説明

紙幣入出金装置

【課題】紙幣に同じ処理を施す場合であっても、搬送される紙幣の状態に応じた処理を当該紙幣に施すことによって、例えば紙幣詰まりを防止するといった不都合を解消したりすること。
【解決手段】紙幣入出金装置は、紙幣を繰り出す繰出部40と、紙幣を搬送する搬送部10と、紙幣を集積する集積部20と搬送される紙幣の搬送状態を検知する検知部s’と、搬送部10を制御する制御部50と、を備えている。搬送部10は、正逆両方向に切り換えて紙幣を搬送可能な周回搬送部15を有し、当該周回搬送部15によって正方向または逆方向のいずれの方向に搬送される紙幣でも集積部20に搬出可能とされている。また、制御部50は、検知部s’の検知結果に基づき、周回搬送部15による紙幣の搬送方向の切り換え要否を判断するとともに、切り換えが必要と判断した場合は、紙幣の搬送方向が、直前の搬送方向と逆方向となるように切り換えるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣に対して少なくとも入金処理および出金処理を施す紙幣入出金装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入金紙幣が導入される紙幣繰出部(繰出部)と、入金紙幣を金種別に収納する複数の紙幣収納部(収納部)と、これらの紙幣収納部から取り出された出金紙幣が放出される紙幣放出部(出金部)と、回転可能となり紙幣を搬送可能な周回搬送部と、を備えた紙幣入出金装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような紙幣入出金装置においては、接続搬送路が、周回搬送部の時計回りの回転時に出金紙幣を通すための接続搬送路と、周回搬送部の反時計回りの回転時に入金リジェクト紙幣を通すための接続搬送路とに分岐するようになっており(特許文献1の段落[0030]参照)、出金処理と入金リジェクト処理という別の処理を紙幣に施す際に、回転ドラムの回転方向が正転方向と逆転方向に切り替えられるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−288630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に示されるような従来の紙幣入出金装置においては、紙幣に同じ処理(出金処理、入金リジェクト処理など)を施す場合には、一の連結先から繰り出された紙幣について、周回搬送部が正転され続けるか、または、逆転され続けることで、当該紙幣が他の連結先に搬送されるように構成されている。このため、搬送部によって搬送される紙幣の状態に応じた処理をとることができず、例えば紙幣詰まりを防止するといった不都合を解消したり、紙幣の表裏を一致させるといった利便性を向上させたり、異常と判断された紙幣を確実に払い出したりするうえで、未だ不十分であった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、紙幣に同じ処理(出金処理、入金リジェクト処理など)を施す場合であっても、搬送部によって搬送される紙幣の状態に応じた処理を当該紙幣に施すことによって、例えば紙幣詰まりを防止するといった不都合を解消したり、例えば紙幣の表裏を一致させるといった利便性を向上させたり、異常と判断された紙幣を確実に払い出したりすることができる紙幣入出金装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による紙幣入出金装置は、
紙幣を一枚ずつ繰り出す繰出部と、
前記繰出部から繰り出される紙幣を搬送する搬送部と
前記搬送部から搬出される紙幣を集積する集積部と、
前記搬送部によって搬送される紙幣の搬送状態を検知する検知部と、
前記搬送部を制御する制御部と、を備え、
前記搬送部は、正逆両方向に切り換えて紙幣を搬送可能な周回搬送部を有し、該周回搬送部によって正方向または逆方向のいずれの方向に搬送される紙幣でも前記集積部に搬出可能とされ、
前記制御部は、前記検知部の検知結果に基づき、前記周回搬送部による紙幣の搬送方向の切り換え要否を判断するとともに、切り換えが必要と判断した場合は、紙幣の搬送方向が、直前の搬送方向と逆方向となるように切り換える。
【0008】
本発明による紙幣入出金装置において、
前記検知部は、前記搬送部で搬送される紙幣の傾斜方向と傾斜角度とを含む傾斜状態を、前記紙幣の搬送状態として検知し、
前記制御部は、紙幣の傾斜状態が所定の状態になっている場合に、前記周回搬送部の搬送方向を切り換えてもよい。
【0009】
本発明による紙幣入出金装置において、
前記繰出部は、紙幣を収納する収納部に設けられ、
前記集積部は、紙幣を出金する出金部からなり、
前記検知部は、前記搬送部で搬送される紙幣の表裏を、前記紙幣の搬送状態として検知し、
前記制御部は、前記周回搬送部の搬送方向を紙幣の表裏に基づいて切り換えることで、前記収納部から繰り出される複数の紙幣が表裏を一致させた状態で前記出金部に搬送されてもよい。
【0010】
このような紙幣入出金装置において、
前記制御部が前記周回搬送部の搬送方向を、前記収納部から繰り出されて前記搬送部で搬送される一枚目の紙幣の表裏に一致させるように切り換えることで、該収納部から繰り出される複数の紙幣が表裏を一致させた状態で前記出金部に搬送されてもよい。
【0011】
本発明による紙幣入出金装置において、
前記検知部は、前記搬送部で搬送される紙幣の搬送詰まりを、前記紙幣の搬送状態として検知し、
前記制御部によって紙幣が前記搬送部で詰まっていると判断された場合に、該制御部が前記周回搬送部の搬送方向を切り換えることで、該紙幣が前記集積部に搬送されるように試みられてもよい。
【0012】
このような紙幣入出金装置において、
前記制御部が前記周回搬送部の搬送方向を切り換える場合に、切り換え後の搬送速度を切り換え前の搬送速度よりも遅い速度としてもよい。
【0013】
このような紙幣入出金装置において、
前記制御部が前記周回搬送部の搬送方向を切り換えた場合においても該制御部によって前記紙幣が前記搬送部で詰まっていると判断された場合に、該制御部が該周回搬送部の搬送方向をさらに切り換えてもよい。
【0014】
上述のような紙幣入出金装置は、
前記搬送部で搬送異常が発生した場合に、搬送異常が発生した旨を通知する搬送異常通知部をさらに備え、
前記制御部が前記周回搬送部の搬送方向を切り換えた場合においても該制御部によって前記紙幣が前記搬送部で詰まっていると判断された場合に、前記搬送異常通知部によって搬送異常が発生した旨が通知されてもよい。
【0015】
本発明による紙幣入出金装置において、
前記繰出部は、紙幣を入金する入金部に設けられ、
前記集積部は、紙幣を出金する出金部からなり、
前記検知部は、前記搬送部で搬送される紙幣の表裏を、前記紙幣の搬送状態として検知し、
前記制御部は、前記周回搬送部の搬送方向を紙幣の表裏に基づいて切り換えることで、前記繰出部から繰り出される複数の紙幣が表裏を一致させた状態で前記出金部に搬送されてもよい。
【0016】
このような紙幣入出金装置は、
前記出金部に設けられ、紙幣の有無を検知する有無検知センサをさらに備え、
前記繰出部は、所定の枚数の紙幣を前記搬送部に繰り出し、該繰出部から繰り出されて前記出金部に搬送された紙幣が該出金部から取り除かれた旨の信号を前記有無検知センサから受信することで、再度、所定の枚数の紙幣を該搬送部に繰り出してもよい。
【0017】
本発明による紙幣入出金装置は、
前記繰出部から繰り出されて前記搬送部により搬送される紙幣を受け入れる受入部をさらに備え、
前記集積部は、前記受入部に搬送すべきでない異常紙幣を受け入れ可能とされ、
前記制御部は、前記搬送部によって搬送される紙幣が前記受入部に向けて分岐搬送された後に、前記検知部の検知結果に基づき異常紙幣であると判断した分岐後異常の場合には、当該紙幣の搬送方向を逆方向に切り換えて前記集積部に搬送し、他方、前記搬送部によって搬送される紙幣が前記受入部に向けて分岐搬送される前に、前記検知部の検知結果に基づき異常紙幣であると判断した分岐前異常の場合には、当該紙幣の搬送方向を変更せずに前記集積部に搬送してもよい。
【0018】
このような紙幣入出金装置において、
前記検知部は、前記周回搬送部上を搬送される紙幣の状態を検知する第一検知部と、前記繰出部から前記周回搬送部に向かう紙幣の状態を検知する第二検知部とを有し、
前記制御部は、前記分岐後異常を、前記第一検知部の検知結果に基づいて判断し、前記分岐前異常を、前記第二検知部の検知結果に基づいて判断してもよい。
【0019】
このような紙幣入出金装置において、
前記分岐後異常は、紙幣の識別異常であり、
前記分岐前異常は、紙幣の連鎖異常であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、制御部によって、検知部の検知結果に基づいて周回搬送部による紙幣の搬送方向の切り換え要否が判断され、当該制御部で切り換えが必要と判断された場合には、周回搬送部による紙幣の搬送方向が直前の搬送方向と逆方向となるようにされている。このため、紙幣に同じ処理(出金処理、入金リジェクト処理など)を施す場合であっても、搬送部によって搬送される紙幣の状態に応じた処理を当該紙幣に施すことによって、例えば紙幣詰まりを防止するといった不都合を解消したり、例えば紙幣の表裏を一致させるといった利便性を向上させたり、異常と判断された紙幣を確実に払い出したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態による紙幣入出金装置の構成を示す概略図。
【図2】本発明の第1の実施の形態による紙幣入出金装置の搬送部と検知部の一部を示す概略図。
【図3】本発明の第1の実施の形態による紙幣入出金装置のガイド部材の構成を示す図。
【図4】本発明の第1の実施の形態による紙幣入出金装置の札たたき部の構成を示す概略図。
【図5】本発明の第1の実施の形態による紙幣入出金装置において、紙幣の詰まりを防止する態様を説明するための図。
【図6】本発明の第1の実施の形態による紙幣入出金装置における紙幣の搬送方法を示す概略図。
【図7】本発明の第2の実施の形態による紙幣入出金装置における紙幣の搬送方法を示す概略図。
【図8】本発明の第3の実施の形態による紙幣入出金装置における紙幣の搬送方法を示す概略図。
【図9】本発明の第4の実施の形態による紙幣入出金装置における紙幣の搬送方法を示す概略図。
【図10】本発明の第5の実施の形態による紙幣入出金装置の構成を示す概略図。
【図11】本発明の第5の実施の形態による紙幣入出金装置における紙幣の搬送方法を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る紙幣入出金装置の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図6は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0023】
図1に示すように、紙幣入出金装置は、筐体1と、紙幣を入金するための入金部5と、入金部5から紙幣を筐体1内に一枚ずつ繰り出す繰出部40と、繰出部40から繰り出される紙幣を搬送する搬送部10と、入金部5から入金された紙幣を収納する収納部30と、搬送部10によって搬送される紙幣の搬送状態を検知する複数の検知部s,s(s’を含む),sと(図2参照)、検知部s,s,sからの検知結果を受信するとともに当該検知結果によって搬送部10を制御する制御部50と、を備えている。また、収納部30は、紙幣を金種別に収納する金種別収納庫30a,30b,30cを有しており、各金種別収納庫30a,30b,30cには紙幣を一枚ずつ繰り出す繰出部45a,45b,45cが設けられている。なお、制御部50は、繰出部40,45(45a,45b,45c)にも接続されており、各繰出部40,45を制御することができるように構成されている。
【0024】
また、紙幣入出金装置は、搬送部10から搬出される紙幣を集積する集積部を備えており、本実施の形態においては、紙幣を出金するための出金部20(より具体的には出金部20の払出部21)が集積部を構成している(図1参照)。なお、出金部20は、収納部30から繰り出された紙幣のうち制御部50によって正常と判断された紙幣が搬送される払出部21と、収納部30から繰り出された紙幣のうち制御部50によって異常と判断された紙幣が搬送されるリジェクト部22とを有している。また、搬送部10には、回収時に紙幣を収納するためのカセット部35が設けられている。なお、払出部21には、入金部5から繰り出された紙幣のうち制御部50によって異常と判断された紙幣も搬送されるように構成されている。
【0025】
また、図1に示すように、搬送部10は、紙幣を搬送する通常搬送部11と、正逆両方向に切り換えて紙幣を搬送可能な周回搬送部15とを有している。そして、周回搬送部15によって搬送される紙幣は、正方向または逆方向のいずれの方向に搬送される場合であっても、集積部である出金部20に搬出可能とされている。
【0026】
また、図3(a)−(c)に示すように、周回搬送部15と通常搬送部11の連結箇所のうち、払出部21およびリジェクト部22に通じる箇所には、揺動軸14cを中心に開閉自在の駆動ガイド14aと、揺動軸14cを中心に揺動自在となっている従動ガイド14bとを有するガイド部材13が設けられている。そして、周回搬送部15内を紙幣が搬送される際には駆動ガイド14aは開状態となり(図3(a)参照)、他方、周回搬送部15から通常搬送部11に向かって紙幣が搬送される際には駆動ガイド14aが閉状態となるように構成されている(図3(b)参照)。このうち、駆動ガイド14aは駆動部(図示せず)によって開状態と閉状態が切り替えられる。他方、従動ガイド14bは、紙幣の流れに従って揺動され、紙幣がガイド部材13の上方から搬送される場合には従動ガイド14bが下方に移動し(図3(b)の破線参照)、逆に、紙幣がガイド部材13の下方から搬送される場合には従動ガイド14bが上方に移動するように構成されている(図3(b)の実線参照)。
【0027】
また、図1および図2に示すように、検知部s,s,sは、搬送部10によって搬送される紙幣の連鎖や斜行を検知する搬送検知部s(後述する搬送検知部s’を含む)と、連鎖および斜行だけでなく紙幣の金種および表裏を検知する識別検知部sと、紙幣を挟み込んで紙幣の厚みを検知する(重送を検知するための)厚み検知部sを有している。また、制御部50には、搬送部10で搬送異常が発生した場合に、搬送異常が発生した旨または搬送異常が発生するおそれがある旨を通知する搬送異常通知部55が接続されている。
【0028】
なお、識別異常とは、識別検知部sによって検知された情報が制御部50に予め記憶された情報と一致しない場合のことを意味している。このような識別異常としては、例えば、識別された紙幣が予定していた種類と異なる種類の紙幣であると識別されたときや、そもそも紙幣の種類を識別することができなかったときなどを挙げることができる。
【0029】
また、搬送異常とは、搬送部10によって紙幣を搬送する際の異常を意味している。このような搬送異常としては、例えば、紙幣が斜めに搬送されている場合(斜行)や、複数の紙幣が所定の間隔を隔てないで搬送されている場合(連鎖)、複数の紙幣が重なって搬送されている場合(重送)などを挙げることができる。
【0030】
また、制御部50は、入金部5の近傍に設けられた搬送検知部s’の検知結果に基づき、周回搬送部15による紙幣の搬送方向の切り換え要否を判断するとともに、切り換えが必要と判断した場合は、紙幣の搬送方向が、直前の搬送方向と逆方向となるように構成されている。
【0031】
より具体的には、制御部50は、搬送検知部s’の検知結果に基づいて、繰出部40によって繰り出されて搬送部10で搬送される紙幣が傾斜して搬送されていると判断した場合に当該紙幣の傾斜方向と傾斜角度を判断する。そして、制御部50は、紙幣の傾斜状態が所定の状態になっている場合(例えば、紙幣の傾斜角度が傾斜方向に応じて決められる所定の角度以上になっている場合)に、周回搬送部15を当該紙幣の傾斜方向に基づいて正転または逆転させることで、紙幣が出金部20に搬送されるように構成されている。
【0032】
また、図4(a)に示すように、払出部21には当該払出部21内に紙幣を送り出す札たたき部60が設けられ、同様に、リジェクト部22には当該リジェクト部22内に紙幣を送り出す札たたき部60が設けられている。そして、図4(b)に示すように、この札たたき部60は、中心部62と、当該中心部62から外方に延在するたたき部61とを有している。この点、本実施の形態では、隣接するたたき部61の間の角度が均等になっておらず、異なる角度からなっている(例えば、θ=75°、θ=95°、θ=105°、θ=85°からなっている)(図4(b)参照)。このため、札たたき部60が回転する回転数や、周辺部品の固有振動数に影響されることなく共鳴(共振)することを防止することができ、共鳴によって生じる異常音や不快音を低減することができる。
【0033】
なお、札たたき部60のたたき部61は、図4(c)に示すように、直線形状ではなく波型形状からなってもよい。このようにたたき部61が波型形状からなる場合には、紙幣をたたく際の衝撃音を小さくすることができ、異常音や不快音を低減することができるので好ましい。
【0034】
また、図4(d)に示すように、隣接するたたき部61の間の角度が均等となっておらず、かつ、そのたたき部61が波型形状から構成されることによって、異常音や不快音をより低減することができるのでさらに好ましい。
【0035】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0036】
まず、入金部5に紙幣が載置される(図1参照)。そして、当該紙幣が、繰出部40によって一枚ずつ搬送部10内に繰り出される。このとき、入金部5に設けられた繰出部40近傍の搬送検知部s’によって、紙幣が検知される。そして、制御部50によって、搬送検知部s’からの検知結果が受信されて、紙幣が斜めに搬送されているか(斜行しているか)や、複数の紙幣が所定の間隔を隔てないで搬送されているか(連鎖しているか)が判断される。
【0037】
次に、通常搬送部11によって紙幣が搬送されて、周回搬送部15に達せられる(図1参照)。このように通常搬送部11によって紙幣が搬送されている間に、制御部50によって、搬送検知部s’による検知結果に基づいて、周回搬送部15による紙幣の搬送方向の切り換え要否が判断される。そして、制御部50によって、周回搬送部15の切り換えが必要と判断された場合には、紙幣の搬送方向が、直前の搬送方向と逆方向となる。
【0038】
より具体的には、制御部50によって、搬送検知部s’の検知結果に基づいて、搬送される紙幣が所定の角度以上に傾斜して搬送されていると判断された場合には、当該制御部50によって斜行搬送していると判断され、入金部5から入金された当該紙幣に対して、入金リジェクト紙幣として払出部21に払い出す入金リジェクト処理が行われる。このときには、まず、当該紙幣の傾斜方向と傾斜角度が当該制御部50によって判断される。そして、制御部50によって、紙幣の傾斜角度が傾斜方向に応じて決められる所定の角度未満になっていると判断された場合には、周回搬送部15によって正方向に紙幣が搬送されて払出部21から払い出される。他方、制御部50によって、紙幣の傾斜角度が傾斜方向に応じて決められる所定の角度以上になっていると判断された場合には、周回搬送部15によって逆方向に紙幣が搬送されて払出部21から払い出される。なお、制御部50によって、周回搬送部15で逆方向に紙幣を搬送させても紙幣が詰まると判断された場合には、当該紙幣の搬送は中断され、搬送異常通知部55によって搬送異常が発生するおそれがある旨が通知される。
【0039】
周回搬送部15の回転方向を正逆方向で切り換える態様について図5の例を用いて説明すると、図5(a)に示すように、紙幣Pの下方側が前方に位置している場合であって傾斜角度が所定の角度未満になっている場合には、周回搬送部15が正方向に回転してそのまま出金部20の払出部21から紙幣Pが出金される(図6の矢印B参照)。他方、図5(b)に示すように、紙幣Pの上方側が前方に位置している場合であって傾斜角度が所定の角度以上になっている場合には、周回搬送部15が正方向に回転して紙幣を周回搬送路15に取り込み、紙幣の後端部が周回搬送路15内に入りきった後で逆方向に回転して出金部20の払出部21から紙幣Pが出金される(図6の矢印A参照)。なお、搬送路の設計上の関係で「所定の角度」は傾斜方向に応じて異なる値となっている(図5の例で言うと、図5(a)に示すように下方側が前方に位置している場合の方が、図5(b)に示すように上方側が前方に位置している場合と比較して、「所定の角度」が大きくなっている)。
【0040】
図5の例では、通常搬送部11(図の左側)と周回搬送部15(図の右側)とでは、通路の下端部はほぼ同じ高さに設定されているが、通路の上端部は周回搬送部15の方が高く設定され、周回搬送部15の通路幅の方が大きく設定されている。図5(a)に示す斜行状態では、紙幣の搬送方向前側の上方側が通常搬送部11からはみ出しているが、周回搬送部15でははみ出さない搬送状態となっている。このため、紙幣の搬送方向前側が周回搬送部15からはみ出して折れ曲がったりすることがなく、周回搬送部15から集積部である出金部20に正常に排出される。一方、図5(b)に示す斜行状態では、紙幣の搬送方向前側の下方側が通常搬送部11からはみ出し、周回搬送部15でも同様にはみ出した搬送状態となっているのに対し、搬送方向後ろ側の上方側は、通常搬送郎11からはわずかにはみ出すが、周回搬送部15でははみ出さない搬送状態となっているので、周回搬送部15の回転方向を逆転させることで、紙幣の搬送方向前側が周回搬送部15からはみ出さない搬送状態とすることができ、周回搬送部15から集積部である出金部20に正常に排出させることができる。
【0041】
このように、本実施の形態では、紙幣の少なくとも傾斜方向と傾斜角度とを含む搬送状態から判断して周回搬送部15を制御するが、その判断基準は、搬送路の設計上の関係により適宜調整されるものである。
【0042】
この点、搬送検知部s’による検知結果に基づいて周回搬送部15による紙幣の搬送方向の切り換え要否が判断されない場合には、紙幣Pが詰まってジャムが生じる可能性がある。すなわち、紙幣Pの傾斜角度が傾斜方向に応じて決められる所定の角度未満になっている際には問題なく出金されるが(図5(c)参照)、他方、紙幣Pの傾斜角度が傾斜方向に応じて決められる所定の角度以上になっている際には、出金部20の払出部21において紙幣が詰まってジャムが生じてしまう(図5(d)参照)。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、紙幣に同じ入金リジェクト処理を施す場合であっても、搬送部10によって搬送される紙幣の傾斜状態に応じた処理を当該紙幣に施すことによって、紙幣が詰まることを防止することができる。また、出金時や回収時において、斜行が検知された紙幣を特定の集積部に搬送する出金リジェクト処理や回収リジェクト処理を施す場合にも、本実施の形態の態様を同様に適用することができ、紙幣が詰まることを防止することができる。
【0044】
ところで、上述したような紙幣の斜行が生じていない場合や紙幣の連鎖が生じていない場合には、識別検知部sからの情報を受けた制御部50によって、当該制御部50に予め記憶された情報と識別検知部sからの情報とが一致するかどうかが判断される(図1参照)。そして、制御部50において、予め記憶された情報と識別された情報とが一致したと判断された場合には、正常であると判断され、他方、予め記憶された情報と識別された情報とが一致しないと判断された場合には、識別異常であると判断される。またこのとき、制御部50によって、厚み検知部sからの情報に基づいて紙幣が重送していないかも判断される(図2参照)。
【0045】
そして、正常であると判断された紙幣は、金種別収納庫30a,30b,30cに搬送され、各金種別収納庫30a,30b,30cに金種別に集積される(図1参照)。他方、識別異常や連鎖異常や重送異常があると判断された紙幣は出金部20の払出部21まで搬送されることとなる。
【0046】
第2の実施の形態
次に、図7により、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7に示す第2の実施の形態は、制御部50が、収納部30に設けられた繰出部45a,45b,45cによって繰り出されて搬送部10で搬送される紙幣の表裏を判断するとともに、紙幣の表裏に基づいて周回搬送部15を正転または逆転させることで、収納部30から繰り出される複数の紙幣の表裏を一致させた状態で出金部20の払出部21まで搬送させる出金処理を行うものである。その他の構成は、第1の実施の形態と略同一である。
【0047】
図7に示す第2の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
以下、紙幣が収納部30から繰り出されて出金部20まで搬送される態様について説明する。なお、本実施の形態では、説明を簡略化するため、金種別収納庫30aから紙幣が出金される態様を用いて説明するが、これに限られることはなく、別の金種別収納庫30b,30cから紙幣が出金される場合であっても同様の効果を得ることができる。なお、以下のように、出金される紙幣の表裏を一致させる場合には、その旨を指示する操作ボタン(図示せず)を利用者が選択して押下するなどすればよい。
【0049】
まず、金種別収納庫30aに設けられた繰出部45aによって、金種別収納庫30a内に収納された紙幣が一枚ずつ繰り出されて搬送部10の通常搬送部11によって搬送される(図7(a)(b)参照)。
【0050】
次に、搬送部10に繰り出された紙幣が周回搬送部15に設けられた識別検知部sに達する(図7(a)(b)参照)。そして、この識別検知部sからの情報を受けた制御部50によって、紙幣の金種だけでなく紙幣の表裏が判断される。なおこのとき、金種別収納庫30aから繰り出された紙幣の金種が予定していた金種と異なっている場合には、当該紙幣はリジェクト部22へと搬送されて、新たな別の紙幣が金種別収納庫30aから繰り出されることとなる。
【0051】
そして、制御部50によって、紙幣が所定の面(例えば表面)を上方にした状態で搬送されている場合には、周回搬送部15が正方向(第1の実施の形態では「逆方向」に相当する方向)に回転して、当該紙幣はそのまま出金部20の払出部21から出金される(図7(a)の矢印A参照)。なお、紙幣が払出部21への分岐部に達するまでに、識別検知部sの識別結果が判断できない場合は、当該紙幣を周回搬送部15で1周以上周回搬送させてから払出部21へ出金するようにしてもよい。
【0052】
他方、紙幣が所定の面と逆側の面(例えば裏面)を上方にした状態で搬送されている場合には、周回搬送部15が正方向に回転して紙幣を周回搬送路15に取り込み、紙幣の後端部が周回搬送路15内に入りきった後で周回搬送部15が逆方向(第1の実施の形態では「正方向」に相当する方向)に回転して、当該紙幣は出金部20の払出部21から出金される(図7(b)の矢印B参照)。
【0053】
以上のように、本実施の形態によれば、紙幣に同じ出金処理を施す場合において、搬送部10によって搬送される紙幣の表裏に応じた処理を当該紙幣に施すことによって、紙幣の表裏を一致させることができ、利用者の利便性を向上させることができる。
【0054】
なお、上記では、所定の面を基準として表裏を一致される態様を用いて説明したが、これに限られることはない。例えば、制御部50によって、収納部30から繰り出されて搬送部10で搬送される一枚目の紙幣の表裏に一致させるように、周回搬送部15が正転または逆転させることで、収納部30から繰り出される複数の紙幣が表裏を一致させてもよい。この場合には、収納部30から繰り出されて搬送部10で搬送される一枚目の紙幣に対して、常に周回搬送部15を正方向に回転させることができるので、紙幣の表裏を一致させるという効果を得つつ、出金処理の処理時間を短くすることができる点で優れている。
【0055】
第3の実施の形態
次に、図8により、本発明の第3の実施の形態について説明する。図8に示す第3の実施の形態は、制御部50が、収納部30に設けられた繰出部45a,45b,45cによって繰り出されて搬送部10で搬送される紙幣が、搬送部10で詰まっているかを判断する。そして、制御部50によって紙幣が搬送部10で詰まっていると判断された場合に、当該制御部50が、周回搬送部15の回転方向が直前の回転方向と逆方向とすることで、紙幣が出金部20に搬送されるように試みられるものであり、その他の構成は第1の実施の形態および第2の実施の形態と略同一である。
【0056】
図8に示す第3の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態および図7に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
以下、紙幣が収納部30から繰り出されて出金部20まで搬送される間に、紙幣が詰まった場合の処理態様について説明する。なお、本実施の形態では、説明を簡略化するため、金種別収納庫30aから紙幣が出金される態様を用いて説明するが、これに限られることはなく、別の金種別収納庫30b,30cから紙幣が出金される場合であっても同様の効果を得ることができる。また、入金紙幣をリジェクトする入金リジェクト処理や、出金時に異常紙幣をリジェクトする出金リジェクト処理でも同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態では、出金される紙幣の表裏が一致するように処理する態様(第2の実施の形態の態様)を用いずに説明する。
【0058】
まず、金種別収納庫30aに設けられた繰出部45aによって、金種別収納庫30aに収納された紙幣が繰り出されて搬送部10の通常搬送部11によって搬送される(図8(a)(b)参照)。
【0059】
次に、搬送部10に繰り出された紙幣が周回搬送部15に設けられた識別検知部sに達する(図8(a)(b)参照)。そして、この識別検知部sからの情報を受けた制御部50によって、紙幣の金種が判断されるとともに、識別検知部sを通過したことが認識される。なおこのとき、金種別収納庫30aから繰り出された紙幣の金種が予定していた金種と異なっている場合には、当該紙幣はリジェクト部22へと搬送されて、新たな別の紙幣が金種別収納庫30aから繰り出されることとなる。
【0060】
このように識別検知部sを通過した後で紙幣が詰まった場合には、制御部50が払出部21の入口の検知部sから紙幣が通過した旨の情報を受け取らない。このため、識別検知部sを紙幣が通過して所定の時間が経っても検知部sを紙幣が通過した旨の情報を制御部50が受け取らない場合には、当該制御部50によって紙幣が詰まったと判断される。
【0061】
そして、制御部50によって紙幣が搬送部10で詰まっていると判断された場合には、当該制御部50によって、周回搬送部15の回転方向が直前の回転方向と逆方向とされる(本実施の形態では、正方向で回転していた周回搬送部15が逆方向に回転される)ことで、紙幣が出金部20の払出部21に搬送されるように試みられる(図8(a)の矢印B参照)。紙幣が搬送路内で詰まる場合は、紙幣の搬送方向前側の折れ曲がりなどが原因となる場合が多いが、紙幣の搬送方向を逆転することで、このような詰まりを解消できる場合がある。このため、例え周回搬送部15で紙幣が詰まったとしても、搬送方向を切り換えることで当該周回搬送部15から紙幣を除去して出金部20の払出部21に搬送することができる。なお、本実施の形態では、このように周回搬送部15の回転方向を逆方向とする場合に、直前の回転速度よりも遅い回転速度で周回搬送部15を回転させるように構成されており、より確実に周回搬送部15から紙幣を除去して出金部20の払出部21に搬送することができる。
【0062】
以上のように、本実施の形態によれば、紙幣に同じ出金処理を施す場合において、搬送部10によって搬送される紙幣が詰まったかどうかという搬送状態に応じた処理を当該紙幣に施すことによって、紙幣の詰まりを防止することができ、利用者の利便性を向上させることができる。また、上述した態様は、紙幣に入金リジェクト処理や出金リジェクト処理を施す場合にも適用することができる。
【0063】
なお、上述のように周回搬送部15の回転方向を逆方向としても、制御部50によって紙幣が周回搬送部15で詰まっていると判断された場合には、制御部50が周回搬送部15を当該逆方向とさらに逆の方向で回転させる(本実施の形態では、周回搬送部15を正方向で回転させる)(図8(b)の矢印A参照)。このため、本実施の形態によれば、より確実に周回搬送部15から紙幣を除去して出金部20の払出部21に搬送することができる。なおこのときにも、周回搬送部15は遅い回転速度で回転されることとなる。
【0064】
ところで、制御部50が周回搬送部15を逆方向とさらに逆の方向で回転(本実施の形態では、周回搬送部15を正方向で回転)させた場合においても制御部50によって紙幣が周回搬送部15で詰まっていると判断された場合には、制御部50からの情報を受けて搬送異常通知部55によって搬送異常が発生した旨が通知されることとなる(図1参照)。このため、利用者は、紙幣が詰まったことを容易に確認することができる。
【0065】
なお、上記では、回転方向を逆方向としても紙幣が周回搬送部15で詰まっていると判断された場合に、制御部50が周回搬送部15を当該逆方向とさらに逆の方向で回転させる態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、回転方向を逆方向としても紙幣が周回搬送部15で詰まっていると判断された場合に、周回搬送部15をさらに逆の方向で回転させることなく、搬送異常通知部55によって搬送異常が発生した旨が通知されてもよい。
【0066】
第4の実施の形態
次に、図9により、本発明の第4の実施の形態について説明する。図9に示す第4の実施の形態は、制御部50が、入金部5に設けられた繰出部40によって繰り出されて搬送部10で搬送される紙幣の表裏を判断するとともに、周回搬送部15を紙幣の表裏に基づいて正転または逆転させることで、繰出部40から繰り出される複数の紙幣の表裏を一致させた状態で出金部20に搬送させるものである。その他の構成は、第1の実施の形態、第2の実施の形態および第3の実施の形態と略同一である。
【0067】
図9に示す第4の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態、図7に示す第2の実施の形態および図8に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0068】
以下、紙幣が入金部5から繰り出されて出金部20の払出部21まで搬送される態様について説明する。なお、本実施の形態では説明を簡略化するため、搬送される紙幣について識別異常や搬送異常が生じない態様を用いて説明し、これら識別異常および搬送異常に関する処理についての説明は省略する。
【0069】
まず、入金部5に紙幣が載置される。そして、当該紙幣が、繰出部40によって一枚ずつ搬送部10の通常搬送部11内に繰り出される(図9参照)。
【0070】
次に、通常搬送部11によって紙幣が搬送されて周回搬送部15に設けられた識別検知部sに達せられる。その後、識別検知部sからの情報を受けた制御部50によって紙幣の表裏が判断される(図1参照)。
【0071】
そして、紙幣が所定の面(例えば表面)を上方にした状態で搬送されている場合には、周回搬送部15が正方向に回転して、当該紙幣はそのまま出金部20の払出部21から出金される(図9の矢印B参照)。
【0072】
他方、紙幣が所定の面と逆側の面(例えば裏面)を上方にした状態で搬送されている場合には、周回搬送部15が正方向に回転して紙幣を周回搬送路15に取り込み、紙幣の後端部が周回搬送路15内に入りきった後で周回搬送部15が逆方向に回転して、当該紙幣は出金部20の払出部21から出金される(図9の矢印A参照)。
【0073】
上述した工程が、入金部5に載置された紙幣の全てが筐体1内に繰り出されるまで連続して行われる。
【0074】
以上のように、本実施の形態によれば、紙幣に対して入金部5から取り込んで払出部21から出金するという同じ処理を施す場合において、搬送部10によって搬送される紙幣の表裏に応じた処理を当該紙幣に施すことによって、紙幣の表裏を一致させることができ、利用者の利便性を向上させることができる。
【0075】
なお、上記では、所定の面を基準として表裏を一致される態様を用いて説明したが、これに限られることはない。例えば、制御部50によって、入金部5から繰り出されて搬送部10で搬送される一枚目の紙幣の表裏に一致させるように、周回搬送部15が正転または逆転させることで、入金部5から繰り出される複数の紙幣が表裏を一致させてもよい。この場合には、入金部5から繰り出されて搬送部10で搬送される一枚目の紙幣に対して、常に周回搬送部15を正方向に回転させることができるので、紙幣の表裏を一致させるという効果を得つつ処理時間を短くすることができる。
【0076】
また、上記では入金部5に載置された紙幣の全てが筐体1内に繰り出される態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、繰出部40が所定の枚数の紙幣を搬送部10に繰り出す態様を用いてもよい。
【0077】
この場合には、図9に示すように、出金部20に紙幣の有無を検知する有無検知センサsが設けられ、制御部50が、繰出部40から繰り出されて出金部20に搬送された紙幣が当該出金部20から取り除かれた旨の信号を有無検知センサsから受信することで、再度、所定の枚数の紙幣を該搬送部10に繰り出すように構成されていることが好ましい。このような態様によれば、所定の枚数からなる紙幣の束を、紙幣の表裏を一致させた状態で利用者に提供することができ、利用者の利便性をさらに向上させることができ、優れた効果を発揮することができる。このように、第4の実施の形態によれば、複数枚の紙幣を所定の枚数ずつに区分する枚数区分処理(札割処理)や、複数枚の紙幣から所定の金種の紙幣や正規の紙幣のみを抜き出したり、複数枚の紙幣の枚数や金額を計算する精査処理を施したりする場合に、紙幣の搬送状態(表裏)によって周回搬送部15の搬送方向を切り換えることにより、表裏を揃えて払出部21に紙幣を払い出すことができる。
【0078】
第5の実施の形態
次に、図10および図11により、本発明の第5の実施の形態について説明する。図10および図11に示す第5の実施の形態は、金種別収納庫30cの代わりに、繰出部40から繰り出されて搬送部10により搬送される紙幣を一時的に受け入れる一時保留部(受入部)31が設けられたものである。また、一時保留部31と周回搬送部15との間の通常搬送部11には、通常搬送部11上の紙幣を周回搬送部15側へと逆方向に搬送可能な駆動部16が必要に応じて設けられ、出金部20の払出部21は集積部を構成し、一時保留部31に搬送すべきでない異常紙幣を受け入れ可能とされている。また、一時保留部31には、当該一時保留部31内に収納された紙幣を一枚ずつ繰り出す繰出部46が設けられている。
【0079】
また、制御部50は、搬送部10によって搬送される紙幣が一時保留部31に向けて分岐搬送された後に、検知部s,sの検知結果に基づき異常紙幣であると判断した分岐後異常の場合には、当該紙幣の搬送方向を逆方向に切り換えて払出部21に搬送し、他方、搬送部10によって搬送される紙幣が一時保留部31に向けて分岐搬送される前に、検知部s’の検知結果に基づき異常紙幣であると判断した分岐前異常の場合には、紙幣の搬送方向を変更せずに払出部21に搬送するように構成されている。
【0080】
なお、識別検知部sと厚み検知部sが、周回搬送部15上を搬送される紙幣の状態を検知する第一検知部を構成し、入金部5の近傍に設けられた搬送検知部s’が、繰出部40から周回搬送部15に向かう紙幣の状態を検知する第二検知部を構成している。そして、制御部50は、分岐後異常を識別検知部sの検知結果と厚み検知部sの検知結果に基づいて判断し、分岐前異常を搬送検知部s’の検知結果に基づいて判断するように構成されている。そして、本実施の形態では、分岐後異常が紙幣の識別異常と厚み異常からなり、分岐前異常が紙幣の連鎖異常からなっている。
【0081】
図10および図11に示す第5の実施の形態は、以上の構成以外は、第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態および第4の実施の形態と略同一である。図10および図11に示す第5の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態、図7に示す第2の実施の形態、図8に示す第3の実施の形態および図9に示す第4の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0082】
まず、入金部5に紙幣が載置される(図11参照)。そして、当該紙幣が、繰出部40によって一枚ずつ搬送部10の通常搬送部11内に繰り出される。このとき、入金部5に設けられた繰出部40近傍の搬送検知部s’によって、紙幣が検知される。そして、制御部50によって、搬送検知部s’からの検知結果が受信されて、紙幣が斜めに搬送されているか(斜行しているか)や、複数の紙幣が所定の間隔を隔てないで搬送されているか(連鎖しているか)が判断される。
【0083】
次に、通常搬送部11によって紙幣が搬送されて、周回搬送部15に設けられた識別検知部sに達する(図11参照)。そして、識別検知部sからの情報を受けた制御部50によって、当該制御部50に予め記憶された情報と識別検知部sからの情報とが一致するかどうかが判断される。そして、制御部50において、予め記憶された情報と識別された情報とが一致したと判断された場合には、正常であると判断され、他方、予め記憶された情報と識別された情報とが一致しないと判断された場合には、識別異常であると判断される。なおこのとき、制御部50によって、厚み検知部sからの情報に基づいて、紙幣が重送していないかも判断される(図2参照)。
【0084】
そして、制御部50によって正常であると判断された紙幣は一時保留部31に搬送され(図11参照)、その後、金種別収納庫30a,30bに搬送されて、各金種別収納庫30a,30bに金種別に集積される(図10参照)。なお、本実施の形態では、1,000円紙幣を金種別収納庫30aに収納し、5,000円紙幣を金種別収納庫30bに収納し、10,000円をカセット部35に収納するように構成されている。
【0085】
他方、識別異常や重送異常(紙幣が重送する異常)があると判断された紙幣や連鎖異常(紙幣が連鎖する異常)があると判断された紙幣は、以下のように処理されることとなる。なお、斜行異常(紙幣が斜行する異常)があると判断された紙幣は第1の実施の形態と同様の処理が行われる。
【0086】
具体的には、入金部5の近傍に設けられた搬送検知部s’からの情報に基づいて制御部50によって連鎖異常が生じたと判断された場合には、搬送検知部s’が入金部5の近傍に設けられていることから、搬送部10によって搬送される紙幣が一時保留部31に向けて分岐搬送される前に、制御部50によって搬送検知部s’の検知結果に基づき異常紙幣であると判断されることとなる。このため、制御部50は、周回搬送部15の回転方向を変えることなく正方向のままで、当該紙幣を払出部21に搬送させる(図11の矢印B参照)。
【0087】
他方、識別異常を検知する識別検知部sと重送異常を検知する厚み検知部sは、周回搬送部15に設けられているので、これら識別異常と重送異常は、搬送部10によって搬送される紙幣が一時保留部31に向けて分岐搬送された後に、制御部50によって識別検知部sおよび厚み検知部sの検知結果に基づき異常紙幣であると判断されることとなる。このため、制御部50は、駆動部16によって通常搬送部11上の紙幣を周回搬送部15側へと移動させるとともに、周回搬送部15の回転方向を逆方向に切り換えることで、当該紙幣を払出部21に搬送させる(図11の矢印A参照)。
【0088】
以上のように、本実施の形態によれば、紙幣に同じ入金リジェクト処理を施す場合であっても、搬送部10によって搬送される紙幣にどのような異常が生じたかによって、周回搬送部15の回転方向を変え、確実に払出部21まで紙幣を搬送して払い出すことができる。また、本実施の形態による態様は、紙幣に入金以外の出金、回収、精査などの処理を施す場合においても、また、異常紙幣を特定の集積部に搬送する出金リジェクト処理などを施す場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 筐体
5 入金部
10 搬送部
11 通常搬送部
15 周回搬送部
20 出金部
21 払出部
22 リジェクト部
30 収納部
35 カセット部
30a,30b,30c 金種別収納庫
31 一時保留部(受入部)
40 繰出部
45a,45b,45c 繰出部
46 繰出部
50 制御部
55 搬送異常通知部
識別検知部
,s’ 搬送検知部
厚み検知部
有無検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を一枚ずつ繰り出す繰出部と、
前記繰出部から繰り出される紙幣を搬送する搬送部と
前記搬送部から搬出される紙幣を集積する集積部と、
前記搬送部によって搬送される紙幣の搬送状態を検知する検知部と、
前記搬送部を制御する制御部と、を備え、
前記搬送部は、正逆両方向に切り換えて紙幣を搬送可能な周回搬送部を有し、該周回搬送部によって正方向または逆方向のいずれの方向に搬送される紙幣でも前記集積部に搬出可能とされ、
前記制御部は、前記検知部の検知結果に基づき、前記周回搬送部による紙幣の搬送方向の切り換え要否を判断するとともに、切り換えが必要と判断した場合は、紙幣の搬送方向が、直前の搬送方向と逆方向となるように切り換えることを特徴とする紙幣入出金装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記搬送部で搬送される紙幣の傾斜方向と傾斜角度とを含む傾斜状態を、前記紙幣の搬送状態として検知し、
前記制御部は、紙幣の傾斜状態が所定の状態になっている場合に、前記周回搬送部の搬送方向を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の紙幣入出金装置。
【請求項3】
前記繰出部は、紙幣を収納する収納部に設けられ、
前記集積部は、紙幣を出金する出金部からなり、
前記検知部は、前記搬送部で搬送される紙幣の表裏を、前記紙幣の搬送状態として検知し、
前記制御部は、前記周回搬送部の搬送方向を紙幣の表裏に基づいて切り換えることで、前記収納部から繰り出される複数の紙幣が表裏を一致させた状態で前記出金部に搬送されることを特徴とする請求項1に記載の紙幣入出金装置。
【請求項4】
前記制御部が前記周回搬送部の搬送方向を、前記収納部から繰り出されて前記搬送部で搬送される一枚目の紙幣の表裏に一致させるように切り換えることで、該収納部から繰り出される複数の紙幣が表裏を一致させた状態で前記出金部に搬送されることを特徴とする請求項3に記載の紙幣入出金装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記搬送部で搬送される紙幣の搬送詰まりを、前記紙幣の搬送状態として検知し、
前記制御部によって紙幣が前記搬送部で詰まっていると判断された場合に、該制御部が前記周回搬送部の搬送方向を切り換えることで、該紙幣が前記集積部に搬送されるように試みられることを特徴とする請求項1に記載の紙幣入出金装置。
【請求項6】
前記制御部が前記周回搬送部の搬送方向を切り換える場合に、切り換え後の搬送速度を切り換え前の搬送速度よりも遅い速度とすることを特徴とする請求項5に記載の紙幣入出金装置。
【請求項7】
前記制御部が前記周回搬送部の搬送方向を切り換えた場合においても該制御部によって前記紙幣が前記搬送部で詰まっていると判断された場合に、該制御部が該周回搬送部の搬送方向をさらに切り換えることを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の紙幣入出金装置。
【請求項8】
前記搬送部で搬送異常が発生した場合に、搬送異常が発生した旨を通知する搬送異常通知部をさらに備え、
前記制御部が前記周回搬送部の搬送方向を切り換えた場合においても該制御部によって前記紙幣が前記搬送部で詰まっていると判断された場合に、前記搬送異常通知部によって搬送異常が発生した旨が通知されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の紙幣入出金装置。
【請求項9】
前記繰出部は、紙幣を入金する入金部に設けられ、
前記集積部は、紙幣を出金する出金部からなり、
前記検知部は、前記搬送部で搬送される紙幣の表裏を、前記紙幣の搬送状態として検知し、
前記制御部は、前記周回搬送部の搬送方向を紙幣の表裏に基づいて切り換えることで、前記繰出部から繰り出される複数の紙幣が表裏を一致させた状態で前記出金部に搬送されることを特徴とする請求項1に記載の紙幣入出金装置。
【請求項10】
前記出金部に設けられ、紙幣の有無を検知する有無検知センサをさらに備え、
前記繰出部は、所定の枚数の紙幣を前記搬送部に繰り出し、該繰出部から繰り出されて前記出金部に搬送された紙幣が該出金部から取り除かれた旨の信号を前記有無検知センサから受信することで、再度、所定の枚数の紙幣を該搬送部に繰り出すことを特徴とする請求項9に記載の紙幣入出金装置。
【請求項11】
前記繰出部から繰り出されて前記搬送部により搬送される紙幣を受け入れる受入部をさらに備え、
前記集積部は、前記受入部に搬送すべきでない異常紙幣を受け入れ可能とされ、
前記制御部は、前記搬送部によって搬送される紙幣が前記受入部に向けて分岐搬送された後に、前記検知部の検知結果に基づき異常紙幣であると判断した分岐後異常の場合には、当該紙幣の搬送方向を逆方向に切り換えて前記集積部に搬送し、他方、前記搬送部によって搬送される紙幣が前記受入部に向けて分岐搬送される前に、前記検知部の検知結果に基づき異常紙幣であると判断した分岐前異常の場合には、当該紙幣の搬送方向を変更せずに前記集積部に搬送することを特徴とする請求項1に記載の紙幣入出金装置。
【請求項12】
前記検知部は、前記周回搬送部上を搬送される紙幣の状態を検知する第一検知部と、前記繰出部から前記周回搬送部に向かう紙幣の状態を検知する第二検知部とを有し、
前記制御部は、前記分岐後異常を、前記第一検知部の検知結果に基づいて判断し、前記分岐前異常を、前記第二検知部の検知結果に基づいて判断することを特徴とする請求項11に記載の紙幣入出金装置。
【請求項13】
前記分岐後異常は、紙幣の識別異常であり、
前記分岐前異常は、紙幣の連鎖異常である、ことを特徴とする請求項11または12のいずれかに記載の紙幣入出金装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−8594(P2011−8594A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152420(P2009−152420)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】