説明

紙幣処理装置

【課題】下位の係員による取忘れ紙幣の取出しを可能にし、かつ金庫筺体内の紙幣の取出しを防止して、金庫筺体内の紙幣のセキュリティー性の確保と利便性の向上を図る。
【解決手段】出金取引で顧客が取り忘れた紙幣を収納保管する取忘れ紙幣収納部17を金庫筺体18の上方のユニット内に設けることで、取忘れ紙幣収納部17に収納した取忘れ紙幣は顧客の求めに応じて返却する場合でも、多量の紙幣を収納保管した金庫筺体18を開くことなく前記ユニットを引出して取忘れ紙幣収納部17から取り忘れ紙幣を取出すことができようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金融機関等の店舗に設置される自動取引装置に組み込まれ、紙幣の入出金処理を行う紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に紙幣処理装置は、入金された紙幣や出金用に準備している多量の紙幣を装置内部で保管しており、そのため防犯上の観点から、紙幣を収納する収納部は金庫として機能する錠付きの堅牢な金庫筺体を有しているものがある。この金庫筺体には、顧客が取忘れた紙幣や、リジェクト紙幣等も収納している。
【0003】
以下に従来の紙幣処理装置の一例を説明する。図2は自動取引装置の外観を示す斜視図であり、図2において1は自動取引装置(以下ATM)で、このATM1は金融機関の営業店舗やコンビニエンスストア、ガソリンスタンド、スーパーマーケット等に設置され、金融機関が管理し維持する図示しないホストコンピュータと通信回線を介して接続されている。
【0004】
ホストコンピュータは利用者の口座番号、氏名および預貯金残高情報等の顧客情報が記憶された図示しない記憶装置(顧客データベース) を有しており、ATM1はホストコンピュータとデータの授受を行いながら入金、出金などの取引を行うものとなっている。
【0005】
2は装置の正面上部に設けられた顧客操作表示部であって、取引選択画面や顧客の取引操作を誘導する画面等を表示する表示部と、この表示部の表示に従って取引の選択や取引に必要な情報等を入力操作するためのタッチパネルで構成される。
【0006】
3は顧客操作表示部2の下側一側に設けられたカード挿入返却口で、取引開始時に顧客識別カード(以後、キャッシュカード)が挿入され、また取引終了時にキャッシュカードの返却が行われる部位である。このカード挿入返却口3は装置内部に設けられたカード処理部に接続され、このカード処理部はキャッシュカードに記憶された金融機関毎のコード(番号)や利用者の口座番号、氏名等の顧客情報を読み出す機能を有している。
【0007】
4はテンキー部であって、顧客操作表示部2に表示する取引誘導表示に従って顧客が、例えば暗証番号などを入力する部位である。このテンキー部4は顧客操作表示部2に操作キーとして表示しても良いが、図示したように顧客操作表示部2は立ち上がるように傾斜しているので、背後にいる第3者が暗証番号を読み取ることを困難にするために装置正面の略水平部分の顧客の身体の陰に隠れる位置に設けられている。
【0008】
5はカード挿入返却口の下側の位置に設けられたレシート発行口で、このレシート発行口5は装置内部に設けられたレシート処理部に接続され、このレシート処理部は取引明細の印字を行い顧客に発行されるレシートをレシート発行口5から排出するものとなっている。
【0009】
6は装置正面の所定の位置に設けられた接近検知器であって、顧客がATM1に近づいたことを検知するセンサであり、この接近検知器6により顧客を検知すると顧客操作表示部2に取引選択画面が表示されるものとなっている。7は顧客操作表示部2の下側中央部に位置する紙幣の投入及び取出し操作口に設けた外部シャッタ、8はATM1に組み込まれた従来の紙幣処理装置で、紙幣の入金処理機能及び出金機能を有している。この紙幣処理装置8については後で詳しく説明する。
【0010】
9はATM1全体の制御を行う制御部であり、制御プログラム等が記憶されたRAMやROMまたはハードディスクなどで構成された記憶部としてのメモリ部10を有し、更にはホストコンピュータとの接続口である図示しないインターフェース部も有している。 尚、ATM1の機能を提供するには、他にも各部に電力を供給する電源部を始め、多くの機能、構成が備えられているが、その説明は省略する。
【0011】
図3は従来の紙幣処理装置8の内部構成を示す概略側面図で、この図3により紙幣処理装置8の構成について説明する。11は紙幣処理装置8に装備された内部シャッタで、外部シャッタ7の内側に位置するように設けられており、ここで外部シャッタ7は図示しないモータ等により矢印A方向に回動して開閉でき、内部シャッタ11は同じく図示しないモータ等により矢印B方向に略水平に移動して開閉できるようになっていて、外部シャッタ7及び内部シャッタ11の開閉位置を検知する図示せぬセンサがそれぞれ配置されている。
【0012】
12は入出金口であり、入金取引時に顧客が投入した紙幣を受取り、分離して装置内部に取り込むと共に、出金取引時に紙幣を集積して顧客に支払う部位として機能する。この入出金口12に紙幣を投入する際及び紙幣を取り出す際には、前述した外部シャッタ7及び内部シャッタ11を開状態とする。
【0013】
13は入金される紙幣や出金される紙幣の真偽、金種等の鑑別及び計数を行う鑑別部、14は入出金処理時に紙幣を一時的に保管する一時保留部である。
【0014】
15は紙幣を金種別に収納する複数の金種別カセット、16はリジェクト紙幣を収納するリジェクト券カセット、17は取忘れ紙幣を収納する取忘れ紙幣収納部、18は金庫筺体で、この金庫筺体18内に複数の金種別カセット15と、リジェクト券カセット16、及び取忘れ紙幣収納部17が内蔵されている。この金庫筺体18は厚い金属板等で形成されていて、錠を備えており、堅牢な金庫としての機能を有している。
【0015】
19は上述した入出金口12、鑑別部13、一時保留部14、各金種別カセット15、リジェクト券カセット16、及び取忘れ紙幣収納部17間を結んで紙幣を搬送する搬送路であり、この搬送路19の分岐点には紙幣の搬送方向を切替える図示しない切替え手段が設けられている。
【0016】
このような構成による紙幣処理装置8は、顧客がATM1の顧客操作表示部2で例えば入金取引を選択して、入出金口12に紙幣を投入すると、外部シャッタ7及び内部シャッタ11を閉じ、投入された紙幣を一枚ずつ分離して鑑別部13に搬送し、鑑別部13で紙幣の真偽、金種等の鑑別及び計数を行い、計数後、一時保留部14に紙幣を搬送して一時保留する。入出金口12に投入された紙幣をすべて鑑別、計数して一時保留すると、計数結果を顧客操作表示部2に表示し、その計数結果を顧客が見て確認の入力を行うと、一時保留した紙幣を一時保留部14から繰出して鑑別部13に搬送し、再び金種等の鑑別を行い、金種に応じて金種別カセット15に搬送して金種別に収納する。
【0017】
一方、顧客が顧客操作表示部2で出金取引を選択して、金額を入力した場合は、紙幣を金種別カセット15より繰出して鑑別部13に搬送し、鑑別部13で紙幣の金種等の鑑別及び計数を行い、金種が判明した紙幣は計数後、入出金口12に搬送して集積する。そして顧客が入力した金額分の紙幣を入出金口12に集積すると外部シャッタ7及び内部シャッタ11を開いて顧客に支払う。尚、この出金取引において、鑑別部13で金種不明と鑑別された紙幣や搬送異常が検出された紙幣はリジェクト紙幣として一時保留部14に搬送して一時保留し、正常な紙幣を顧客に支払った後、一時保留部14からリジェクト券カセット16に搬送して収納する。
【0018】
ところで、上記の出金において外部シャッタ7及び内部シャッタ11を開いてから、一定時間経過しても紙幣の抜取りが行われない場合、つまり入出金口12に設けられている図示しないセンサが集積紙幣を検知している場合、制御部9は顧客が紙幣を取忘れたものと判断して外部シャッタ7及び内部シャッタ11を閉じた後、紙幣を一枚ずつ分離して、取忘れ紙幣収納部17に搬送し、収納保管する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2006−58939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述した従来の紙幣処理装置では以下の問題を有している。すなわち、従来の紙幣処理装置では、金庫筺体内の紙幣、特に金種別カセットに多量に収納されている紙幣のセキュリティー性を確保する目的で、金庫筺体を開くことができる権限を係員(金融機関の場合はオペレータ、コンビニエンスストア等では店長等の責任者と一般店員)によって分けていることが多く、その場合下位の係員(下位のオペレータや一般店員)には通常金庫筺体の開錠、施錠用の鍵を取扱うことはできないようにし、金庫筺体内の紙幣を取出すことができないようにしているが、取忘れ紙幣については下位の係員でも取出すことができた方がよい場合がある。
【0021】
例えば、取忘れ紙幣収納部に収納した取忘れ紙幣は顧客の求めに応じて返却する必要があり、その際上位の係員(上位のオペレータや責任者)が不在のときは下位の係員が対応することが求められることがあるので、このような場合は下位の係員が取忘れ紙幣を取出すことができるようにすることが望まれる。
【0022】
しかしながら、金庫筺体を開くことができる権限を係員によって分けている場合、下位の係員による取忘れ紙幣の取出しを可能にするために、金庫筺体の錠の鍵を下位のオペレータに持たせてしまうと、下位の係員が金種別カセットの紙幣をも取出せることになって、セキュリティー性が失われてしまい、セキュリティー性を維持するために金庫筺体の錠の鍵を下位の係員に持たせないようにすると、上位の係員が不在のときは顧客の求めに応じて取忘れ紙幣を返却することができなくなるという不便さが生じて利便性が得られないことになり、セキュリティー性と利便性の両立が困難であるというという問題がある。
【0023】
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そのため、本発明は、金種別に紙幣を収納する金種別カセットを内蔵した金庫筺体を有し、出金取引時に金種別カセットから繰出した紙幣の鑑別、計数を行って接客口から顧客に支払う紙幣処理装置において、顧客が取り忘れた紙幣を収納する取忘れ紙幣収納部を前記金庫筺体とは別のユニット内に設け、該ユニットを装置から引出し可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
このようにした本発明は、多量の紙幣を収納保管した金庫筺体を開くことなくユニットを引出して取忘れ紙幣収納部から取り忘れ紙幣を取出すことができ、そのため金庫筺体にアクセスできる権限を係員によって分けている場合でも、下位の係員による取忘れ紙幣の取出しが可能になると共に、下位の係員による金種別カセットからの紙幣の取出しも防止することが可能となって、多量の紙幣に対する高いセキュリティー性を確保しながら利便性が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施例の紙幣処理装置の内部構成を示す概略側面図
【図2】ATMの外観を示す斜視図
【図3】従来の紙幣処理装置の内部構成を示す概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明による紙幣処理装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は第1の実施例の内部構成を示す概略側面図で、本実施例の紙幣処理装置は、取忘れ紙幣収納部17を金庫筺体18の上方のユニット内に設けたものである。このユニット内には入出金口12、鑑別部13、一時保留部14、及び搬送路19が設けられ、取忘れ紙幣収納部17は例えば一時保留部14の下側に配置している。また、このユニットは装置筺体の背面等に設けられた図示しない扉を開いて引出し可能になっており、その扉は鍵を使って施錠、開錠可能となっている。その他の構成は従来の装置と同じである。
【0029】
このような構成による紙幣処理装置は従来と同様に入出金処理を行うことができる。すなわち顧客がATM1の顧客操作表示部2で例えば入金取引を選択して、入出金口12に紙幣を投入すると、外部シャッタ7及び内部シャッタ11を閉じ、投入された紙幣を一枚ずつ分離して鑑別部13に搬送し、鑑別部13で紙幣の真偽、金種等の鑑別及び計数を行い、計数後、一時保留部14に紙幣を搬送して一時保留する。入出金口12に投入された紙幣をすべて鑑別、計数して一時保留すると、計数結果を顧客操作表示部2に表示し、その計数結果を顧客が見て確認の入力を行うと、一時保留した紙幣を一時保留部14から繰出して鑑別部13に搬送し、再び金種等の鑑別を行い、金種に応じて金種別カセット15に搬送して金種別に収納する。
【0030】
一方、顧客が顧客操作表示部2で出金取引を選択して、金額を入力した場合は、紙幣を金種別カセット15より繰出して鑑別部13に搬送し、鑑別部13で紙幣の金種等の鑑別及び計数を行い、計数後、入出金口12に紙幣を搬送して集積する。そして顧客が入力した金額分の紙幣を入出金口12に集積すると外部シャッタ7及び内部シャッタ11を開いて顧客に支払う。尚、この出金取引において、鑑別部13で金種不明なリジェクト紙幣と鑑別された紙幣は一時保留部14に搬送して一時保留し、正常な紙幣を顧客に支払った後、一時保留部14からリジェクト券カセット16に搬送して収納する。
【0031】
また、上記の出金において外部シャッタ7及び内部シャッタ11を開いてから、一定時間経過しても紙幣の抜取りが行われない場合、つまり入出金口12に設けられている図示しないセンサが集積紙幣を検知している場合、制御部9は顧客が紙幣を取忘れたものと判断して外部シャッタ7及び内部シャッタ11を閉じた後、紙幣を一枚ずつ分離して、取忘れ紙幣収納部17に搬送するが、この場合紙幣は鑑別部13を通って取忘れ紙幣収納部17に搬送し、取忘れ紙幣収納部17に収納保管する。
【0032】
以上説明したように、第1の実施例では、出金取引で顧客が取り忘れた紙幣を収納保管する取忘れ紙幣収納部17を金庫筺体18の上方のユニット内に設けているため、取忘れ紙幣収納部17に収納した取忘れ紙幣は顧客の求めに応じて返却する場合でも、多量の紙幣を収納保管した金庫筺体18を開くことなくユニットを引出して取忘れ紙幣収納部17から取り忘れ紙幣を取出すことができ、そのため金庫筺体18にアクセスできる権限を係員によって分けている場合でも、下位の係員による取忘れ紙幣の取出しが可能になると共に、下位の係員による金種別カセットからの紙幣の取出しも防止することが可能となって、多量の紙幣に対する高いセキュリティー性を確保しながら利便性が向上するという効果が得られる。
【符号の説明】
【0033】
1 ATM
2 顧客操作表示部
3 カード挿入返却口
4 テンキー部
5 レシート発行口
6 接近検知器
7 外部シャッタ
8 紙幣処理装置
9 制御部
10 メモリ部
11 内部シャッタ
12 入出金口
13 鑑別部
14 一時保留部
15 金種別カセット
16 リジェクト券カセット
17 取忘れ紙幣収納部
18 金庫筺体
19 搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金種別に紙幣を収納する金種別カセットを内蔵した金庫筺体を有し、出金取引時に金種別カセットから繰出した紙幣の鑑別、計数を行って接客口から顧客に支払う紙幣処理装置において、
顧客が取り忘れた紙幣を収納する取忘れ紙幣収納部を前記金庫筺体とは別のユニット内に設け、該ユニットを装置から引出し可能としたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の紙幣処理装置において、
前記ユニットは、紙幣の鑑別、計数を行う鑑別部及び紙幣を搬送する搬送路を含むユニットであることを特徴とする紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−258133(P2011−258133A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134285(P2010−134285)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】