説明

紙幣処理装置、及び紙幣取扱装置

【課題】装置本体側の紙幣導入搬送路を開閉する蓋部材を二個備えた紙幣処理装置において、一つのロック手段、一つの開閉検知センサによって、二個の蓋部材のロック、及び開閉検知を行う。
【解決手段】搬送部材12の前部を開閉するように装置本体11によって後部適所を軸支された第1の蓋部材20と、搬送部材後部を開閉するように開閉自在に軸支された第2の蓋部材30と、第2の蓋部材を閉止位置においてロックするロック手段40と、第2の蓋部材が閉止位置にあることを検知するロック検知手段50と、を備え、第1の蓋部材が閉止位置にある状態において第2の蓋部材を閉止してロック手段をロックした時に、該第1の蓋部材に設けた被係止部22を係止して開放を阻止する開放阻止片31を第2の蓋部材に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば紙幣を入金する機能を備えた各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備される紙幣処理装置の改良に関し、特に装置本体によって開閉自在に軸支された2つの蓋部材の開放の有無を検知する機能と、両蓋部材を閉止状態でロックする機能を低コストで実現することができる紙幣処理装置、及び紙幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種自動販売機、入出金装置、両替機、パチンコ遊技場で使用される台間機等の紙幣取扱装置は、入金された紙幣の真贋、金種を判定したり、紙幣収納庫に収納する等の処理を行う紙幣処理装置を備えている。
図6は従来の紙幣処理装置における蓋部材の取付け構造、及び蓋部材の開閉検知構造を示す説明図である。
この紙幣処理装置は、紙幣挿入口100から挿入された紙幣を導入搬送路101に沿って装置内部に搬送する搬送ベルト等の図示しない搬送部材と、紙幣挿入口100の内部に配置された紙幣挿入の有無を検知する挿入センサ105と、導入搬送路101の奥部に配置されて紙幣の真贋、金種を判定する識別装置106と、後部蓋部材115の開閉の有無を検知する開閉検知センサ107と、前部蓋部材116の開閉を検知する開閉検知センサ108と、を有する。また、紙幣処理装置は、上面に搬送部材を備えた装置本体110と、装置本体上面の後部に設けた開閉軸115aによって上下方向に開閉自在に軸支された後部蓋部材115と、後部蓋部材115の前方に配置された開閉軸116aによって上下方向に開閉自在に軸支された前部蓋部材116と、後部蓋部材115と前部蓋部材116を夫々閉止位置において装置本体に対してロックするためのロック手段115b、116bと、を有している。更に、図示しないが、各蓋部材を開放位置にてロックするためのロック手段も夫々装備されている。
【0003】
図示しない制御手段は、挿入口100から紙幣を挿入することにより挿入センサ105がオンした場合には搬送部材を駆動するモータを駆動して導入搬送路に沿って紙幣を装置内に搬送する。また、制御手段は、各開閉検知センサ107、108からの検知信号に基づいて各蓋部材115、116の開閉状態を判定し、開放を検知した時には搬送部材を駆動するモータの駆動を停止する等の安全措置を講ずる。
紙幣挿入口から挿入された紙幣が導入搬送路101の前部でジャムを起こした場合には、ロック手段116bを解除して前部蓋部材116を開放して導入搬送路101内で詰まった紙幣を処理する。また、導入搬送路101の奥部で紙幣がジャムを起こした場合には、ロック手段115bを解除して後部蓋部材115を開放して導入搬送路101内で詰まった紙幣を処理する。
紙幣を搬送する経路である導入搬送路101における搬送部材と各蓋部材との隙間管理は厳密に行う必要があるため、上記の如く各蓋部材毎にロック手段と開閉検知センサを設けている。
しかし、後部蓋部材と前部蓋部材について夫々ロック手段と開閉検知センサを装備しているため、部品点数の増大による大型化、構造の複雑化、コストアップという問題が発生している。
【0004】
特開2007−94807公報には、蓋部材の開閉検知専用のセンサを設けることなく、紙幣検知部を用いて蓋部の開閉検知をも行うことができるようにした紙幣識別装置が開示されている。この紙幣識別装置は、透過型センサから成る紙幣検知部の発光レベルをレベルの強弱に基づいてパターン化して開閉検知を行うものである。
しかし、紙幣検知部の発光レベルをパターン化するためのソフト構成を実現するためにコストアップがもたらされることが明かである。また、前部蓋部材と後部蓋部材を設けた場合におけるロック手段と開閉検知センサの数を低減させるための構成は一切開示されていない。
なお、従来装置において蓋部材を単一とせず、前後位置関係で2つの蓋部材115、116を併設している理由は、長尺な単一の蓋部材によって装置本体100の上面全体をカバーしようとした場合には、蓋部材の開閉を繰り返すことにより経時的に開閉軸に緩みなどが発生して、装置本体と蓋部材との間に位置ずれ、誤差が発生し易くなるからである。
また、蓋部材を2つ設けて夫々個別に開閉自在に軸支することにより、紙幣取扱装置に対する小型化等の要請があり、紙幣処理装置の上方に十分な空間を確保できないとしても個々の蓋部材を開放した際の角度を大きくしてメンテナンス性を高めることができるからである。逆に言えば、長尺の単一の蓋部材の場合には開放時の角度が小さくなるため、メンテナンス性が低下するという欠点ももたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−94807公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、装置本体側の紙幣導入搬送路を開閉する蓋部材を二個備えた従来の紙幣処理装置にあっては、各蓋部材について夫々ロック手段と開閉検知センサを装備しているため、部品点数の増大による大型化、構造の複雑化、コストアップという問題が発生していた。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、装置本体側の紙幣導入搬送路を開閉する蓋部材を二個備えた紙幣処理装置において、一つのロック手段、一つの開閉検知センサによって、二個の蓋部材のロック、及び開閉検知を行うことができる紙幣処理装置、及び紙幣取扱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る紙幣処理装置は、紙幣挿入口から挿入された紙幣を内部に搬送する搬送部材を備えた装置本体と、前部に前記紙幣挿入口を備え且つ前記搬送部材の前部を開閉するように前記装置本体によって後部適所を軸支された第1の蓋部材と、該第1の蓋部材の後方において前記搬送部材を開閉するように前記装置本体によって後部適所を開閉自在に軸支された第2の蓋部材と、前記第2の蓋部材を閉止位置においてロックするロック手段と、前記第2の蓋部材が閉止位置にあることを検知するロック検知手段と、該ロック検知手段からの検知信号に基づいて前記各蓋部材の開閉を判定する制御手段と、を備え、前記第1の蓋部材が閉止位置にある状態において前記第2の蓋部材を閉止して前記ロック手段をロックした時に、該第1の蓋部材に設けた被係止部を係止して開放を阻止する開放阻止片を前記第2の蓋部材に設け、前記制御手段は、前記ロック検知手段が前記第2の蓋部材の閉止を検知している時に、前記第1の蓋部材が閉止状態にある旨を判定することを特徴とする。
請求項2の発明に係る紙幣取扱装置は、請求項1に記載の紙幣処理装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紙幣搬送経路の前部を開閉する前部蓋部材の後方に後部蓋部材を開閉自在に配置した紙幣処理装置において、前部蓋部材を閉止した状態で後部蓋部材を閉止したときに前部蓋部材が後部蓋部材によって閉止状態をロックされるように構成したので、後部蓋部材を閉止位置にロックするロック手段のみを設ければ、前部蓋部材のロックも完了することとなる。このため、ロック手段を一つに減少させることができる。また、後部蓋部材の開閉を検知する開閉検知手段により前部蓋部材の開閉も検知できることとなる。
このため、一つのロック手段、一つの開閉検知センサによって、二個の蓋部材のロック、及び開閉検知を行うことができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)及び(b)は本発明の紙幣処理装置を備えた紙幣取扱装置の要部の概略構成説明図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の紙幣処理装置における両蓋部材の閉止状態を示す斜視図、及び両蓋部材を開放した状態を示す斜視図である。
【図3】両蓋部材を開放した状態を示す正面図である。
【図4】両蓋部材を閉止した状態を示す正面縦断面図である。
【図5】第2の蓋部材を閉止した状態と開放した状態を示す裏面側縦断面図である。
【図6】(a)及び(b)は従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の紙幣処理装置を備えた紙幣取扱装置の要部の概略構成説明図であり、図2(a)及び(b)は本発明の紙幣処理装置における両蓋部材の閉止状態を示す斜視図、及び両蓋部材を開放した状態を示す斜視図であり、図3は両蓋部材を開放した状態を示す正面図であり、図4は両蓋部材を閉止した状態を示す正面縦断面図であり、図5は第2の蓋部材を閉止した状態と開放した状態を示す裏面側縦断面図である。
【0011】
紙幣取扱装置1は、その上部に紙幣取扱装置10を備えている。
紙幣取扱装置10は、紙幣挿入口(紙幣挿入部)21から挿入された紙幣を導入搬送路Pに沿って装置内部に搬送する搬送ベルト等の搬送部材12を上面に備えた装置本体11と、前部に紙幣挿入口21を備え且つ搬送部材12の前部を開閉するように装置本体11によって後部適所を軸支された第1の蓋部材(前部蓋部材)20と、第1の蓋部材20の後方において搬送部材12を開閉するように装置本体11によって後部適所を開閉自在に軸支された第2の蓋部材(後部蓋部材)30と、第2の蓋部材30を閉止位置において装置本体11に対してロックするロック手段40と、第2の蓋部材が閉止位置にあることを検知する開閉検知手段50と、開閉検知手段50からの検知信号に基づいて各蓋部材の開閉を判定する制御手段60と、を備えている。更に、紙幣処理装置は、紙幣挿入口21の内部に配置されて紙幣挿入の有無を検知する挿入センサ70と、第2の蓋部材30に組み込まれて紙幣の真贋、金種を判定する識別装置71と、を有する。
紙幣挿入口21は、装置本体11の前部上部に突出した紙幣ガイド皿15との協働により挿入される紙幣を導入搬送路Pに導く。
【0012】
第1の蓋部材20は、装置本体11によって後部の軸部20aを上下方向へ回動自在に軸支されており、図1(a)、図2(a)に示した閉止時には前面に設けた紙幣挿入口21から紙幣を受入れ可能な状態となる。第1の蓋部材を手で開放してジャム処理等を行った後で、手による支持を解除すると、第1の蓋部材は自重により閉止位置に回動する。
第2の蓋部材30は、後端部に設けた軸部30aを装置本体11によって上下方向へ回動自在に軸支されており、開閉検知手段50によって開閉状態が検知される。開閉検知手段50は、本例では、図5に示すように装置本体11に設けた透過型フォトセンサ50aと、第2の蓋部材30に設けた遮蔽部材50bとから構成されている。図5において第2の蓋部材30が実線で示した閉止位置にあるときには遮蔽部材50bが透過型フォトセンサ50aを遮蔽しており、また破線で示した開放位置にあるときには遮蔽部材50bが透過型フォトセンサ50aから離間して遮蔽していない。
第2の蓋部材30は、第1の蓋部材20が閉止位置にある状態において第2の蓋部材30を閉止してロック手段40をロックした時に、第1の蓋部材20に設けた被係合部(ロック突き当て板金)22と係合して第1の蓋部材の開放を阻止する開放阻止片(ロック突き当てシャフト)31を備えている。第1の蓋部材20を閉止状態でロックする格別のロック手段は設けておらず、第1の蓋部材20を閉止した状態で第2の蓋部材を閉止し、且つロック手段40によって第2の蓋部材をロックすることによって、第1の蓋部材20は閉止位置にロックされることとなる。開閉検知手段50が第2の蓋部材30が閉止されていること(ロック手段40によるロック状態にあること)を検知することにより、第1の蓋部材20が閉止されていることも同時に確認することができる。
【0013】
なお、第1の蓋部材20に設けた被係合部22と一体化した板部材22aに設けた丸穴を、第1の蓋部材側に設けた支持部材23に設けた長穴内に連通させた状態でボルト24を両穴に挿通し、支持部材23に対する被係合部22の前後方向位置を微調整できるように構成することによって、被係合部22と開放阻止片31との係合位置を調整し、第1の蓋部材閉止位置を調整することが可能となる。
なお、第1の蓋部材20が開放した状態にある時には第2の蓋部材30を閉止しようとしても、被係合部22と開放阻止片31が互いに干渉するため閉止することができない。また、第1の蓋部材が閉止位置にあるとしても、第2の蓋部材30が開放されていれば装置は開放状態として検知されることとなる。このため、第1の蓋部材だけ、或いは第2の蓋部材だけが開放した状態がなくなり、蓋部材の開閉状態についての誤検知をなくすることができる。
【0014】
このように本発明においては、導入搬送路Pの前部と、前部よりも奥側部分を開閉するために隣接配置された第1の蓋部材20と、第2の蓋部材20のロックを一つのロック手段40によって実現するばかりでなく、両蓋部材の開閉検知を一つの開閉検知手段50によって実現するようにしたので、部品点数の低減によるレイアウト自由度の向上、小型化、構成のシンプル化、低コスト化を実現することが可能となった。第2の蓋部材20が閉止状態にあれば、第1の蓋部材20も閉止状態にあるという条件設定となり、制御部による判断プロセスをシンプル化することができる。このため、制御手段60は、開閉検知手段50が第2の蓋部材30が閉止状態にあることを検知している時に、第1の蓋部材20が閉止状態にあることを判定することができる。
【0015】
以上のように本発明によれば、紙幣導入搬送路の前部を開閉する前部蓋部材の後方に後部蓋部材を開閉自在に配置した紙幣処理装置において、前部蓋部材を閉止した状態で後部蓋部材を閉止したときに前部蓋部材が後部蓋部材によって閉止状態をロックされるように構成したので、後部蓋部材を閉止位置にロックするロック手段のみを設ければ、前部蓋部材のロックも完了することとなる。このため、ロック手段を一つに減少させることができる。また、後部蓋部材の開閉を検知する開閉検知手段により前部蓋部材の開閉も検知できることとなる。
このため、一つのロック手段、一つの開閉検知センサによって、二個の蓋部材のロック、及び開閉検知を行うことができることとなる。
【符号の説明】
【0016】
1…紙幣取扱装置、10…紙幣取扱装置、11…装置本体、12…搬送部材、15…紙幣ガイド皿、20…蓋部材、20a…軸部、21…紙幣挿入口(紙幣挿入部)、22…被係合部、22a…板部材、23…支持部材、24…ボルト、30…蓋部材、30a…軸部、31…開放阻止片、40…ロック手段、50…開閉検知手段、50a…透過型フォトセンサ、50b…遮蔽部材、60…制御手段、70…挿入センサ、71…識別装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣挿入口から挿入された紙幣を内部に搬送する搬送部材を備えた装置本体と、前部に前記紙幣挿入口を備え且つ前記搬送部材の前部を開閉するように前記装置本体によって後部適所を軸支された第1の蓋部材と、該第1の蓋部材の後方において前記搬送部材を開閉するように前記装置本体によって後部適所を開閉自在に軸支された第2の蓋部材と、前記第2の蓋部材を閉止位置においてロックするロック手段と、前記第2の蓋部材が閉止位置にあることを検知するロック検知手段と、該ロック検知手段からの検知信号に基づいて前記各蓋部材の開閉を判定する制御手段と、を備え、
前記第1の蓋部材が閉止位置にある状態において前記第2の蓋部材を閉止して前記ロック手段をロックした時に、該第1の蓋部材に設けた被係止部を係止して開放を阻止する開放阻止片を前記第2の蓋部材に設け、
前記制御手段は、前記ロック検知手段が前記第2の蓋部材の閉止を検知している時に、前記第1の蓋部材が閉止状態にある旨を判定することを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙幣処理装置を備えたことを特徴とする紙幣取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−262366(P2010−262366A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110964(P2009−110964)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】