説明

紙容器

【課題】紙容器としての保護性が良好で、成形性がよく、廃棄後焼却し易く再生処理に問題がなく、かつ、コストの安い積層体を材料とした紙容器を提供する。
【解決手段】外面シーラント層、紙層、補強ポリエチレン層、バリア層、内面シーラント層の順に構成され、バリア層と内面シーラント層をラミネート用接着剤を使用して積層した積層体からなり、バリア層を、密度が0.935〜0.960の範囲で、厚さが20〜100μmの範囲で、水蒸気バリア値が10.0g/m2・day以下であるポリエチレンを使用した紙容器。また、内面シーラント層が少なくとも接液層と貼合層の2層以上からなり、且つ、接液層をシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフイン共重合体を主たる成分とした紙容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙容器に関し、バリア性、特に、水蒸気バリア性が良好で、かつ、低コストで経済的な紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙を主材とする積層体からなる紙容器は、例えば乳飲料、果実飲料、酒等の変質しやすい食品を内容物とする液体用容器として広く用いられている。
【0003】
一般に、液体用紙容器は、内容物の保存性、容器としての強度等を確保するため各種の積層体を用いて形成され、例えば、ポリエチレン(PE)/紙/PE、PE/紙/PE/Al箔/PE、PE/紙/PE/アルミニウム(Al)箔/ポリエチレンテレフタレート(PET)/PE等の構成からなる積層体が現在広く使用されている。
【0004】
一方、たとえば上記のPE/紙/PE/Al箔/PET/PEからなる5層構成の積層体を用いて形成された従来の紙容器においては、端面が内容物と接触しない容器形状とすることにより漏れがなく、また水蒸気バリヤー性も良好であるが、バリヤー層としてアルミニウム箔を含有するものであるため、焼却処分を行うとアルミニウムの灰が残ること、あるいは、紙を再生する際にアルミニウムが混入し、再生紙の商品価値を低下させるという問題もあり、かつ、アルミニウム等を使用することからコストが高いものとなっていた。この問題点を解決するための積層体が種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−61440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のPE/紙/PEの3層構成からなる積層体を用いて形成された従来の紙容器においては、十分な水蒸気バリア値が得られず、内容物が焼酎等の酒類の紙容器として使用することが難しかった。また、上記のPE/紙/PE/Al箔/PET/PEからなる5層構成の積層体に代わるアルミニウム等を使用しない積層体を使用した紙容器においても、ポリエチレン以外の樹脂を使用するためコストが高いという問題もあった。
【0006】
本発明の紙容器は、紙容器としての保護性が良好で、成形性がよく、廃棄後焼却し易く再生処理に問題がなく、かつ、コストの安い積層体を材料とした紙容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の紙容器は、少なくとも、外面シーラント層、紙層、補強ポリエチレン層、バリア層、内面シーラント層の順に構成され、前記バリア層と前記内面シーラント層をラミネート用接着剤を使用して積層した積層体からなる紙容器であって、前記積層体の水蒸気バリア値が、10.0g/m2・day(JIS-K7129)以下であることを特徴とする紙容器であり、前記バリア層を、密度が0.935〜0.960の範囲で、厚さが20〜100μmの範囲で、水蒸気バリア値が10.0g/m2・day(JIS-K7129)以下であるポリエチレンを使用したことを特徴とするものである。また、前記内面シーラント層が少なくとも接液層と貼合層の2層以上からなり、且つ、前記接液層をシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフイン共重合体を主たる成分としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙容器の材料となる積層体において、バリア層の水蒸気バリア値を10g/m2・day以下とすることにより、積層体の水蒸気バリア値を10g/m2・day以下とすることができ、この積層体を材料として成形した、例えば、85mm角、高さ300mm、容量1.8Lのゲーベルトップ型の紙容器において、容器あたり1g/day以下の水蒸気バリア値とすることができ、甲類焼酎等の酒類においても長期保存に対応することができるという効果を有している。
【0009】
また、バリア層としてアルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等を使用していない水蒸気バリア値の良好な積層体であり、低価格で経済的な紙容器を得ることができるという効果を有している。
【0010】
内面シーラント層が少なくとも接液層と貼合層の2層以上からなり、且つ、接液層をシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフイン共重合体を主たる成分としたことにより、シール温度の下限温度が低くなり、シール温度幅が広くなるという効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面を参照して説明する。図1は本発明の紙容器を形成する積層体の層構成の一例を示す説明図である。
【0012】
図1に示す積層体10においては、基材である紙層12の一方の面に外面シーラント層11が最外層として積層され、もう一方の面に補強ポリエチレン層13が積層され、ついで、この補強ポリエチレン層13にバリア層14が積層され、つづいて、このバリア層14に内面シーラント層15が最内層として積層された構成となっている。
【0013】
まず、最外層となる外面シーラント層11は、紙層12の一方の面(表面)に積層され、後述する内面シーラント層15との接着性が良好である低密度ポリエチレン(LDPE)を主に使用し、押出し加工で積層される。また、この外面シーラント層11は、紙容器の表面となる層であり、印刷インキの密着性の向上を図るため表面に例えばコロナ処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0014】
外面シーラント層11を形成するポリエチレンとしては、高圧法エチレン単独重合体、あるいはエチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン−1等のエチレン以外のα・オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンが好適に用いられる。
【0015】
外面シーラント層11を形成するポリエチレンの密度は、0.890〜0.930の範囲とし、好ましくは0.910〜0.925の範囲とする。また、外面シーラント層11の厚さは、10〜50μmの範囲とし、好ましくは20〜50μmの範囲とする。
【0016】
つぎに、紙層12は、主強度材であり、特に限定されるものではなく、従来の紙容器に使用する紙を使用することができ、例えば、坪量100〜500g/m2の範囲のミルク原紙等が好適に使用することができる。
【0017】
つぎに、補強ポリエチレン層13は、外面シーラント層11を形成される面と反対側の紙層12の裏面側にポリエチレンにより形成される。この補強ポリエチレン層13は、紙容器を組立てる時の熱シール工程において、紙層12に含む水分が突沸して発生するピンホールがバリア層13に発生することを防ぎ、すなわち、熱シール時に補強ポリエチレン層13に発生するピンホールがバリア層13に届くことを防ぎ、バリア層13の水蒸気バリア値を低下させることを防ぐ機能を有する層であり、補強ポリエチレン層13を形成するポリエチレンとしては、高圧法エチレン単独重合体、あるいはエチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン−1等のエチレン以外のα・オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンが好適に用いられる。補強ポリエチレン層13を形成するポリエチレンの密度は、0.890〜0.935の範囲とし、好ましくは0.915〜0.930の範囲とする。
【0018】
このようなポリエチレンにより形成される補強ポリエチレン層13の厚さは、10〜100μmの範囲とし、好ましくは15〜50μmの範囲とする。10μm未満の場合、熱シール時に補強ポリエチレン層13に発生するピンホールがバリア層13に届くことを防ぐことができず、100μmを超えた場合、製膜適性が著しく悪くなり、コストも高くなる。
【0019】
この補強ポリエチレン層13は、紙層12と後述のバリア層14とをサンドラミネートするために220〜350℃に溶融して紙層12に押出しコーティングされる。
【0020】
つぎに、バリア層14が、補強ポリエチレン層13に積層される。このバリア層14は、この積層体10に十分な水蒸気バリヤー性を付与する層であり、従来の積層体に用いられれているアルミニウム箔等の代わりにポリエチレンフィルムを使用することにより、この積層体10から成形される紙容器は焼却処理を行ってもアルミニウムの灰が残ることがなく、焼却が容易であるとともに、紙の再生を行ってもアルミニウムが混入することがないため再生紙の商品価値を低下させることがない。
【0021】
このバリア層14は、ポリエチレンフィルムからなり、水蒸気バリア値を10.0g/m2・day(JIS-K7129)以下とする。そのためには、ポリエチレンの密度は、0.935〜0.960の範囲とすることが好ましく、いわゆる高密度ポリエチレン(HDPE)を使用する。この密度が0.935未満であると、このバリア層15を有する積層体を用いて形成された紙容器の水蒸気バリヤー性が十分ではない。一方、0.960を越えると、製膜適性が著しく悪くなり、コストも高くなる。また、このバリア層14に使用するポリエチレンフィルムとしては、延伸ポリエチレンフィルムあるいは無延伸ポリエチレンフィルムのいずれも使用することができる。
【0022】
このようにバリア層14に使用する高密度ポリエチレン(HDPE)は、エチレン単独の重合体であってもよいし、またエチレンとプロピレン、ブテンなどのエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0023】
バリア層14の厚さは、20〜100μmの範囲とし、この厚さが20μm未満の場合、そのようなバリア層14を有する積層体を用いて形成された紙容器の水蒸気バリヤー性が十分ではなく、100μmを超えた場合、製膜適性が悪くなりフィルム化が難しく、コストも高いものとなる。このバリア層14は紙層12に補強ポリエチレン層13によりサンドラミネートされる。この時、紙層12の表面には、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、アンカーコート処理等の表面処理を行うことが好ましい。さらに、接着強度が不十分な場合、バリア層14の表面にコロナ処理等を、補強ポリエチレン層13の表面には、オゾン処理等を適宜行うことができる。
【0024】
最後に、内面シーラント層15が、バリア層14にラミネート用接着剤を使用して積層される。内面シーラント層15は、紙容器の内容物と直接に接する層であり、紙容器に成形する際のシール性を必要とする層である。
【0025】
内面シーラント層15には、通常、熱によって溶融し相互に融着し得る樹脂、具体的には、低密度ポリエチレン、あるいは、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を使用して構成するものであるが、低密度ポリエチレンの場合、比較的高いシール温度であることからピンホールを発生し、シール不良、液漏れ等を起こす原因となり易いものである。特に、本発明の紙容器においては、熱拡散するアルミ箔やPETフィルム等の耐熱層がないため、ピンホールが空き易い。そのため、本発明においては、低温シール性が良好なシーラント用フィルムを用いることが好ましく、従って、少なくとも接液層と貼合層の2層以上からなり、かつ、接液層をシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、又はそれを主たる成分からなる層とすることが好ましく、そして、α・オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、3メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、デセンの中から1又は2以上選定したものであることが好ましい。接液層に用いるシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体は、滑り性が悪いため、スリップ剤やAB剤を添加することができ、スリップ剤を使用した場合、接液層表面にスリップ剤がブリードアウトしてきて、内容物に影響を与える為、AB剤、特に無機系のフィラーを使用することが好ましい。本発明において用いる無機系フィラーは、AL2O3、TiO2、ZnO、Fe2O3、SnO2、CeO2、NiO、PbO、S2Cl2、ZnCl2、FeCl2、CaCO3、B2O3等で、平均粒径が2〜15μmのものから選択でき、好ましくは、酸化珪素SiO2を使用する。無機系フィラーの平均粒径が2μm未満の場合は滑り性の改良に効果がなく、また、前記平均粒径が15μmを超えると、製膜フィルムの表面に突出する無機系フィラーにより容器表面を摩擦し、傷つけることがある。
【0026】
内面シーラント層15であるシーラント用フィルムの接液層の樹脂としては、密度が0.900〜0.920の範囲であり、メルトインデックスが0.2〜10の範囲であるシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂が好ましく、シール性の改善のため、密度が0.910〜0.925の範囲であり、メルトインデックスが0.2〜10の範囲である低密度ポリエチレンを5〜40%の範囲で適宜ブレンドしても良い。また、滑り性改善の為、AB剤・スリップ剤を適宜添加しても良い。
【0027】
内面シーラント層15の貼合側の樹脂としては、密度が0.900〜0.920の範囲で、メルトインデックスが0.2〜10の範囲である直鎖状低密度ポリエチレンを使用することができ、シール性改善の為、密度が0.910〜0.925の範囲で、メルトインデックスが0.2〜10の範囲である低密度ポリエチレンを5〜40wt%の範囲で適宜ブレンドしても良い。
【0028】
これら2層以上である内面シーラント層15は、インフレーション法・Tダイ法により製膜され、ラミネート用接着剤にて貼り合せることができる。また、Tダイで共押出しして、予め、ラミネート用接着剤を塗布したバリア層と貼り合せるニーラム法(ドライラミとキャスト成形を結合した方式)でも良い。このような内面シーラント層15の厚さは、10〜100μmの範囲とし、好ましくは20〜80μmの範囲とする。
【0029】
この内面シーラント層15はバリア層14にラミネート用接着剤を使用して積層されるが、かかるラミネート用接着剤の組成系としては、水性型、溶剤型、エマルジョン型、分散型等のいずれの形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、また、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。具体的には、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、ポリアミド系、ポリイミド系、尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂系、フェノール樹脂系、エポキシ樹脂系、反応型(メタ)アクリル系、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム系、シリコーン系、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤、その他等の接着剤等を好ましく使用できる。中でも、水酸基を有するポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ウレタン変性ポリオール、エポキシ化合物(主剤)とイソシアネート系樹脂(硬化剤)との二液硬化型接着剤を好適に使用することができる。
【0030】
なお、上記ラミネート用接着剤には、例えば、シランカップリング剤等の接着促進剤を任意に添加することができる。このシランカップリング剤は、その分子の一端にある官能基、クロロ、アルコキシ、または、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成し、これが、金属箔や金属、無機酸化物の蒸着膜表面上の活性な基と脱水縮合反応等を起こして強固な結合を形成し、他方で、シランカップリング剤の他端にあるビニル基、メタクリロキシ基、アミノ基、エポキシ基等の有機官能基が、耐ピンホール性層、接液層等を構成する物質と強固に反応することで、ラミネート強度を高め、強固な層間強度を可能にするものである。これらの接着剤を形成する方法としては、例えば、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、グラビア(ダイレクト)コート、エアナイフコート、スクイズコート、ブレードコート、コンマコート、カーテンフローコート、キスコート、その他の方法によって形成することができる。接着剤のコーティング量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)の範囲が好ましく、1〜5g/m2(乾燥状態)の範囲が望ましい。
【0031】
上記のメタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体としては、例えば、二塩化ジルコノセンとメチルアルモキサンの組み合わせによる触媒等のメタロセン錯体とアルモキサンとの組み合わせによる触媒、すなわち、メタロセン触媒を使用して、エチレンとα・オレフィンとを共重合してなるエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。具体的には、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体としては、日本ポリエチレン株式会社製の商品名「カーネル」、三井化学株式会社製の商品名「エボリュー」、米国、エクソン・ケミカル(EXXON CHEMICAL)社製の商品名「エクザクト(EXACT)」、米国、ダウ・ケミカル(DOW CHEMICAL)社製の商品名「アフィニティー(AFFINITY)、商品名「エンゲージ(ENGAGE)」等のメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α−オレフィン共重合体を使用することができる。
【0032】
上記のメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体について更に詳述すると、具体的には、例えば、メタロセン系遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせによる触媒、すなわち、メタロセン触媒(いわゆるカミンスキ−触媒を含む)を使用し、エチレンとα・オレフィンとを共重合させてなるエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。なお、上記のメタロセン触媒は、無機物に担持されて使用されることもある。上記において、メタロセン系遷移金属化合物としては、例えば、IVB族から選ばれる遷移金属、具体的には、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)に、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、テトラヒドロインデニル基、置換テトラヒドロインデニル基、フルオニル基またと置換フルオニル基が1ないし2個結合しているか、あるいは、これらのうちの二つの基が共有結合で架橋したものが結合しており、他に水素原子、酸素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリ−ル基、アセチルアセトナート基、カルボニル基、窒素分子、酸素分子、ルイス塩基、ケイ素原子を含む置換基、不飽和炭化水素等の配位子を有するものを使用することができる。
【0033】
また、上記において、有機アルミニウム化合物としては、アルキルアルミニウム、または鎖状あるいは環状アルミノキサン等を使用することができる。ここで、アルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロリド等を使用することができる。
【0034】
また、鎖状あるいは環状アルミノキサンとしては、例えば、アルキルアルミニウムと水を接触させて生成することができる。例えば、重合時に、アルキルアルミニウムを加えておき、後に水を添加するか、あるいは、錯塩の結晶水または有機・無機化合物の吸着水とアルキルアルミニウムとを反応させることで生成することができる。
【0035】
つぎにまた、上記において、メタロセン触媒を担持させる無機物としては、例えば、シリカゲル、ゼオライト、珪素土等を使用することができる。
【0036】
つぎに、上記において、重合方法としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、気相重合等の各種の重合方法で行なうことができる。また、上記の重合は、バッチ式あるいは連続式等のいずれの方法でもよい。上記において、重合条件としては、重合温度、−100〜250℃、重合時間、5分〜10時間、反応圧力、常圧〜300Kg/m2の範囲である。
【0037】
さらに、本発明において、エチレンと共重合されるコモノマーであるα・オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、デセン等を使用することができる。上記のα・オレフフィンは、単独で使用してもよく、また、2以上を組み合わせて使用することもできる。また、上記のα・オレフフィンの混合比率は、例えば、1〜50重量%、望ましくは、10〜30重量%とすることが好ましい。而して、本発明において、上記のメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体の物性は、例えば、分子量、5×103〜5×106、密度、0.890〜0.930g/cm3、メルトフローレート〔MFR〕、0.1〜50g/10分の範囲である。
【0038】
なお、本発明においては、上記のメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体には、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、染料、顔料等を任意に添加して使用することができる。
【0039】
これらの層構成からなる積層体を用いた紙容器の製造は、通常、次のようにして行われる。すなわち、前述の層構成からなる積層体のシートの外面に印刷を行った後、打ち抜き、端面をスカイブヘミングして内容物が端面に接触しないようにしてから充填装置内で底部およびトップ部を熱風加熱、火炎加熱等によりヒートシールして紙容器とする。
【0040】
この積層体を使用した紙容器の形状については、用途・目的等に応じて適宜に決定すればよく、主に、ゲーベルトップ型に使用することができ、ゲーベルトップ型以外の形状、例えば、ブリック型、フラットトップ型、丸筒型、角筒型、紙カップ等にも使用することができる。また、この紙容器の注出口には、たとえばポリエチレン製のキャップ、プルタブ型の開封機構等を適宜に設けてもよい。
【実施例】
【0041】
つぎに、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0042】
<実施例>
シーラント層として、密度0.915、メルトインデックス2.0のシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−プロピレン共重合体70wt%と密度0.923、メルトインデックス3.8の低密度ポリエチレン30wt%とのブレンド樹脂からなる層を貼合層とし、密度0.905、メルトインデックス4.0のシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体55wt%と密度0.923、メルトインデックス3.8の低密度ポリエチレン10wt%と、シリカ10wt%を含有したマスターバッチ35wt%のブレンド樹脂からなる内層とし、貼合層50μm/内層10μmの共押出しフィルムをインフレーション法にて製膜した。
【0043】
一方、バリア層として厚さ40μのHDPEフィルム(密度 0.954)と、上記内面シーラントフィルムとを、二液硬化型ウレタン系の接着剤を、乾燥後の接着剤層が1μmとなるように、ドライラミネーション法によりラミネートして、HDPEフィルム/接着剤層/内面シーラントフィルムからなる積層シートを作製した。
【0044】
つぎに、坪量400g/m2のミルク原紙の一方の面に、低密度ポリエチレン樹脂〔密度、0.923、メルトインデックス(M.I)、3.7〕を使用し、これを押出コ−トして厚さ20μmの低密度ポリエチレン樹脂層(外面シーラント層)を形成し、次いで、上記ミルク原紙の他方の面に、フレーム処理を施しながら、上記内面紙のHDPE面を対向させ、インラインコロナ処理を施しながら、その層間を低密度ポリエチレン樹脂〔密度、0.923、メルトインデックス(M.I)、3.7〕を使用し、厚さ20μm押出コートして、上記のミルク原紙と積層シートとを貼り合わせて本発明にかかる下記の構成の実施例の積層体10Aを製造した。この積層体の水蒸気バリア値は0.4g/m2・dayであった。
PE20/紙400/PE20/HDPE40/DL/共押しフィルム40
【0045】
上記で製造した積層体を使用し、該積層体から1.8Lゲーベルトップのブランク板を打ち抜き加工し、さらに、スカイブ・ヘミング等の端面処理を行った。
【0046】
つぎに、上記のブランクをフレーム処理、あるいは、ホットエアー処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在する貼合層と接液層とを構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、押圧して胴貼りを行って胴シール部を形成して、スリーブ状の紙容器を作製した。
【0047】
実際に、充填包装機において、内容物として甲類焼酎を充填し、85mm角、高さ300mm、容量1.8Lのゲーベルトップ型の実施例の紙容器を製造した。この紙容器の充填後の重量の減少率を測定した。
【0048】
<比較例>
シーラント層として、密度0.915、メルトインデックス2.0のシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−プロピレン共重合体70wt%と密度0.923、メルトインデックス3.8の低密度ポリエチレン30wt%とのブレンド樹脂からなる層を貼合層とし、密度0.905、メルトインデックス4.0のシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体55wt%と密度0.923、メルトインデックス3.8の低密度ポリエチレン10wt%と、シリカ10wt%を含有したマスターバッチ35wt%のブレンド樹脂からなる内層とし、貼合層50μm/内層10μmの共押出しフィルムをインフレーション法にて製膜した。
【0049】
一方、バリア層として厚さ40μのLDPEフィルム(密度 0.923、水蒸気バリア値 18.5g/m2・day)と、上記内面シーラントフィルムとを、二液硬化型ウレタン系の接着剤を、乾燥後の接着剤層が1μmとなるように、ドライラミネーション法によりラミネートして、LDPEフィルム/接着剤層/内面シーラントフィルムからなる積層シートを作製した。
【0050】
つぎに、坪量400g/m2のミルク原紙の一方の面に、低密度ポリエチレン樹脂〔密度、0.923、メルトインデックス(M.I)、3.7〕を使用し、これを押出コ−トして厚さ20μmの低密度ポリエチレン樹脂層(外面シーラント層)を形成し、次いで、上記ミルク原紙の他方の面に、フレーム処理を施しながら、上記内面紙のLDPE面を対向させ、インラインコロナ処理を施しながら、その層間を低密度ポリエチレン樹脂〔密度、0.923、メルトインデックス(M.I)、3.7〕を使用し、厚さ20μm押出コートして、上記のミルク原紙と積層シートとを貼り合わせて本発明にかかる下記の構成の比較例の積層体10Pを製造した。この積層体の水蒸気バリア値は14.2g/m2・dayであった。
PE20/紙400/PE20/LDPE40/DL/共押しフィルム40
【0051】
上記で製造した積層体を使用し、該積層体から1.8Lゲーベルトップのブランク板を打ち抜き加工し、さらに、スカイブ・ヘミング等の端面処理を行った。
【0052】
つぎに、上記のブランクをフレーム処理、あるいは、ホットエアー処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在する貼合層と接液層とを構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、押圧して胴貼りを行って胴シール部を形成して、スリーブ状の紙容器を作製した。
【0053】
実際に、充填包装機において、内容物として甲類焼酎を充填し、85mm角、高さ300mm、容量1.8Lのゲーベルトップ型の比較例の紙容器を製造した。この紙容器の充填後の重量の減少率を測定した。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
<結果>
表1から明らかなように、実施例の紙容器は、紙容器としての水蒸気バリア値が小さく、表2から明らかなように、実施例の紙容器は、内容物である焼酎の重量減少率が小さく、実用上問題がないが、比較例の紙容器は、紙容器として水蒸気バリア値が高く、また、内容物の重量減少率が大きく実用上問題がある。
【0057】
結論として、密度が0.935〜0.960の範囲で、厚さが20〜100μmの範囲で、水蒸気バリア値が10.0g/m2・day(JIS-K7129)以下であるポリエチレンをバリア層に使用することにより、積層体の水蒸気バリア値を10.0g/m2・day(JIS-K7129)以下とすることができ、また、85mm角、高さ300mm、容量1.8Lのゲーベルトップ型の紙容器で容器あたりで1.0g/day以下とすることができた。このような水蒸気バリア値に紙容器とすることによって、焼酎等の酒類にも好適に利用できるようになる。また、内面シーラント層に直鎖状低密度ポリエチレンを使用することにより、シール温度の下限温度が低くなり、シール温度幅が広くなる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のようにして形成される本発明の紙容器は、アルミニウム等の金属を使用しない材料から形成されているため使用後の再利用がしやすい紙容器であり、かつ、水蒸気バリア性が良好であり、シール性が良好であることから、例えば、酒、焼酎、食用油、醤油、みりん、食酢、紅茶、ウーロン茶等広い分野の液状内容物に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の紙容器を形成する積層体の層構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 積層体
10A 積層体(実施例)
10P 積層体(比較例)
11 外面シーラント層
12 紙層
13 補強ポリエチレン層
14 バリア層
15 内面シーラント層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、外面シーラント層、紙層、補強ポリエチレン層、バリア層、内面シーラント層の順に構成され、前記バリア層と前記内面シーラント層をラミネート用接着剤を使用して積層した積層体からなる紙容器であって、前記積層体の水蒸気バリア値が、10.0g/m2・day(JIS-K7129)以下であることを特徴とする紙容器。
【請求項2】
前記バリア層を、密度が0.935〜0.960の範囲で、厚さが20〜100μmの範囲で、水蒸気バリア値が10.0g/m2・day(JIS-K7129)以下であるポリエチレンを使用したことを特徴とする請求項1に記載の紙容器。
【請求項3】
前記内面シーラント層が少なくとも接液層と貼合層の2層以上からなり、且つ、前記接液層をシングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフイン共重合体を主たる成分としたことを特徴とする請求項2に記載の紙容器。


【図1】
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【公開番号】特開2006−205593(P2006−205593A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22202(P2005−22202)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】