説明

紙幣処理装置

【課題】搬送路内における紙幣詰まりを早期かつ的確に予測することができるようにして、紙幣が返却できなくなる事態を未然に防止した紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】紙幣挿入口20から挿入され、搬送ベルト40で搬送路10内を搬送される紙幣が紙幣識別センサ50等で検出されたことを契機に、紙幣を搬送する搬送ベルト40を駆動する搬送モータ210の基準時間または基準パルス数に対する回転速度低下率Vrを所定間隔で算出し、この算出した回転速度低下率Vrと基準回転時間または基準パルス数に対応して決定した閾値とを制御部200で比較し、回転速度低下率Vrが閾値を越えた場合、送モータ210を逆転して紙幣を早期に紙幣挿入口20に戻す処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機や両替機等に搭載される紙幣処理装置に関し、特に、搬送路内における紙幣詰まりを早期かつ的確に予測することができるようにして、紙幣が返却できなくなることを防止した紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機や両替機等には、紙幣を受け入れて識別する紙幣処理装置が搭載されている。この紙幣処理装置は、従来、特許文献1、特許文献2に示すように、紙幣の搬送異常若しくは紙幣の詰まりを検知すると、紙幣を紙幣搬送路上で逆搬送して、この紙幣を紙幣挿入口へと戻す処理を行うように構成されている。
【0003】
特許文献1には、紙幣を搬送する搬送手段を駆動するためのステッピングモータ700に備えたエンコーダ703からの出力信号であるエンコーダパルスを検出し、所定時間内のエンコーダパルスの数が所定のパルス数より少なくなった場合、すなわち、ステッピングモータ700の回転速度が所定の回転数より低下した場合、紙幣詰まりによりステッピングモータ700が過負荷状態になったと判断して、ステッピングモータ700の駆動を停止し、その後、ステッピングモータ700を入金方向へ駆動して、この紙幣を紙幣挿入口へと戻すよう構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、挿入口3の近傍に入口センサ6,7を設け、紙幣の先端部が識別センサに到達してから、後端部が入口センサ6,7を通過するまでの通過時間を検出し、これを基準時間と比較して、通過時間が基準値1より短いと、この場合は挿入口3に紙幣が斜めに挿入されたためによる紙幣詰まりに繋がると判断して、その時点で識別を中断して搬送モータを逆転して挿入紙幣を挿入口3に返却し、また、通過時間が基準値2より長い場合は、紙幣が通路内で詰まっていると判断して、その時点で識別を中断して搬送モータを逆転して挿入紙幣を挿入口3に返却する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−149091号公報
【特許文献2】特開平4−264997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、紙幣の搬送に直流モータ等を用いた場合には、モータの回転速度が温度によって変化し、また、装置、電源、モータ等の個体差によってモータの回転速度が一定とはならないので、通常の搬送状態においても所定時間あたりのモータの回転量(パルス数)が一定とならず、特許文献1のようにモータの回転速度が規定の回転速度を低下したかの判断だけでは、正確に紙幣詰まりの前兆を検出することはできない。
【0007】
また、紙幣詰まりの前兆の正確な検出ができないと、紙幣が詰まった後も紙幣の搬送を続けることがあり、この場合は、搬送路内で紙幣が多数箇所で折り曲がり、モータを逆転しても紙幣の返却ができないという不都合が生じた。
【0008】
なお、紙幣の挿入口付近で紙幣が詰まった場合は、モータ逆転により紙幣の返却ができなくても、紙幣挿入口に出ている紙幣を引っ張り出すことにより詰まった紙幣を取り除くことができるが、紙幣が完全に装置内に入り込んでから紙幣が詰まった場合は、この紙幣を容易に取り除くことはできなくなり、この場合は、以後、紙幣処理装置が使えなくなることがあり、自動販売に搭載された紙幣処理装置等にあっては、利用者に不測の迷惑をかけるとともに、また、販売の機会を逸することになり、これにより売上減少に繋がるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された紙幣識別装置によると、基準値1との比較により挿入口3に紙幣が斜めに挿入されてことによる紙幣詰まりは早期に検出することができるが、挿入口3に紙幣が正常に挿入された場合は、この早期の紙幣詰まりの検出はできない。
【0010】
また、引用文献2のものは、通過時間、すなわち紙幣の搬送速度が基準値2より長くなった場合に紙幣詰まりと判断するので、この場合は、紙幣が詰まってから所定時間紙幣の搬送を続けることになり、通路内で紙幣が多数箇所で折り曲がり、モータを逆転しても紙幣の返却ができない場合が生じる。
【0011】
そこで、本発明は、搬送路内における紙幣詰まりを早期かつ的確に検知することができるようにして、紙幣が返却できなくなる事態を未然に防止した紙幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の紙幣処理装置は、紙幣を搬送する搬送手段を駆動する搬送モータと、前記搬送モータの回転に対応してパルス信号を発生するパルス発生装置と、前記パルス発生装置から発生されるパルス数が予め設定した規定数に達するまでの時間を該パルス数が前記規定数に達する毎にそれぞれ計測する時間計測手段と、前記時間計測手段により紙幣の搬送を開始してから最初に計測した計測時間を基準時間として記憶する記憶手段と、前記時間計測手段により計測された前記計測時間および前記記憶手段により記憶された前記基準時間から前記搬送モータの前記基準時間に対応する回転速度低下率を所定間隔で算出する算出手段と、前記算出手段により算出した前記回転速度低下率が前記基準時間に対応して決定した所定の閾値を越えた場合、前記搬送手段により前記紙幣を返却する制御手段とを具備する。
【0013】
請求項2の発明の紙幣処理装置は、紙幣を搬送する搬送手段を駆動する搬送モータと、前記搬送モータの回転に対応してパルス信号を発生するパルス発生装置と、予め設定した規定時間内に前記パルス発生装置から発生されるパルス数を該規定時間毎にそれぞれ計数するパルス数計数手段と、前記パルス数計数手段により紙幣の搬送を開始してから最初に計数したパルス数を基準パルス数として記憶する記憶手段と、前記パルス数計数手段により計数された前記パルス数および前記記憶手段により記憶された前記基準パルス数から前記搬送モータの前記基準パルス数に対応する回転速度低下率を所定間隔で算出する算出手段と、前記算出手段により算出した前記回転速度低下率が前記基準パルス数に対応して決定した所定の閾値を越えた場合、前記搬送手段により前記紙幣を返却する制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送モータの基準回転時間や基準パルス数に対する回転速度低下率が基準回転時間や基準パルス数に対応して決定した所定の閾値を越えた場合に、搬送モータを逆転して紙幣を返却するようにしたので、搬送モータに直流モータ等を採用した場合でも、紙幣詰まりを早期かつ的確に検知することができる。これにより、紙幣が返却できなくなる事態を未然に防止することができ、また、自動販売機等に搭載した場合は、利用者に対する不測の迷惑を防止するとともに、販売の機会を逸することによる売上減少を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に係わる紙幣処理装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】図2は、本発明に係わる紙幣処理装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、紙幣が詰まらない通常の搬送時における搬送モータが30パルス分回転するのにかかった時間と紙幣が詰まった時における搬送モータが30パルス分回転するのにかかった時間とを外部温度との関係で示す図である。
【図4】図4は、本発明に係わる紙幣処理装置における搬送モータの回転速度低下率と基準回転時間との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明に係わる紙幣処理装置における搬送モータの回転速度低下率と基準回転時間との関係を閾値に関連して示すグラフである。
【図6】図6は、本発明に係わる紙幣処理装置における実施例1の紙幣処理動作を説明するフローチャートである。
【図7】図7は、本発明に係わる紙幣処理装置における実施例2の紙幣処理動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係わる紙幣処理装置の概略構成を示す側面図であり、図2は、本発明に係わる紙幣処理装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示す紙幣処理装置100は、紙幣を挿入する紙幣挿入口20と、紙幣挿入口20から挿入された紙幣を装置内部へと案内する紙幣搬送路10と、紙幣搬送路10の紙幣挿入口20付近に設けられ、紙幣挿入口20から挿入された紙幣を検知する透過型光センサ等からなる入口センサ30と、入口センサ30が検知した紙幣を紙幣挿入口20から紙幣搬送路10を通って装置内部へと搬送する搬送ベルト40と、搬送ベルト40を駆動する図2に示す直流モータからなる搬送モータ210と、搬送モータ210の出力軸に設けられ、搬送モータ210の回転をパルス信号として出力する図2に示すパルス発生装置(エンコーダ)220と、紙幣搬送路10に沿って設けられ、透過型光センサ群や磁気センサ等からなる識別センサ50と、紙幣搬送路の最下流に設けられ、紙幣を収納する紙幣収容部60と、識別センサ50と紙幣収容部60の間であって、識別センサ50を通過した紙幣を一時的に保留する一時保留部70と、装置全体を制御する、図2に示す制御部200とを備えて構成される。
【0019】
一時保留部70は、紙幣の判別が終わるまでの間一時的に紙幣を保留するエリアである。
【0020】
識別センサ50の出力に基づく制御部200による識別の結果、挿入された紙幣が真正な紙幣ではないと判別された場合は、制御部200からの指令により搬送モータ210を逆転して、この紙幣を紙幣挿入口20に戻して返却する。
【0021】
識別センサ50の出力に基づく制御部200による識別の結果、挿入された紙幣が真正な紙幣であると判別されると、図示しない自動販売機等からの受入指令あるいは返却指令を受けるまで一時保留される。
【0022】
自動販売機等から受入れ指令を受けると、制御部200は、図示しない収容機構を駆動して一時保留部70に一時保留された紙幣80を収容部60へ収容する。紙幣90は、収容部60へ収容された紙幣を示す。
【0023】
自動販売機等から返却指令を受けると、制御部200は搬送モータ210を逆回転させて一時保留部70に一時保留された紙幣80を紙幣搬送路10を通って紙幣挿入口20へと搬送する。
【0024】
さて、本発明においては、紙幣挿入口20から挿入され、搬送ベルト40で紙幣搬送路10を搬送される紙幣が、紙幣識別センサ50等で検出されたことを契機に、紙幣を搬送する搬送ベルト40を駆動する搬送モータ210の基準回転時間に対する回転速度低下率を所定間隔で算出し、この算出した回転速度低下率と基準回転時間に対応して決定した閾値と比較し、回転速度低下率が閾値を越えた場合、紙幣搬送路10における紙幣詰まりの兆候であると判断して、搬送モータ210を逆転して紙幣を早期に紙幣挿入口に戻す処理を行う。
【0025】
図3は、紙幣が詰まらない通常の搬送時における搬送モータ210が30パルス分回転するのにかかった時間(基準回転時間)と紙幣が詰まった時における搬送モータが30パルス分回転するのにかかった時間(紙幣が詰まった時の回転時間)とを外部温度との関係で示す図である。
【0026】
ここで、基準回転時間は、紙幣が詰まらない通常の搬送時において、識別センサ50が紙幣を検知してから最初に、図2に示したパルス発生装置220から30パルス分のパルスが発生されるまでにかかった時間(ms)であり、紙幣が詰まった時の回転時間は、紙幣が詰まった状態において、図2に示したパルス発生装置220から30パルス分のパルスが発生されるまでにかかった時間(ms)である。
【0027】
また、図3においては、2台の紙幣処理装置A,Bを用いて、外部温度が、−20度、0度、20度、60度、70度(いずれも摂氏)のそれぞれの場合における基準回転時間と紙幣が詰まった時の回転時間との測定結果を示している。なお、この測定に用いた紙幣処理装置A,Bは、パルス発生装置220から30パルス発生される間に、紙幣は、約15mm搬送される。
【0028】
なお、図3の−20度の測定値においては、電力供給量による搬送モータ210の回転速度のバラつきによる違いを見るために、通常よりも電力が弱い場合と、通常の電力の2つの測定結果を表している。
【0029】
図3から明らかになるように、 紙幣搬送路10に紙幣が詰まると、パルス発生装置220から30パルス発生するまでにかかった時間、すなわち、紙幣が詰まった時の回転時間は長くなる。言い換えると、紙幣搬送路10に紙幣が詰まると、搬送モータ210の回転速度は遅くなることが分かる。また、搬送モータ210の回転速度は、温度、個体差、供給電力等に対応して一定ではないことが分かる。
【0030】
このため、搬送モータ210の回転側に対応して一律の閾値を設定して紙幣詰まりを検知する前述の特許文献1に記載された手法によっては、適正に紙幣詰まりを検知することはできない。
【0031】
そこで、本発明では、紙幣が詰まった時の搬送モータ210の回転速度低下率に対応して閾値を設定して、紙幣詰まりの検知を行う。
【0032】
搬送モータ210の回転速度低下率Vr(%)は、搬送モータ210の紙幣が詰まらない通常の搬送時における回転速度を基準回転速度Voとし、現時点の搬送モータ210の回転速度をVtとすると、
Vr={(Vo−Vt)/Vo}×100
=(1−Vt/Vo)×100 ・・・(1)
で表される。
【0033】
ここで、紙幣が詰まらない通常の搬送時にパルス発生装置220から30パルス発生するまでにかかった時間、すなわち、基準回転時間をTo(ms)とし、紙幣が詰まったときにパルス発生装置220から30パルス発生するまでにかかった時間をTd(ms)とし、パルス発生装置220から30パルス発生するまでに搬送される紙幣の搬送距離をSとすると、
Vo=S/To ・・・(2)
Vt=S/Td ・・・(3)
の関係にある。
【0034】
ここで、式(2)、(2)を式(1)に代入すると、紙幣が詰まった時の搬送モータ210の回転速度低下率Vdr(%)は、
Vdr={1−(S/Td)/(S/To)}×100
=(1−To/Td)×100 ・・・(4)
となる。
【0035】
図4は、本発明に係わる紙幣処理装置における搬送モータの回転速度低下率Vrと基準回転時間Toとの関係を示すグラフである。
【0036】
図4において、縦軸は搬送モータ210の回転速度低下率Vr(%)を示し、横軸は紙幣が詰まらない通常の搬送時における搬送モータ210が30パルス分回転するのにかかった基準回転時間To(ms)を示す。
【0037】
また、aは紙幣が詰まらない通常の搬送時における搬送モータ210の低温時(0度C)における回転速度低下率Vrの変動率、すなわち、回転速度低下率Vrの変動範囲を示し、bは紙幣が詰まらない通常の搬送時における搬送モータ210の常温時(20度C)における回転速度低下率Vrの変動率、すなわち、回転速度低下率Vrの変動範囲を示し、cは紙幣が詰まらない通常の搬送時における搬送モータ210の高温時(75度C)における回転速度低下率Vrの変動率、すなわち、回転速度低下率Vrの変動範囲を示す。
【0038】
また、図4においては、図3に示した測定結果に基づき式4から算出した紙幣が詰まった時の搬送モータ210の回転速度低下率Vdrを基準回転時間Toに対応してプロットしている。
【0039】
図4から明らかなように、搬送モータ210の回転速度低下率Vrは、紙幣の詰まりがなくても環境温度等の違いに対応して多少変動する。また、搬送モータ210の回転速度低下率Vrは、紙幣の詰まりが生じると、紙幣が詰まらない通常の搬送時における搬送モータ210の回転速度低下率Vrより大きくなる。
【0040】
そこで図4に破線で示すように、紙幣が詰まらない通常の搬送時における搬送モータ210の回転速度低下率Vrと紙幣が詰まった時の搬送モータ210の回転速度低下率Vdrとの間、例えば、+9%の位置に回転速度低下率Vrの閾値を設定して、搬送モータ210の回転速度低下率Vrがこの閾値より大きくなった場合に紙幣詰まりとして検出すれば、紙幣が完全に詰まる前に紙幣詰まりの検出が可能になる。
【0041】
しかし、閾値を、例えば、一律+9%とすると、搬送モータ210が低速で回転している時、すなわち基準回転時間Toが長い時には、例えば、図4に示す低温時における回転速度低下率Vrの変動率のように、紙幣が詰まらない通常の搬送時における搬送モータ210の変動率Vrとこの閾値が近接するので、紙幣が詰まらない通常の搬送時においても紙幣詰まりとして検出してしまう虞があり、また、高速で回転している場合、すなわち基準回転時間Toが短い時には、例えば、図4に示す高温時における回転速度低下率Vrの変動率のように、紙幣が詰まった時の搬送モータ210の回転速度低下率Vdrがこの閾値と近接するので、紙幣が詰まる前に紙幣詰まりを確実に検出できないという虞がある。
【0042】
本願発明においては、より精度よく紙幣詰まりを事前に検出するために、図5に示すように、基準回転速度Voが高くなる、すなわち基準回転時間Toが短くなるにしたがって紙幣の詰まりを検知する閾値を小さくする。
【0043】
図5において、直線510は、紙幣が詰まった時の搬送モータ210の回転速度低下率Vdrを近似直線によって表したものである。この近似直線510から明らかなように、紙幣が詰まった時の搬送モータ210の回転速度低下率Vdrは、搬送モータ210の回転速度が遅くなるにしたがって、すなわち基準回転時間Toが長くなるにしたがって、紙幣が詰まった時の搬送モータ210の回転速度低下率Vdrは、直線的に大きくなる傾向がある。
【0044】
そこで、本発明においては、図5に破線520で示すように、紙幣詰まりを検出する閾値を、基準回転時間Toが長くなるにしたがって大きくするように設定する。すなわち、図5に破線520で示す閾値は、近似直線510と通常の回転速度の変動率の間で、基準回転時間Toが長くなるに応じて大きくなるように設定する。
【0045】
このように閾値を設定することで、搬送モータ210の回転速度Vtが変動してしても、高精度で紙幣詰まりを事前に確実に検出することが可能になる。
【0046】
なお、図5の破線520は、実験した結果から求めた、紙幣が詰まらない通常の搬送時における搬送モータ210の回転速度低下率Vrのばらつきを紙幣詰まりによる回転速度低下率Vdrと誤って検知せず、なおかつ紙幣詰まりが生じる前に事前に紙幣詰まりを検出できるようにした閾値の一例を示したものである。
【実施例1】
【0047】
図6は、図1および図2に示した本発明に係わる紙幣処理装置100における実施例1の紙幣処理動作を説明するフローチャートである。
【0048】
図6において、この紙幣処理装置100が待機状態にあるときに、紙幣が紙幣挿入口20に挿入されると、まず、入口センサ30により紙幣を検知したかを調べる(ステップ601)。ここで、入口センサ30により紙幣を検知していないと(ステップ601でNO)、ステップ601に戻る。
【0049】
入口センサ30が紙幣を検知すると(ステップ601でYES)、図2の制御部200は、この制御部内に設けられた図示しない受入タイマをスタートさせ、搬送モータ210に正転起動信号を送信して、搬送モータ210を正転させて(ステップ602)、紙幣挿入口20に挿入された紙幣を紙幣搬送路10を通って装置内部に導く。
【0050】
次に、識別センサ50がこの紙幣を検知したかを調べる(ステップ603)。ここで、識別センサ50が紙幣を検知したと判断されると(ステップ603でYES)、図2の制御部200内に設けられた図示しない識別搬送タイマをスタートさせ(ステップ604)、搬送モータ210の回転時間の計測を開始する(ステップ605)。そして、パルス発生装置220から発生するパルスの数が規定パルス数、この実施例1においては30パルス数に達したかを調べる(ステップ606)。
【0051】
そして、パルス発生装置220から発生するパルスの数が30パルス数に達したと判断されると(ステップ606でYES)、この搬送モータ210の回転時間の計測は、最初の計測かを調べる(ステップ607)。ここで、この搬送モータ210の回転時間の計測が最初の計測であると判断されると(ステップ607でYES)、この計測時間から紙幣詰まりを判別するための閾値を決定し(ステップ608)、ステップ605に戻る。
【0052】
すなわち、この実施例1においては、紙幣が識別センサ50で検知されたことを契機に最初に計数された回転時間、すなわち、パルス発生装置220から発生するパルスの数が30パルス数に達するまでの時間である基準回転時間Toに対応して図4または図5に示したように閾値を決定し、この決定した閾値を、図2の制御部200内に設けられた図示しない記憶部に記憶し、その後、次の回転時間の計測を行う。
【0053】
ステップ605では、搬送モータ210の回転時間の再計測を開始し、そして、パルス発生装置220から発生するパルスの数が30パルス数に達すると(ステップ606でYES)、この搬送モータ210の回転時間の計測が最初の計測であるかの判断が行われるが(ステップ607)、ここでは、最初の計測ではないので(ステップ607でNO)、計測した回転時間Ttから算出された搬送モータ210の回転速度低下率Vr(%)とステップ607で決定した閾値とを比較する(ステップ609)。
【0054】
なお、ここでの搬送モータ210の回転速度低下率Vr(%)の算出は、
Vr=(1−To/Tt)×100 ・・・(5)
により算出される。
【0055】
ステップ609で、回転速度低下率Vr>閾値でないと判断されると(ステップ609でNO)、紙幣詰まりは生じていないので、ステップ605に戻り、ステップ605からステップ609の処理を繰り返す。
【0056】
ステップ609で、回転速度低下率Vr>閾値が成立すると(ステップ609でYES)、紙幣詰まりが生じたと判断して、搬送モータ210を逆転させ、紙幣搬送路10内を搬送中の紙幣を紙幣挿入口20に戻す紙幣返却処理を行う。
【0057】
なお、ステップ603で識別センサ50が紙幣を検知していないと判断されると(ステップ603でNO)、ステップ602でスタートさせた受入タイマがタイムアウトしたかを調べ(ステップ610)、タイムアウトしたと判断された場合は(ステップ610でYES)、搬送モータ210を逆転させ、紙幣搬送路10内を搬送中の紙幣を紙幣挿入口20に戻す紙幣返却処理を行うが、ステップ610で受入タイマがタイムアウトしていないと判断された場合は(ステップ610でNO)、ステップ603に戻る。
【0058】
また、ステップ606で、規定パルス数に達していないと判断された場合は(ステップ606でNO)、次に、ステップ604でスタートさせた識別搬送タイマがタイムアウトしたかを調べ(ステップ611)、識別搬送タイマがタイムアウトしたと判断された場合は(ステップ611でYES)、搬送モータ210を逆転させ、紙幣搬送路10内を搬送中の紙幣を紙幣挿入口20に戻す紙幣返却処理を行う。
【0059】
また、ステップ611で、識別搬送タイマがタイムアウトしていないと判断された場合は(ステップ611でNO)、次に、識別センサ50による紙幣識別終了を検知したかを調べ(ステップ612)、紙幣識別終了を検知した場合は(ステップ612でYES)、紙幣受入の終了と判断して、この紙幣を一時保留部70まで搬送した後、搬送モータ210を停止し(ステップ613)、この紙幣詰まり検知処理を終了するが、ステップ612で、紙幣識別終了を検知しない場合は(ステップ612でNO)、ステップ606に戻り、ステップ606以下の処理を繰り返す。
【実施例2】
【0060】
図7は、図1および図2に示した本発明に係わる紙幣処理装置100における実施例2の紙幣処理動作を説明するフローチャートである。
【0061】
図6に示した実施例1においては、パルス発生装置220から発生するパルスの数が規定パルス数、例えば30パルス数に達するまでの回転時間を計測して、最初に計測される回転時間から紙幣詰まりを判断する閾値を決定し、その後に計測される回転時間に基づき搬送モータ210の回転速度低下率Vrを算出するように構成したが、実施例2においては、所定時間内にパルス発生装置220から発生するパルス数を計測し、最初に計測されるパルス数から紙幣詰まりを判断する閾値を決定し、その後に計測されるパルス数に基づき搬送モータ210の回転速度低下率Vrを算出する。
【0062】
今、紙幣が詰まらない通常の搬送時にパルス発生装置220から所定時間T内に発生されるパルス数をNo、紙幣が詰まったときにパルス発生装置220から所定時間T内に発生されるパルス数をNdとすると、紙幣が詰まった時の搬送モータ210の回転速度低下率Vdr(%)は、
Vdr=(1−Nd/No)×100 ・・・(6)
となる。
【0063】
また、現時点において、パルス発生装置220から所定時間T内に発生されるパルス数をNtとすると、搬送モータ210の回転速度低下率Vr(%)は、
Vr=(1−Nt/No)×100 ・・・(7)
から算出できる。
【0064】
そこで、実施例2においては、最初に計測されるパルス数Noから紙幣詰まりを判断する閾値を決定し、その後に計測されるパルス数に基づき搬送モータ210の回転速度低下率Vrを算出する。
【0065】
図7において、この紙幣処理装置100が待機状態にあるときに、紙幣が紙幣挿入口20に挿入されると、まず、入口センサ30により紙幣を検知したかを調べる(ステップ701)。ここで、入口センサ30により紙幣を検知していないと(ステップ701でNO)、ステップ701に戻る。
【0066】
入口センサ30が紙幣を検知すると(ステップ701でYES)、図2の制御部200は、この制御部内に設けられた図示しない受入タイマをスタートさせ、搬送モータ210に正転起動信号を送信して、搬送モータ210を正転させて(ステップ702)、紙幣挿入口20に挿入された紙幣を紙幣搬送路10を通って装置内部に導く。
【0067】
次に、識別センサ50がこの紙幣を検知したかを調べる(ステップ703)。ここで、識別センサ50が紙幣を検知したと判断されると(ステップ703でYES)、図2の制御部200内に設けられた図示しない識別搬送タイマをスタートさせ(ステップ704)、パルス発生装置220から発生するパルス数の計測を開始する(ステップ705)。そして、経過時間が規定時間Tに達したかを調べる(ステップ706)。
【0068】
そして、規定時間Tに達したと判断されると(ステップ706でYES)、このパルス数の計測は、最初の計測かを調べる(ステップ707)。ここで、このパルス数の計測が最初の計測であると判断されると(ステップ707でYES)、この計測パルス数から紙幣詰まりを判別するための閾値を決定し(ステップ708)、ステップ705に戻る。
【0069】
すなわち、この実施例2においては、紙幣が識別センサ50で検知されたことを契機に最初に計数されたパルス数Noに対応して、紙幣詰まりを判断する閾値を図4または図5と同様にして決定し、この決定した閾値を、図2の制御部200内に設けられた図示しない記憶部に記憶し、その後、次のパルス数の計測を行う。
【0070】
ステップ705では、パルス発生装置220から発生するパルス数の再計測を開始し、そして、所定の規定時間に達すると(ステップ706でYES)、このパルス数の計測が最初の計測であるかの判断が行われるが(ステップ707)、ここでは、最初の計測ではないので(ステップ707でNO)、計測したパルス数Ntから式(7)で算出された搬送モータ210の回転速度低下率Vrとステップ707で決定した閾値とを比較する(ステップ709)。
【0071】
ステップ709で、回転速度低下率Vr>閾値でないと判断されると(ステップ709でNO)、紙幣詰まりは生じていないので、ステップ705に戻り、ステップ705からステップ709の処理を繰り返す。
【0072】
ステップ709で、回転速度低下率Vr>閾値が成立すると(ステップ709でYES)、紙幣詰まりが生じたと判断して、搬送モータ210を逆転させ、紙幣搬送路10内を搬送中の紙幣を紙幣挿入口20に戻す紙幣返却処理を行う。
【0073】
なお、ステップ703で識別センサ50が紙幣を検知していないと判断されると(ステップ703でNO)、ステップ602でスタートさせた受入タイマがタイムアウトしたかを調べ(ステップ710)、タイムアウトしたと判断された場合は(ステップ710でYES)、搬送モータ210を逆転させ、紙幣搬送路10内を搬送中の紙幣を紙幣挿入口20に戻す紙幣返却処理を行うが、ステップ710で受入タイマがタイムアウトしていないと判断された場合は(ステップ710でNO)、ステップ703に戻る。
【0074】
また、ステップ706で、所定の規定時間に達していないと判断された場合は(ステップ706でNO)、次に、ステップ704でスタートさせた識別搬送タイマがタイムアウトしたかを調べ(ステップ711)、識別搬送タイマがタイムアウトしたと判断された場合は(ステップ711でYES)、搬送モータ210を逆転させ、紙幣搬送路10内を搬送中の紙幣を紙幣挿入口20に戻す紙幣返却処理を行う。
【0075】
また、ステップ711で、識別搬送タイマがタイムアウトしていないと判断された場合は(ステップ711でNO)、次に、識別センサ50による紙幣識別終了を検知したかを調べ(ステップ712)、紙幣識別終了を検知した場合は(ステップ712でYES)、紙幣受入の終了と判断して、この紙幣を一時保留部70まで搬送した後、搬送モータ210を停止し(ステップ713)、この紙幣詰まり検知処理を終了するが、ステップ712で、紙幣識別終了を検知しない場合は(ステップ711でNO)、ステップ706に戻り、ステップ706以下の処理を繰り返す。
【0076】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記実施例及び図面に示す実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0077】
例えば、実施例1および実施例2では、識別センサ50による紙幣の検知を契機に搬送モータ210の回転時間若しくはパルス数の計測を開始するように構成したが、入口センサ30による紙幣の検知を契機に搬送モータ210の回転時間若しくはパルス数の計測を開始するように構成するようにしてもよく、また、紙幣搬送路10上にある他のセンサ、例えば、一時保留部70の入口部に設けられる図示しない一時保留紙幣検知センサによる紙幣の検知を契機に搬送モータ210の回転時間若しくはパルス数の計測を開始するように構成するようにしてもよい。
【0078】
また、実施例1では、最初に計測された回転時間を基準回転時間として紙幣詰まりを判別するための閾値を決定するように構成したが、パルス発生装置220から所定数のパルスが発生した後に計測された回転時間を基準回転時間として紙幣詰まりを判別するための閾値を決定するように構成してもよい。
【0079】
また、実施例2では、最初に計測されたパルス数を基準回転時間として紙幣詰まりを判別するための閾値を決定するように構成したが、パルス発生装置220から所定数のパルスが発生した後に計測されたパルス数に基づき紙幣詰まりを判別するための閾値を決定するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 紙幣搬送路
20 紙幣挿入口
30 入口センサ
40 搬送ベルト
50 識別センサ
60 紙幣収納部
70 一時保留部
80、90 紙幣
100 紙幣処理装置
200 制御部
210 搬送モータ
220 パルス発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を搬送する搬送手段を駆動する搬送モータと、
前記搬送モータの回転に対応してパルス信号を発生するパルス発生装置と、
前記パルス発生装置から発生されるパルス数が予め設定した規定数に達するまでの時間を該パルス数が前記規定数に達する毎にそれぞれ計測する時間計測手段と、
前記時間計測手段により紙幣の搬送を開始してから最初に計測した計測時間を基準時間として記憶する記憶手段と、
前記時間計測手段により計測された前記計測時間および前記記憶手段により記憶された前記基準時間から前記搬送モータの前記基準時間に対応する回転速度低下率を所定間隔で算出する算出手段と、
前記算出手段により算出した前記回転速度低下率が前記基準時間に対応して決定した所定の閾値を越えた場合、前記搬送手段により前記紙幣を返却する制御手段と
を具備する紙幣処理装置。
【請求項2】
紙幣を搬送する搬送手段を駆動する搬送モータと、
前記搬送モータの回転に対応してパルス信号を発生するパルス発生装置と、
予め設定した規定時間内に前記パルス発生装置から発生されるパルス数を該規定時間毎にそれぞれ計数するパルス数計数手段と、
前記パルス数計数手段により紙幣の搬送を開始してから最初に計数したパルス数を基準パルス数として記憶する記憶手段と、
前記パルス数計数手段により計数された前記パルス数および前記記憶手段により記憶された前記基準パルス数から前記搬送モータの前記基準パルス数に対応する回転速度低下率を所定間隔で算出する算出手段と、
前記算出手段により算出した前記回転速度低下率が前記基準パルス数に対応して決定した所定の閾値を越えた場合、前記搬送手段により前記紙幣を返却する制御手段と
を具備する紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−128929(P2011−128929A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287263(P2009−287263)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】