され、本体部22の第一マグネットM1と版胴部23の第二マグネットM2を介して固着する。本体部22の表面に版胴部23を被せて装着する際に第二マグネットM2の突出部を収納するための凹部22bが表面に形成され、一対の凹部22bは対称形で平面視矩形形状で円周に沿って遠ざかる方向に凹部22bの深さが徐々に浅くなる形状である。凹部22bの底面に第一マグネットM1を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体食品用紙容器及び紙容器用包装材料に印字する印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳、清涼飲料等の液体食品を充填する紙容器には、賞味期限、製造年月日、ロット番号、製造工場番号等の製品情報が印刷される。印刷した製造情報によって製造工場から消費者に至るまでの出荷や品質等の管理が容易にできる。
上記の製造情報は、図1に例示する紙容器1の頂面若しくは側面に、又は紙容器が成形される途中若しくはその成形前の紙容器用包装材料の表面に、印刷される。
【0003】
例えば、特許文献1に掲載された印字装置では、印字ロールは筒状の本体部に両面テープを介して版胴部を張付けて形成される。この版胴部にゴム製の印字板が印字ホルダーで固着される。ここで、印字ホルダーはボルト等を介して印刷ユニットに固着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−38772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印字内容を換える場合、使用済みの印字板を印字ホルダーから取外して新しい印字版に交換する際、印字ホルダーの脱着作業に時間が掛る。また、印字版の取付け方向を間違って装着する恐れがある。本発明は、迅速に交換でき、印字版の取付方向を間違えることなく確実且つ容易に取付できる紙容器用印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の紙容器用印字装置は、紙基材から成形される紙容器用の印字装置であって、印字装置の印字ロールは、円筒状の本体部と、本体部外周を覆う半円弧状の一対の版胴部とを備え、
各版胴部が四隅に第二マグネットを備え、本体部が第二マグネットに対応する位置に第一マグネットを備え、版胴部と本体部とが第一マグネット及び第二マグネットを介して着脱自在に装着され、
第一マグネットは本体部に形成された凹部に埋設されて第一マグネットの外端面が凹部の底面と同一面となり、第二マグネットは版胴部に形成された凹部に埋設されて第二マグネットの内端面が版胴部内側から突出し、本体部の凹部に嵌合することを特徴としている。
【0007】
この発明の好ましい態様において、本体部の凹部の合計8面の底面が本体部の円筒形状の接線方向と平行な作業面であり、第一マグネットと第二マグネットの中心線が本体部及び版胴部の中心軸に交わるように配置される。
【0008】
この発明の好ましい態様において、円周方向に対向する一対の本体部の凹部の底部(底面)は対称形で平面視矩形形状であり、円周に沿って遠ざかる方向に凹部の深さが徐々に浅くなる楔形状である。
【0009】
この発明の好ましい態様において、互いに対向する版胴部の第二マグネットの極と本体部の第一マグネットの極とが、互いに引き合う異なる磁極を備え、版胴部の四隅の第二マグネットは対角線上で異なる磁極を持つ。
【0010】
この発明の好ましい態様において、版胴部は回転方向の端部の裏面角部に切欠を備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明による紙容器用印字装置は、紙基材から成形される紙容器用の印字装置であって、印字装置の印字ロールは、円筒状の本体部と、本体部外周を覆う半円弧状の一対の版胴部とを備える。
版の交換に際して、半円弧状の一対の版胴部をそれぞれ、本体部の外周へ、又は外周から、装着し、若しくは離脱させることによって、容易に着脱することができる。
また、各版胴部が四隅に第二マグネットを備え、本体部が第二マグネットに対応する位置に第一マグネットを備え、版胴部と本体部とが第一マグネット及び第二マグネットを介して着脱自在に装着される。
各版胴部が四隅にマグネットを備えるので、確実に装着することができる。版胴部と本体部とがマグネットの磁力を利用して確実に固着されるので、ねじ、ボルト、ナット等の微小パーツを必要としないので、版の交換が容易であり、部品数を減らすことができ、信頼性を高め、コストを低減することができる。
第一マグネットは本体部に形成された凹部に埋設されて第一マグネットの外端面が凹部の底面と同一面となり、第二マグネットは版胴部に形成された凹部に埋設されて第二マグネットの内端面が版胴部内側から突出し、本体部の凹部に嵌合する。
第二マグネットの内端面が版胴部内側から突出するので、第二マグネットは本体部の凹部でガイドされて容易に第一マグネットに位置合わせできる。本体部の凹部に埋設された第一マグネットの外端面が凹部の底面と同一面となるので、第一マグネットとの位置合わを容易にする。
【0012】
この発明の好ましい態様において、本体部の凹部の合計8面の底面が本体部の円筒形状の接線方向と平行な作業面であり、第一マグネットと第二マグネットの中心線が本体部及び版胴部の中心軸に交わるように配置される。
第一マグネットと第二マグネットの中心線が同じであるので、両マグネットの垂直方向の強い磁力によって版胴部を確実且つ強固に本体部に固着できる。
一方、版胴部を持上げて、交換する際に、本体部の凹部の底面、作業面上を版胴部の第二マグネットをスライドさせるだけであるので、円筒状の本体部に対して版胴部は磁力線を横切るだけであるので、マグネットの垂直方向の磁力より弱い力で本体部から容易に取外すことができる。このため、版胴部の本体部への脱着の操作性が向上する。
【0013】
この発明の好ましい態様において、円周方向に対向する一対の本体部の凹部の底部は対称形で平面視矩形形状であり、円周に沿って遠ざかる方向に凹部の深さが徐々に浅くなる楔形状である。
版胴部は凹部の楔形状に沿ってスライドして本体部に容易に着脱できる。
【0014】
この発明の好ましい態様において、互いに対向する版胴部の第二マグネットの極と本体部の第一マグネットの極とが、互いに引き合う異なる磁極を備え、版胴部の四隅の第二マグネットは対角線上で異なる磁極を持つ。
間違って取り付けると、同極同士となり、マグネットが反発して取付けることができないので、版胴部を本体部に取付ける際に円周方向の取付け方向に間違いが生じない。版胴部の取付け方向が確実にできて取付作業性が向上する。
【0015】
この発明の好ましい態様において、版胴部は回転方向の端部の裏面角部に切欠を備える。
この切欠きにドライバー等を挿入することで版胴部を本体部から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に応用される紙容器2例を例示する斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における、印字装置の構成・機能を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態における、本体部と一対の版胴部とを備える印字ロールの分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における、印字ロールの本体部の外周に一対の版胴部が装着された状態を示す断面斜視図である。
【図5】本発明の実施形態における、本体部の凹部の底面に埋設された第一マグネット(N極)と、版胴部の内面から突出する第二マグネット(S極)と示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
<紙容器の印字装置の構成>
【0018】
図1に示すように、実施態様に応用される紙容器2例、図1(A)、(B)を例示する。
この例では、紙容器1には、頂面2又は側面3に、賞味期限、製造年月日、ロット番号、製造工場番号等の製品情報が印刷される。
この印刷は、紙容器1の成形、包装充填後に頂面2又は側面3に、若しくは、紙容器1の成形、包装充填前の包装材料5の頂面2又は側面3に対応する箇所に、印刷される。
【0019】
紙容器1の成形、包装充填は、例えば、紙容器充填装置において、紙基材の両面側に熱可塑性材料層と内面側にバリヤー層とを備える帯状の包装材料がリール状に巻いた状態で繰出機から連続的に繰出される。
【0020】
包装材料5は複数のガイドロールに案内され、上方から下方に下降しながら両端部を寄せ重ねて熱圧着により縦シールして筒状部が形成される。この筒状部に充填パイプを介して内容液が連続的に充填される。
【0021】
筒状部は紙容器一個分に相当する位置において遂次横シールで密封し且つ切断して枕状の原型容器が連続的に形成される。そして、原型容器の一対のフラップ部と一対のフラップ部をそれぞれ折込んで熱圧着して、図1(A)、(B)に示す紙容器1が成形される。
【0022】
紙容器1の成形、包装充填前の包装材料5の頂面2又は側面3に対応する箇所に、印刷される場合、包装材料5の表面に対応して設けられた印字装置18によって製造年月日、製造コード、製造工場の番号等の製品情報が紙容器毎の繰り返しで印刷される。
【0023】
図2に示すように、印字装置18において、インキパン19に供給されたインク20を三組の転写ロール21を介して印字ロール24に転移する。印字ロール24は円筒状の本体部22の周りに一対の版胴部23が装着され、版胴部23の表面には図示しない製品情報の印字版を備える。包装材料5の裏側には包装材料5を版胴部23に押付けるための圧胴ロール22を備える。転写ロール21、印字ロール24、圧胴ロール22は、図示しない回転伝動機構を介してそれぞれ駆動される。
【0024】
図3、図4、図5に示すように、印字ロール24は、筒状の本体部22に一対の半割れ筒状(半円弧状)の版胴部23がその四隅に固着手段としてのマグネットM1、M2を介して装着される。より詳しくは、円筒状の本体部22に4組の第一マグネットM1、版胴部23には第一マグネットM1に対応する位置に4組の第二マグネットM2がそれぞれ本体部22及び版胴部23の中心軸P1に向かって垂直に配置される。
【0025】
第二マグネットM2は鍔25a付のスリーブ25に、「締まり嵌め」の篏合状態で装着され、版胴部23を貫通して裏側23bから突出部25bが突出する状態で装着され、版胴部23の表側23aには突出しない。
【0026】
本体部22の表面22aに版胴部23の第二マグネットM2の突出部25bを収納するための凹部22bが中心線P2に直角に形成される。円周方向の対向する一対の凹部22bの底部22cは対称形で平面視矩形形状であり、円周に沿って遠ざかる方向に凹部22bの深さが徐々に浅くなるので凹部22bは楔形状である。
【0027】
この凹部22bの底面22cに第一マグネットM1が埋設され、第一マグネットM1の表面は底面(作業面)22cと同一面の状態である。一対の第一マグネットM1は円周方向の一方がS極で他方はN極が露出する。
【0028】
ここで、一対の第二マグネットM2が一対の第一マグネットM1に引付けられて固着するときに、第二マグネットM2のスリーブ25が延長線Qで示すように移動して版胴部22の凹部22b内における円周方向の壁面22dに当接する状態である。さらに、版胴部23の円周方向の両端部に版胴部23の裏面を切欠いて形成した溝部25を備える。
【0029】
<印字装置の作用>
本体部22の楔状の凹部22bの底面22cに第一マグネットM1が埋設されるので、第二マグネットM2を底面22cに沿って移動することで確実容易に第一マグネットM1に位置合わせができる。より詳しくは、本体部22と版胴部23を互いの円弧部によって位置合わせする場合には円弧領域の加工寸法精度誤差により一部が浮いた状態の表面の影響で位置合わせが困難な場合があるが、本発明の平面状の底面22cに沿って位置合わせする場合はその影響を回避できるので印刷性が向上する。
【0030】
さらに、第二マグネットM2が第一マグネットM1に固着した状態で、第二マグネットM2はスリーブ25を介して版胴部22の凹部22b内の円周方向の壁面22dに当接するので自動的に位置合わせできる。
【0031】
第一マグネットM1と第二マグネットM2は本体部22及び版胴部23の同一の中心P1に向かって同軸P2で配置されるので、強い磁力によって版胴部23を本体部22に確実で強固に固着できる。
【0032】
その一方で、印字板23を交換時にずらして持上げると第一マグネットM1と第二マグネットM2の固着面が互いにスライドするため、磁力線を横切る方向に力が掛かるので磁力に打ち勝って容易に離脱することができる。すなわち、マグネットの磁力は磁力線を横切る方向に印字板23を持上げると垂直磁力より低い力で印字板23を取外すことができる。
【0033】
印字ロール23の四隙の第二マグネットM2は印字ロール23を貫通し裏面23b側に突出して組付けられるので、この突出部25bが楔状に形成された凹部22bに挿入し案内されて第一マグネットM1の位置まで確実且つ容易に移動できる。
【0034】
一対の第二マグネットM2が一対の第一マグネットM1に引付けられて固着した状態で、第二マグネットM2はスリーブ24を介して版胴部22の凹部22b内における円周方向の壁面22dに当接するので、印字等のデザインの印刷位置決めが簡単で確実にできる。さらに、第二マグネットM2の回転方向のトルクを壁面22dで確実に安定して保持できるので印刷位置が狂わず印刷性が向上する。
【0035】
本体部22の一対の第一マグネットM1は円周方向の一方がS極で他方はN極が露出し、対応する版胴部23の一対の第一マグネットM2は円周同方向に一方がN極で他方はS極を備える。このように、それぞれ一対のマグネットM1、M2の円周方向の露出側の極性を異なる極性にすることで版胴部23のデザインを逆向けに張り間違えるミスが防止できるので作業効率が向上してコストダウンにつながる。
【0036】
版胴部23の円周方向の端部に版胴部23の裏面を切欠いて形成した溝部25にマイナスドライバー等の治具を簡単に挿入して版胴部23を浮かして本体部22から容易に外すことができる。
【0037】
版胴部23の溝部25は回転方向の両端部に設けてもよい。版胴部23を本体部22に一対ではなく三組以上を組付ける場合にも適用できる。屋根型容器等々色んな形状の紙容器の紙基材に対応して実施できる。
【0038】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明の 装置によって、牛乳、ジュース、ミネラルウォーターなどの飲料、流動食品などの包装容器を製造することができる。
【符号の説明】
【0040】
18 印字装置
22 本体部
22a 表面
22b 凹部
22c 底部
23 版胴部
23a 表側
23b 裏側
24 印字ロール
25 スリーブ
25a 鍔
25b 突出部
M1 第一マグネット
M2 第二マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材から成形される紙容器用の印字装置であって、印字装置の印字ロールは、円筒状の本体部と、本体部外周を覆う半円弧状の一対の版胴部とを備え、
各該版胴部が四隅に第二マグネットを備え、該本体部が第二マグネットに対応する位置に第一マグネットを備え、該版胴部と該本体部とが該第一マグネット及び該第二マグネットを介して着脱自在に装着され、
該第一マグネットは該本体部に形成された凹部に埋設されて該第一マグネットの外端面が該凹部の底面と同一面となり、該第二マグネットは該版胴部に形成された凹部に埋設されて該第二マグネットの内端面が該版胴部内側から突出し、該本体部の凹部に嵌合することを特徴とする紙容器用印字装置。
【請求項2】
該本体部の凹部の合計8面の底面が該本体部の円筒形状の接線方向と平行な作業面であり、該第一マグネットと該第二マグネットの中心線が該本体部及び該版胴部の中心軸に交わるように配置される請求項1記載の紙容器用印字装置。
【請求項3】
円周方向に対向する一対の該本体部の凹部の底部は対称形で平面視矩形形状であり、円周に沿って遠ざかる方向に凹部の深さが徐々に浅くなる楔形状である請求項2記載の紙容器用印字装置。
【請求項4】
互いに対向する該版胴部の該第二マグネットの極と該本体部の該第一マグネットの極とが、互いに引き合う異なる磁極を備え、該版胴部の四隅の該第二マグネットは対角線上で異なる磁極を持つ請求項3記載の紙容器用印字装置。
【請求項5】
該版胴部は回転方向の端部の裏面角部に切欠を備える請求項4記載の紙容器用印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−63794(P2013−63794A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203994(P2011−203994)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】