説明

紙容器用胴材及びそれを用いた紙容器

【課題】胴部の上端をカールして口縁部を形成する際の加工性を向上することにより、成型不良の発生の少ない紙容器用胴材及びそれを用いた紙容器を提供する。
【解決手段】紙容器の胴部となる胴材201は、紙層7の裏面にバリア層9及び熱可塑性樹脂層11が積層された積層シートを略扇形に打ち抜いたものである。胴材201の一端は、紙層7が厚み方向に所定幅だけ削り取られ、上端部には斜めの切り欠き201aが設けられた折返し領域Rとなっている。折返し領域Rは、折り線Pを挟んで端縁側の第1の領域R1と内側の第2の領域R2とに分割されており、第1の領域R1を折返して第2の領域R2に重ね合わせて接着剤で接着することにより折返し接着部Sが形成される。第2の領域R2のうち、第1の領域R1が重なる接着領域R21の厚みT1は、第1の領域R1が重ならない非接着領域R22の厚みT2よりも薄くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム箔等のバリア層を層構成中に用いた密封性に優れた紙容器に関し、さらに詳しくは、外カール加工により口縁部を形成する際に亀裂やカール不良、胴部の横シワの発生を防止することができる加工性に優れた紙容器用胴材及びそれを用いた紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているような、遮光性あるいは酸素や水蒸気バリア性等に優れた密封性紙容器にスナック食品等を収容したカップ入り食品が広く市販されている。この理由としては、カップ入り食品は容器が保形性を有しており、袋入り食品に比べて内容物が外力により損傷することがなく、商品陳列棚に立てた状態で陳列することができるために場所を取ることがなく、また、見栄えもよくて訴求効果があり、さらに軽量で取扱いが容易であるなどのためである。
【0003】
図4は従来のカップ型紙容器の一実施例を示す斜視図、図5はカップ型紙容器の胴部の部分断面図(図4のX−X断面)、図6は従来のカップ型紙容器の縦断面図(図4のY−Y断面)である。図4〜図6を用いて紙容器の組み立て方法について説明する。紙容器1は、略扇形状の胴材201の、一方の端部を外面側に折返し、折返した端部を胴材201に接着剤で接着(図5の×印で表示)して折返し接着部Sとする。次に、該折返し接着部Sに他方の端部を重ね合わせて接合(図5の斜線で表示)して胴部20を形成する。
【0004】
さらに、略円形状の底材301の外周縁部を下向きに起立させて、外周縁部の内面を胴部20の下端部内面に接合すると共に外周縁部を覆うように胴部20の下端縁部を内方に折り曲げて底材301の外周縁部の外面に接合(図6の斜線で表示)して底部30を形成し、胴部20の上端部を外方にカールして口縁部21を形成した容器本体2の口縁部21を周縁にツマミ部を有する蓋材401で熱接着して密封したものである。
【0005】
なお、胴材201、底材301、蓋材401は、基材となる紙層の裏面にアルミニウム箔のバリア層、最内層となる熱可塑性樹脂層を順次積層した積層シートで形成されており、ここでいう接合とは、胴材201、底材301、蓋材401を構成する熱可塑性樹脂層でヒートシールすることである。
【0006】
このような紙容器においては、内容物が油分を含む食品等である場合が多いため、容器内部に積層体の端面が露出すると、紙層に油分が染み込んで容器の外観を損ねたり、バリア性が低下したりするという問題点があった。そこで、上述したように、胴材201の一端に折返し接着部Sを形成して内面の熱可塑性樹脂層同士を接合することにより内容物が直接接触しないようにした、いわゆる「スカイブヘミング加工」が開発されている。
【0007】
しかし、スカイブヘミング加工を行った場合、胴材201の接合部(折返し接着部S)が他の部分よりも厚くなるため、胴部20の上端部を外方にカールして口縁部21を形成する際に折返し接着部Sがリブのように作用し、カール形成時の圧力が口縁部21の下方に伝達されて胴部20に横シワが生じることがあった。そこで、特許文献1には、図7及び図8に示すように、折返し接着部Sの形成される胴材201の一端を厚み方向に所定量削り取るとともに、胴材201の上端を斜めにカットすることで折返し接着部Sに作用する圧力を緩和して横シワの発生を防止する方法が記載されている。
【0008】
図7は胴材の平面図であり、図8は胴材の一端に形成された折返し接着部S周辺の拡大平面図である。胴材201は、左右の上端に斜めの切り欠き201aが形成されており、一方の端部(図7の右側端部)から所定幅の折返し領域R(ハッチングで示した領域)の紙層が厚み方向に約半分程度削り取られている。この折返し領域Rは、一点鎖線で示す折り線Pを挟んで端縁側の第1の領域R1と内側の第2の領域R2とに分割されており、第1の領域R1を折返して第2の領域R2に重ね合わせて接着剤で接着することにより、図8に示すような折返し接着部Sとしたものである。そして、折返し接着部Sの外面(図8の紙面表側)に胴材201の他端(図7の左側端部)を重ね合わせて最内面の熱可塑性樹脂層同士を接合することにより胴部20(図4参照)が形成される。
【特許文献1】特開2005−96840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の紙容器では、胴材201の上端に設けられた斜めの切り欠き201aにより、折返し接着部Sを形成したときに接着領域R21(図8の破線で囲まれた部分)と三角形の非接着領域R22(図8の斜線部分)とが出現する。この非接着領域R22は紙層が削り取られており、隣接する胴材201に比べて薄くなっているため、胴部20の上端部を外方にカールする際に延ばされきれず、境界部分Fに亀裂が発生して成型不良となる場合があった。
【0010】
一方、非接着領域R22の紙層を削らない場合は、折返し接着部Sの上端部が厚くなって外カールの巻き不良が生じたり、折返し接着部Sがリブとなって口縁部21の下方に横シワが生じたりするという不具合があった。また、胴材201の端部同士をヒートシールする際に折返し接着部S近辺のシール部に圧力が十分にかからず接合不良が発生することもあった。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑み、胴部の上端をカールして口縁部を形成する際の加工性を向上することにより、成型不良の発生の少ない紙容器用胴材及びそれを用いた紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、少なくとも紙層と最内層である熱可塑性樹脂層とを含む略扇形状の積層体から成り、一端縁を外面側に折返して接着した折返し接着部に他方の端縁を重ね合わせて接合して胴部を形成する紙容器用胴材において、前記折り返し接着部は、前記胴材の一端縁に沿って一定幅だけ前記紙層を厚み方向に所定量削り取るとともに上端の角部が斜めに切り欠かれて形成された折返し領域を、折り線を挟んで端縁側の第1の領域を折返して前記折り線の内側に位置する第2の領域に接着して成り、前記第2の領域のうち、前記第1の領域と重なり合う接着領域の厚みを前記第1の領域と重ならない非接着領域よりも薄くしたことを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成の紙容器用胴材において、前記胴材の厚みをT、前記接着領域の厚みをT1、前記非接着領域の厚みをT2とするとき、以下の条件式(1)、(2)を満たすことを特徴としている。
0.6T≦T2≦0.8T ・・・(1)
T1+T2=T ・・・(2)
【0014】
また本発明は、上記構成の紙容器用胴材を用いて胴部を形成し、該胴部の下端部に底材を接合すると共に上端部を外方にカールして口縁部を形成した紙容器である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の構成によれば、非接着領域の厚みが極端に薄くならず、隣接する胴材との段差が小さくなる。従って、胴部の上端を外カールして口縁部を形成したときに非接着領域が延ばされて、境界部分における亀裂の発生を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の紙容器用胴材において、胴材の厚みT、接着領域の厚みT1、非接着領域の厚みT2の関係を、0.6T≦T2≦0.8T、T1+T2=Tとすることにより、胴材の厚みに対して接着領域及び非接着領域が適度な厚みとなり、境界部分における亀裂の発生を効果的に抑制するとともに、外カール加工時における口縁部の下方での横シワの発生やカール巻き不良も抑制可能となる。
【0017】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の紙容器用胴材を用いて紙容器を製造することにより、製造時の加工性が良くなり歩留まりが向上するとともに、紙容器の外観も著しく改良されバリア性も確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の紙容器について説明する。図1は本発明の紙容器を構成する胴材の折返し領域周辺の部分平面図、図2は折返し領域の断面図(図1のZ−Z断面)、図3は折返し領域を図2の右方向から見た斜視図である。従来例の図7及び図8と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0019】
本発明の紙容器に用いられる胴材201は、基材となる紙層7の裏面にラミネート層(図示せず)を介してアルミニウム箔からなるバリア層9が積層され、さらに熱可塑性樹脂層11が積層された積層シートを略扇形に打ち抜いたものである。胴材201の一端は、紙層7が厚み方向に所定幅だけ削り取られており、折返し接着部S(図8参照)を形成するための折返し領域Rとなっている。折返し領域Rの上端部には斜めの切り欠き201aが設けられている。
【0020】
次に、胴材201の構成について詳細に説明する。紙層7としては、目付量250〜350g/m2のカップ原紙が用いられ、必要に応じて表面に印刷層やトップコート層を設けても良い。バリア層9としては、基本的には、金属箔や金属または金属酸化物を蒸着した蒸着膜であれば使用可能であり、その材質としては、例えばケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属またはその酸化物を使用することができる。好ましいものとしては、アルミニウム箔やケイ素(Si)、アルミニウム(Al)の酸化物を挙げることができる。
【0021】
バリア層9の膜厚としては、バリア層9が金属箔である場合は5〜30μm、また蒸着膜である場合には使用する金属または金属酸化物の種類等によって異なるが、例えば50〜2000Å位、好ましくは100〜1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。また、バリア層9として使用される金属または金属酸化物を2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した金属または金属酸化物の蒸着膜を構成することもできる。例えば、2軸延伸ポリエステルフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム等の基材フィルムにアルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物の蒸着層を形成したものも好適に使用することができる。
【0022】
熱可塑性樹脂層11は、熱によって溶融して胴材201の両端部を相互に融着するとともに、底材301、蓋材401(図4参照)を接合し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用して重合したエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等から選ばれた1種ないし2種以上を使用することができる。熱可塑性樹脂層11の厚さとしては、ヒートシール性等を考慮すると、10μm〜100μm程度、特に15μm〜50μm程度であることが好ましい。
【0023】
胴材201の代表的な構成を例示するならば、カップ原紙(目付量250〜290g/m2)/低密度ポリエチレン15μm/アルミニウム箔9μm/低密度ポリエチレン40μmを挙げることができる。
【0024】
底材301、蓋材401(図4参照)は、紙層の坪量や熱可塑性樹脂層の樹脂種が異なるものの、胴材201と同様に、紙層、バリア層、熱可塑性樹脂層を順に積層した積層シートから構成される。底材301としてはカップ原紙(目付量160〜220g/m2)/低密度ポリエチレン15μm/アルミニウム箔7μm/低密度ポリエチレン40μmを挙げることができ、また、蓋材401としては片アート紙(目付量79.1g/m2)/低密度ポリエチレン15μm/アルミニウム箔7μm/低密度ポリエチレン20μm/ホットメルト接着剤20g/m2を挙げることができる。
【0025】
なお、胴材201、底材301、蓋材401は上記した構成に限定されるものではなく、紙層、アルミニウム箔に代表されるバリア層、熱可塑性樹脂層を順に積層した積層シートから構成されるものは本発明にすべて含まれるものである。特に、底材301及び蓋材401は、胴材201からなる胴部20と熱接着することにより密封した紙容器1となる構成であればよい。
【0026】
本発明の紙容器は、胴部20を構成する胴材201の折返し領域Rに特徴を有し、より具体的には、折り線Pの内側に位置する第2の領域R2のうち、第1の領域R1が重ならない非接着領域R22(斜線領域)の厚みT2を、第1の領域R1が重なる接着領域R21(ドット領域)の厚みT1よりも厚くしたことを特徴とするものである。
【0027】
この構成により、折り線Pを谷折り線として第1の領域R1を折返した後、接着領域R21上に接着して折返し接着部S(図8参照)を形成したとき、非接着領域R22の厚みT2が極端に薄くならず、隣接する胴材201との段差(=T−T2)が小さくなる。従って、胴部20の上端を外カールして口縁部21(図6参照)を形成したときに非接着領域R22が延ばされた際の、境界部分Fにおける亀裂の発生を抑制することができる。
【0028】
接着領域R21の厚みT1は第1の領域R1の厚みと等しく、形成された折返し接着部Sの表面が胴材201と略面一となるように、T1+T2=Tに設定されている。また、T、T1、T2の関係はT>T2>T1となるが、T2がT1に近くなると非接着領域R22が延ばされた際に延びきらず、胴部20の外カール加工時に境界部分Fに亀裂が発生し易くなる。一方、T2がTに近くなると折返し接着部Sの上端が肉厚となって外カール加工時にカール性が低下するとともに、口縁部の下方に横シワが生じ易くなる。また、胴材201の両端部を接合する際にシール圧低下による接合不良も発生し易くなる。
【0029】
そこで、T、T1、T2が以下の条件式(1)、(2)
0.6T≦T2≦0.8T ・・・(1)
T1+T2=T ・・・(2)
を満たすようにT1及びT2の厚さを設定することが好ましい。即ち、条件式(1)及び(2)を満たすようにT1、T2を設定することにより、胴材201の厚みに対して接着領域R21及び非接着領域R22が適度な厚みとなり、境界部分Fにおける亀裂の発生を効果的に抑制するとともに、外カール加工時における口縁部21の下方での横シワの発生やカール巻き不良も同時に抑制可能となる。
【0030】
例えば厚さ250μmの胴材201を用いるときは、T2を150μm〜200μmの範囲に設定し、T1+T2=250となるようにT1を設定すれば良い。また、厚さ400μmの胴材201を用いるときは、T2を240μm〜320μmの範囲に設定し、T1+T2=400となるようにT1を設定すれば良い。
【0031】
次に、本発明に用いられる胴材201の製造方法について説明する。先ず、基材となる紙層7にバリア層9、熱可塑性樹脂層11を順次積層して得られた積層シートを所定の形状に打ち抜いて胴材201とする。次いで、グラインダーを用いて胴材201の一端から所定幅だけ厚み方向に紙層7を削り取って折返し領域Rを形成する。このとき、折返し領域R全体の肉厚がT2となるまで紙層7を削り取り、さらに非接着領域R22以外(第1の領域R1及び接着領域R21)を肉厚がT1となるまで紙層7を削り取る。最後に第1の領域R1を折返して接着領域R21に接着して折返し接着部S(図8参照)を形成する。
【0032】
こうして得られた胴材201の両端部を接合して胴部20(図4参照)とし、さらに別途製造した底材301、蓋材401(図4参照)を接合して本発明の紙容器1を製造する。本発明の紙容器1は、胴部20の外カール時における加工性に優れることから、内容物の油分が紙層へ染み出すおそれがなく、且つ製造性及び商品の外観を著しく改良した紙容器を提供できるものである。なお、紙容器1の組立方法については従来例と全く同様であるため説明を省略する。
【0033】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下、実施例を用いて本発明の構成を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0034】
本発明の紙容器の加工性について評価した。接着領域R21(第1の領域R1)の厚みT1を非接着領域R22の厚みT2よりも薄くした図3に示す胴材201を用いた試験体を本発明1〜4とした。また、T1及びT2を同一とした胴材201を用いた試験体を比較例1、非接着領域R22を厚み方向に削り取らない胴材201を用いた試験体を比較例2とした。試験に供する試験体(内容積が420cm3のカップ状紙容器)は、下記の胴材、底材を用いてカップ成形機にて作製した。
〔胴材〕カップ原紙(目付量265g/m2)/低密度ポリエチレン15μm/アルミニウム箔7μm/低密度ポリエチレン40μm。
〔底材〕カップ原紙(目付量220g/m2)/低密度ポリエチレン15μm/アルミニウム箔7μm/低密度ポリエチレン40μm。
【0035】
上記6種類の試験体(カップ状紙容器本体)を用いて、境界部分における亀裂、外カール加工時における口縁部の下方での横シワ及びカール巻き不良の発生頻度を比較した。評価は各試験体とも10個中の不良が発生した個数で表示した。試験結果を胴材201、接着領域R21及び非接着領域R22の厚みT、T1、T2と併せて表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から明らかなように、T1<T2である本発明1〜4では、境界部分の亀裂、横シワ及びカール巻き不良の発生が抑制された。特に、0.6T≦T2≦0.8T、T1+T2=Tを満たす本発明2、3では、亀裂、横シワ及びカール巻き不良の発生がなく、顕著な効果が認められた。
【0038】
一方、T1=T2である比較例1では、非接着領域R22の厚みが薄すぎてカール加工時に折り返し接着部Sの境界部分に亀裂が多発した。また、非接着領域R22を削り取らなかった比較例2では、非接着領域R22の厚みが厚すぎてカール加工時に横シワやカール巻き不良が多発した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、少なくとも紙層と最内層である熱可塑性樹脂層とを含む略扇形状の積層体から成り、一端縁を外面側に折返して接着した折返し接着部に他方の端縁を重ね合わせて接合して胴部を形成する紙容器用胴材において、折り返し接着部は、胴材の一端縁に沿って一定幅だけ紙層を厚み方向に所定量削り取るとともに上端の角部が斜めに切り欠かれて形成された折返し領域を、折り線を挟んで端縁側の第1の領域を折返して折り線の内側に位置する第2の領域に接着して成り、第2の領域のうち、第1の領域と重なり合う接着領域の厚みを第1の領域と重ならない非接着領域よりも薄くしたものである。
【0040】
これにより、胴部の外カール加工時に折返し接着部の境界部分における亀裂の発生が抑制されるため、製造時の加工性に優れ、製造された紙容器の外観及びバリア性も改良可能な紙容器用胴材を提供することができる。
【0041】
また、胴材の厚みT、接着領域の厚みT1、非接着領域の厚みT2が0.6T≦T2≦0.8T、T1+T2=Tを満たすようにしたので、折返し接着部の境界部分における亀裂の発生の抑制に加えて、外カール加工時における口縁部の下方での横シワの発生やカール巻き不良、及び胴材の両端部の接合不良も抑制可能な紙容器用胴材となる。
【0042】
また、本発明の紙容器用胴材を用いることで、紙容器を用いた商品の外観も著しく改良されバリア性も確保された紙容器を簡便に且つ低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】は、本発明の紙容器を構成する胴材の折返し領域周辺の部分平面図である。
【図2】は、図1における折返し領域の断面図である。
【図3】は、折返し領域を図2の右方向から見た斜視図である。
【図4】は、従来のカップ型紙容器の一実施例を示す斜視図である。
【図5】は、従来のカップ型紙容器の胴部の部分断面図である。
【図6】は、従来のカップ型紙容器の縦断面図である。
【図7】は、従来のカップ型紙容器を構成する胴材の平面図である。
【図8】は、胴材の一端に形成された折返し接着部S周辺の拡大平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 紙容器
2 容器本体
7 紙層
9 バリア層
11 熱可塑性樹脂層
20 胴部
30 底部
40 蓋部
201 胴材
201a 切り欠き
301 底材
401 蓋材
R 折返し領域
R1 第1の領域
R2 第2の領域
R21 接着領域
R22 非接着領域
S 折返し接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紙層と最内層である熱可塑性樹脂層とを含む略扇形状の積層体から成り、一端縁を外面側に折返して接着した折返し接着部に他方の端縁を重ね合わせて接合して胴部を形成する紙容器用胴材において、
前記折り返し接着部は、前記胴材の一端縁に沿って一定幅だけ前記紙層を厚み方向に所定量削り取るとともに上端の角部が斜めに切り欠かれて形成された折返し領域を、折り線を挟んで端縁側の第1の領域を折返して前記折り線の内側に位置する第2の領域に接着して成り、前記第2の領域のうち、前記第1の領域と重なり合う接着領域の厚みを前記第1の領域と重ならない非接着領域よりも薄くしたことを特徴とする紙容器用胴材。
【請求項2】
前記胴材の厚みをT、前記接着領域の厚みをT1、前記非接着領域の厚みをT2とするとき、以下の条件式(1)、(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の紙容器用胴材。
0.6T≦T2≦0.8T ・・・(1)
T1+T2=T ・・・(2)
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の紙容器用胴材を用いて胴部を形成し、該胴部の下端部に底材を接合すると共に上端部を外方にカールして口縁部を形成した紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−273592(P2008−273592A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120457(P2007−120457)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)